ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

30 / 129
第29話:心火を燃やす人に成ってみた

.

 ユートに跨がった香織、互いに着衣など身に付けていないのは、風呂から出てすぐに天蓋付きベッドへと直行したから。

 

 今宵は香織が主役で抱かれる為、お姫様抱っこしてベッドまで運んだのだ。

 

 そして残りの二人が此処へ来るまでに、既に潤っていた鞘へユートの槍を納めたのである。

 

 深夜の寝る前には香織の股座は期待と、嘗て好きだった男の子への背徳感に加えて、現在進行形で自分を好き勝手にしているユートに対する情により下着までグッショリと濡れ、風呂で粗方を流してもこうやってベッドの上に来れば、また簡単に潤ってしまう。

 

 こんなエッチな娘にされたんだ……と、紅くなった頬を弛ませユートの槍先を自らの鞘から“納刀しては抜刀”を繰り返していた。

 

 ユエと雫が来る頃には、既に一回戦が済んで俯せになり荒い息を吐いている。

 

 とはいえ、ユートが終わったのではなく香織が絶頂を迎えただけでしかなく、未だに元気一杯な分身を視た雫が苦笑いを浮かべて、いつもの様に唇を重ねた。

 

 それはユエも同じく。

 

 暫くは三人の美しい肢体を堪能し、会話らしい会話も無い侭に貪っていた。

 

 三人が五回戦を済ませ、ユート自身もそれなりではあるが満足した頃、漸くといった感じで話し始める。

 

「ユエは兎も角、香織と雫は僕が転生者なのは聞いているな?」

 

「ええ」

 

「それは聞いたよ」

 

「……ん? 転生者?」

 

 ユエだけ反応が違う。

 

「偶に出てきた単語だが、やっぱり聞き慣れないか。転生者は一度なり死んでしまった人間が、生前の記憶を保持して新しい生を得た場合を云う」

 

「……つまり、例えば小父様が違う顔に違う種族ながらも、私の前に私を認識して現れるみたいな?」

 

「まぁ、そんな感じだね。大抵は物語として語られている世界観に生きる」

 

「……ん? だとしたら、ユートにとってこの世界は物語の中?」

 

 やはり雫と香織は酷く、そして強く反応を示す。

 

「間違いじゃないよユエ、【ありふれた職業で世界最強】というらしい」

 

「……長いタイトル」

 

「多分、なろう系だから。昨今なら珍しくもないよ」

 

「ま、待って!」

 

 雫からちょっと待ったなコールが掛かる。

 

「【なろう】でそんなタイトルは見た事が無いわ!」

 

「無意味な事を。この世界がそうなら、そのタイトルを書けたら予言者になれるだろうが」

 

「……!?」

 

 嘗てクリエイターである一人の男も言った、異世界に若しあの浮遊城が実在するなら……と。

 

 インスピレーションは、多かれ少なかれ異世界からの干渉もあり、この世界が【ありふれた職業で世界最強】ならば、それが小説なりアニメなりで公開される事は有り得なかった。

 

 だからこそ、この世界に【リリカルなのは】な人物は存在しない。

 

 何故ならこの世界では、【魔法少女リリカルなのは】が放映されているから、逆説的に存在しない証左となる訳だ。

 

 

 だから彼方側では驚くであろう、本物のヴィヴィオ達が現れたりしたら。

 

 香織の顔にいよいよ余裕が無くなりつつある。

 

 お腹の奥底から追り上がってクるナニかに翻弄されていて、パクパクと何かを喋るでも無く口だけを開閉させつつ、真っ赤な頬には瞳に浮かんだ涙の一滴が零れ落ち、イヤイヤと首を横に振っていた。

 

 この瞬間が一番キツい、そして香織も雫もユエも……この場に居ない愛子先生までもが大好きな刻。

 

 ビクンッ! 大きな波が香織を襲って背中を伸ばし弓形りになると、香織の口から嬌声が吐き出された。

 

 プツンと糸が切れたかの如く意識を喪い、ユートの胸元へ顔を埋める形で眠りに就いてしまう。

 

「さて、次は雫の番だね」

 

「お、お手柔らかに……」

 

