ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 あんまり進まないな……





第22話:ハウリア族との邂逅ですぅ

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 シア・ハウリアは必死になって逃げていた。

 

 【フェアベルゲン】からも帝国兵からも魔物からもあらゆる全ての悪意から、家族であるハウリア一族を巻き込んでの大逃走劇。

 

 当時は六〇人は居た筈の面々だが、今や四〇人程度にまで減っている。

 

 理由は年寄りや子供などが付いて来れなかったり、やはり何人かが捕らえられたりした為だ。

 

 シアは本来なら亜人族が持たない魔力を有してて、固有魔法も発現しているのだけど、この魔法は謂わば予知の類いである。

 

 シアには見えていた。

 

 金髪緋眼の少女と“白髪で片目に眼帯を付けてる”少年の姿が。

 

 だから漸く見付けたと思っていた為に失望した。

 

 金髪緋眼の少女は確かに居たが、見知らぬ長い黒髪をストレートに伸ばしている少女、ポニーテールに結わい付けてる少女が居て、“黒髪黒瞳”の少年が居たのだから。

 

 白髪で隻眼の少年は?

 

 あの黒髪の少女達は誰?

 

 シアに判っているのは、自らが扱える忌み子の証とも云える予知が、明らかに外れてしまっていた事だ。

 

 だけど仕方がない。

 

 こうなれば彼らに助力を乞う以外に無いのだから。

 

「だずげでぐだざ〜い! ひぃっ、死んじゃうよ! 私、死んじゃうよぉぉっ! だずけてぇ〜、おねがいじますがら〜っっ!」

 

 どちらにせよ今を逃せば一族も自分も、良くて奴隷に堕とされるのだろうし、悪ければ命そのものを落とす羽目になる。

 

 だからシアはあらん限り必死に叫んだものだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「あの、これは……」

 

「首輪」

 

「ですよねぇ!」

 

 翠の石で形作られたそれはシアの首に装着されて、首輪なのは誰が見ても間違え様もない。

 

 よく見たなら金髪緋眼の少女は兎も角、二人の黒髪の少女達は同じ首輪を着けていた。

 

「一応、グランツ鉱石製。喜べとは言わないけどな」

 

「婚約指輪や結婚指輪にも使われる鉱石で、いったい何を造ってるですぅ!?」

 

 亜人族にそんな習慣は無かったが、知らない訳でもないのか絶叫するシア。

 

 きっと父親か母親辺りから聞かされたのだろう。

 

「う〜、とはいえこれって私が貰われた証ですぅ?」

 

 婚約指輪ならぬ奴隷首輪ではあるが、男のモノとなった証みたいな代物だ。

 

 シアが未来視で視た相手ではなかったが、力は間違いなく強いみたいだから、必ず連れて戻りたいシアとしては、奴隷でも何でも構わなかった。

 

 どうせ自分が代に出来るのは、未来視の力か無駄に豊満で可愛らしい容姿を持つ女としての自分自身。

 

 どうやら女を求められたらしく、可愛く産んでくれた亡き母に感謝である。

 

 まぁ、兎人族は基本的に愛嬌があって容姿端麗ではあるのだが……

 

「さて、どう分けるか」

 

 マシンディケイダーにはどう頑張っても、ユートを含めた三人が精々だ。

 

 香織のシャドウチェイサーも同じだが、本人の腕前から二人が限界であろう。

 

 それ以前に免許を持たない香織は、シャドウチェイサーがAI制御で走らせている状態であり、無理な事は出来なかったりする。

 

「雫にもマシンを出すか」

 

 【マシンゼクトロン】を亜空間ポケットから出す。

 

 サソードの紋章が描かれたマシンゼクトロン。

 

「ねぇ、こんなのを何で今まで見せなかったの?」

 

「雫、あっちには勇者(笑)が居たんだぞ?」

 

「どういう意味?」

 

「免許も無しにバイクに乗るとか、絶対にギャーギャー抜かすに決まっている」

 

「ああ、確かにね」

 

 無駄に正義感が強いが故に文句を言うだろう。

 

 交通法規を守るべきだ……と間違いなく言う筈だ。

 

 とはいえ此処は異世界、日本の交通法規なんて存在しない処か、交通法規自体が存在していない。

 

 その国で守るべき法律が有るなら守る必要はある、無いからといって無視をするのも有り得ないが、果たしてこの場合は律儀に守るべきかという話だ。

 

 ユートは必要だから使っているし、雫も香織も必要だから受け容れた。

 

「ユエは僕の後ろに」

 

「……ん」

 

「シアは雫の後ろに」

 

「判ったですぅ」

 

 香織は一人乗りだけど、二人乗りはちょっと怖かったから悪くない。

 

「じゃあ、ハウリア一族の救出にレッツゴー」

 

「レッツゴーですぅ!」

 

 ファンタジーな世界に、三台ものマシンがライセン大峡谷を走る。

 

 マシンディケイダー。

 

 マシンゼクトロン。

 

 シャドウチェイサー。

 

 シアとユエはどうしてもこういうのに慣れなくて、すぐに乗り熟せるとユートも考えてない。

 

 実はシア辺りは割と乗り熟すが、流石にそんな事までユーキから聞いてないから判らなかった。

 

「良かったですぅ。視えていた未来と違っていたからどうなるかと思ったけど、家族を……父様達を何とか助けられそうですぅ」

 

「視えていた未来?」

 

「あ、はい」

 

 雫に聞き咎められて説明をするシア。

 

「【未来視】と云います、仮定した未来が見えるというもので、若しこれを選択したらその先どうなるか? みたいな感じですぅ……それに危険が迫っている時は勝手に視えたりします。とはいっても、視えた未来が絶対という訳でもないんですぅ。それで少し前に見たんですぅ! 金髪で緋色の眼の少女と白髪隻眼の方が私達を助けてくれている姿が! だけど視えていた少女は居ましたが、見知らぬ貴女が居て……白髪隻眼の男性は寧ろ居ませんし」

 

「えっと、白髪隻眼の男性って……誰の事?」

 

 雫の知り合いにそんな、正に厨二病真っ只中な男性なんて存在しない。

 

 それなのにユエらしきが一緒に居たのが解せない、それなら視えるべきは雫はまだしも、ユートである筈ではなかろうか?

 

(後で優斗に訊いてみるしか無いわね)

 

 マシンゼクトロンを運転しながらそう考える。

 

 更にシアが語る固有魔法の【未来視】とは、任意で発動する場合には仮定した選択の結果としての未来が視えるというものだけど、それをやる為には膨大なる魔力、一回で枯渇寸前になる程に消耗してしまう。

 

 パッシブの場合もあり、直接と間接を問わずシアにとって危険と思える状況が迫ってる場合に発動する。

 

 此方も魔力を可成り消費するが、アクティブトリガー程ではなく、約三分の一くらいの消費だとか。

 

 シアは元居た場所にて、ユート達が居る方に行くとどうなるのか?

 

 そんな仮定の選択をし、結果として自分と家族達を護ってくれる白髪で隻眼の男が視えたらしい。

 

 それ故に彼を捜す為に、こんな危険極まりない場所に飛び出してきて、単独の行動をしていたのだとか。

 

 救い主に相当、興奮していたのであろうが……現れたのはまさかの別人。

 

 それでも一縷の望みに賭けて接触したのである。

 

「ねぇ、少し思ったんだけどさ……そんなに凄い固有魔法持っているってのに、何で貴女の事バレたの? 危険を事前に察知出来るのなら【フェアベルゲン】の人達にもバレなかったんじゃない?」

 

「はう! じ、自分で使った場合は暫く【未来視】は使えなくなりまして……」

 

「バレた時は既に使った後だった? いったい何に使ったのよ?」

 

「ちょ〜っとですねぇ……友人の辿る恋路が気になりまして……」

 

「出歯亀じゃないのよ! 貴女、貴重な魔法を何に使ってる訳!?」

 

「あうぅ、今は猛省をしておりますぅ〜」

 

「残念ウサギとしか思えないわねまったく」

 

 運転中じゃなければ頭を抱えていただろう。

 

「ユートさん、皆さん! もう直ぐ父様達、皆が居る場所ですぅ!」

 

「耳元で怒鳴らないでよ! 飛ばすわよ!」

 

 雫はマシンゼクトロンのアクセル全開に、ユートもマシンディケイダー全開で高速スピードで走った。

 

 勿論、香織もシャドウチェイサーを飛ばすのだが、彼女の場合は謂わばAIがやっている事である。

 

「見付けた。ウサミミ付けたオッサン……無駄に美形とかがワイバーン擬きに襲われているな」

 

 ウサミミを生やした人影が岩陰に逃げ込み、兎にも角にも必死に体を縮めているのだが、ウサミミだけがちょこんと見えていた。

 

「何て言うか、身体隠してウサミミ隠さずだよな」

 

 中にはシア並の美少女でウサミミとか、眼福な娘も居るみたいなのだが……

 

 人数は二〇人ちょっと、見えない連中も合わせれば確かに、シアが言っていた通り四〇人程度であろう。

 

 兎人族を上空から睥睨しているのは、奈落の底でも中々御目に掛かれなかった飛行型の魔物、ワイバーンに近しい姿をしているからワイバーン擬きと呼んだ。

 

 体長は三〜五m程度で、鋭い爪と牙を持った凶悪さに加え、モーニングスターの様に先端が膨らんで刺が付いた長い尻尾。

 

「ハ、ハイベリア……」

 

 雫の後ろのシアが震える声で呟いた。

 

 空を悠然と飛翔している六匹の【ハイベリア】なる魔物は、ウサミミ人間たる兎人族を狩るべき獲物として見定め、舌舐め擦りでもしているかの様だ。

 

 ハイベリアの一匹が遂に行動を起こし、大きな岩と岩の間に隠れていた兎人族の下へ急降下、一回転をして遠心力の乗った尻尾により岩を殴り付ける。

 

 破壊音と共に大きな岩が粉砕され、兎人族の子供が絶叫を上げながら這い出してきて、兎人族の男性が慌てて掴んだ結果として二人は縺れ合い転倒。

 

 近場に居た美少女兎人族が悲鳴を上げる。

 

 ハイベリアはその顎門を開き、無力な兎を喰らおうと兎人族の子供と男性へと狙いを定めた。

 

 凄まじい一撃で腰が抜けたのだろう、動けないでいる子供に男性の兎人族が覆い被さり何とか庇おうとしている。

 

 兎人族の美少女は同胞のその先の未来を幻視したらしく、カタカタ震えながら地面を生温かい液体で濡らしてしまっていた。

 

「無駄に器量良しで無駄に肉付きが良くて、愛玩動物か性奴隷か食肉かと正しく無駄に獲物なんだな」

 

「あ、嗚呼……」

 

 シアも絶望の表情となっていた。

 

「助けるのが契約だ」

 

《ZERO ONE DRIVER!》

 

 マシンディケイダーを走らせながら、ユートは腰に飛電ゼロワンドライバーを装着し、右手にはマゼンタのプログライズキー。

 

《WING!》

 

 オーソライザーで認証。

 

《AUTHORIZE》

 

「今回は空中戦で戦ぁぁぁってやるぜ! 変身っ!」

 

《PROGRIZE》

 

 バックル右側のスロットへ装填した。

 

《FLY TO THE SKY! FLYING FALCON!》

 

 黄色のラインの飛蝗型なライダモデル、マゼンタのラインな隼型ライダモデルが同時にユートへ合着。

 

 ライジングホッパーとしての部分が移動、マゼンタのフライングファルコンが基調となる姿となった。

 

 太股やボディにショルダーに仮面がマゼンタカラーなフライングファルコン、然しながらライジングホッパーの黄色が端々に散見がされる姿に、複眼は赤から緑に変化をしている。

 

SPREAD YOUR WINGS AND PREPARD FOR A FORCE(翼を広げ、風力を受け止めろ)

 

「仮面ライダーゼロワン、それが僕の名だ!」

 

 オートに変えてユエを残す形にて、マシンディケイダーから翔び上がった。

 

「……と、翔んだ?」

 

 マシンディケイダーに乗りながら、変身をした仮面ライダーがゼロワンとか。

 

 高速飛行で肉食未遂現場まで現着……

 

「おりゃぁぁあっ!」

 

 ユートは蹴りの体勢にて突っ込み、でハイベリアのド頭をブッ飛ばす。

 

『ギィィヤァァァッ!?』

 

 あっさりと頭を粉砕されてしまい、蹴りの威力から肉体が崖に激突して肉片化したハイベリア。

 

「ふん、やっぱりオルクス大迷宮の深部の魔物に比べると雑魚いな」

 

「ヒィッ!」

 

 兎人族の子供が股座を濡らしながら後退る。

 

 端から視ればハイベリアという魔物を、別の魔物がブッ飛ばした図でしか無いのだろう、つまりは次なる獲物はやはり自分と考えても仕方がない。

 

 人語を喋った事に関しては聞いてなかったらしく、華麗? にスルーをされてしまった様である。

 

 取り敢えず子供は無視、可愛い女の子なら誤解も解きたいが、子供でしかも男なら今すぐ誤解を解く意味も無いだろうから。

 

 まぁ、少し向こう側では地面を同じく濡らしているシアと同年代らしき女の子が恐怖に戦慄しているが、この際だからそちらも見ない振りをしてやった。

 

 十代後半女子としては、年頃の男子……ユートは既に数千年ばかり存在しているが……に視られたくない姿だろうから。

 

 粗相をしたなんて。

 

「雑魚ならすぐに済むな」

 

 再び翔び上がったユートは二匹目のハイベリアへと向かい、アタッシュカリバーを取り出して斬る。

 

『グギャッ!』

 

 首を落とされてしまい、自らも落下して逝った。

 

「固まってくれたか」

 

《CHARGE RIZE》

 

 一旦、アタッシュカリバーを閉じて充填。

 

 フライングファルコン・プログライズキーをベルトから抜き出し……

 

《FLYING FALCON ABILITY……》

 

それをアタッシュカリバーのスロットへと装填。

 

《PROGRIZE KEY CONFIRMED READY TO UTILIZE》

 

 再び開く。

 

《FULL CHARGE!》

 

「お前らを止められるのは唯一人……僕だ!」

 

《FLYING》

 

「ギャバ……じゃなくて、カバンダイナミック!」

 

《KABAN DYNAMIC!》

 

 凄まじいエネルギー斬撃を放つタイプで、ユートはカバンダイナミックという必殺技を極める。

 

 それにより固まって行動していたハイベリア共は、纏めて斬撃の嵐に呑み込まれて消え逝くのみ。

 

 ウサミミ連中は皆が揃って青褪めていた。

 

 弱い彼らにとってみればハイベリアもゼロワンも、等しく滅びを与えん事を……的脅威に移るのだろう。

 

 失礼な話だがそれは仕方がない事、仮面ライダーは見た目がヒーローというのは日本で慣れているからに過ぎず、見慣れない者からすればやっぱり怪人と何ら変わらないのだから。

 

 そも、仮面ライダー1号からしてショッカーの怪人たるバッタ男、異形な身体に秘めたる力を護る為に揮うからこそのヒーローだ。

 

「正義でも悪でも、殺し合う人はみんな悪魔だから」

 

 だけど自然界では当然、こうして殺し合って生き残りを懸ける。

 

 食欲なだけにある意味、純粋な殺し合いだろう。

 

 其処に人間みたいな悪意など無いのだから。

 

 地面に降り立つユート、仮面ライダーゼロワンを視るハウリア族の面々には、明らかな恐怖心がまざまざと表れている。

 

 フライングファルコン・プログライズキーを抜き、変身を解除してみても変わらないのは、亜人族としては最弱の彼ら兎人族は人間ですら、自分達の生活を脅かす脅威にしかならないからであろう。

 

「あ、貴方はいったい?」

 

 初老にもまだ差し掛からない男性が、ユートの方を見ながら問うてくる。

 

「ハウリア族だな?」

 

「は、はい……」

 

「シア・ハウリアと結んだ契約に則り救出した」

 

「……え? 娘と……結んだ契約ですか?」

 

「娘?」

 

「私はカム・ハウリア……ハウリア族の族長であり、シアの父親です」

 

「成程、だいたい判った。どうやらシアは母親似だったみたいだな」

 

 目の前の父親を名乗ったカムはシアと似ていない、ならDNAの殆んどは母親から受け継いだのだろう。

 

「とおさまぁぁぁっ!」

 

 折り良くというべきか、雫が乗るマシンゼクトロンがシアを後ろに乗せ追い付いて来た。

 

「シア、無事だったのか! 良かった!」

 

「父様! 皆も無事で何よりですぅ!」

 

 シアの登場にハウリア族は漸く一息吐く。

 

「あっという間だったみたいね、優斗」

 

 ハイベリアの肉片を見つめながら、雫はやれやれと肩を竦めてしまう。

 

「所詮は地上の魔物って処だからな。オルクス大迷宮みたいな強さは多分だが、無いんだろうね」

 

 空飛ぶ魔物で緊急を要したから、仮面ライダーゼロワン・フライングファルコンで出たユートだったが、魔物はダイヘドアと変わらない程度の強さ。

 

 過剰戦力だった。

 

 シアからの説明を受けたカムが近付いてくる。

 

「ユート殿で宜しいか? この度はシアのみならず、我が一族の窮地をお助け頂き何と御礼を言えば良いのか判りませぬ。父として、そして族長として深く感謝を致します」

 

「構わない。対価はきちんと貰ったからな」

 

「対価……ですか……」

 

 シアの首に着けられている翠の首輪、それが謂わば奴隷の証たる首輪だとシアから聞いており、やっぱり父親としては難しい表情にならざるを得ない。

 

 妻の忘れ形見でもあり、魔力持ちで魔物の技能たる魔力操作を持つとはいえ、可愛がって育てた実の娘が奴隷となるなど、父親としては許容も出来なかった。

 

 だが然し、こうして助けられたからには対価を支払わねばならないのは理解も出来たし、寧ろ無意味にも無料で助けられたりしたら裏を疑うレベルの話。

 

 シアは胸元と腰周りと脚と腕を、申し訳程度で隠している踊り子なのかと見紛う格好だが、決してビッチとかではない貞淑さを持ち合わせている。

 

 それが奴隷になるなど、明日には処女喪失の報せが来そうで怖い。

 

 人間族と同じで亜人族も処女膜を持ち、処女という概念も併せ持っているし、男と目合うと膜を擦り切られてしまい、処女喪失だとも理解していた。

 

「わ、私が代わりに奴隷となりますからシアは解放して戴けませんか?」

 

「オッサンを奴隷にして、いったい誰得だよ!?」

 

 シアの格好をしたカム、悍ましい想像をしてしまい吐き気を催すユート、更に後ろではやはり想像したらしい雫と香織が手で口元を押さえている。

 

「父様、大丈夫ですぅ! ユートさんは約束の通りに一族を救ってくれました。私は喜んでこの身を捧げる所存ですぅ」

 

「シ、シア!」

 

 ぶわわっと涙を流すカムを視て、悪役だなと今更ながら思ったりするのだが、だからといってシア奴隷化を止める気は更々無い。

 

「ああ、寸劇は終わってくれないかな?」

 

 取り敢えず止める。

 

「それで、シアを連れて行くのは決定として……だ。あんたらはこれからどうやって生きていく?」

 

「どうやってとは?」

 

「最弱の兎人族。待っているのは魔物の餌か、或いは帝国兵や奴隷商人に捕まって奴隷となるか」

 

「……うっ!」

 

「シアとの契約は果たした訳だが、これから先も変わらない生活をするんだろ? そうなると結局は近い内に全滅するぞ」

 

「それは……」

 

「今までは【フェアベルゲン】の庇護が有ったから、蔑まれながらも安全だけは保証もされていたろうが、今はそれも無いんだから」

 

「その通りですな……」

 

 カムもそれは認めた。

 

「僕に示せる全滅を避ける道は二つ」

 

「二つも?」

 

「一つは胸糞悪くなるかも知れないけど、シア以外の年頃な女の子を僕が引き取る事で、相対的に全滅を避けるという方法だ」

 

「そ、それは……」

 

 ラナ・ハウリアやミナ・ハウリアなど、シアよりも歳上ながら若い女の子は確かに居るし、彼女らが無事ならハウリアが根絶やしにはならない筈。

 

 若しハウリア族とは違う一族と出逢い、子を成せばハウリアの血は残る。

 

 仮にユートが全員を抱いてハーフとはいえ子を成しても、一応だけどハウリアの血族は残せるだろう。

 

 か細い糸みたいな可能性に過ぎないが……

 

 カムがソッと見遣れば、ラナ達は自身に起きるだろう出来事に震えていた。

 

 ユートが言う通り胸糞悪くなる方法である。

 

「二つと言いましたな? では今一つとは……」

 

「お前達、ハウリア族を僕が強くする!」

 

「は、ぁ?」

 

「最弱の兎人族という悪評はどうでも良い。そいつを覆して強くなればお前達は生きていけるだろう?」

 

「む、無理ですよ!」

 

「やる気がなけりゃあな。だが、素質とやる気が皆無でさえないなら、僕が強くしてやれる」

 

「た、対価とかは?」

 

「これに関しては無料だ。シアの奴隷化はちょっと貰い過ぎな面もあるしな」

 

「貰い過ぎ?」

 

「対価は均等にだ。与え過ぎても貰い過ぎてもいけないんだよ」

 

「そうですか……」

 

「一部を奴隷にするのは、奉仕に対する生活の保証とかで相殺になる」

 

 ビクッと震えるハウリアの女の子達。

 

「好きな方を選べ」

 

 カムの決断次第で色々と変わる、それが理解出来るが故に不安そうなハウリアの女の子達。

 

「強く……なれますか?」

 

「断言しよう。僕が一年間を使って君らを鍛え上げたなら、間違いなく亜人族の最強をも越える……と」

 

「く、熊人族をも!?」

 

 どうやら熊人族とやらが亜人族で最強らしい。

 

「ちょ、ちょっと待って! 一年間って言ったけど、まさかハウリア族の強化に一年も使う気?」

 

「ああ、一年間は修業しないといけない。短時間で身に付くのは根拠の無い自信と付け焼き刃くらいだぞ。雫はそれをよく識っていると思ったが?」

 

「わ、解るけど! 帰還とかどうするのよ!?」

 

「心配するな。良い魔導具が有るんだよ」

 

 ユートはハウリア族を引き連れ、再びオルクス大迷宮へと籠る。

 

「また此処に……」

 

「邪魔が入らない様にな。それに強くなったら大迷宮の魔物は指標になる」

 

「はぁ、それで? 優斗の言う魔導具ってのは?」

 

「コイツだ」

 

 取り出したるは球形で、硝子張りなジオラマ……というか呼び方はダイオラマであった。

 

「ダイオラマ魔法球と云ってな、コイツの内部で外部の一日を過ごすと三〇日間が過ぎるって代物だ」

 

 某・第三王女から贈られた物である。

 

「一日が一ヶ月って事? つまり一二日間で約一年間が過ぎる……」

 

 三六〇日なら五日間ばかり足りないが、凡そ一年間が過ぎる計算だった。

 

「ま、余り女の子にはお勧めしないけどな」

 

「ああ、歳を取るものね」

 

「それは嫌かな……」

 

 雫も香織も若いとはいえ女の子、歳を経るのは普通に抵抗があったらしい。

 

「其処で僕との【閃姫契約】が活きる。取り敢えずは年齢を重ねないからな」

 

「ま、マジに?」

 

「ああ。僕と同じ刻を在り続ける祝福にして呪いだ」

 

 祝いと呪いは似た漢字、若い侭で変わらず在り続けるのは人の欲を体現してはいるが、持ったら持ったで死にたがる者も居る。

 

 全く困ったものだ。

 

「この中で兎人族を鍛えてやるさ」

 

 兎人族は隠密性に長けていると聞くし、その長所を伸ばしながら他も鍛える。

 

 恐らく白筋肉の割合が多いだろう兎人族、緒方家により脈々と受け継がれてきたピンク筋肉を作り鍛える方法で、少しでもそれを増やして鍛えれば、熊人族とやらが幅を効かせているのもすぐに終焉の刻!

 

「ま、取り敢えず意識改革からだがな」

 

 あんな雑魚を相手に震えるメンタルでは話にならないし、気弱な種族だとも聞いているから下手すれば、魔物すら殺せない可能性もあるからだ。

 

 ユートはニヤリと口角を吊り上げ、ハウリア族強化計画を練り始めた。

 

 

.




 月曜日から残業強化週間に入る為、投稿がやり難くなります……はぁ。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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