ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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第28話:小学生な暗殺者と明星姉妹

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「見付けましたよ」

 

「な、何なんだてめえは! 殺し屋か!?」

 

「違いますが違いません。今は我が王にして夫である真なる王の仕事を手伝い、日銭を稼ぐだけの暁の明星というだけ」

 

「なっ!? 最近、売り出し中の明星姉妹かよ?」

 

 茶髪をポニーテールに結わい付け、眼鏡を掛けた奥には闇の蒼な瞳。

 

 シュテル・D・スタークス・オガタが本名だけど、此処では【暁の明星】という二つ名が横行中。

 

「さぁ、貴方の罪を数えて下さい!」

 

「ゲェ!? それならば、てめえはまさか! 【黄昏の魔女】?」

 

 反対側の少女に叫ぶ。

 

「可愛くない二つ名です。でもその通り。我が真王の寵妃が一人、宵の明星」

 

 本名はほむら・A・緒方だったりする。

 

「ちくしょうが!」

 

「畜生は貴方でしょう? 小学生を誘拐しては性的に暴行を繰り返し、いったい何人の少女の人生を狂わせたのか」

 

「るせぇ、ババァが!」

 

 ピシリ!

 

 その瞬間、世界が凍ったかの如く静まり返った。

 

「言ってはならない事を、貴方は言いました。 故にゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 

 ほむらは『あちゃー』とばかりに天を仰ぐ。

 

 ほむらもそうなのだが、シュテルは約六〇〇年前の古代ベルカへと跳ばされ、真王と共に群雄割拠を駆け抜けた真王妃の一人。

 

 見た目は高校生だけど、生きた時間だけなら何処かの吸血姫レベル。

 

 ババァは禁句であった。

 

《STERN!》

 

 いつでも起動出来る様に巻かれたジクウドライバーを扱うガジェトツールで、ライドウォッチと呼ばれている一種の時計。

 

 表の盤を回すとウォッチにはシュテルの顔。

 

 ドライバーの右側に有るD'9スロットに装填し、上部のライドオンリューザーを押してロック解除。

 

「変身!」

 

 ジクウサーキュラーを、時計の反回転させる。

 

《RIDER TIME!》

 

 理論具現化装置ジクウマトリクスで、ライドウォッチのデータが顕在化され、シュテルの身体を覆った。

 

《KAMEN RIDER STERN!》

 

 電子音声の調子はゲイツのものと同じ。

 

「仮面ライダーシュテル、見参です!」

 

「な、な、な……」

 

 ロリコン犯罪者が驚きながら指差す。

 

「やれやれ、仕方がない。シュテルは年齢の事を言われるの嫌がるし」

 

 幼女愛好者な変態にとっては、高校生処か中学生でも下手したらババァだが、そんな理屈など取り敢えずどうでも良い。

 

「少し頭、冷やそうか」

 

 それは別の人である。

 

《BEYONDRIVER!》

 

 ほむらもベルトを装着、黒を下敷きにしてライムグリーンがあしらわれた色、ビヨンドライバーと呼ばれるベルトである。

 

《HOMURA!》

 

 ミライドウォッチというライドウォッチと異なる、然しながら規格が違うだけで同じ働きのガジェトを、右側の窪み……マッピングスロットへと装填をして、クランクインハンドルを前へと向けた。

 

《ACTION!》

 

 ミライドウォッチのカバーを開いて、ディスコ風に脚光を浴びる中……

 

「変身っ!」

 

 レバーを押し込んだ。

 

《TOUEI! FUTURE TIME SUGOI JIDAI MIRAI! HOMURA……HOMURA!》

 

 中央モニターにライダーとしての顔が投影されて、仮面ライダーホムラに変身完了をする。

 

 まぁ、ぶっちゃけてしまうと仮面ライダーゲイツと仮面ライダーウォズの色違いな2Pカラー。

 

 そもそもにしてユートの仮面ライダーシンオウも、仮面ライダージオウの色違い2Pカラーである。

 

 ユートの特性上から模倣は得意だが、独創性が欠如とまでは云わないものの、どうあっても足りていないが故に、こんな苦肉の策で補っていた。

 

 ジオウ、ゲイツ、ウォズを名乗るのはちょっとアレだったのは、ジオウに関しては単純に変身者である処の常磐ソウゴが【時の王】で【時王】だからジオウ、ゲイツとウォズに至っては本名かどうかは扨置いて、本人の通り名がライダー名に使われており、ならばとシュテルとほむらも名前を直接的にライダー名にし、姿はゲイツとウォズの色違いで造った訳だ。

 

 尚、仮面ライダーツクヨミに相当する者は今現在、該当者が居ないのでそれを巡り水面下で争っている。

 

 とはいえ、狼摩白夜に分がありそうではあるが……

 

 ヴィヴィオやアインハルトなどの所謂、VIVID組は肉体関係があるのはやはり強いと、年齢にそぐわない感想を懐いていると云う。

 

「さて、一気に殺ります」

 

「殺っちゃ駄目でしょう、シュテル!」

 

「非殺傷が可能だから問題ありませんよ。ホムラは、そいつが逃げない様に塞いでいて下さい」

 

「はぁ、手早くして下さいシュテル」

 

 犯罪者など目にも留まらぬとばかりに言うほむら、シュテルはシュテルで静かに首肯する辺り、舐められているとしか思えない。

 

「クソが!」

 

 BANG! BANG!

 

 シュテルに向けて放たれる二発の銃弾。

 

「アホですか。私が纏う鎧やインナーを見てその程度の豆鉄砲が効くと、本気で思っているのですか?」

 

「ぐっ!」

 

 そもそも、t級の攻撃を受ける前提のアーマーでありインナー、拳銃の弾丸など正しく豆鉄砲に等しい。

 

 せめて電磁加速砲くらいは欲しい処である。

 

 それも拳銃クラスでなど決して無いレベルで。

 

 シュテルは隙だらけである犯罪者に対し、無造作に歩いて近付きながらライドウォッチのスイッチを押してやる。

 

《FINISH TIME!》

 

 ジクウサーキュラーを、再び反回転させた。

 

《TIME BURST!》

 

 フィッと跳躍をすると、右脚を突き出す形で犯罪者に蹴りを放つ。

 

「たぁぁぁっ!」

 

 ドゴンッ!

 

「ギャァァァッ!」

 

 敢えなく吹き飛んで気絶した犯罪者を、溜息吐きながらほむらが拾う。

 

「あれ、終わったんだ」

 

「美晴ちゃん」

 

「仮面ライダーなお姉さんは仕事が速いよね」

 

 手には四五口径デトニクスを持つ“小学生にしか見えない少女”が、不敵な笑みを浮かべながらシュテルとほむらを視ていた。

 

「スズカゼミハル、貴女の仕事は終わりましたか?」

 

「うん、きっちり〆ておいて殺ったよ」

 

 デトニクスの銃口を息で吹き付け、右目をウィンクで閉じつつ物騒極まりない事を平然と言い放つ美晴……涼風美晴だった。

 

「確か貴女のお友達も犠牲になり掛けたとか?」

 

「まぁね、だから私が殺りたかったんだけどな」

 

「生きてますよ彼。私達の装備は殺さないシステムが組み込まれていますから。まぁ、死ぬ程に痛いのは変わりませんけどね」

 

「ある意味で拷問器具だ」

 

 いっひっひと、実に愉悦とばかりに美晴は笑う。

 

 小学五年生らしい無垢で残酷な笑み、平然と殺せる胆力と非常識加減。

 

(この世界、トータスだけでなく地球も余り救いは無いのかも知れないわね)

 

 仮面ライダーホムラから暁美ほむらに戻りながら、自分より背丈が低い美晴を見つめて考える。

 

 ユートがトータスに召喚され、ヴィヴィオとアインハルトと共にやって来ていたほむらは、シュテルを喚び出してSS機構なる組織へと向かった。

 

 ユートがやっていた商売以外の仕事、ゲーム会社のアルバイトや少女漫画家のアシスタント、それ以外に有ったのがSS機構と政府公認アンチテロ屋だった。

 

 トリニティ実験をやるまでも無く、ほむらの要請でシュテルを遠隔招喚して、折角のコストを支払ってしまったユートだったけど、ヴィヴィオとアインハルトには南雲家を頼み、ほむらとシュテルには涼風美晴の方を頼みたかったのだ。

 

 ユーキにはネット通販、『まほネット』を管理して貰いたかったし、人手としてもう一人が欲しかった。

 

 特に涼風美晴は小学生で暗殺者、下手をしたらいつ死んでもおかしくないし、護らせる意味でも二人には期待をしている。

 

 古書店【ですぺら堂】の店主から仕事を依頼され、ターゲットを暗殺してから掃除まで、この全の地球はテロリストや犯罪者などが横行し過ぎていた。

 

 元々、美晴の両親も犠牲になった人間らしい。

 

「兎に角、今は情報を吐かせる為に殺す訳には」

 

 ドパン!

 

「ちょっ!」

 

 ほむらが言い終わる前に美晴が撃った。

 

「大丈夫、兄ちゃんから教わったスマッシュをしただけだから。二度と小学生を抱けない様に……さ」

 

 視れば股間から血を流している様だ。

 

「どうせ情報を洗いざらい吐いたら殺すのに……」

 

 今更ながら股間スマッシュに意味は無い、無いが……悶え苦しむそいつに同情など湧かない。

 

 何人もの小学生が犠牲となり、中には男の娘までもが居たらしいと聞く。

 

 余りに救いの無い悍ましい犯罪、男の娘な小学生は股間のモノを斬り落とされていたらしいし。

 

 成程、付いていなければペタンな少女で通じるし、穴は後ろにちゃんと有る。

 

「こんなのが官僚だとか、この世界の政治は可成り腐れているわね」

 

 ほむらの容赦無い科白、この世界の人間として美晴も少し恥ずかしい。

 

(何だって【まど☆マギ】のほむらさんにダメ出し喰らってんだろ、この世界の日本政府は……)

 

 異世界から来たほむら、しかもアニメキャラクターの筈が、本当に現れたりしたからさぁ大変。

 

 美晴も割と暁美ほむらを識っているし、魔法少女にも成れたのも確認した。

 

 しかも何故かよく識らない仮面ライダーに成る。

 

 仮面ライダーなのは自分で名乗ったから間違いないのだろうが、ライドウォッチなるアイテムやジクウドライバーなんて美晴の知識には無いのだ。

 

 現在、日曜日に放映中なのは【仮面ライダー鎧武】であり、使用されるベルトは【戦極ドライバー】と、【ゲネシスドライバー】。

 

 ジクウドライバーでは決して無いし、今までに放映されたどの仮面ライダーのベルトでもない。

 

(ま、良いか。兄ちゃんの知り合いなんだし二人とは仲良くしとこ)

 

 暗殺パートナーなユートの知り合い、しかも自らを嫁だと宣う“二人”だし、数年後に自分が生きていたら仲間に入れて貰えれば、きっと愉しいだろうから。

 

「じゃあ、今夜は焼肉屋にでも行く?」

 

「打ち上げね」

 

「悪くありません」

 

 政府要人で少女愛好家な犯罪者を殺処分が出来て、折角だから焼肉屋で焼き肉パーティーをしようとか、ある意味でイカれた思考の持ち主だった。

 

「ユーキさん達も誘ってみましょうかホムラ」

 

「そうね、美晴ちゃんは良いかしら?」

 

「構わないけど」

 

 

 という訳で電話する。

 

「もしもし、ユーキ」

 

〔ほむら?〕

 

「仕事が終わったから打ち上げに焼肉屋へ行こうと、三人で話していたんだけどユーキもどう?」

 

〔……〕

 

「ユーキ?」

 

 無言なユーキに首を傾げているほむら。

 

〔夜は焼き肉っしょー!〕

 

「わっ、吃驚した!?」

 

〔何だかビルドとして言わなきゃ駄目な気がした〕

 

「意味が判らないわ」

 

〔うん、ボクもだ。美晴にヴィヴィオ達も紹介するのはアリかもね〕

 

「じゃあ、仕事が大丈夫そうなら声を掛けて」

 

〔了解〕

 

 幸い、ヴィヴィオもアインハルトも仕事は無くて、皆で焼肉屋へ向かう。

 

 当然、美晴はヴィヴィオとアインハルトの存在に、目の玉を飛び出すくらいには吃驚するのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 オルクス大迷宮。

 

 ダイオラマ魔法球内部、其処で半月が過ぎた。

 

 その半月の間に聖闘士張りの基礎修業をやらせて、ステータス的な基本能力を上げると同時に色々と慣らしておく。

 

 魔物を殺すのもその一つだと云えた。

 

「スピードに優れている、仮面ライダーバルキリー。エイムズショットライザーを武器に、スピードで勝負をするタイプだな」

 

「バルキリー」

 

 実験すら済んでないが、仮面ライダーバルカンなら既に造り終え、実験だけはしてあるのだから同型であるこれも問題は無い筈だ。

 

「言っておくが使い熟せるかどうか、これから訓練をしてみても駄目だったなら返して貰うから」

 

「……うっ、はい」

 

 頷くアルテナを見ながら思うのは……

 

(仮面ライダーバルカンも誰かに渡すか)

 

 ……である。

 

 神エヒトルジュエの使徒リューンは、出来損ないでありながら可成り強い。

 

 少なくとも勇者(笑)様が本来の力で最大限レベルを上げ、限界突破という技能を使っても届かない程度には高い数値を持つ。

 

 ユーキから聞いていた、天之河光輝のステータスは全能力1500、三倍にしても4500にしかならないのである。

 

 派生技能【覇潰】を使えた場合だが五倍になれば或いは互角になるだろうが、然しそれは無理をするから短い時間でしかない。

 

 限界突破が約八分。

 

 その終の派生技能である【覇潰】は更に短い上に、使い終われば極端に弱体化をしてしまうとか。

 

 つまりウルトラマン並に早く敵を斃さねば、自らが殺られる羽目になるのだ。

 

 リューンですら斃せない勇者(笑)様、本気で笑い話にしかならない存在自体が冗談の塊である。

 

 だけど仮面ライダーは、ユートの見立てで少なくともクウガ・マイティフォームで平均して5000強、ライジング化なら8000程度になりそうだったし、況んやアルティメットクウガなら一気に100000は固いと思われる。

 

 勿論、全能力が同じではなく平均値が……だけど。

 

 恐らくは、仮面ライダークウガ・アメイジングマイティで、使徒の完成体をも遥か彼方に置き去りレベルで上回るだろうと考える。

 

 仮面ライダーアルティメットクウガ並ともなれば、仮面ライダーエグゼイド・ムテキゲーマー辺りか。

 

 単純なスペックならば。

 

 ユートはエヒトルジュエの使徒(完成体)を、能力的にアンノウンよりは上だろうが、エルロードより遥かに下回ると思っていた。

 

 多分、エルロード級だと20000〜25000くらいだろう。

 

「取り敢えず僕は一旦外へ出る。そろそろ大樹に行ける筈だからな」

 

「あ、はい」

 

 本来の目的とは早い内に【フェアベルゲン】と接触する事だが、大樹に行くのも目的の一つである。

 

 ユートはユエ、香織、雫にシアを加えて大樹へ向かう事になった。

 

 道案内はシア一人で充分だし、カム達にはアルテナの修練をして貰う。

 

「確かに霧が薄れたな」

 

 大樹に向かう道の濃霧は晴れてこそいないにせよ、亜人族による道案内は普通に可能なレベルだ。

 

「では行くですぅ」

 

 張り切って道案内をするシア、ユート達はシアの後ろから付いていく形に。

 

(まぁ、僕一人なら濃霧も無関係に進めるけどな)

 

 其処は空気を読んだ。

 

 ある程度、歩を進めると大樹らしきが聳える広場に出てきた。

 

「へぇ、これがウーア・アルトか……枯れてるなぁ」

 

「枯れてるわね」

 

「枯れてるね」

 

 ユートの感想に追従をする雫と香織。

 

「……ん」

 

 ユエも首肯した。

 

 大樹と呼ばれるだけあり大きさは想像をした通り、途方もない巨大さで直径は五〇mくらいはありそう。

 

 周囲の木々が青々とした葉を盛大に広げているのにも拘わらず、大樹ウーア・アルトだけが何故か枯れ木となってる異様さ。

 

「あはは……この大樹は、【フェアベルゲン】建国前から枯れているそうです。だけど朽ちる事はないし、それでいて枯れた侭で変化も見られません。霧の性質と大樹の枯れながら朽ちない事から、いつしか神聖視される様にはなりました。それだけでしかないので、早い話が観光名所みたいなものですぅ」

 

 皆が向けてくる疑問顔、シアは解説をした。

 

 ユートはユーキから聞いていた石板を捜し、大樹の根元の方まで歩み進む。

 

 其処には確かに石板が建てられていた。

 

「オルクスの扉と同じ紋様……か。やっぱり此所で間違いないな」

 

 その古い石版に七角形、その頂点の位置には七つの文様が刻まれている。

 

 オルクスの部屋の扉に刻まれていたものと同じで、ユートは一応の確認の為にオルクスの指輪を出した。

 

 指輪の文様と石版に刻まれた文様、その一つは確かに同じものの様である。

 

「確か裏に……」

 

 ユートは石板の裏側へと回ると、お目当ての七つの紋様に対応して指輪を嵌め込む窪みを見付ける。

 

「こいつか」

 

 手に持っているオルクスの指輪を、表のオルクスの文様に対応する窪みに実際に嵌めてみたら、石板が淡く全体的に輝き出したではないか。

 

 輝く石板を見ていると、次第に光が収まっていって代わりに、光を帯びた文字が浮かび上がってくる。

 

『四つの証』

 

『再生の力』

 

『紡がれた絆の道標』

 

『全てを有する者に新たな試練の道は開かれる』

 

「『四つの証』は他の迷宮の証の指輪、『再生の力』は再生魔法、『紡がれた絆の道標』は亜人族の案内。それを以て【ハルツィナ大迷宮】の入口が開く訳だ。ユーキからの情報通りって訳だね。そして余計な付随する何かも無いとは素晴らしい話じゃないか」

 

「付随する何かって?」

 

 雫が訊いてきた。

 

「偶にあるんだ。別の世界が混じって本来は存在しない何かが追加されるって」

 

「「う゛っ!」」

 

 そういえば、アルテナの修練にかまけてまだ二人に例のあれやこれやを話していないのに気付く。

 

「戻ったら今夜でも寝物語に聞かせるよ」

 

「……そうね。いつまでも目を背けてらんないわ」

 

「うん、雫ちゃん」

 

 何やら決意をした様子、然しながらユエとシアには解らず、やはり二人で首を傾げてしまっている。

 

「……それで、此所はまだ駄目なら次はどうする?」

 

「ライセン大峡谷の方で、【ライセン大迷宮】を捜して攻略する」

 

 ユエからの質問にユートは答えた。

 

「確かにオルクス大迷宮に戻るのに毎回、ライセン大峡谷を通るものね」

 

「原典でも二番目に攻略したのが其処らしい」

 

「うぐっ!」

 

 雫に精神的ダメージ。

 

「詳しい場所は判らないんだが、其処は虱潰しにやるしかないかな」

 

 尤も、手段はあるけど。

 

「それじゃ、オルクス大迷宮に戻るぞ」

 

 僅か一日でも一ヶ月分、アルテナがどうなったのかを知るには、時間的に丁度良いと云えた。

 

 あっという間に戻ってきたユート達。

 

瞬間移動呪文(ルーラ)って便利よね」

 

迷宮脱出呪文(リレミト)も有るのに、私達はゆう君のパーティに入れなかったって……」

 

「仕方ないだろ。パーティメンバーは可成りふわっとした感じだしな。無意識にでも認めてないとパーティ加入が出来ないとかな」

 

 オルクス大迷宮の深部にはライセン大峡谷側から、オルクスの紋章の指輪により出入りしている。

 

 正確には別の転移口を創って、カムを含めた数人が出入り出来る様にした。

 

「やってるな」

 

「ユート様」

 

 修業とか何とか云ってもやる事は変わらない。

 

「今日は此方でシアとユエも含めて……ね」

 

「そ、そうですか」

 

 意味を正しく理解して、アルテナは紅くなった。

 

 そして夜、ユートは四人と順繰りにキスを交わし、同時に相手を始める。

 

 その最中に綴られていくユートの転生物語、そしてこの世界の事にも触れられて知る本来の世界線。

 

 とはいえ、ハジメが奈落へ落ちた場合は生き残れたか怪しいとも伝えた。

 

 やはり香織は食い付いたのだが、何しろそれを話している真っ最中が自分の鞘にユートの槍を納める番、気持ち良くなって絶頂へと至り、涙を零しながら今更だと香織は理解をさせられたものだった。

 

 

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勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

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