ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 月曜処か火曜にも間に合わなかったなぁ……





第48話:逢魔ヶ刻へ殲滅の祝砲を上げよう

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 シアとティオによる蹂躙が行われたフリートホーフの本拠地、仮面ライダーリュウガに変身したティオは容赦なく屠っていくし、何ならドラグブラッカーに捕食すらさせている。

 

 仮面ライダーザビー・マスクドフォームとなったシアも、部屋に残っていたフリートホーフの構成員を叩いて潰し、片腕を肩口から喪って激しく出血するハンセンはアイゼンⅡの轟天モードにより下敷きにしてやった。

 

「さて、ミュウちゃんは……貴殿方が攫った海人族の少女は何処に連れて行きましたか?」

 

「う、うるせぇ! 誰が教えるかよ!」

 

「G2」

 

 アギトのGシリーズに非ず。

 

「あぎゃっ!?」

 

 仮面ライダーザビーだから表情は見えていないのだが、恐らく底冷えをする様な目を向けているのは間違いあるまい。

 

 シアの神代魔法……重力魔法への適性はミレディが曰く、可成り低くて精々が自分の体重を若干ながら軽くしたり重くしたり出来る程度。

 

 故にこれはシアの力ではなく、ユートがシアの為にアイゼンⅡへと新たに付加した魔法だ。

 

 元々、グラビティショックウェーブの機能を持たされたアイゼンⅡだったが、重力魔法を組み込んでその重量を増す事による破壊力の増加を目論んでいたのである。

 

 現状、一〇倍にまで重量を増やせる。

 

 元々の轟天モードなアイゼンⅡのヘッド部に於ける重量は約五〇〇kg、倍加すれば一tという相当な重さになる訳だからハンセンは苦しそう。

 

 シアはアイゼンⅡの下敷きとなったハンセンに、「ミュウちゃんは何処ですか?」と訊ねる。

 

 ハンセンは先程までの威勢は何処へやら? と謂わんばかりに無様な命乞いを始めた。

 

「た、助けてくれぇ! 金なら好きなだけ持って行っても構わんから! もう二度とお前らに関わったりもしない! だから……ッガフッ!?」

 

「煩いですね、貴方は只私の質問に答えれば良いのです。理解しましたか? 理解が出来ないと言うならその都度、重さが倍々に増していきます。内臓が飛び出さない内に私からの質問の答えを言う事を薦めますよ」

 

 シアの可愛らしい声でザビーが言うのは余りにもシュールだった。

 

 中身が可愛いウサギさんだとはこの蜂を見て思う人間はまず居まい。

 

 ミュウと名前を聞かされハンセンは訝しい表情となるが、すぐに海人族の子と言われ思い至ったのかアイゼンⅡの重みに苦しみながらも答える。

 

「きょ、今日の夕方……ころ、行われ……る、裏オークションの、会場の地下に移送……された」

 

 どうもハンセンはシアとミュウの関係を知らなかったらしく、ミュウという海人族の子供に拘る理由が解らなかった様だ

 

 実際にはシア達とミュウのやり取りを見ていたハンセンの部下が、咄嗟の思い付きだけでシアの誘拐計画を練って実行したのだろう。

 

 シアはフリートホーフからすれば誘拐リストの上位に載っていたし、ハンセンの部下が自ら誘拐して組織内の発言力を増したかった……とかそんな処だったのかも知れない。

 

 シアは今回の作戦で借りたファイズフォンⅩにより連絡を入れる。

 

「もしもしユートさん」

 

〔シアか、どうかしたか?〕

 

「あの、先程フリートホーフの本拠地を襲撃しまして……ミュウちゃんの居所を突き止めました」

 

〔でかした、シア!〕

 

「えへへ、後で一杯褒めて下さいね。それでですがユートさんは今って観光区ですね? 恐らくはそちらの方が近いので先に向かって下さい」

 

〔そうか、了解した〕

 

 ユートに詳しい場所を伝えると電話を切って再びハンセンに顔を向けた。

 

 アイゼンⅡの重力魔法を解き通常の重さに戻すと肩に担ぎ直し、アイゼンⅡの重さから解放されたが出血多量で意識が朦朧とし始めているハンセンを睥睨している。

 

 死に掛けるハンセンはザビーに――シアに対して必死に手を伸ばして助けを求めた。

 

「お、御願いだ……助け……い、医者を呼んで……頼むから医者を呼んでくれぇぇ!」

 

「子供達の人生を散々食い物にしておきながら、それは流石に都合が良過ぎるというものですよ。だいたい、貴方みたいな人間を逃したりしたら、ユートさんに怒られてしまいます。という訳なので……さよならグッバイですぅ」

 

「ヒィッ! や、やめろ……やめてくれ! 人の心が有るんなら!」

 

()()()らしいですからね……有りませんよそんなモノは」

 

 グシャリッ!

 

 某・超絶美形主人公と似た返しをしたシアが、ハンセンのド頭へとアイゼンⅡを振るいヘッド部が命中して勢い良く脳味噌をぶちまけた。

 

 アイゼンⅡを振り回し付着した血を吹き飛ばし、此方に戻ったティオに向き直る。

 

「ティオさん、ミュウちゃんが心配です。こんな場所はさっさと潰して早くユートさん達と合流をしましょう!」

 

「う、うむ。それにしても主殿もそうだがシアもやはり大概よのぉ……」

 

「はて? ……何か仰有いましたか?」

 

「な、何でも無いのじゃよ。うむ」

 

 特に何も無さそうだからシアは首を傾げつつもフリートホーフ本拠地の破壊活動に勤しんだ。

 

 それから一時間もしないでシアとティオの二人が立ち去った其処には、屍山血河と謂わんばかりに無数の屍と瓦礫の山だけが残った状態である。

 

 中立商業都市フューレンに於いて、裏世界では三指に入る巨大な組織――フリートホーフはこの日を境に消滅の憂き目に遭うのだった。

 

 フリートホーフ消滅。

 

 本拠地の生存者――0。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 シアから情報を受け取ったユートは裏オークション開催地に向けて走る。

 

 目的がオークションであるからには生命の危険は無いと踏むが、ミュウは四歳児ながら賢い娘だから己れの境遇を理解しているのだろうし、可成りのストレスを感じる筈だから奪還するなら早い方が良い。

 

 ユートは後悔していた。

 

 こんな事ならミュウを手放すのではなかった、あの子がヒロイン枠なら常に傍に置いておくのが正解だったのでは? そうは思ったが大迷宮攻略に連れ回すには幼な過ぎる。

 

 それ故に常識的な判断に目を曇らせた。

 

 嗚呼、だからこれはきっと八つ当たり。

 

 時折、フリートホーフの構成員らしきを見掛けては殺害していくのだから。

 

「全員が地獄逝きだ。無間地獄で永久に、死という安らぎも発狂という救いも無く未来永劫を苦しみ続ければ良い!」

 

 死んだフリートホーフの構成員や幹部は冥界に於ける裁判官代わり、天英星バルロンの冥衣を与えているカレン・オルテンシアに逝き先の処遇を予め伝えてある。

 

 永劫に救われない無間地獄で死すらも死せない苦しみを。

 

 勘違いをしている人も居るだろうが、そもそもユートが神様転生で得たのは『魔法に対する親和性』と『流れなどがよく視える目』、オマケとして自身が生前に集めたサブカルチャーとそれらを容れる亜空間ポケットである。

 

 無限の魔力とか不老不死とか【無限の剣製】だとか【王の財宝】、神転あるあるなチート能力に比べると一段処か三段は落ちるモノ。

 

 まぁ、力の付与をしたのが下級神に成り立てだった【日乃森なのは】で、元より大した能力を与えられなかったのも確かではある。

 

 それと意外なというか、ユートが想定していなかった事もあったから今現在が確立された。

 

 先ず、『魔法に対する親和性』が予め高かったから【錬金】という【ゼロの使い魔】系の魔法を使いまくった結果、年齢的に有り得ない成長を遂げたのが有るだろう。

 

 更には【錬金】は【錬成】という魔法に進化をしたし、『よく視える目』も【探知(ディテクト・マジック)】という魔法を目を開いている時は常に使った結果、魔眼というレベルの眼――【叡智の瞳(ウィズダム・アイ)】に進化をした事。

 

 ユートの今は【錬成】と【叡智の瞳】に集約をされていると言っても過言ではない。

 

 事実として今でさえユートを支える能力が何かと問われれば、メティスを殺し権能を簒奪してから進化した【創成(クリエイション)】と【神秘の瞳(ミスティック・アイ)】だと答えるだろう事からも窺える。

 

 ユートが使う仮面ライダー変身シリーズとて、殆んどがこの能力と【魔獣創造】の禁手によって創られた聖魔獣によるもの。

 

 仮面ライダーディケイドは這い寄る混沌の力を解り易く具現化したモノだが……

 

 【カンピオーネ!】世界で創った仮面ライダーウイザード系のベルト、自身のウイザードライバーや草薙護堂のカンピオーネドライバー、エリカ・ブランデッリのビーストドライバー、リリアナ・クラニチャールやアリアンナ・ハヤマ・アリアルディやカレン・ヤンクロフスキのメイジドライバーは基礎を【錬成】で、後は魔導具造りに近い方法で製作をしている。

 

 尚、平行世界の【ミスラが最後の王】の世界とは一切繋がらない平行異世界なのが判明した。

 

 死んで権能を“譲った”筈のデヤンスタール・ヴォバンや、ユートの子を産んで引退した羅 翠蓮、ハルケギニアに移動していたアイーシャ夫人など居る筈の無い神殺しが確認されたからだ。

 

 それは兎も角、ユートの力は基本的に多元世界を航り旅して得たものであり、万能でもなんでも無いという事。

 

 ある意味でディケイドと同じ。

 

 何の因果かはたまた祟りか? 這い寄る混沌の力を持ったユートは、這い寄る混沌を討った後に唯一残されたこれをイチ様とナツ様という二柱の女神に喚起して貰った結果、仮面ライダーディケイドに変身が可能となった訳だが、世界を航るという性質もディケイドと同じくとなった。

 

 扨置き、ユートは神でもなければ万能者でもないちょっと力がある人間。

 

 戦いで無双は出来てもやはり出来ない事は多々有るもので、そんなユートの足りない部分を補うのが【閃姫】の役割でもあるのだから。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 シア達に透明化呪文(レムオル)を掛けた状態でユートは潜入、入口には黒服を着た巨漢が見張っていたから騒ぎを起こさない為だ。

 

 下手に騒いでまたミュウが連れて行かれてしまっては面倒でしかない。

 

 地下を潜入して暫く経つと無数の牢獄を発見してしまう。

 

 監視らしき男が入口に居たが居眠り中らしいから都合は良く、監視の前を素通りして行くと牢の中には人間の子供が一〇人ばかり、冷たい石畳の上で身を寄せ合い蹲っているが間違いなく今日のオークションで売り飛ばされる子供達。

 

「あれ? 大人も居るのか……」

 

 二十代半ばか? 背の低い眼鏡を掛けた女性が子供達を庇う様に睨んできた。

 

 背中まで届く長い茶色の髪の毛、派手さは無くて特徴も然程に有る訳でもないが可愛らしい容姿をしている。

 

 このトータスの人間族とは殆んどが聖教教会の信者である為、人間を奴隷や売り物にするというのは基本的に禁じられている。

 

 応用的にはアリで人間族の中でも売買の対象となるのは犯罪者という、神を裏切った者であるとして奴隷扱いや売り物とすることが許された。

 

 当然ながら牢内で震えている子供達が揃いも揃って奴隷堕ちするべき犯罪者である筈は無くて、正規の手続きで奴隷堕ちした人間はれっきとした表のオークションに出品される。

 

 違法に誘拐されたのは間違いない。

 

 女性は判らないが、この様子からして犯罪者だとは流石に到底思えなかった。

 

 ユートは自分が入ってきた事で怯える子供達と睨む女性に対し、鉄格子越しに優しく穏やかに静かな声色で質問をする。

 

「海人族の女の子が此処に居なかった?」

 

「先程、連れて行かれてしまいました。あ、貴方はどちら様ですか?」

 

 子供達を庇う女性が訊いてきた。

 

「海人族の子を助けて保安署に預けたんだけど、保安署を爆破して連れ去られてしまったんだよ。だからフリートホーフを潰滅させて助ける為に来たって訳だ。君は唯一の大人みたいだが?」

 

「私は水森月奈。此方風にならツキナ・ミズモリと名乗るべきでしょうか?」

 

「日本人! どういう事だ? エヒトは僕ら以外にも召喚していたのか!?」

 

「……え? じゃあ、貴方は勇者ですか?」

 

「う゛……」

 

 ユートの顔が嫌悪に染まる。

 

「えっと?」

 

「一応はそうだが……正直、勇者(笑)と一緒くたにされたくはないな。あんな愉快な人間と同じだとかさ、マジで死にたくなるよ」

 

「は、はぁ?」

 

 月奈は訳が解らないといった風情。

 

「まぁ、詳しい話は後で。取り敢えず今は君らを助けに来たんだ」

 

「本当に助けてくれるのですか!?」

 

 驚愕浮かべて叫ぶ月奈だったが、大声を出してしまったのは如何にも失敗でその声は薄暗い地下牢に反響してしまう。

 

 『あっ!』と慌てて両手で口を塞いだ月奈ではあるものの、監視の男にはやはり聞こえていたらしく目を覚まして、足音をドタドタと重苦しく響かせながら地下牢にまで入ってきた。

 

「何だ、てめえ? いったい何者だ!」

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

 

「は?」

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE DECADE!》

 

 いつの間にか装着されたマゼンタカラーに色付いたネオディケイドライバー、展開された状態にてカメンライドカードが装填されてドライバーが閉じると、電子音声と共にディケイドのシルエットが集約されて仮面ライダーディケイドの姿へと変身を完了する。

 

「な、何あれ?」

 

 月奈が呟く。

 

《ATTACK RIDE BLAST!》

 

 ドパパパパパパパパパンッッ!

 

「ウギャァァァァアアアッ!」

 

 分身をする銃身で蜂の巣にしてやったら本当に呆気なく絶命した。

 

「こ、殺した……のね……こういう世界だと知ってはいたけれど」

 

 青褪めて悪くなる表情は日本人の感性なら仕方が無いのだろうが、勇者(笑)みたいな感じは無い辺り人間としての格は可成り上と視た。

 

「警笛も鳴らさないとか莫迦なのかね」

 

 呆れましたといった感じに呟いたユートだったけど、目を丸くしていた子供達と月奈を見遣りながら鉄格子の鍵を開けるべく呪文を使う。

 

解錠呪文(アバカム)

 

 カチャリと鍵が開いた。

 

「今のは魔法ですか? でも、陣も詠唱も無かったみたいですが……」

 

「トータスの魔法事情は知ってるみたいだね? 僕の魔法はトータス産じゃないんだよ」

 

「? 地球に魔法が?」

 

「無くもないけどな」

 

 どうやら月奈は仮面ライダーもドラクエも知識に無いらしく、トータスで得たこの世界での魔法の扱い方から不思議に思った様だ。

 

「月奈と言ったか、悪いんだけど子供らを頼めるかな? 入口に仲間が来ているから安全面としては問題も無い筈だ。どうやら僕はもう少し暴れないといけないみたいだからね」

 

「わ、判りました。皆、行こう」

 

「保安署の連中ももうじき駆け付けるだろうし、冒険者ギルドのイルワ支部長にも色々と伝手が有るから手を回してくれる筈。細かい事は彼に丸投げしてしまおう。月奈は残っていてくれると捜す手間が省けるんだがな」

 

「そうさせて貰いますね」

 

 月奈はイルワと呼ばれた支部長に同情の念を持ったが、自分の身分から余り手助けなどは出来ないと考えている。

 

 イルワにもファイズフォンⅩを渡してある為、連絡はその番号に掛ければ一発であった。

 

 巨大な裏組織と喧嘩になったと報告された上に後ろ楯宜しくと言われ、イルワ・チャングは執務室で真っ白になってしまい早速ながら後ろ楯になったのを後悔したものである。

 

 月奈としては同胞と云えるユートを逃がしたくはないし、大人しく仲間とやらに保護をして貰う事を決めて子供らを促した。

 

 ユートがオークション会場に向かおうと動いたその時、後ろの方から少年らしき声が響く。

 

「兄ちゃん! 俺達や姉ちゃんを助けてくれてありがとう! あの子の事も絶対助けてやってくれよな! すっげー怯えてたんだけど、俺には何にも出来なかったんだ……」

 

 まだ子供だからか? それとも少年の性質なのかは判らないが、どうやら亜人族とかは無関係にミュウを心配していたらしい。

 

「悔しかったなら強くなれ。今は無理なら今回は僕がやるさ。だから若しも次に何かがあったなら少年……その時こそ君が動けば良い」

 

 呆然となる少年に後ろ姿で右腕を横に伸ばし、サムズアップをして見せるユート。

 

 ユートが居なくなってから少年はまるでヒーローでも見たかの如く、その瞳をキラキラさせながら少しだけ男らしい顔つきとなり、ユートがした様にサムズアップをした。

 

 月奈はそんな少年に微笑ましい眼差しを向け、子供達の皆を連れて地上へと向かう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 オークション会場の客は凡そ百人程で、誰もが妙ちくりんな仮面を装備していて音の一つも立てずに目当ての商品が出てくる度に番号札を静かに上げていた。

 

 貴族か商人か? 疚しい事をしている自覚自体はあるから、自らの素性をバラしたくないが為に声を出す事すらも憚るのだろう。

 

 細心の注意を払っている彼等ですら、その商品が出てきた瞬間に思わず驚愕の声を漏らした。

 

 二つの商品となる二人のヒト。

 

 一人は間違いなくミュウ、二m四方の水槽に入れられており、ユートが与えて着ていた服は剥ぎ取られ素っ裸な状態で水槽の隅で膝を抱えて縮こまってしまっている。

 

 海人族は水中でも呼吸が可能、本物の海人族であると証明する為に水槽へと入れられているのだろうが、一度は逃げ出したからか小さな手足には金属製の枷を嵌められていた。

 

 今一人は大人らしい金髪碧眼で白い肌の女性であり、元々から大人しいのか淑やかなのかは判らないが現在は弱々しく項垂れてしまっている。

 

 彼女も素っ裸ではあるが、特に狼藉を働かれた感じでは無い事から商品としては大事にされていたのかも知れない。

 

 裸なのは魅力を存分に魅せ付けて商品価値を引き上げる為か、ならば少なくとも意味も無く狼藉をして価値を下げたりはしないだろう。

 

 男共が目を見張り中には口笛を吹く輩も。

 

 ミュウではなく金髪碧眼の美女に対してなのは流石に当然、彼女は女としての価値だけでも高値に設定が出来そうなくらいだ。

 

 だけど肉感的でスラッとした顔立ちな美女というだけでなく、彼女には商品としての付加価値がまた別に付いていた。

 

「さぁ、今度の商品は貴重なる海人族の子供! そして何と異世界人の美女ですよ!」

 

『『『『おお!』』』』

 

 事前に知らされていたとはいえ男共が驚嘆するのも無理はなかった。

 

 フリートホーフは水森月奈以外にも異世界人を確保していたらしく今現在、出品をされているのが正しくもう一人の異世界人らしい。

 

 【勇者】として初めから聖教教会に保護をされている天之河光輝らと異なり、水森月奈や彼女は召喚された訳ではないから【言語理解】の技能を持たないが故に、割かしすぐに異世界人としての馬脚を表してしまったのだ。

 

 こうして捕らえられたのも無理は無い。

 

 とはいえ、二人は頭は良かったからかリスニングで何とか現地の言葉を覚えられたのが幸いし、今時分までは無事に過ごせていたのである。

 

 片言でも喋れれば暮らしていけたのだから。

 

「おい、異世界語で話しなさい」

 

 俯いた女性は口を開かない。

 

「チッ、喋りなさい!」

 

 鞭を床に振るうと女性の肩が震えた。

 

「全く、碌に話さないとか礼儀を知りませんね。海人族の方は辛気臭い餓鬼ですし、人間様の手を煩わせているんじゃありませんよ。余所者と半端者の能無しの風情が!」

 

 司会の男が怒鳴り散らしながら鞭を振るって、ミュウの居る水槽には棒を突き降ろそうとした。

 

 思わずミュウは目を瞑り衝撃に備えるものの、衝撃の代わりに届いたのは……

 

「屑野郎が……その科白はそっくりその侭お前に返してやるよ!」

 

 ずっと聞きたかった声である。

 

 行き成り顕れたユートが司会の男の頭を蹴り付けると、司会の男の頭が破裂した様に弾け飛んで血飛沫が周りに汚れを作った。

 

 ピクピクと生きていた痕跡として痙攣をしながら倒れた頭無しな死体。

 

 ユートは絶命した男の事など視界にも収めず、右拳を振るって水槽を殴り付けると軽快な破砕音が響いてミュウが囚われた水槽から中が勢いよく吹き出した。

 

「あん!」

 

 そんな流れの勢いに中に居たミュウも外へと放り出されたが、すぐにフワッと温かいナニかに受け止められたのに気付いて固く瞑っていた目を、ゆっくりと……そーっと開けてみる。

 

「またびしょ濡れだな? 水も滴る良い女と言いたいんだけど……よく頑張ったねミュウ、君を助けに来たよ」

 

 軽く冗談を言いながら笑顔を向けたユートに、ミュウはジーッと顔を見つめた侭に囁くが如く小さな声で訊ねた。

 

「……ユートお兄ちゃん?」

 

「再会する約束はちょっとだけ早くに叶ったみたいだ、ミュウが呼ぶユートお兄ちゃんで間違いは無いよ」

 

 その優しい声にミュウは大きな瞳をジワッと涙にて潤ませると……

 

「ユートお兄ちゃんっ!」

 

 抱き付いて来て嗚咽を漏らし始めた。

 

 優しい表情でユートはミュウの背中をポンポンと叩くと毛布でくるんでやる。

 

「序でに君も取り敢えず着ると良い」

 

「Thanks」

 

「英語? 見た目からして米国人か? 兎に角、ミュウを連れて下がっていろ」

 

 理解は出来たらしく頷いて丈夫なだけの粗末な服を身に付けてミュウを抱っこ、言われた通りにユートから離れて下がっておく。

 

 ミュウも大人しくしていた。

 

「血を見る事になるからミュウの目は塞いどいてくれると助かる」

 

「Ok」

 

 向こうのリスニングは完璧らしいとユートは考えて前へ、其処へ丁度良くドタバタと足音を立てて黒服を着た男達がユートを取り囲む。

 

 客席に居る客達――貴族やら商人らしき連中は、どうせ敵う筈も逃げられよう筈も無いと思っているのだろう、多少はざわめいてはいるが特に逃げ出す様子はなかった。

 

「このクソ餓鬼が俺達、フリートホーフに手を出すとは随分と頭が悪いみたいだな。その商品を置いていくならせめて苦しまずに殺してやるぞ?」

 

 二十人は居る屈強そうな男共は数の優位に酔い痴れており、自らの勝利を信じてやまないらしくユートに降伏勧告をしてくる。

 

 ミュウは周囲を囲むガチムチ共に怯えており、金髪女性の胸に顔を埋めて不安そうにしていた。

 

 

「大丈夫だ、ミュウ」

 

「ユート……お兄ちゃん……?」

 

「数だけの雑魚なぞすぐに片付けてやるからな、そしたら一緒に行こうか」

 

 飽く迄も優しい声色でミュウは心がほっこりと暖かくなるのを感じる。

 

 一方の完全に莫迦にされた黒服連中は額に青筋を浮かべ……

 

「相当な大言を吐く。何なんだ貴様は?」

 

 御約束な事を訊ねてきた。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

 

 ネオディケイドライバーのバックルを開いて再びカードを装填する。

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE DECADE!》

 

 仮面ライダーディケイドに成った。

 

「アーティファクトか!?」

 

「餓鬼をぶち殺してあれも手に入れろ!」

 

 仮面ライダーディケイドとなったユートを見た黒服リーダーは大声で命じた瞬間……

 

 ドパンッ!

 

 素早く抜いたライドブッカーをガンモードへと変形させて、乾いた破裂音と共にリーダー格と思しき黒服の頭部へと命中させた。

 

 ユート以外の誰も事態を理解できないと謂わんばかりに目を丸くし、頭部から脳髄を撒き散らしつつ力尽きて崩れ落ちるリーダー格を見る。

 

《ATTACK RIDE BLAST!》

 

 ドパパパパパパパパパパパパパンッッ!

 

 隙を突く形でアタックライドのカードを装填したユートは更に発砲、黒服達は何をされたのかも理解が叶わず頭部が爆ぜてしまう。

 

 あっという間に二〇もの死体が完成した。

 

 通りすがりの仮面ライダーを名乗るユートを、漸く恐るべき相手だと悟った黒服たちは後退りをし始めたし、貴族や商人の客達は悲鳴を上げ我先にと出口へと殺到する。

 

「何が起きた? 何で……こんな事にっ!」

 

 恐怖と混乱に陥り、だけど必死に虚勢を張って声を荒げている黒服の一人はサブリーダーなのだろう、とはいえ更に一〇人ばかり奥からやって来たがこの場の惨状を見て息を呑んでいた。

 

「フッ、誰に喧嘩を売ったのか理解をしたか? お前らは見せしめに皆殺す。僕の連れに手を出すとどうなるのか、お前らの生命でせめて終わり際くらいは興じさせろよ!」

 

《ATTACK RIDE SLASH!》 

 

 今度はソードモードに変えて更に強化する為のアタックライドカードを装填。

 

「オラオラオラ!」

 

「ギャァァァアア!」

 

「ウワァァァッ!」

 

「死にたく……」

 

「嗚呼あっ!」

 

 最早、襲撃すら叶わず斬られていくだけの的と化した黒服が絶叫を上げる。

 

 黒服は全滅して本当の意味でフリートホーフは全滅したも同然となった。

 

 何人かは生かしてイルワ・チャングギルド支部長の許へ送ったけど。

 

「さぁ、残りはお前らだ」

 

 青褪めるのは客達。

 

 逃げようにも何故か扉が開かないから結局は逃げそびれた連中、中には大物貴族や商人だったりその子弟だったりが何人も混じっている。

 

「ま、待て! 私を誰だと……」

 

「さぁ? 知らないな。此処に居るのはハイリヒ王国の次期国王ランデル・S・B・ハイリヒ殿下の為にならぬ国賊のみよ。リリアーナ・S・B・ハイリヒ王女殿下は心を痛めている。平然と人身売買をする輩が我が国の貴族や商人に居る筈などないから、オークションに参加した連中は国賊として討って欲しい……とな」

 

「なぁっ!?」

 

 ユートが取り出したのは正しくその旨を明記した指令書であり、間違いなく王家の紋様が捺された制式文書であったと云う。

 

 此処に突入前、リリアーナに伝話機で連絡をして準備して貰い、ルーラを使って城まで取りに行ってあったという訳である。

 

「そもそも、仮装パーティーの行列よろしく仮面を被ってるから顔も判らん。ああ、取らなくても構わないさ。どうせ知らん顔だからな」

 

《KAMEN RIDE DOUBLE!》

 

 黒い左と緑の右半身な仮面ライダーWに。

 

「さぁ、お前達の罪を数えろ!」

 

 これを言う為だけにカメンライドした。

 

《FINAL ATTACK RIDE……DO DO DO DOUBLE!》

 

 必殺技発動カードたるファイナルアタックライドのカードを装填。

 

「はっ!」

 

「う、うわぁぁぁぁあああっ!」

 

 大パニックとなる客達。

 

 ディケイドWが緑色の風の流れに乗ってフワリと浮かび上がる。

 

「ジョーカーエクストリーム!」

 

 それは真ん中からズレて黒の左半身が蹴りを当てた瞬間に、緑の右半身が元に戻る勢いと共に蹴りを見舞う正しくエクストリームな必殺技。

 

 そんな必殺技を上級貴族らしき男にぶつけて、その余波で他の客も吹き飛ばされる。

 

『『『『『うわぁぁぁぁあああっ!』』』』』

 

《FORM RIDE DOUBLE ……LUNA/TRIGGER》

 

 青い左半身と黄色い右半身の【仮面ライダーWルナ/トリガー】にフォームチェンジ、ユートはその手にトリガーマグナムを持つ。

 

《FINAL ATTACK RIDE DO DO DO DOUBLE!》

 

「トリガーフルバースト!」

 

『『『『『ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアッ!』』』』』

 

 生き残りを根刮ぎトリガーフルバーストによる一斉掃射で撃ち殺す。

 

 誰一人として生かして返さない。

 

 ネオディケイドライバーが消え変身解除。

 

「ミュウの目と耳を塞いでくれてありがとうな……って、英語の方が良かったか?」

 

「NO……大丈夫、日本語なら話せます」

 

「成程、少なくともバイリンガルか」

 

 ならば話は早い。

 

「それじゃ、離脱しようか」

 

「判りました」

 

 金髪女性はミュウを抱っこした侭でユートに付いていく。

 

「ユエ、ミュウは確保した。オークションの客とフリートホーフの残り滓も殲滅。そちらの準備は終わったか?」

 

〔……ん、準備は完了〕

 

「そうか、ならフィナーレだ」

 

 外に駆け出すと女性をミュウと共に抱き上げて大空を舞う。

 

「アンタ、ミュウの目と耳を放して良いぞ」

 

「アイリーン」

 

「うん?」

 

「私はアイリーン・ホルトンです」

 

「ホルトン?」

 

 知識には有る名前、米国はホルトン一族といえば世界でも有数の金持ちだった筈だ。

 

「まぁ、詳しくは後でも構わないか。ミュウ、目を開けてみな」 

 

「ふぇ?」

 

 ユートに言われソッと目を開けるミュウ。

 

「ふわぁぁっ!」

 

 感嘆の声、目を開けてみれば周囲は町を一望が出来るくらいの上空だったから。

 

 逢魔ヶ刻であるが故に地平の彼方には沈もうとしている夕日により、全体的に真っ赤でまるで町が燃え上がるかの如く。

 

 地上は美しいイルミネーションの様な人工の光がポツポツと灯され、ミュウは初めて見る雄大な光景に瞳を輝かせてはしゃいでしまう。

 

「ユートお兄ちゃん凄いの! ミュウ、生まれて初めてお空を飛んでるの!」

 

「フフ、嬉しそうで何よりだよ。ミュウ、それにアイリーンも。これから盛大に祝うからド派手な花火が見れるぞ?」

 

「花火?」

 

「花火というのはそう……爆発だな」

 

「爆……発?」

 

 小首を傾げるミュウ、碌な説明を出来ていないとは思うがどうせ結果は同じだ。

 

「お祝いですか?」

 

 アイリーンも首を傾げている。

 

「フューレン三大悪組織の一つ、フリートホーフの撲滅記念として祝砲を放とうと思ってね」

 

 ユートはシアからの連絡が来るまでにアジトを潰しつつ、フリートホーフの建物と判明している場所へ幾らか術式を仕掛けながら走っていた。

 

「さぁ、Show Timeだ。あ、た~まや~」

 

「うーん、た~まや~?」

 

「か~ぎや~」

 

 ユートとミュウとアイリーンの声が黄昏の空に響き渡ったその時、フューレンの町全体に轟く程の轟音が響いたかと思えば周囲のフリートホーフの関連する建物を巻き込み、壮絶なる衝撃が走って裏オークション会場だった美術館も、歴史的な建造物? そんなん知るか! 芸術品? 食えない御宝に興味はねー! と言わんばかりに木っ端微塵のミジンコちゃんに粉砕されていった。

 

 そして文字通りの意味で爆炎が燃え広がって、フューレンの町は真っ赤に染まっている。

 

 序でと言っちゃ何だが雷龍や炎凰がフリートホーフの建物を破壊していたし、金色に輝く人型が建物を巨大な鉄鎚の下敷きにしていた。

 

「ふぇぇぇっ!?」

 

「どうだ、ミュウ? 愉しいだろう?」

 

「花火……怖いの」

 

 寧ろ『キタネー花火』でしかない。

 

 これによりフューレンに巣食う寄生虫が如きの組織は完全に消滅が確認されて、残された二つの悪徳組織の連中を震え上がらせる事となる発表がイルワ・チャングから成されるのだった。

 

 

.




 水森月奈――33歳で『世界に救世主として喚ばれましたが、アラサーには無理なので、ひっそりブックカフェ始めました。』の主人公。

 光る球体から数々のチートをせしめて異世界に跳ばされたが、別世界のエヒトルジュエの召喚と変に干渉してトータスに到着してしまった。

 ありふれと習合されてた地球では無いから月奈に仮面ライダーの知識は無い。

 アイリーン・ホルトン――二十歳前後。

 月奈と違い普通にありふれと習合された結果として米国の金融財閥一家の末娘、両親と兄が居るのも原作と変わらないのと『マスクドライダー』の知識を持っている。




勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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