 とは言うものの、絶頂に至るまでの感覚も良いものだけど、至る瞬間がこの上無い快楽に包まれるが故にお手柔らかを本当に望む訳ではない。

 

 始まったらひたすらに、意外と健気に奉仕をしてくれる雫は、今日も今日とてそれなりなお胸でユートの分身を挟む。

 

 ユートはこの世界の原典を識らない、香織の本来の相手はハジメだと思うが、メインヒロインはユエだと最近になって判明した。

 

『私、サブヒロイン?』

 

 香織が固まったのは無理からぬ事、あのホルアドでの【月下の語らい】は何だったのか……と。

 

『それでも……それでも、不安だというのなら……』

 

『……なら?』

 

『守ってくれないかな?』

 

 何だかヒロインが逆転をした感じだが、割と好感触だったのではないか? とすら思っていたのに。

 

 何故かユエがメイン。

 

 ユートが相手でもメインは張れない、即ち完璧なるサブヒロイン枠だと云う。

 

 雫は雫でハジメに惚れ、親友と恋愛の板挟みに悩み抜き、無意識でハジメへの好意を自覚しない様にしていたらしいと聞かされて、がっくり四つん這いになってしまった。

 

 その際に後背位でヤられてしまったが、それは取り敢えずどうでも良い。

 

「わ、私が好きになったのは優斗だから!」

 

「そうだな、嬉しいよ」

 

 原典とは違う。

 

 結局は気の持ちようだったのかも知れない。

 

 因みに、君付けでないのはユートの要請からだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ライセン大峡谷を探索、大迷宮への入口を捜すべく三手に分かれていた。

 

 雫と香織。

 

 ユエとシア。

 

 ユート。

 

 基本的には生身に於けるフォワード型とバックス型が組んだ形で、遊撃となるユートが一人で動く。

 

 仮面ライダーに変身したら余り意味が無くなるし、飽く迄もこれは生身としてのポジショニング。

 

 ユートはリリカルなのは風に云えば、ガードウイングに当たるだろうから単独で遊撃が一番だ。

 

 ぶっちゃけ、フェイトとポジション的にドン被りをしていて、必然的にチームでMOGISENを始めるとユートとフェイトが組む事は無かったりする。

 

 尚、MOGISENとは極めて実戦に近い戦闘訓練であり、非殺傷さえ守っていれば何をやっても有りと判定されていた。

 

 勿論、常識の範囲内で。

 

 当たり前だが行き成り、男女で乳繰り合うのはNGであり、それを平然とヤろうとしたすずかに全員が、戦慄を覚えたのだと云う。

 

 最近では、仮面ライダーVS仮面ライダーなんて、プチライダー大戦みたいなMOGISENも。

 

 何しろ一〇年以上は前、紫天ファミリーやユートやほむらが、ファイズ系でのライダー戦を見せた辺り、なのは達も変身したがったのだから。

 

 面倒だったから龍騎系のデッキを渡しておいた。

 

 高町なのは→仮面ライダーゾルダ。

 

 フェイト・テスタロッサ→仮面ライダータイガ。

 

 月村すずか→仮面ライダーナイト。

 

 アリサ・バニングス→仮面ライダーシザーズ。

 

 八神はやて→仮面ライダーインペラー。

 

 クロノ・ハラオウン→仮面ライダーアビス。

 

 アリシア・テスタロッサ→仮面ライダーファム。

 

 緒方優雅→仮面ライダーリュウガ。

 

 緒方祐希→仮面ライダーオーディン。

 

 ユーノ・スクライア→仮面ライダーベルデ。

 

 仮面ライダーガイと仮面ライダーライアは不在で、ミラーモンスターは現在だと中村恵里の許に。

 

 仮面ライダー龍騎の場合はユーキの意向もあって、普通にユートが持っている状態で、サバイブのカードもナイトとオーディンとで三枚に分けられている。

 

 カメンライドで龍騎にも成れるのだが……

 

 相生呂守はオルタナティブゼロ、相生璃亜にはオルタナティブを渡してある。

 

 龍騎系は無駄に多いから分けるのが楽だった。

 

 相生呂守と相生璃亜とは所謂、ユートと同じ転生者の兄妹であり、苗字と名前を続けて読むとアイオロスとアイオリア、黄金聖闘士の兄弟と同じ名前となる。

 

