ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 日曜に書けるだけ書いて何とか投稿に漕ぎ着けました。





第23話:ハウリアの一族に逆襲の機会を

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 修業、それは技芸や学問を修める行為。

 

 修業、それは力無き者が力を得る為の通過儀礼。

 

 修業、それは弱い心根を叩き直すハー○マン軍曹。

 

 ユートは精神修養から入って、肉体をこれでもかと苛める物理修業をさせた。

 

 戦いになって戦えませんとか、洒落にもならないと考えていたユートだけど、まさかの全員がそれだったのには恐れ入ったものだ。

 

 魔物を一匹、殺すだけにまるで罪深い自分達を叱咤しながら殺り、花や虫を踏み潰さない様に自分が痛い思いをしてでも避けた。

 

 某・宇宙刑事に名も無い花を踏み付けられない様になろうとか在るのだけど、本当に踏み付けられないと言われた日には、ユートも頭を抱えたくなった。

 

 恐るべしハウリア族。

 

 別に殺しに慣れろとか、外道に成れとか言う心算は更々無いが、殺るべき時に殺れないなど自身だけではなく仲間をも殺す愚行。

 

 このトータスは日本とは違い、生命が恐ろしい程に軽い世界なのだ。

 

 何しろ、ユーキから聞いた【ありふれた職業で世界最強】の世界というのは、神を名乗るエヒトルジュエがゲームの盤上と考えて、人間族も魔人族も亜人族も全てを盤上の駒扱いをしているくらいだから。

 

 勇者(笑)も所詮は偽神が力を与えたに過ぎない為、神の使徒の出来損ないにすら劣る程度のスペック。

 

 こんな世界で命を護るのならば、他者の命を軽んじるのも致し方無しである。

 

 帝国兵など嗤いながら、兎人族を捕らえ殺し犯す。

 

 ならば自分達が奴らを殺したとして、何が悪いと云うのだろうか……と。

 

 勿論、無意味に無辜なる者を殺害するのは悪だ。

 

 罰せられるべき悪徳だ。

 

 だが、嗤いながら悪徳を成す者を殺すのは悪か?

 

 悪ではあるだろう。

 

 人殺しはいけない事だと法律も存在するからだ。

 

 だけどユートは言う。

 

「亜人族はケモノ風情だ、ならば殺しても我々は決して罰せられない。寧ろ神の加護無きケモノ風情が死んで神に詫びろ……くらい、神殿騎士とかなら言うらしいぞ? なのに君らはそれを許容するのかな?」

 

 これもユーキ情報。

 

 原典では愛子先生の護衛だった神殿騎士デビッド、彼がシアを称してそう明言をしたらしい。

 

 尚、ハジメにぶっ飛ばされたとも聞いたが……

 

 ユートは精神修養によりハウリア族の精神強化を、かといって倫理を投げ捨てさせる心算も無い。

 

 善には善を悪には悪を、誠意には誠意を仇には仇を返す事を覚えさせる。

 

 肉体修業でピンク筋肉、タイプⅡα繊維を増やす事により、戦いをし易い肉体へと変えていくのも忘れずに行った。

 

 持久力の赤筋と瞬発力の白筋、その中間でどちらの特徴も併せ持つピンク筋。

 

 緒方家ではどちらも必須とし、このタイプⅡα繊維を鍛え作る方法を伝えてきたのである。

 

「ですぅ! ですぅ!」

 

 瞬発力は高い兎人族は、ピンク筋を作り易い。

 

 そもそもがピンク筋とは白筋に赤いミトコンドリアが増え、ピンク筋へと変化をしたモノだからだ。

 

 一年間は長い様で短い、そんな短期間でも鍛え上げれば強くなる。

 

 とはいえ、DBみたいな激的なパワーアップなど、普通は見込めない話だ。

 

「取り敢えず、ピンク筋が確りし始めたら重力修業も始めないとな」

 

 序でに香織と雫も修業を始めている。

 

 香織は武神流閃華裂光拳の修業、あの過剰回復呪文(マホイミ)と同じ効力を得られる秘拳なら、魔物とか亜人族とか魔人族の区別も無く破壊が可能だろうし、ちょっと試しに創ってみたエヒトルジュエの使徒たるリューンのコピー体へと、ユート自身が閃華裂光拳を放ったら、間違いなく破壊する事が出来た辺りを鑑みれば、やはりあれも生命体の括りだったらしいし。

 

 可成り凶悪な切札だ。

 

 雫は純粋に剣技を磨く、やはり天職が剣士であるのも然る事ながら、サソードで抜刀術は出来ないにせよ殆んど刀と遜色無い戦いが可能な上、アザンチウム製の刀をプレゼントされたのが嬉しかったらしい。

 

 正確には刃をトータス一硬いアザンチウム鉱石で、峰部分にシュタル鉱石という魔力次第で硬化するが、粘りを出せた物を使っての確りとした太刀だった。

 

 刀を頬にスリスリとする雫は、パル君なるハウリアの少年が涙目になったくらい怖かったらしい。

 

 抜刀術……八重樫流での居抜きが冴え渡るのだが、ユートの【緒方逸真流】を相手に磨きが掛かる。

 

 ユートの流派も戦国時代に初代が興して鍛え上げ、練りに練った超実戦用剣術であり、ユート自身も実戦で使ってきた技術だった。

 

 つまりは完全なる実戦を擬似的に体験が可能な為、訓練では得られない冴えを見せ始めたのだ。

 

 ステータスでは見えないナニかが確実に上がって、恐らくは純粋剣技に於いて云えば勇者(笑)君を最早、遥かに超越してしまっているのではなかろうか?

 

 まぁ、今の天之河光輝はレベルも1でステータス値は初期の一〇分の一程度、技能は言語理解のみでしかない無能勇者(笑)だが……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 その頃、件の天之河光輝はと云えば……

 

「あ、勇者さまぁ……」 

 

 漏れ出てくる天之河光輝の部屋からの甘い嬌声は、毎晩が取っ替え引っ替えで別の女のモノだった。

 

 あの日……帝国の使者と護衛にプラス皇帝がやって来た際、天之河光輝視点で自らに侍るべき香織と雫が悪党、緒方優斗にNTRをされてしまった事が判明。

 

 しかもボコボコにされ、死ぬかも知れないレベルで重傷を負わされてしまい、一応はエリキシル剤という薬をユートが置いていったから一命を取り留めたし、王宮の治癒師や辻 綾子の治癒魔法も有り、肉体的には復調もしたのだが……

 

 序でに云えば天之河光輝視点で恋人も同然だった筈の香織と雫を喪った事を、王宮に仕える女性達は決闘騒ぎを観ていた者の口から知っており、失意の勇者様を慰めるべく閨を供にしていて、勇者(笑)は目出度く童貞を卒業していた。

 

 勇者様で甘いマスクたるイケメン故に、王宮の一部を除くメイドや女性騎士や治癒師などが、天之河光輝からお情けを受けて悦んでいたのだと云う。

 

 尚、“一部”を除くというそれは雫を『お姉様』と慕うソウルシスターだ。

 

 ソウルシスターに男など不要、雫お義姉様さえ居れば良いのである。

 

 だから雫を連れ去ったという緒方優斗なんて悪党、いつか刺してやるなど危ない思考だったとか。

 

 本当に因みにだったりするのだが、近い将来でこのソウルシスターズはユートの策謀に嵌められ、全員が目出度く処女喪失をしてしまったと云う。

 

 雫に閨で泣き付かれて、ユートが一計を案じた結果の話である。

 

 

 閑話休題

 

 

 天之河光輝が色に溺れているのは、童貞を卒業して性の良さに覚醒したからでは決して無く、それも有るからだろうが……復調後に肉体が何故か重たく感じ、トータスに来たばかりの頃に感じた漲ぎる力を、まるで感じなくなったのを訝しんでステータスプレートを見たら、ステータスの値が初期値ですらない低さで、レベルも1に下がっていた上に、技能まで無くしてしまっていたからだ。

 

 これでは御飾り勇者。

 

 南雲ハジメの初期値にすら劣る能力値、技能無し、レベル1、オマケに聖剣は砕かれて喪われていたし、勇者用にと与えられていたアーティファクトの鎧なども修復不可能なくらい砕け散り、使える武具は一般的な鎧に一応はアーティファクトの剣くらい。

 

 しかもそれは雫が要らなくなったからと、王宮へと残したシャムシールっぽい半ばから折れた剣。

 

 それをお情けでハジメが繋ぎ合わせた物だ。

 

 無能と呼ばれていた筈の南雲ハジメ、それがどうやってかアーティファクトを修復する凄まじい錬成師。

 

 王宮の錬成師ですら及びも付かない腕前、その腕でつくり上げた仮面ライダーG3なる鎧と現代兵器。

 

 しかもどうやったのか、いつの間にか天之河光輝の元々のステータスを越える力を持っており、生身でも坂上龍太郎を打ち倒す。

 

 それに最近では頓に美しくなった恋人の恵里。

 

 彼女が基本的にハジメの部屋に入り浸り、食事などの世話を焼いているのは、王宮侍女なら誰もが知っている事実だと云う。

 

 普段の天之河光輝なら、『余り恵里に面倒を掛けるのはどうかと思うよ。彼女も君の世話ばかりしている訳にはいかないんだから』とか何とか言うのだけど、はっきり恋人宣言をしていては如何な御都合解釈主義の天之河光輝とはいえど、莫迦な発言が出来る筈も無かったのだと云う。

 

 というかだ、ハジメ君の恋人だと嬉しそうに言って回る恵里を見て、それで尚も莫迦を言える程の勇者ではない勇者(笑)だった。

 

 一応の訓練はするけど、実戦訓練としてオルクス大迷宮に入るのは、肉体的な不調を理由に延ばしている状況で、それが許されているのはユートが生きて連れ帰った畑山愛子先生が物申したから。

 

 作農師として働いているその代わりに、戦いに出たくない生徒を戦わせないと契約を交わしたのだ。

 

 それだけ作農師の働きは期待されており、ユートが連れて帰ったお陰もあって責められない状態とか。

 

 益々以てイラ付いていた天之河光輝、メイドを部屋に連れ込んでは性欲を吐き出していた。

 

 何度視てもステータスプレートの値は変わらずで、訓練で一応の数値上昇こそあるが、今までみたいな上がり方ではなかった。

 

 これではレベルが最高値の100になったとして、能力値はどれも1000に届かないだろう。

 

 だからまた色に溺れている訳だが、実はメイドにしろ女性騎士にしろ数回も来たら来なくなる。

 

 順番云々ではない。

 

 天之河光輝は気付いていないが、早い話が下手くそだからである。

 

 そもそもが童貞卒業してすぐだし、苛立ちから自分の性欲発散だけで腰を振るから女性側が満足しない。

 

 出したらすぐに寝てしまうから、まるっきり単なるオ○ホ扱いである。

 

 つまりはダッチでヤってろという話だった。

 

 下手くそが出すだけ生で出すから、それこそ下手をしたら産まない予定の子供を孕みかねない。

 

 だから来なくなる。

 

 そんな負のスパイラルに気付かない天之河光輝は、今日も苛立ち紛れに中出しをしていた。

 

 暫く経って……

 

 結果、誰もが天之河光輝の御相手をしなくなる。

 

「ちくしょう、俺なんて……どうせ俺なんて……」

 

 ユートがシア・ハウリアと出逢い、ハウリア族達を鍛え始めた頃は右手が恋人と言わんばかり。

 

 オカズは香織や雫の写真であり、今や二人の写真は天之河光輝のアレでドロドロに汚れていた。

 

「どうせ俺なんて……」

 

「クスクス……良い具合にやさぐれてますねぇ」

 

「……え?」

 

「いつもニコニコ、貴方の隣に這い寄る混沌です」

 

「は?」

 

 天之河光輝の隣にはいつの間にか、長い銀髪に碧眼のアホ毛美少女が。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「大分、板に付いてきたみたいだな……」

 

 ハウリア族の修業を始めてから約半年が経過して、現実世界に於いては六日間が経過をした頃、ハウリアのパル君(一〇歳)でさえも戦い方が良くなった。

 

 最初の三ヶ月間は肉体の改造として、ピンク筋を増やす事と基礎固めを中心にやってきて、四ヶ月目から応用編も始めている。

 

 勿論、基礎は疎かにしない方向性で鍛え抜いた。

 

 更に二ヶ月が経った今、カム・ハウリアを中心とした一部隊が完成しており、捕まえてきた奈落の魔物を見事に殺している。

 

 危機察知能力と隠密性、兎人族が他の亜人族よりも高いのがこの二つであり、やはり忍系統の能力上げが一番覚えが早い。

 

「これなら今現在、造っているあれを渡せるだけには成長もしそうだ」

 

 先ず、ユートが優先をしたのが盗賊(スカウト)としての職能を上げる事。

 

 ステータスプレートには意図してか、それとも造る際にどうしても不可能だったのかは判らないのだが、削られた機能が存在している事に気付いた。

 

 ステータスプレート……魔力を含む血を着ける事により本人を走査、これによって名前と年齢と天職に加えて、天職に則した技能と各種能力値を記載する。

 

 その際にはプレートが、魔力光を反映していた。

 

 ユートなら闇色であり、ハジメなら空色、ユエだと緋色に変化をしている。

 

 また、能力値と技能に関しては隠蔽をする機能が有るのも把握した。

 

 そんな中で削られた機能らしきを発見、実際に跡から再現をしてみたら職能というのが顕れたのだ。

 

 アーティファクト故に、恐らく再現し切れなかったという処かと思ったけど、職能の中に“魔力操作”が存在しており、ひょっとしたら意図的に削った可能性も考えられる。

 

 魔物しか覚えられない、故に魔力操作を持つというのは魔物と同義、それなら亜人族が魔力操作を持つに至るのは何故か?

 

 恐らく亜人族は神を名乗るエヒトルジュエに造られた人種、森人族や土人族はファンタジーの鉄板だし、エヒトルジュエがユーキの言う通り、元が人間だった成れの果てならエルフとかドワーフを識り、造ろうと考えてもおかしくない。

 

 他の亜人族も似た経緯で生まれた人種、だが森人族は本来なら魔法に長けている筈なのに、この世界では亜人族は全て魔法を扱えないとされていた。

 

 当然ながら森人族もだ。

 

 エヒトルジュエはつまる話が失敗した。

 

 亜人族の全てが神の加護無き魔法を扱えぬ人種だとされるのは、この自ら犯した失敗に森人族へ八つ当たりしたからではないか?

 

 まぁ、想像の範疇でしかないのだが……

 

 だけど極稀に魔物としての先祖返り、魔力操作持ちが誕生する事があった。

 

 それが恐らくシアだし、ユエでもあるのだろう。

 

 更に数千年も前の亜人族の一人、リューティリス・ハルツィナだったのかも知れない。

 

 おかしな話だと思った。

 

 亜人族が魔力も待たないならば、何故にリューティリス・ハルツィナやメイル・メルジーネは神代魔法を操れたのか?

 

 まぁ、ユーキからメイル・メルジーネとは海人族と吸血種族のハーフらしく、吸血種族は魔法を扱えるとユエからも聞いていた為、その所為で扱えた可能性は高いが、リューティリス・ハルツィナは純森人族。

 

 この世界基準で魔力は持たない筈だ。

 

 その答えが先祖返りではあるが、ステータスプレートに削られた機能が有るとしたらそこら辺に関わりがありそうだった。

 

 結果、見付けた機能というのが“職能”であって、これは“有効化されてない技能”の事だと判明する。

 

 魔物を喰らうと技能を獲るのも、その魔物が持った技能が職能から有効化されるのが原因だろう。

 

 しかもポイント制とか、ファンタジー心を擽る。

 

 というか、ポイント制だから有効化しないと技能に追加されず、天職持ちだと幾つか天職に則した技能が自動的に有効化されるのだと理解した。

 

 亜人族は魔力操作自体が無い者が多く、造られたという存在故にかリソースを特殊な部位に奪われている感じである。

 

 リソースを奪われ切れなかったシアやリューティリスなどが、稀に魔力を持って産まれてくるらしい。

 

 ちょっと試したい事とか出来たけど、こればかりはユエやシアは元より香織や雫にも頼めなかった。

 

 頼めるのはハウリア族、それも女性だけである。

 

「ミナ・ハウリア」

 

「はい?」

 

「僕に抱かれて魔法少女になってみないか?」

 

「はぁ?」

 

 怪訝な表情となるミナ・ハウリア、然しその意味を理解したのか真っ赤な顔になって逃げ出した。

 

 好感度も稼がずにでは、こんなもんだろう。

 

「にしても、あの白いケダモノみたいな言い方は無かったかな」

 

 某・QB的な言い回しは流石に有り得なかったと、ちょっとだけ反省と後悔をしていたユートだと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 その後、ミナ・ハウリアとは多少のギクシャクとかあったが、特にそれ以上の事も無い侭に修業終了。

 

 一年間をシアも修業し、ユートからアイゼンⅡというデバイスを貰う。

 

 種類はアームドデバイスであり、ヴィータが使っている【グラーフアイゼン】をコピーした物だ。

 

 飽く迄も純粋なコピー品でしかないが、一応は追加機能も付けておいた。

 

「諸君、ハウリア族の戦士諸君! 君らは今や亜人族で最強を誇る熊人族にすら後れは取らない!」

 

『『『『おおっ!』』』』

 

 どよめくハウリア族。

 

「偵察の結果だが、諸君らの家族を殺害し奴隷化した帝国兵は、未だに諸君らを捜しているらしい!」

 

 今度はざわつく。

 

「諸君らを奴隷とする為、諸君らを愛玩動物か性欲を吐き出す道具としか視ていないが故の愚行! ならば諸君らのすべきな何か?」

 

「戦争であります!」

 

「慈悲はありません!」

 

「目にモノを!」

 

「狙い撃つまで!」

 

 口々に叫ぶ男達。

 

 女性達も帝国兵に思う処はあるのか、やはり嫌悪感を丸出しにしていた。

 

 何だか、ミナ・ハウリアだけは潤んだ瞳でユートを見ていたりするが……

 

「諸君らの気持ちは充分に理解した。良かろう、ならば戦争だ!」

 

『『『『『おおおおおおおおおおっ!』』』』』

 

 男女問わず喝采。

 

「卒業の証を授与するから取りに来い!」

 

 ユートがカム・ハウリアを始めに、ハウリア族へと渡すのは黒いプレート。

 

 刀みたいな意匠の飾り、松毬みたいな木の実の意匠が中心に有り、刀みたいな飾りを動かせば切れる感じに造られていた。

 

「量産型仮面ライダー黒影トルーパー。マツボックリロックシードは備え付け、装着したら専用化されるから気を付けろ」

 

 軽く説明されたカム。

 

「変身!」

 

《ICHIGEKI! IN THE SHADOW!》

 

 マツボックリアームズとかの掛け声は無く、その後の科白のみが電子音声にて響き渡る。

 

 仮面ライダー黒影は足軽や忍者がモチーフであり、危機察知能力や隠密性に長けるハウリアに丁度良い。

 

 能力自体は低めだけど、ハウリア族は全員が闘氣を操れる様にした為、肉体的には正しく熊人族にさえも拮抗以上の力を出せる。

 

 槍型の影松以外に本人の要望で銃や剣なども与え、完全に戦闘員と化してしまったハウリア族。

 

「あ、あの……」

 

「私のは?」

 

 シアとミナがソッと挙手をしながら訊く。

 

 シアは兎も角、ミナは抱かれるのから逃げたから、そんな風に解釈をして泣きそうである。

 

「シアはこれを」

 

「ブレスレットですか?」

 

「それからミナは、戸惑わせたから詫び代わりだ」

 

「え?」

 

 蒼と黒を主体にしている何かのグリップだった。

 

「シアはライダーブレス、仮面ライダーザビーに変身するツールだ。ミナの方はドレイクグリップ、仮面ライダードレイクに変身するツールとなる」

 

「仮面ライダー奴隷苦? 奴隷になって苦しめという事ですか!?」

 

「どんな勘違いをした! ドレイクはドラゴンフライといって、蜻蛉という地球の昆虫の事だよ!」

 

「あ、う……」

 

 恥ずかしさから真っ赤になるミナ。

 

「済まなかった」

 

「うぇ?」

 

「ちょっとした実験をしたくてな、それは魔力持ちには不可能だったんだ」

 

「魔力持ちには不可能」

 

 シアやユエを見る。

 

「そして性質上、僕がヤれるのは女の子のみだから。候補は数人ばかり居たが、偶然に目に付いた君を選んだんだ」

 

「その後、ラナやセナには実験? とかの声を掛けなかったんですか?」

 

「ヤる事が事だったから、君に断られたから他を当たるのは憚られた」

 

「そ、そうですか……」

 

「だから詫びの印。実験も別に付き合う必要は無い。やらなくても困る内容でも無くてな」

 

「どんな実験ですか?」

 

「魔力を持たない者に魔力を持たせる実験。上手くいく保証も無かったがね」

 

「……そうですか。これは受けとりますね」

 

「ああ、重ねて済まなかったなミナ」

 

「いえ……」

 

 ちょっとしたハプニングはあったが、遂にハウリア魔改造計画は終わった。

 

「では、諸君! ちょっと戦争してこようか」

 

『『『『応っ!』』』』

 

 ちょっとコンビニ行って来ようか……みたいなノリで戦いに向かうハウリア。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユートの一行は階段に差し掛かり、先頭をユートとして順調に登っていく。

 

 というか、ハウリア族はシアとミナしか居ない。

 

 後は元々からパーティのユエと雫と香織のみ。

 

 そして遂には階段を上り切って、ユート達は無事にライセン大峡谷からの脱出を果たしていた。

 

 そんな登った崖の先に、帝国兵が屯ろっている。

 

「おいおい、マジかよ? 生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方無く残ってただけなんだがな、こいつぁ、いい土産が出来そうじゃないかよ」

 

 シアとミナを見ながら、帝国兵Aがニヤニヤしつつ言い放つ。

 

 三〇人は居る帝国兵に、周りは大型の馬車数台。

 

 野営の跡が残っていて、全員がカーキ色の軍服っぽい衣服を纏って、剣や槍に盾を携えてユート達を見るなり驚愕の表情を見せる。

 

 とはいえ、そんな表情も直ぐ喜色へと変えると品定めをする様に、シアとミナの二人を見ている。

 

「小隊長、白髪の兎人も居ますよ! 確か隊長が欲しがってましたよね?」

 

「へぇ、ツイてる。あれは絶対に殺すなよ?」

 

「小隊長様〜。もう一人、女が居ますし、ちょっとくらい味見しても良いっすよねぇ?」

 

「仕方がねーな。俺の後なら好きにしろや」

 

「おっひょ〜、さっすがは小隊長様だぜ! 話が判る人だよな!」

 

 好き勝手を言う連中に、二人は嫌悪感丸出し。

 

 当然だがユエ達もだ。

 

「それに、何だか綺麗処が三人も居るじゃねーか? コイツらも戴きだぜ」

 

 小隊長とやらがユエと雫と香織を、順番に睨め付けながら言った。

 

 帝国兵達が好き勝手に騒いでいると、ユエ達をニヤニヤしながら視てた小隊長と呼ばれた男が、ユートの存在に気が付いたらしい。

 

「あん? お前は誰だ? どうやら兎人族じゃあ無さそうだがよ?」

 

「ああ、どちらかと云えば人間族だろうな」

 

「はぁ〜? なんで人間が兎人族と一緒に居るんだ? しかも峡谷から来たとか……若しかして奴隷商か? まぁ、別にどうでもいい事か。そいつら皆、国で引き取るから置いていけよ」

 

 断る筈が無いと断定したらしく、ユートに対し命令をする小隊長殿(笑)。

 

 ユートがそんな言葉に従う筈も無く、寧ろ戦いに来たのだから答えは……

 

「御断りだ」

 

「……今、何つったよ?」

 

「断ると言ったんだがね、お前は難聴か何かなの? シアは僕のモノ、ミナだって貴様如きには勿体無い。ユエも雫も香織も一人として渡す気なぞ無くってな。未だ死にたくないなら帝国に帰るんだな」

 

 返って来た不遜な言い方に小隊長(笑)は激怒。

 

「おい小僧、口の利き方には気を付けろよ。俺達が誰か解らないくらい頭が悪いのか?」

 

「だいたい判った。貴様らに頭が悪いとか、誰も言われたくないんじゃないかってのも……な」

 

 ピクピクと痙攣している額に、怒気を抑えながらも小隊長(笑)は続ける。

 

「成程、此方もよぉっ〜く判ったよ。てめぇが単なる世間知らず糞餓鬼だって事がなぁ。それならちょいとばかり世の中の厳しさってのを教えてやる。そっちの嬢ちゃんらはえらく別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯してから奴隷商に売っ払ってやるよ!」

 

 否、抑えてない。

 

「ならば戦争だ!」

 

 パチンと指を鳴らすと、シアとミナが叫んだ。

 

「ザビーゼクター!」

 

「ドレイクゼクター!」

 

 ザビーゼクターがジョウントを通り、シアの手の中に納まるとそれをライダーブレスに合着。

 

「変身!」

 

《HENSHIN!》

 

 左手首から姿が変化し、仮面ライダーザビー・マスクドフォームに変身する。

 

 一方のミナの握るドレイクグリップに、やはりジョウントを通って顕れ出てきたドレイクゼクターが勝手に合着される。

 

「変身!」

 

《HENSHIN!》

 

 グリップを持った右手から変化し、仮面ライダードレイク・マスクドフォームに変身をしたミナ。

 

「はぁ?」

 

 意味が解らず小隊長(笑)が声を出すが、そんな隙を見逃す二人ではない。

 

「アイゼンですぅ!」

 

 ガチャンガチャンッ! 巨大化してシアにピッタリなサイズになるハンマー、それがアイゼンⅡ。

 

「死んで!」

 

 ドパン!

 

「ギャッ!?」

 

 ミナのヘッドショット。

 

 小隊長(笑)の近場に居た帝国兵Aが、頭を吹き飛ばされて絶命した。

 

「なっ、てめえ!」

 

『『『『『『ウギャァァァァァァッ!?』』』』』』

 

「な、何だ!?」

 

 行き成り悲鳴が聴こえ、小隊長(笑)が振り向いたら其処には……

 

「は?」

 

 黒い鎧兜の異形が帝国兵を影松で刺している姿が、帝国兵連中は呆気なく全滅をしていた。

 

「ハウリア族による逆襲劇は愉しめたか?」

 

「な、んだと……」

 

 あの異形がハウリア族、何の冗談かと思ったのも束の間、すぐにも先程は二人のハウリアが姿を変えたのだと思い出す。

 

「御代は貴様の命だ」

 

「嫌だ、死にたくない! 俺はまだ死にたくねーよ! 待っ!」

 

「待たないですぅ! 轟天モード!」

 

 ギガントフォルムに相当するモードに形態変化し、それを冗談みたいに振り回すハウリアの異形。

 

「あ、悪魔め……」

 

 グシャッ! 敢えなく、地面の染みに変わってしまう小隊長(笑)の最後の科白には、ユートも思わず吹き出してしまったものだ。

 

 それらしきを原典で言ったのは、グラーフアイゼンの使い手だったから。

 

「皮肉が利いてるね」

 

 【フェアベルゲン】へと乗り込む前に、景気付けの勝利を得たハウリア族。

 

 ユート一行はリューティリス・ハルツィナが遺した【ハルツィナ大迷宮】を目指して一路、【フェアベルゲン】が存在している筈のハルツィナ大樹海へと向かうのだった。

 

 

.




 ちょっと意味不明な独自設定、ポイント性で技能を増やせるけど、機能は削られていました……と。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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