ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 タイトルはゼロワン式にしたかったけど、英語力が無いので意訳の方を。





第32話:天でも地でもなく命は人の世に還る

.

「嘘……でしょ?」

 

「雫ちゃん、あれは何? 知ってるみたいだけど」

 

「七mで緋色の騎神テスタ=ロッサ。嘗ては呪われてオルトロスの秘術により、紅き終焉の魔王(エンド・オブ・ヴァーミリオン)と成り果ててしまったわ」

 

「魔王……」

 

「今は普通のテスタ=ロッサみたいだし、異世界とは関係無く造ったのかしら」

 

 ユートの仮面ライダーの由来を考えると、本物ではなくコピーの可能性も高い気がする雫。

 

 そしてテスタ=ロッサ、緋の騎神は顕現をさせている様々な武器で、騎士達を軽々と捩じ伏せていた。

 

 槍、刀、薙刀、弓、銃、大剣、小太刀、盾、扇子、片手剣、投擲剣、鎖、鞭、錫杖、棍棒、戦斧、鉄槌、甲拳、鎌、戦輪、二刀剣、蛇腹剣、鉤爪、飛去来器、短剣、鎖鋸、槍斧、熊手、鍬……

 

 種類は豊富で、緋の騎神か紅き終焉の魔王かは兎も角として、千の武器を持つ魔神などと呼ばれるだけあり様々に使っていた。

 

 武器にはなるが武器では無い物までも。

 

「あれらは何処から出してるのかな?」

 

「……魔力とは違うエネルギーを固着し物質化して、武器に変化させている」

 

 香織の疑問に答えたのは意外にもユエ。

 

 機械に詳しい筈も無い、だけどこの現象には心当たりがあるらしい。

 

「……サイバーアップと呼んでた、エネルギーを鎧化させる技術で武器化させているらしい」

 

「サイバーアップって……スーパービックリマン? 確か私達が生まれるよりも前に展開していたシール、私もよくは識らないんだけどね、アトリエシリーズの漫画を描いてる人が昔に描いていた漫画らしくって、ちょっとだけ調べたわ」

 

 其処から多少なり辿ってビックリマンシリーズというのを知り、超聖理力なるモノを昇華させて鎧化させるサイバーアップを天使が使っていた……と。

 

 ユートのそれは間違いなくサイバーアップを応用、武器化させて顕現をさせているものである。

 

「でも、どうしてユエさんが知ってるの?」

 

「……オルクス大迷宮攻略の最中、香織達が眠った後に抱かれた時、魔力の運用技術の一旦として見せて貰った事がある。因みにまだ私には出来ない」

 

 ユエは魔力の扱いが巧みなだけに、教えれば出来そうだと見せた事があった。

 

 サイバーアップなる言葉もその際に教えたのだ。

 

「片付いたぞ」

 

 いつの間にか戦いは終了しており、部屋のど真ん中に緋色の騎神が一騎のみで佇んでいる。

 

「再生してたから、斃した破片はアイテムストレージに収納してやった」

 

 本来は無制限に再生する騎士だったが、破片が無くなれば再生も利かない。

 

 数を徐々に減らして最後には無くなった。

 

「べ、便利ね……」

 

 雫は呆れてしまう。

 

「さて、扉を破壊するなり何なりして進むぞ」

 

 物騒な事を宣うユート、まるで魔王だったと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「核が無い?」

 

「ゴーレムは基本的に核をエネルギー源として置き、動かす動力に使っている筈なんだが、その核が無いって事は何者かが直に動かしていた筈だ」

 

「そうなの?」

 

「雫、僕が偽りの天職として人形操者なんてしていたのは、元々がゴーレム運用をしていたからだ。例えばコイツとか」

 

 ユートはコインを弾き、ガチャガチャみたいな機械に入れると、実際にガチャガチャみたいにカプセルを吐き出した。

 

「コイツは旧型だけどな。さっきのコインが核となってゴーレムに装着、こうしてカプセルトイの如く出てくる仕組みだ」

 

 カプセルが破壊されて、中から黒いロボットみたいなゴーレムが顕れる。

 

「ゲシュペンストS型」

 

