ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 今回で一応、第二章は終わりになります。





第33話:重力魔法とミレディをGETだぜ!

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 見た目的には【ありふれた職業で世界最強零】時点のミレディ・ライセンで、肉体年齢は一応だが一六歳としてある。

 

 パッと見では下手すると高校生や中学生というか、小学六年生くらいにも見えてしまえるが、彼女の当時の姿だから文句を言われても困ってしまうだろう。

 

 飽く迄もアストラルへと刻まれた一六歳時の記録を基にして構成した訳だし、どうしても文句を言いたいなら両親のDNAに言って欲しい。

 

 だけど動いている。

 

 手が、脚が、心臓が……

 

「最早、幾年月かも忘れるくらい振りに生身の身体を動かした感想は?」

 

「ゴーレムとは違うね」

 

「まぁ、可成り感覚なんかが異なるだろうな」

 

「うん、悪くない気分だ。オー君やナッちゃん、メル姉達には悪いと思うんだけど、今の私は生きてる実感を堪能してるよ」

 

「その……オー君だとか、ナッちゃんやメル姉ってのは【解放者】のメンバーだよな? オー君が謂わば、オスカー・オルクスで……ナッちゃんはナイズ・グリューエン、メル姉というのがメイル・メルジーネか」

 

「お、よく知っているね。そういえば何だか情報源が有るみたいに言ってたか」

 

「まぁね。だから【解放者】の七人に関しては多少なり情報もあった。ミレディの情報が多かったがね」

 

「ミレディたんの?」

 

 少なくとも本編で唯一、生きた――ゴーレムだったけど――【解放者】だったのと、ウザい口調から情報の露出も大きかった。

 

 映像のみとかではやはり全てが判る訳ではない。

 

「さて、僕が勝った訳だからミレディは僕のモノだ。生き返った肉体で早速ヤってみるかな?」

 

「う゛……悪いんだけど、それは少しだけ待って貰って良いかな?」

 

「何故?」

 

「勿論、賭けは君の勝ち。ミレディちゃんは君のモノだから、好きにする権利は当然ながらあるよ」

 

「そうだね」

 

 胸は物足りないが美少女――数千年モノだけど――なのは間違いなく、充分に愉しめるとユートは踏んでいるのだ。

 

「その、ね。私には好きな人が居たんだ」

 

「オスカー辺りか?」

 

「違うよ。ううん、若しもあの時に彼と出逢わなかったら或いは、オー君やナッちゃんとそんな関係に発展をしたかもなんだけどさ。たった一日足らずの出逢いだったんだ。会えないのは理解しているけど、せめて彼処に行って私は未来に進むって誓いを立てたい」

 

「彼処……ね」

 

「其処で誓いを立てるまで綺麗な身体で居たいって、我侭を言っているのは理解してるけど……御願い! ユー君」

 

「ユー君ねぇ? つーか、ミレディが好きになったっていう男か? 名前は?」

 

「知らない」

 

「うぉい!?」

 

 首を横に振りながら言うミレディに、ユートも少し呆れ気味となってしまう。

 

「素顔も見てない。名前も通り名だったらしいから」

 

「やれやれ、で? 通り名は何て云うんだ?」

 

 どちらにせよ数千年前の人間、今更ながら再会など出来る筈も無い。

 

「ゼロワン」

 

「……は?」

 

 周囲で聞いていた香織や雫やユエ、シアまでが首を傾げたくなる名を告げた。

 

「そう、ゼロワン。格好良かったんだ〜。素顔は知らないけど、私を護ってくれながら『お前を止められるのは唯一人、僕だ!』なんて叫んでさ〜」

 

 正しく恋する乙女な体で頬を朱に染め、イヤンイヤンと頬に手を当てながら、クネクネと素っ裸な肢体を動かしている。

 

「『お前を止められるのは唯一人、僕だ!』……そう言ったのか?」

 

「記憶が曖昧になっていたけど、ゼロワンの事だけは決め科白と一緒に覚えていたから間違いない筈だよ」

 

 ユートは難しい表情となりながら言う。

 