 【闇の終焉】に関わってきたが、ぶっちゃけ単なる賑やかしにしかならなかった存在で、それでも取り敢えず友人にはなれた。

 

 少なくともミッドチルダに潜伏していた莫迦共より話が出来たし、璃亜は容姿もそれなりに可愛かったから仲良くする分には問題なども無かったのである。

 

 ユートは途中で止まり、見せ札の【宝物庫】を起動して、水色のデカイ物体を取り出して腰に据えた。

 

 ベルトが左側から伸長、右側へと合着をされる。

 

《SCQRASH DRIVER!》

 

 何処かしら若本ヴォイスな電子音声が響いた。

 

 次にユートはスクラッシュドライバーのパワープレススロットに、スクラッシュロボットゼリーという物を装填……

 

《ROBOT JELLY》

 

 アクティベイトレンチを押し下げる。

 

「変身!」

 

 ケミカライドビルダーが生成され、頭頂部スクラッシュファウンテンと胸上部スクラッシュノズルから、ヴァリアブルゼリーが噴出すると、ユートの全身を包み込んだ。

 

《TSUBURERU! NAGARERU! AFUREDERU! ROBOT IN GREASE! VURAAAAAA!》

 

 金と黒を基調としていて赤い複眼を持つライダー、仮面ライダーグリスに変身をしたユートは、魔物狩りをしながら先を進んだ。

 

「良し、スクラッシュドライバーは成功したな」

 

 ユーキの謹製ではない、ユートが造ったスクラッシュドライバーで、スクラッシュゼリーもドライバーも彼方と意味が違っており、当然ながら互換性は無い。

 

 ユーキのビルドドライバーやスクラッシュドライバーとは本物と同じ代物で、フルボトルもスクラッシュゼリーも【ビルドの世界】のドライバーでちゃんと使えてしまう。

 

 事実として使えた。

 

 故にこそハザードレベルが必須であり、エボルドライバーもハザードレベルが高くないと扱えない代物、ユートでないとまともに使えなくなる。

 

 ユートのそれは創造された聖魔獣を纏う物であり、システムその物が全く別であるが故に、やるべき事と見てくれこそ同じながら、互換という意味では全く以て使えない。

 

 このスクラッシュドライバーもそうで、云ってみれば聖魔獣グリスを装着して戦っているのだ。

 

「取り敢えず大迷宮を見付け出しておかないと」

 

 見付けて行き成り大迷宮の攻略を開始とはならず、一度は近場の街にまで行ってから、ある程度は物資の補充をしておく心算だ。

 

 そもそも、先に見付けないと場合によっては見付けてまた街に戻る羽目に陥りかねず、だからまずは入口だけでも捜しておく。

 

 ユートは兎も角として、香織と雫はそろそろ人心地が付きたいだろう。

 

 そういう配慮もあった。

 

 序でに大迷宮内で構築したスクラッシュドライバーの実験も兼ね、こうやって試しに使っている訳だ。

 

 ビルド系の仮面ライダーは基本、ユーキが率先して造っていたからユートは手を出さずにいたのだけど、この世界にはエヒトルジュエの使徒が居るし、人間では大迷宮クラスの魔物討伐は不可能ではないにせよ、可成り大変なのだけは理解した為、見せ札的な意味でも派手に仮面ライダーの力を使っていきたい。

 

 そもそもビルド系を造るのは、ユーキ自身も賛成をしてくれていた。

 

 其処で先ずは、スクラッシュドライバーを造ったという訳である。

 

 理由はビルドドライバーだと、拡張性が非常に高くてパワーアップアイテムなんかも有ったから。

 

 スクラッシュドライバーならば、初期能力は高いが拡張性という意味では特に何も無いのが造り易い。

 

 まだ造って無かったからシアにはザビーを渡したのだが、若しあの時に有ったらこのグリスなりクローズチャージなりを渡していた可能性が高く、最終的にはグリスブリザードやクローズマグマにでも成っていたのであろう。

 

「確かグリスはドルオタ、しかもダークキバだったりイクサ(旧型)だったり?」

 

 魔物を武器も使わず素手で潰しながら、探索兼思考の中に在ったユートが考えていたのは、スクラッシュドライバーの本来の使い手についてだ。

 

 尚、ドルオタとは謂わばアイドルオタクである。

 

 どうでも良いが……

 

「で、クローズチャージは肉壁……じゃなく脳筋か。そういえばクローズチャージは龍我って名前だった筈だよな? それで脳筋……若し天之河が暴発したら、坂上に止めさせるか?」

 

 坂上龍太郎。

 

 龍の字を持つ脳筋。

 

 正に肉壁そのものだし、存外とイケる気がする。

 

 ユートは天之河光輝という存在を信用してない為、某かの防衛装置は必須だと常々考えてはいた。

 

 本来の防衛装置たる雫が自分の許に居るし、香織は防衛装置に不向きだったから良いとして、他に候補者は坂上龍太郎くらい。

 

 他に近い友人枠というと谷口 鈴と中村恵里だが、恵里はハジメの彼女となってからはべったり甘々で、とてもではないが頼めたりはしないし、谷口 鈴とは良く云えば波風を立てないタイプ、悪く云えば事勿れ主義である為に防衛装置にはならないだろう。

 

 可愛らしい容姿ではあるのだが、天之河グループなだけに余り関心が無い。

 

 抱く前なら【二大女神】でさえ“そう”なのだ。

 

 まぁ、自分のモノとなれば関心も普通に沸く。

 

「それにしてもやっぱり、この世界では精霊と接触がし辛いな。あんな莫迦みたいな魔法陣に詠唱が必要になるだけあるわ、まったく困った話だね……」

 

 お陰で探索が捗らない。

 

「はぁ、どうしたもんか」

 

「ああっ!」

 

 溜息を吐いていた矢先、大声を上げるシア。

 

「何かあったか?」

 

 急ぎ駆け付けるとシアが何だかあわあわしながら、岩壁を指差して騒いでいるのを見付けた。

 

「どうした、シア?」

 

「み、見付けましたよ! ライセン大迷宮の入口!」

 

「本当か?」

 

「は、はい!」

 

 ユートは仮面ライダーグリスでシアは仮面ライダーザビー、ユートはまだしも正しく女の子という感じにはしゃぐザビーは、ちょっとシュールであろう。

 

 あれだ……見た目だけが影山 瞬だと考えて想像をすれば理解も出来る筈。

 

 或いは矢車 想でも可。

 

 解り辛いならキャピキャピと跳ねるザビーだとか、絵面が何だか物凄い事になっていそうだ。

 

 何と無く加賀美 新だと有りな気がするのだけど、一〇〇%無いというよりも正に有り得ないと断言が出来るのが三島正人だろう。

 

 いや、実際に加賀美 新は普通に戦闘後はしゃいでいたから……

 

『よっしゃ、強いぜ俺!』

 

 はしゃいでいたのはザビーじゃなく、仮面ライダーガタックの時だけど。

 

 全員集合して、シアからの案内でその場所へ。

 

 巨大な一枚岩が谷の壁面に凭れ掛かる様に倒れて、壁面と一枚岩との間に隙間が空いている場所が在る。

 

「こっちですぅ!」

 

「取り敢えず引っ張るな、シアは殆んど完全な強化系だから、身体強化してたら凄まじいんだからな」

 

「……煩い」

 

「アハハ……」

 

「よっぽど嬉しかったんでしょうね」

 

 はしゃぎながらユートの手を引っ張るシア、ユートは引かれつつ困った顔に、ユエは鬱陶しそうに顔を顰めていて、香織は苦笑いを浮かべており、雫は何と無くだが気持ちが解っている様子だ。

 

 シアに連れられ岩の隙間に入ると、壁面の側が奥に窪んでいて意外な程に広い空間が存在していた。

 

 その空間の中程まで歩み進むと、シアがニコニコとした表情でビシッ! と壁の一部に向けて指差す。

 

 指先を視てみれば全員の視線の先……其処には岩壁を直接削って作ったらしき装飾の入った長方形の看板が存在しており、酷く厳つい看板に反して妙に女の子らしい、丸文字でこう掘られていた。

 

【おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪】

 

 エクスクラメーションマークや音符、これが妙ちくりんな具合に凝っている処が何とも言い難い。

 

「……ウザいな」

 

「……これっていったい」

 

 ユートとユエの声が重なって響くが、呆然としながら香織と雫も含めて地獄の谷底とはとても思えない、微妙にファンシー化をした看板を見つめている。

 

「大迷宮の入口。お花を摘みに来たら偶然見つけちゃいまして。いや〜、本当にあったんですねぇ、ライセン大峡谷に大迷宮が」

 

「雫はどう思う?」

 

「多分、本物よ」

 

「その根拠は?」

 

「……ミレディよ」

 

「だろうな」

 

 “ミレディ”という名、それはオスカー・オルクスの手記に出て来たライセンのファーストネーム。

 

 ライセン大峡谷の名前から姓はそれなりに有名ではあるが、ファーストネームの【ミレディ】に関しては特に知られていない。

 

 組織【解放者】が活動をしていたのが、約数千年も前の事だから無理も無いのだろうが、にも拘らず迷宮らしき入口に【ミレディ】の名前となれば。

 

「……私も本物だと思う」

 

 ユエも頷いていた。

 

「そうだな、取り敢えずは見付けたと考えようかね。この場にマーキングしたら町に向かおう」

 

 看板は見なかった事に。

 

 ライセン大迷宮発見後、魔動車に全員を乗せて走って凡そ数時間か其処らで、目的地のブルッグの町が見えてくる。

 

 町の周囲を堀と柵で囲まれてる小規模な町であり、街道に面した場所に木製の門があって、その傍に門番の詰所らしき小屋。

 

 小規模とはいえ、どうやらそれなりに充実した買い物が出来そうだった。

 

 町の方からでも魔動車を視認出来る辺りまで来て、魔動車を【宝物庫】へ仕舞ってから徒歩に切り替えたユート一行。

 

 暫く歩いて漸くに町の門まで辿り着く。

 

 やはり門の脇の小屋は、門番の詰所だったらしくて武装した男が出て来ると、ユート達のすぐ目の前にまで小走りにやって来た。

 

 革鎧に長剣、スタンダードな兵士装備っぽいけど、彼らは兵士というよりかは冒険者にも見える。

 

「止まってくれ。ステータスプレートを見せて欲しいんだが。それとブルックに来た目的は?」

 

 ユートと香織と雫とユエの四人は、懐からステータスプレートを出す。

 

 対外的に奴隷なシアは、特に必要は無かった。

 

 当然、ユートのステータスプレートは偽装してる。

 

「食料の補給がメインだ。今現在は旅の途中でね」

 

「そうか」

 

 気のない声で呟きつつ、門番らしき男がユート達のもつステータスプレートをチェックした。

 

「特に問題は無さそうだ。そっちの兎人族は……そういう事なんだろうな。白髪で美少女とか悪くないな。随分な綺麗処を手に入れたもんだな。白髪の兎人族なんて相当レアじゃないか? あんたって、実は意外に金持ちだったりするか? しかも黒髪の美少女や金髪の美少女まで侍らせてさ」

 

 チラチラと四人の美少女を見ながら、羨望と嫉妬の入り交じった表情で門番がユートに尋ねる。

 

「どうだかな。これでも腕は立つ心算だけど」

 

「まぁ良い、通っても構わないだろう」

 

「そうか。ああ、そうだ。素材の換金がしたいんだ。ギルドは何処にある?」

 

「それなら中央の道を真っ直ぐ行けば良いさ。其処に冒険者ギルドがあるから。店に持ち込みたいんなら、ギルドに訊けば簡単な町の地図をくれるぞ」

 

「そりゃ親切だな。助かったよ、ありがとう」

 

 情報を得てすぐ門を潜って町へと入っていく。

 

 兵士が曰く、ブルックという名の町中はそれなりに活気があった。

 

 オルクス大迷宮が有ったホルアド程ではないけど、露店も結構出てて呼び込みの声、白熱した値切り交渉の喧騒が聞こえてくる。

 

 久方振りな町の喧騒に、ユートだけでなく香織達も少し興奮気味。

 

 メインストリートを歩いて行くと、一本の大剣が描かれた看板を発見した。

 

 ホルアドの町でも見れた冒険者ギルドの看板だが、規模はそちらに比べて二回り程度は小さい。

 

 ユートは看板を確認し、重厚そうな扉を開いて中へと踏み込む。

 

 飲食店と兼任した建物、冒険者らしき連中が食事を摂っているが、酒を飲んでいる様子が無いのは置いていないのだろう。

 

 入った途端に視線が鬱陶しいレベルで突き刺さる。

 

 やはり美少女四人が視られているらしく、感心の声を上げる者やボーと見惚れている者も居れば、恋人らしき女冒険者に殴られている者も居た。

 

 悲しき男の性よ。

 

 ちょっかいを掛けて来る冒険者は意外にも居らず、理性的な事に観察だけで留められていたからユートはカウンターへ向かう。

 

 ユートがハルケギニアに生きた時代、冒険者ギルドの受付嬢はラピス・フォルトゥーナという美人を据えていたが、この町の受付嬢は恰幅の良いオバチャン。

 

「いらっしゃい、冒険者ギルド・ブルック支部にようこそ。御用件は何だい?」

 

「素材の買い取りを」

 

「素材の買取か。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

 

「はい、これな」

 

 偽装されたステータスプレートを出すと、オバチャンがチェックをして返却をされる。

 

「うん、間違いなく」

 

 買い取りにステータスプレートは不要だが、冒険者と確認されたら買い取り額が一割増しとなるのだ。

 

 冒険者になれば特典など様々に付いてくる。

 

 生活に必要となる魔石、回復薬を始めとした薬関係の素材は冒険者が取ってくるものが殆んど、素人連中が自分で採取しに行くことはまず無いし、危険に見合った特典が付いてくるのは当然だろう。

 

 ギルドと提携をしている宿や店などは、一割〜二割程度は割り引きされるし、移動馬車を利用する場合も高ランクなら無料で使えたりすると聞いていた。

 

「そうだ、序でだから雫達も登録しておくか?」

 

「良いわね」

 

「そうしようかな」

 

「……ん、問題無い」

 

 奴隷扱いでステータスプレートを出す事も無いシアを除き、雫と香織とユエの三人は冒険者登録をする。

 

「三人で三千ルタだよ」

 

 登録料金は千ルタ。

 

 ザガルタ鉱石に他の鉱物を混ぜると、異なった色の鉱石になるらしい。

 

 それに特殊な刻印を施したのがルタ硬貨。

 

 青から始まり、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類が存在して青を一ルタとして順に五、十、五〇、百、五百、千、五千、一万ルタとなっている。

 

 貨幣価値は日本と同じとなっていた。

 

 ユートは黒い硬貨を三枚……三千ルタを支払う。

 

 返却された三人のステータスプレートは、天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに【冒険者】と表記をされて、更にその横に青色の点が付いていた。

 

 硬貨と同じく色でランクが示される訳で、青ランクが一番下のランクとなる。

 

 ユートはホルアドの町で冒険者登録をしてある為、既に職業が冒険者となっており、その横には黄色の点が付いていた。

 

 ある程度の活動はしていたからか、実はランクも上がっていたのである。

 

「じゃあ、買い取り品を見せてくれるかい?」

 

「オッケー」

 

 ユートが【宝物庫】から毛皮や爪や牙、そして魔石を取り出して置いた。

 

「こ、こりゃあ……まさか【ハルツィナ樹海】の素材じゃないかい?」

 

「正解」

 

「樹海の素材は良質なものが多いからね、売って貰えるのは助かるよ。中央なら幾分か高値で買ってくれるんだけど……」

 

「やっぱり珍しいのか?」

 

「そりゃあねぇ。樹海の中じゃあ、人間族は感覚を狂わされるし、一度迷ってしまえば二度と出てこれないからハイリスク。好き好んで入ったりはしないかね」

 

 シアを見て納得した。

 

 シアの協力を得て樹海を探索したのだと、そう推測をしたから樹海の素材を出しても不審とまでは思われなかった様だ。

 

 オバチャンが全ての素材を査定し金額を提示して、見れば六四万二千ルタという結構な金額。

 

「これで大丈夫かい?」

 

「ああ、この額で充分だ」

 

 ユートはお金を受け取り序でに、オバチャン謹製のマップを貰って冒険者ギルドを後にした。

 

 

.

 

勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。