 PTXー002ゲシュペンスト・タイプS。

 

 三機が製作されたマオ社のゲシュペンスト、形式番号を同型機で占有した最初で最後の機体で、PTXー001ゲシュペンストRはギリアム・イェーガーが使って、PTXー003ゲシュペンストTは後にPTXー003Cアルトアイゼンに改修されているが、タイプSは敵にパイロットごと鹵獲されていた。

 

 尚、マオ社にはユートが別口で手に入れていた機体――【ガンダムエピオン】を提供していた為、初期型から性能の高いPTが造られていたりする。

 

 その所為でスーパーロボット大戦OGsな世界で、PTはゲーム版の機体より高い性能だった。

 

 主に云うならスーパーロボット大戦OGsより前の宇宙……スーパーロボット大戦αな世界のゲシュペンストと比べ、高い性能を誇っていたのである。

 

 ユートが出したのは謂わばOGsのゲシュペンストをミニマム化、故に旧型とはいえそれなりに性能が高いゴーレムだった。

 

「核は云ってみれば頭脳の役割も果たす。それが無いならつまり誰かの遠隔操作って可能性が高い」

 

「ミレディ・ライセンね」

 

「そういう事。という事は彼女、此方を把握しているんだろうな」

 

「情報アドバンテージ……取られたかぁ」

 

 雫は何が言いたいのかを理解して頭を抱える。

 

「まぁ、だから僕だけ戦ったんだけどね」

 

「そういう事……ね」

 

 同じアドバンテージを取られるなら、仮面ライダーのデータを渡さない形で。

 

 それが目論見だった。

 

 因みにだが、扉は破壊をしなくても開けた。

 

「マスクドライダーの二人は必要になったらキャストオフしろよ。初めからする必要は無いからな?」

 

「了解」

 

「了解ですぅ」

 

 マスクドライダーシステムを使う雫とシア、これも行き成り使って情報を丸裸にされ難くする為だ。

 

「まぁ、サガとリューンは普通に運用で構わない」

 

「ん、判った」

 

「了解だよ、ゆう君」

 

 ユエのサガは兎も角としても、香織のリューンならミレディを怒らせる可能性が高いが、それで集中攻撃をされたら流石に拙い。

 

 何故ならリューンの場合は仮面ライダーリューン、更にエヒトの使徒リューンという二つの姿が在る。

 

 エヒトの使徒は型自体は同じらしいから、後者ならミレディも見知っているだろうし、間違いなく彼女は『あのクソ野郎』の遣いと勘違いをするだろう。

 

 事実として、ナッちゃん――ナイズ・グリューエンとの出逢いで一回は使徒を見ている筈だから。

 

 本来の扉の先はスタートへ戻される部屋になっていた筈だが、どういう訳なのか普通に通路だった。

 

 その先は広大な空間で、闇が広がる中には巨大なる正方形ブロックが、幾つもの数で浮いている。

 

「生成魔法で重力魔法でも付加をしたみたいだな……それに空間魔法で拡大した訳か。先には気配が在る」

 

 どうやらミレディの胸先次第らしいが、恐らく此方を観察した結果だろう。

 

 あの蠍が変成魔法の産物だとして、騎士ゴーレムは生成魔法で造った物へと、昇華魔法を付与して性能を上げている感じか?

 

「ミレディ本人も更に強大な一点物のゴーレムへと、魂魄魔法で魂を宿らせているみたいだし、ゴーレムには再生機能が有ったから、再生魔法もだろうしなぁ。七つの神代魔法を惜しみ無く使っているって訳か」

 

 変成魔法だけ何故か微妙な使い方をしているが……

 

(軽く麻痺らせるだけの蠍を見付けて配置、こいつは有り得ないだろうからな)

 

 変成魔法なら割と自由な生物改変が出来ると聞く。

 

(まぁ、僕には【魔獣創造】が有るから要らんけど、【創成】を生成魔法で強化が出来たし、補助用に使えるかも知れないかな?)

 

 七つの神代魔法とはいえユート的に、既に持っている能力の補助用にしか考えてはいなかった。

 

「ユートさん!」

 

 シアが叫ぶが、その前にユートは動いている。

 

「Gインパクトステーク」

 

 あからさまに重力兵器を使ってやった。

 

 それは隕石の如く落下してきたブロック、ユートはそれをGインパクトステークで破壊したのである。

 

「手荒い歓迎痛み入るが、そろそろ出てきて貰おうか……ミレディ・ライセン」

 

 呼び掛けると猛烈な勢いで何かが上昇をしてきて、あっという間にユート達の頭上に出ると、浮いた状態でその場に留まり巨大なるゴーレム騎士が、ギンッと光る眼光によって此方側を睥睨してきた。

 

「うわぁ」

 

「……凄く……大きい」

 

「ま、正しく親玉って感じですね……」

 

「おっきいね」

 

 雫、ユエ、シア、香織が巨大ゴーレム騎士に対する感想を呟く。

 

 全身甲冑で全長が二〇m程度はあった。

 

 左手には鎖が巻き付いたフレイル型のモーニングスターを装備、右手には何も持っていないが某かあるのは間違いない。

 

「出たな! ミレディゴーレム!」

 

 まるでゲッタードラゴンでも現れたかの如く叫び、巨大ミレディゴーレム出現をある意味で歓迎する。

 

「やほ〜、はじめまして。みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ〜」

 

 ミレディゴーレムが陽気な声で自己紹介してくる。

 

「リィン?」

 

 何と無くだが声の感じがリインフォースⅡっぽく、思わず呟いてしまうユートはミレディに銀髪蒼瞳幼女なユニゾンデバイスを幻視してしまうが、聞いていた容姿は金髪だった筈だ。

 

「緒方優斗。右から順番に白崎香織に八重樫 雫に、ユエとシア・ハウリアだ」

 

「あ、御丁寧にど〜も〜。じゃなくてさ、君はいったい何者なのさ?」

 

「通りすがりの仮面ライダーだ……覚えておけ!」

 

「意味が判らない!」

 

 仮面ライダーなんて概念が無いし、それはそうだろうとユートも思う。

 

「何者とか言われてもな、人間とか仮面ライダーって以外に何と答えろと?」

 

「君らを観測していたけど変な格好になるわ、迷宮のトラップは次々とクリアしていくわ、思わずリスタートさせずに呼び込んじゃった訳よ」

 

「やっぱり観測してたか」

 

 番人が居るからには観測をする手段も有る筈だと、ユートも睨んではいたから意外とは考えていない。

 

「迷宮攻略者。神代魔法を得る為に七大迷宮を攻略中の人間だ。他に説明なんて必要だとは思えないが?」

 

「……どうして君らは神代魔法を求めてるんだい?」

 

「さて、序でみたいなもんだからな。僕らはエヒトに異世界から召喚されたらしくてね」

 

「あのクソ野郎に? それは大変だったね」

 

「神代魔法を七つ全て集めた上で、概念魔法に至れば世界を渡る魔法にも手が届くらしいからな」

 

「……何で概念魔法の事を知ってるのかな?」

 

「僕にも情報を得るモノが有ってね」

 

 原典知識持ちな比翼の鳥にして連理の枝。

 

 後ろの方では地球サイドが苦笑いをしている。

 

「ふ〜ん。それが何なのか訊きたいけど……」

 

「お互いに話をする目的ではないだろう?」

 

「そだね」

 

「ならば、勝った方が全てを手にすれば良い。所詮、この世は弱肉強食。強ければ生きるし弱ければ死ぬ。だから僕はお前に勝って、ミレディ・ライセンの全てを戴くとしようか。迷宮の攻略者の証も神代魔法も、お前が隠し持つ御宝も……ミレディ・ライセン自身すらをもな」

 

「欲張りだね。なら君は何を差し出すんだい? 賭けるなら等価なモノを差し出さないとね」

 

「勿論だ。僕は勇者(笑)とは違うから……な」

 

 勇者(笑)は自分が有利なだけの賭けをしようとしていたが、流石にアレと同じなのは矜持に障った。

 

「先にも言ったが僕が勝てばミレディ・ライセン……君の全てを戴く訳だから、当然ながら賭けるべき対象は僕の持つ全て」

 

