ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 一応、今回から新章。





第三章:竜人媛
第34話:ブルックの町での最後の一時


.

 一通り愉しめたライセン大迷宮での逢瀬、ユート達は真っ当に迷宮脱出呪文(リレミト)で大迷宮から出てしまう。

 

「水で川に流す最短距離が有ったんだけどな」

 

「「「「要らない」」」」

 

 取り敢えず見た目の説明から、雫と香織が水洗便所を想像してしまった上に、明らかに溺れそうな仕掛けにシアもユエも閉口をするしかなかった。

 

「にしても、オルクスの時は使って貰えなかった魔法が今はアリ……か」

 

「前は彼女とかより以前に仲間や友達とさえ思われて無かったって、こういう所でマイナスな部分とか出てくるよね」

 

 オルクスの時はユートが二人を友人認定すらしてはおらず、パーティを組めていなかったからリレミトの範囲対象外だった。

 

 唯一、畑山愛子先生だけは対象内だったのだけど、この場合はそう言った処で彼女は折れないだろうし、話さず三人を諸共一緒に喰ったのである。

 

 ミレディが何だか一つ所を見ているのに気付く。

 

「どうした?」

 

「あ、ん。ちょっと……」

 

「若しかしてベルタの……ベルの死んだ場所か?」

 

「っ! どうして?」

 

「言っただろうに、僕には情報源が有るってさ」

 

「そっか、その情報源とやらはミレディたんとベルの事も識ってるんだねぇ」

 

「ちょっと違う情報源だったりするけどな」

 

「――?」

 

 可愛く小首を傾げているミレディに、ユートは苦笑いを浮かべてしまう。

 

 【ありふれた職業で世界最強】の原典知識だけど、ユーキが識っていたのは飽く迄もWeb版の最終話〜アフターが幾つかまで。

 

 【ありふれた職業で世界最強零】に関する情報源、それは狼摩白夜であった。

 

 白夜がこんなアニメとか特撮の知識が豊富な理由、それは実は香織と似たり寄ったりな理由だった。

 

 香織が所謂、オタク知識を身に付けたのはハジメの趣味に合わせたかったからであり、白夜もまたユートの趣味に合わせて知識を得ていたらしい。

 

 特に仮面ライダーなら、自分の好きなライダーを語れるレベルで、その中でも【仮面ライダーアギト】が好きなライダーだと云う。

 

 だから転生特典で獲ていた【ゲネシスドライバー】と【ピーチエナジーロックシード】との引き換えに、ユートはアギトの【オルタリング】を渡した。

 

 彼女の死んだのは令和に入ってから、それ故にこそ【仮面ライダーゼロワン】の情報も持っていたのだ。

 

 【ありふれた職業で世界最強零】の情報で、ライセンで死んだというベルタの事もユートは識り得た。

 

「墓参りでもしたいなら、少し寄り道しても構わないんだが?」

 

「お墓は無いよ。ううん、正確にはもう風化しちゃって無くなってる筈。地形も変わって場所も判らなくなってるかな?」

 

 数千年……数十世紀も経ったら確かに地形は変化もしているだろう。

 

 仮に二千年だったとしても相当に変わる。

 

 某・石化世界でもそれは証明をしているし。

 

「死んだ場所は判る?」

 

「え、うん。ライセン大峡谷は大して違わないから」

 

「なら行こうか」

 

「良いの?」

 

「そのくらいは時間を取れるよ。別に大迷宮攻略だって性急にって訳じゃない」

 

「うん、ありがと」

 

 頬を染めて潤む瞳。

 

 香織と雫は『スケコマシ』と、遠い目をしながらも見つめていたと云う。

 

 墓参りとはいかないが、ベルタへの報告も済ませたミレディを加えた一行は、取り敢えずブルックの町に戻る事にする。

 

「お、戻ったんだな」

 

「覚えていたんだ」

 

「そりゃ、な。まだ十代とはいえ綺麗所を侍らせてる上に、珍しい白髪の兎人族の奴隷持ちだぜ? 鮮烈過ぎて忘れられねっての」

 

「成程な」

 

「しかも何か増えてるし」

 

 金髪ポニーテールに蒼い瞳な美少女、ミレディ・ライセンを見ながら言う。

 

「羨ましかろ?」

 

「てめ、言うかそれ!」

 

 ハーレム状態で美少女を侍るユートに、ブルックの門兵をしている男は羨望と嫉妬を目に込めた。

 

「しかもこれから更に増える予定だ」

 

「も……」

 

「も?」

 

「もげちまえ!」

 

 下半身の事を言っているのか、誰得で涙目な門兵がユートに叫んだ。

 

「取り敢えずはステータスプレートな」

 

「確認したが、新顔の分はどうしたんだ?」

 

「ちょっと無くしててね、ギルドで作って貰う予定」

 

「そうか、なら仕方ない。再発行は割と高いぞ?」

 

「金には困ってないさ」

 

「羨ましいねぇ。美少女を侍らせた上に金持ちかよ。通って良いぞ」

 

 ブルックの町の門は通過出来たし、前に宿泊をした【マサカの宿】へ向かう。

 

 

 【マサカの宿】に着く前から、ジロジロと嫉妬を含む視線やエロい視線が此方に突き刺さってきていた。

 

 だけど何人かは怯えた目をしているし、何故か股間を押さえていたからきっと美少女を視て、思わず自慰でもしたくなったのだろうと気にしないユート。

 

 勿論、そんな筈は無い。

 

 何しろ――『スマ・ラヴ』という単語が飛び交っていたのだから。

 

「因みに、ミレディたん達を無理矢理に襲って来たらどうしたの?」

 

「平成始まりの仮面ライダーが四本角を生やしつつ、真っ黒な身体で黒い複眼になって、そいつらを燃やしてるんじゃないか?」

 

「えっと?」

 

 意味が解らなかったらしいミレディは、困った顔でポリポリと頬を掻いてしまうけど、一応は怒ってくれるらしいから喜ぶ。

 

 ミレディも【閃姫】契約をしたし、彼女の一人……ハーレムメンバーと認識をされているし、自分の為に彼氏が怒るなら悪くない。

 

 尤も、意味を間違いなく理解した香織と雫は真っ青になっていたが……

 

(ゆ、ゆう君が過激だよ……雫ちゃ〜ん)

 

(ま、まぁ、嬉しいと言えば嬉しいけどね)

 

 お姫様思考な雫としては守られたい訳で、自分の為に騎士様が怒りに燃えるのは確かに悪くない。

 

 ユートが言ったのは流石に過激だが、それを差し引いても雫としては頬を朱に染めてしまう。

 

「ようこそマサカの宿へ、御宿泊ですか? それとも御食事でしょうか?」

 

「宿泊、一週間で。風呂を使いたいから頼む」

 

 一五歳くらいの看板娘、ソーナ・マサカに注文を伝えていく。

 

「えっと、やっぱり二時間ですか?」

 

「ああ、それで頼む」

 

「それでは、御部屋はどうなされますか?」

 

 何故か頬を染めながら、ソーナが訊ねてくる。

 

 ミレディを見て増えているのに気付き、どういった部屋割りにするのか興味は尽きない様だ。

 

 この場に男はユートのみであり、雫と香織とユエとシアに加えてミレディ。

 

 前回はシアだけがユートと泊まって、ベッドの白いシーツには点々と赤い染みが落ち、まるで暴れたかの様にシワだらけ。

 

 一五歳ならその意味合いが理解も出来よう。

 

「三人部屋を二つ」

 

「さ、三人で!? それはつまり新しい人も加えて……ゴクリ」

 

 更に真っ赤になりつつ、何やら妄想を始めた。

 

「おい?」

 

 卑猥な科白が小さいながら聴こえてくるし、ソーナの中でユートは可成り外道な扱いらしく、ジト目になりながらドスの利いた声色で呼ぶが復帰しない。

 

 ゴンッ!

 

「ふぎゃっ!?」

 

 遂に背後から父親らしき男が拳骨を加え、ズルズルと襟を掴んで奥に連れ戻してしまい、奥さんらしきがカウンターに入ると……

 

「済みませんね、御客様。三人部屋を二つですね? 畏まりました」

 

 テキパキと手続きを済ませ鍵を二つ渡してくれた。

 

「組み合わせはどうする? 基本的に僕と同じ部屋でヤる心算だけど」

 

「部屋は二つでもスる時は皆で構わないんじゃない? 優斗は別に6Pとかでも問題無いでしょ?」

 

 ざわりと周囲がざわめき始め、しまったと雫は迂闊な事を言った口を閉じる。

 

 頬は真っ赤だ。

 

「良い具合にえちぃくなったな雫も」

 

「だ、誰の所為よ?」

 

 食事も摂って風呂にも入る六人、浴槽を汚さない様に外でイチャイチャとして一発ずつヤり、続きは部屋に戻って六人が揃い踏みして身体を擦れ合わせつつ、誰かがユートの分身を挿入している間、キスや愛撫で互いに気分も肢体も高め、昂らせ合っていく。

 

 数時間後には再生能力の高いユエだけが残ってて、それでも激しく責め立てられて気絶してしまった。

 

 そんな情事を六人で繰り広げていた頃……

 

「ふふ。貴方達の痴態……今日こそはじ〜っくりと、ねっとり見せて貰うわ!」

 

 下弦の月夜の闇を照らしており、風に攫われた雲の上から輝きを魅せていた。

 

 柔らかな月の光が地上の【マサカの宿】をうっすら照らし出し、その屋根からロープを垂らしてしがみ付きながらも、宛ら何処かの特殊部隊員の如く華麗なる下降を見せる一人の少女の影が浮かび上がる。

 

 三階にある角部屋の窓まで降りるとそこで反転し、逆さまになり窓の上部より顔を覗かせた。

 

「くふふふ、この日の為にクリスタベルさんに教わっていたクライミング技術、そしてその他よ! まさかこんな場所に居るとは思うまい。さ〜てと、果たしてどんなアブノーマルプレイをしているのか、ばっちり確認して上げるから!」

 

 ハァハァと盛りの付いた猫の如く荒い息をしつつ、ユートの宿泊する部屋へと目を凝らすこの少女こそ、【マサカの宿】の看板娘たるソーナだったりする。

 

 とっても明るく元気で、ハキハキとした喋り方をしており、いつも動き回っている働き者な女の子。

 

 取り分けて美人という訳でも無いけど、謂わば野に咲く一輪の花の如く素朴で可憐な看板娘ちゃん。

 

 町の中には彼女を狙っている独身が結構居る。

 

 現在、ソーナは自ら持てる技術の全てを駆使して、ユート達の部屋の覗きへと全力を費やしていた。

 

 その表情は彼女に惚れている男連中が見たならば、一瞬で幻滅してしまうであろうエロオヤジっぽさ。

 

「くっ、やはり暗いわね。よく見えない……もう少し角度をずらせば」

 

「溜まってるのか?」

 

「そういう訳じゃないわ。でも後学の為にも見ておきたいのよ。それにしても静かね? もう少しは嬌声が聞こえるかと思ったんだけどな……」

 

「後学じゃなく実践付きで教えようか?」

 

「ちょっと怖いかなぁ……って、待ってよ!? 話し掛けてくるのは誰?」

 

 ここは三階の窓の外で、ソーナのみたいにアホな事でもしない限りは、こんな場所で間近に声が聞こえる事は有り得ない。

 

 ソーナはダラダラと滝の様な汗を流し、まるっきり油を差し忘れた機械の如く動きで振り返ると……

 

「愉しそうで何よりだね」

 

「お、御客様……」

 

 臍まで反り返った分身を堂々と晒し、腕組みをしながら浮かぶユートが居た。

 

「今すぐにもロープを切られてこっから落ちるのと、“優しく抱かれる”のとはどっちが良い?」

 

 タラリと汗一筋。

 

 地上までは十数mはある以上、当然ながらロープを切られて落とされるの論外としても、今の科白からして『優しく抱かれる』という意味を考えると?

 

 然しながらロープを簡単に切れそうな鋏、いつの間にか持っていたそれを手にするユートは、冗談抜きでロープを切りに来る筈だ。

 

「や、優しくして下さい」

 

 ガッチガチに硬そうで、太さは細身とはいえソーナの腕くらい、皮はズル剥けで凶悪な先端がヌラヌラと月明かりに卑猥なる輝きを反射して、もう凶器にしか思えない分身を見ながら、絞り出す様にソーナは言うしかなかったのだと云う。

 

 翌朝、ソーナは自分自身の部屋には居らず、ユートの宿泊していた部屋で他の女の子らと寝ていた。

 

 この場にもう処女は居ない筈が、鮮血が滴り落ちて赤黒い染みを作っていたらそれは驚きだろう。

 

 流石に早起きをした雫が叫んだが、ソーナの所業を聞いて自業自得とする。

 

 雫とて赤の他人に情事を観られたくは無い。

 

 それに『ロープを切られて落ちるか』、『優しく抱かれるか』で後者を選んだのはソーナ本人。

 

 理不尽な二択とはいえ、それならば文句など言えよう筈もなかった。

 

 因みに、ソーナは『嘘吐き〜』と涙目になっていたりするが、どうやら可成り激しくされたらしい。

 

「覗きは論外だとしても、ソーナが混ざりに来るなら歓迎するよ」

 

「あ、はい……」

 

 だけど凄く気持ち良くされてしまったのも事実で、何度も何度もイカされ喘ぎ絶頂の叫びをあげさせられたソーナは、赤くなりながら頷いていたと云う。

 

 尚、一晩中帰って来なかったソーナをマサカ夫妻が心配しており、朝帰りした不良娘はお尻百叩きの刑を執行されたらしい。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ブルックに戻ってからの約一週間、ユートは冒険者ギルドでミレディのステータスプレートを作る。

 

 ユートが造って渡しても良かったが、ミレディの服やら靴やら新たに買うのだから序でに作ったのだ。

 

 勿論、新たなる美少女が現れたが故に冒険者ギルドは色めき立つが、ユートと腕組みをしているのを見て『またコイツかよ!?』……とか、嫉妬と羨望の視線を向けられたのは言うまでも無いであろう。

 

 ブルック冒険者ギルドの支部の扉が開き、ここ数日ですっかり有名人となった六人――ユートと雫と香織とミレディとユエとシアが入って来たのを見たギルドの中のカフェに屯していた冒険者達は、片手を上げて挨拶してくる者も居れば、連れの美少女達に見蕩れながらユートを睨む者など、それぞれな対応をしてきていたが、其処に決して陰湿なものはない。

 

 彼らは美少女の誰か一人でも手に入れようとして、ユートに対して決闘騒ぎを起こした者が数知れず。

 

 “股間スマッシュ”という身の毛の弥立つ恐ろしい所業を成したユエを口説く勇気は出ないが、ならばと外堀を埋める様にとユートから攻略を考える莫迦が、実はそれなりの人数が居たのである。

 

 だけどユートがそんなのを受ける理由も無かった、だから『決闘だ』と言いに来た連中は須らく【不能の短剣】を刺してやった。

 

 刺されても血は出ない、痛くも痒くも無い短剣ではるが、その本領は刺された者にしか解らない。

 

 刺した後でこれ見よがしにミレディとイチャ付き、胸やら股間にまで手を伸ばした辺りで、短剣に刺された冒険者が絶望した。

 

 無修正のAVも斯くやな股間が熱くなるシーンで、自らの分身が全く起動してくれなかったから。

 

 受けたダメージは痛く無かったが、心はクリティカルなダメージである。

 

 二度と勃ち上がらなくなった分身に、ギルド内にも拘わらず自慰に耽りながら泣いていた冒険者達。

 

 そんな色んな意味合いで『男の敵』なユートだが、この町の中ではユエと共に“股間スマッシャー”と、決闘が始まる前に相手の玉を滅殺する“決闘スマッシャー”なコンビとして有名を馳せ、一目置かれる存在なのだったりする。

 

 スマッシュ・ラヴァーズなる二つ名が浸透してて、【二人はスマ・ラヴ】とかどっかのプリティでキュアキュアみたく呼ばれたり。

 

「おや、今日は全員で来たのかい?」

 

 ユート達がカウンターに近付くと、いつもの通りにキャサリンが対応をして声を掛けてくれる。

 

「ああ。そろそろ町を出る心算なんでね、キャサリンさんには色々世話になった訳だし挨拶をしておこうかと思ったんだ。序でに言えば折角だし目的地関連での依頼があれば受けておこうと思ってさ」

 

 この一週間というもの、重力魔法を籠めた魔導具を造るのに専念をしたくて、キャサリンに良さげな場所は何処か無いかと訊いてみたら、ギルドの空いた一室を無償で貸してくれた。

 

 世話になったというのはそういう意味だ。

 

「そうかい、もう行っちまうのかい。そりゃあ寂しくなっちまうねぇ。あんた達が戻ってから賑やかで良かったんだけどねぇ〜」

 

「冗談はよして欲しいね。宿屋に棲息する変態娘といい、ユエ達に踏まれたいとか言って町中で行き成り土下座までしてくる変態共といい、『御姉様』だとか連呼しながらストーキングする変態共といい、未だに決闘を申し込んでくる阿呆共といい……碌な奴が居ないんだけどな? 出会った奴の七割が変態共で二割が阿呆だとか、いったいこの町はどうなってんだって話なんだが」

 

 ソーナは言わずもがな、ブルックの町にはユートの連れの美少女を巡ってて、暇なのかどうかは知らないが日々鎬を削っている。

 

 即ち、【ユエちゃんに踏まれ隊】、【シアちゃんの奴隷になり隊】、【香織ちゃんに罵倒をされ隊】、【雫御姉様の妹になり隊】、【ミレディちゃんに潰され隊】であったと云う。

 

『潰されたいって何!?』

 

 重力魔法で冒険者を潰したのが切っ掛けで、おかしな性癖に目覚めた連中とかも居たらしい。

 

 尚、男連中は素っ裸にして広場で亀甲縛りの状態にて放置してやり、女の子はユートに襲い掛かって来たのでぶちのめし、敵認定をしたからヤり捨ててやる。

 

 命を狙ったからには命を奪われても仕方がなくて、貞操と命とどちらを喪いたいか訊かれ、泣く泣く貞操を選んだのである。

 

 まぁ、すぐにも啼く啼く絶頂してしまうけど。

 

 因みにだが、基本的には訴えられたりしない。

 

 理由はそもそも襲撃したのが彼女らで、しかもイカされて満足感を得てしまったから寧ろ、次もされたいとか思ったくらいだとか。

 

 ユートは自分が満足するだけの腰振りはしないし、相手をイカせて満足させる事も確りとヤる。

 

 結果、イカされた者達は完全に満足していた。

 

「まぁまぁ。何だかんだで活気があったのは事実さ」

 

「随分と嫌な活気だよね」

 

「で、次の目的地は何処にするんだい?」

 

「フューレン」

 

 雑談をしながらも仕事はきっちり熟すキャサリン、フューレン関連の依頼が無いかを捜し始めている。

 

 中立商業都市フューレン……ユートの次の目的地は【グリューエン大砂漠】に存在する七大迷宮の一つ、【グリューエン大火山】となっていた。

 

 そうすると大陸の西の方へと向かわなければならないのだけど、その途中には【中立商業都市フューレン】があるので、取り敢えず一度は寄ってみようという話になったのだ。

 

 【グリューエン大火山】の次は、大砂漠を超えたから更に西に在る海底に沈む大迷宮――【メルジーネ海底遺跡】が目的地となる。

 

「おや? 丁度良さげなのがあるよ。商隊の護衛依頼だね。空きが後一人分あるんだけど……どうだい? 受けるかい?」

 

 差し出された依頼書を受け取ると、ユートが内容の確認をしてみると確かに、依頼内容は商隊の護衛依頼であり、どうやら中規模な商隊のらしくて一五人程の護衛を求めている様だ。

 

 ユート以外だと香織と雫とユエが冒険者登録しているが、枠が一つなら仕方がないからユートだけが護衛に就いて、他のメンバーは別の馬車での移動という形になるのだろう。

 

「連れを同伴するってのは大丈夫なのかね?」

 

「ああ、それは問題無い。流石にあんまり大人数だと苦情も出るだろうけどね、荷物持ちを個人的に雇っていたり、奴隷を連れている冒険者だって居るからね。況してやこの子らも結構な実力者だ。一人分の料金で更に五人も優秀な冒険者を雇える様なもんだ。特に断る理由も無いさね」

 

「成程、確かに。それならどうするかな?」

 

 御遣い系の任務でもあればと思っていたのだけど、護衛任務というのはやった事の無いタイプ

 

 魔導車を使ったら馬車の何倍も早くフューレンに着く事が可能で、それなのに護衛任務により他の者との足並みを揃えるというのはちょっと手間だと言えた。

 

「……特に急ぐ旅じゃないとだろうし、私は三〇〇年で変わった世界を観て回りたいと考えてる」

 

「そうですねぇ〜、偶には他の冒険者方と一緒というのも良いかも知れません。ベテラン冒険者のノウハウというのも、ひょっとしたらあるかもですぅ」

 

「私としてもユエさんと同じく、じっくりと観て回れるならそうしたいわ」

 

「雫ちゃんに同じくかな」

 

 ユエとシアと雫と香織、どうやら護衛任務を受けてみようと言いたいらしく、一斉にミレディに向く。

 

「ミレディたんも構わないけど? ユエちゃんシアちゃんの意見も悪くないし」

 

 どうやら意見は一致したらしいし、ユートは頷くとキャサリンに依頼を受けることを伝えた。

 

 七大迷宮の攻略にはまだまだ時間が掛かるだろう、ならば意味も無く焦った処で致命的なミスを誘発してしまうし、シアの言う様に冒険者独自のノウハウが得られれば、これからの旅でも何かしら役に立つ事などあるかもだった。

 

「あいよ。それなら先方には伝えとくからさ、明日の朝一で正面門にまで行っとくれよ」

 

「ああ、了解だ」

 

 依頼書受け取るのを確認すると、キャサリンが後ろに控える香織と雫とユエとシアとミレディへと目を向けて口を開く。

 

「あんた達も身体には気を付けて元気でおやりよ? この子に泣かされたら何時でもウチにおいで。あたしがぶん殴ってやるからね」

 

「……ん、随分と御世話になった。ありがとう」

 

「はい、キャサリンさん。良くしてくれて有難う御座いました!」

 

「親身になってくれて本当に助かりました」

 

「また、ブルックに来たら会いに来ますね」

 

「ミレディたんは新顔ではあるんたけど、色々と助言は助かっちゃったよ」

 

 シアは特に嬉しそうで、このブルックの町に来てからというもの、自分が亜人族であるという事を忘れそうになる程。

 

 全員が全員、シアに対して友好的という訳ではないのだが、それでも目の前のキャサリンを筆頭にソーナやクリスタベル、ちょっとアレだがシアのファンだという人達は、亜人族という点で差別的扱いをしない。

 

 それがシアには嬉しかったのである。

 

「あんたも、こんないい子達を泣かせんじゃないよ? 精一杯大事にしないと罰が当たるからね?」

 

「それは理解しているさ」

 

 大真面目な顔で返してきたユートに、キャサリンが一通の手紙を差し出す。

 

「これは?」

 

「あんた達は色々と厄介なもの抱えてそうだからね。町の連中が迷惑かけた詫びの様なもんだよ。他の町でギルドと揉めた時にはさ、その手紙をお偉いさんに見せな。少しは役に立つかも知れないからねぇ」

 

 手紙の一通で御偉いさんに顔が利く、キャサリンはどうやら並々ならぬコネを持つらしい。

 

「詮索は無しだよ? 佳い女に秘密は付き物さね」

 

「そうだね、それならこれは有り難く貰っていくよ」

 

「ああ、素直で宜しい! 色々とあるんだろうけど、決して死なない様にね」

 

 オバチャンだけどミステリアスな女性、キャサリンに見送られて冒険者ギルドを出たユート一行、雫が未だ苦手らしいクリスタベルにも挨拶をしに行く。

 

 幸いにもガチムキな漢女に襲われなかった事もあってか、ユートはクリスタベルとはそれなりの距離感で付き合えていた。

 

 そして最後の夜という事もあり、ソーナも初めから混ざっての7Pを愉しむ。

 

 特にユート達がブルックを出れば、再会する可能性が低い事もあってソーナは酷く甘えん坊になった。

 

 殆んど妊娠する心配など無いが、やはり万が一という事もあるから魔導具にて確実に避妊をしておく。

 

 一期一会。

 

 場合によっては二度と会えない可能性から鑑みて、ソーナは寧ろ妊娠して他の男を受け容れる素地を無くしたいくらいだが、一五歳の身空での妊娠は母子共に宜しくない。

 

 そんな訳で諦める。

 

 代わりにその日の閨での睦事では、一番愛して貰ったソーナ・マサカだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユート達が護衛をする筈の商会が待つ馬車へと近付くと……

 

「お、おい、まさか残りのメンバーは『スマ・ラヴ』なのか!?」

 

「マジなのかよ! 嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってきたんですけど!?」

 

「み、見ろよ……俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」

 

「いや、それは単にお前が飲み過ぎだからだろう?」

 

 美少女達の登場に喜びを隠せないが、中には股間を両手で隠し涙目になる者、手の震えをユート達の所為にしている者など、反応は様々なものとなっている。

 

「ああ、君達が最後の護衛チームかね?」

 

「そう、これが依頼書」

 

 懐から取り出した依頼書を見せると、纏め役の男がそれを確認し納得した様に頷いて自己紹介してきた。

 

「私の名前はモットー・ユンケル。この商隊を率いるリーダーをしている者だ。君のランクは未だ黄だし、他の人達は青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いてる。道中での護衛は期待させて貰うよ」

 

「……もっとユンケル? 商隊のリーダーを務めるのは大変なんだね」

 

「へ? ええ、まぁ……慣れたものですよ」

 

 実は日本の栄養剤みたいなファミリーネームだったが故の言葉、流石にそれをモットー・ユンケルが察する筈も無い。

 

「取り敢えず期待は裏切らないよ。僕の名前はユートで順番に、香織と雫とユエとシアとミレディだ」

 

「そいつは頼もしいな……処で君、この兎人族の娘を売る心算は無いのかね? 若し売ってくれるのなら、それなりの値段を付けさせて貰う……」

 

 その時、ユートの姿が掻き消えたかと思うといつの間にか馬車の幌の上に。

 

「変身!」

 

 腰にはアークルと呼ばれるベルト。

 

 音を響かせながら所謂、モーフィング的な変化。

 

 刺々しい漆黒の体躯に、あちこち金があしらわれている紋様、“黒い複眼”を持っていて禍々しい姿へと変わっていた。

 

 モットーの視線が値踏みするかの如くシアを見て、僅かな時間で先程の科白を宣うのは想像がつく。

 

 兎人族で青みの掛かった白髪、珍しいというだけでなく超美少女だ。

 

 モットー・ユンケルも、商人の性で珍しい商品には口を出さずに居られない、シアの首輪から奴隷と判断をして、所有者たるユートに売買交渉を持ち掛けた事から、きっと優秀な商人なのであろう。

 

 彼の過ちはたった一つ、ユートのモノに目を付けてしまった事。

 

「選べ……死よりも絶望をする輪舞を舞うか、大人しく謝罪をして無かった事にするのかを」

 

 放たれたのは威圧。

 

 仮にその手の威圧に慣れた者であれ、今のこれを浴びたら失禁は必至なレベルで強く凄まじい。

 

「仮面ライダークウガ・アルティメットフォーム」

 

「聖なる泉枯れ果てし時、凄まじき戦士、雷の如く出で太陽は闇に葬られん」

 

 冷や汗を流しながら自分の知識から、名前とアイデンティティーワードを口にする雫と香織。

 

「どうする?」

 

「な、無かった事に……」

 

 何をされるのかは判らなかったが、身の毛も弥立つ碌でもない事なのは理解をしたモットー・ユンケル、故に先程の科白の撤回を申し出るのだった。

 

 

.

 




 取り敢えず怒りを露とした事で、ユートのスタンスをモットー・ユンケル氏に伝えた感じです。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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