ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 最後ら辺が少し雑い。





第58話:鈴の決意と新たな旅路

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 話し合いは終わったが永山パーティのメンバーは色々と複雑だ。

 

 まさかライダーシステムを貰う為に吉野真央や辻 綾子を差し出すなど出来やしない、勿論だけど本人がそれで構わないのなら止めないが……

 

「要は肢体で払え……か」

 

 吉野真央は自らの肢体を抱き締める様にしながら呟く。

 

「多分だけどお金で支払うならやっぱ億単位での請求よね?」

 

「だろうな」

 

 そんな吉野真央の科白に永山重吾が頷いた。

 

 ライダーシステムが現実に在るのなら果たしてその価値とは如何程か、はっきり言ってしまうと価値など付け様がないという事に。

 

 壱億? 十億? 百億? そんな()()で本来ならば買える物ではないのだから。

 

 例えば実際にカブトゼクターとベルトをセットで開発するとして、果たして幾らくらい掛かるのかを考えてもみるが良い。

 

 況してや、この世界の地球ではタキオン粒子が未発見であるからには先ずそれを捜す必要があるだろうし、鎧兜を量子化してそれを瞬間的に着込める技術も必須であろう。

 

 ハジメならまだ近似技術である程度なら可能かも知れないけど、科学的には普通に無理で無茶で無謀な試みにしかなるまい。

 

「わ、私はちょっと……」

 

 野村健太郎を見ながら辻 綾子は呟く。

 

「別に嫌々で行けとか言わん」

 

 ライダーシステムは欲しいがだからかといって貞操を捧げて来いとか、永山重吾はそんな莫迦を言う程に腐れてはいなかった。

 

 取り敢えずは解散となり、ハジメは部屋に戻る事にしたから恵里を伴い食堂を出る。

 

 永山重吾達も各々の部屋へ。

 

 それは谷口 鈴と坂上龍太郎も同じくだったのだろうが、そんな常識とは裏腹にハジメの部屋へと谷口 鈴は向かっていた。

 

 コンコンとノックをする。

 

「誰?」

 

 思った通りの声に安堵しつつ答えた。

 

「あの、鈴なんだけど……」

 

「何で鈴がハジメ君の部屋に来るの? まさかのNTR宣言なら受けて立つよ」

 

「ち、違うから! エリリンに話があったの! 南雲君に用事じゃないよ!」

 

「……仕方ないな」

 

 ガチャリと開く扉……

 

「な゛!?」

 

 其処にはネグリジェ姿の恵里。

 

 それに仄かな汗の臭いや若干、上気をしている表情を視るに励もうとしていた……というより既におっぱじめていたらしい。

 

 ゴクリと固唾を呑む谷口 鈴、今の恵里は普段の姿からは想像も難しいくらいに色っぽい艶姿。

 

 ちょっと前に比べて何故か色気が弥増していたのは気付いていたが、始めようとしていた今の姿にはまだ敵わないレベルである。

 

「あ、あの……鈴はお邪魔だったかな?」

 

「うん、邪魔。数時間後に出直して」

 

 思い切り愉しむ気満々な科白に引き攣ってしまうも、それで諦める訳にはいかないと意を決して恵里へと話し掛ける。

 

「あの、少し話があるんだ!」

 

「だから数時間待って。五発くらいハジメ君のを抜いたら聞いて上げるから。それとも手伝う? ハジメ君、ちょっと凄いよ?」

 

「て、手伝わないよ!」

 

 魔物肉などを錬金術で合成した特殊な団子を食べた二人は、容姿が少しばかり上向いただけではなくセ○クスに於ける耐久性も上がった。

 

 まぁ、それ以前の自分を知らないからどう上がったかも解っていないが……

 

 ハジメはユート程にダイナミックな変化をしていないけど、長さ固さ太さが倍近くにもなった上に射精が出来る量も一度の多さと回数が普通より増えていたりする。

 

 ユートみたいな無限ではないけれど、それでも恵里を悦ばせるには充分過ぎた。

 

 何処ぞの勇者(笑)に比べると長持ちするのもあって、恵里は勇者(笑)を見限って正解だったのかも知れない。

 

「じゃあ、部屋で待ってるから」

 

「うん、また後でね」

 

 全く取り合って貰えずガックリと肩を落として部屋を離れる谷口 鈴だったが……

 

「アアン! 凄いよハジメくぅん!」

 

 響いてきた嬌声に固唾を呑んだ。

 

「エ、エリリンの方が凄いよ!?」

 

 薄い壁だから丸聞こえとはいえ魔法か何かで声を遮るくらいして欲しかった。

 

 数時間後……本気で数時間も待たされてしまった谷口 鈴は、ちょっと睨み気味に恵里を視てしまうのも無理はあるまい。

 

 だけど仄かな湯気と石鹸の香りなどから未だに事後なのだと理解して、頬を朱に染めてしまいながら視線も上手く定まらなかった。

 

「で、私とハジメ君の邪魔をしてまで何?」

 

 辛辣に過ぎる。

 

「えっと、仮面ライダーを緒方君から貰うにはどうしたら良いのかなってさ」

 

「抱かれたら?」

 

「ブーッ!」

 

 余りに直接過ぎて噴いてしまう。

 

「緒方君が言っていた事だよ? 欲しいなら身内になるか準身内になるかってさ。だけど私みたいな準身内になるにしても、緒方君の身内の身内にならないといけないんだよ? ハジメ君は鈴にだって渡さない!」

 

「要らないよ!?」

 

「ハジメ君の何が悪いの!」

 

「ちょ、面倒臭いよエリリン!」

 

 要ると言えば怒るだろうに要らないと言われてキレたら困ってしまう。

 

「で、結局の処……話は?」

 

「急に戻らないでよ。あのね、勿論だけどエリリンの南雲君が欲しいなんて言わないけど、やっぱりライダーシステムは使えると鈴は思うんだ」

 

「確かに使える。実際、私が貰ったのは可成りの物だから」

 

「そういえばエリリンが貰ったのって?」

 

「これ」

 

 それは蛇に見える紋様が描かれた紫色の機器であり、中には何枚かのカードが納まっていると思しき代物だった。

 

「仮面ライダー王蛇のカードデッキ!?」

 

「そう。あの時、女魔人族をベノスネイカーに喰わせようとしたのに光輝君に邪魔された」

 

「エリリンが凶悪化した事案について!」

 

 残念ながら割と素であったと云う。

 

「不意討ちに横から喰わせれば間違いなく勝てたんだけどね」

 

「エリリンが怖い……」

 

 龍騎系仮面ライダーにとって、ミラーモンスターが不意に顕れ人間を掻っ浚うのは至極当然な出来事でしかなく、仮面ライダー王蛇となった恵里も既に何人かの騎士なり何なりをベノスネイカーに喰わせていた。

 

「多分、身内の身内……緒方君の準身内はライオトルーパーとかの量産品が普通なんだと思う」

 

「エリリンは?」

 

「ハジメ君の彼女だからサービス?」

 

 初めて出来た恋人であり互いの初めてを捧げ合った仲、特にハジメはオタク仲間という訳でもなかったが共通の趣味、共通のアルバイトなどこの世界で殊更に仲が良かった。

 

 それ故に恵里にはサービスで作中で可成りの強さを魅せ付けるダークライダー、仮面ライダー王蛇のカードデッキを渡してやったのである。

 

 勿論、それは恵里の本性を知るユートからすると皮肉でもあったのだが、今の彼女はその性質が可成り緩和されているみたいだった。

 

「じゃあ、やっぱり御身内さんになる方がお得……なのかなぁ?」

 

「少なくも、遠藤君辺りに態々アタックするより本人にして良い物を貰った方が得だと思うよ」

 

「うーっ、だよねぇ」

 

 身内の身内――準身内に成るというのは取りも直さずユートの友人と恋人に成るという意味。

 

 ハジメには恵里が居て手放さないなら浩介へとアタックするしかないが、別に好きでも無いのにヤるなら迂遠なやり方より直にユートへ向かった方が良い訳だ。

 

「でも、今日は止めた方が良いよ鈴」

 

「え、何で?」

 

「今夜は香織が甘えたい筈だから」

 

「……ああ、そっかぁ」

 

 それこそ好きでも無い男に迫られた挙げ句の果てにショーツを破り取られ、暗がりだったから見えやしなかったろうけど秘所を晒したのだ。

 

 嫌な記憶を上書きして欲しいというのは確かにあるであろう。

 

「どうせだから答えを伝えて予約したら? 確実に抱いて貰える様に」

 

「う、うん」

 

 何だかいつの間にか抱かれるという答えが出ているが、誘導されたのだとは流石に谷口 鈴には解らない事実だった。

 

 その後……

 

「うん、鈴を焚き付けた。サバイブ疾風のカードを宜しくね」

 

 恵里が()()()に連絡をしていたりする。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 翌日、リリアーナが専属侍女ヘリーナを連れて訪問をしてきた。

 

「直に会うのはお久し振りですわ」

 

「そうだな」

 

 色々とあって中々、会いに来れなかったのは間違え様がない程に事実である。

 

「飽きられたのかと」

 

「まさか? 色々と忙しかったからね」

 

「一応、これが報告書になりますわ」

 

 ヘリーナから受け取った紙の束をユートに渡すリリアーナ、現代人としてはやはり紙媒体というのは少し古めかしい。

 

 今時ならスマホやタブレットを使うだろうし、パソコンでフラッシュメモリを使うのも良い。

 

「なぁ、リリィ」

 

「はい?」

 

 可愛らしく小首を傾げる様は視る者からしたらあざといが、少なくもリリアーナにそんな意図など全く無い天然物であろうか?

 

 

 流石は王女様というか普通に可愛い。

 

「少しパソコンなりタブレットなりを使ってみないか? 情報媒体としては紙より嵩張らないと思うし使い熟せれば便利だと思うしな」

 

「……パソコンですか? それはひょとしなくてもユートさんの世界で使われる?」

 

「ああ」

 

「わ、私に使える物でしょうか?」

 

「使い方は知識をインストールすれば良いから、特に問題も無い筈だよ。後は慣れだね」

 

「慣れ……ですか」

 

「で、どうするよ?」

 

 パソコン自体は多少なり場所を取られるのだろうが、ノートパソコンならそれも大きく緩和されるからオススメであった。

 

「試してみたいですが……文字とかは? 此方のに変換されるんでしょうか?」

 

「出来なくはないがメモリの無駄遣いだろうし、僕が翻訳魔法を使おうか。昔に造った眼鏡型魔導具が有るからね」

 

 翻訳(リード・ランゲージ)を眼鏡に付与させれば良いだけの簡単な御仕事、それは昔に神雷から少年を護った所為で不幸になる少女達を救うべく神雷を使った創造神に、その世界へ自分を行かせる様に言った時にとある魔法研究者の御姉さんに贈った物と同じアイテム。

 

 尚、それらの行為に何だか感動したお姫様から逆求婚をされましたが、スマホでユーキに連絡をしてみたらそれが正しいらしくて……

 

「判りましたわ、御願いしますね」

 

 そしてイチャイチャし始めてお外とはいっても自室ではないという意味だが、リリアーナとヘリーナを『戴きます』して部屋に戻って3Pを続けてしまった訳である。

 

 それを見せ付けられた少女が一人。

 

「ま、まさかのリリィと侍女の御姉さんが緒方君

と密会……しかもヤっちゃったんだけど?」

 

 まざまざと視ていた谷口 鈴は自身の御股を潤しながら、真っ赤な顔で室外での三人の行為を目に焼き付けていた。

 

 勿論、わざとである。

 

 谷口 鈴が覗いているのを承知の上でリリアーナとヘリーナを抱いて見せたのだ。

 

 何だかんだ云っても興味津々だった谷口 鈴は、あっさりと罠に掛かってしまう。

 

 実際、トロンと蕩けた表情で右手は胸や御股に伸ばされていたのだから。

 

「うう、あんな風に毎晩毎晩代わる代わるシてたら鈴なんて入り込めないよ……」

 

 こうなると夜には既に決まっているみたいだし朝方にでも突撃するか?

 

 谷口 鈴は意を決して……

 

「先ずやるべきは!」

 

 水場で下着の洗濯であったという。

 

「うう、何だか情けな過ぎるよ~」

 

 自慰をしたのだから自業自得である。

 

 更に翌朝、握り拳を作りながら叫ぶ。

 

「女は度胸!」

 

 どうやら覚悟完了らしくユートが朝食後の飲み物として、一人で自前の珈琲タイムを愉しんでいるみたいだからチャンス到来。

 

「ふむ、美味い。流石はフェイトのオススメするブレンドだな」

 

 正確には栞――ルーナが姉の味を再現した物を貰ったものである。

 

 栞は【閃姫】の一人と成っているからいつまでも若々しく、まるで嘗ての姉がフェイトにした様に笑顔で珈琲を淹れてくれていた。

 

 勿論、この『フェイト』とはフェイト・アーウェルンクスを示している、 間違ってもフェイト・テスタロッサではないと云えるであろう。

 

 フェイト・アーウェルンクスが居た世界とは即ちユートの再誕世界、【魔法先生ネギま!】以外にも【聖闘士星矢】がウェイトを占める世界でもあり、他にも【怪奇警察サイポリス】や【GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり】が混じったり、【隠忍シリーズ】だったり【型月】のシリーズだったりが入り交じり習合する混淆世界でもある。

 

 【聖闘士星矢】が混じる為にユートは聖域にて双子座の黄金聖闘士の位をアテナより拝命をしていて、嘗ての龍星座にして天秤座の聖闘士であった紫龍が教皇として聖域を治めていたが前教皇のシオンより百年も早く死んでしまい、已むを得ず教皇に就任して次世代のアテナと聖闘士を育成、若き聖闘士が教皇に成れるくらいに成長をした後にアテナの許可を以て教皇を退任、双子座の黄金聖衣を譲渡――代わりにユートが造った双子座の黄金聖衣を聖域に渡した――されて世界を出た。

 

 フェイト・アーウェルンクスは別世界も面白そうだと、暫くはユートに付いて回ったものでそれも飽きたらエリシオンに引っ込み、珈琲という自らの趣味を全開に暮らしていたりする。

 

 また、フェイト・ガールズは基本的に大分裂戦争戦中戦後にフェイトに拾われて恩義を感じていたが、原典と違って顔こそヘルメット型の兜により不明だったものの【ジェミニ】にも強い恩義と愛情を感じていた為、【閃姫】となり長命種亜人として以上に長生きして今現在はエリシオンにて暮らし、フェイトが経営する【喫茶ネギま】でのアルバイトをしていたり。

 

 ルーナは特にジェミニ大好きオーラを出していたから、フェイトが気を利かせて偶に珈琲豆を届ける任務を仰せつかる。

 

 ユートの飲む珈琲はそんな中の一つだ。

 

「お、緒方君! 今、良いかな?」

 

「構わないよ。珈琲でも飲むか?」

 

「い、戴きます」

 

 淹れられた珈琲は黒い液体、カップの載っているソーサーには小さな砂糖とミルク。

 

「最初にブラックで一口、それから砂糖とミルクを加えて味を調えると良い」

 

「う、うん……」

 

 鼻腔を擽る香りは悪くない。

 

「う゛、苦っ!」

 

 見た目に違わず御子様舌だった谷口 鈴は顰めっ面になって舌を出す。

 

 そして砂糖とミルクをぶち込んで飲んだ。

 

「ふう、御馳走様」

 

「御粗末」

 

 取り敢えず砂糖とミルクを入れたら飲めるだけの味に変化したらしい。

 

「で、用件は?」

 

 別っている癖に態々訊いた。

 

「ライダーシステムについて!」

 

「渡すのは構わないさ。だけど当然ながら対価は

必要となるぞ?」

 

「お金か……か、肢体かだよね?」

 

「そうなるな」

 

 迂遠な形な準身内に成るくらいなら……

 

「は、初めてだから普通に……して下さい」

 

 御初で青○は嫌だった。

 

 谷口 鈴の“開通式”が行われて彼女は無事に仮面ライダーと成る。

 

 その陰ではよもや親友が新たな力を獲たなどとは思いもしなかったが……

 

《SURVIVE!》

 

 仮面ライダー王蛇と成った恵里は早速貰った【サバイブー疾風ー】を発動、正しく疾風一陣が吹き荒れベノバイザーツヴァイが握られると手にしたカードを装填、電子音声が鳴り響き竜巻と共に仮面ライダー王蛇サバイブに変身した。

 

「あは♪ あはは!」

 

 グリンと首を回す様は王蛇そのもの。

 

 中村恵里はハジメの恋人に成ってから随分と落ち着いたが、元々が持ち合わせていた後天的な歪みや狂気が無くなった訳ではない。

 

 普段はハジメとセ○クスをする事で性欲と共に解消していたが、オルクス大迷宮で勇者(笑)によりカトレアをベノスネイカーに喰わせるといった所業を邪魔され可成りキてしまっていた。

 

 だから変身さえすれば雑魚と知りつつも態々、強化変身してまで魔物退治に出たのだ。

 

 夜中にはハジメが鎮めてくれるけどセ○クスと殺しの快感はまた別物、紅 音也がヴァイオリンを弾くのとイクサに変身する快☆感がきっと別なのと似ているのではなかろうか?

 

 恵里が一頻り暴れ回って魔物も大分居なくなったのだが、一際に大きな魔物が意図的に残されていてベノバイザーツヴァイにカードをベント。

 

《FINAL VENT!》

 

 ベノスネイカーは鏡が割れる様なエフェクトと共にベノヴァイパーへ進化。

 

 地を這うベノヴァイパーは何故かバイク化し、王蛇を乗せて疾走をしながら毒液を吐く。

 

「死ね!」

 

 そして盛大に轢き逃げアタックを極めた。

 

 仮面ライダーといえば轢き逃げアタックとかに定評もあるが、仮面ライダー龍騎系だとサバイブをした龍騎やナイト、オルタナティブが轢き逃げアタックによりトドメを刺している。

 

 気持ち良さそうにベノヴァイパーから降りて、変身を解除してから魔物の素材や魔石の剥ぎ取り

をすると、後は知らないと云わんばかりに放って置いて城へと戻った。

 

 残骸はまた別に魔物が喰らうだろうから。

 

 帰ったらシャワーが無いのが残念だけど風呂は完備されているから入浴、夕飯後はハジメの部屋に入り浸り夜中になれば共にベッドへ。

 

 スッキリと性欲が解消されたらハジメの腕枕で眠りに就いた。

 

 ある意味でルーチンワーク。

 

「早く城を出て気侭な冒険者生活をしようね」

 

 眠るハジメの頬をツンツンと(つつ)いて呟くと目を閉じた。

 

 既に恵里も……勿論ながらハジメも城に残ろうだなんて思ってはいない。

 

 ハジメはギルス化した際に行き成り背後から斬り付けられ、恵里は隙を窺ってベノスネイカーを嗾かける予定が狂わされた。

 

 どちらも勇者(笑)の所為で……だ。

 

 ならば最早共に在るには能わず、ユートが城を出るのと同じく出ようと話し合ったのである。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 鈴は自らが貰ったライダーシステムを手にして

は真っ赤になり、そうかと思えばニヤニヤとニヤケる百面相をしていた。

 

「はうう、まだナニかお腹に入ってる感覚」

 

 初めてをユートへと捧げた夜に僅か三発程度の

短い時間だったが、鈴にとっては凄く長い時間に感じられる一時であったと云う。

 

「痛いって言っても聞いてくれないんだもん」

 

 初めてを貫かれた痛み、お腹の中の鍛えようが無い部分を抉られるその瞬間を迎えて泣き叫んだ鈴だったが、ユートは『痛みを与えたのが誰か、傷を付けたのが誰なのかを刻み込むこれは謂わば儀式だ。だからこの瞬間だけは決して手加減しないと決めてる……悪いけどな』――そう言いながら鈴の開通式を行った。

 

「まぁ、これは貰えたからもう良いけどさ」

 

 それは虎のライダーズクレストが描かれている四角い箱、仮面ライダータイガのカードデッキであったと云う。

 

 一号機は勿論ながら此処ではない世界に居る者が持っている訳だが、恰かも平行世界と云おうかリ・イマジな世界が幾つも在るから幾つも存在していておかしくないと云うのか、ユートは二号機を普通に造って鈴に与えた。

 

 龍騎系仮面ライダーは仮面や鎧やスーツなどはバリアジャケットや騎士甲冑みたく、エネルギーの物質化により構成されていて契約モンスターの力をインストールして完成される。

 

 鈴の場合はデストワイルダーだ。

 

 だから契約モンスターが居ない状態になったらブランク体になり、故に聖魔獣デストワイルダーを着込むという形にはならなかった。

 

「試してみようかな?」

 

 貰ってからまだ変身はしていない。

 

 部屋に姿見を用意して貰ったから変身はすぐにでも可能だし、玩具を買って貰ったばかりの子供みたいな心境である。

 

 CMSやDXの変身ベルトを買ったら取り敢えず試しに『変身』したくなるみたいな。

 

 キーンキーンキーン! 煩いくらいに耳鳴りがする中、鈴がタイガのカードデッキを姿見へと翳してやるとVバックルが腰に。

 

「ふおおおおっ! テンションが爆上げだよ! 作中通りにVバックルが装着された!」

 

「変身っ!」

 

 左側のスロットからVバックルへと装填されるカードデッキ、同時にタイガの鏡影とも云うべきが鈴に向かって顕れる。

 

「仮面ライダータイガ……英雄に憧れて、だからこそ英雄に成り損なって、そして死んで初めて誰かの為の英雄と讃えられた……か」

 

 ちょっとしんみりしてしまった。

 

 鈴は別に英雄に成りたい訳ではないのだから、特に気にする必要は無い筈だ。

 

「けど、ガタイが良過ぎるよねタイガってさ。まぁ、鈴が変身しているからか何処と無く女性っぽいラインなんだけど……」

 

 とはいっても、本来の鈴の体型は子供っぽいから少しコンプレックスがある。

 

「取り敢えずゆう君は鈴の事を魅力的だって言ってくれたもん! って、鈴は誰に向かって言ってるんだろ?」

 

 ユートには体型は割と二の次、若し一生に一人としか目合う事が出来ないならそれこそ一番の好みを優先したかもだけど、もっけの幸い? にもユートは複数の女性と関係を持っていた。

 

 だからこそ気にしない。

 

 小さくて女性の脹らみに欠けていてもそれはそれで愉しめるし、逆に肉感的で胸も大きい女性らしさ全開な相手でも愉しめる。

 

 【閃姫】にしないなら処女の有無も問わないから所謂、人妻……正確にはNTRはどうかと思うから未亡人にも手を出すし、仮に恋人持ちであっても条件次第では手を出してしまう。

 

 昔にドラクエⅣ世界でネネを喰っちゃったが、その時点ではトルネコが死亡中だったり。

 

 FC版で云われていた設定と違い若く美しい、子供を産んだとは思えないくらい整った体型をした奥さんで、子を成すまでは毎晩励んでいたらしいもののポポロが産まれてからは御無沙汰だったのも良かった。

 

 改めてユート色にネネの膣内が染まったし。

 

 変身を解除した鈴は溜息を一つ吐いて頬を朱に染め、実際に仮面ライダーへと変身をした余韻に浸ってしまう。

 

 初変身の高揚感、それは仮面ライダー好きなら必ず通る道であるからには鈴も御多分に漏れなかったのであろう。

 

 尚、鈴は抱かれた後からはユートを香織と同じく『ゆう君』と呼ぶ様になった。

 

 恋人なんて甘ったるい関係ではなく愛人だとか妾だとか、正妻は疎か側室にすら及ばない地位だと鈴は考えているが、それでも自分に初めての証を刻んだ男に情は懐いている。

 

 それに普通なら初めてでイク事は難しいと聞いていた鈴だが、痛みに堪えながらいつの間にやら痛みとか違う感覚が頭を支配していき、甘い嬌声を上げ始めて逆に怖くなったくらいだ。

 

 一発目から絶頂を迎えたのだから。

 

 思い出したらまた紅くなる。

 

「鈴も旅に出ようかな?」

 

 本当は皆を見捨てて逃げたくはなかったけど、今は天之河光輝に嫌悪感すら持っている。

 

 理由は簡単、勇者(笑)レ○パーが傍に居て良い気分で居られる訳が無い。

 

 今は強制的に宦官化しているからもうヤり様も無いだろうが、だからと云ってもそれとこれとは話が別と云えるのだから。

 

「顔が良ければナニをしても良いって訳じゃないんだよ」

 

 それに仮面ライダータイガのカードデッキを持っている鈴、永山重吾達はユートからライダーシステムを得る条件を聞いている。

 

 ならばこれを持つ鈴を彼らはどんな目で視てくるかなど想像すらしたくない。

 

「けど、一人旅はちょっと恐いかなぁ」

 

 見知らぬ世界のトータスで一人旅、地球でだってやれない自信がある鈴からすれば敷居が高いと言わざるを得ない。

 

「ゆう君に連れて行って貰うかな? 寧ろ浚って欲しいくらいだけどね。きっとカオリンもシズシズも鈴みたいに抱かれてるだろうから立場は変わらないし、だったら変な目で視られたりもしないよね? ユエさんやシアさんやティオさんもそうなのかな? うわ、ゆう君ってば絶倫さんだよ。流石にミュウちゃんは違うか……パパとか呼ばれていた……し? あれ? ミュウちゃんのお母さんとそんな関係なのかな? 不倫? あ、未亡人って線もあったか。未亡人なら独身だもんね」

 

 これからの事を思うと一人言が多くなる。

 

「エリリンと南雲君はどうするんだろう? 二人も仮面ライダーなんだし、やっぱりお城を出て行くのかな?」

 

 南雲ハジメが仮面ライダーG3ーXをやっていたのは知っていたが、そもそも本人すら知らない内に火のエル――プロメスの因子とやらを植え付けられており、それに覚醒して仮面ライダーギルスに変身した上に更に仮面ライダーアギトへと再覚醒を果たしている。

 

 そして恵里は仮面ライダー王蛇のカードデッキを与えられており、あの女魔人族を喰わせる気だったと聞かされていた。

 

「お城に残れば間違いなく二人は仮面ライダーとして利用されるもんね」

 

 これも寝物語に聞いたが、仮面ライダーはスペックにバラつきがあるけど最低限で量産型仮面ライダーのライオトルーパーでさえ、単純な筋力が3000くらいにはなるらしい。

 

 耐性や俊敏も各仮面ライダーで装甲が異なるから何とも云えないが、生物的な仮面ライダーであるアギト系や響鬼系でも高い水準であり、クウガもタイタンフォームなら俊敏が可成り犠牲になるがそれだけに硬くなるそうな。

 

 仮面ライダー龍騎はスペックがAPとして表現されるが、1APで0.05tとなるから龍騎で200APというパンチ力は即ち10tという事になる。

 

 アギトの7tより強い。

 

 そして装甲はそれを受ける前提で構築されていて然るべき、ならば自然と高い数値に至るという事になるのであろう。

 

 まぁ、仮面ライダーアギトの場合はクロスホーン展開で更にパワーを増すのだけど。

 

「明日、訊いてみよう」

 

 鈴の苦悩は続くらしい。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 翌朝、結局はユートが城を出るまでに永山パーティの面々はライダーシステムを得られない侭に終わり、野村健太郎はある意味でホッと胸を撫で下ろしていた。

 

 まだ付き合ってこそいないが、辻 綾子に好意を持っていたからだ。

 

「それじゃ、僕らは旅に戻る。グリューエン大火山やメルジーネ海底遺跡、他にもバーン大迷宮やハルツィナ樹海にシュネー雪原の氷雪洞窟と行かねばならない場所は多いからな」

 

 苦い表情な永山重吾はやはり残って欲しいのかもしれないが、だからと云って帰る術をエヒトの慈悲? に縋る以外に見付ける心算なユートを止める訳にもいかない。

 

「優斗、僕らも旅に出るよ」

 

「やっぱりか?」

 

「ギルスに成った途端に斬り付ける勇者(笑)とはやっていけない」

 

「私もだね。彼氏を傷付けられて黙っていたくはないから」

 

「そうか、なら一緒に来るか?」

 

 ユートが誘うが……

 

「取り敢えずは冒険者として動いてみる」

 

「そうか」

 

 どうやら二人旅をするらしい。

 

「鈴もゆう君と行きたいって言ったら連れて行ってくれる?」

 

「「「「「なっ!?」」」」

 

 永山パーティや坂上龍太郎が驚愕する。

 

 因みに、勇者(笑)は居ない。

 

「構わないが……」

 

「ま、待て! どういう事だよ!?」

 

 待ったを掛ける永山重吾。

 

「鈴は仮面ライダーになったんだ」

 

「は?」

 

 驚く永山重吾、坂上龍太郎も大きく目を見開いて驚愕をしていた。

 

「意味は……解るよね?」

 

 仄かに紅い頬が全てを語る。

 

「ようこそ、鈴。大迷宮攻略組へ」

 

 ユートが差し出す手を笑顔で取る鈴の姿が何だか遠くに行った感じに見えた。

 

「一応、仮面ライダークローズチャージや仮面ライダーシノビは残るんだ。問題も無かろう」

 

 益々、神の使徒とか呼ばれた勇者(笑)の人数が減ってしまって問題だらけだが、文句を言うに言えない永山パーティは呆然自失。

 

「では、行ってらっしゃいませユートさん」

 

 そんな中に在って、王女のリリィと侍女ヘリーナだけが笑顔で見送るのであった。

 

.

 




 鈴は仲間に、ハジメと恵里は我が道を。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

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