「良いね、愉しくなるよ」

 

 普段ならウザい話し方で相手を煙に巻くミレディ、今回ばかりはちょっとマジになっているらしい。

 

「その前に聞かせてよ」

 

「何を?」

 

「そのオーちゃんでも造れなさそうなゴーレムだよ、ソイツの名前くらいはさ」

 

「緋の騎神テスタ=ロッサという」

 

「神を名乗るんだ?」

 

「それは造った連中に言ってくれ。この七騎神を造ったのはあの世界の基準で、千年以上は前だがな」

 

「面白い! だったら私が証明するよ、オーちゃんのゴーレムの強さをね!」

 

 片や二〇m級ゴーレム、片や七m級の人型決戦兵器とサイズが三倍違うけど、ユートは意に介した様子も無く闘うべく刀を抜く。

 

 ゼムリアストーン製で、アザンチウムがこの世界で最硬ならば、ゼムリアストーンはあの世界で最硬だ。

 

「全員、ミレディゴーレムに対して攻撃開始だ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 とはいえ、仮面ライダーの背丈は変身後に高くなっていても高くて二m弱。

 

 二〇mが相手なら一〇倍はたっぱが違う。

 

 幾ら仮面ライダーが強い能力を持つとはいっても、スケール差というのはやはり如何ともし難い。

 

 一〇倍の差は技巧で何とか出来る域を遥かに越え、サソードヤイバーはミレディゴーレムからしたなら、単なる爪楊枝でしかないであろう。

 

 戦いで爪楊枝に斃される人間もそうは居まい。

 

 というか、爪楊枝で斃されるのはちょっと……ではなく可成り嫌だ。

 

 尚、“そうは居まい”というのはやり方次第で殺れる可能性があるから。

 

 長めの爪楊枝をプッと吐いて額から脳を撃ち抜く、或いはもっと的確に毒薬を仕込んでも良い。

 

 ミレディゴーレムは表面は違うが、その下に本当のそのとしてアザンチウムを使用しており、アザンチウム製のミレディゴーレムの装甲VSゼムリアストーン製の刀という形に。

 

 【空の軌跡】を始めとする【軌跡シリーズ】でお馴染みの鉱石、これで最強の武具を造れたりするのだからその硬度も推して知るべしであろう。

 

 実際にリィン・シュバルツァーも、【灰の騎神】ヴァリマールの武器としてこのゼムリアストーンを使っている。

 

 ユートの刀……ムラマサブレードがミレディゴーレムの装甲を斬った。

 

 上の装甲の下側に漆黒の装甲が有って、それこそがアザンチウム鉱石を用いた真なる鎧。

 

「くっ、アザンチウム鉱石の装甲を斬り裂くとは!」

 

 スケールこそ三倍だが、人間レベルな仮面ライダーよりは近いからか、ミレディゴーレムにより大きめな斬撃が加えられる。

 

 運動性は確実にテスタ=ロッサの方が素早いから、ミレディゴーレムの攻撃を往なしては斬るを繰り返しており、そこら辺はいつもの【緒方逸真流】の動きで闘えている。

 

 ミレディは本来であるならば、五〇体の騎士を従える【王】の如く戦えていた筈だが、ユートが斃す度に騎士ゴーレムの破片を自らのアイテムストレージに容れてしまい、従える騎士が居なくなっていた。

 

「【禍天】!」

 

 重力球を生み出してくるミレディだが……

 

「ン・カイの闇よ!」

 

 ユートも一一もの重力球を発生させて相殺する。

 

「ま、まさか重力魔法!? というよりこのライセンであれだけの魔法を?」

 

 驚愕するミレディ。

 

「ちょっとは驚いたか?」

 

「使えるなら今更必要なんて無くないかな?」

 

「飽く迄も重力魔法だよ。神代魔法のそれは星のエネルギーを扱う魔法であり、重力の操作はその一旦にしか過ぎないだろ?」

 

「……其処まで知っているなんてね」

 

 情報源が凶悪過ぎた。

 

「さて、次だ」

 

 ユートは変身こそ解除をしたが、未だに腰に装着をされたネオディケイドライバーにカードを装填。

 

《FINAL FORM RIDE……SA SA SA SASWORD!》

 

「へ?」

 

 仮面ライダーサソードな雫が間抜けな声を上げる。

 

「ちょっと擽ったいぞ」

 

「え、まっ! ヒアッ?」

 

 何だか本当に擽ったかったのか、それとも気持ち良かったのか判らない嬌声を上げながら身体にパーツを付けて、有り得ない形へとガシャンガシャンと変形をしていき、何故かテスタ=ロッサのスケールに変化、サソードムラマサーとして握られた。

 

「フッ、原典とは違っててサブライダーもファイナルフォームライドが可能だ」

 

 更にカード装填。

 

《FINAL ATTACK RIDE……SA SA SA SASWORD!》

 

「ライダースラッシュ!」

 

《RIDER SLASH!》

 

 斬! 斬っ! 斬っ!

 

「うわぁぁっ!?」

 

 アザンチウム鉱石の装甲すら傷付ける斬撃。

 

 それでも三倍のスケールだからこそ助かっただけ、同じスケールなら完全に斬り伏せられていただろう。

 

「このっ!」

 

 天井から無数のブロックが降ってくる。

 

 だが然し……

 

「無駄だ! Panzer hindernis……展開!」

 

 闇色の魔力光で作られたバリアが、降り注ぐブロックを防いでくれていた。

 

「うっそ!? 平然と魔法を使うだけでなくこれ程の強度の防御魔法って!」

 

 余りにも有り得ない光景に驚愕を通り越して最早、感動すら覚えてしまうくらいなミレディ。

 

「魔法であって魔法じゃないからな」

 

「どういう意味?」

 

「普通は闘っている最中、そんなネタバレはしないんだが、今回は取り敢えずだが別に構わないか」

 

「余裕じゃないか?」

 

「ピンチに陥らせても貰えなくってね」

 

「くっ!?」

 

 ある意味でウザいと感じたミレディだが、これが煽りなのも理解していた。

 

「仮面ライダーが魔法を使えるのは、仮面ライダーというフィルターを通す事で魔力を似て非なるモノへと変換するから。つまり分解を受けていないのさ」

 

「まさか!?」

 

「僕の世界にはAMF――アンチ・マギリング・フィールドというAAAランクの防御魔法が有る。対象の魔力結合を阻害してやり、フィールド範囲内での魔法の発動を困難にするっていう代物だな。魔力の分解と魔力結合の阻害はまた違うだろうが、結果として魔法が使い難くなるという結果は変わらない。だけど魔力でなければAMFも意味を成さないからね」

 

「成程……」

 

「さて、再開しようか」

 

 ユートはニヤリと口角を吊り上げると……

 

「は?」

 

 複数の……千は下らない数の武器を周囲に浮かせ、悠然と浮かぶ緋の騎神の姿を見て、ミレディが間抜けな声を上げていた。

 

「ちょっ、何さそれ!?」

 

「緋の騎神テスタ=ロッサは千の武器を持つ魔人だ、中々に壮観なものだとは思わないか? ミレディ」

 

 元々が緋の騎神の力か、それとも紅き終焉の魔王(エンド・オブ・ヴァーミリオン)の異名だったのか、それは使う当人もよくは知らない事だが、ユートが使うのはエネルギーを武器に固着させた物を持たせる事で様々な武器――文字通り【千の武器】を使わせる事を可能としているのだが、ならばそれを同時運用とて可能な訳で。

 

偽・王の財宝(フェイク・ゲート・オブ・バビロン)ッッ!」

 

 それを一斉に高速で射出をすれば、彼の慢心王様張りな宝具の真似事も出来てしまうのだ。

 

「ギャァァァァァァアアアアアアアアアアッッ!?」

 

 凡そ女の子が発するとは思えない絶叫と共に爆音を響かせ、巨大なゴーレムがその勢いで吹き飛んだ。

 

「テスタ=ロッサ!」

 

 それは緋の騎神の名前ではなく、手にした緋色なる武器の銘であった。

 