「ゼロワンは二種類だけ。同じ石ノ森作品なんだが、大昔の特撮作品で【人造人間キカイダー】の後番組、【人造人間キカイダー01】か若しくは、【仮面ライダー01】って事になる。そしてミレディの言ってた決め科白なら、間違いなく仮面ライダーの方だろう」

 

「し、知ってるの!?」

 

「一応は」

 

 まだこの世界の地球では放映されてない、令和という新時代の仮面ライダーの第一号である。

 

 ユート自身も狼摩白夜からの記憶で識るのみだ。

 

「だが、主人公の飛電或人の決め科白は『お前を止められるのは唯一人、俺だ!』な訳で……一人称が『僕』な仮面ライダーゼロワンとなると」

 

「ゆう君しか居ないよね」

 

 香織が引き継ぐ。

 

「……へ?」

 

 ミレディがユートを見遣りながら、間抜けた声を上げてしまうのは仕方ない。

 

「ええぇっ!? ユー君がゼロワンって、いったいどういう事さ!?」

 

「じゃあ、論より証拠と」

 

「百聞は一見に如かずね」

 

 雫も似た格言を。

 

《ZERO ONE DRIVER》

 

 ユートが【飛電ゼロワンドライバー】のバックルを腰に据えると、ヒデンリンカーが伸長してきて右側の側面と合着。

 

 自己主張をしながらも、ベルトとして装着された。

 

《JUMP!》

 

 ライジングホッパープログライズキーのスイッチを押すと、一言だけの簡潔な電子音声が鳴り響く。

 

 ドライバーのオーソライザーに認証させる。

 

《AUTHORIZE》

 

 トランスロックシリンダーのロックが解除されて、ライジングホッパープログライズキーの展開。

 

 黄色い飛蝗型ライダモデル顕れると、そこら辺を飛び回り始めてくれた。

 

 キーモードとなった為、それを手にした状態でバッとポーズを取る。

 

「変身っ!」

 

 ライズスロットへ装填。

 

《PROGRIZE!》

 

 左側のライズリベレーターが展開され、プログライズリアクタが解放されて、ライダモデルがユートへと合着をするかの様に飛び上がり、のし掛かってくるとまるで装着される鎧に変化をして合体。

 

 

《TOBIAGARIZE RISING HOPPER!》

 

 仮面ライダーゼロワン・ライジングホッパーに。

 

《A JUMP TO THE SKY TURNS TO A RIDER KICK!》

 

 それを見たミレディは、少し小首を傾げていた。

 

「似てる。間違いなく似てはいるんだよ」

 

「似てるだけ?」

 

 雫は意外そうに訊く。

 

「いや、本当に似てるよ。だけどやっぱり違うんだ」

 

「そうすると此方か?」

 

 ライズリベレーターを戻して、ライジングホッパープログライズキーを取り出したユートは新しくキーを手にする。

 

《SHINING JUMP!》

 

「あれ?」

 

「どうしたのよ香織?」

 

「何だかいつものプログライズキーと違う形……」

 

「そういえばそうね」

 

 プログライズキーの尻柄の辺り、ちょっとした凹みが付いている。

 

《AUTHORIZE》

 

 オーソライザーに近付けると認証されたらしくて、プログライズキーからは激しく光を放つが、ユートの造ったゼロワンのシステムに【衛星ゼア】は要らないが故に、衛星軌道上にまで届いたりはしない。

 

 各プログライズキーにはライダモデルが粒子状態で封入され、オーソライザーで認証をすると解放される仕組みとなっていて、更にプログライズ……早い話が装填すると仮面ライダーの素体状態の者と合着して、アーマーとなるのがユートのゼロワンシステム。

 

 ライダモデルが弾丸として放たれ、素体ライダーを撃ち抜く様に合着をするのがエイムズシステムだ。

 

 顕れたのは小型を背負う大型の飛蝗型ライダモデルであり、データのネットで捕まえる様にユートと合着をした。

 

 ユートも通常のライズアアーキテクターが、シャイニングアーキテクターへと変化を成す。

 

《THE RIDER KICK INCREASES THE POWER BY ADDING TO BRIGHTNESS!》

 

 飛蝗の後ろ脚を模す推進機器……シャイニンググラディエーターが装着。

 

《SHINING HOPPRE!》

 

 赤い複眼に黒いインナーにライトイエローのアーマー姿は、ライジングホッパーの意匠をある程度は残した侭に変化をしていた。

 

WHEN I SHINE,DARKNESS FADEE(僕の光が闇を消す)

 

「仮面ライダーゼロワン・シャイニングホッパー」

 

「これ、基本のライジングホッパーをパワーアップさせた感じ?」

 

「そうみたいだね」

 

 どんなシチュエーションで使われたかまで知らないのだが、ライジングホッパーを直にパワーアップさせたと云わんばかりに飛蝗型の仮面ライダーゼロワン。

 

「似てる。極めて似てる。だけどやっぱり何かが違うんだよ……」

 

「「ええっ!?」」

 

「ですぅ!?」

 

「……もうこれで良いんじゃない?」

 

 驚く香織と雫とシアに、面倒臭そうなユエ。

 

「ひょっとして青みとかが掛かったりするか?」

 

「っ! そうだ! 確かにそんな感じだったよ!」

 

 我が意を得たりみたいに叫ぶミレディ。

 

「ならこれかな?」

 

「それは?」

 

「仮面ライダーバルカンのアサルトウルフプログライズキー。これを外して」

 

 言いながらユートが外したのは、プログライズキーの尻柄の艶消し銀のパーツだった。

 

「アサルトグリップ」

 

 更にはシャイニングホッパープログライズキーへと填め込み、シャイニングアサルトホッパープログライズキーにしてしまう。

 

 長い名前だ。

 

《HYPER JUMP!》

 

 アサルトグリップの赤いスイッチを押すと、いつもとは少し違う音声が響き、それをゼロワンドライバーのオーソライザーに。

 

《OVER RIZE》

 

 これもまた違う。

 

 プログライズキーを展開させて、ユートが天高く掲げるとライダモデルらしきが頭上に浮かんだ。

 

WARNING,WARNING. THIS IS NOT A TEST!(警告、警告……これは訓練ではない)

 

 シャイニングアーキテクターへと合着。

 

《HYBRID RIZE……SHINING ASSAULT HOPPRE!》

 

 先程の仮面ライダーゼロワン・シャイニングホッパーに、青いアーマーが追加された感じの姿になった。

 

NO CHANCE OF SURVIVING THIS SHOT(この一撃で生き残る術などない)

 

 仮面ライダーゼロワン・シャイニングアサルトホッパー、それはシャイニングホッパーにアサルトウルフのパーツが散見される姿。

 

「お前を止められるのは、唯一人……僕だ!」

 

 微妙に飛電或人と異なる決め科白を言ってみたら、ミレディの蒼い瞳が潤んで涙を浮かべている。

 

「それ、そうだよ。あの時に出逢ったゼロワンだよ。仮面ライダーゼロワン……声も思い出した。確かに、君だったんだね」

 

 大切なナニかに廻り会ったのだと、この時ばかりはミレディもまるで十代程度の乙女の如く、ユートへと抱き付いてきた。

 

「だけど、どういう事? ミレディさんの生きていた時代は下手したら数千年は前で、優斗は現代に生きているのよ?」

 

「ミレディの記憶が可成り曖昧みたいだし、この分だと時間を遡行して出逢った訳じゃ無さそうだな」

 

「あっけらかんと言うわね……遡行したとか」

 

「僕には珍しくも無いよ」

 

「そ、そうなの?」

 

「古代ベルカに跳ばされ、聖王や覇王と共に真王をやった事もあるからね」

 

「……群雄割拠の時代か」

 

 雫には想像もつかない、況してや王の一角など。

 

「世界や時間を跳び越えるのは今更だからね」

 

 それも雫には想像が出来ない現象であろう。

 

「再誕世界でも二十数年前に跳ばされたな」

 

「ちょっと!?」

 

「で、結婚前の両親に会ったりダメ親父のチームと闘ったりした」

 

「スッゴい危ない事をしてるわね!」

 

 下手に闘って父親を抹殺したらどうする気だ? という意味で驚く。

 

「そこら辺は、元の世界線に回帰する為にもある程度の節度は保ったさ。まさかダメ親父を殺したり、母さんをNTRしたりなんてのはしない」

 

 そういう意味で云うと、某・神にも悪魔にも凡人にもなれた男は、可成り冒険をしていたのだと思う。

 

 選択肢次第で恋人の母親をも抱いている訳だし……何より完全に世界線が変化していたのだから。

 

 尚、母さん――アリカをNTRしてはいないけど、完全に男女のソレなレベルで甘えていたりする。

 

 正確には二十数年前ではなく、母親を救い出して後に【OGATA】本拠ビルに匿った際に……だが。

 

「つまり、優斗が過去へと跳ばされるのはデフォ?」

 

「其処までは言わないよ。実際、僕はミレディの居た過去には多分だが跳んではいないからね」

 

「どうして判るのよ?」

 

「ミレディの記憶が曖昧に過ぎる」

 

「は?」

 

 意味が解らなかったか、雫は間抜けな声を上げながら小首を傾げる。

 

「どういう事?」

 

「数千年でボケたんなら、それも構わないんだがね。恐らくはそうじゃないよ」

 

「ボケって……でも違うならどういう事なの?」

 

「僕がミレディと逢ったのはもう少し未来で、しかも恐らくはどちらも決定的な時間移動はせずにだよ」

 

「? よく解らないよ」

 

 見た目相応な表情と態度は昔のミレディには無く、自らを変えてウザくなった頃にも余り見られない。

 

「先ずは、ミレディ自身が普通に数千年を過ごしたからには、君が時間移動なんてしている筈が無いな」

 

「まぁ、そうだね」

 

「では僕は? 少なくとも今現在の僕は時間移動してる訳が無い。未来の僕は? やはりそれも有り得ないだろう。それなら君の記憶が曖昧な理由が無いよ」

 

「やっぱり記憶がネック? だとしたら……」

 

 ユートはシャイニングアサルトホッパープログライズキーを、ゼロワンドライバーから引き抜いて変身を解除しながら言う。

 

「……あ」

 

 ちょっと寂しそうな顔で思わず声を出すミレディ、どうやらオスカー・オルクスやナイズ・グリューエンらより、『ゼロワン』への想いが強かったらしい。

 

「先にも言った時の邂逅、何らかの原因で僅かな時間のみ同じ場に立ったんだ。記憶が曖昧なのは世界意思みたいなモノに、ミレディを含む全員の記憶を消されたんだろう」

 

「全……員? オー君とかナッちゃんやメル姉も?」

 

「どうしてその三人を? 否、つまり僕と出逢ったのはヴァンドル・シュネーとリューティリス・ハルツィナとラウス・バーンが仲間になる前って事か」

 

「あ、そういえば……」

 

 何と無くだが言った仲間の名前……というよりは、愛称だがオー君とナッちゃんとメル姉の三人。

 

 オスカー・オルクス。

 

 ナイズ・グリューエン。

 

 メイル・メルジーネ。

 

 これに、ミレディ・ライセンとリューティリス・ハルツィナとラウス・バーンとヴァンドル・シュネーを加えた七人が、七大迷宮の創造した【解放者】だ。

 

「記憶は消されたんだろ。とはいえ、どうもミレディの記憶消去は不完全だったみたいだけどな」

 

「嬉しいけど複雑だよ」

 

 ミレディはまるで夢現、オスカー達も何だか不思議な感覚は持っていた為に、頭から否定をされたりはしなかったが、やはり寂しさを感じていたから。

 

「問題なのは、記憶消去って過去側だけに働く訳じゃない事だね」

 

「え、まさか?」

 

「僕を除く雫達もその際、記憶は喪われるだろう」

 

「「「「っ!?」」」」

 

 驚く雫達。

 

「本来ならな」

 

「本来ならって?」

 

「僕の【閃姫】になってる雫達は、僕の能力が一部だが使えるんだ。パッシブ系スキルも幾つか有るけど、【特異点:EX】を可成り弱めた【特異点:B】くらいで付いている状態だよ」

 

「特異点って、若しかして【仮面ライダー電王】?」

 

「そう。時間改変の影響を受けない存在、電王に変身する野上良太郎やハナの様な存在だね」

 

「え、ゆう君って電王に成れるのかな?」

 

「変身なら可能だ、香織」

 

「本当に?」

 

「パスにベルトにイマジンの三点セットが有ればね。パスとベルトは持っているけど、イマジンが居ないから変身してもプラットフォームでしかない」

 

 そう言うと雫が……

 

「プラットフォームって、龍騎で云えば」

 

 仮面ライダー龍騎からの想像をしていた。

 

「『折れたぁっ!?』みたいなもんだな」

 

「「ぶふっ!」」

 

 ネタを知っていたからか噴き出す雫と香織。

 

「折れたって何?」

 

「【仮面ライダー龍騎】という噺で龍騎がブランク体の侭に敵さんと戦った際、ライドセイバーがポッキリと逝ったんだがね」

 

「はぁ? 武器が壊れるのって普通だよね?」

 

 当然、ミレディ・ライセンには理解が出来まい。

 

 それはトータス組となるユエとシアも同様であり、二人も意味がよく解らないと首を傾げていた。

 

 あれは撮影の時に不備で起きたアクシデントだが、(スーツアクター)の人がアドリブをした結果だ。

 

 だから面白い。

 

 当たり前だがネタを知らなければ、意味不明な科白でしかないであろう。

 

「取り敢えず、これで心配は無くなった……か?」

 

「そ、そうだね。ユー君が『ゼロワン』なら話は簡単だよ。本当に間違いなく、君がそうなんだね?」

 

「このトータスに転生者か転移者が他に居て、特典に【仮面ライダーゼロワン】系列を得てなければな」

 

 ピンポイントでそういう輩が居れば話は違う。

 

「居ないでしょ」

 

「居たらもっと有名だと思うよ?」

 

「ま、雫と香織の言う通りだろうな。だから安心して身を委ねると良い」

 

「や、んっ!」

 

 耳許で囁かれたミレディは熱い吐息に頬を染める。

 

 お腹の奥からジンワリとナニかが溢れてくる感覚、事実として股間が既に潤いを帯びていた。

 

「まぁ、その前にイベントを済ませておこうか」

 

「イ、イベント?」

 

 未だに頬を朱に染めながらも聞き返す。

 

「神代魔法だよ。さっさと重力魔法を寄越せって話」

 

「ああ、でもユー君ってば重力球とか使っていたし、ミレディたんの重力魔法って必要有るのかな?」

 

「君のは正確に云うなら、『星のエネルギーに干渉する魔法』だ。僕も自分自身の能力に絡めればそれなりに使えるさ。実際オスカー・オルクスの生成魔法も、僕の【創成】の補助に使って使い勝手が良くなった。お陰でミレディの肉体創造もスムーズだったしな」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 あれ? と思う。

 

「生成魔法で肉体をって、変成魔法じゃなく?」

 

「ああ、僕はまだヴァンドル・シュネーの大迷宮には行ってないしな」

 

 クリアしたのはオルクスとライセンのみだ。

 

「でも、生成魔法ってのは『無機的な物質に干渉する魔法』であって、生命体へ干渉をするなんて……」

 

「確か変成魔法は『有機的な物質に対する干渉魔法』だったか? 生命エネルギーが得られてないならば、人間であれ魔物であれその素材は全て無機物。骨だってカルシウムの塊に過ぎないんだぞ?」

 

 カルシウム自体は一応、無機物と呼んで差し障りも無いだろう。

 

 だいたい、カルシウムを有機物と定義したら血の中に鉄分が存在する以上は、鉄分も有機物か? という話にまで拡がるのだから。

 

 恐らくそこら辺は意識の問題なのだろうし、それにユートは昔にガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグを治す際、寧ろ破壊された肉体を無機物として直してから魂を積尸気転生派で戻し、復活をさせた過去もある。

 

 事実として壊れたガトウの肉体を、ユートは単なるカルシウムや蛋白質の塊として修復していた。

 

 尚、有機物とは炭素を含む化合物の中で炭素と酸素からなる物を云う。

 

 また、有機物とは生物の体内で作られる炭水化物、脂肪、蛋白質などの他に、無数の人工的に合成された有機化合物が有る。

 

 つまり、カルシウムにせよ蛋白質にせよ事実上では有機物であったり。

 

 ユートは意識的に生命体として活動してるか否か、それで分けているから問題も無く力を使えていた。

 

 つまり、ミレディの肉体も生命活動する前は生命体に非ず、生成魔法で普通に創造の補助が出来る。

 

 とはいえ、原典のハジメが同じ事をやろうとしても当然ながら不可能。

 

 ハジメに出来るのは精々……というには物騒過ぎるのだが、近代兵器的アーティファクトの製作くらい。

 

 ユートの場合は【創成】を主に、生成魔法を副にしているから成り立つ。

 

 そもそもにして【創成】とは、汎暗黒物質に干渉をして想像を創造に変換する能力なのだから、生命体を生命活動前の状態で創造をするのは御手の物。

 

 難しく考える必要自体が無かった。

 

「それじゃ、魔法陣に乗ってくれる?」

 

 言われた通り魔法陣の中に入るユート達だったが、今回の場合はオルクスの時とは違い、試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているから、記憶を探るプロセスは無くて直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。

 

 ユート達は経験済みな事だから思う処も無いけど、シアは初めての経験に身体を跳ねさせていた。

 

 前回はオスカーの長ったらしい説明込みで時間も掛かったが、今回は僅か数秒で刻み込みは終了した為、割とあっさりと神代魔法を手に入れる。

 

「ユー君はすんごい適性、何なのこれ? ってレベルなんですけど……」

 

「僕の転生特典は『魔法に対する親和性』だからな、それが再転生してからも活きてるんだろう」

 

 可成り拡大解釈されて、精霊に慈愛を受けてしまい精霊魔法など、本当に魔法と付けば何でも良いのかと云いたくなるくらい親和性が高い。

 

「金髪ちゃんも可成り適性が高いね。ポニテちゃんは余り適性は高くないかな。ロングちゃんは割かし高いけど、それでも金髪ちゃん程じゃないね。ウサギちゃんは吃驚するくらいに適性が無いよ」

 

「やっぱりですぅ」

 

 判ってはいたがシアには魔法適性が殆んど無い。

 

「ウサギちゃんは自分自身の体重の増減くらいだね。ポニテちゃんは武器に重力を掛けて威力を増すとか、ロングちゃんはそれなりに重力魔法を扱える筈だよ。で、金髪ちゃんは弟子にしたいレベルで高い適性だ。ユー君はもう勝手にやっててって感じかな?」

 

 投げ遣りだったがユートもそれで構わなかった。

 

 そして、折角の神代魔法が体重の増減にしか使えないシアは打ち拉がれる。

 

「シアの適性……ねぇ? やっぱりシアは肉体作用の方が合うんだな」

 

 根っからの強化系とか、何処のゴン・フリークスかと思える特性である。

 

「ま、それは後で良いか。それじゃあ、ミレディ」

 

「あ、うん……」

 

 取り敢えず魔法陣のある部屋に扉が有り、其処からミレディの部屋に入る。

 

「何にも無いな。本に観葉植物に集合写真くらい?」

 

 オスカー・オルクスらしきと、ミレディ本人と他に数人が写る写真。

 

 中心に居る二人こそが、眼鏡はオスカー・オルクスで少女がミレディだろう。

 

 他にも数名、【解放者】の中心人物たる七人が写る写真だった。

 

「無いなら無いで良いか」

 

 ユートはキングサイズのベッドを出した。

 

「今のって、オー君の持っていたアーティファクトの【宝物庫】じゃないよね? 何なの!?」

 

「亜空間ポケット。機能的には【宝物庫】と同じだ」

 

 色々と上位互換だが……

 

「さて、始めようか」

 

「はぇ?」

 

 お姫様抱っこでベッドに連れられ、ドサッと真っ白なシーツの布団の上に乗せられるミレディ。

 

「や、優しくしてね?」

 

「問題は無い」

 

「――あ!」

 

 数千年モノながら新生した肉体の処女をユートへと捧げ、初めての行為で初めての絶頂を経験する。

 

 時に激しく攻められて、時に優しく撫でられ、時には緩やかに動かれながら、欲しい時にキスをくれるからすっかり参ってしまう。

 

 翌朝、腰砕けで立てなかったが故に、ライセン大迷宮を出るのを一日伸ばしてしまい、更に雫達を加えた乱交に突入していた。

 

 ミレディは完全に溺れてしまっていたと云う。

 

 

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 次からは第三章:竜人姫……の予定です。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

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