ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 そろそろ次の章になります。





第四章:海人娘
第46話:下水で泳いだ海人族の幼女


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 青褪めた表情となっているクラスメイトの面々だがこれは無理もない、裏切者だとはいえクラスメイトの一員だった者の頭がドパンされたのだ、吐かなかっただけまだマシと云えよう。

 

 生々しく流れ出る赤黒い血、上半分の無くなった頭、仰向けに倒れた清水幸利の遺体……

 

 どれを取っても日本では先ずを以て見ない光景だった。

 

 尤も、ユートからしたらきっとそれは何も識らないが故の幸せな事だったろう。

 

 ユートはこの世界ありふれた職業で世界最強の地球であり日本という国で、血塗れとなって倒れた両親を視た小学二年生を知っているし、本人も助かりはしたが拳銃で撃たれたなんて話を当事者から聞いていた。

 

 存外とこの世界の日本はデンジャラスゾーンである。

 

 清水幸利を自らの手で所謂、暴君の魔銃で殺したユートがその場で言った内容は、愛子先生からして清水幸利の死を一瞬だが忘れてしまうくらいの衝撃が奔る。

 

「どんな願いもって、アンタはいったい何処の神龍よ?」

 

 まぁ、言われても仕方ない。

 

「僕に処女を捧げる娘は大きく分けて三種有って、【閃姫】契約、願望成就、それとは無関係な子作りなり好意なりだ」

 

「無関係なこ、子作り? それに好意?」

 

 子作りという言葉に優花が照れたらしい。

 

「ああ。まぁ、最終的に【閃姫】として契約する可能性もあるから実質は二種類だね」

 

「その内の一つが願望成就?」

 

「そうだよ、優花。だから先生は一つだけ願いを叶えられるんだ。とは言うものの、飽く迄も一つだけという括りだからね。よく考えないといけない」

 

「あ、愛ちゃん先生! 願い事を増やして貰うとか?」

 

「テンプレ過ぎねーか?」

 

 よくある願い故に。

 

「別に構わない」

 

「「「「構わないの!?」」」」

 

 優花だけでなく玉井淳史や宮崎奈々や菅原妙子までが叫んだ。

 

「とはいえ、叶えられる願いは飽く迄も一つだけ。願いを消費して増やせるのは一つだよ」

 

「プラマイ〇って事?」

 

「そういう事」

 

 因みに、【閃姫】契約した場合でも願い事を叶える事もある。

 

 大した願いに対応しないけど、いざやとなれば【閃姫】だからこそ回数は多い。

 

 また違ったモノだから。

 

「緒方っち、例えばどんな願いが叶うのかな?」

 

「ん? 宮崎には関係無い話なんだが……まぁ、良いか。そうだな……地球に帰るとか?」

 

「……え、マジに?」

 

 流石に驚く宮崎奈々。

 

「可能だ。但し、願いを言った者か帰還させたい対象の一人だけだけどな」

 

「一人だけって……」

 

 当然ながらそれは愛子先生自身が拒絶をする内容だろう。

 

「先生は嫌がるだろうし何より、仮に帰りたがっても止めておいた方が良い」

 

「何で?」

 

「先生が一人で帰ってみろよ? 生徒の親が黙っていない。学校の方も生徒をおっぽり出したとか、懲戒免職を喰らう案件。マスゴミも喧しいだろうし、政治の闇にも狙われる筈だ。そうなったら独りで生きていけるか?」

 

「マスゴミって、ひょっとしたら緒方っちは報道が嫌い? それに政治の闇や懲戒免職……」

 

 懲戒免職は確かに有り得そうではあるが、政治の闇とはいったい何なのか理解に苦しむ。

 

「政治には闇が付き物だからさ。この世界の地球では平和な日本でさえ命が軽い。弁護士一家が政敵に狙われて小学二年生の女の子共々に狙われて、それで助かったのは女の子だけだったとかな」

 

 そんな女の子が今や殺し屋とか世知辛いにも程がある。

 

 ユートは頭を抱えたくなった。

 

 何処の世界にも歪な闇は在るとは思う、事実として【リリカルなのは】の世界でも時空管理局にてトップ――最高評議会が犯罪者も同じだったくらいだ。

 

「……若しかして、このタイミングでそんな事を言い出したのは?」

 

「先生が考えた通りだ」

 

「ですが、それならどうしてわざわざ清水君をこ、殺したんですか? 必要性があったとは思えないのですが……」

 

「あったのさ。先生が望まないなら埋葬して終わり。次の家族会では清水が死んだと報告するだけでしかない。だけど貴重な願いを使ってまで先生が望むなら……ね」

 

 含みを持たせた言い方に違和感を感じるが、出来たら清水幸利をこの侭にはしたくない。

 

「でしたら……」

 

「この世界には地球も含めて冥界や霊界、死後の世界というモノが存在していない」

 

「……え?」

 

 愛子先生が言おうとしたら遮って口を挟んでくるユート。

 

「どういう事でしょう?」

 

「あの世が在ると無いとでは魂の先が変わる。在る場合は魂がそちらへと飛んで行き、冥界なり霊界なりで所謂処の死後の裁判を受けて天国なり地獄に逝き、場合によれば輪廻転生の輪に戻るんだ」

 

「は、はい」

 

 それは愛子先生も識ってる。

 

 呼び名は世界により違う。

 

 ユートの再誕世界はハーデスが支配する冥界、【幽☆遊☆白書】では霊界、【ドラゴンボール】では単純にあの世と呼ぶし、【ブリーチ】ではソウルソサエティなんて呼んでいた。

 

「それでは、死後の世界というのが無い場合は? 魂は僅かな時間で霧散して消滅してしまうんだ。だいたい、一〇分くらいが目安となるみたいだが……魂の強度次第では時間も延びるし、転生して新たな生を得る事も稀にあるな」

 

「ではこの世界では?」

 

「魂魄魔法というのを使わないと基本的に霧散して消える」

 

 死後の安寧も罰も無く消えて無くなると聞き、愛子先生だけではなく皆が青褪めていた。

 

 特に既に友人を亡くしてしまった玉井淳史は、友人の名前を呟きながら青くなっている。

 

「とは言うものの、実は僕が居る時点で“僕の冥界”が存在していてそちらに飛ばされる。今頃、清水も冥界で地獄門の先の裁きの館で天英星バルロンに地獄逝きを宣告された頃かな?」

 

「じ、地獄逝き!?」

 

「まさかあんな莫迦を仕出かした清水が天国に逝ける……なんて思わないよな?」

 

「……」

 

 押し黙るのは肯定した証左。

 

「僕の冥界ってのは?」

 

 やはりそこら辺が気になったのか玉井淳史が訊ねてくる。

 

「僕はカンピオーネでもあるのは知ったな? ならば理解も出来ると思うけど、冥界の王ハーデスを都合三回くらい斃しているから。その簒奪した権能で冥界の創造、冥闘衣の創造と召喚、一二時間限りの蘇生を使える様になった」

 

「マジかよ……」

 

 因みに、冥界創造の権能である【冥界の庭の掟(ヘル&ヘヴン)】には派生権能として【冥王の証たる衣(ハーデス・サープリス)】と神衣を解放する【冥王神衣解放(ハーデス・カムイ)】というのが存在している。

 

 本来、オリンポス一二神の範疇に無いハーデスだが、天帝ゼウスと海皇ポセイドンに並ぶ大神なれば有ってもおかしくないと考えたからか、普通にハーデスの神衣が使える様になっていた。

 

 この権能は【闇の書の終焉】の際に、何故か顕れた闇の神アプスと闘うのに用いられている。

 

 本当に因みにだが、アプスを斃して神氣を喰らった為にアプスの権能も簒奪していた。

 

 【闇に刻まれし烙印(デモンズ・スカー)】と云い、魔傷を与える能力であると同時に解除すら可能な権能、しかも体内のエネルギーに反応する為に小宇宙や魔力や霊力やPSYONや闘氣などを使う事が出来なくなるという。

 

 ギル・グレアムの部下がアプスの魔傷に侵された際、対価を支払わせて解除をしてやった。

 

 約定を違えたからには高い支払いをさせられても、文句の一つとて言えなかったであろう。

 

 この呪い染みた権能は余り使わないが、闇と親和性が滅茶苦茶なレベルで高いユートはアプスと同じかそれ以上のレベルで使い熟せる権能だった。

 

「まぁ、何が言いたいかと言うとだな……僕が居る今現在のこの世界には冥界が存在する訳だからさ、普通に魂魄が保護されて冥界へと飛んでいる。であるからには清水ではなく、他の生徒を一人限定だが生き返らせる事も可能だぞ」

 

「っ!?」

 

 驚愕に目を見開く愛子先生。

 

 十数名もの生徒達がオルクス大迷宮にて死亡が確認されており、今また清水幸利が死んだ。

 

 殺したのはユートだが、自らを余りにも不甲斐ないと責めているのも事実、自虐が過ぎるやも知れないけどそう思うしかない。

 

「意地悪ですね。そんなの普通は選べないですよ……」

 

「じゃあ、選ばないか?」

 

「清水君を生き返らせて下さい」

 

「良いのか? 他にも沢山居るっていうのに、例えば玉井と連るんでる二人とか」

 

「それは理解してます。それでも私は清水君を目の前で見捨ててしまいました。だから!」

 

「ま、この場合は選択が出来ないのが唯一の不正解だろうね」

 

 ユートは肩を竦めて言う。

 

 玉井淳史は拳を握り締めるが、それでも何も言わずに愛子先生の選択を見守っていた。

 

 清水幸利に手を翳したユートが行うのは肉体的な修復、元よりアストラルからの情報を基にして肉体の創り直しすら可能であるのなら、こうして肉体を修復する程度なら幾らでも可能。

 

 とはいえ、それも決して万能とは云えない。

 

 嘗て、スプリングフィールドの父親の仲間であったガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグという男が居たが、彼はアスナとタカミチの二人を逃がして自らは死亡してしまう。

 

 ユートはそれを見付けてガトウの肉体を修復して魂を再び縫い付け蘇生した。

 

 死ぬまで手出しは叶わなかったが故に死して後に蘇生させた訳だが、何しろ肉体の修復は治癒系の魔法で“治す”のとは全く異なり“直す”作業であるが故に、麻酔も使わず肉体を切った貼ったを繰り返す事にあるから激痛という言葉も生温い、狂わんばかりの痛みが襲うのだから。

 

 黄金聖闘士・蠍座のミロが使う真紅光針(スカーレットニードル)も激痛から降伏か死か、然もなくば発狂をするかの三択だと云われているが、これはそれよりも遥かに酷い激痛となる。

 

 ユートが汎暗黒物質を用いた【創成】により、清水幸利の頭を元の状態へと戻す。

 

 ミレディの時みたいに全身を情報だけで創るのとは違い、本体は特に傷付いていないから頭だけを直せば良い清水幸利は割と簡単に修復可能。

 

 あの時より早く修復が完了した。

 

「カレン、聴こえるか?」

 

〔聴こえてるわよ〕

 

 面倒臭そうな声……念話が響く。

 

「清水の魂はどうした?」

 

〔勿論、地獄に堕としたわ〕

 

「そりゃ、そうだろうな。何処だ?」

 

〔嘆きの川……コキュートスにぶち込みましたし、今頃は凍り付けになっているのでは?〕

 

「随分と奥に……」

 

 最奥たるジュデッカの手前である。

 

「悪いが解放して此方に戻してくれ」

 

〔また面倒な……判ったわ。埋め合わせはして貰うから〕

 

「了解した」

 

 ユートの冥闘士が一人、天英星バルロンのカレンはその冥衣が示す通り裁きの館の主。

 

 やっている事はハーデスの冥闘士である天英星バルロンのルネと同じだ。

 

 ユートは溜息を吐くと、疾く送り返されてきた清水幸利の魂を積尸気転生波で括り直す。

 

「これで蘇生は完了した。後はどうしようが僕にはもう関係は無い。それじゃ、僕らはフューレンに向かわせて貰うから、先生達はウルでやるべき事をしてくれ」

 

「わ、判りました……」

 

 愛子先生は作農師の仕事を続けるし、優花達は愛ちゃん護衛隊として留まるであろう。

 

 そしてユートはフューレンにまで戻ったなら、イルワ・チャングから報酬を受け取り再び旅に出る予定となっていた。

 

 次の目的地はグリューエン大砂漠に存在している大迷宮のグリューエン火山、其処で神代魔法の一つたる【空間魔法】を手に入れる。

 

 空間操作などは双子座の黄金聖闘士にとっては十八番だし、ユートは空間の操作関連なら可成り得意としていたけど、生成魔法が【創成】の補助に使えている事から空間魔法も似た感じに使えるだろうと期待もしていた。

 

 ミレディの重力魔法もユートの重力系魔法などの補助に使えていたし、その深奥たる星のエネルギーに干渉するというのもバッチリだ。

 

 神代魔法はユートが元から持っている能力への補助に調度良い具合だったと云う。

 

 まぁ、七人の【解放者】が望む使い方ではないのはミレディの微妙な表情を見せられたから理解もしている。

 

「それじゃ、行くぞ皆」

 

『『『『了解』』』』

 

 香織、雫、ユエ、シア、ミレディに加えティオがユートと共にフューレンへ向かう訳だが、今回はキャンピングバスを使っての移動ではない。

 

 ユートを囲う様に手を繋いで立つ【閃姫】達、ユートは雫の肩に手を乗せて叫んだ。

 

 尚、しれっと暁美ほむらとシュテル・スタークの二人が交じっているが、そこは誰もツッコミを入れては来なかった。

 

瞬間移動呪文(ルーラ)!」

 

 強力な魔法力が放出されてユートと【閃姫】達が大空を舞い、フューレンの方向へ向けて飛び去って往くのを愛子先生達は見送る。

 

「あ、俺も仮面ライダーに成れるかどうかを訊くの忘れていたぜ」

 

 色々と情報が錯綜したからか玉井淳史は訊きたい事をうっかり忘れていたらしい。

 

 どうせ成れないので問題は無いが……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 フューレンに到着した一行がズラリと並んでいる連中の最後尾に並ぶ。

 

 とはいえ、美女美少女の集まりなだけに目立つ事この上無いのは仕方があるまい。

 

 そしてやはりというか、シアのメロンやティオのスイカに目が吸い寄せられる男の哀しい性。

 

 女連れの男の場合は、抓られたり爪先を踏み躙られたりと悲惨な事になっていた。

 

「ねぇ、清水を置いてきたけど良かったの?」

 

「構わんよ。どうせ今の清水は先生にすら腕力で劣る程度の一般人だしな」

 

「どういう事よ?」

 

 話し掛けて来た雫の疑問に答えてやる。

 

「清水を殺した際、奴の技能である闇魔法や派生技能は簒奪しているから既にアイツに残されているのは言語理解のみ。ステイタス値にしてもレベルドレインで吸収したから精々、ハジメの初期値かそれより劣る身体能力でしかないからな」

 

「なっ!?」

 

「【模倣の極致(コピー&スティール)】を使ったからな。僕が【狩人×狩人】な世界で修業をして修得した念能力なんだが、前にも教えた様な気はするけど自ら殺害した相手か性的にイカせた相手の魂を掌握、持てる能力を奪うなりコピるなりするって感じだな。肝っていうか制約としては飽く迄も『自分で』やらないといけないけどね」

 

「誰かが殺したのでは駄目……と?」

 

「そういう事。奴を僕が撃ったのは先生を傷付けたからってのもあったが、自ら殺さないと闇魔法を簒奪出来なかったのもあるんだよ」

 

「成程ね。愛ちゃんが清水を生き返らせるのを望むのも折り込み済みな訳ね」

 

 当然ながら愛子先生の希望は理解していたし、それならば予め危険な洗脳を使える魔法を剥奪しておきたかった。

 

「やぁ、レディ達。良かったら俺と……」

 

 ドパンッ!

 

「グギャァァァァァアアアッ!」

 

「盛るな。二度とお前の遺伝子が拡散されない様に処置した。漢女になって反省してろ!」

 

 見た目にチャラいがイケメンな部類に入るだろう男が、シア達へ声を掛けてきた上に触れたその瞬間に漢女が誕生したのである。

 

 きっとその内にブルックの町のクリスタベル辺りへ弟子入りし、立派な漢女として服飾関係での仕事に就くであろう。

 

「うわぁ、スノーベルもあんな感じでああなったのかな?」

 

 ミレディが呟く。

 

 ミレディが【解放者】として活動していたであろう千年以上前も、○○ベルと名乗る漢女の存在が恐るべき事に確りと在ったのである。

 

 今回、チャラ男は不運だった。

 

 先ずを以てシアに触れたのが如何にも拙いが、選りに選って六万近い魔物を殺しまくった挙げ句の果てに、大して親しくもないがクラスメイトを殺した反動から気が昂っていたユート。

 

 普段ならユーキがすぐに気付いてケアをしているのだが、今回はそれが無かったから凄まじいばかりに暴力的に凶暴化をしていた。

 

 結果、自分のモノに汚ならしい手で触れてきたチャラ男を漢女にするべく、モーゼルカスタム――暴君の魔銃の片割れたるクトゥグアで穢らわしい股間を潰してやったのだ。

 

 チャラ男は男として死んだのである。

 

「うむ、狙った獲物は逃さぬか。流石は主殿」

 

 ティオがウンウンと頷く。

 

「まぁ、仕方がないわよね」

 

「私達もあんな人に触られるのって生理的に無理かな、かな」

 

 基本的に御人好しな二人をして辛辣な科白なのはチャラ男が気色悪かった様だ。

 

「……ん、自業自得」

 

 シアとは仲の良いユエからしたら塵芥が触れるなど許せない所業、地球組な香織と雫の仲が特に良いからかユエはシアとの仲を特に深めていた事もあり、ユートとの閨事ではシアと組む事が多くあって所謂、ユートの望みで百合プレイを披露する際は『ユエ×シア』な掛け算が出来上がってしまうから、貝合わせで互いの秘部を慰め合うのだって珍しくもないくらいだった。

 

 勿論、ユートが組ませれば『ユエ×香織』だとか『シア×雫』だとかも有る。

 

 ユートは男同士の交わりは好きではないけど、百合プレイを観るのは自らを勃ち上がらせる為の精力剤的に好む。

 

「あ、美晴ちゃんが股間にドパンをしちゃっていましたよ? 余り情操教育上宜しくないんじゃないかな?」

 

「肯定ですね。ミハルは相手が性犯罪者とはいえ情け容赦無く股間を撃ちました」

 

 こないだの性犯罪者へ股間ドパンッ! 事件を思い出したほむらとシュテルが、ユートに対して苦言を申し立てた。

 

「美晴が? 漢女を量産し過ぎたか?」

 

 股間をスナイプする小学五年生、シュールに過ぎる絵面が完成である。

 

「おい、お前ら!」

 

 チャラ男をドパンした後は見向きもしないで話し込むが門番と思われる男が二人、やはり騒ぎを聞き付けたのだろうが大慌てでやって来た。

 

「これは何の騒ぎだ!」

 

「あそこで血を流して蹲った奴は?」

 

 矢継ぎ早に詰問タイムな強面な門番だったが、ユートが女の子を何人も……しかも凄い美女美少女ばかりを連れているから、嫉妬や怨鎖ややっかみの類いも含まれていそうなのはユートに詰問しながらも、確り視線はシアのメロンやティオのスイカに向かっている辺り判り易い。

 

 無論、可愛さなら抜群な他の娘達にも。

 

「あの男が連れに手を出そうとしてね。見なよ、こんなに怯えてしまっている。兎人族なこの子に手を出そうとしたし、きっと自分の奴隷にしようとしたんだな。醜い股間の膨れ上がったアレを遂々、攻撃してしまったとしていったい誰が責められるんだ?」

 

「む、それは……」

 

 勿論、現代日本では通じない論拠。

 

 ユートのやった事は単なる傷害罪ではあるが、まるで性犯罪者が悪いと言わんばかりの言ったもの勝ち的な科白を並べ、シアがユートの胸の中に居て性犯罪者が怖くて震えている様にも見えたのが根拠となり、チャラ男が無理矢理に立たされて連れて行かれる事になった。

 

 チャラ男、哀れなり。

 

「処で、黒髪黒瞳で沢山の女性連れの青年……君はユートという名前かな?」

 

「イルワ・チャング辺りから言われたか?」

 

「やはりか? フューレン冒険者ギルド支部長のイルワ氏から、君が来たら真っ先にギルドへ通して欲しいと通達があってね」

 

「了解した」

 

 ユート一行はこれ以上並ぶ必用は無くなったみたいで、門番を案内役として冒険者ギルドの方へと向かうのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 フューレン冒険者ギルド支部の支部長室に通された一行を待っていたのは、ギルド支部長であるイルワ・チャングと秘書のドットの二人。

 

「ウィル・クデタは?」

 

「今は迎えに来た両親に会いに宿へ行ったよ」

 

「そうか。まぁ、居なくても問題無いな」

 

 報酬を受け取るだけならイルワ・チャングが居れば事足りるのだから。

 

「さて、君への報酬は二億ルタ。それに冒険者ギルドフューレン支部長の名に於いて後ろ楯になる事と、君のランクを金へと上げる事だったね」

 

「その通り」

 

「二億ルタは流石に即金とはいかなくてね」

 

「……だろうな」

 

 百万ルタくらいなら即金で支払えるだろうが、やはり億なんて単位にもなると支部長の一存にてポンとはいかない。

 

「という訳で、暫く待って貰えると助かるんだ。実はクデタ伯爵……グレイルにも相談してね。何とか金策は出来そうなんだよ」

 

「そいつは何よりだね」

 

「金ランクへの昇級と後ろ楯の件は今すぐにでも可能だよ。何なら君の連れも同じランクにしたって構わない。実際、映像を見せて貰ったが君にも遜色の無い活躍だったじゃないか」

 

 ユートはこのフューレンでイルワ・チャングが戦いを観れる様に、空中投影が可能なモニターを使える簡易デバイスを置いて行き、サーチャーで撮影をした映像を送っていた。

 

 正直、イルワ・チャングとしてはユートに対して決して敵対をしたくない。

 

 敵対をしたらその瞬間にはフューレンが根刮ぎ消滅する未来しか見えないのだから。

 

 ユート達が変身をしていた仮面ライダーもそうなのだが、何よりも間違いなく一発でも撃たれたら町が消えるあの攻撃。

 

 怒らせて撃たれて消えるフューレンの町とか、

冗談でも起きたら困る出来事である。

 

「兎に角、君とは良い関係を築きたいものだね。ギルド支部長としても個人的にもだ」

 

「それは重畳。此方としても無意味な敵を増やす心算は無いからね」

 

 こうしてガッチリと握手を交わす二人。

 

 因みに、ユートのステータスプレート改を見せられたイルワ・チャングは数万とか十万なんて、無茶苦茶な数字を持つ事に白目を剥いたとか。

 

 万が一にもユートに対して不義理を行ったら、間違いなくフューレンは跡形も無く消えると。

 

 イルワ・チャングとの会合後、宿屋からやって来たクデタ伯爵夫妻とウィル・クデタ。

 

 どうやら御礼がしたいらしいクデタ伯爵夫妻、ウィル・クデタらはやはりまだ不満顔だったから改めて彼が冒険者に向かないと突き付ける。

 

 クデタ伯爵夫妻は一応だがそれなりに影響力を持つ伯爵家らしく、イルワ・チャングと同じくでユートの後ろ楯になると約束してくれた。

 

 ユートはその後、暫くはフューレンの町に滞

在をしてほむらやシュテルとデートを愉しんだ。

 

 二人からしたら数ヵ月振り、ユートからしたら時間軸の変遷から三年くらい振りの逢瀬であり、それぞれで二人切りになって宿屋でたっぷりと愛し合ったものである。

 

 その後はユエ、香織、雫、ミレディという順番でデートをしたユートは『主殿』と自分を呼んでくるティオ・クラルスの扱いを考えつつ、シアとのデートを敢行していた。

 

 シアも嬉しそうにしているが、周りからしたら毎日毎日違う女の子を連れているナンパ野郎にしか見えないであろう。

 

 しかも連れ歩く女の子の水準は非常に高い。

 

 事実、目の前でクレープっぽいお菓子を売っている青年は『またかよ!』みたいな目で睨んできているし、ユートの感知でどうやら監視をされているのが判っていた。

 

 しかもしかも、連れられている女の子達は基本的に幸福そうな表情で腕を組んだり所謂、恋人繋ぎで手を繋いだりしているのである。

 

 現にシアも『えへへぇ』と嬉しそうな顔で腕にしがみ付き、頭をユートの身体に密着させながら歩いていた。

 

 何ならおっぱいを押し付けるから豊かな双丘の狭間に沈み込むユートの腕、もうパプパフでもしているかの如くユートの腕を挟み込む。

 

「シア、当たってる処の話じゃないんだが?」

 

「当ててるんですよ!」

 

 だから、当たってる処の話じゃない。

 

「ユ、ユートさんのオチ……流石にはしたないですけどアレだって挟んでるじゃないですか。腕くらい構わないですよね?」

 

 まぁ、シアの胸部装甲はティオを除けば一番の巨乳であるが故に、ユートも挟まれて擦り上げられるのが心地好いからシア相手にはよくやって貰っている訳だが……

 

 水族館たるメアシュタットからこっち、シアの御機嫌は鰻登りに上がっていてサービス満点といった処だった。

 

「うん?」

 

「どうしました?」

 

「地下の下水路か? 気配がある。ヒトの気配でしかも可成り弱まっている感じだ。元々が小さいみたいだけどな」

 

「それって、気配の主は子供って事ですかね? なら助けませんと!」

 

「シアならそう言うわな。取り敢えず子供相手に対価がどうのも無いだろうし……行くか」

 

「はい、ですぅ!」

 

 シアは喜色満面で答えたのだと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 フューレンの町は規模がでかいのもそうだが、普通に下水道が通っているくらいには技術的にも発展しており、汚水は下水道を流れて外へと排出をされているらしい。

 

 そんな下水道の汚水に流される小さな影。

 

「あれか?」

 

「私が行きましょうか?」

 

「否、必要は無い」

 

 ユートが右の掌を上向けにして、クンッと人指し指を曲げる仕草をしたら子供が汚水の中から浮かび上がって来た。

 

「ふぇ?」

 

「PSYONをエネルギー源とする超能力」

 

 勿論、術式を当て嵌めて魔法の様に術式を動かしたりも可能ではあるが、こうして遺志だけの力で無軌道にも扱い易い能力でもある。

 

 それこそ、念動力(サイコキネシス)瞬間移動(テレポート)精神潜航(サイコメトリー)などの超能力は有名であろう。

 

 他にも天眼通や天耳通や他心通や神速通や宿命通や漏尽通という六神通も、超能力の一端として考えられているもの。

 

「この子、この耳の形からして海人族か?」

 

 エメラルドグリーンでフワッとした髪の毛に、耳が鰭の様な独特の形をしたものだった。

 

 指の間には膜が有り、泳ぐ為の器官である事を窺わせる。

 

「見た目から四歳か五歳くらいか?」

 

「ですねぇ」

 

「で、こんな汚水で泳ぐ趣味が無いなら」

 

「きっと碌な理由じゃありませんよ」

 

「……そうだな」

 

 ユートは思い出す。

 

 助けるべきヒロイン達、ユエとシアとティオに加えて海人族のミュウというのが居た筈。

 

(つまり、この子がミュウか)

 

 本来の主人公が居ない状況では誰もが危なかったのは確かであり、ミュウもこうして手を伸ばしたからには助けるしかあるまい。

 

 ユートはミュウの着ている粗末な服を脱がせ、スッポンポンに剥いてしまう。

 

「ちょ、ユートさん! 御腰がムズムズしますなら後から御相手しますよ? 幾ら何でもこんな小さな子を相手に……」

 

 スパン!

 

「あ痛ぁ!」

 

 ハリセンでどついてやった。

 

「汚れを落として着替えさせるだけだ!」

 

 ユートは取り敢えず生活魔法とカテゴライズされる魔法を使う。

 

 シャワーで汚れをすっかり落として、温風によりすぐに乾かしてやると小さな服を取り出して、それをミュウ? へと着せ替えてやった。

 

「その服は?」

 

「今さっき【創成】で造った」

 

「マジ、パないですね」

 

 着替えも終わり、ユートはミュウ? を抱えてから立ち上がる。

 

「どうしますか?」

 

「人気の無い場所に転移する」

 

 テレポート。

 

 ルーラと違い正真正銘の空間転移である。

 

 高台に移動して宿泊アイテムのコテージを展開して、ベッドに気絶しているミュウ? を寝かせてやるともう一つのベッドにシアと座ってイチャイチャとし始めた。

 

 ミュウ? が起きたら大変に拙い事態になるのだろうが、シアは魅力的に過ぎるというのに今朝から無防備な接触で下半身がヤる気に充ち満ちてしまっており、シアも抱っこ状態からユートの股間が隆起しているのに気付いた為に頬を紅くしながら互いに顔が近付き、唇を重ねてしまって我慢も限界となったのである。

 

 ユートは普段なら我慢も出来ているのだけど、少し前の【清水幸利の乱】で殺り続けた箍が外れた侭で、ほむらやシュテルや【ありふれーズ】も抱いたというのに未だ燻る小火(ぼや)がエロチックなシアにより大火となってしまう。

 

「あの子が起きるまでに鎮めて下さいね」

 

 何て言うシアも実際はミュウ? の事さえなければとっくにデキ上がっている肢体を擦り付け、口と豊満なお胸でユートのヤる気に満ちた下半身を鎮めるべく動き始める。

 

 一時間後、漸くミュウの目が覚めた頃にはシアも身体を清め終わっていたのは、流石に自重したユートが早めに終わらせた結果であった。

 

 

.




 表記がミュウ? なのは、飽く迄もユートがまだ未確認だったからです。

勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

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