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夜中の一〇時になって、コンコンと扉を叩く音を聞いたハジメは、扉を開くべくベッドから降りる。
ステータスプレートを、何度見ようが目を擦っても変わらない天職、変わらない数値、変わらない技能。
別に『俺TUEEE』とかをしたかった訳ではないし、チート……キタァァッ! したかった訳でもない。
だけどこれは無いだろうと嘆きたくなり、ベッドの上で沈み込んでいたのだ。
誰かが訪ねて来たのなら気分転換にはなるだろう、天之川光輝や檜山大介みたいなのでない限り。
まぁ、少なくとも女子がパジャマ姿だとか、或いはネグリジェにカーデガン姿で来たりはしないだろう。
クラスの女子と仲良しという訳でも無いし……
話し掛けてくる白崎香織が居たかと、憂鬱な気分が更に沈み込むハジメ。
ハッキリと迷惑だとまで言わないが、彼女が誰にでも優しくてオタクな自分にもそれで話し掛けてくれているのだろうけど――誤解全開――、その度に痛々しいまでの視線を感じるし、天之川光輝が煩いのだ。
「はぁい、誰?」
とはいえ、男子でも訪ねて来る相手が判らない。
白崎香織の事で反感を買っているのだから。
ガチャ、扉を開けてみれば居たのはユート。
「お、緒方君?」
「よう。二人だけだから、名前で良いだろう。クク、男同士で『月下の語らい』も無いけど……な」
「はは、良いよ。入って……優斗」
ユートのジョークに苦笑いを零しつつも、ハジメは部屋へと招き入れる。
ユートが持参した座布団を敷き、互いに床へ座るとやはり持参した珈琲と菓子を置いて話を始めた。
「ステータスプレートに関しては聞いている」
「そっか、笑って良いよ。僕はトータスの平均値でしかないオール10、天職もありふれた職業で技能なんて実質一つだけ。愛子先生も非戦系職だったのに貴重な作農師、魔力も100で技能が天之河君並の数で、僕だけが役立たずな無能だってさ。檜山君達が言っていた通りなんだよ……」
自虐が過ぎるハジメに対して、ユートは溜息を吐いた。
「ハジメ、僕も同じだ」
「え?」
「メルド・ロギンス団長がハジメの時と似た様な反応をしていたろ?」
「う、うん」
「僕の天職は錬成師、能力値はオール10、更に技能は錬成と言語理解のみ」
「ま、全く同じ!?」
どんな偶然かと驚愕をするしかない。
「そういう事だ」
ユートも頷いた。
「ハジメはオタクというものだ」
「そんなの知ってるよ」
「だからこそ知識に在るんじゃないか?」
「……え?」
「無能と勇者パーティから追い出された主人公、然し追い出されてからが正しく主人公が主人公たる所以に目覚めてチート化する」
「確かにラノベとかその手の物語ならそうかも知れないけど……さ」
現実ではそんなに上手くいく訳が無い。
そもそも、オール10のステータスは何ら誤解する余地も無く雑魚だ。
「チートじゃなくても莫迦みたいに強くなる事例は決して皆無っていう訳じゃ無いんだがな」
「まさか……」
『そんなオカルト有り得ません』とばかりに、ハジメは瞑目しつつ首を横に振る。
「お前は戦うものではなく生み出すものに過ぎん……余計な事は考えるな。お前に出来る事などは常に一つ」
「……え、何を?」
「その一つを極めてみろ。忘れるな、常にイメージするのは『最強の自分』だ」
「え、えぇ!?」
訳が解らず叫ぶハジメ。
「お前だって識っているだろうに? あの錬鉄の英霊の言葉さ」
オタクなハジメだからこそ理解も叶う科白というものが在り、有名な漫画などのキャラクターの科白は寧ろ一度は言ってみたい。
「未来の英霊エミヤ……だね」
「才能としては決して一流に届かず、努力に努力を重ねて重ねて重ねて重ねて、漸く周りの背中を見付けられた彼の英雄」
「だけど僕は……」
「得意の魔術は投影魔術、想像した剣を創造する者。【
因みに云うと、当時からエロゲが苦手だったユートは【Fate/】シリーズその物をそもそもプレイしておらず、派生系はエロゲじゃないけど全く識らなかったりする。
現在、識っている理由の一つは前世で義妹のユーキからレクチャーされていたからであり、今一つは今生で実際に地上暦一九九五年に起きた大四次聖杯戦争に参加し、更にユートが干渉しなかった一巡目に於ける平行世界で、第五次聖杯戦争に参加した事により知識を補完したのだ。
まぁ、アーチャーというかエミヤの科白に関しては実際に聞いた訳では決して無く、ユーキからの又聞きな知識だが……
「造る……もの……か」
確かに有名な科白とはいえ、天職が鍛冶師なら一〇人に一人は持つありふれた職業な錬成師というハジメに、こんな話をした理由なんて明確に過ぎる。
「だけど所詮は漫画の……キャラクターの言っていた科白だよ。それこそそんなのは現実的じゃないんじゃないかな?」
「仮面ライダーになりたいんだ~とか言ってさ、DXの変身ベルトを腰に巻いて『変身!』とかやっておかながら今更ながら現実的とか」
「仮面ライダーだって玩具のベルトなんかじゃ、結局は僕には成れないのさ……」
「そうかな? 錬成師なら成れる仮面ライダーだって在るんじゃないか?」
「錬成師だから成れる?」
「先にも言ったが錬成師、それは戦う者じゃない。飽く迄も造る者なんだ。別に造るなら刀剣類や槍や鎧である必要も理由も無いだろう、例えば現代兵器はハジメならではの錬成とかにならないか?」
「現代兵器……? 拳銃とかの事だよね。可成り精密な部品が要るんじゃ……」
「そうかな? 確かにすぐ現代レベルとなれば難しいかもだが、鉄砲なんてのは種子島……火縄銃みたいな原始的な銃だって有るし、簡単な物から造っていけば少しずつ進化させられる。要はやるかやらないかだ」
「拳銃……火縄銃……やるかやらないか……か」
まぁ、デジモンで云えば幼年期Ⅱから成長期へと進化した程度のものだけど。
「ハジメにその気があるのなら、休みの日や今みたいな時間帯に教えてやるさ」
「教えるって何を?」
「勿論……」
ニヤリと口角を吊り上げながら……
「錬成だよ」
一振りの短剣を造り上げ言い放つのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
草木も眠る丑三つ時……
「今晩は、リリアーナ姫にヘリーナ」
どうやってか忍んで部屋に入り込むユート。
「あの、どうやって入って来てるんですか?」
「え? 普通にリリアーナの後ろから付いて行ってるだけだが?」
「「怖っ!」」
「冗談だ」
二人は胸を撫で下ろす。
実は昨晩はそれで一緒に入り込んでおり、それなのに二人が気付けなかったのは気配を辺りに溶け込ませてしまい、暗闇へと完全に紛れていたから姿も気配も判らなかったのだ。
このやり方なら臭いすら誤魔化せる為、狼でさえもユートを見付けられない。
「ま、今日も愉しく情報の交換といこうか?」
ちょっとした御茶会に、リリアーナは嬉しそう。
ヘリーナも未だに警戒を完全に解いてはいないが、リリアーナの嬉しそうな顔を見て表情を綻ばせた。
「今宵はどら焼きだ」
「戴きま〜す」
昨晩、教えて貰った食事の時の作法に則り、声を出して『戴きます』をする。
文字通りに。
「う〜ん、美味しい♪」
「はい、美味しいですねぇ姫様」
もう毒味も何も無い侭、かぶり付く二人はその甘味に幸せ一杯夢一杯に蕩けた表情で、頬を朱に染めながら舌堤を打った。
そして恒例という程には日数も経ってはいないが、取り敢えずは情報交換を始めてしまう。
「まぁ、それではえっと……錬成師としての知識で南雲ハジメさんの教師を務めるのですか?」
「ああ、錬成師の技術ならば僕に一日の長があるからね」
「錬成に?」
「まぁね。例えばこんな感じかな?」
ヒュン! 行き成り何も無い所から品の良い綺麗な装飾が成され、青い宝石がエッセンスの様に填め込まれた腕輪が顕れた。
「ど、何処から?」
「僕の【創成】という技術だよ。元々は【錬金】と呼ばれる魔法だったんだが、進化して【錬成】になってから更に進化、【創成】となったと云う訳だね」
「然し、確か錬成には素材が必要な筈ですわ。それに簡単な武器を造るのがやっとだと聞きましたし」
「素材なら沢山有るだろ」
「へ? 何処に……」
「大気中に一杯……ね」
「大気中って、つまり空気の中にですよね?」
そこら辺の知識はどうやら有ったらしい。
「正確には原子より小さな
「だーくまた?」
リリアーナにはよく解らないから、思わず鸚鵡返しに訊ねてから気付いた。
(私、バカッぽい?)
おバカに見えないか心配するリリアーナだったが、ヘリーナにも理解は及んでいない様であり少し安堵をしてしまう。
「ダークマタとは原子と呼ばれる物質より更に小さな粒から成り、それらを瞬時に組み合わせて想像をしたアイテムを創造する技能。故に名前は【創成】だ」
「は、はぁ……」
生返事になるがそこら辺は仕方がない、ダークマタなんて完全に知識の埒外。
少なくともトータスには無い概念なのだから。
「兎に角、僕はこうやって自分の好きな時に、好きなアイテムを創り出せるんだと覚えて措けば良いよ」
「そ、そうしますわ」
「そうですね」
リリアーナもヘリーナも理解を諦めた。
ユートの【創成】とは、昔から使っていた【錬成】と呼ばれる、ハルケギニアに於ける魔法――【錬金】が進化した魔法だったのが【カンピオーネ!】主体の世界で、智慧の女神であるメティスから権能を簒奪した際に【
【叡智の瞳】はより視える【
最早、ユートにとっては素材とはダークマタで賄えてしまい、腕輪型の魔導具は云うにも及ばずであり、その気になれば機構さえ識っていれば機械類すらも、ダークマタから創造可能。
いちどでも創造したら、何処ぞの錬鉄の如く記録をされるから、いつでもポンと出せる訳である。
「折角だからリリアーナ、ちょっと腕を出してみ?」
「え、はい」
何をしたいのか激ニブではないリリアーナはすぐに理解し、ドキドキと胸を高鳴らせながら左腕をユートへと差し出す。
カチャリと二の腕に填められた腕輪、それはまるで誂えたみたいにリリアーナの美を引き立てていた。
謂わば初めての男の子からのプレゼント、恋い焦がれた相手からでは無いにしても、自分は王族なのだから自由恋愛なんて以ての外であり、少しくらいは夢を視ても良いだろうと思い、嬉しそうにはにかんだ。
羨ましそうなヘリーナに対しては、ワンポイント的なブローチを創造してから胸に着けてやる。
台座はプラチナであり、円形の中央に紅玉を填めたブローチが、ヘリーナの大きな胸に品良く輝く。
リリアーナもヘリーナも女な訳で、こんなプレゼントを貰っては嬉しさの笑みを隠せない。
勿論、蛇蝎の如く嫌っている相手からならポポイのポイだったろうが、ユートからならちょっと嬉しかったのは内緒にしたい真実。
「じゃあ、地球の物語……そうだな【かぐや姫】でもいってみるか? だから、リリアーナ姫も」
「リリィ」
「うん?」
「私達だけの時はリリィと呼んで下さい」
「愛称でか?」
「はい」
「じゃあ、リリィ」
「はい」
漫画日本昔話的な物語をユートが語り、リリアーナ――リリィはトータスに伝わる昔話を語った。
昔話は勿論だが虚構なども多いが、場所によっては真実を詠う場合もあるし、モノによっては真実を覆い隠す場合もあった。
故にファンタジー世界に来たら、民間伝承などから情報を集める事もある。
何しろユートの経験上、単なる昔話がある意味では超が付く程、重要な情報だった事が山程にあるから。
例えば、ユートが勇者をやったDQ世界に於いて、幼馴染みが語る勇者ローシュの昔話で、勇者が星になったと語られる赤い星……それが実は勇者処か邪神の本体を封じたモノだとか。
だからこそ仮に民間伝承でも、決して莫迦に出来たものでないと調べている。
「では私は……そうですね……【ライセン大峡谷の怪】といきましょう」
端的に聞いてみて取り敢えず判った事、ライセン大峡谷の『ライセン』というのが国や街の名前が今とは違うくらい、それこそ現在で最も古いハイリヒ王国も無かった時代、とある国の貴族の姓であった事。
そしてライセン大峡谷は魔法が使えず、凶悪な魔獣が棲み着いて聖光教会――聖教教会の前身の異端者を処刑する場所として使われていたらしい。
それ故に異端者の不浄な悪霊が今尚、成仏もしないで漂って人々に祟る……というのが【ライセン大峡谷の怪】という事だった。
具体的な霊障も一応だが聞いたものの、祟る部分に関しては首を傾げるだけ。
けど【ライセン大峡谷】は覚えておこうと思った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝からは普通に訓練が開始されており、ステータスプレートに書かれた天職や技能に応じて、それぞれに鍛えていく方針らしい。
勇者の天之川光輝。
剣士の八重樫 雫。
拳士の坂上龍太郎。
治癒師の白崎香織。
いつもの四人組は所謂、【勇者】パーティ的な扱いであり、天職からして鍛え方が非常に判り易い。
正にクラスの中核となるパーティであろう。
人が複数居れば派閥というものが出来上がる。
勇者(笑)パーティ。
永山パーティ。
園部パーティ。
檜山パーティ。
こんな感じにパーティを組んで、それが一種の派閥みたいな感じで訓練にも臨んでいった。
勿論、無所属的な派閥を組まないはぐれ者なんかもやはり居る。
南雲ハジメが代表格で、ハジメは数値が絶対的に低いし、非戦系職でありふれていて周囲からしたら余り使えない天職、パーティに入れたくないのが普通だしハジメ本人も入るのは気が進まなかった訳だ。
ユートも同じくだけど、違いとしては日本でも仲の良かった園部パーティと、訓練をしていたりする。
投術師の園部優花。
操鞭師の菅原妙子。
氷術師の宮崎奈々。
元々が仲良し三人組で、パーティとしてはもう一人くらい欲しい処だった為、ユートに声を掛けた……のは菅原妙子と宮崎奈々。
園部優花はそれを真っ赤になりながら止めたのだけど、二人の強引DEマイウェイなパーティ勧誘に苦笑いしながら入った形だった。
「じゃあ、ちょっと試しに君らの理想的な戦い方ってのを見せようか。其処から見取り稽古的に色々と技術を盗んでくれ」
「わ、判ったけど……緒方ってそんな事が出来たりするんだ?」
「まぁね」
少し不良娘っぽい風貌ながらも、園部優花は可愛らしい性格で実家の手伝いも普通にする良い子であり、洋食店【ウィステリア】のお客さんからの受けも可成り良かった。
「うわっ!」
「すごっ!」
「これは……」
それはまるで舞い。
神に捧ぐ神楽舞いの如く軽やかな動きで舞い躍り、短剣を次から次へと投擲をして、全てが的となっている藁人形へ命中していく。
しかも藁人形では判り難いが、命中した全てが急所を的確に突いていたのだ。
「【緒方逸真流投擲術】……そして【緒方逸真流操鞭術】だ!」
今度は鞭を取り出してやはり舞い踊るかの動きで的へ鞭を放ち、しかも投擲から鞭へ移行するのも流れるかの様にスムーズだった。
思わず見惚れるくらいに巧い技術に目を奪われた園部優花達。
「おいおい、お城で舞踏会でもやるのかよ?」
其処へ檜山一派が来て、ニヤニヤしながら茶々を入れてくる。
「え〜っと、誰だっけ?」
「あ?」
「おい、巫山戯てんのか」
「俺らを知らねってよ!」
「舐めてんじゃねー!」
檜山大介が憤り、他三人も怒りを露わにしてユートへと怒鳴る。
「いや、知らんがな。話した事も無い人間を名前すら知る筈が無いだろうしな。だいたい、お前らの固有名詞を覚える価値があるのか?」
「てめえ、ぶっ殺すぞ!」
怒り心頭でユートを囲むハジメ命名、小悪党四人組が武器を構えてきた。
「ちょ、やめなさいよ! 檜山、中野、斎藤、近藤! 四人で囲むとか有り得ないでしょうが!」
「はっ、訓練だよ訓練!」
檜山大介が園部優花からの抗議に反論する。
「そうそ、訓練だって!」
「ぎゃははは!」
「まぁ、訓練でも怪我は付き物だけどなぁ!」
止める気は毛頭無いと、檜山一派が攻撃開始。
「そうだな、訓練に大怪我は付き物……ってな」
ユートは口角を吊り上げながら呟く。
「さぁ、ショータイムだ。お前の罪を数えろ!」
ユートは手にした短剣を投げ付ける。
カッカッカッカッ!
近藤? の四肢を貫く刃が行き成りドンッ! と、小さな破裂をする。
「ギャァァァァァァッ!」
「【緒方逸真流投擲術】……【十字壊】+インヒューレントスキル、【ランブルデトネイター】!」
ランブルデトネイターによる爆発は飽く迄も小さなもので、四肢欠損の危機とかは一応無いであろうが、放っておけば大変な事になるレベルで壊れた。
近藤? は剣を持てず、地面をゴロゴロ転がり回りのた打つ。
「や、やりやがったな! ここに焼撃をのぞ……」
中野? が叫びながら、魔法らしきを唱える。
「長い! 【緒方逸真流操鞭術】……【竜牙】!」
当然ながらわざわざ詠唱を待ってやる理由は無く、再び手にした皮製の鞭を揮って肩へ二連撃を放つ。
魔法は中断されて武器を落とす中野?
肩の骨が砕けてしまい、「いぎゃぁぁっ!」などと泣き叫んでいた。
「くそ、ここに……」
「いちいち遅いんだよ! 【緒方逸真流操鞭術】……【天竜閃】!」
突き出した腕、グルグルと螺旋を描きながら皮の鞭が真っ直ぐ斎藤? の顔に直撃をする。
「あぎゃぁぁああっ!?」
強制バク転をしながら、斎藤? と思われる男は吹き飛んだ。
「よくも!」
檜山大介が怒り憤って、ユートに突っ込む。
軽戦士を天職としている檜山大介は、軽い鎧と剣で身軽さを武器に戦うタイプと云えた。
「身軽と軽い剣撃は意味が違う!」
いつの間にその右腕に、パイルが付いた青い籠手を装備したユート、檜山大介の剣を躱して腹にパイルを当てて……
「どんな装甲でも撃ち貫くのみ! リボルビング・ブレイカァァァァーッ!」
ガンガンガンガンッ!
回転式弾倉から弾丸を撃ち放ち、パイルバンカーへと衝撃を伝えた。
「げは、がはっ! ぐふ! あじゃぱぁぁぁっ!」
ぶっ飛ぶ檜山大介。
既にユートの右腕は元の生身に戻っている。
死屍累々とはこの事で、四人は痛みに泣き叫びのた打ち回る中心で、ユートは薄ら笑いを浮かべていた。
「何をしているんだ!」
「ああ、正義(笑)の味方様がお前らを助けに来てくれたぞ? 小悪党な四人組を……な」
固有名詞は覚えてなかったがハジメが何だかそう呼んでいた気がする。
「な、何て酷い事を!」
天之河光輝がやはりというべきか早速非難の声をユートに対して上げた。
白崎香織が治癒師としての腕を振るう。
小さな治癒魔法では間に合わないと、もう一人居る治癒師の辻 綾子を呼んでの治癒となった。
「どうしてこんな虐めをしたんだ、緒方!」
「虐め? 四人で囲って一人に対し武器や魔法を向けるのが虐めだと認識するなら兎も角、一人でそれに立ち向かった無能極まる錬成師に虐められる……ねぇ?」
「そうよ、天之河。檜山達は訓練とか称して緒方を囲んで結果、返り討ちに遭ったってだけよ!」
園部優花が訴える。
本人は否定するだろうが友人二人からして、明らかにユートへ好意を持っている彼女は、ユートが本当に一方的な理由で暴力を振るったなら未だしも、理由が理由だけに庇うのは当然の流れであった。
「訓練だからって明らかにやり過ぎだろう!」
「つまりはあれかな? 天之河としては、僕が……名前何だっけ? こいつらからリンチを受けていれば満足だと言いたい訳だ?」
「違う、そうじゃない!」
「いいや、そうだろうね。恐らくそうなっていたらお前は『やられる緒方にも問題があったんじゃないかな?』とか言って、リンチをした小悪党四人組の擁護をした挙げ句、加害者である連中を被害者に祭り上げるくらいはしたろうな」
「なっ!?」
言い掛かりにも程があると言いたかったが……
「心当たりがあるだろ? 白崎と八重樫ならな」
天之河パーティの女子、二人に対して質問をされて言い募れない。
「えっと……」
「う〜ん」
しかも白崎香織も八重樫 雫もそれを否定しなかった。
「香織、雫?」
沈黙が雄弁に……それは取りも直さず白崎香織も八重樫 雫も天之河光輝がそれをすると、そう考えている証明であったと云う。
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勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる