ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 展開が違い過ぎて……





第16話:堕ちた白崎香織

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 白崎香織 一七歳 乙女にして最早処女に非ず。

 

 好きな男に捧げたからではなく、好きな男の友人に命を救う代価として喰われたからである。

 

 どれだけ触ってみようと膜は無く、すんなり奥まで指が入り込むのが哀しい。

 

 好きな男――南雲ハジメに初めてを捧げたかった、だけど自分の処女を奪った男は言う、何かしら特異点崩壊でも起きない限りは、白崎香織が南雲ハジメへと好意を伝えてもフラれるだけである……と。

 

 白崎香織は南雲ハジメに疎まれていた。

 

 そんな筈は無いと自らに言い聞かせるが、ユートはハジメから『白崎さんの事を堕としてくれない?』と冗談めいて言ったとか。

 

 其処は『犯してくれない?』でなかっただけマシと思うべきか、結局は犯されたにも等しいから同じだったと嘆くべきか。

 

 拠点を作って休む度に、親友や先生と自分で代わる代わる抱かれた。

 

 香織の知識的に男というのは、数回も発射してしまえば空撃ちになる筈だが、ユートは一人につき数回を発射しながら、全く衰える素振りもなかったりする。

 

 寧ろ、毎日毎時間とヤり続けても量や勢いが変わらない訳で、無限リロードとか本人が言うのもジョークではなさそうだ。

 

 膜の確認をしていたら、気持ち良くなってきてしまった頃、先生が気絶したと判る絶叫が響いてきて香織はゆっくり立ち上がる。

 

 特設された仕切りを抜けると、やっぱりピクピクと痙攣しながら見せちゃ駄目なあれこれになった可愛らしい先生が倒れている。

 

 次は自分の番。

 

 そうやってオルクス大迷宮を降りていたが、抱かれ始めた頃に仲間入りをした吸血姫も普通に加わって、ユートとの時間の幾らかを持っていく。

 

 順番は守るし、始めから【閃姫】という恋人というか奥さんというか、そんな関係を望んでいたからであろう、ユエへの態度は自分や親友や先生とはまた違うものなのが、最近は無性に苛立ちを感じていた。

 

 小さな身体は愛子先生もだが、彼女は大人の教師を自認しているから遠慮して慎みも持つが、ユエに遠慮なんて言葉は皆無だ。

 

 おんぶして貰ったり血を飲ませて貰ったり、果ては香織の目の前でキスをねだったりとヤりたい放題。

 

 しかも律儀に応えてキスをしているし。

 

 何故かイライラした。

 

 もっと構って欲しいし、自分もキスをしたい。

 

 頭の中に浮かんだ思いに首を横に激しく振る。

 

 何を考えているのか? それではまるでユートに愛して欲しいみたいだ。

 

 先程から処女膜の有無を確かめる行為に拍車が掛かっており、水音の方も可成り激しく聴こえてくる。

 

 ユートの顔がちらつき、その度に指の動きがより激しく、より滑らかに、より艶かしく、より淫らになっていった。

 

「……香織、煩い」

 

 ビックゥッ! 肩を震わせて真っ赤な顔で涙目になりつつ香織が振り向けば、確りと緋色の目を開いているユエが居るではないか。

 

 というより、今宵はユエと香織が二人で同じ布団で眠って、雫と愛子先生による3Pが本日のプレイ。

 

 だから二人切りで眠っていた訳だが当然、隣で致していたら判ってしまう。

 

「……そんなにユートが好きなら、普通に連れていって欲しいと頼めば良い」

 

「嫌いだよ。私は南雲君が好きなのに、大迷宮の魔物が異常に強いのを良い事に私の初めてを奪ったもの」

 

「……対価と聞いたけど、それはいけない事?」

 

「お、女の子の初めてなんだよ? 男の子とは違って確実に判るモノが無くなっちゃうんだから!」

 

「……私も喪った。ユートが私を貫いたからだけど、嬉しかった」

 

 恍惚とした表情。

 

「そりゃ、ユエさんはそうだろうけど……」

 

 寧ろ、三〇〇年間拗らせてきたモノを捨てれたのは嬉しいだろう、自分を救ってくれた心赦せる程の相手だったのだから。

 

「……香織はユートを想いながら弄ってた」

 

「うっ……」

 

 ギクリとする。

 

「……抱かれる内にいつの間にか心を持ってかれた」

 

「……」

 

 ユートが嫌いだ。

 

 処女を奪ったから。

 

 ユートを許している。

 

 大事にしてくれるから。

 

 ユートが好きだ?

 

 身も心も虜にするから。

 

(訳、解んない)

 

 雫は素直に告白をして、ユートの旅に付いて行く事を表明した。

 

 元々が乙女気質だから、初めての男に入れ込んでしまうのも無理はないかも、これがハジメなら香織だって躊躇無く付いていく。

 

 寧ろ憑いて逝く勢いで。

 

「……仕方がない。淫乱な香織を満足させる」

 

「へ? 満足って……ちょっと! ええっ!?」

 

 その侭、ユエに翻弄された香織は美味しく『戴きます』をされて、翌朝は疲労で休む羽目になったとか。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「リリィから連絡がきた」

 

「リリィから? いったい何て?」

 

 雫の質問に頷き答える。

 

「帝国から使者が送られてくるそうだ」

 

「ヘルシャー帝国から?」

 

 ヘルシャー帝国は所謂、『力こそぱぅわぁ!』とか叫びそうな実力主義国家。

 

 今までハイリヒ王国へと接触してこなかったけど、それはエヒトからの神託と召喚の間が無さ過ぎたし、帝国としては行き成り異世界から勇者とか言われて、『ハイそうですか』といく訳もなく、取り敢えず傍観の姿勢を取っていたから。

 

 然し、勇者(笑)が六五層という冒険者にとって悪夢な階層を、ベヒモス討伐の末にクリアしたと聞いて、重い腰を上げたらしい。

 

「という訳で一旦、王国へと戻るから。白崎と先生はクロニクルガシャットを返してくれ。君らは向こうに帰すから。雫は帰さない、解るな?」

 

「ええ、私も優斗が戻らないなら帰る心算もないわ」

 

 ユートが戻るなら是非も無いが、元より戻る気が無かった上にオスカー・オルクスの話した真実もあり、七大迷宮を行脚する気満々みたいで、ならば雫も付いて廻るだけである。

 

 何よりユエと二人切りにしたら、遠慮も無くユエが美味しい思いをする筈だ。

 

 シェアは仕方がないとしても、わざわざ独り占めをさせたくはなかった。

 

「という訳で、ユエは悪いが暫く雫とこの場で待機。僕は白崎と先生を連れて、ハイリヒ王国の王宮にまで戻るから」

 

「戻るって、戻る方法とか有ったの!?」

 

 香織が驚愕をするけど、ユートは首を傾げた。

 

「だって、戻れるなら私達がした事って……」

 

「うん? ああ、この奥に転移魔法陣が有ったから、それで外に出てから移動系魔法を使うんだよ」

 

「へ、え? そうなんだ」

 

 とんだ赤っ恥である。

 

「……私も連れて行ってくれない?」

 

「雫はあっちに戻りたくなったのか?」

 

「違うわ。私は貴方から離れたくないもの。だけど、ケジメは必要だと思うわ」

 

「ケジメ……ねぇ」

 

 律儀な雫なだけに本気でそう考えたのだろうけど、それだとユエを独りぼっちにしてしまう。

 

「だけどユエは今は亡き、吸血族の女王だったんだ。下手に聖教教会には見せたくないから、連れては行けないんだよ。ユエを独りにするのは憚れるし」

 

「それは……」

 

「それにステータスの問題もあるんだ」

 

「ステータス? ステータスプレートも無いのに」

 

「これ?」

 

「え? ステータスプレートじゃないのよ!」

 

 ユエが雫に見せたのは、既にユエの魔力の色に染まったステータスプレート。

 

「創った」

 

「は? つくったって」

 

「僕の固有技能の【創成】ってのは、ハジメの錬成の上位互換な力だ。暗黒物質を素材にして原子結合による物質化、想像したモノを創造する技術だ。そして僕の瞳は【神秘の瞳】という名前の魔眼。視ればだいたいの構造が把握してしまえるから、ステータスプレートを作製も出来たんだよ」

 

 この世界では量産品とはいえアーティファクトを、ユートは事も無げに複製をしたのだと言い切る。

 

 

ユエ・オガタ

本名:アレーティア・ガルディエ・ウェスペリティリオ・アヴァタール

レベル:73

323歳 女

天職:神子

筋力:380

体力:500

耐性:200

敏捷:320

魔力:15000

魔耐:13000

 

技能:自動再生[+痛覚操作] 全属性適性 複合魔法 魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収] 想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動] 血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約] 高速魔力回復 状態異常完全耐性 闇之魔法 生成魔法

 

 

 やはり魔力が凄まじく、付随して魔耐も高かった。

 

 因みに、ユートに抱かれて潜在能力の覚醒が成されたからか、元の数値よりは高くなっている筈らしく、状態異常完全耐性というのも知らない技能だとか。

 

 毒耐性や麻痺耐性や石化耐性や混乱耐性や恐慌耐性などの、状態異常に対する完全耐性だろう。

 

「問題なのは、天職である神子というやつだよ」

 

「神子?」

 

「ヤバいと思うんだよな。この世界はエヒトって神が幅を利かせてる。それなら神子とはいったい誰の神子だ? と、訊かれたらやはりエヒトなんだろう」

 

「それって?」

 

「下手するとエヒトによる操り人形。まぁ、傀儡系も状態異常ではあるから或いは弾けるけど、最悪なのが冥王ハーデスみたいな感じだった場合だよ」

 

「……冥王ハーデス?」

 

「ユエはそりゃ知らんな。地球はギリシアの神話に出てくる神の名前だ。死者を管理している冥界を支配する神で、僕の居た地球では度々地上支配に乗り出すんでね。戦女神アテナがそれを食い止めるべく、聖闘士と呼ばれる神の闘士と共に闘うんだ。一応、神話的に親族ではあるんだけどな」

 

 まぁ、親族が争う神話は珍しくもないけど。

 

「で、神子との関連性だが……ぶっちゃけ、ハーデスは地上侵攻の折りに本体はエリュシオンに封印して、その時代の地上で最も清らかな人間を依代とする」

 

「依代……つまり、乗っ取るって訳?」

 

「そうだよ、雫。ハーデスの神子として生まれながらに定められ、【YOURS EVER】と刻印されたペンダントを着けていた」

 

「それで?」

 

「ハーデスは瞬……依代に入り込み、冥王ハーデスとして君臨をしたよ」

 

「それじゃ、ユエさんも」

 

「エヒトの器にされる可能性がある。出来たら今はまだ教会に晒したくはない」

 

 今は……いずれ隠し通せなくなるし、この大迷宮を出れば見付かるだろうが、幾ら何でも教会のお膝元のハイリヒ王国の王宮に連れて行くのは駄目だろう。

 

「……良い。私が留守番をするから」

 

「ユエ?」

 

「……寂しくさめざめ泣きながら留守番してるから」

 

 頭を抱える雫。

 

 流石にそれは反則だと、困った表情になっていた。

 

「なら、私が残るよ」

 

「香織?」

 

「白崎さん!?」

 

 突然の香織からの発言に驚愕し、目を見開きながら声を上げる雫と愛子先生。

 

「考えてたんだ。恋人が出来た南雲君の前に処女を喪った私が現れて? それでどうするのかって、ずっと考えていたよ」

 

 昨夜はユエとお楽しみをしていたが、それで吹っ切れたのかも知れない。

 

「私は緒方君が嫌いです」

 

「まぁ、好かれはせんな。雫が異常なだけ……とばかりは言えんが、命の対価とはいえ処女を奪われたんだから当然だ」

 

 誘拐犯に恋してしまう、そんな事例も皆無ではなかったり、だから雫が異例だとは決して云えないけど、は香織の言い分が普通だ。

 

