ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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第4話:約束や契約は守ってなんぼ

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 訓練所でのいざこざで、ユートはメルド団長に呼ばれて一種、事情聴取みたいな感じで話をしている。

 

「優斗……お前が無抵抗な大介達を傷付けたとか云うのは本当か?」

 

「ふーん、それは誰が?」

 

「誰でも良い」

 

「良くは無いな。それともハイリヒ騎士団では事情を曲げて他者を裁くというのが御家芸か?」

 

「な、何?」

 

 行き成り騎士団にまでの波及に言葉が詰まった。

 

「もう一度訊く、それを伝えたのは……誰だ?」

 

「事情を聴いているのは、寧ろ此方なんだがな……」

 

 何故か自分が事情聴取をされ遂、メルドは頭を抱えたくなってしまう。

 

「ったく、光輝だ」

 

「成程、勇者の言葉だから丸っと信じて断罪か。碌でもない国と騎士団だな」

 

「違う! 当然、全て正しいなんて思ってはいない。だから聞かせて欲しい! 若しかしたら何らかの誤解があるかも知れん!」

 

「誤解があったら寧ろ……えっと、小悪党四人組の方に非があると認めるに等しいんだけどな」

 

「む?」

 

「まぁ、良いか。訓練中、僕は園部達……メルド団長には優花達と言った方が通りも易いか?」

 

「そうだな」

 

 ユートは基本的に名前で呼ぶが、この世界では余程の親しい相手以外は地球に於いて苗字呼び。

 

 此方ではトータスの人間に限り、ファーストネームで呼ぶ様にしている。

 

 だからメルド・ロギンスはメルド団長だった。

 

 現状、地球での名前呼びは南雲家の面々のみ。

 

「彼女らと訓練していた。其処へ小悪党四人組」

 

「待った」

 

「何だ?」

 

「その小悪党四人組とは、つまり大介達の事か?」

 

「大スケベ? 変態変質者って意味かな?」

 

「もう良い、続けてくれ」

 

 初めから覚える気が無いと諦める。

 

「連中が絡んできた」

 

「絡んできた?」

 

「僕の戦い方は基本的には家の伝統武術、【緒方逸真流】というのを使ってる。八重樫が八重樫流って剣術を使う様に……ね」

 

「成程……」

 

 別に珍しくもない話。

 

 武術の流派が有るなら、それを使った方が良い。

 

「僕の使う【緒方逸真流】は基本動作が舞い。舞踏を以て武闘と成すっていう、だから見た目には踊っている様にも見えるだろうな」

 

 愚直実直武骨なメルドには解り難いが、舞いが武の動きに直結するのもまた、珍しい訳ではない。

 

「それでからかい半分に、連中が絡んできた訳だけどまぁ、自分達が独り身なのに僕が女子と愉しそうだからやっかみ半分かな?」

 

「むう、それは……」

 

 判らないでもないのか、メルド団長は眉根を顰めて唸るしかない。

 

「これは声を録音した物」

 

 正確にはサーチャーを予め撒いて、拾った声を別の媒体に乗せた物だ。

 

『ちょ、やめなさいよ! 檜山、中野、斎藤、近藤! 四人で囲むとか有り得ないでしょうが!』

 

『はっ、訓練だよ訓練!』

 

『そうそ、訓練だって!』

 

『ぎゃははは!』

 

『まぁ、訓練でも怪我は付き物だけどな!』

 

『そうだな、訓練に大怪我は付き物……ってな』

 

 園部優花の止めようとする声、それを嘲笑っている檜山大介に続く中野? と斎藤? と近藤の四人組。

 

 声からもそれは聴いて取れて、明らかにユート一人を四人組が囲んでいるのが判る内容だった。

 

「その後、攻撃をしてきた小悪党四人組に併せて反撃はしたな。それで? 何処ら辺が無抵抗な連中を一方的に攻撃しているのかな? 寧ろ教えて欲しいな」

 

「そ、そうだな。確かに、これは申し開きのしようも無いだろう。済まなかったな優斗」

 

 メルド団長も理解して、ユートに頭を下げる。

 

「へぇ……」

 

 まさか騎士団長の地位に在るメルド団長が、勇者の同胞とはいえ外部では一介の平民に過ぎないユートに頭まで下げるとは。

 

 正に愚直で実直な彼らしいのかも知れなかったが、ユートはメルド団長の評価を上げるしかない。

 

(彼の……メルド団長からの訓練を受けていれば死ぬ確率、僅かながら減らせるのかも知れないな)

 

 戦争に絶対など無いし、幾らユートが無双しようが数に対抗するにはやっぱり限りがあり、それこそ全てを解放しなければならないくらいだ。

 

 だが、自分達を召喚したエヒトなる神がどう出るのか判らないし、今は教会と断絶するのも良くない流れになりかねない。

 

(侭ならないな)

 

 個人戦ならばどうとでもするが、やはり戦争となると勝手も違う。

 

 どちらにせよユートが死ぬ事は無いだろうが……

 

「然しな、どうして光輝はあんな嘘を吐いたんだ?」

 

「本人に嘘を吐いたなんて自覚は無いな」

 

「どういう意味だ?」

 

「天之河は自分の中で勝手に物事を咀嚼し、自分の中の正義に当て嵌めるという悪癖があってね。御都合解釈主義ってやつで、天之河が僕が無抵抗な小悪党四人組をいたぶったと言ったのなら、天之河の中ではそういう事になっているんだ」

 

「なぁっ!?」

 

「事実と齟齬があろうが、自分の中で都合の良い解釈をして、自分の正義感ってのを満足させる。だから、無自覚無意識に虐めをしても気付きもしない。誰かを陥れてもアイツの中では、正義を執行しただけさ」

 

「なんて歪んだ人間性だ」

 

「普段の言動や容姿端麗、文武両道な外面が良過ぎて一部を除き、それを理解もしていないだろうね」

 

「一部とは?」

 

「僕とハジメと白崎と八重樫……くらいか」

 

「前者二人は兎も角として後者、香織と雫は幼馴染みだから……か?」

 

「ああ、脳筋な坂上は自分で考えるのを放棄してるんでね。理解してないな」

 

 こうなると、勇者だからと天之河光輝の言葉を信じ過ぎるのも問題だろうと、やはり頭を抱えたくなったメルド・ロギンスだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 その後は適切な処断が成され、先ずユートは訓練中の実剣使用は怪我もあり、それを咎める必要性無しとされたが、やはりやり過ぎという事もあって厳重注意となった。

 

 小悪党四人組は訓練と称して行き成り四人で囲み、訓練という名のリンチにしようとして返り討ちに遭った訳で、怪我が治ったなら基礎から訓練をすると厳しい処分が与えられる。

 

 勿論、天之川光輝が抗弁したが聞き入れられる事は無かったと云う。

 

 食事も終わって食休み、そしてハジメの部屋へ。

 

「よ、ハジメ」

 

「優斗……あのさ、檜山君達と争ったみたいだけど、大丈夫だったの?」

 

「檜山……誰だそれ?」

 

「え゛?」

 

 ハジメは頭を抱える。

 

「一応、教えておくから」

 

 仕方がないとハジメは、小悪党四人組の名前を順番に挙げていく。

 

「リーダー格が檜山大介、次に近藤礼一、中野信治、斎藤良樹。これが優斗の言う小悪党四人組だよ」

 

「興味無いな」

 

 キッパリと言われガクリと項垂れた。

 

「まぁ、良いんだけどね。それで昨日の続きだけど」

 

「そうだな。先ずは貰った手袋を見せてくれるか?」

 

「え、錬成用の魔法陣が描かれた手袋だよね?」

 

「勿論だ」

 

「う、うん。判ったよ」

 

 ハジメが取り出したのは唯一、ハイリヒ王国から貰った道具である。

 

 ハイリヒ王国は勇者に対して宝物庫の解放を決め、アーティファクトをそれぞれに渡した。

 

 特に勇者たる天之河光輝には、キラキラ輝く鎧やらサークレットに加え、特殊な聖剣まで与えられてる。

 

 だけど戦闘系ではなく、非戦系の天職だったハジメに対して、ハイリヒ王国側もどうすべきか苦慮をした結果、錬成用手袋を渡してお茶を濁したのだった。

 

「ふーん、成程な。こんな程度の物か……」

 

「優斗?」

 

「だいたい判った」

 

「ブッ、君は何処の通りすがりの仮面ライダー?」

 

 実は世界の破壊者的な力は持っているが、ハジメも流石にソコまで知らない。

 

「これならこいつで普通に良いな」

 

「? これは……」

 

 腕輪に見えるが装飾品というより、何だか機械的に見えて異質である。

 

「これはCADという」

 

「CAD?」

 

術式補助演算機(Casting Assistant Device)と云ってな、魔法の補助をする為の演算用機器だ」

 

「それって?」

 

「早い話が紙や鉱物に術式や魔法陣をいちいち書き込まなくても、そいつを軽く操作してやればやりたい事を代わりに演算してくれるって訳だ。詠唱も要らん」

 

「そんな凄い物が!?」

 

「ああ、元々は超能力を使うエネルギー【PSYON】用だったのを、魔力で扱う用に改造していたやつだ」

 

「えっと、くれるの?」

 

「僕には使い途も無いし、ハジメなら必要だろう? どうやらこの世界の人間は魔力の操作が出来ないみたいだし、それならば術式を肩代わりする機械は便利な代物だからな」

 

「あ、ありがとう」

 

「構わんよ。どうせ雫に渡す用に造った失敗作だし」

 

 ボソリと呟く。

 

「? 何か言った?」

 

「何でも無い」

 

 目を逸らしながら本当に何でも無い風を装おう。

 

「それじゃあ、座学を始めるぞ」

 

「はい!」

 

 錬成についての教授が、今夜もまた始まった。

 

 とはいえ、座学なんてのは大した事も言えない。

 

 そもそもがユートだって【創成】は感覚的にやっており、頭の中であれこれと考えてる訳ではなかった。

 

 必要なのはイメージ。

 

 勝利のイマジネーションとか叫んだ時もあったし、創りたい物を具体的に想像して実体化、創造するのがユートのやり方。

 

 イメージの強さ、具体性、出来れば細かな機構なども確りしていれば、創造した際の手助けとなるだろう。

 

 要は集中力(コンセトレーション)想像力(イマジネーション)、錬成を上手くやるにはそれを念頭に置いた上で、後は数を熟して慣れていくしかない。

 

 ユートの教えを受けて、ハジメは錬成を開始する。

 

 対象となるのは青銅。

 

 嘗て、青銅のギーシュが得意としていた金属錬成、取り敢えずはこれで青銅製ゴーレムのワルキューレを造るのが目標。

 

 錬成の魔法陣が入っている手袋ではなく、CADを使っての謂わば初錬成。

 

「うわ、結構やり易い」

 

「兎に角、数を熟さない事には上手くならないけど、単に数だけ熟しても駄目なんだよな」

 

「そうなの?」

 

「一つ一つ丁寧に造る事を心掛け、完成した品は量産が出来る様に何らかの形で記録しておく」

 

「き、記録?」

 

「前回、話した錬鉄の英雄は自身の心象風景に記録していたと言ったろ?」

 

「た、確かにそうだけど」

 

「僕も似た感じだ。僕の中には広大な世界が存在し、その中には創った物が記録されている」

 

「うう……」

 

「ま、ハジメの場合は普通に出来ないからな。CADに記録が出来るから心配はしなくて良い」

 

「ホントに!」

 

 ユートが渡したCAD、それは元々はとある少女に渡すべく製作していた物、だけど失敗してしまったから御蔵入りしていた。

 

 それを昨夜、リリアーナの所で夜更かしした後に、ちゃちゃっとハジメ用へと改造をしたのである。

 

「さて、ハジメにも目標は必要だろうね」

 

「目標?」

 

「頑張っていれば騎士団の使う剣や鎧程度は、数日もあれば作製が出来る様にもなるだろう」

 

「そうかな?」

 

「少なくとも僕は出来た。とはいってもハジメに出来なきゃならないとは決して言わない、だが出来ないと目標なんて泡沫の夢だ」

 

「その……目標って?」

 

 ユートはアイテムストレージから、一つの機器を取り出して見せた。

 

「……へ? こ、これは……まさか!」

 

 何だか顔みたいにも見えるが、それは手の指に填めて使う機械だ。

 

「イクサナックル!?」

 

 そう、仮面ライダーキバに登場するライダーシステムの仮面ライダーイクサ、それに変身する為のツールデバイス。

 

「可成り初期に造っていて忘れていたモンだ」

 

「わ、忘れていた?」

 

 ユートはベルトを装着、そしてイクサナックルを填めて左掌で押す。

 

《READY……》

 

 機械的に区切りながら、電子音声が流れてきた。

 

「変身!」

 

 イクサベルトに合着。

 

《FIST ON》

 

 その瞬間、粒子化されていたイクサスーツが形を持って爆現、ユートに装着をされる形で変身完了した。

 

「ほ、ホントに変身した? 仮面ライダーイクサに」

 

 仮面ライダーなんて居ないと発言したハジメだが、目の前には確かに仮面ライダーの姿が在る。

 

「さっきも言ったんだが、こいつは忘れていた物だ。実は完成してない」

 

「それって……」

 

「要するに過去編で使われたイクサと大差無いんだ」

 

「ああ、バーストモードやライジングイクサには成れないんだね」

 

 意味を漸く理解した。

 

 確かにそれは未完成でしかないのだろう。

 

「残念ながらね。完成品という意味だとそんな数は無いからな」

 

 殆んどが聖魔獣を使った仮面ライダーで、純然としたライダーシステムは数点しか造ってはいない。

 

「僕に出来るかな?」

 

「イクサは難しいだろう、躯体の粒子化が出来ない。だから造るならG3だな」

 

「仮面ライダーG3」

 

 【仮面ライダーアギト】に登場するパワードスーツタイプの仮面ライダーで、警視庁の氷川 誠が装着員となって戦った。

 

 量産型仮面ライダーでも基本的に、単純な機械仕掛けではないから粒子化などが出来ないと難しいけど、仮面ライダーG3は違う。

 

 装着なのだ。

 

 つまりは粒子化しなくて済む唯一の仮面ライダー、そして頑張れば錬成で造れない事もない。

 

 まぁ、機械的なものではなく仮面ライダーの鎧としてではあるが……

 

 専用兵装と共に造り上げれば、非戦系のハジメでも充分に戦える筈だ。

 

「仮面ライダーG3の鎧、そして現代兵器を造れ」

 

「……」

 

「約束しよう」

 

「約束?」

 

「若し、仮面ライダーG3を完成させたなら、某かの御褒美をやるよ」

 

 そういうユートの口角は吊り上がり……『付いて来れるか?』と訊いていた。

 

 だからハジメも口角を吊り上げて約束する。

 

「造るさ! 約束、忘れないでよ優斗!」

 

 そして何故か交わされるフォーゼ式友達拳骨。

 

 交わされた約束が果たされるかは疑問も残るけど、ハジメは兎にも角にも言われた青銅製ゴーレム錬成に力を入れた。

 

 何よりも造りたいという想いが迸るから。

 

「そうだな、近場の約束として騎士団に卸せる武具を完成させて、実際にメルド団長に渡せるレベルになったら、何か魔法が使える様にしてやるよ」

 

「ホントに?」

 

「ああ、だから頑張れ」

 

 ユートの教えを受けて、ハジメの錬成の技能はメキメキ上がる。

 

 ユートが持つスキル……【教導:B】は今日も良い働きをしたものだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「さて、そろそろ恒例化しても良さそうな異世界交流といきますか」

 

 リリアーナの部屋にて、ユートはリリアーナとヘリーナの二人に言う。

 

 まだまだ三日目だけど、それでも毎日の事だ。

 

「そうですわね」

 

「明日からも恒例と致しましょう」

 

 どうやら二人に異存など無さそうだった。

 

「そういえば、南雲さんに錬成の授業をしているとか聞きましたが、どんな感じでしょうか?」

 

「うん? 僕が教えたんだから上手くなってくれないと困るかな? 取り敢えずは騎士団の武具を錬成させてみようかとね」

 

「成程、非戦系の天職でも役立つのですわね!」

 

 何とか役に立たないと、恐らくは天之河光輝辺りが嫌味を言ってくるだろう、檜山大介が虐めの的にしかねないのもある。

 

 ハジメの才能ならば間違いなく、畑山愛子先生と並び立つ存在になれる筈と、ユートはそう思っていた。

 

「そうです! 今夜は我が国の御菓子を用意しましたから、此方を食べてみませんか?」

 

「へぇ、なら御言葉に甘えてみようか」

 

「フフ」

 

 微笑みながらヘリーナに持って来て貰う。

 

 わざわざ用意するだけあってか、確かに美味しそうな御菓子が出てきた。

 

「では、どうぞ」

 

「お姫様が手ずからか?」

 

「フフフ、あ〜ん」

 

 どうやら市井のあれこれを勉強したらしく、愉しそうに『あ〜ん』をしてくるリリアーナに、ユートは口を開けて御菓子を口内へと入れて貰う事にする。

 

「はぐ」

 

「はぇ?」

 

「ペロッ」

 

「ひゃうっ!?」

 

 リリアーナは指にまで食い付かれ、更には舐められておかしな悲鳴を上げた。

 

 ちょっとしたイタズラの心算だったが、市井で流行っているとヘリーナから聞かされたから、身近でいて家族ではない異性で更には年齢が程近い異性として、ユートにやってみたら斜め上の行動。

 

 リリアーナは頬が熱くなるのを感じる。

 

「わ、私の指は美味しかったでしょうか?」

 

「う〜ん、悪くなかった」

 

 ボンッ! と瞬間湯沸し器も斯くやで真っ赤にそまる顔、恥ずかしいのだろう視線が定まらず彷徨う。

 

「も、も、もう少し召し上がりますか?」

 

 何てとんでもない事を、遂々口走るくらいにテンパっていたらしい。

 

「じゃ、遠慮無く」

 

 指から手の甲へ、更には手首から腕へと少しずつだが上に向かう舌。

 

 リリアーナは何処か恍惚とした表情で、その情景を瞳をトロンと蕩けさせながらみつめていた。

 

 時折、嬌声が出てしまいそうになるのを、もう片方の手で口を押さえて何とか留めている。

 

(あれ? 私、何だかイケない遊びを覚えています? だけど何だか……こんなゾクゾクしてしまって抗えませんわ!)

 

 ふと涙すら浮かべて潤む碧い瞳を横に移すと……

 

「ハァ、ハァ……」

 

 ヘリーナが自分の指を舐めているのが見えた。

 

 自分がされているのを、想像しているのだろう。

 

(ひょっとして私、チョロいんでしょうか? うう、私は王女なのにチョロいんですね……でも気持ち良くなってますわ)

 

 普通、男にこんな事をされたら不快に思いそうな、それがイタズラ心でヤらせたらハマっているという。

 

 二の腕にまで至ってからそろそろ拙いと思ったが、止める機会を失ってしまって首筋まで至る。

 

「リリィ、美味しいよ」

 

 ゾクゾクッ! 駆け巡るモノが何かは理解が出来なかったリリアーナだけど、脳髄にまで響くユートの声を聞いて、内股になってしまったと思ったてら到頭、耳朶を甘噛みされていた。

 

 ヘリーナを見たら何だか右手がイケない場所に伸びており、本当にイケない遊びに耽っているのだと自覚してしまう。

 

 だけどそれが不意に止まって、思わずユートの方を見たリリアーナは……

 

「もう少し」

 

 潤んだ瞳で上目遣いに、おねだりをしてしまった。

 

 それに応えたユートは、耳朶から頬へと唇を付けて浮かんでた涙を舐め取り、唇を軽くリリアーナの唇に重ねてやった。

 

(あ、これ……私のファーストキスが奪われちゃいました)

 

 その日はもう話し合うとかの雰囲気ではなくなり、おかしな気分の侭で解散という事になる。

 

 翌日もユートは訓練後に夕飯→風呂→ハジメの訓練→リリアーナの部屋というのを繰り返して、その仲も徐々にだが近付いていると云ってよかった。

 

 一週間が過ぎた頃には、ハジメも騎士団へと最初の納品をしている。

 

 約束通り、ユートは褒美にインストール・カードを渡してやった。

 

 【雷撃】と【能力之窓】と書かれた白いカードは、ハジメの中に入り込んだ。

 

 

南雲ハジメ

17歳 男 

レベル:15

天職:錬成師

筋力:18

体力:26

耐性:13

敏捷:40

魔力:73

魔耐:51

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成] 雷撃 能力之窓 ??? 言語理解

 

 

 訓練に身を入れており、相手がユートだったからか上がり幅も、初期値の低さを鑑みれば伸びた方。

 

 自身の能力を視れる魔法――ステイタス・ウィンドウはステータスプレートに書かれた能力が書かれているが、真骨頂は其処にある訳では無かった。

 

 アイテム・ストレージにアイテムを入れる、つまりは容量こそ小さいながらもアイテムボックス的な魔法とも云えるのだ。

 

 武器や道具の予備など、仕舞っておけるのは地味に有り難いし、将来的に完成したG3システムを仕舞っておき、【装備】のコマンドで瞬時に装着が可能。

 

 雷撃を使えば普通の銃にレール加速が付加出来て、レールガンとして弾を撃ち放てるのも魅力だろう。

 

 ハジメは喜んだ。

 

 リリアーナとヘリーナとの夜会は、少しずつ過激にエスカレートしていく。

 

 王族としていつか政略的に嫁ぐ身でありながらも、この関係に心地好さを感じていたリリアーナだけど、やはり政略結婚という王族の務めが邪魔をしていて、最後の一線は守っていた。

 

 だけど、見てしまう。

 

 ユートとヘリーナが柱の影でキスし、肢体をまさぐられ恍惚としていたのを。

 

 ユートのイケない部位をその手で触り、ズボン越しではなく直に撫でるなんてイケない事をしていたのを目撃してしまったのだ。

 

 よもや、わざとリリアーナに見せ付けたとは気付かない為、嫉妬して悔しくて自分は我慢していたのに、ヘリーナばかりズルい! という思いに囚われる。

 

 だから一週間と二日目、ヘリーナが遅刻した不自然さに気付かず、リリアーナは一線を越えてしまう。

 

 その日、白いシーツに赤い染みを残す布団の上で、裸体を晒す男女が居た。

 

 そしてユートは当初からの計画、王宮を離れた際の情報源と報告役にヘリーナとリリアーナを味方に抱き込む事に成功する。

 

 また、今度はハジメへと突っ掛かる小悪党四人組、当然みたいに白崎香織による仲裁があり、天之河光輝も関わってきた。

 

「だが、南雲自身ももっと努力すべきだ。弱さを言い訳にしていては強くなれないだろう? 聞けば訓練の無い時は図書館で読書に耽っているそうじゃないか。俺なら少しでも強くなる為に空いている時間も鍛錬に充てる。南雲も、もう少し真面目になった方が良い。檜山達も、南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかも知れないだろ?」

 

 何をどう解釈すればそうなるのか、意味不明な解釈にハジメは呆然となる。

 

 天之川光輝からはまるでサボっているみたいに言われたり、本当に散々な目には遭ったものの、ユートがやって来て庇ってくれる。

 

「訓練の休みに自分の技能を磨いて、知識を得るというのがサボりだとか、頭は大丈夫か? 天之河」

 

「な、何だと!?」

 

「勘違い野郎がいつまでも勘違いしてるな。ハジ……南雲は錬成師、非戦系職なんだから本来は戦いに参加をする必要は無い。訓練も最低限の自衛が出来れば良いんだよ! 必要なのは、天職の錬成師として錬成の技能を高める事だ。それをしてないなら成程、サボりと言わざるを得ないよな。だが、南雲は自分の技能を磨いている。やるべき事をやっている南雲がサボっている? お前、リーダーには向いてないわ。視るべき処も視れず虐めを看過し、本当に努力をして結果を出している者を罵倒するんだからな!」

 

「ぐっ!」

 

「寧ろお前は小悪党四人組の虐めを肯定したよな? 正にお前はリーダーというより勇者失格だわ!」

 

「なっ!?」

 

 実際にハジメはきちんと結果を出していた。

 

 教わった通りに錬成を磨いていき、僅か一週間程度でハイリヒ王国騎士団が使う一般的な剣や槍と同程度の武具を錬成している。

 

 それを騎士団に卸す事もやっていたのだから。

 

 再び問題を起こしたという事で、檜山大介一派への騎士団の当たりは強い。

 

 ハジメが騎士団に良質な武具を卸していたからで、それを非戦系だから無能と蔑む連中を莫迦だと考えるのは当然だからだ。

 

 何やかんやがあったが、最初の訓練から二週間が過ぎて、初の実戦訓練としてオルクス大迷宮に挑む日まで関係は続くのだった。

 

 

.




 次は漸く大迷宮へ。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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