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宿場町ホルアド。
ハイリヒ王国のお膝元、冒険者ギルドが存在している程度には大きく、何よりも此処にはオルクス大迷宮というダンジョンが在る。
ユートがリリアーナとヘリーナを喰って数日後、遂に来るべき刻が来たという訳だ。
移動だけでもそれなりの時間が経過し、勇者一行は今日は宿屋に泊まって翌日からダンジョンアタックに臨む事になる。
ユートは空き時間に少し動こうと考えた。
「あれ? 緒方君、何処に行くのですか?」
「先生か。ちょっと行きたい場所が道すがらに有ったんでね」
「余り遅くなってはいけませんよ?」
「先生が今晩の相手をしてくれるなら、早く帰って来るよ?」
「な゛!?」
一五〇cmと中学生程度のちみっこさだとはいえ、畑山愛子は二五歳で成人式はとっくに越えた大人。
意味はすぐに理解したらしく、真っ赤な顔になったのは羞恥か怒りか?
「こらぁ! 先生をからかっちゃいけません!」
「はいはい」
そう言って外出した。
行き先は冒険者ギルド、どうせ近い内に王国を出る心算だし、ギルドに登録すれば素材買い取りに色が付くと聞いたからだ。
「緒方!」
「お、園部か」
「何処行くのよ? もう遅い時間なのに」
訓練する時にユートは、基本的に園部優花の一派と行動をしていた。
だから、リリアーナ達とは違う場所で仲は良かったと云える一人だろう。
「ほら、夜の方が都合の良い施設も在るだろ?」
「夜の方……が……」
考えていて赤くなる。
「え、それって……しょ、しょう……か……」
口にするのも恥ずかしかったのか、ちょっとずつ声が小さくなっていく。
「冒険者ギルドはやっぱりロマンだろ?」
「……へ? 冒険者ギルドって、あれ?」
「何を考えたのかな〜? 園部のえちぃ」
「っ! ばかぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!
全身真っ赤になって走り去る園部優花。
「からかい過ぎたか」
だけど反省も後悔もしてはいなかった。
冒険者ギルドで首尾良く冒険者になれたユートは、宿屋に戻って来た際に一人の少女を発見。
「うん? あれは白崎香織だよな。部屋はハジメの……まさかヤりに来たとか? 流石に無いかな?」
天職が治癒師の白崎香織は謂わば、パーティを組めば要となる回復魔法が得意だったし、適性云々を鑑みなければ攻撃魔法を使えない訳でもない。
実際、降霊術師たる中村恵里も攻撃魔法を使える。
(まぁ、ハジメの激励か何かなんだろうが、ハジメは迷惑がってるんだよなぁ)
モテる美少女が積極的に話し掛けてる訳で、しかもクラスや学年処か学校でトップを争う【二大女神】の一角ときた。
どれだけ嫉妬の視線に晒されたか、どれだけ小悪党四人組に虐められたか。
実際の内容なんかは見聞きしていない為、ユートは何の用事かまでは判らなかったが、この世界の主人公と目されるハジメからして果たしてヒロインだろうか?
(天然で好きな男も居る訳だが、付き合っている訳でも無いし……貰ってしまっても構わないかな?)
王宮を出る時に攫ってしまうかと、白崎香織の先行きを考えていると……
(うん? 小悪党四人組のリーダー……だったか? 白崎香織を視ていたけど、ストーカーか何かか?)
檜山大介が居た。
ハジメを虐めている連中のリーダー格なのは判る、だけど名前が出てこなくて未だに小悪党四人組と一括りにしている。
明日には実戦訓練と称して【オルクス大迷宮】に挑むけど、何やら起きそうな予感を犇々と感じた。
「あれ、園部?」
「やっと帰ってきたんだ。まさか本当にしょ、しょ、娼館とか行ってないよね」
「だから冒険者ギルドだと言ったろ? で、部屋まで来て何の用だ?」
「話がしたくて……」
「恐いのか?」
「う゛……」
「二人は?」
「タエとナナも同じだし、甘えられないでしょ」
確かに、仮にもリーダー格な園部優花が甘えてしまうのも問題か。
「外だと他に見られるし、部屋に入るか?」
「あ、うん」
相当に心細くなっているのか、頬を朱に染めながらも素直に頷いた。
室内に入った優花は紅茶を出されて一服、人心地が付いて溜息を吐いた。
「ねぇ、緒方は迷宮に入って戦うのは恐くないの?」
「恐くはないな」
「な、何で?」
「慣れているから」
「慣れてるって……」
「僕はこういうのには既に慣れ切ってる。今更、魔物の百匹や千匹が幾ら来ようが殺し尽くすまで」
「……強いんだ」
「経験値は高いからね」
全く緊張すらしていないのは、園部優花にも見て取れていた。
「そうだ、君らに御守りを上げよう」
「私達って、タエとナナにも渡せって事よね?」
「ああ。少しは君らを守ってくれるだろう」
ユートはちょっと考える素振りを見せると……
「こんな感じか」
手に三つの装飾品を持って呟いた。
「え……へ?」
驚きに目を見張る。
「ベースはどれもプラチナを使ってる。ペンダント型のは紅玉と黄玉でどちらも火属性、火に対する耐性が八〇%に上がる。序でに、スピオキルトを籠めてあるから攻撃力、守備力、素早さが倍になるし、毒や麻痺や石化や混乱や恐怖なんかのデバフを防ぐ護符だ」
「な、何だか聞いてる限り凄まじいばかりのお守り。それってもうアーティファクトじゃないの?」
「この世界の技術基準ならそうかもね」
【守護のアミュレット】が完成した。
「で、これは園部のな」
「ペンダントじゃないのは判るけど……」
「髪留めのバレッタ」
「ああ、成程」
「ベースは同じプラチナ、留め具は真鍮。真ん中の石は翠玉で風属性。周りには火の紅玉、水の藍玉、土の柘榴石を配置しているが、石に籠めた属性は適当だ」
「適当……なんだ」
意味を持たせた訳では無かったりする。
「風属性を八〇%、土火水の属性を五〇%上げてくれる効果に、【守護のアミュレット】と同じバフ効果、デバフ防御効果がある」
「そうなの?」
「ほれ、後ろ向いてみ」
「う、うん……」
大人しく後ろを向くと、ユートが櫛で園部優花の髪を梳き始める。
「え、ちょっ!」
「動かない」
「は、はい……」
顔が真っ赤な園部優花、大人しく梳かれている内に何だか気持ち良くなった。
優しく梳いてくれるし、本格的ではないが好意らしきを向けてる男の子の手、何と表現して良いのか解らない気持ちが湧き上がる。
綺麗に梳かれた髪の毛、其処にバレッタを填めた。
「【清廉のバレッタ】だ。アーティファクト級なのは説明した通り。一応は最初に身に付けた人間以外には装備が出来ないけど、下手に晒すと危険だというのは理解出来るな?」
「え、ええ」
ユートからしたらちょっと性能の良い魔導具を造った心算だが、この世界……トータスの人間からしたら紛う事無きアーティファクトとういう事だ。
「訊いて良い?」
「何だ?」
「さっきまで無かった筈のペンダントとバレッタ……これっていったい?」
「南雲の錬成を知っているよな?」
「ええ、確か檜山達からはありふれた職業で世界最弱とか呼ばれてたわ」
「ひやま? 誰かは知らんが莫迦なんだな」
「どういう事よ」
園部優花も檜山大介程には思わないが、アレは謂わば鍛冶職なら一〇人に一人は持ち、国御抱えの鍛冶師は全員が持つありふれたと言わざるを得ない職業。
加えて初期能力値なんかオール10、これでは幾ら上がっても大した数値にはならないし、レベルが最大にまでなっても果たして、どの程度になるものか。
「南雲の天職は錬成師で、その能力は錬成。こいつは極めれば化けるタイプで、本当に究極にまで鍛えたら如何なるアイテムも製作が可能な、下手したら化け物染みたモノを造れる力だ」
「う、嘘でしょ流石に」
「事実として、君に贈ったバレッタと二つのペンダントは遂さっき、僕が錬成と同じタイプの力で創り上げた物だからね」
「……マジに?」
「この世界風に云うなら、技能:創成[+鉱物系鑑定][+鉱物系探査][+汎暗黒物質生成][+精密生成][+圧縮生成][+宝石創造][+金属創造][+魔法付加][+瞬間創造][+鉱物融合][+量産生成][+消費魔力減少][+妄想力強化][+機械生成][+服飾生成][+生機融合][+概念付加]……って感じだろうな」
「な、何よそれ? だいたい汎暗黒物質っていったい何なのよ?」
某【とある】の未元物質とは少し意味が違う物で、早い話がニュートリノだのアキシオンだのタキオンだの素粒子といった物が暗黒物質だけど、汎暗黒物質とは未分化の汎用的に扱える代物だ。
「ダークマタとも云って、ざっくり原子より更に小さな物質だと考えれば良い。これを原子に、更に分子にして物質化させる技能だ。何も無い所から創った様に見えて、実際には汎暗黒物質を練り上げて創ったんだ。想像の侭に創造をしてね」
「じょ、冗談……じゃなさそうよね。南雲も同じ事が出来るって事?」
「其処までじゃないだろ。とはいえ、素材さえ有ればアーティファクトを自由に造れてもおかしくないな」
ゴクリと固唾を呑む。
「既にある程度は教授しているからね、後は南雲自身のやる気次第か」
「何処までやれると思っているの?」
「そうだな、最低限で現代兵器くらいは造れるんだろうね。派生技能がどれだけ得られるか……だけどな」
「買ってるんだ、南雲を」
「自分と似た技能持ちだ、色々と教えたくなるさ」
「そうなんだ……」
園部優花は冷めてしまった残りの紅茶を飲み干す。
「装飾品は贈ったけどさ、対価次第で武器も創って上げるよ?」
「対価? とはいっても、私はお金なんて無いし」
日本のお金なら僅かながら持ってるが、女子高生の常識的な金額に過ぎない。
況んや、トータスの通貨ルタなんて一ルタも持ってはいなかった。
「お金である必要は無いと思うけどな」
「お金……以外……ね」
フッとユートを見ると、行き成り頬を赤くしたかと思えば……
「んっ!」
ユートの唇に自分の唇を重ねてきた。
固く閉じた目を開けて、園部優花は驚愕して後ろへと下がり、あわあわと両手をバタバタと振りながらも言い募る。
「ち、ちがっ! 頬っぺ、頬っぺに軽くの心算で!」
思い切りが良すぎた自分の行動と失敗、羞恥の余り涙目になって言い訳した。
「んむっ!?」
テンパる園部優花の肩を掴み、今度はユートから唇を重ねると、開いた口から舌を侵入させて舌同士を絡ませてやる。
「ん、んんっ!?」
驚愕に目を見開きつつ、絡まる舌の感触を味わっている園部優花、目がトロンと蕩けて閉じてしまう。
溜まっていた涙が一筋、頬を伝って床に落ちた。
何秒? 或いは何分間をそうしていたのか、ゆっくりと唇が離れて互いの混ざり合った唾液で橋を架け、ある程度まで唇が離れたら真ん中から途切れる。
未だに夢心地な侭な瞳でボーッとする園部優花を、ユートはソッと抱き締めた状態でいた。
端と我に返った園部優花はユートの胸に顔を埋め、プルプルと肩を震わせながら服の端を掴んでくる。
恥ずかしさからユートをまともに見れないのだ。
頬にキスだけでハードルは高かったのに、間違えて唇にファーストキスを捧げてしまい、今度は本格的なディープキスで二度目を奪われた訳だから。
見た目には遊んでいそうなギャル風だが、その実は純情可憐な女の子である処の園部優花に、この現実は耐えられるものではない。
多大な犠牲を強いられ、対価を支払った園部優花は確かに、強力な武器を創成して貰ったのである。
【回帰の短剣】と名付けられたこれは、投擲用短剣が一二本セットで入っているホルダーで、投擲したらまるで補充されるかの如くホルダーに戻ってくる仕様な上に、魔力を流し込めば刃の切れ味や貫通力を流した魔力に応じて上げる。
また、魔法を籠める事で魔法剣状態にして投擲するなどの効果もあった。
更に簡単な自己修復効果を持つ為、基本的にメンテ要らずの武器である。
「無茶苦茶な性能よね」
「“優花”の唇の代償だ、良い物を張り切って創るくらいはするさ」
「っ! ばか……」
俯きながら小さく呟く様に言ったものだった。
足早に部屋に帰った優花は早速、渡されたペンダントを菅原妙子と宮崎奈々に渡しておく。
その後に色々と邪推? されてしまったが……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
オルクス大迷宮。
反逆者オルクスが造ったとされる迷宮、魔物がどうやってか次々に湧いて出る厄介な場であると同時に、魔石を得られる冒険者にとって稼ぎ場でもあった。
その入口はまるで御祭り騒ぎの様相を醸し出して、人人人でぎゅうぎゅうに犇めき合っている。
その中にはユートが普通に居たし、キョロキョロとする南雲ハジメも居た。
天之河光輝のグループ、永山重吾の派閥、檜山大介の小悪党四人組、園部優花のチームなど他にも幾つかグループを作っているのがちらほらと。
ユートとハジメはソロに近い中立だろうか?
目立つのは騎士に囲まれている畑山愛子だった。
愛子の天職は作農師で、ステータス数値は魔力以外はハジメと変わらないが、魔力だけなら天之河光輝と同じく100で、技能欄には作農師に相応しい技能が所狭しと並んでいる。
メルド・ロギンス達からすれば、ある意味では勇者な天之河光輝より驚愕して称賛し迎えたものだった。
食料事情が一変する程の伝説的技能だったから。
戦闘力はこの際は問題で無くて、作農師という天職はこの地の誰もが垂涎の的として見る。
戦闘なんて以ての他で、本来ならオルクス大迷宮に入るなど有り得なかった。
なのに愛子が此処に来ているのは、偏に耳許で囁かれた言葉を気にしてだ。
『生徒を危険な迷宮に送り込んで、自分は作農師という天職に甘えて安全な場所で見ているだけ』
この二週間、そんな囁きが毎日毎晩と続いていて、ノイローゼにでもなりそうな状況だった。
だからこそ、最初の一日だけでも生徒達と大迷宮に入って、その大変さを経験しておきたいと我侭を言ってしまったのである。
悩んだメルド・ロギンス騎士団長だが、熱意に圧されて騎士達でガチガチに囲い込んだ上で戦わせない、そんな条件で今日だけという約束をして連れて来た。
尚、原典では当然の事ながら大迷宮になど入ってはいないし、その間は普通に各地を巡って農作業の手伝いをしていたのである。
オルクス大迷宮は緑光石という特殊な鉱石が多数埋まっている為に、灯りが無くてもある程度ならば視認が可能。
そして光源からよく見れば大迷宮は魔物の巣窟で、斃しても斃してもうじゃうじゃと湧いてくるのが嫌でも判った。
魔素がマテリアライズ、そうして産まれるのが謂わば魔物な訳で、魔素が在る限りは魔物が居なくなる事は無いだろうと、ユートは当たりを付けている。
そして基本的に魔素は、ダンジョンの奥になればなる程に濃密になる所為か、降りれば魔物も格段に強くなってくるし、技能なんかも色々と使ってくる。
魔素がそもそも物質化した存在故に、魔力操作なんかを容易く行えた。
ユートは錬成師という天職に従い、青銅ゴーレムのゲシュペンストを魔物へと嗾けている。
まぁ、初期のギーシュが造ったワルキューレみたいな簡易ゴーレムだけど。
然しながら人間の身長の約三分の一、一般的な身長を一六〇cmとした場合の五三cmくらいしかなく、魔物をペチペチと叩くだけの攻撃には、檜山大介を中心に嘲笑うクラスメイト達。
以前にぶっ飛ばされた筈だが、記憶喪失にでもなったかの様な態度だ。
ハジメは自身の能力が有用だと言われて喜んではいても、未だG3システムは未完成だから立場は微妙な処。
取り敢えず錬成で迷宮の床や壁を変化させる事で、魔物を封じたりして斃すのを頑張っていた。
貰ったCADのお陰で、凄まじい迅さで錬成可能となってたし、雷撃で魔物を斃すのも実に早い。
とはいっても目立たないが故に、メルド・ロギンス団長でさえハジメの実力を見誤っていたし、リーダーとして進む天之河光輝など気にも留めてなかった。
「あ、あの……きっと……レベルアップすれば大丈夫だと思いますよ南雲君!」
「ん、ああ……そうだね」
八重樫 雫は特に此方を見てないけど、白崎香織は励ましに来てくれた事から優しい人柄なのだろう。
(白崎香織……か、メインヒロインじゃないのかも知れないな)
そんな様子を視ていて逆にメインヒロインではない疑いが濃厚になり、思わず肩を竦めてしまうユート。
まぁ、顔が可愛くて性格もバッチリだったからクラスでは人気者であろうが、ライトノベル的なメインヒロインには足り得ないのだろう。
二〇階層の魔物も天之河光輝にとっては物足りないのか、ちょっと危ない場面があってメルド団長から叱られはしたが、特に傷を負った様子も見受けられない。
ステータスも上がってそれに伴いレベルも上がり確実に実力も付いた。
(ハジメは……)
ハジメは錬成を巧く使っており、中々に巧く殺れている。
本人はダメダメだと自嘲していたが、ユートからすればある意味で教え甲斐はあるものだった。
ユートは既に現段階にてクラスメイトを見限って、何らかの事故を装い消える心算でいる。
弱いからと嘲笑う連中、弱いからとシカトする連中なんて見限るしかない。
連中からすれば自分達が見限った心算だろうけど、実際にはユートの方こそが見放したのだから。
(さて、状況予測からして今日この日が何か起きる筈の分岐点だ。恐らくそれがハジメ覚醒イベントかな。それに乗じて動くかね)
某か起きるのはそろそろの筈なのだ。
ユートのこれは予知とか予言とかの類いではなく、状況下に在る情報を無意識に読み取り、直感的に何かあると感じるというもの。
当たるも八卦当たらぬも八卦よりはマシなレベル、何が起きるかなんてのは判らないし、正確な時間すらも判っていない。
飽く迄も直感だからだ。
天之河光輝が【天翔閃】という大技を繰り出して、ダンジョン崩落の危機を招いたとし、メルド団長から拳骨を喰らった後……
「あれは何かな? 何だかキラキラしてるよ」
白崎香織の指摘に全員が指差した方を見る。
水晶の様な結晶体が蒼白く涼やかで煌びやかな輝きを放ち、それはまるで壁から大輪の華が咲いた様だ。
「ふむ……あれはグランツ鉱石だな。大きさ的にも悪くないし珍しいな」
「どんな鉱石なんだ?」
ユートが訊ねると……
「何かしら効力を持っている訳ではない。とはいえ、その美しさから貴族の御婦人や御令嬢方に人気でな。指輪、イヤリング、ペンダントなんかに加工して贈ると喜ばれる。特に求婚の際に選ばれる宝石としては、トップ3に入ると聞く」
何だか色々解り易く説明をしてくれた。
「はぁ、素敵ぃ……」
白崎香織がうっとりとした瞳で頬を朱に染めつつも、然り気無くを装いソッと南雲ハジメの方へと視線を向ける。
気付いたのはユートと親友である八重樫 雫と、今一人……それは檜山大介であった。
「だったら俺らで回収してやろうぜ!」
「こら、勝手な事をするんじゃない! まだ安全確認をしていないんだぞ!」
怒るメルド団長の言葉を聴こえない振りをし、軽戦士としてか手慣れた感じにヒョイヒョイッと崩れ掛けていた壁を登って行く。
「団長、トラップです!」
騎士の一人が見分ける為の道具、フェアスコープで鉱石周りを視て青褪めた。
「な、なにぃ!?」
警告は既に遅い。
檜山大介がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心として魔法陣が展開され瞬く間に部屋全体に拡がって輝きを増す。
グランツ鉱石というちょっと美味しい獲物を囮にした罠である。
「くうっ、撤退するぞ! 全員早く部屋から出ろ!」
メルド団長からの指示だったが時既に遅くて、ユートの見立てでは一種の転移系トラップが完全に発動。
オルクス大迷宮の第二〇階層は次の瞬間には、誰かしらが居た痕跡を欠片も残さず静寂に包まれるのだった。
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人形操者云々を錬成師に変更しました。
勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる