ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 原作で正式に勇者(笑)の聖剣に意志有りと……

 随分と愉快な意志が?





第36話:フューレンに着いて早々のトラブル

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 先ずは喰らえよと云わんばかりに、ユートは両肩のガタックバルカンを構え、毎分五〇〇〇発の亜音速なイオンビーム光弾を撃ち放ってやった。

 

 ジョウントを応用している【無限弾装】が本領ではあるが、ユートのガタックは魔力弾を放っている。

 

 魔力をイオンビームへと変換している訳だ。

 

 百か其処らの魔物など、次々と叩き潰していく。

 

 マスクドフォームの侭、シアのザビーと雫のサソードが取り残しを叩く。

 

 シアはハンマーで叩き、雫は剣で斬っていった。

 

「……【緋槍】」

 

 仮面ライダーサガとなったユエは、基本的に魔法を使って戦うスタイルだ。

 

 中級の火魔法の【緋槍】が魔物を焼き散らす。

 

「【緋槍】!」

 

 それはミレディ・ライセンの仮面ライダー1型も同じであり、ユエより精密なコントロールで同じ魔法を撃ち放つ。

 

「全員、退け!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 チャージし高エネルギーを圧縮、プラズマ火球弾として放たれたガタックバルカンは、一Km範囲のあらゆる物質を高温と超高圧にて消滅せしめたのだ。

 

「な、何たる……」

 

「恐ろしいまでに強い」

 

 モットー・ユンケル氏もガリティマも、他の冒険者も茫然自失となるくらいにアッサリ、百を越える魔物を屠る仮面ライダーと名乗る異形を見つめていた。

 

「キャストオフするまでも無かったな」

 

 ガタックゼクターが離れて変身解除、ユートはクルッと踵を返しながら呟く。

 

 それに並ぶのはやっぱり変身を解除した雫達。

 

「これ、返さなきゃ駄目? この侭欲しいんだけど」

 

「それはまだ不安定だから駄目だよ。後で別のを渡すから我慢してくれ」

 

「むぅ……」

 

 ミレディは仮面ライダー1型が気に入ったらしく、これを使いたいと頼んでいるみたいだが、ユート的にはこれを使い続けるのには難色を示す。

 

 本当にバルカンやバルキリーの為のショットライザーより試作型に過ぎない、それが故に完成したのならまだしも、今は制式として扱うのは製作したユートとしてはしたくないのだ。

 

「フォースライザーもそうだがな、やっぱりショットライザーの方がマシか」

 

 エイムズ・ショットライザーは森人族のアルテナ・ハイピストに渡した物で、仮面ライダーバルキリーに変身が出来る銃型の変身用デバイスである。

 

 それと同じ形ではあるが仮面ライダーバルカン……同型の仮面ライダーに変身する物も有った。

 

 フォースライザーとは、滅亡迅雷.netの滅と迅が使った仮面ライダーの変身用デバイスである。

 

 問題なのは名前。

 

 仮面ライダー滅と仮面ライダー迅、要するに二人は本人の名前が仮面ライダーとしての名前だという事。

 

 【仮面ライダージオウ】でも、通り名が仮面ライダーの名前だったのに今回もとか、ちょっと困ったものだと思うユート。

 

 仮面ライダーミレディ? ちょっと無いかなと思いはしたが、既にジクウドライバーやビヨンドライバーでやらかしている。

 

 即ち、仮面ライダーホムラとか仮面ライダーシュテルで。

 

「まったく豪胆ですなぁ。貴方は周囲の目が気にならないのですかな?」

 

 周囲の目……最早お馴染みとなる嫉妬と羨望の目、更には【閃姫】となる雫や香織やユエやシアやミレディといった女の子に対する感嘆、そしてイヤらしさを含んだ好色な目。

 

 しかもそれだけでなく、兎人族であり珍しい白髪で肢体はメリハリが利いて、顔立ちは美しくも可愛らしいシアに対する値踏みを含んだ視線である。

 

 大都市の玄関口ならばそれこそ様々な人間が集まる場所なのだ、好色の目だけではなくて謂わば利益も絡んだ注目を受けているらしい。

 

「今更それを気にしても、ある意味では仕方が無いだろうし、気にするだけ無駄と考えているよ」

 

 そんなユートの答えを聞いて、苦笑いを浮かべてしまうモットー・ユンケル。

 

「フューレンに入れば更に諸問題が増えそうですな。やはり彼女を……シアさんを売って頂く気にはなりませんか?」

 

「あれだけ堂々とイチャイチャ見せ付けてやったのにな、それでも未だに売るとか思っているなら商人なんて辞めてしまった方が良い」

 

 個人使用の馬車に乗っていたシアだが、売る心算が無いのをアピールするべくイチャイチャと、モットーだけでなく冒険者の連中にも見せ付ける様にイチャイチャとしてやった。

 

 堂々とキスをしてやり、あの巨乳を服の下から直に揉んでみたり、仕舞いには所謂……Bまでは見える様にやらかしているユート。

 

 尚、冒険者連中はそれを視た直後には雉撃ちに行ってしまったのだと云う。

 

 きっと彼らもタップリと撃って来たのだろう、スッキリとしながら自己嫌悪に陥る目で呆然としていた。

 

「いえ、まぁ……似た様なものですな。彼女の事ではなく別の売買交渉ですよ。貴方の持つあのアーティファクト、あれをやはり譲っては貰えませんかな?」

 

「アーティファクト?」

 

「仮面ライダーでしたか、あれに『変身』? をするあのアーティファクトを、是非とも私に売って頂きたいのですよ」

 

「で、何処に転売する? テンバイヤーは」

 

「テンバイヤー?」

 

 意味が解らなかったか、モットー・ユンケルは首を傾げている。

 

 テンバイヤーとは転売をする者、転売屋の事を揶揄するスラングだ。

 

 基本的に迷惑極まりない存在でありユートも昔は可成り迷惑を被ったものだった。

 

「まぁ、やはり国に」

 

「売るのが帝国にせよ王国にせよ、軍事バランスを激しく崩すぞ? そうなれば今は魔人族と戦争をしてるから良いが、それが終われば持っている国が、持たない国を急襲し攻め亡ぼしてしまうだろうな」

 

「っ!? それは……」

 

「欲に目が眩んで国を亡ぼした『死の商人』か、歴史に名前が刻まれる偉業だな?」

 

「ぐっ!」

 

 確かにそれは刻まれそうだが、決して名誉ではない凄く嫌な刻まれ方。

 

「然しですな、貴方も色々とバラ撒いている様に見受けられますが?」

 

「僕がライダーシステムを渡すのは基本的に身内だ。殆んどは僕自身の(モノ)って話だからね」

 

「そ、そうですか……」

 

 少しチラ見をしたのはユートの連れた少女達に対して。

 

「ハイリヒ王国だろうが、ヘルシャー帝国であろうが……魔人族、亜人族だろうが竜人族も吸血族も無関係なんだよ。僕に種族なんてのは無意味だ。要は個人を気に入るか否か……でしかないからね」

 

 それが故に此処には吸血族のユエが、亜人族のシアが、人間族の香織達も居るのだから。

 

 種族全てを『坊主憎けりゃ袈裟まで』的に憎んだりはしない。

 

 実際、ハルケギニアでも吸血種もエルフも翼人も当然ながら人間も纏めて傍に置いていた。

 

 全てを等しく呑み込む、それは真なる闇にして黒穴たるユートの特質、だけどだからこそ『等しく滅びを与えん事を』と、彼の女王の加護を受けてもいる。

 

「では【宝物庫】は?」

 

「確かに武器ではないが、彼の【宝物庫】は形見だからな。誰かに渡せるもんじゃなくってね」

 

「形見……ですか?」

 

「そうだ。これを造った者から受け継いだ形見って訳さ」

 

 オスカー・オルクスが嘗て住み込んでいた大迷宮にて、ユートが手に入れた一つがこの指輪型のアイテムストレージだった。

 

 創り手たるオスカー本人と空間魔法の使い手であるナイズ、再生魔法の使い手のメイルが製作に関わったと思われる【宝物庫】。

 

 尚、当初に造ったばかりの頃はオスカーとナイズの二人のみが携わった。

 

 だけどそれでは時間が経てば中身が経年劣化をする、だから時間に干渉をする再生魔法を込めているのだろう。

 

「むぅ……然しですな」

 

「何だ?」

 

「貴方が持つアーティファクトは個人が持つには余りに過ぎた物、その価値を知った者は理性を効かせられないかもしれませんぞ? そうなれば、かなり面倒な事になるのでしょうなぁ……例えば、彼女達の身……」

 

 ゾワリッ!

 

「あ、嗚呼……」

 

「どうした? 続きを言わないのか?」

 

「そ、れは……」

 

 威圧感?

 

 恐怖?

 

 威容?

 

 ガタガタと震えてダラダラと汗を流すモットー・ユンケル氏、彼は今正に名状し難いナニかに怯えるしかない状況。

 

「まあ、その時は誰に喧嘩を売ったか教えてやるさ。個人、組織、国、連合……我が力以て等しく滅びを与えん事をってな」

 

「本当にそんな事がで、出来るとでも?」

 

「仮面ライダークウガ・アルティメットフォームは僅かな時間で数万もの人間を虐殺出来る」

 

「……は?」

 

 嘗て、グロンギ一族が長たるン・ダグバ・ゼバは復活してから都内にて三万もの人間を殺したと云う。

 

 それだけでなく同族たるグロンギ一六二体をも虐殺して回った。

 

 しかも人間の虐殺には、単に余剰能力の超自然発火を使うだけで。

 

「ハイリヒ王国の人間ってのは総数で何人居るんだ? ヘルシャー帝国は?」

 

「そ、それは……」

 

「何十万? 何百万か? それとも何千万人? いずれにせよ、アルティメットフォームに成れば一週間も要らない。絶滅タイムだ」

 

「うう……」

 

 確と見た訳ではないが、アルティメットフォームと呼ばれた黒い異形、あれは海千山千の商人たるモットー・ユンケルをして恐怖しか無かった。

 

 あれが実際に暴れたならば確かに、国が崩壊させられてもおかしくない。

 

 黒い眼に四本の金色の角を持ち、肩は凶悪なまでに鋭利で放つは悍ましさすら感じる異彩を持ったオーラ、只のアーティファクトではないとは思ってはいたのだ。

 

「まぁ、駄目だ駄目だとか拒絶ばかりしていてもアレだよな」

 

 そう言い取り出したるは少し小さめなポーチ、中々に高価そうな革製でベルトに通して使う訳だが革製のベルトも付いている。

 

 モットーユンケルはポーチ投げ渡されて戸惑いを覚えた。

 

「こ、これは?」

 

魔法鞄(マジックポーチ)って名前で、云ってみれば【宝物庫】の簡易版って処だろうね」

 

「なっ!?」

 

「五〇m四方の倉庫くらいの容量、内部時間は停止をしているから劣化しない、小さく見えて多少の大きさも関係無く容れられるし、手にしている状態でならば『収納』と『解放』も自由自在、『閲覧』で中身を知る機能も付いている」

 

 今の科白が即ち、機能を使う為の呪文みたいなものだとは、モットー・ユンケルにも理解が出来る。

 

「勿論、買い取りだから確りと対価は貰う。手慰みにこの数時間で造った魔導具だし、一つ一千万ルタ程度で売ろう」

 

「か、買った!」

 

 思わず叫ぶのは商売人としては仕方がない。

 

 モットー・ユンケルは、一億ルタを先行投資として支払いをして、一〇個もの【魔法鞄】を購入する。

 

 尚、オマケとしてモットー本人用に一個を貰った。

 

 血を一定の場所に付着させると専用化する訳だが、これはステータスプレートの技術の応用だ。

 

 あっという間に一億ルタを稼いだユートに、雫達も呆れる他なかったと云う。

 

 モットー・ユンケルとの商談も終わり、ユート一行は中立商業都市フューレンに到着した。

 

 フューレンの東門には、六つの入場受付がある。

 

 持ち込み品のチェックを其処でしているらしくて、ユート達もその内の一つの列に並んでいた。

 

 ユートは商会で公証人の立ち会いの下、一億ルタを支払われる事となる。

 

「この度はとんだ失態を晒しましたが、若し何かしらご入り用の際は我が商会を是非ご贔屓に。貴方は普通の冒険者とは違う様です。特異な人間とは繋がりを持っておきたいものなので、それなりに勉強させて頂きますよ」

 

「随分と商魂が逞しいね、モットー・ユンケル氏は」

 

 別れ際の科白に苦笑いを浮かべるユートは、踵を返してミレディを見つめた。

 

「ミレディ」

 

「な、何かな?」

 

「チラホラと僕の指を見ていて、何も無いもんだろうにな?」

 

「そ、それは……うん」

 

「気になるなら訊いてくれて構わないぞ?」

 

「判ったよ。その【宝物庫】なんだけどさ」

 

「御期待通りと言うべきか……オスカー・オルクスの遺体に填められていた」

 

「じゃあ、形見って!」

 

「勿論、オスカー・オルクスの形見って事だね」

 

 ゴクリと固唾を呑んだ。

 

「オー君の……形見……」

 

「僕はこれを手放したり、況してや売る心算なんかは更々無い。だけど若し誰かに譲るとしたら」

 

 ユートはミレディの左手を持ち、オスカー・オルクスの【宝物庫】を薬指へと填めてやる。

 

「嘗ての仲間たるミレディ・ライセンにだけだ」

 

 ポタッ……

 

「ミレディ?」

 

 突然、涙を流し始めるからユートのみならず、雫達もギョッとしてしまう。

 

「ちょっと、ミレディ?」

 

「ミレディちゃん?」

 

 あわあわと狼狽えている雫と香織。

 

「違くて、ミレディちゃんは嬉しいだけさ!」

 

 涙をグシグシと拭いて、ウィンクしながらサムズアップして見せる。

 

「ありがとう、ユー君! オー君の形見をくれて」

 

「元々は初めての攻略者みたいだから、埃だらけにするよりは活用しようと思って遺体から頂戴したけど、ミレディが居るなら君が持つ方が相応しい。因みに、ダンジョンで見付けた御宝は由縁は兎も角、見付けた人間の物になるルールに従ったと言っておく」

 

「あはは、理解してるよ。オー君の遺体からって言ってたけどさ、遺体その物はどうしたのかな?」

 

「椅子に座って逝ったらしくてね、だから墓を建てて埋葬をしたよ」

 

「そっか、うん。感謝するしかないね」

 

 ミレディは左薬指に鈍く輝く【宝物庫】の指輪を見ながら、悪くない対処を聞いて随分と上機嫌で言ったものだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 中立商業都市フューレン――高さ二〇m、長さにして二百Kmの外壁で囲まれた大陸一の都市である。

 

 あらゆる業種がこの都市で日々の鎬を削り合って、夢を叶えて成功を収める者も居るし、あっさり無一文となって悄然と出て行く者も多く存在した。

 

 観光で訪れる者や取引に訪れる者、都市での出入りの激しさでも大陸一と言えるであろう。

 

 その都市の巨大さ故に、フューレンは四つのエリアに分かれていた。

 

 手続関係の施設が集まっている中央区、娯楽施設が集まった観光区、武器防具や家具類などを生産や直販をしている職人区、様々な業種の店が並ぶ商業区だ。

 

 四方にはそれぞれ中央区に続くメインストリートがあり、中心部に近しい程に信用のある店が多いというのが常識だとか。

 

 メインストリートからも中央区からも遠い場所は、かなり阿漕で真っ黒な商売……闇市みたいな店が多いらしい。

 

 まぁ、時々とんでもない掘り出し物が出たりするからか、冒険者や傭兵の様な荒事に慣れている者達が、この辺りの界隈をよく出入りしている。

 

 そんな話をしているのは、案内人と呼ばれている職業の女性だった。

 

 モットーが率いる商隊と別れると、証印を捺された依頼書を持ち冒険者ギルドにやって来たユート達。

 

 だけど宿を取ろうにも、そもそも初めて訪れた都市では、いったい何処にどんな店が有るのかがさっぱりなので、キャサリンさん程に精密ではないだろうが、ギルドでガイドブックを貰おうとしたなら、案内人の存在を教えられた。

 

 案内人の女性……リシーに料金を支払い、軽食を共にしながら都市の基本事項を聞いていたのだ。

 

「宿をお取りになりたいのでしたら、観光区へ行く事をお勧めしますわ。中央区の方にも宿は有りますが、彼処はやはり中央区で働く方々の仮眠場所という傾向が強いので、サービス的には観光区のそれとは比べ物になりませんから」

 

「それなら素直に観光区の宿にしとくべきだろうね。それじゃあ、観光区で何処がお勧めなんだ?」

 

「それは、御客様のご要望次第ですわ。様々な種類の宿がそれこそ数多く御座いますから」

 

「御飯が美味しくて、風呂があれば取り敢えずは文句も無いな。女の子が多いからやっぱり風呂は無いと。立地は考慮しなくて良い。それから責任の所在が明確な場所が良いかな」

 

「せ、責任の所在ですか? それはいったい……」

 

 リシーは先程まで注文に頷いていたが、行き成りの『責任の所在』という言葉に首を傾げてしまう。

 

「ほら、僕らは可愛い娘が沢山居るだろ?」

 

「そうですね」

 

 白崎香織――顔は可愛い系で艶やかな黒髪をストレートに流したロングヘア、胸はそれなりに育っているがやや物足りない。

 

 八重樫 雫――綺麗系で胸も可成り大きい、伸びた黒髪をポニーテールに結わい付け、背丈も女の子としてはスラリと高めで何と無く『お姉様』と呼びたい。

 

 ユエ――長い金髪に宝石の如く緋色の瞳、背丈は低いし胸は余り無いが決して絶壁ではなく、余りに整った顔立ちはビスクドールの如く、全体的にバランスが整った美少女。

 

 シア・ハウリア――パーティの中でも一番の巨乳、兎人族らしい可愛らしさが前面に押し出されて且つ、珍しい青みが掛かった長い白髪が白い肌にアクセントを加える。

 

 ミレディ・ライセン――美しくて蜂蜜の様な金髪をポニーテールに結わい付けており、胸はユエより小さくて断トツだが貴婦人とか令嬢の様な振る舞いから、やはり美少女として見られていた。

 

 成程、リシーは不細工ではないが普通な顔立ちで、普通な体型だから一女性として見れば羨ましくなるくらいである。

 

「確かにトラブルホイホイみたいな陣容ですね」

 

 歩けば厄介事から寄ってきそうだった。

 

 リシーはユートの両隣に座って軽食を食べるユエと香織、そしてその両隣に座る雫とシアとミレディの方へと視線を向けて、納得したと云わんばかりに頷く

 

 実際に周囲の視線を可成り集めていた。

 

 しかもシアは兎人族だ、他人の奴隷に手を出すのは犯罪だが、しつこい交渉を持ち掛ける商人は居るし、羽目を外して暴走する輩も出てくるだろう。

 

「それなら警備が厳重な宿などでは? そういう事に気を使う方も多いですし、良い宿を紹介出来ますが」

 

「それで構わないけどね、欲望に目が眩んだ連中ってのは時々とんでもない莫迦を仕出かすからさ。警備も絶対でない以上、初めから物理的な説得を考慮した方が良いんだ」

 

「ぶ、物理的説得ですか? 成程、それで責任の所在という訳ですか」

 

 意図を理解したリシー、案内人根性が疼いたらしく俄然やる気に満ちた表情となり、グッと握り拳を作りながら計画を立てる。

 

「お任せ下さい」

 

 了承をして、リシーは次に雫達の方に視線を移し、五人にも何かしら要望が無いかを聞いた。

 

 プロとして出来得る限り客のニーズに応えようとしている点、それを鑑みればリシーも彼女の所属している案内屋も当たりだ。

 

「……混浴貸し切り状態のお風呂が欲しい」

 

「大きなベッドがあったら嬉しいですね」

 

「余り声が響かない部屋が良いかな」

 

「トイレは近場にないと、ちょっと困る。後、軽食が食べられると嬉しいかも」

 

「特には無いけど……覗き対策は必要かもね」

 

 それぞれの要望を伝える五人の女の子、一つ一つは何て事もない要望だけど、全てを組み合わせると自ずと意図が透けて見える。

 

 リシーも察したみたいで一応はすまし顔で了承するのだが、僅かに頬が朱に染まっている辺り彼女も確り女性という訳だ。

 

 尚、やはりと言うべきかユートに向けられているのは嫉妬の視線。

 

 それぞれにタイプが違う美少女を五人も引き連れ、尚且つ五人共がどう考えても抱かれる前提で宿の要望を出している訳で、それは嫉妬しても仕方がない。

 

 暫く他の区について話を聞いていると、ユート達は不意に強く不躾で粘着質な視線を感じた。

 

 ユートのモノたる香織、雫、シア、ユエ、ミレディに対してとても気持ち悪い視線で、本人達にしてみれば眉を顰めるしかない。

 

 その視線の先を辿ると、豚が居たとしか形容の仕様が無いナニか。

 

 見るからに重そうな体躯は軽くても百Kgは超えていそうな肥え、脂ぎった顔には豚鼻と頭部にちょこんと乗っかっているベットリした金髪、身形だけは普通に良い服を着ている。

 

 はっきり云ってしまえばオーク貴族、それが香織達を欲望で酷く濁った瞳にて凝視をしてきていた。

 

 キモいとはこの事か。

 

「うげっ!」

 

 女性が上げて良い悲鳴ではないが、オーク貴族を視たリシーは余りにも気色悪いそれに顔を顰める。

 

 ノッシノッシと歩いてくるオーク貴族は、ユートに対し尊大な態度で言う。

 

「お、おい、ガキ。ひゃ、百万ルタやる。この兎を、わ、渡せ。それとそっちの女共……わ、私の妾にしてやる。い、一緒に来い!」

 

 だがユートはシカト。

 

「宿屋に行ったらすぐにも始めるか?」

 

「流石にそれは無いわよ。折角の商業都市だからね、買い物だって愉しみたい。香織もそうでしょ?」

 

「うん、ちょっと愉しみだったんだ。服とか見てみたいかも」

 

「あ、私は靴が欲しいんですけど……」

 

「……新しいリボン」

 

「ミレディちゃんは最近の流行は判んないし、やっぱ服屋とか行きたいかな」

 

 オーク貴族を置いてきぼりにして、六人+リシーはその場を離れていく。

 

「ま、待て!」

 

 待てと言われて待つ莫迦は居ない……とばかりに、ユートはガン無視を決め込んで女の子らとの会話に花を咲かせていた。

 

 時折、えちぃ冗談で場を和ましたりするのだけど、話す人間が人間なら単なるセクハラである。

 

「レ、レガニドッ! そのクソガキを殺せぇぇぇ! わ、私を無視したのだ! な、嬲り殺せぇっっ!」

 

「いやいや坊ちゃん、流石に殺すのはヤバイですぜ。せめて半殺し位にしときましょうや」

 

「殺れぇ! い、良いから殺るのだぁぁぁああっ! お、女は、傷付けるな! あれらは私のだぁ!」

 

「やれやれ、了解ですぜ。報酬は弾んで下さいよ」

 

「い、幾らでもくれてやるからさっさと殺れぇっ!」

 

 レガニドと呼ばれた巨漢はオーク貴族に雇われている護衛らしく、ユートから視線を逸らさずオーク貴族話し、多額の報酬の約束をすると口角を吊り上げる。

 

 金にしか興味が無いか、下手したらゲイ野郎なのか……珍しい事に香織達には目もくれない。

 

「わりぃな坊主。俺の金の為にちょっと半殺しになってくれ。な〜に、殺しはしねぇよ。とはいえ嬢ちゃん達の方は……諦めてくれ」

 

 拳を構えながら言う。

 

 流石に場所的に腰へ佩いた剣は使わないらしい。

 

「おいおい、レガニドって【黒】のレガニドか?」

 

「【暴風】のレガニド? 何であんな奴の護衛なんてしてるんだ?」

 

「そりゃ金払いが良いからじゃないか?【金好き】のレガニドなんだからよ」

 

 周囲がヒソヒソと話しているのが聞こえてきた。

 

 天職を持っているかまで窺い知れないが、【黒】は上から三番目のランクで、戦闘系天職を持たない場合はこれが最高ランクだ。

 

 殺る気満々な闘氣を噴き上げるレガニド、ユートは全く取り合わず歩く。

 

「おいおい、この俺を舐めてるのか? 無視たぁな。おらぁっ!」

 

 グシャッ!

 

 ユートに拳が突き刺さる……というか、レガニドの拳が砕けてしまった。

 

「……は?」

 

 骨が砕けて皮膚も破れ、レガニドの拳はズタズタとなっている。

 

「ウギャァァァァッ!?」

 

 不意に襲ってきた痛み、レガニドは情けない悲鳴を上げ、地面をゴロゴロのた打ち回るのであった。

 

 

.




 愛ちゃんの再登場は近いか……


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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