尚、某・魔軍司令サマはユートが念入りにボコった過去があります。
ハドラーじゃない方ね。
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ユートは再び【フェアベルゲン】の長老衆と会合を行うが、この場にはカムとシアの父娘が追加される。
「無駄な時間を過ごした。もう少し迅速にいきたいものだね」
ユートの言葉に苦々しい表情となるのは、虎人族の長老ゼルと何とか回復した熊人族の長老ジン、土人族の長老グゼの三人。
ゼルは大口を叩き戦争の切っ掛けを作った本人、ジンはユートに殴り掛かって返り討ちに、グゼはジンと仲が良かったからユートに反感を持っていた。
翼人族のマオと狐人族のルアの二人は基本的に悪い印象は無く、掟に従う事をハッキリ言い切ってたし、決して人間に友好的ではないにせよ、口伝にある者なら問題無しであるとしていたからだ。
「取り敢えず戦争してはみたが、単なる虐殺にしかならなかったみたいだな」
「「うぐっ!」」
ぐうの音しか出ないゼルとジン、グゼもそっぽを向くしか無いようだ。
「優斗殿には感謝をする」
「戦を起こしたのに感謝をされるとはね」
「誰一人殺さんでくれた、それだけでも感謝だよ」
虐殺と言ったものだが、実際には誰も死んでない。
本来、闘氣を操れる様になったハウリア族ならば、如何に熊人族や虎人族といえども、後れを取らない処か楽に斃せる。
わざわざ仮面ライダーに変身する必要性は無い。
それでもハウリア族達を変身させた理由が、ユートの造った仮面ライダーには非殺傷設定が可能だからに他ならなかった。
アルフレリックとしてはそれを感謝する。
非殺傷設定は殺す必要性が無い場合、面倒な手加減をしなくて済むのが魅力的な設定だから付けたのだ。
手加減して反撃を喰らうとか、本末転倒も極まれりといえるのだから。
「然しお前さんはそもそも何がしたいのかね?」
「初めから言っている通りだけど? リューティリス・ハルツィナが管理者たる【ハルツィナ大迷宮】へと行く事。ハウリア族は道案内を頼む予定だったから、当然ながら虎が莫迦を言ったのを聞き逃しはしない。とはいえ、ハウリア族って既に【フェアベルゲン】で最強だから、戦えば勝てると判っていたけどね」
最強種たる熊人族のジンが苦い表情を歪める。
「言っておくが、仮面ライダー黒影トルーパーに成ったから強い訳じゃないぞ。ハウリア族は素の力で以て最強なんだ。仮面ライダーは手加減というか殺さない為に使わせたからな」
言い訳すらさせない。
確かに黒影トルーパーになれば、ステータス的には上がるのも確かな話。
+3000ともなれば、本来の勇者(笑)が最大限まで鍛えた場合の、極単純に二倍の能力が変身で得られるのだから。
尤も、全てが+3000ではないのだが……
だけど【フェアベルゲン】の絶滅タイムが望みではないユートは、敢えて変身をする様に指示していた。
オルクス大迷宮を出る前に万が一、戦争になったら変身し非殺傷設定を使って懲らしめる様に……と。
これが効を奏したのだ。
皆殺しにする気は更々無かったし、ならば中途半端に殺害して恨みを買っても仕方がない。
アルフレリック、ユートの一応は
ユートはエルフとの付き合いも割と長く、古くからはハルケギニア時代から、ユートの死の原因となった那由多椎名の転生した姿、シーナや鉄血団結党からの面々、ルクシャナやアリィーのコンビ、ティファニア・ウェストウッドとその母といったエルフと交流をしてきたし、某・島戦記的なハイエルフやハーフエルフやエルフとの交流。
他にも色々とエルフとは仲良くしてきた。
森人族も毛色こそ異なるにせよ、エルフはエルフであるから仲良くしたいのは事実だった。
無理なら仕方がないが、努力もしないで無理と言いたくない。
此処で虐殺したら関係の修復は不可能となる為に、だからこそ戦争となった際にも生かした。
特定の誰かではなくて、森人族への配慮として。
森人族が吸血族や竜人族みたいな、魔法が扱えている種族なら亜人族ではなく歴としたエルフとして独立していたろうが……
「な、何故だ? ハウリア族というより兎人族は基本的に貧弱で気弱な種族だ。種の総体として!」
ジンが解せないとばかりに口を開く。
「貧弱貧弱ゥな熊人族から言われても……な」
「くっ! 確かに貴様とは戦いにすらならなかった。俺が貧弱だと言われても、それは仕方がないだろう。だがな、兎人族のそれは種としてのものだぞ!」
「カムの意見は?」
「鍛えてますから」
シュッと何だか敬礼に近いポーズで宣うカムだが、言わずと知れた有名な響鬼のアレである。
「鍛えてどうにかなるか! 忌み子……否、シア・ハウリアなら魔力持ちだから有り得るが、他のハウリアはそうではあるまい!?」
「教える気は無い。それを知ってそもそもどうする? 秘密を知ればハウリアにマウントを取れるとか?」
「そういう心算は無い」
「意外だな」
「随分と俺は低評価だな」
「行き成り殴り掛かって来た奴の評価としては妥当、そう思っているんだが……熊人族の長老は違うのか? 意味不明な言いがかりをされて、挙げ句が殺す勢いで殴って来た相手を高評価にする事が出来るのか?」
「……無理だな」
言われてみれば確かに、ジンがユートと同じ立場であれば、相手を低く評価していたであろう。
「兎に角、兎人族を鍛えたのは【フェアベルゲン】が頼れないからには自分達で生きる必要があるからな、シアとの契約に基づきカム達を強くした」
「契約とは?」
「家族を助けて下さいだ。対価に私を好きにしてくれて構いません……とね」
「つまり、シア・ハウリアの今の身分は?」
「僕の奴隷。首のチョーカーはその証だな」
忌み子とはいえ、亜人族にとって奴隷とは忌避感が強いのか、長老衆の表情が固いものへと変わる。
「奴隷としておかないと、迂闊に人間族の街に立ち寄れないだろう」
「む? 人間族の街?」
アルフレリックが疑問の声を上げた。
「シアはハウリア族からも出て、僕らに付いて来ると明言をしている。奴隷にしたのは僕のモノだと牽制をする為でもある」
勿論、シア自身をユートが好きに出来るのもあったからこそ。
ユートが『落ち着いたら処女を貰うから』と囁いてやると、顔を紅くしながら期待の眼差しでユートを見遣り小さく頷いている。
「仮面ライダーとやらは、アレはアーティファクトではないのか?」
「違う。この世界の場合はそう呼ぶのかも知れんが、アレは僕が造った物だ」
「アレで強くなった訳では無いと言ったが……」
「正確には強くはなるな。熊人族の筋力でさえ三桁、それが確実に四桁なら明らかに強い。但し、ハウリアは既に普通に四桁の能力を持っている
『『『っ!?』』』
長老衆は驚愕した。
「現在の【フェアベルゲン】長老衆は最優六種族から輩出されているな?」
「うむ。森人族、虎人族、熊人族、狐人族、土人族、翼人族の六種族からだな」
勿論、亜人族は他に沢山の種族が存在している。
犬人族や狼人族や猫人族といった種族で、森人族や土人族を除けば元々が彼らは獣人族とされていた。
いつから亜人族と呼ばれ始めたか定かではないが、少なくとも組織【解放者】が存在した数千年前には、確かに獣人族とされていたらしいと、ユートはユーキから聞いている。
「はっきり言って熊人族より強いハウリアってのは、どれだけ優秀なんだろうかと思ってね」
「ハウリア族を長老に据えろと言いたいのか?」
「否、違う。ちょっとした嫌味だから気にするな」
それは無理だろう。
「ハウリア族は追放されたからね、独自に生きる為の力を得たからにはそうやって生きていくさ」
「成程、【フェアベルゲン】には最早頼らぬし……頼られる心算もないか」
「そういう事だね」
アルフレリックは的確に意味を察していた。
「アルフレリック、それはどういう事だ? そもそも我々がハウリアを頼る?」
「今後、【フェアベルゲン】に不利益があるやも知れんが、その際にハウリア族を頼るなという意味だよ」
アルフレリックは溜息を吐き、脳味噌までもが筋肉なジンに説明をする。
「不利益とは何だ?」
「さてな、不利益は不利益としか言えんよ。起きるかどうかも判らんしな」
「どういう意味だ?」
本気で考えられぬ脳筋、坂上龍太郎を思い出す。
「例えば、帝国で奴隷が足りないと補充感覚に樹海を侵略するかもな」
「莫迦な、樹海の霧に迷うだけではないか!」
「仮に樹海が邪魔だと言って火を掛けたら?」
「なっ!?」
亜人族にとっては此処、【ハルツィナ樹海】は故郷であり神聖な場所だけど、人間族からすれば邪魔なだけのものであり、火を掛けて焼き尽くすくらいはしてもおかしくない。
「そんな時にハウリア族をお前らが頼ったとしても、頼られる心算なんかは無いって事だよ」
「助けない……と?」
「何を驚愕しているんだ。ハウリア族は【フェアベルゲン】と袂を分かったし、理由が追放であるからには助ける訳が無いだろうに」
同族意識は無い。
【フェアベルゲン】からの追放、モナの忘れ形見のシアを抹殺しようとしていた事、助ける理由など全く有り得なかった。
これはカムだけの意見ではなく、ハウリア族の全員による共通した意見。
元よりハウリア族は一族を以て家族とする。
だからこそ、シアが理由で【フェアベルゲン】追放の憂き目に遭いながらも、誰もシアを恨んだりしていないのだから。
亜人族だから助けるとは誰も思えない。
「ドライじゃな」
「戦いなんてそんなもんだろうに」
「自分が殺される立場でも同じ事が言えるのかな?」
「自分が……ならね」
殺すというなら殺される覚悟を持たねばならぬ。
人を呪わば穴二つ掘れ、即ち相手の墓穴と自分自身の墓穴を。
誰かを害するなら自らも害されて当然なのだから。
「ハァ、予想はしていた。だからこの子を遣わせる。入って来なさい」
「はい、お祖父様」
アルフレリックに促されて入室したのは、見た目が明らかに森人族の少女で、額に装飾品を着けた可憐な容姿、シアと同い年か下手したら年下かも知れない。
金髪に翡翠色の瞳の少女が頭を下げる。
「アルテナ・ハイピストと申します」
「ハイピスト? お祖父様とか呼んでいた辺りから、アルフレリックの孫か?」
「うむ、アルテナは間違いなく私の孫娘だ」
「……で、どうしろと?」
「連れて行って貰えぬか」
「……亜人族が人間の街に容易く入れないのは、理解をしている筈なんだが」
「対外的にも実質的にも、お前さんの奴隷としても構わぬよ。シア・ハウリアもそういう扱いであろう?」
「そうだがね。正気とは思えないな。仮にも人間族、しかもハウリアのシアには首輪を着けて、奴隷扱いをしてるのに同じ奴隷扱いで孫娘を差し出すとか……」
「お前さんとの縁を少しでも維持したい。それも佳き縁をな。その為ならば孫娘をも差し出そう」
長老としてはある意味、まともな思考である。
「とはいえな、シアは戦闘力も高くなっているから連れて行けるが、アルテナは何か武術でもしてるか?」
「いえ、特には」
「どうやって付いて来る気なんだ? 足手纏いを連れ歩く趣味は無いぞ」
ハウリア族はカムを筆頭に全員、強化されているから大した問題も無い。
ミナ・ハウリア、二二歳の乙女は付いて来たがっていたのが意外だが……
尚、ユートが作製をしたステータスプレートによるシアの能力値。
シア・ハウリア
16歳 女
レベル:40
天職:占術師
筋力:114
体力:143
耐性:120
敏捷:200
魔力:3600
魔耐:3700
技能:未来視[+自動発動][+仮定未来] 魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率上昇Ⅲ][+集中強化] 闘氣解放[+強化][+放出]
咸卦法は未だ覚えていない為に、闘氣と魔力の同時運用とかは出来ない。
念能力的には強化系で、それに特化されていたシアだったが、放出系にも少しだけ適性があったらしく、『ハウリア波』を覚えた。
早い話がかめはめ波。
魔力も闘氣も同じだけの強化値な為、今現在は魔力による強化が主である。
因みにまだ抱いてない、それ故にパワーアップ前だと云えよう。
「アルテナ自身は?」
「私はお祖父様の御意向に従います」
まぁ、祖父と孫であると同時に族長にして長老で、森人族のトップが下したのだから、命令には従うしかないのだろう。
哀しいかな縦社会。
そもそもがシアみたいなのが異例、元々シアは一族からも距離を置く気だったからユートの奴隷扱いで、ナニをされても命さえ保証されればと、ネガティブに考えていたくらいだから。
強くなった今もユートの傍にと考えてるが、それは純粋な好意からである。
他二人は人間族だけど、ユエは亡んだ吸血族の女王であり、括りとして見れば間違いなく人間族の亜種、亜人族と変わらないのだ。
そんな吸血姫なユエを、ユートは香織や雫と少なくとも同程度には可愛がり、意外と性欲が旺盛な彼女のそれを受け止めていた。
とはいえ、ユート自身の性欲がユエを遥かに凌ぐ程に強いから、寧ろユエの方が真っ先にダウンをして、ぐったりとしたユエで性欲を鎮めているけど。
偶々、行為を視てしまったシアはガタガタ震えてしまうくらいで、だけど女の部分は怖いくらい反応しており、股間は温かく潤されていたのに気付き、その日は初めての自慰に耽った。
オカズとしたのはユートの有り得ないレベルに反り返る分身、それに貫かれる自分自身をあの時のユエにコラ絵したモノだ。
正直、最中のユエは同性のシアから視てもドキリとするくらい淫靡で美しく、見た目の幼さがまるっきりマイナスにならない処か、そのギャップが興奮させるのでは? と思えた。
そしてユートは見た目は整ってこそいるが普通で、中性的な顔立ちをしているのが余計に目立たなくしていたが、以前に触らせて貰った腕の筋肉は細身なだけで発達はしていたし、硬さとしなやかさが両立をしていて触り心地は程に良く、闇にも思える黒い瞳は引き込まれそうになる。
そして一番が同族意識。
シアのステータスプレートには確り、【魔力操作】という技能が有った。
魔力を持たない亜人族は疎か、人間族や魔力に長ける魔人族でさえ持ち得ない筈の技能である。
ユートのステータスプレートは、バグっていたのか碌な情報が無かったけど、本人が普通に魔力操作していたし、ユエのステータスプレートの方には間違いなく【魔力操作】と記載されていたのだ。
つまり二人はシアにとって数少ない同種、家族であるハウリア族すら立ち入れない存在。
嬉しかった。
世界に唯一の『化け物』に生まれ、モナに泣き付いていた自分だったのに。
『仲間』が居たから。
兎人族は群れを成して個を示す弱者の集団。
独りには耐えられない。
其処に異性……子を授かれる相手が同種だと判り、只でさえドキドキと心音が高鳴るのに、色々と大切にされてシアの心はユートに惹かれ続けていた。
それにユエだけでなく、香織と雫も抱いているなら自分だって入れるのでは? と思ってしまう。
ユートの奴隷としての証となる翠のチョーカーは、シアを縛り隷属させる楔ではなく、ユートがいずれはシアを自分のモノにするという婚約“首”輪に思え、ソッとチョーカーを撫でて想いを馳せていた。
そしてシアは知らないのだが時折、そうして幸せそうな表情をしていたのを、アルテナは遠目にではあるものの見ており、亜人族のシアをあんな顔にさせたという人間族に興味を覚え、アルフレリックが近似での血縁の女から、ユートの下へ行く者を捜していると聞いて真っ先に挙手をする。
名目は監視。
実質的には奴隷となり、シアに近い立場でユートと縁を繋ぐ為で、当然ながらソコには性行為をするのも含まれるからか、親族達は余り乗り気ではなかったのもあったし、上手く立ち回ればシアが持つアレみたいなのを貰える可能性だってあるから、アルテナとしては願ったり叶ったり。
人間族という事で恐怖は確かにあるし、熊人族でも最強戦力たる長老のジンを軽く再起不能にした力は、脅威でしかないアルテナではあるが、好奇心が勝ったというのが一番であろう。
雌として強い雄に惹かれるのも、生物の本能として亜人族故に高いのかも知れないし、出来ればシアとも仲良くしたいと考えてた。
それ故の立候補。
その証拠に白い肌は頬が朱に色付いてて、ユートを見る翡翠色の瞳にも恐怖と好奇心が同居していた。
「アルテナ・ハイピスト」
「は、はい!?」
直接、声を掛けられビクリと肩を震わせながらも、気丈に返事をする。
「運動能力は高いか?」
「い、いえ。通り一般程度には動けますが決して高い訳ではありません」
「だろうな。魔法も使えないエルフで運動能力も並、下手をしたらシアより低いという事か」
魔力が使えない以上は、シアみたいな魔力を身体の能力上昇に使えず、氣など扱えないからにはこれだって不可能という事。
「森人族も亜人族ですし、魔力が扱えないのは普通の事ですが?」
「僕の識るエルフ、君らと……森人族と同種の存在は精霊魔法を操る
「……は?」
「それも相当に強力な」
「そんな、まさか!?」
「思い出すのはハドラー、魔軍司令だったが失敗続きで後が無くなり、ザボエラから超魔生物に改造されたアイツだよな」
「……?」
「様々な魔物と合成され、超魔生物化されながら魔力を喪ったら意味が無いと、自身の魔族としての肉体を捨てて、超魔生物そのものと成り果てた。君ら亜人族とは
ざわりと騒然となる。
シアを魔物と断じたが故に殺処分が当然と考えていた亜人族が、実は魔物との合成により魔力を喪失した人間だと言われたのだ。
これは侮辱でしかない。
「貴様!」
未だにユートを許せないグゼが喰って掛かる。
「“本物”のエルフは精霊と高い親和性を持つのに、森人族は魔力自体を持っていない。もう一つ……僕はエルフから何故か好かれ易いみたいでね、ハーフですらまるでニコポしたかの様だったが、君らにはそんな兆候が一切見られない辺りエルフなのは見た目だけ、偽物としか思えないんだ」
「……世界が違うからとは思えませんか?」
ユートが異世界人なのは既に知っており、異世界のエルフだからでは? ともアルテナは考えた。
「確かに世界が違えば理も変わるが、僕の識るエルフは皆が同じ世界のエルフな訳じゃない。ハルケギニアのエルフ、アレクラストのエルフ、ドラクエ世界でのエルフ、ゲート世界に生きたエルフ、デイドリーマー世界のエルフ。色々な世界のエルフが全て同じ反応を示す中、君らだけは違うとなれば……どちらが異質と考えるか解るだろうに? 魔力持ちのシアを異質とした君ら亜人族なら……な」
『『『『っ!』』』』
ぐうの音も出ないくらい正論であったと云う。
グゼやゼルでさえ。
「だ、だけど……それならそんな技術が有ったなんて何故、異世界人の貴方に言えるんですか?」
「“
ビクリと肩を震わせたのは雫と香織。
「神代魔法には生命体へと干渉する【変成魔法】というのが有って、それを使い熟せれば既存の生物を強化したり、果ては合成したりも可能みたいなんだよね。獲られる場所は【シュネー大迷宮】、魔人族の領地に存在しているらしいな」
「シュネー?」
「リューティリス・ハルツィナの盟友が造った大迷宮らしいぞ。数千年前に神より反逆者とされた……な」
「っ! ハルツィナ樹海の始祖……リューティリス・ハルツィナの盟友?」
「組織【解放者】の一員、そして七つの大迷宮を造った七人は、全員が神代魔法の繰り手だった。リューティリス・ハルツィナの場合は【昇華魔法】らしいな。ならばリューティリスも持っていた筈、シアと同じく魔力操作の技能を」
「な、何故?」
「この世界の魔法は古くから滅茶苦茶だ。何しろ、小さな火種を熾こすだけで膨大な魔法術式の魔法陣を必要とし、更には厨二臭い呪文詠唱まで必須だとか、それなら神代魔法一つ起動するのに、必要な魔法陣や呪文はどれだけ膨大な量になるんだろうな?」
「そ、それは……」
「これを可能とする技能が魔力操作だ。魔法陣も詠唱も要らないからタメだけで放てるんだもんな」
正論だ。
神代魔法は強力過ぎるにせよ、この世界の人間が使うには不適切過ぎた。
膨大な魔法陣に長過ぎる呪文詠唱、火種だけで嫌になるくらいなのに神代魔法ともなれば、それは果たして一生に一回も使えれば良いのではなかろうか?
「最近は、魔人族が極めて強力な魔物を操る様になってしまって、人間族は滅亡の危機に瀕していたとか。だからエヒトが異世界から勇者(笑)を召喚したんだと聞いたが、【シュネー大迷宮】の攻略者が魔物を変成したんだろうな」
「っ! それって……」
アルテナは驚愕する。
「亜人族も対岸の火事とか言ってられんぞ。魔人族が人間族を滅亡させた次は、間違いなく亜人族が標的になるだろうからな。まあ、それは逆でも同じだが」
「ぐっ!」
ゼルが呻く。
エヒトから見放されたとされる亜人族、ならどちらかが勝利を納めたら次なる標的は? 当然、亜人族に向かうに決まっていた。
エヒトルジュエの目的は愉悦で、世界全てを自らの
平和は退屈でしかない。
「なればこそ、アルテナをお前さんに預けるのだよ。お前さんは身内に優しいと聞くしな」
現にハウリア族は身内、シアを介して随分と味方をしているのだし、アルフレリックも其処を期待する。
一度は正しく戦争状態になったが、ユートは完全にフラットだとアルフレリックは推測していた。
「だがアルフレリックよ、コイツが人間族と戦うか? 同族だぞ」
「……無意味な戦いはせんだろうが、【フェアベルゲン】に攻め込む者とは戦ってくれよう」
「そうだな。契約するならそれは遵守しよう。若しも僕が契約を破るとしたら、契約者が裏切った場合のみだからな」
「では、我らは【フェアベルゲン】代表として我が孫たるアルテナを預けよう。身分はシア・ハウリアと同じを望む」
「必要な時に手は貸そう。そちらが裏切らない限り、契約は有効とする。但し、人間族の領土に攻め込むとかは許さん。飽く迄も亜人族が虐げられた場合だ」
「それで構わぬよ」
此処に契約は成された。
「然しそうなるとアルテナは少し鍛えないとな」
「……うっ!」
現状では役立たずを通り越して足手纏いだ。
「仕方ない。プロトタイプを造っていたゼロワンドライバーと違い、本当に造って間もないんだがな」
ユートが取り出したのは青を主体とした銃、そして真っ黒なバックルのベルトである。
「使い熟せる様に訓練して貰うからな」
それを渡されたアルテナはあたふたしてしまう。
「こ、これは……?」
「エイムズ・ショットライザー。ゼロワンドライバーのお仲間って処だ。まぁ、アルテナはゼロワンドライバーを見た事が無いか」
ポイッと何か投げたのをアルテナが受け取った。
更に投げ渡されたのは、半透明な黒に橙色をしているガジェット。
「ラッシングチーター・プログライズキー。仮面ライダーバルキリーに変身が出来るシステムだよ」
「っ!」
まさか行き成り渡されるとは思いも寄らず、吃驚しながらソッと銃身を撫でて見つめる。
「銃なんて知らないだろ、訓練は必須だね。とはいえ変身してみると良い」
「ど、どうやって?」
「プログライズキー自体のスイッチを押して、後ろの空いてる場所に容れろ」
《DASH!》
アルテナは言われた通りにする。
《AUTHORIZE》
電子音声が鳴り響く。
《KAMEN RIDER KAMEN RIDER KAMEN RIDER KAMEN RIDER KAMEN RIDER……》
しかも凄い自己主張して仮面ライダーと響いた。
「え、どうすれば?」
「もう判る筈だろ」
確かにいつの間にかやり方が理解出来ている。
バックルにショットライザーを填め込み……
「へ、変身!」
プログライズキー展開、トリガーを引いて叫んだ。
《SHOT RIZE!》
放たれた銃弾。
それはアルテナ自身へとぶつかり、姿を異形なる者へと変えて往く。
《RUSHING CHEETAH!》
チーターを模した仮面、白いインナーに橙色をした左右非対称なアーマーで、複眼は黄色をした人型。
《
それこそが、ゼロワン系の仮面ライダーバルキリーであったと云う。
.
シアのステータスはまだ強化前のです。修業をしてある程度は原典の現在位置より僅かに強いけど。
勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる