ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 何か足りない情報があったら一報下さいな。





第20話:日本で話を通しましょう

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「さてと、始めますかね」

 

 小さな機器を押すと……ピンポーンと電子音が鳴り響いて屋内に報せる。

 

〔はい? どちら様でしょうか?〕

 

 それは男性の声。

 

「南雲 愁さんの御宅で間違いありませんか?」

 

〔は? 愁は私ですが〕

 

 飽く迄も余所行きの喋りで自分こそ、南雲 愁である事を伝えてきた。

 

「ボクの名前は緒方祐希。貴方の会社でアルバイトをしてた緒方優斗の義妹で、大事な御話しがあって参りました」

 

〔優斗君の!?〕

 

 バタバタとする音と共に出てきた大人の男女。

 

「君が優斗君の妹さん?」

 

「正確には義妹、血の繋がりは有りませんよ」

 

 ユーキは小さく微笑みながら訂正をした。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユーキは家に上げて貰った上で、紅茶にケーキまで御馳走になりつつ用件を話す事になる。

 

「先ず、行方不明事件に於ける被害者である兄貴……緒方優斗との連絡が出来ました。これにより」

 

「本当かい!?」

 

「本当に優斗君と?」

 

 被せる様にユーキに詰め寄る二人、愁と菫の剣幕に引き気味になった。

 

「は、はい。とはいっても帰るとかそういうのはまだ無理なんですが……」

 

「ど、どうしてだい?」

 

「正直、被害者の家族を集めて纏めて話した方が良いと思います」

 

「……む、確かにな」

 

 ユート達のクラス全員、それに社会科担当の教師も加えて約三〇人余、被害者の家族は単純に両親だけでも二倍になる。

 

 まぁ、恵里みたいな両親の居ない者も居るが……

 

 南雲 愁が被害者の家族と立ち上げた【家族会】、既に二ヶ月が経っているにも拘わらず、何ら手掛かりの一つも見付からない。

 

 だけど南雲 愁も南雲 菫も諦めてないし、【家族会】と連携を取って少しでも情報を得たかった。

 

 そんな時に手掛かりらしきがやって来たのだ。

 

 だが、それはそれとして気になる事が一つ。

 

 ケーキを食べるユーキをジッと見つめる二人。

 

「どうかしましたか?」

 

「あ、いや……」

 

「貴女の容姿が……その、ねぇ?」

 

 ユーキは特におかしな姿をしている心算は無いし、髪型はいつも通りにポニーテール、伊達眼鏡はちょっとした科学者的ファッションで掛けている。

 

 青い髪の毛は日本人としては珍しいが、アニメ的な世界にはよくある色だ。

 

 寧ろ、青や紫はアニメ的な表現に過ぎず、飽く迄も黒髪とする場合もある程。

 

「何と云うか……」

 

「その……ね」

 

 言い淀みながらも二人は頷き合い、意を決した様に口を開いた。

 

「「何故にタバサ?」」

 

 何処のフュージョン乃至ポタラ合体か、ジョグレス進化かと云わんばかりの揃った科白に納得する。

 

「タバサ姉さんじゃなく、妹のジョゼットなんだけど……ねぇ」

 

「「はい?」」

 

 やっぱり科白が揃った。

 

「え、つまり君は【ゼロの使い魔】の世界でジョゼットに憑依転生したと?」

 

「そうだよ。橋本祐希だったボクは自分で言うのって烏滸がMAXだろうけど、それなりの科学者な発明家だったんだ。それで造った物の実験で死んじゃった。所謂、神様転生ってやつでボクは(高町はるな)に頼んでジョゼットに憑依転生したって訳さ」

 

「転生!」

 

「しかも憑依?」

 

 緊急性が無いと判ったかからか、二人はオタク魂を奮わせて存分に発揮しているらしい。

 

「だけど優斗君の義妹というのは?」

 

「兄貴も同じく転生者さ。ハルケギニアで出逢ってからずっと……ボクは兄貴と比翼の鳥で連理の枝みたいな間柄でねぇ」

 

「何と……」

 

「勿論、魔法も使えるよ。兄貴もボクも……ねぇ」

 

 実際に魔法を見せたら、二人は凄く驚きながら受け容れてしまう。

 

 二人には希望が出来た。

 

 魔法を使える存在が実際に居て、しかもハジメ達の生存も確認が取れたから。

 

「だけど、どうして帰って来ないんだい?」

 

 それが不思議だ。

 

 そもそも、虚無の担い手たるジョゼットである上、予備云々に関係無く虚無を扱えるユーキであるなら、【世界扉(ワールド・ドア)】の魔法も使える訳だし、上手くすれば帰れるのではないか? と愁は考えたのである。

 

「座標が判らないというのもあるけど、一番の癌になっているのがエヒトルジュエ……あの“世界”を司るとか不遜を宣う偽神」

 

「せ、世界をって、まさかハジメ達は!」

 

「勇者(笑)召喚で巻き込まれて、異世界トータスへと拉致されたんだよ」

 

「なっ!?」

 

「勇者召喚ですって?」

 

 驚愕する愁と菫。

 

「偽神というのは?」

 

「彼奴は元人間。だけど、神化した訳じゃないんだ。実際に彼奴は神力なんて扱えないからねぇ」

 

「どうして召喚なんて?」

 

「愉しむ為に。愉悦の為に新しい風を呼び込むべく、自分が異世界の存在であるが故に識る異世界の知識、それを基に勇者(笑)を召喚したのさ」

 

「た、愉しむ為に?」

 

「そう、異世界トータスはエヒトルジュエの遊技場。人々は盤上の駒に過ぎないという訳だよ。だけどそれにも飽いたのか、こうして地球から人間を拉致ってきて新しい駒に据えたんだ。勇者(笑)の一行としてね」

 

「そ、そんな……ハジメ、あの子も?」

 

 絶望的な表情で訊ねてくる菫に頷く。

 

「兎に角、なるべく全員に都合の良い日……日曜日が良いかな? 何処か広そうな場所で情報を開示したいんだけど……」

 

「判った。それなら来週、ウチの会社の会議室で」

 

 話はトントン拍子に進んでいく事に。

 

「そう言えば、祐希ちゃんは何処で寝泊まりを?」

 

「兄貴の施設にはボクは、基本的にノーチェックで入れるからねぇ。其処で寝泊まりするさ」

 

 そもそも、其処には既にヴィヴィオ達も寝泊まりの準備をしていた。

 

「此処に泊まりなさい」

 

「はい? けど、ボクにも仲間が居るから……」

 

「連れてきなさい。な〜に大丈夫、家はそれなりに広いからね」

 

「まぁ、確かに広いかな」

 

 一般家庭としては充分、ゲーム会社の社長だったり人気少女漫画家だったり、それなりに稼ぎは良いから家も数人が余分に寝泊まりするくらいは許容範囲。

 

「ふぅ、御願いします」

 

 二人は微笑みながら静かに頷いた。

 

 そして呼ばれてやって来たユーキの“仲間”に驚愕する事になる。

 

「ヴィヴィオ・ゼーゲブレヒトです」

 

「ハイディ・E・S・イングヴァルトです」

 

「暁美ほむらです」

 

 ガックンと顎が外れるくらいに口を開き……

 

「「何でやねん!?」」

 

 ツッコミを入れた。

 

 ゼーゲブレヒトの意味する処とか、ほむほむが三つ編み御下げの眼鏡っ娘と、ユートがいったいどういう介入をしたのか、オタク魂を大いに刺激された様だ。

 

 日曜日の会議室。

 

 それなりに広いながら、やはり一杯一杯になる。

 

 八重樫虎一に八重樫霧乃だったり、白崎智一に白崎薫子だったりと雫と香織の両親が居た。

 

 ちょっと歳が高めなのは畑山昭子、畑山愛子の母親なのは名前から御察し。

 

 父親や祖父母は来れなかったらしい。

 

 天之河美耶……元々だとヤンキー達の女帝にして、現在では有名ファッション雑誌の編集長を務めている天之河光輝の母親も居た。

 

 園部博之と園部優理も、日曜日はレストランなんて開けて然るべきだろうに、優花の両親が揃っている。

 

 遠藤英和と遠藤実里……遠藤浩介の両親、二人は実に二男一女を世に産み出したながら、何故か一男一女と思われがちである。

 

 因みに、一九歳で大学生の遠藤宗介と小学六年生の遠藤真実という兄と妹が、決して仲は悪くないのだろうけど、世間様からはこの二人が遠藤家の子供と思われている訳だ。

 

 遠藤浩介と偶に遊ぶから二人はユートと知り合い、遠藤真実も兄の浩介よりも頼れる兄みたいに見てて、彼は少し凹んだ事も。

 

 勿論、他にも檜山家とか近藤家とか永山家などと、ユートのクラスメイト達の親は基本的に来ている。

 

 だけどやはり中村家からは誰も来ていない。

 

 中村恵里の父親は死亡、母親は失踪しているから。

 

 そんなざわめきの中に、一際異彩を放っているのがユーキ、ヴィヴィオ、アインハルト、ほむらの四人。

 

 ユーキは身長一五〇cmも無くて、ミニマムな青髪という日本人の名前で呼ばれるにはおかしい容姿。

 

 ヴィヴィオとアインハルトは明らかに外国人だし、虹彩異色だから地味ながら目立っていた。

 

 一番、名前も見た目にも合致する暁美ほむらだが、纏う雰囲気がやはり普通とは云えない。

 

 ユーキに近い雰囲気で、それはやはり数百年を生きた魔女だからだろうか?

 

「皆さん、初めまして……今回の【家族会】の召集を呼び掛けた緒方祐希です」

 

「ヴィヴィオ・ゼーゲブレヒトです」

 

「ハイディ・E・S・イングヴァルトと申します」

 

「暁美ほむらです」

 

 自己紹介をされたけど、いまいち要領を得ない。

 

「此方の三人は付き添い、余り気にしないで下さい。ボクは【家族会】に出席をする事情があります」

 

「事情とは? それに今回の召集は南雲君の筈だ」

 

 白崎智一が言う。

 

「南雲 愁さんには召集を手伝って頂きましたけど、実際の呼び掛けはボク主導と思って下さい」

 

「むう、それで? 進展があったという話だが?」

 

「はい、兄貴……緒方優斗からの連絡がありました」

 

「緒方優斗? 確かに居たと思うが……」

 

 白崎智一からの認識などこの程度だが、園部博之と園部優理、遠藤英和と遠藤実里はやはり別。

 

「優斗君からか!」

 

「成程、彼からなのか」

 

 声を出す園部博之と遠藤英和の両名、細君の二人も驚いている様だ。

 

「ボクの兄ですよ」

 

 それに納得した。

 

「それで、優斗君から連絡というのは?」

 

「先ず、彼らは退っ引きならぬ状況である事でした」

 

 その言葉に緊張が走る。

 

「巫山戯ていると感じるかも知れませんし、不快感を持たれるかも知れません。然しながらボクがこれから言う事は全て真実と思い、それを前提に聞いて下さいとしか今は言えません」

 

 シンと静まり返る会議室の中、完全な沈黙を確認したユーキは口を開いた。

 

「兄貴達は異世界トータスに居ます」

 

「は?」

 

 誰だか知らない中年が、訝しい表情で声を上げた。

 

「おい、巫山戯てんのかよ嬢ちゃん?」

 

「檜山さん、それも込みで聞く様に言われたばかりだろう?」

 

 苗字を聞いてユーキ的には納得しかない。

 

 あんな糞餓鬼を世に送り出す親だ、場合によっては屑の可能性も皆無じゃないのは理解している。

 

 小悪党四人組のリーダーの親なら然もありなん。

 

 とはいえ、荒々しいだけで屑野郎という訳でも無さそうである。

 

「ヴィヴィオ、プロジェクターを準備してくれる?」

 

「はーい」

 

 ヴィヴィオが持ってきたのは正にプロジェクタで、要するにディスプレイ装置の一種、画像や映像を大型スクリーンなどに投影する表示する装置だ。

 

 これは彼らにも解り易くする為、記録媒体の規格ははユートが用意していた物だが、プロジェクタに関してはユーキがこの世界一般でも通じる外観で、数日の時間を掛けて造った。

 

「これから見せるものは、あの教室で起きた一部始終となります。兄貴は万が一に備えて周囲にナノマシンくらいのサーチャーを飛ばしていましたから、それを確保して見せる訳です」

 

 サーチャーと聞いて愁と菫は、ヴィヴィオとアインハルトをガン見する。

 

 サーチャーと云えば正に【魔法少女リリカルなのは】でお馴染み、バラ撒いて情報収集によく使われているアレだからだ。

 

 ヴィヴィオとアインハルトは【魔法少女リリカルなのは】の登場人物であり、当然の様にサーチャーにも詳しい筈だろう。

 

 プロジェクタから出力をされた映像が、モニタへと随分と綺麗なレベルで映し出された。

 

 それは一般的な高校で、昼休みを体現した光景。

 

『はい、お父さんがいつも勉強を見てくれる御礼だってさ……』

 

『サンクス、親父さんには御礼を言っといてくれ』

 

『わ、判った』

 

 微笑ましい男女のやり取りは、ボーイ・ミーツ・ガールを思い起こす。

 

 ちょっと朱色に染まった頬で、男の子へと“父親から”と念押しして渡している女の子。

 

『南雲くん……珍しいね、教室に居るの。ひょっとしてお弁当? 若し良かったら一緒にどうかな?』

 

 不穏な空気が教室に蔓延るが、黒髪の少女は全く以て気付かないで“南雲君”を誘っていた。

 

 ピキリと額に青筋を浮かべた白崎智一氏。

 

『えっとさ、誘ってくれてありがとう……白崎さん。だけどもう僕は食べ終わったから、天之河君達と食べたら良いんじゃない?』

 

 栄養ゼリーのパックを見せながら言う“南雲君”、更に白崎智一氏の額に青筋が増える。

 

『ええっ! お昼それだけなの? それはダメだよ、南雲君! ご飯はちゃんと食べないと。私のお弁当を分けて上げるから、ね!』

 

 其処へ無駄に爽やか笑顔の少年がやって来た。

 

『香織、こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。折角の香織の美味しい手料理を、寝ぼけ眼の侭で食べるなんて俺が許さないよ?』

 

『えっと? 何で光輝君からの許しが要るのかな?』

 

 その瞬間、白崎智一氏は『ブフッ!』と吹き出す。

 

 だけれど次の瞬間には、爽やか笑顔な少年の足元を中心に、純白に光り輝ける円環と見た事の無い幾何学模様が顕れた。

 

 この異常な事態に直ぐ周りの生徒達も気が付いたのだけど、全員が金縛りにでもあったかの様に輝く紋様――所謂、魔法陣だと思しきものを注視している。

 

 四限目の社会科が終わっても未だに教室に残って、女生徒達と談笑に興じていた畑山愛子教諭が咄嗟に、『皆、早く教室から出て!』叫んだが、魔法陣の輝きがまるで爆発をしたかの様に光るのは同時。

 

 最早、逃げ場は無し。

 

 光が収まった後には誰も教室には居らず、飲み掛けのペットボトルや食べ掛けの弁当箱が有り、椅子やら机が散乱した状態だった。

 

「異世界召喚……なのか? これはやっぱり」

 

 仕事柄、こういうのには詳しい南雲 愁が呟く。

 

「以上です」

 

 又もやシンとなった。

 

「これが事実だとして……君の兄はどうやって連絡を取ってきたのかね?」

 

「ボクと兄貴には意識を互いに飛ばす技術が有る」

 

「意識を?」

 

「兄貴から連絡があって、此方にそれを繋ぐ物が顕れたからね、彼方へとボクの意識を飛ばしたんだよ」

 

 白崎智一からの質問に、ユーキは淡々と答える。

 

「どうやってかね?」

 

「こうやってさ」

 

 ユーキが言うと同時に、二つのスロットを持つ赤いバックルのベルトが腰へと装着された。

 

「なっ!?」

 

 驚く白崎智一。

 

「ダ、ダブルドライバー? って、まさか!」

 

 南雲 愁も驚いていると何かが跳ねて来る。

 

「ファングガジェット!」

 

 牙の記憶たる【ファング】を内包したガイアメモリを持つガジェット、ユーキはそれを変形させてスイッチを押して……

 

《FANG!》

 

 高らかに叫ぶ。

 

「変身!」

 

 同時にスロットの左側に黒いメモリが刺さり、右側には変形させたファングを差し込んだ。

 

《FANG/JOKER!》

 

 音楽が流れながらユーキの姿が変化していく。

 

 赤い複眼で全体的に白黒のツートンカラー、右側は白で左側は黒となってアクセントで金色がある。

 

「「仮面ライダーWファング/ジョーカー」」

 

 名乗りを上げた際には、二人分の声が重なって聞こえてきた。

 

「ゆ、優斗君かい?」

 

 南雲 愁が仮面ライダーWへ話し掛けると……

 

「お久し振りだね、愁さんに菫さん」

 

 間違いなくユートの声が響き安堵する。

 

「それに、博之さんに優理さんと壮介さんに実里さんも久し振り。他は知らないから初めましてだろうね。仮面ライダーWファング/ジョーカーの片割れである緒方優斗だ」

 

 ユーキが仮面ライダーにマジ変身したのも驚きには違いないが、ユーキではない声が普通に聞こえてくるのも驚く話。

 

「既にユーキから話は聞いていると思うが、今現在の僕らは異世界トータスへと拉致されている。こうして意識だけを仮面ライダーWとして動かせたのは僥倖、早速だがユーキに連絡してこの場を設けて貰った」

 

「つまり、優斗君が色々と判っている事を説明してくれるんだね?」

 

「そうなるね」

 

 何処か窶れて見える南雲 愁と南雲 菫、園部夫妻や遠藤夫妻もやはり心配なのだろうと判る。

 

 ユートは召喚されてから天之河光輝が、戦争という行為を真っ先に賛成したというのと、彼を含む【始まりの四人】……白崎香織、八重樫 雫、坂上龍太郎の事も話したら天之河美耶もだけど、白崎智一と薫子、八重樫虎一と霧乃が青褪めていた。

 

 もう一組は坂上夫妻であろうか?

 

「僕としては交渉をして、最低限で戦いたく無い者や戦いに向かない者くらい、戦争に不参加は確約させたかったんだけど、天之河が無駄にカリスマを発揮して参戦を決めたから、流れ的に不可能になってね」

 

 しかも大人気な香織と雫まで、消極的ながら賛成をしてしまった。

 

 これでは大して影響力を持たないユートでは、どうにか出来る筈も無かろう。

 

 意気消沈する【始まりの四人】の親達、特に天之河美耶の様子は酷かった。

 

「お父さんの影響が強いのは判っていましたが……」

 

 天之河完治という弁護士が居た、彼は天之河光輝を溺愛していたし様々な事を教えていた。

 

 天之河光輝にとっては、仮面ライダーやウルトラマンみたいなヒーロー。

 

 だけど彼は失敗した。

 

 天之河光輝に清濁併せ呑む事を教える前に死んで、彼は濁を許容出来ない愚かな人間に成り果てる。

 

 都合の悪い事は都合良く解釈するのもその一環。

 

 そして天之河夫妻は結局の処、天之河光輝を導く事が出来なかったのである。

 

 その集大成がトータスで発揮されたのだ。

 

 戦争参戦表明の後には、翌日から早くも訓練。

 

 ステータスプレートにて能力を確認して、二週間後には実戦訓練という名目でオルクス大迷宮へ。

 

 大迷宮で起きた悲劇。

 

「小悪党四人組がベヒモスという、巨大な魔物を抑えていた僕に魔法を誤射したと見せ掛けた攻撃により、偶々前に出た香織が当たって奈落の底に落ち掛けて、それを雫が助けようとしたけど道連れになり、それを更に愛子先生が助けようとしたけど失敗、僕を道連れにして奈落に落ちた」

 

「因みに、小悪党四人組は檜山大介とその取り巻きの事だよ」

 

 白崎夫妻は気絶したくなるし、八重樫夫妻も頭を抱えてしまい、畑山昭子など本当に気絶していた。

 

 とはいえ、ユートが生きているからには三人も無事に居る訳で、だからか白崎夫妻も八重樫夫妻も気を確りと持っていた。

 

 小悪党四人組の親達は、皆から冷たい視線を向けられてしまう。

 

 彼らが直接的に何かした訳ではないが、天之河美耶を口汚く罵ったばかりで、人殺しの親だとされた訳だから当然だろう。

 

 ある意味では天之河光輝より悪質なのだから。

 

「さてと、これが僕らの今現在に置かれた状況だが、問題は他にもある」

 

「と、言うと?」

 

「先ず、帰還を約束されたとは言ったけど、エヒトが約束した訳じゃないんだ。寧ろエヒトは勇者召喚により遊戯盤の駒を増やしたと考えている。魔人族を仮に絶滅させても帰さない可能性が高い」

 

「な、何だって!?」

 

 それでは話が違う。

 

 何の為にハジメが命懸けで戦っているのか!

 

 南雲 愁は拳を握った。

 

「解放者からの情報では、エヒトは人間や魔人や亜人を玩具か何かと思ってて、愉悦の為に戦争を故意に起こしていたらしい。当然、勇者召喚もその一環なんだからそうなるな。下手したら魔人族側もエヒトが操っている可能性が高い」

 

「か、完全なマッチポンプじゃないか!」

 

 白崎智一が憤るのは無理も無いし、他の親達も怒りに表情を歪ませている。

 

「そこで僕ははぐれたのを良い事に、秘密裏で七大迷宮の攻略を行う心算だ」

 

「七大迷宮の?」

 

「七大迷宮は七人の解放者が反逆者となり、引き隠った謂わば隠れ家的な場所。そしてオスカー・オルクスと同様に、他の解放者達も神代魔法をそれぞれ継承が可能な様にしている筈だ。ならば神代魔法の中になら有るかもだろ? 次元さえ超える魔法がさ。エヒトもそれで勇者召喚をしたんだろうしな」

 

「な、成程……確かに」

 

 納得した南雲 愁だが、ユートは既に識っていた。

 

 んなモンは存在しない。

 

 七大迷宮で手に入るだろう神代魔法は……

 

 オルクス大迷宮……【生成魔法】。

 

 ハルツィナ大迷宮……【昇華魔法】。

 

 ライセン大迷宮……【重力魔法】。

 

 メルジーネ大迷宮……【再生魔法】。

 

 バーン大迷宮……【魂魄魔法】。

 

 シュネー大迷宮……【変成魔法】。

 

 グリューエン大迷宮……【空間魔法】。

 

 どれも時空の壁を越え、次元の海を航るには不向きな魔法である。

 

 ユーキが曰く、世界を航るにはこれらを全て集め、更に強固な意志力を以てして概念魔法に至る必要性があり、どれもハズレにして全てが必須なのだそうな。

 

 概念魔法ならユートとて幾つか使えるし、そもそもエヒトさえ存在しなければオーロラカーテンを使って次元移動も出来る。

 

 エヒトこそが癌なのだ。

 

 下手に還ればエヒトは、トータスに見切りを付けて地球で同じ事を始めてしまうだろうし、あの地球には明確な超越者(オーバーロード)が居ないから、奴が神に成り済ますのは普通に可能であった。

 

 そうでなくともGレベルでエヒトの使徒が湧いて出てきて、地球の制圧に乗り出した場合に地球は滅茶苦茶にされてしまう。

 

 その懸念から地球に帰還が出来なかったし、ユーキからもその点に関して注意を受けていた。

 

 エヒトの使徒がGレベルで湧くのも、ユーキから得た情報なだけに困る。

 

 まぁ、唯一の利点としてはリューン並の美女であると云う事だろう。

 

 それに連中のステータスはオール12000と判明したし、リューンは不完全であると自らが言っていたから、若干低かったのだろうという推測が立つ。

 

 天之河光輝がフルスペックとなっても1500で、つまりは八倍という強さを持つのがエヒトの使徒。

 

 本気でまともに相手取れない連中である。

 

 尚、ユートの再誕世界は戦女神アテナが地上を守護しているし、リリカル世界にも【まつろわぬ神】だったアテナが居る為、此処みたいにはいかない。

 

 ユートが齎らした情報で一番聞きたくなかった……既に半数が死亡したという訃報により、檜山大介を含む小悪党四人組の親達は、当然の事ながらも吊し上げを喰った。

 

 何しろユートが抑えていたベヒモス、それをユートに攻撃した所為で抑えが無くなり、檜山大介を筆頭に十数名が轢き潰されたり、赤熱化した頭に焼かれたりして死んだのだ。

 

 小悪党四人組本人らには同情の余地も無かったが、巻き添えを喰らった形となる生徒や騎士、彼らの痛みや苦しみは如何程であったのか想像に難くない。

 

 どんな育て方をしたのかと怒りを露わにするのは、当然の流れであったのだろうし、何より当の檜山大介が死んでいては生け贄の羊は親しか居ないのだ。

 

 こうしてユートから情報を得た事で、南雲 愁にせよ南雲 菫にせよ少し安堵していた。

 

 飛びっきりの爆弾も落とされたけど。

 

「あ、ハジメには恋人が出来たから」

 

「「なにぃぃぃっ!?」」

 

 ふたりは訃報よりも反応をしたと云う。

 

 

.

 




 その後、白崎家と八重樫家と畑山家の親〜ズを別室に呼んだユートは、香織と雫と愛子先生を喰っちゃった事を伝えました。

 当然、白崎智一は激オコだったのは言うまでもないであろう。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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