 シャーリィ・オルランド使っていた武器、チェーンソーと銃が一体化した凶悪な獲物だったりする。

 

 基本的に同時期に起きた【零の軌跡】と【閃の軌跡】だったが、彼女はクロスベルで割ととんでもない事を本来なら仕出かすけど、それ以前に遊撃士であったユートと猟兵団【赤い星座】が闘った際、嬉々として……そして鬼気として挑んできたのが彼女。

 

 フルボッコにしてやったら何故か気に入られた為、【閃の軌跡】側でユートと共にトールズ仕官学校に通うとか、余りに意味不明な事態となり【零の軌跡】というか【碧の軌跡】で行った凶行……イリアに女優生命を断たせたアレをやる事も無かったと云う。

 

 尚、当然の如くフィー・クラウゼルとぶつかった。

 

 彼女は一貫してテスタ=ロッサを使って、ユートも機構を熟知していたから、こうして緋の騎神テスタ=ロッサのサブウェポンとして持たせていた。

 

 勿論、ゼムリアストーンで造られた特別製。

 

「喰らいなよ!」

 

 チュイーンッ! 甲高い音を辺りに響かせながら、チェーンソーの刃がミレディゴーレムの左胸部分を斬り抉っていく。

 

 更に追撃とばかりに放たれる銃弾も、贅沢なまでにゼムリアストーン弾だ。

 

 胸部がグチャグチャとなったが、流石はアザンチウム鉱石で鎧った上に強化もされているであろうから、破壊するには時間が掛かると思われるが、ユートとしてはそんな時間を掛けての破壊をする気は無い。

 

 弱体化させれば充分だ。

 

 テスタ=ロッサが離れ、更に鎖による拘束。

 

黄金星雲乃鎖(ゴールデンネビュラチェーン)!」

 

 グルグルと縛り付ける。

 

大熊捕縛(グレートキャプチャー)!」

 

「なっ、動けない!」

 

 神鍛鋼(オリハルコン)、ガマニオン、銀星砂(スターダストサンド)という、神秘金属の合金製の鎖。

 

 しかも配合は黄金聖衣のものな上に、神血(イーコール)での強化すらしているアンドロメダの星雲乃鎖と同じ造り。

 

 異世界だから小宇宙による強化こそ不可能だけど、それでもミレディゴーレムでは千切れない強度。

 

 ブロックに仰向けで拘束されたミレディゴーレム。

 

「シア、殺れ!」

 

「アイゼン、黄金モード! ですぅ!」

 

 上空にはアイゼンⅡを手にしたシアの姿が……

 

 黄金モード――【勇者王ガオガイガー】の決戦兵装を模した巨大ハンマーだ。

 

 そしてそれを扱う義手、マーグハンドが顕現する。

 

「ハンマーコネクトッ!」

 

 シアのより遥かにデカイ腕が装着された。

 

「ゴルディオン……ハンマァァァァーッッ!」

 

 黄金モードアイゼンⅡを手にして、全体的に黄金色一色に輝きを放つシア――仮面ライダーザビー。

 

 特殊な燐光を纏う事で、ちょっとした保護膜を展開して黄金色となる。

 

「な、何を!?」

 

 見た目にはザビーな姿、そんなシアが持つアイゼンⅡの凶悪な変化を見ては、ミレディも流石に危機感を覚えたらしい。

 

 マーグハンドから釘を取り出し……

 

「ハンマーヘル!」

 

 ミレディゴーレムの左胸に釘を、アイゼンⅡにより全力で叩き込んだ。

 

「嘘っ、貫かれた!?」

 

 弱体化された上に強力な釘な為、ミレディゴーレムの左胸の装甲はアッサリと貫かれて核へと届く。

 

「ハンマーヘブン!」

 

 更には釘を引き抜いた。

 

「嗚呼っ!?」

 

 最早、ミレディゴーレムは核を喪って動けない。

 

 追い討ちだとばかりに、シアはゴルディオンハンマーを振り下ろす。

 

「光になぁぁぁれぇぇぇぇ……ですぅ!」

 

 重力波を発しながら高速で打ち下ろされ、ミレディゴーレムは光子のレベルにまで分解されていく。

 

「オーちゃんのゴーレムがぁぁぁっ!?」

 

 最後の絶叫だった。

 

「香織、ブランクカードをあの光に投げろ!」

 

「へ、はい!」

 

 言われた通りにカード、プロパーブランクを投げる香織、カードが光子を吸収して再び回転しながら香織の手に戻っていく。

 

「ABSORB?」

 

 ハートスートのカテゴリーQ――【ABSORB】MILADY GOLEMと書かれたカード。

 

 名前に関しては通り名、或いは認識された名前が付く様である。

 

「単体では意味が無かったよね、このカテゴリーQっていうカードは」

 

 ちょっと残念そうだが、雫は何かに気付く。

 

「でも、ジョーカードライバーがカリスラウザーと同じ物なら、普通にミレディゴーレムに変身が出来たりするんじゃないの?」

 

「出来るよ。始がカテゴリーJでウルフアンデッドに成ったみたいにな」

 

 仮面ライダーリューンには更に、ラウズアブゾーバーが標準装備されており、ワイルドフォームへの変身も可能だし、ジャックフォームも用意されていた。

 

 仮面ライダーカリスが元だから、キングフォームでは無いのがミソである。

 

「ユートさん、核ですぅ」

 

「ああ」

 

 テスタ=ロッサから降りたユートは、シアから渡された核を持って隠し部屋へと向かった。

 

 四人もそれに倣う。

 

「此処がミレディの部屋、この小さなゴーレムが部屋で活動する為の物か」

 

 下手をしたらユエよりも小さなゴーレムだ。

 

「まぁ、必要は無いな」

 

 何故ならユートは最早、ミレディを逃がす心算など無かったから。

 

「積尸気冥界波!」

 

 小宇宙は使えないが技は魔力でも扱える。

 

 ちょっと威力は弱まるのだが、神が相手なら兎も角として人間の魂を引き抜くのには充分過ぎた。

 

 ミレディの魂魄が核から引き抜かれる。

 

 魂だけだから声も出していないが、普通に悲鳴を上げているであろう。

 

「魂魄から霊体情報に対しアクセス、アストラルより生前の記録を精査」

 

 人間の体は水が35L、炭素20Kg、アンモニア4L、石灰1.5Kgに、リン800g、塩分250g、硝石100g、硫黄を80g、フッ素7.5g、鉄を5g、ケイ素を3g、その他少量の15の元素と個人のDNA情報によって構成をされていると云う。

 

 これは【鋼の錬金術師】でエドワード・エルリックが人体錬成時に言っていた事だが、一番の問題となるのが魂の錬成であった。

 

 母親の錬成に失敗して、自身は片脚を喪ってしまった上に、弟は全身を奪われてしう結果になったけど、ユートの【創成】はあれとシステムが異なり、更にはそもそも魂も確保した状態だから錬成などしないし、する必要性すらも無い。

 

 特殊な力を持っていない汎暗黒物質を【創成】で、人体錬成に必要となる物質を創り、それを以て人間の身体を創り出した。

 

 冥界で転生する前な為、漂白されていない魂に生前の記録が宿る為に、姿形もそうだがDNA情報すらも塩基配列を正しく結合し、ミレディ・ライセンの形を素っ裸で成してしまう。

 

「積尸気転生波!」

 

 魂と肉体を繋ぐ鎖が断たれた――完全に死亡をした状態であれ、繋ぎ直し蘇生させる秘技を使いミレディの魂を肉体に。

 

「カハッ!」

 

 蘇生されて数千年振りの呼吸故か噎せ、咳き込みながらゆっくり目を開く。

 

 蒼い瞳をパチクリと瞬かせると、(おもむろ)に起き上がって両手を見た。

 

「あ、う……」

 

 声帯での発声に戸惑い、タイムラグを生じさせながらも声を出す。

 

「な、生身? 私……生きてる……」

 

 祝え! それは数千年前に死した希代の魔術師たるミレディ・ライセン復活の瞬間であった。

 

 

.




 ミレディ・ライセン復活です。そろそろ次の章に進みたい処……


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

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