「でも、もう私は緒方君に全部を捧げちゃったんだ。貴方の舌が指が触れていない部位は無いってくらい、私は緒方君に……」

 

 頬が紅い辺り恥ずかしい事を言っている自覚有り、だけど止まる心算も無いのだろう、口を開いた。

 

「南雲君じゃない、緒方君を想いながら私は昨夜……自分を慰めてた」

 

「か、香織!?」

 

「はわわ!」

 

 確かに紅くなるだけの、恥ずかしいエピソード。

 

「……ん、煩かった」

 

 ユエが香織と致した理由がそれだった。

 

「もう私は南雲君を好きだった頃には戻れないから、それなら緒方君に責任を取って貰いたい」

 

「責任……ねぇ……」

 

 確かにユートのヤり方、あれの快感を知ってしまうと他所の男に抱かれても、碌に感じなくなっているかも知れない。

 

 あの強烈過ぎる快感は、ユートだからこそ与えられるモノであり、他の男では作業にしかならない筈だ。

 

「判った、付いて来たいなら連れて行こう。ユエとは違って戦力にはならないだろうから、仮面ライダーの力も改めて渡すべきか」

 

 ユートは結局、帰すのは畑山愛子先生のみとなった事を、ちょっと頭を抱えながら受け止めた。

 

「じゃあ、これからは私も名前で呼んで? ゆう君」

 

 ハートが語尾に付きそうなくらいの笑顔を浮かべ、ユートの名前というか愛称で改めて呼ぶ香織に……

 

「そうしよう、香織」

 

 やはり軽く名前で呼ぶ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「で、こうなりますか」

 

 夜中、リリアーナの部屋に現れたユートと愛子先生と雫の三人。

 

 出口となる魔法陣から出ると、其処は魔法が分解されるライセン大峡谷。

 

 だけどユートは知った事かと、そんな特性ガン無視で瞬間移動呪文(ルーラ)を使って王宮内に。

 

 既に夜更けだったから、リリアーナの部屋に忍び込んだという訳だ。

 

「それにしても、お久し振りですね雫。それに愛子さんも」

 

「久し振り、リリィ」

 

「お久し振りです殿下」

 

 互いに挨拶を交わして、ユートがヘリーナの淹れたお茶を飲んでいるのを見遣るリリアーナは、溜息を吐きながら頬に手を添えた。

 

「それにしても……折角の帰還でしたのに、雫達を連れてきては御愉しみは無しですか?」

 

 ギョッとなる二人だが、ユートはしれっと……

 

「普通に五人で愉しめば良いだろうに」

 

 今宵は四人同時に抱くと言い放つ。

 

「やっぱり手を出していましたか、しかも愛子さんは教師でしょうに……」

 

「チャンスは逃さない性質だからね」

 

 一方の雫も頭を抱えたくなっていた。

 

 若しやと思っていたが、本人が肯定したから確定はしていたにせよ、リリアーナ当人から言われてしまっては誤魔化し様がない。

 

「まぁ、それなら愉しみましょうか」

 

 その夜は今までとは変わった5Pで燃え上がる。

 

 まさかのお姫様とメイドなお姉さんの参加により、愛子先生も雫もちょっとだけ大胆になったから。

 

 翌朝は疲労からだろう、リリアーナは起きるのが辛かったらしい。

 

 帝国の使者が王宮入り、ヘルシャー帝国の使者がやって来る当日、リリアーナは腰を押さえつつヨロヨロと謁見の間へ。

 

 赤いカーペットが敷かれた謁見の間には、聖教教会からイシュタルが率いている司祭が数名、王国側からは国王に王妃に王女に大臣と重鎮で占められており、迷宮攻略メンバーとなっている勇者(笑)達、国王の座る玉座から対面するかの様にゲストの帝国からの使者の数名が立っている。

 

〔リリィ、フットワークの軽い皇帝が自ら来ると思ったんだが〕

 

(はい、私も実はその心算で話してました)

 

 念話での会話だ。

 

 昨夜の寝物語にガハラド皇帝に関する情報を渡されており、その際に容姿関連の情報も受けている。

 

〔あ、居たわ〕

 

(え? 何処ですか?)

 

〔真ん中の奴、使者の右側に居る護衛が魔導具による姿変化か。よく視ればリリアーナの言っていた容姿、今現在の容姿がそいつに被っている感じだ〕

 

(なっ! 護衛の振り?)

 

〔そうなるな〕

 

 ユートは笑いを押さえ、リリアーナは驚愕した。

 

「使者殿、よく参られた。勇者方の至上かる武勇を、今日は存分に確かめられるが良かろう」

 

「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝致します。して、どなたが勇者様なのでしょうか?」

 

「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」

 

「はい」

 

 国王の言葉に天之河光輝が言われた通り前へ出る。

 

〔確かにあいつが勇者(笑)だが、ベヒモスを斃したのって仮面ライダーG3……つまりハジメだろうに〕

 

(やっぱり、勇者様の方が見映えするからでは?)

 

〔下らん見栄……か。それで仲間の手柄を横取りね、何処のあーぱー勇者だよ〕

 

 ベヒモスを斃すには光輝ではレベルも士気も共に足らず、結局はハジメが自分の切札とも云えるG3システムを装着して戦った。

 

 然しものベヒモスも所詮は上澄みに配置された魔物でしかなく、仮面ライダーG3の武装には太刀打ちが出来なかったのである。

 

 勇者(笑)光輝を筆頭に、迷宮攻略のメンバーが次々と紹介をされていく。

 

「ほぅ、成程。貴方が勇者様ですか。随分とまたお若いですな。失礼ですが本当に六五層を突破したので? 確か、あそこはベヒモスという怪物が出ると記憶しておりますがな?」

 

 天之河光輝を観察する様に見遣る使者、イシュタルの手前だからか露骨な態度まで取らないものの若干、疑わしい目で視てきた。

 

 護衛の一人が値踏みするが如くジロジロと舐める様に眺めてきて、その視線に居心地が悪そうに身動ぎをしながら、天之河光輝は口を開く。

 

「えっと……ではお話しましょうか? どの様にあのベヒモスわ斃したかとか、あっ! そうだ、六六階層のマップを見せるというのはどうでしょう?」

 

 天之河光輝の必死な提案だが、使者はあっさりと首を振るとニヤリ……と不敵な笑みを浮かべてきた。

 

「いえ、お話はもう結構。それより手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもして貰えませんか? それなら勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」

「えっ……と、俺はそれでも構いません」

 

 若干、戸惑った様な視線でエリヒド国王の方へと振り返ると、エリヒド国王はイシュタルに確認を取る。

 

 イシュタルは頷いた。

 

 神威を以て帝国に光輝を人間族のリーダーとして認めさせることは簡単だが、帝国は完全な実力主義というのを国是とし、皇太子すら必ずしも血縁にするとは限らない気性だとか。

 

 ならば早々に本心から、ヘルシャー帝国認めさせるには、実際戦って貰うというのが最も早いと判断したのであろう。

 

「構わぬよ、光輝殿。その実力を存分に示されよ」

 

「決まりですな、では場所の用意をお願いします」

 

 急遽として勇者VS帝国使者の護衛という、模擬戦が決定してしまった。

 

 結論だけ云えば勇者(笑)がボロ敗けした形である。

 

(ま、所詮は現代日本人。戦争の意味も知らず、殺される覚悟も無い口先だけの男に過ぎんか。それにどうベヒモスを斃したか話す、まさか仮面ライダーG3を装着して、自分が斃しましたとでも言う心算だったのかアイツは)

 

 何処かの黄金の獅子座が居れば、『男として認めん!』とか言いそうな程に、今の天之河光輝は精彩というものを欠いているのだ。

 

〔格好悪いですわね〕

 

 リリアーナの視線は既に勇者様でなく、勇者(笑)に向ける失望と蔑みのモノに最早、成り果てていた。

 

 そしてイシュタルにより護衛がガハルド本人だと、明かされた事で天之河光輝は茫然自失となる。

 

「こんなのが勇者とはな。本当にベヒモスを斃したのか怪しいもんだぜ」

 

 既に皇帝ガハルドには、呆れと疑心しかなかった。

 

「待って下さい!」

 

「あん? 確か勇者一味の誰だっけか……?」

 

「中村恵里といいます」

 

「んで、何だよ?」

 

「ベヒモスを斃したのは確かです。だけど斃したのは光輝君じゃありません!」

 

「おいおい、だったら随分と話が違わねーか?」

 

 慌てたのは王国側重鎮、とはいえ勇者一行を下手に拘束は出来ない。

 

「じゃあ、誰が斃したってんだよ?」

 

「ハジメ君です」

 

「ハジメ? 確か勇者一味に居たと記憶してるがよ」

 

 そしてその指摘には焦ってしまうハジメ。

 

「ちょ、恵里?」

 

「だって、この侭だったらハジメ君の功績が有耶無耶にされちゃう! ボクは、そんなの嫌だよ!」

 

「へ? ボ、ボク?」

 

「あ……」

 

 遂々、本来の一人称やら口調で話してしまう。

 

「えっと、実は普段からの話し方は本来のものじゃなくて……一人称もボク……だったりするんだ」

 

「うわ、恵里ってボクっ娘だったんだね」

 

「あ、あれ? 何か普通に受け容れられてる?」

 

 オタクなハジメにとってボクっ娘は美味しいだけ、流石の恵里もそれは予想の範疇外だったと云う。

 

「ふん? コイツが?」

 

 パクパクとバカ面を晒す天之河光輝を他所にして、皇帝ガハルドはハジメの事をジロジロと観ていた。

 

「冗談だろう、このガキが戦士って面か?」

 

「む!」

 

 その言い方に当然だけど恵里は眉根を顰めていた。

 

 だが然し反論がハジメのすぐ近くで起きる。

 

「当然だろう。そもそも、ハジメは錬成師。造る者であって戦う者じゃない」

 

「ぬぅ!?」

 

 使者や本物の護衛が驚愕しながら見遣ると、其処には今までは居なかった筈の黒髪の少年が居た。

 

「お前は?」

 

「其処の負け犬な勇者(笑)やハジメの同郷だ」

 

「だ、誰が負け犬だ!」

 

「お前だよ、勇者(笑)」

 

「っていうか、君は生きていたのか!?」

 

「見りゃ判るだろう。僕が幽霊にでも見えてるか? 寧ろ頭は大丈夫か?」

 

「何で頭の心配をされているんだよ!?」

 

 言われなければ解らないのだろうか? というより言われても理解が出来ないのだろう。

 

 勇者(笑)の方は扨置き、皇帝ガハルドが口を開く。

 

「ほう、貴様の名は?」

 

「緒方優斗。まぁ、ステータスプレートにはユート・オガタ・スプリングフィールドとなっているけどね」

 

「つまり、ユートという名で間違いない訳か」

 

「そうだよ」

 

「今まで何処に居た?」

 

「ずっとこの場でやり取りを見ていたが、気が付かなかったのかな? 戦士としては随分と迂闊だったね。暗殺し放題の隙だらけだ」

 

「言ってくれるな……」

 

 皇帝ガハルドは少なくとも勇者(笑)より興味を惹かれたらしく、ふてぶてしい態度のユートに凶悪な笑みで会話を続ける。

 

「ふん、なら今度はお前さんが戦ってみるか?」

 

「……構わないが、それはどうなんだ?」

 

 国王や教皇的にと暗に言ってみると……

 

「まったく、ガハルド殿はそういう遊びが過ぎる」

 

「そうですな。貴方は本気で言っておられますか? ガハルド陛下」

 

 苦言を言うエリヒド国王とイシュタル教皇。

 

 わざわざ勇者(笑)とやっていた模擬戦を止めたというのに、またぞろ模擬戦をされたのでは困る。

 

「まぁ、余興だ……」

 

「待て!」

 

「うん?」

 

 皇帝ガハルドが話しているのを天之河光輝が止め、それに多少の不機嫌さを込めた眼を向けた。

 

「あ、いや……皇帝陛下にではなく……」

 

 と言いつつユートへ顔を向ける勇者(笑)。

 

「一緒に落ちた香織と雫はどうしたんだ!?」

 

「はぁ?」

 

「香織と雫と愛子先生の居場所を教えろ! 君が生きているんなら、香織達だって生きてる筈! というより君が連れているんじゃないのか!?」

 

「知っていても教えんよ、お前みたいなのにはな」

 

「なっ! 緒方! 香織達は君みたいなのがどうにかする様な、そんな安い娘じゃないんだぞ!」

 

「あんな死と隣り合わせのダンジョン内、男女が寄り添えば所謂、種族保存本能が働くのは不思議かな?」

 

 取りも直さず、喰ったと言いたげなユートに……

 

「っさまぁぁぁぁぁっ! 決闘だ! 俺が勝ったら、香織達の居場所を白状して貰うからな!」

 

 叫ぶ天之河光輝。

 

 一人で激昂する勇者(笑)だが、ユートは冷めた瞳でそれを見つめながら言う。

 

「で?」

 

「な、何だ? で、とは」

 

「天之河が勝てば香織達の居る場所を教えるとして、それなら僕が勝ったらお前は何を差し出すんだ?」

 

「な、何だと? 神聖なる決闘を賭け事にする心算なのか!?」

 

「……本気で言ってるのか天之河? 否、正気か? 頭は本当に大丈夫か?」

 

「な、何を!」

 

「お前は決闘に勝った場合の条件を僕に出したな?」

 

「そ、それが何だ?」

 

「その時点でお前は決闘で賭けを申し込んだんだよ」

 

「ち、ちがっ!」

 

「違わないだろう。賭けとは互いに某かを賭けて何らかの勝負を行う事。そして賭けは“お互いに賭ける”のが当たり前だ。従って、天之河がリスク無しで勝負を挑む事は許されない」

 

 キレて口調からおかしくなっているが、どうもド頭にキてまともな思考すらも出来ないらしい。

 

 まぁ、御都合解釈というのは天之河光輝の必殺技ではあるのだが……

 

「な、なら俺は!」

 

「命を賭けろ」

 

「は?」

 

 流石にイシュタル教皇が何か言おうとするのだが、行き成り身動ぎすら出来なくなった。

 

「……!?」

 

 呼吸は辛うじて出来て、死に直結しないにせよ全く動けず、声を上げる事すら叶わなかった。

 

 ユートというより内部の優雅が、更に奥の瑠韻を叩き起こしてやらせている。

 

 ユートには都合、三つの人格が存在しているのだ。

 

 主人格の緒方優斗を基点としたユート。

 

 ユートの生まれる前に死んだ双子の兄、緒方優雅となる筈だったユートと一つに融合した赤子が、前世の記憶を元に再構築した人格である優雅。

 

 そしてユートの破滅型の因子、優雅が魂の相克とは成らなかったが故に世界の修正力が生んだ第三人格。

 

 何故か少女としての人格であり、結局は表に出ない限りは相克とならない味方となってしまう。

 

 万が一にでも表に出たら何処ぞの祝福の風も吃驚、大暴走をして世界に破滅を齎らしてくれる。

 

 普段は寝ている瑠韻は、起きれば優雅と違って影響を及ぼすのも可能だ。

 

「し、死ねとでも?」

 

「ふん、死ぬのが怖いか? 戦争は殺すか殺されるかの二択、お前みたいな偽善者で御都合解釈大好き野郎は敗ければ無様を晒すし、勝てば傲慢にも命まで取らないとか言うんだろうな? どうせ捕虜にしてもお前の見てない所で死刑にするに決まってるのになぁ?」

 

「そ、そんな事が!」

 

「あるに決まっているさ。お前の士気を崩さない様、飽く迄も秘密裏にだがな」

 

「巫山戯!」

 

「巫山戯てなどいないさ。さて、決闘だったな」

 

 最早、興味など無いと謂わんばかりに話を戻す。

 

「待って!」

 

 突然の声に皆が驚くが、知っていたユートとリリアーナは特に驚かない。

 

「なっ!? 雫?」

 

 それは姿を消していた、八重樫 雫その人だった。

 

 

.




 香織が堕ちました。



勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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