ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 先週の月曜日に携帯電話が全損をしてしまって殆んど書けなかった日々。


 しかもコロナの悪影響でショップは四時まで、土曜日になるまでの数日間は活動不能とか。





第51話:因果の交叉路が交わる瞬間〔前編〕

.

「それで、どうするの?」

 

 雫も久々に家族と話せて御満悦な様子でユートに今後の方針を訊ねる。

 

「グリューエン大砂漠のグリューエン大火山に向かうのは勿論だが、ミュウが居るから仕方無いんで大火山は素通りして先ずエリセンに行くべきかも知れないなとは思っている」

 

「確かに大迷宮であるグリューエン大火山にまで連れて行けないわよね」

 

「ああ。取り敢えず水森さんとアイリーンを一先ずオルクス大迷宮の最下層に連れて行く」

 

「それも有ったかぁ」

 

 非戦闘員たる水森月奈とアイリーン・ホルトンは当然ながら、戦いが中心となるユートの旅路に付き合わせる訳にもいかないからオルクス大迷宮の最下層、オスカー・オルクスの隠れ家に引き籠って貰う事にした。

 

 一応、ユートが造ったステータスプレートにて二人の能力を調べてみたが、『Error』と表示をされて考えていた通りだったと云う。

 

(矢っ張りか……)

 

 ユートは頷く。

 

 自作したとはいってもベースはトータス製であるステータスプレート、ユートが考えた通りなら二人のステータスが表示される訳は無い。

 

 能力も神様を名乗る光玉から特典を貰っていた水森月奈は兎も角、アイリーン・ホルトンなんて基本数値はハジメやユート並にゴミと変わらないのであろう。

 

 錬成師という非戦系天職のハジメを戦いに駆り出した勇者(笑)と違い、ユートはこんな二人を戦わせようなどとは思っていないので、オルクス大迷宮行きは二人にとっても妥当な線であろう。

 

 因みに、ミュウにもオルクス大迷宮に籠って貰っておいてエリセンまで行き、その上で迎えに行ってルーラで飛べれば安全だったのだが……

 

「や、ミュウも一緒なの!」

 

 そう言って聞かなかった。

 

 まぁ、護ると決めたからには護る。

 

 少なくとも、キラキラ勇者(笑)みたいに口先だけ善い事を宣う気は毛頭無いのだから。

 

 オルクス大迷宮の最下層たるオスカー・オルクスの隠れ家に着き、ユートはカム達ハウリア族へと二人を頼んでおく事にする。

 

「――という訳だから頼んだぞ」

 

「了解致しました」

 

 ある意味で親子な関係のカム・ハウリアと信頼というのは大きく、カムも亡き妻であるモナの忘れ形見のシアが幸せそうな顔をしているのを見るのが幸福な事であり仮令、大勢の中の一人であるとはいえ納得をして見守っていた。

 

「それじゃあ、優斗さん。取り敢えず私達は此処までです」

 

「どちらにするかはよく考える様にな?」

 

「はい、ありがとう御座います」

 

 月奈は帰還を望むかユートに付いていくのかを考える時間を貰った。

 

「私も帰還が叶うのを待っていますね」

 

「まぁ、ダラダラと時間を掛ける気は無い」

 

「フフ、頑張って下さいね」

 

 チュッと軽くマウス・トゥ・マウスに月奈が驚きの表情となってアイリーンを見遣る。

 

「ア、アイリーンさん!?」

 

「ツキナもしたら?」

 

「し、したら……って……私と彼はそんな関係じゃありません!」

 

「私も違うわ。でも彼が頼りだし、ならやる気になって貰う為にも唇くらい赦すわ。まぁ、私としては肢体を赦すのはまだ遠慮したいけど」

 

 流石にまだ肢体を赦せる程には無かったけど、米国人故の開放的な感覚からかキスした様だ。

 

 普通は頬だろうが……

 

 アイリーンに刺激されたのか、月奈は頬を真っ赤にしながらユートの頬へ軽く唇を当てる。

 

「ア、アラサーのキスが喜べるかは微妙だと思いますけど……宜しくお願いしますね」

 

 どうにも三十代なのを気にしているらしいが、ユートからすれば十分にイケる気がする訳で。

 

「水森さんのキスなら充分に嬉しいよ」

 

「そ、そうですか? あ! そうだ。水森さんじゃなく『月奈』って呼んで下さい。さん付けも要りませんから」

 

 真っ赤なのは先程のキスによる羞恥だろう。

 

「了解した、月奈」

 

 でも今の赤らめた顔は呼び捨てにされた照れ、特定男子からの初呼び捨てによるものだった。

 

「では、確かにお預かり致しました」

 

 カムが頭を下げる。

 

 カム――ハウリア族にとってユートは命の恩人であると同時に力を与えてくれた族長すらをも越える群れのボスにも等しく、更にはカム個人からすればある意味で義息子であるのでユートからの頼まれ事は完璧に熟したい処であった。

 

 というか、族長の娘とエッチらグッチュらしている時点で次期族長だろう。

 

 避妊具な首輪……ユートがシアに初めて贈ったという曰く付きな魔導具に幾つか付与された効果に有る【異物排除】による副産物で、男のアレをも異物として排除するから避妊具としても使えるなんて代物の為に、只でさえデキ難い体質なのだから孫が産まれる期待は出来ないが、いずれ産まれたら族長の座をユートに譲って楽隠居をするのも良さそうだと考えていたり。

 

 ハウリアの若い女の子は割かし妾の座を狙っている者も居り、最筆頭はミナで次点がラナというのはまだ良いのだが……ネアはヤバいだろうと頬を紅く染める一〇歳な同胞に汗を流すが……

 

 ネア・ハウリア――同い年なパル・ハウリアなる友達が居るけど、あの日にユートにより一族朗党を救われてから怪しい目を向ける少女。

 

 原典では『外殺のネアシュタットルム』という中二真っ盛りな名を名乗る。

 

「そういや、アルテナの訓練はどん感じだ?」

 

「真面目に頑張っていますな。既に仮面ライダーバルキリーも使い熟しは充分ではないかと」

 

「足りない能力は埋まったか?」

 

「そちらも基礎訓練を疎かにはしてません」

 

「なら、いずれは迎えに来ても良さそうだ」

 

「彼女も喜びましょう」

 

 仮面ライダーバルキリーに変身する為のツールであるショットライザーとラッシングチータープログライズキーを渡した後、アルテナは魔法球に籠ってハウリア族もやった修業をしていた。

 

 基礎訓練でステータスの向上によるレベルアップは元より、仮面ライダーバルキリーに変身しての実戦訓練にも身を入れているらしい。

 

「にしても、アルフレリックも強かだな」

 

 ユートがハウリア族を優遇する理由がシアにあると考えたが故に、孫娘のアルテナをユートへと宛がっていざという時の一助とする心算だ。

 

 他の種族より優遇される筈だと考えて。

 

 そしてそれは正しい。

 

 ユートは身内に甘いからアルテナの一族たるハイピストやそれに連なる一族は、他の亜人族に比べて優遇が既に約束されている様なものである。

 

 それを狙ってアルテナーー正確には一族の誰かをユートに宛がう心算だったが、孫娘のアルテナがまさかの立候補には驚いたろう。

 

 とはいえ、立候補したといっても男との経験は

疎か手を握る処かまともにお付き合いすらした事が無い森人族の生粋なお姫様、そうであるからには『御突き愛』などそう簡単に出来る筈もないが故に未だ処女の身である。

 

 だからといっていつまでも処女の侭でその身をユートに開かねば、結局は御客さんである事からは脱却が出来ず優遇もされない。

 

 なので、アルテナは少なくともユートが七大迷宮を二つくらいクリアするまでに覚悟完了して、肢体を晒し自らの胎内へユートの凶器を受け容れなけれならなかった。

 

 若しいつまでも寵愛を得ない侭で居た場合は、アルテナの代わりが……もう少し若いというよりは幼い従姉妹辺りが送り込まれるだろう。

 

 アルテナより歳を重ねていては駄目なのか?

 

 アルフレリックはハウリアでも二十代なミナやラナではなく、十代のシアを宛がったカムから鑑みて十代を送ろうとは考えていたらしい。

 

 だけどネア・ハウリアみたいな十代に成ったばかりな少女を送り込まない、そんな理性だけは残っていたのか飽く迄も一二歳以上を目指す。

 

 アルテナは一六歳だから送られてくるのならば一二歳以上で一六歳以下となる。

 

 尚、アルテナに今の立場を譲る意志は全く無いから覚悟自体は決めようとしていた。

 

「じゃあ、確かに預けたから」

 

 こうしてユートは再び地上へ。

 

「次なる目的地は懐かしきホルアド」

 

「ホルアド? 何でまた?」

 

 雫が首を傾げる。

 

「イルワ支部長から頼まれたこの手紙をホルアドのギルド支部長に渡す為だよ」

 

「早速の御仕事って訳?」

 

「内容は僕らの【金ランク】昇格の承認をする為の依頼状って話らしい」

 

「ああ、フューレン支部長だけが決めても駄目って事ね。まぁ、別に構わないでしょ」

 

「そうだね、雫ちゃん」

 

 ホルアドの町は二人も久し振りとなるのだ。

 

「オー君の大迷宮の入口が有る町だったよね」

 

「ああ、ミレディの頃は当然ながら全く違うんだろうけどね」

 

「そりゃね。千年も二千年も経ったら最早、別物というか異世界に近いよ」

 

 ライセン大峡谷みたいに変化に乏しい土地なども有るには有るが、それはヒトの手が殆んど入っていないからに他ならない。

 

 事実、ヘルシャー帝国はハイリヒ王国より後に興た国であり、これがヘルシャー帝国の所領として変化を及ぼすというのは当然の帰結であろう。

 

 キャンピングバスに乗って進む一行。

 

 瞬間移動呪文(ルーラ)でないのは四歳児でしかないミュウに対する配慮もある。

 

 あれはテレポーテーションの類いではなく高速移動であり、着地の衝撃も割と半端ではないというのに四歳児を連れて行うのはどうかと。

 

 仮にテレポーテーションをするにしてもユートの転移可能距離は一度に約一km程度、同時転移人数も精々が四名でしかないから余り移動に向いてはいない。

 

 【絶対可憐チルドレン】の葵から能力を簒奪したくなるくらい低く、ユートはテレポーテーションを使う事自体が少なかった。

 

 尚、サイコメトリーは精神系故にか割と上手く扱える能力であり、サイコキネシスはムウ程には使えないと云うしかない。

 

 取り分け急ぐという程でもないけど、魔人族が他の大迷宮に挑む可能性があるからにはゆっくりし過ぎてもいられないのたが……

 

 ユートは雫や香織やシアやユエやミレディとの閨事を愉しみつつ、ミュウが寂しがらない様にと気を遣う事もしていた。

 

 ティオはまだそういう関係ではない。

 

「香織、カードが増えてるわね」

 

「あ、雫ちゃん」

 

 ユートとの情事も終わってミュウに構いに行ったのを見計らい、香織がラウズカードを裸の侭に開いているのを見た雫が話し掛ける。

 

「……私達も手伝って先のウルの町での戦闘で何枚かカードが増えた」

 

「そうですね。仮面ライダーカリスでしたか? 香織さんの仮面ライダーリューンのオリジナルが使うラウズカードと同じっぽい力が得られそうな魔物を、私やユエさんで見繕って封印していきましたからね」

 

 ユエとシアも話に加わってきた。

 

 ミレディも含めて全員がマッパな侭だったが、女同士で百合プレイもするとか今更ながらだから羞恥心も湧かない。

 

「うん、ありがとう。ユエさんとシアさんのお陰で可成り揃ってきたよ」

 

 原典では香織とユエはハジメを挟んで恋の鞘当てをする仲であり、香織はシアやティオも含めて呼び捨てにしていたがこの世界線に於いての現状では『さん』付けにして呼んでいる。

 

