ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 香織のパワーアップ必須なんだけどなぁ……





第17話:二人で一人の半分こ怪人

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「雫! やっぱり無事だったんだな!?」

 

 決闘云々も忘れ去ったらしく、天之河光輝は雫へと急いで駆け寄る。

 

「香織や先生は? 本当に無事で良かった。俺は信じていたぞ!」

 

 両手を差し出して雫の手を握ろうとした天之河光輝だったが、雫は嫌悪感すら湛えた表情で一瞥して……

 

「気安く触らないで」

 

 バチッ! と天之河光輝の手を叩きスッと避けてしまった。

 

「し、雫……?」

 

「相変わらずよね光輝は、相手がどう思っているかなんて関係無い。自分の御都合解釈に合わせて“光輝の中では”、私が再会に涙しながら受け止める筈だったんでしょうね」

 

 その視線は飽く迄も冷徹という、幼馴染みの男の子を視る目では決して無い。

 

 感涙に咽び泣き抱き締められてもおかしくはない、そんなシチュエーションである筈なのに、雫の目は冷たく天之河光輝を見据え、抱き締める処か一m以内に近付こうとしない。

 

 クラスメイト達も普段を知るが故に、雫の態度には違和感を感じていた。

 

「おいおい、雫よ。光輝は随分とお前らを心配していたんだぜ? ちったぁそれを留意してやれよ」

 

「龍太郎は黙ってなさい」

 

「うっ!?」

 

 坂上龍太郎が取り成そうとしたが、雫はやはり冷たい……絶対零度の視線にて一瞥しながら言う。

 

「いい加減でうんざりよ、光輝の御都合解釈もそうだけど、龍太郎の脳筋具合も何で私だけが面倒を見ないといけないのかしら?」

 

 幼馴染みの四人組こそ、『始まりの四人』とユートから蔑称される者であり、ユートに好意を持った今の雫からしたなら、嫌われる要因である以上は絶対に覆したい事柄である。

 

「し、雫……? 何を言っているんだ? そうか! 緒方に何かされたのか! そうなんだな!」

 

 随分と断定的だが……

 

「なっ!」

 

 真っ赤になりながら狼狽える姿は、充分に根拠と成り得る態度であった。

 

「くっ、緒方! 雫に何をしたぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「言っただろう? あんな死を濃密にした空間内で、生存本能ってやつが働けば男女はどうなるかってな。“雫”の反応を見れば明らかだろうに」

 

「っ!」

 

 流石にどんな御都合解釈をしようと、雫がユートとナニをやらかしたかなど、周りもすぐに理解をした。

 

 当然、天之河光輝も。

 

「はっ! 香織は! なら香織はどうした!?」

 

「同じだ。愉しかったよ、三人の肌は中々に瑞々しくて甘美な味わいだった」

 

 ブチッ!

 

「殺してやるぅぅぅっ!」

 

 天之河光輝の中で、キレてはならないナニかがブチッとキレてしまった。

 

 聖剣を抜いてユートへと攻撃を仕掛ける。

 

 ユートは特に無反応で、“天之河光輝の中では”目で追えず、躱す処か防ぐ事すら出来ないとなった。

 

 天之河光輝の中ではという註釈付きだが……

 

 ガインッ! 甲高い金属同士がぶつかり合った音、見れば怒りに目尻を上げた雫がユートの前に立って、天之河光輝の聖剣の一撃を自らが持つ刀に似た紫主体の武器で防いでいた。

 

「し、雫っ!?」

 

 つまり、何の事はない。

 

 ユートは雫が防ぐからと余裕綽々で見ていただけ。

 

「ほんっとうに救えない、光輝……アンタのその御都合解釈にはほとほと愛想が尽きたわ! 決闘だったかしら? 私が受けて上げるから覚悟なさい!」

 

 この時の天之河光輝が、面白いくらい狼狽えていたのは間違いない。

 

「雫……何でだよ……」

 

 そんな天之河光輝を冷やかに見つめる雫。

 

「光輝、アンタは昔っから選択肢の一つ一つを誤り続けていたのよ」

 

「選択肢? な、何を言っているんだ?」

 

「私は昔、アンタに会ったばかりの頃には私の王子様になってくれるんじゃないかって、莫迦みたいな話だけど期待したのよ」

 

「……は?」

 

「でも違ったわ。アンタは私の為の王子様なんかじゃなかった。守るなんて言いながら上辺だけでちっとも守ってくれなかったわね」

 

 正に黒歴史の暴露だ。

 

「何を……」

 

「言ったでしょ、アンタは一つ一つの選択肢を間違えてきたのよ。ゲームだってそうでしょう? 選択肢を誤ればエンディングに辿り着けない。光輝は私というヒロインとの仲を縮める為の選択肢を間違い、EDを見損ねたって話よね」

 

「な、何だよそれは?」

 

「決闘でしょ? さぁ……始めましょうか!」

 

 余りの展開に勇者(笑)もそうだが、周りもまた付いていけて無かったりする。

 

 納得がいかないのか? まだ何か言いたげであった天之河光輝、然し取り合わない雫に仕方が無く聖剣を構え直す。

 

「雫、アイツに手籠めにされて従っているのは判ったけど、俺に勝てる心算でいるならそれこそ誤りだぞ」

 

「手籠めにされた覚えなんて無いわね。私は私の意志で優斗の恋人をやってる。優斗は光輝と違って間違わなかったのよ」

 

「香織や畑山先生にまで手を出したんだろう! それの何処が間違っていないって云うんだ!」

 

 ギリギリと奥歯を噛み締めながら、吐き出すかの様に叫ぶ天之河光輝。

 

「言ったわよね、優斗が。あんな死を濃密にした空間では、私達は肌を重ねるしか生を感じられないのよ。アンタの最後の間違いは、落ちた私達を捜そうともしなかった事。勇者としては身勝手に動けないとか言いたいかしら? 其処で女を……個人を取らなかった、その時点で光輝が私達を侍らせる資格が無いって事、いい加減に解りなさい!」

 

「くっ!」

 

「そして光輝がグダグタしてる内に、私も香織も先生までも優斗のモノにって、そういう話よ!」

 

「アアアアアアアッ!」

 

 気が狂いそうなレベルで叫んだのは、雫が抱かれたからか? 香織が抱かれたからか……誰にも判らない侭に、光輝が狂ったかの如く雫ではなくユートの方を攻撃した。

 

「莫迦よね、本当に莫迦。さぁ、来なさい。サソードゼクター!」

 

《STAND BY》

 

 ジョゥントを通って城の床に穴を掘り進み、サソードゼクターが雫の手の中へ納まる。

 

「変身っ!」

 

《HENSHIN》

 

 サソードヤイバーを手にした右腕から、マスクドフォームのサソードに。

 

「なっ!?」

 

 坂上龍太郎だけでなく、全員が驚愕に目を見開いてしまっている。

 

「キャストオフ!」

 

 サソードゼクターの尻尾部分を押し込むと……

 

《CAST OFF》

 

 電子音声が鳴り響いて、ガシャガシャとパーツが切り離される準備形態に。

 

 蠍なのに蛹をイメージするオーバーアーマーを持ったサソード、そのパーツを弾き飛ばしてしまう。

 

 アーマーの下から現れたのは、緑の複眼に紫を基調としたアーマーを身に纏う蠍モチーフで左右非対称となる者。

 

《CHANGE SCORPION!》

 

 仮面ライダーサソード。

 

「マジかよ?」

 

 モノホンの仮面ライダーとなった雫に、坂上龍太郎は固唾を呑んでしまう。

 

「はっ!」

 

 仮面ライダーサソードと成れば、一〇〇mを五.四秒という速度で走れたりするけど、更にステータス的に二〇〇〇という勇者(笑)より俊敏な雫のスペック、これにより更なる速度上昇が見込め、変身シーケンスを経て尚余裕で天之河光輝に追い付いて防御した。

 

「やると思ったわ!」

 

 不意討ちにもならないと仮面ライダーサソード――雫が嘲る様に言う。

 

「し、ずく……なのか?」

 

「ええ、仮面ライダーサソード。私は八重樫 雫本人に間違い無いわね。」

 

 ドカッ! と、ヤクザキックの要領で天之河光輝の腹を蹴り付ける。

 

「ガハッ!」

 

 後ろに吹き飛ばされて、ゴロゴロと滑稽なピエロの如く転げた。

 

「光輝、判っていたとはいえアンタは私を怒らせた。彼氏を不意討ちで攻撃されたのよ、当然ぶっ飛ばされる覚悟はあるのよね!?」

 

 そう言ってサソードゼクターの尻尾を上げ、すぐにまた下ろすというアクションを取る。

 

「ライダースラッシュ!」

 

《RIDER SLASH!》

 

 起き上がった天之河光輝に対して、雫は黒い液体がドロリと刃から垂れ流されるサソードヤイバーにて、斬っ! 斬っ! 斬っ! と幾度も斬り付けた。

 

「ギャァァァァァァァァァァァァアアアアッ!」

 

 起き上がり様に何度も斬られた光輝は、キラキラな鎧を粉砕されて倒れる。

 

 服まで粉砕されており、上半身は素っ裸でズボンも可成りギリギリ。

 

 DBの戦いで孫悟空とかがよくなる格好だ。

 

 憐れにも天之河光輝は、惨めな格好で倒れていた。

 

「フッ、フロニャ力を参考にした非殺傷設定だけに、やっぱり裸になったか」

 

 ある意味で恐ろしい事を宣うユートに、違う理由で戦慄した視線を送ってきたクラスメイト達。

 

「痛みは本物だが、死なないし傷も出来ない優れものだからな。フロニャ力……素晴らしいモンだろ」

 

 異世界フロニャルド。

 

 トータスとはまた別に、獣人のみで形成される世界であり、世界に満たされた【フロニャ力】なる特殊な力が働いていて、武器により攻撃されても致命傷を負うことは無く、一般人ならダメージ次第で前後するが二〇分程度の短い時間だけど【けものだま】になってしまうのだ。

 

 また、召喚された勇者を始めとする一部のツワモノは【けものだま】にならずに済むも、その代わり今回での天之河光輝みたいに、装備している防具が粉々に粉砕されるだろう。

 

 しかもダメージの度合いによっては、その下に着ているものも破壊される。

 

 服だけならまだマシで、下着が粉砕された日には……筋骨隆々なオッサンとかがそうなれば誰得なのか?

 

 ユートはそんな特殊力場【フロニャ力】を解析し、聖魔獣仮面ライダーに対して標準装備、オン・オフを自由に出来る仕様にしているのだ。

 

 雫も愛想が尽きたとはいっても幼馴染み、殺したいとか憎んでいた訳では無いから非殺傷設定で斬った。

 

 斬られた痛みは有れど、天之河光輝に斬り傷が残ったりはしない筈だが……

 

「わ、我が国のアーティファクトの鎧ががが……!」

 

 エリヒド・S・B・ハイリヒ国王は、精神的にだがダメージを受けたらしい。

 

 南無。

 

「序でだから二度と子作りがデキない様にしたろか」

 

 ユートはそんな恐ろしい事を言いながら、短剣を手にして天之河光輝を見る。

 

 【不能の短剣】と呼んでいる短剣で、これに刺されてもダメージは一切負わないのだが、刺されて以降は二度と分身が勃起をしなくなり、子胤が玉々から作られなくなってしまうという男にとっては忌まわしい、強姦魔によく使う魔導具。

 

 本来なら自身の強過ぎる性欲の抑制の為、性欲すら喪う覚悟で造り上げた逸品……の心算ではあったが、自分に刺しても大した効果は上げられなかった。

 

 副産物的に強姦魔へ試したら、勃起していた分身が一瞬でヘタリ込んだのだ。

 

 そして二度と使い物にはならなかったし、医者に調べさせたら子胤を作る機能が完全に死んでいたとか。

 

 自分には殆んど効かなかったのに、他人には効き過ぎるくらい効いたという。

 

「どうしたら良いかな? この侭だと香織や雫に対して不埒な行為に及ぶかも、だしな?」

 

「やめたげなさい」

 

 苦笑いな雫に、ユートも短剣を仕舞ってジョークだと謂わんばかりの態度ではあるものの、目が全く笑っていない辺り本気だったと永山重吾は後に語る。

 

「さて、僕との決闘もしないとな」

 

(お、鬼だ……)

 

 全員が思ったと云う。

 

 そんな中でハジメだけはキラキラした純粋な瞳で、仮面ライダーサソードへと変身した雫を見つめる。

 

「ハジメ君、雫が良いの? ボクよりも……」

 

「え、そうじゃないんだ! 仮面ライダーサソードに本当に変身したからさ! 多分、優斗に貰ったんだと思うんだけどね」

 

 ユートがイクサナックルとイクサベルトを使って、実際に仮面ライダーイクサに変身したのを見ている身としては、やはり興奮を隠せない様子だった。

 

「そうなんだ……だったらボクも仮面ライダーになったら愛してくれる?」

 

「え、別にならなくってもあ……愛するよ?」

 

「うん、嬉しい。でもね、雫を見ていて思ったんだ。単に護られるだけの女より横に並び立ちたいなって」

 

「恵里……」

 

「ハジメ君……」

 

 最早、キスでもするんじゃないかと思えるくらい、甘々な雰囲気をコッソリと漂わせる二人だが、すぐ近くの遠藤浩介は砂糖を吐く思いに耐えていたりする。

 

「おら、起きろや愚図!」

 

 倒れた天之河光輝に対して容赦無く蹴るユート。

 

「ぐはっ!」

 

 目を覚ましたらしいが、ヨロヨロと立ち上がる辺りまだ本調子ではない。

 

「う、うう……」

 

「さっさと起き上がれよ、勇者(笑)様よぉ! 本当に愚図だな!」

 

 ドカッ! と再び蹴る。

 

「ぐわっ!?」

 

 当然ながらまた転けた。

 

「チッ、愚図勇者(笑)が」

 

 余りにも酷い事をしているが、先程からの言い掛かりにも等しい言動からか、イシュタル・ランゴバルド他神職者は兎も角として、他は流石に自業自得であると黙り込む。

 

「くっ、何をするんだ?」

 

「決闘をするとか言い出したのはお前だろ、何をいつまでも寝ているんだ」

 

「う、そうだが……」

 

 雫の豹変に驚愕を禁じ得ないし、圧倒的な力で屠られたショックもある。

 

 精神にダメージを与える非殺傷設定だからだろう、今もフラフラしているのは仕方がないと云えた。

 

 だけどユートに勇者(笑)の事情はどうでも良い。

 

 やる事は山程にあるし、こんな奴一人にいつまでも(かかずら)っていられないのだから。

 

「早く着替えて来いよ」

 

「わ、判っている!」

 

 すぐに新しい服と鎧……アーティファクトを纏い、漸く確りした足取りとなりユートの前に立つ。

 

 やはりキラキラだった。

 

「さて、始めようか」

 

「ま、待て!」

 

「何だよ?」

 

 流石に冷静になったか、雫に手も足も出ずにやられたのが衝撃的で、怒り狂ってはいないらしい。

 

「俺が勝ったら香織も雫も畑山先生も、必ず返して貰うからな!」

 

「なら、僕が勝った場合は何を差し出す気だ?」

 

「なっ! これは神聖なる決闘だぞ? 賭け事に使うなんて不謹慎だろう!」

 

「……なぁ、ヘルシャーの皇帝さん?」

 

「あ? 何だよ」

 

「僕は今、何かおかしな事を要求したのかね?」

 

「いや、全然。勇者の方から賭けを申し込みながら、相手にだけリスクを負わせる莫迦な餓鬼は居るがな」

 

 中々に辛辣である。

 

「皇帝陛下?」

 

「おい、勇者の小僧」

 

「は、はい?」

 

「さっきあの姉ちゃんが言っていた通り、御都合解釈がひでーなぁ? おい」

 

「そんな事は!」

 

「なら、今の会話は何だ? 自分は勝った場合の要求を平然として、相手にそれを許さねーってのがお前らの流儀かよ? はっきりと言うが、そんな輩を信じる程に帝国は甘かねーぞ」

 

「ぐっ、判り……ました」

 

 ガハルド皇帝はユートの弁護をしたのではなくて、勇者が信用出来ない輩では困るから発言した。

 

 故にユートは特に借りとは思ってないし、ガハルド皇帝も貸したなどとは考えてはいない。

 

「なら、此方が勝てば仮死状態にさせて貰おうか」

 

「は? 仮死状態だって? どういう意味だ!」

 

「心配しなくてもきちんと蘇生はしてやる。後遺症も残らないさ」

 

「……良いだろう。どうせ俺が勝つからな」

 

 再び聖剣を正眼に構える勇者(笑)、ユートはやってみたかった事を行うべく、赤い機器をアイテム・ストレージから取り出す。

 

「あれはダブルドライバーなのか!?」

 

 ハジメが驚く。

 

「知ってるの?」

 

「うん、【仮面ライダーW】の主人公の左 将太郎がフィリップと共に使う変身ベルトだよ。だけど相棒とか居るのかな?」

 

「相棒……フィリップって人の事?」

 

「ダブルドライバーって、メイン変身者がボディメモリを、相棒がソウルメモリを使って変身をするんだ。そして変身中、フィリップの精神は二重人格みたいに仮面ライダーWと一緒になるんだよ」

 

「へぇ」

 

 ハジメの説明を受けて、恵里は理解を示す。

 

 黒いUSBメモリみたいな物を出すと……

 

 カチリ。

 

《JOKER》

 

 スイッチを押した。

 

 それに合わせて電子音声が鳴り響く。

 

 緑色のガイアメモリが、ダブルドライバーの右側のスロットに転送されたのを確認して……

 

「変身!」

 

 ユートは叫びながらも、黒いガイアメモリを左側のスロットへと填め込んで、両方を最後まで押し込む。

 

《CYCLONE/JOKER!》

 

 再び鳴り響く電子音声、激しい音楽が鳴って緑色の風が激しくユートを包む。

 

「な、何なんだ?」

 

 どうやらオタクではない天之河光輝は識らないが、ハジメはその出来事に興奮を隠せない。

 

 右に緑色、左に黒色という半分ずつに赤の複眼を持つデザイン自体はシンプルな仮面ライダー。

 

 仮面ライダーWだった。

 

「「さぁ、お前の罪を……数えろ!」」

 

 何故か声は二人分が重なって聞こえてくる。

 

「罪? 俺にそんなものがある訳ないだろう!」

 

「解らないならそれこそ、お前の罪だ!」

 

「黙れぇぇぇっ!」

 

 勇者(笑)の大振りの一撃だが、聖剣の刃を右手首で完全に受け止めた。

 

『所詮は聖剣(笑)だね』

 

「だ、誰だ?」

 

 天之河光輝には聞き覚えの無い声が、仮面ライダーWから聞こえてくる。

 

『君に話す事は何も無い、似非勇者……若しくは公式勇者(笑)が!』

 

「かっこわらい?」

 

 実は天之河光輝に対する勇者(笑)は公式、原作者が自ら綴る程に完璧な(笑)。

 

 それを“もう一人のW”は識っていた。

 

〔にしても、兄貴は大概だよねぇ。まさか【ありふれた職業で世界最強】の世界に居たなんて……さ〕

 

〔そういうタイトルか……まぁ、先ずは奴を潰してからだな――ユーキ〕

 

 ソウルメモリを使ったのはつまりユーキ、ユートの義妹にして【閃姫】でもあるパートナー。

 

 初めてこそ恩師に譲った形だが、身体すら重ねてる身魂の全てで繋がる存在。

 

 比翼の鳥、連理の枝。

 

「ふっ! はぁっ!」

 

「がはっ!?」

 

 受け止めた聖剣を上に弾き飛ばし、すぐに腹へ蹴りを喰らわせてやる。

 

 勇者(笑)は吹っ飛んだ。

 

『弱いな。まぁ、勇者(笑)は始終弱かったっけ?』

 

 ユーキの死は【ありふれた職業で世界最強】が一応の最終回を迎えた後な為、勇者(笑)の末路も当然ながら識っている。

 

『とっとと終わらせるよ』

 

「ああ、そうだな」

 

 ジョーカーメモリをスロットから抜き、右腰に有るマキシマムスロットに装填してスイッチを叩く。

 

《JOKER MAXIMUM DRIVE》

 

 Wがジャンプをして蹴りの体勢に入ると、真ん中から身体が上下に擦れる。

 

「「はぁぁぁっ! ジョーカーエクストリーム!」」

 

 蹴りが天之河光輝に命中した瞬間、もう片方の身体の脚が蹴りを入れる形になって擦れた。

 

「グハァァァァァッ!」

 

 今度こそ壁にまで吹き飛ばされた勇者(笑)、壁へとめり込んでしまうものの、意識だけは残っている。

 

「うう、卑怯だぞ!」

 

(チッ、手加減が過ぎた。どうせ非殺傷を使うんだから殺すレベルで撃つべきだったか……)

 

 仮死状態にしてやる心算だったが、明確な意識を持っているらしく留まった。

 

「卑怯?」

 

「そ、そんな借り物の力で……いい気になるなんて、卑怯者が!」

 

「借り物? 仮面ライダーは確かに東映の映像物だ。借り物と言えば借り物とも言えるが、ダブルドライバーやガイアメモリが借り物だと言うなら、お門違いも良い処だな天之河」

 

「な、なにぃ?」

 

 莫迦な勘違いをしている天之河光輝に、溜息混じりで説明をしてやる。

 

「ダブルドライバーにせよガイアメモリにせよ、どちらも僕の能力で創った物。ハジメの錬成とよく似ている能力でね。実際にハジメが仮面ライダーG3を造り上げているだろう。僕のはその上位互換だ、やれる事も当然ながら多いのさ」

 

「ま、まさか!?」

 

 天之河光輝とて驚く事実であったと云う。

 

「雫のサソードゼクターやサソードヤイバーもそう、僕が創った物を与えた」

 

「莫迦な……」

 

「ハジメを無能と侮って、錬成の勉強をサボりと断定した何処ぞの勇者(笑)様、今どんな気持ち? サボりと無能と断定した相手が、自分の斃せなかったベヒモスを斃して、ねぇねぇ今どんな気持ち?」

 

 所謂、NDKで煽った。

 

 真っ赤になって耐える様は見苦しいまでに。

 

「素手で勝負しろ!」

 

「はぁ、愚かな」

 

「なっ!?」

 

「良いが、お前は聖剣を手にしているよな?」

 

 鎧はまたもや粉砕されているが、聖剣は未だに健在だから両手にひん握っている状態だ。

 

「俺は素手だ!」

 

「いや、両手で聖剣を握っていて素手とか……」

 

 まさかとは思うのだが、気付いていないのか?

 

「もう良いや。掛かって来るんだな」

 

 投げ槍に言うと、遠慮無く聖剣を握り締めた侭で、普通に振り被りながら此方へ駆けて来る。

 

「やれやれだぜ」

 

 ユートは言いながら……

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!」

 

 グチャ、ベキィッ、メキョッ、ネチョォッ!

 

 気色悪い人体が壊される音を鳴り響かせ、序でにと謂わんばかりにガチャン! 聖剣も粉砕してやった。

 

「オラオラッシュ……」

 

 ハジメは引き攣りながら最後に『オラァッ!』と、トドメの一撃をくれてやるユートを、呆然と見つめていたのだと云う。

 

 

.




 ジクウドライバーを腰に装着、ライドウォッチを手にした香織。

《KAORI!》

「変身!」

《KAMEN RIDRE KAORI……KAORI!》

 仮面ライダーカオリ。

「祝いなさい! って、何でやねん!?」

 勿論、ジョークである。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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