 雫も香織以外は『さん』付けが基本、ユエは皆を呼び捨てでシアは全員を『さん』付けだ。

 

 ミレディは愛称で呼ぶのが基本であるが呼び様が無いミュウやユエやシアは名前に『ちゃん』付けで呼んでいた。

 

 『かおちゃん』、『しずちゃん』、『ティーちゃん』、『ユー君』がミレディの呼び方だ。

 

「だけどカテゴリー2はどうしよう……」

 

「スピリット・ヒューマンね」

 

 ラウズカードのカテゴリー2は武器の強化という機能であり、ブレイドならスラッシュ、ギャレンならバレット、レンゲルならスタッブとなっているのが、カリスの場合は『スピリット』という特殊なカードであったと云う。

 

 相川 始はジョーカーアンデッドから【スピリット・ヒューマン】で人間の姿に変身、【チェンジ・マンティス】でマンティスアンデッドであるカリスに()()をしているのだ。

 

 「ミレディさんのゴーレムでアブゾーブ・ゴーレムは有るし、早くジャックやキングも欲しいと考えているんだけどね」

 

 カテゴリー2だけでなくカテゴリーJやカテゴリーKもやはり必要である。

 

「光輝を封印してみる?」

 

「冗談はやめて、絶対に嫌だよ!」

 

 ハジメを諦めてしまった挙げ句、ユートにまで嫌われてしまったら香織は精神的にどうにかなってしまうから。

 

 天之河光輝は既に二人にとって癌に等しい。

 

 香織はラウズカードを仕舞うとおもむろに雫へ抱き付いてキスをした。

 

「か、香織?」

 

 ちょっと吃驚した雫だったが、ベッドの上で互いに裸を晒しているだけに雫もキスを受け容れてしまっている。

 

 香織×雫や香織×ユエと百合プレイをさせられていた彼女らにとっては正しく今更だったから。

 

 想像するからに恐ろしくて遂、雫の温もりを求めてしまった香織はその後にユエとシアとミレディも加えて百合プレイを愉しんだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 所は変わってオルクス大迷宮の上澄み。

 

 淡く輝く緑光石だけが頼りの薄暗い地下迷宮に激しい剣戟と銃撃音と爆音が響き渡る。

 

 天之河光輝の宝剣が魔物を斬り、G3ーXであるハジメの銃撃が魔物を貫き、恵里や野村健太郎達の魔法が魔物をぶち抜いていた。

 

 尚、恵里は魔法を使いながらもG3マイルドを

装着して銃撃も行っている。

 

「万象切り裂く光 吹きすさぶ断絶の風 舞い散る百花の如く渦巻き 光嵐となりて敵を刻め! 【天翔裂破】っ!」

 

 勇者(笑)には壊れた聖剣に代わる宝剣が与えられていたけど、やはり聖剣に比べるとどうしても一段は性能面で劣っていた。

 

 とはいえ、ユートからしたら聖剣も大した性能だとは云えない魔法具でしかないが……

 

 因みに壊れた聖剣は今現在、ユートの手に収まっていて修復を試みる事すら不可能である。

 

 ユートは聖剣に意思らしきものが有ると考えたから、この意思をもっとはっきりした意志へ変えて意識を持たせようと考えていた。

 

 その芽生えた意識体に肉体を与える。

 

 但し、()()のな!

 

 女の子にして勇者(笑)を喜ばせてやる心算なんてのは更々無い為に、間違いなくユートは聖剣を少年としての肉体を創ってやるだろう。

 

 聖剣は随分と天之河が好きらしく、ユートが振るうのを嫌がっているみたいだからきっとBLな展開をしてくれるに違いない。

 

 それを思うとユートはその時を想像して口角を吊り上げたものだった。

 

 それは兎も角、宝剣を全力での腕の振りと手首の返しで加速をさせながら自分を中心に光の刃を無数に放った勇者(笑)。

 

 此方を空から襲い掛かろうとしていた五〇cm程の蝙蝠型の魔物だったが、一〇匹以上を一瞬で細切れにされてしまい碌すっぽ攻撃も出来ず血肉を撒き散らして地面に落ちた。

 

 硬質な顎を持つ蟻型の魔物、空を飛び交う蝙蝠型の魔物、更には気色の悪い無数の触手を持った磯巾着型の魔物……それらが円形で約三〇mくらいの部屋で無数に蠢いている。

 

 この部屋の周囲に八つの横穴が存在していて、其処からコイツらが溢れ出していた。

 

 【オルクス大迷宮】の上澄みとはいえ八九層に来た天之河光輝が率いるパーティ、坂上龍太郎、谷口 鈴の三人となっている。

 

 永山重吾の率いているパーティは野村健太郎、辻 綾子、吉野真央、遠藤浩介の五人。

 

 そして、仮面ライダーG3ーXたる南雲ハジメと

仮面ライダーG3マイルドな中村恵里だ。

 

 玉井淳史、宮崎奈々、菅原妙子、園部優花、清水幸利は作農師たる畑山愛子先生の護衛で不在である為に、僅か一〇人の手勢でオルクス大迷宮を攻略に来ていた。

 

 本来の世界線ならハジメが居ない状態ではあるのだろうが、小悪党四人組のパーティが加わっている筈だったのだけど、連中は自ら莫迦をやらかして死んでしまっている。

 

 まぁ、ハジメと恵里のコンビが仮面ライダーとして頑張っているから小悪党四人組が居ない事など感じさせていない。

 

 知識に有る通り、レッドアイザーやパーフェクターなどの部品も原典と同じ性能にした。

 

 勿論、使っている素材などは本物と異なっていて飽く迄も、このトータスで入手が可能な素材により構築されている。

 

 修復の事も鑑みて……だ。

 

 GMー01スコーピオンによる連続射撃でハジメは出来るだけ魔物を減らし、恵里も魔法をメインに使いつつも同じく射撃をしていた。

 

 勇者(笑)の部下になった心算は無かったけど、取り敢えず今は共に動くしかない。

 

 基本的には拳士の坂上龍太郎と重格闘家の永山重吾と勇者(笑)の天之河光輝が前衛を務めつつ、中衛にハジメと恵里が入りG3のコンビで戦いを繰り広げ、術師組の辻 綾子や谷口 鈴や野村健太郎や吉野真央が後衛で魔法を使う形。

 

 天之河光輝はハジメが防御の高いG3ーXを纏うのだから前衛をやらせるべきだと阿呆な主張をしてきたが、そもそも仮面ライダーアギトやギルスやアナザーアギトと違ってG3は武器を見て判る通り中距離での戦いこそが本領。

 

 一応、近接武器も持っているが攻撃を喰らう事を前提にしてはいない。

 

 劇中でも近接ではいまいち輝けなかった。

 

 近接が出来るのと専門なのては天と地程に違いがあるのに、平然と宣う天之河へ意見をしたのは恋人たる中村恵里。

 

『じゃあ、私もG3だから前衛だね』

 

 最近、頓に綺麗になった恵里。

 

 胸は五センチ、腰の回りはマイナスニセンチ、お尻は三センチ……谷口 鈴が羨むくらい女らしくなっていて、顔も元々の可愛らしさに艶が加わってそう……ユエに近い魅力を醸し出している。

 

 騎士達が思わず振り返るくらいには魅力的に、この場に死んだクラスメイト共が居れば香織の時みたいな嫉妬や殺意を向けただろう。

 

 こうなってくると恵里の立ち位置は香織や雫の付属物BーーAは谷口 鈴ーーでは勿体無い訳で、天之河光輝としては無意識に第三のヒロイン扱いをしたいのだ。

 

 当然、第一ヒロインは香織で第二ヒロインは雫の心算でいる天之河光輝(ピエロ)

 

『君は術師だろう! 大丈夫、恵里は俺が必ず護って見せるさ』

 

 キランと輝く白い歯。

 

『ハジメ君も術師だし、何より戦場に出る天職じゃないよ?』

 

『南雲はあんな鎧に身を包んで強力な武器を持っているんだ! 前衛が当たり前さ』

 

 持っていなかった頃も普通に戦場へ出していた癖に、まるで最初からG3を使っていたかの様な言い種に眉根を寄せる。

 

『いずれにせよ、G3を使うのは私も同じだからハジメ君が前衛なら私も前衛で』

 

 それで仕方がないと折れた。

 

 中村恵里は最早、天之河光輝の『護る』発言に対して一切の信用をしていない。

 

 あの死にそうだった時に命懸けで手を差し伸べてくれたのはハジメ、だからこそ彼を冷遇している天之河光輝を許せない程に腹立たしかった。

 

 天之河光輝からすれば新たなヒロイン候補とかになっているが、恵里は既に見切りを付けハジメと本格的な交際を始めている。

 

 だから本当に今更だった。

 

 偶に前衛を抜けてくる魔物を見て恵里は舌打ちをしながら、GSー03デストロイヤーを起動させると斬り裂いて殺してしまう。

 

 近接武器も装備しているから出来ない訳ではなかったし、ステータスがユートのお陰で二人共が上がっていたから楽勝ではあった。

 

 やはり厄介なのは飛行する魔物の蝙蝠の魔物、前衛組の隙を突いては後衛に突進する。

 

 ハジメと恵里だけではやはり足りないのか幾らかは抜けてしまうものの、其処はソレと頼りになる【結界師】が城壁となってそれを阻む。

 

「刹那の嵐よ 見えざる盾よ 荒れ狂え 吹き抜けろ 渦巻いて 全てを阻め 【爆嵐壁】!」

 

 谷口 鈴の詠唱が完成。

 

 攻勢防御魔法【爆嵐壁】が発動する。

 

 攻撃系の呪文を詠唱する野村健太郎の一歩前に出て突き出した両手の先に微風が生じた。

 

 風であるが故に見た目は変わらない為、魔物達も谷口 鈴など気に留めず攻撃魔法を仕掛けようとしている野村健太郎に向かい襲い掛かるのだが、魔物の突進に合わせて空気の壁が大きく(たわ)む様な形で現れる。

 

 蝙蝠モドキが幾ら突っ込もうが衝突してしまうだけであり、空気の壁は撓む程度で一匹足りとて通しはしない。

 

 蝙蝠モドキ全てが空気の壁に衝突した瞬間に、撓みがまるで限界に達した様に衝撃を放ちながら爆発した。

 

 爆発だけで肉体を粉砕されたり、迷宮の壁にまで吹き飛ばされて生々しい音と共に拉げて絶命する個体すら居る。

 

「ふふん! アンタ達、此処はそう簡単には通さないんだからね!」

 

 谷口 鈴の得意満面な声がけたたましい戦闘音の狭間に響き、同時に一斉に前衛の三人が大技を繰り出していた。

 

 敵を倒すことより足留めに徹して自分達が距離を取る事を重視した攻撃。

 

 そして天之河光輝の号令に従い動いて殲滅していき、遂には魔物共を全滅させる事に成功をするのであった。

 

「漸く九〇階層か」

 

 次への階段も見付けて小休止する中で、天之河光輝は感慨深く暗い階段の底を見つめていた。

 

「この階層の魔物でも難なく斃せるようになった事だし、オルクス大迷宮での実戦訓練ももう直ぐ終わりなんだな」

 

「そうだなぁ。何しろ俺らぁ今までに誰も到達した事の無い階層で可成り余裕を持って戦えてんだもんよ!  きっと何が来たって俺らなら蹴散らしてやんぜ! それこそ魔人族が来てもな!」

 

 勇者(笑)らしい科白を受け脳筋の坂上龍太郎が豪快に笑いながらそんな事を言い、天之河光輝と拳を付き合わせて不敵な笑みを浮かべ合った。

 

 八重樫 雫というストッパーが居ないパーティは坂道を転げ落ちる球体の如く、当たり前だが此処で谷口 鈴は何の役にも立たないだろうし疑問にも思っていない様子。

 

 覚醒済みな恵里がその煽りを喰らって精神疲労から眉間の皺を揉み解ぐした。

 

 これまでは何かと二人の行き過ぎをフォローして来た苦労人な八重樫 雫が居たから良かったのであろうが、居なくなったら此処まで負担が掛かる二人だとは思ってはおらず、どうしてあんな口先な男を欲しいと依存すらしていたのかと疑問にすら考えてしまう。

 

 最近は本気で殺ってやろうかと鏡を見る機会が微妙に増えてしまった恵里、ベノスネイカーの牙が勇者(笑)を襲うのもアリかな? ハジメを扱き下ろす天之河光輝に対して半ば本気で殺意を漲ぎらせていた。

 

 真性の御人好したる八重樫 雫は天之河光輝へと好意を持っていた頃は邪魔者でしかなかったが、今となっては早く戻って来て欲しいとすら思える人材であったと云う。

 

 小休止も終わって勇者(笑)達は未踏の九〇階層へと遂に足を踏み入れた。

 

 それは原典に有る流れながら原典と異なるが故に様々な違いが起きる分岐点、それは誰にも判らない未来でもあったのだろう……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 特に名前の無いキャンピングバスがホルアドに向けて爆走をしている。

 

 とはいえ、路無き道を突き進むとは思えない程に揺れが無いから走っている感覚はゼロ。

 

 本当に家で寛ぐ感じで銘々に過ごせた。

 

 ミュウを誰かに預けてそれ以外と閨を共にする性活にも慣れてきて、今宵は明日から地球に戻るほむらとシュテルを加えての御乱交をする。

 

 積極的な百合行為に励むシュテルに新たな扉が拓きそうな雫だが、後ろからユートに突かれてはやはり男が良いとか思ってしまうとか。

 

 御姉様とか無いわーと考える程度には。

 

「いっつも妾が留守番は無かろうに……」

 

「どうしたの、ティオお姉ちゃん?」

 

「何でもないぞよミュウよ」

 

 そして()()とはまだユートと関係を持たないティオ・クラルスであった。

 

 ティオはパーティ内でも胸が一番大きいので、ある意味では母性の塊でもあるが故にかミュウもそれなりに懐いており、原典のハジメ達が見たら『誰だコイツ!?』と優しい笑顔で接してくるだろう原典ハジメ並に驚愕される事は請け合い。

 

 ユエからしても伝説の竜人族として憧憬の目を向けているし、シアもその生き様には胸を打ったのだと言えるくらいに竜人族だった。

 

 ティオ・クラルスにとってユートの存在は天啓にも等しい相手、神を信仰しない処か厭う立場でありながらそう思わざるを得ない。

 

 数百年前、種族間の壁を乗り越えて生きる事をしていた竜人族であったが、それはエヒトが彼らを絶望させる為のスパイスとして見逃していたからに他ならない。

 

 その気になればいつでもやれた筈なのだから、それは確かに正しいのであろう。

 

 ユートからの情報と()()()()を照らし合わせれば間違いないと云える。

 

 何故に母上(オルナ)は死なねばならなかったのだろうか? 父上(ハルガ)は討たれねばならなかったのだろうか?

 

 母上の死を視たティオは暴発し掛けた。

 

『我等、己の存する意味を知らず』

 

 父上が朗々と語るは竜人族をヒト足らしめている言葉であり言霊。

 

 それは静かなる声色。

 

 寧ろ語り掛けるというよりまるで、己の中の某かを確かめているかの様であったと云う。

 

『この身はケモノか或いはヒトか。世界の全てに意味有るものとするならば、その答えは何処に」

 

 ハルガの声に立ち止まり、ヒトとケモノとその狭間にてそれを聞き入ってしまう。

 

『答えなく幾星霜。なればこそヒトかケモノか、我等は決意以て魂を掲げる』

 

 生き様。

 

『竜の眼は一路の真実を見抜き、欺瞞と猜疑を打ち破る』

 

 ヒトの理性が……

 

『竜の爪は鉄の城壁を切り裂き、巣食う悪意を打ち砕く』

 

 ケモノの力が……

 

『竜の牙は己の弱さを噛み砕き、憎悪と憤怒を押し流す』

 

 互いに矛盾しながらも共存してきた二つが…… 

 

『仁、失いし時、我等はただの獣なり』

 

 今正に(せめ)ぎ合う。

 

『然れど、理性の剣を振るい続ける限り――我等は竜人である!』

 

 竜人族の矜持はケモノがケダモノとなる程には安くはないと、父上の言霊に合わせて涙を流しながら共に詠い上げたティオ。

 

 然しながら復讐という甘美な思いに囚われなかったかと問われれば否であり、ユートの力はそれを成すのに使()()()と考えてしまった。

 

 ソッとユートに渡された【仮面ライダーリュウガ】のカードデッキに触れ、あの力強い漆黒の龍の姿を脳裏に思い描くティオ。

 

 自分達とは違いどちらかと云えば脚を持つ蛇とも云える姿だったが、何故かそれは竜とはまた異なる龍の姿だと認識をしていた。

 

(そういえば、ユエの魔法の【雷龍】や【蒼龍】があんな姿をしておったのぉ)

 

 地球に於ける東洋龍と西洋竜。

 

 そんな違いではあるが、リュウの因子を持ったドラゴンという存在なのは変わらない。

 

(主殿は否定せなんだな)

 

 ユートはティオの復讐心に否定をぶつけたりはしないで、だけど意味も無く煽るという訳でもなく淡々と言葉を紡いだ。

 

『復讐をしたいなら止めない。復讐心に縛られたくないならそれも良い。願わくは()()()()後悔しない道を歩んで欲しい』

 

 それはきっと復讐の焔に焼かれた事があるからこその言葉、勇者(笑)辺りが『復讐なんて何も生み出さない、そんな事は止めるんだ!』などと言っても所詮は復讐心を持った事も無い甘ちゃんの科白だと決して響かないだろうが、ユートのあれは復讐心に焼かれて身を焦がした事があるからこその言霊だと響き渡った。

 

(主殿は後悔をしたのじゃな?)

 

 復讐を成した事にではなく、復讐に走らねばならなかった事に――即ち護れなかった事に。

 

(なればこそ……じゃな)

 

 リュウガのカードデッキを握る。

 

(この奇跡にも等しい集まり。故にこそ護りたいものじゃな……主殿よ)

 

 人間族、竜人族、吸血族、亜人族、異世界人、

流石に人間族と戦争中である魔人族までは居なかったが、異なる種族が依り集まるパーティ。

 

 小さな集まりに過ぎないが、それが奇跡にも等しいのだとティオは識っていたから。

 

(確か妾の天職は守護者じゃったか。ふむ、確かに妾に相応しいやも知れぬな)

 

 護り手たるティオ・クラルス。

 

(この小さな生命も、主殿が護りたい全てを妾も護りたいと思うておる)

 

 その中には烏滸がましくも思うが、ティオ・クラルス――自分自身も入っていると考えると胸が暖かくなってきた。

 

(いかんな、妾……本気になったやも知れん)

 

 ティオは自分に付いて来られる者を、自分よりも強き雄を(つがい)として求めていた。

 

 ユートはステータスもそうだったが、その全てに於いてティオを上回ると実感わしている。

 

 強く偉大な雄を求めるは雌の本能。

 

 なればこそのこの想いは確かな気持ちとなり、近い内にユートに身も心も捧げたいと思った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ホルアドの町。

 

 オルクス大迷宮の入口が存在する町でもあり、ミレディ・ライセンからしたらオー君と初めての共同作業をした場所でもある。

 

 人工神結晶を渡されて使った地で、吃驚してしまい奈落にそれを落としてしまったのだが……

 

「まさか、ユー君が手に入れていたとはね」

 

 結晶はあの時より大きかったが、それはあれから千年を越えている証左とも云えるだろう。

 

 ホルアドの冒険者ギルド支部。

 

 ユートはミュウを右肩に乗せて悠々とギルドの両開きな扉を開いて入るのだった。

 

 

.




 次回は再会するユートと勇者(笑)とハジメ……

勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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