ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 ちょっと続きが書けず【っぽい噺】的な外伝を掲載してみました。





ありふれIF――若しユートが独り旅に出てデジモンの力を好んで使ったら?

.

 天之河光輝が原因でユートは王城を出奔。

 

 正確には追放されたのだが……

 

 勿論、天之河光輝の言い掛かりだとか要らないカリスマ全開によるもので、天之河を慕う女子――本編で科白も一切合切存在せずに死んだ連中――の誹謗中傷や罵倒はこの際だからどうでも良かったのだが、コイツらの命を救うのが正直に云ってしまえば面倒臭くなったのである。

 

 その後、某・小悪党四人組が本編の通りに動いた結果として白崎香織に魔法が当たって八重樫 雫が助けようとしてやはり落ちそうになった際に、ハジメを掴んだから三人で奈落に落ちた。

 

 尚、ユートが干渉しなかったから畑山愛子先生はオルクス大迷宮に行かなかったりする。

 

 そしてライセン大峡谷でハウリア族を救った後に亜人族と戦争となり、結果として熊人族は壊滅寸前にまで追い込まれてしまった。

 

 オルクス大迷宮をクリアしなかった弊害から、そもそもユートの目的に七大迷宮の攻略も無かった為に、彼らを害しても別に問題が無かったというのが大きい。

 

 アルフレリック・ハイピストは荒ぶるユートを鎮めるべく、孫娘のアルテナ・ハイピストを差し出して赦しを請うより他になかった。

 

 他の長老衆も一族の若く綺麗処な美少女を差し出す事で何とか事無きを得る。

 

 暫くはフェアベルゲンで爛れた性活を送っていたユート、亜人族に関してはその間に掌握をしてフェアベルゲンそのものを乗っ取った。

 

 アルテナを女王に据えて正式にフェアベルゲン女王国を建国、当たり前だがハイリヒ王国もヘルシャー帝国も魔国ガーランドも認めなかった訳だけど、知った事かと云わんばかりに【フェアベルゲン女王国】として国境線を引く。

 

 アルテナはすっかり骨抜きにされていたし、ハウリア族も再びフェアベルゲンに所属する事になった上、問題だったシア・ハウリアもユートから側室扱いをされていた。

 

 まぁ、原典では基本的に残念ウサギだったりするのだがナイスバディな美少女に違いはない。

 

 奈落に落ちたハジメだが、二人も弱者が居ながらその自覚も無いとか困った事になってしまい、それで八重樫 雫が死に掛けてしまう。

 

 ギリギリで何とか神水の流れる場所に錬成により潜り込み、三人は生き永らえる事に成功はしたものの独りでなかった事から魔物を喰らうなんて真似も出来ず、G3の鎧と近代武器で何とか動く事が出来るという有り様。

 

 原典に比べると余りにも遅い。

 

 神水が有るから飢餓は感じても死んだりはしないだろうが、飢えから更に三人の速度は遅くなる一方であったと云う。

 

 そうしている内に脚は止まり、魔物に襲撃されない場所に身を隠すだけの日々が続いた。

 

 約一ヶ月後にユートが発見するまでの間にまるで冬眠するみたいに……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ヘルシャー帝国が攻めてきた。

 

 ハルツィナ樹海の大迷宮を調べたら入れないという事から、先ずライセン大迷宮を攻略しに行って何故か大迷宮の造り主たるミレディ・ライセンを連れて帰ってきたユート。

 

 物見からの報告にアルテナがそんなユートへとどうするべきかを訊ねる。

 

「取り敢えず潰す」

 

「取り敢えずで潰せるのですね……」

 

 毎晩の相手をしていたアルテナはすっかり参ってしまい、今や完全にユートの信望者と化してしまっていた。

 

 それは他の長老衆の孫や下の娘やシアも同様であり、ユートは彼女らを鍛え上げて一種の親衛隊みたいな感じに取り立てている。

 

 また、幾人かの有望な者は男女問わず引き立てていたから戦力も整っていた。

 

 【アルテナ親衛騎士隊】――実質的にユートの側室部隊と【フェアベルゲン騎士団】。

 

 騎士団長には熊人族の長老ジンが就任。

 

 初代騎士団長なので何の権威も無い者を就任させるのは問題だったからだ。

 

 数年したら交代で二代目が就任予定。

 

「では親衛隊を連れて行かれますか?」

 

「今回は一人で良い」

 

「え、ですが……」

 

 質は亜人族が上なのに亜人族の奴隷が増えている理由、それが質を凌駕する数の暴力という理不尽極まりないもの。

 

「確かに数の暴力は質を凌駕する」

 

 有名な武将だって数と武器の差には死を覚悟するしかなかっただろうし。

 

「だが、それは大したレベル差が無いからだよ。僕は君らが()()()()と呼ぶに相応しい力を持っているから……ねぇ」

 

「バケモノ……ですか……確かに熊人族の長老であり現在は騎士団長のジン様も貴方をバケモノと呼びましたが……」

 

 この世界では自分より強い相手はバケモノという事で通っていた。

 

 ユートは基本的にテンサイとバケモノという、言ったら何だか負けた気がする言葉は使わないのだけど、この世界では人間魔人亜人の別に拘わらずバケモノという科白を乱発する。

 

 正直、『バケモノだから仕方がない』とか『テンサイだから仕方がない』なんて、言っていて恥ずかしくないのかと思うくらいだった。

 

 斯く云うユートも前々世で一度だけ言ってしまった事があり、後から言われた()()の顔を視てから自分が恥ずかしくなったものである。

 

 ユートがフェアベルゲンからハルツィナ樹海を出てみれば、帝国兵は疎かヘルシャー帝国に於ける皇帝ガハルド・D・ヘルシャーや皇太子らしき男まで居り、更には何故か元クラスメイトである勇者(笑)連中までが居た。

 

 きっと正義感(笑)溢れる勇者(笑)君が、邪悪なる亜人族を誅罰に来たのであろう。

 

 お笑い草であった。

 

(……園部と遠藤、ハジメも居ないな。他には……あれ? 『始まりの四人』の白崎と八重樫も居ないみたいだが)

 

 ハジメは落ちたと最近になって諜報部隊として育成したハウリアから聞いている為、今回の件が終わったら助けに行く予定である。

 

(リリィも居るのは何でだ?)

 

 こっそり笑顔で小さく手を振ってきた。

 

 リリィ――リリアーナ・S・B・ハイリヒとは、実は肉体関係を持っているから敵対はしないであろうが、帝国や勇者(笑)が潰されるのを見学にでも来たのだろうか?

 

「ほう、亜人共だけかと思えば人間族も居たとは驚きだな」

 

 自分の有利を全く疑っていないのか悠々とした口調で話し掛けてくる皇帝ガハルド。

 

「ふん、まさか皇帝や皇太子が自ら足を運ぶとはそんなに帝国は人手不足なのか?」

 

「貴様、無礼な!」

 

 名前は覚えてないけど皇太子某が叫ぶ。

 

「貴様らが認めようが認めまいが既にフェアベルゲンは一つの国、その主が皇帝にタメ口を利くのはどこら辺が無礼なんだ? 寧ろまだ皇太子に過ぎない貴様が無礼だろうに」

 

「れ、歴史ある我が帝国と轡を並べた心算か!」

 

「歴史ある? 高が三〇〇年程度の浅い歴史を誇るのか?」

 

「き、貴様ぁぁぁっ!」

 

 ほとほと怒りっぽい輩である、カルシウムが足りていないのではなかろうか……と場違いにも程がある心配をしてみた。

 

「それに亜人族の国という意味ならハルツィナ樹海には、ハルツィナ共和国って国が存在していたし歴史云々は三〇〇年なんて目じゃないぞ」

 

 フェアベルゲン自体もそれなりに歴史があるのだし、少なくともヘルシャー帝国よりはマシ程度には歴史は長い筈。

 

「そんな事より何故、緒方がフェアベルゲンの主だとかの話になっている!?」

 

 勇者(笑)君が顰めっ面になり訊ねてきたが、この表情はきっとユートが偉い立場なのが相当に気に喰わないのであろう。

 

「フェアベルゲンの森人族長老アルフレリック・ハイピストの孫娘、アルテナ・ハイピストが女王をしている。僕はその配偶者だからな」

 

「なっ!?」

 

 追放に処し、『してやったり』な心算だったのがいつの間にか英達していたとか、勇者(笑)君は信じられないという表情だ。

 

「さて、無駄話は此処までにする。お前らは要するに『亜人が国とか生意気だから〆てやる』と、喧嘩(せんそう)を売りに来たんだな?」

 

「おう、その通りだ。我々、帝国が亜人共を奴隷として使ってやってんのに面倒な事をされた日にゃ困るからな。況してや、教会もテメェらの国興しを認めちゃいねーぜ?」

 

 奴隷という言葉に勇者(笑)が反応するものの、皇帝ガハルドは言いたい事を言い放つ。

 

「知った事じゃないな」

 

「な、なにぃ!?」

 

「そもそも、お前らは普段から亜人族を神の加護無き悪しき種族呼ばわりだろうが。今更、教会が干渉出来ると思うなよ」

 

「チィッ、ならテメェは……」

 

「異世界の人間がどうしてエヒトルジュエに対して配慮が要る?」

 

「エヒトルジュエだぁ?」

 

「ああ、お前らはエヒトルジュエの真名すら知らされてなかったんだったか。エヒトの本当の名はエヒトルジュエ、因みに魔人族を束ねるアルヴはエヒトルジュエの従属神アルヴヘイト。理解をしたかな? お前らの戦争はエヒトルジュエとアルヴヘイトによる茶番劇さ」

 

 当然ながら『莫迦な!』とか『異端者め!』などの罵詈雑言が飛び、信じる連中なんて基本的なは居なかったがどうでも良い。

 

 これは神代魔法の担い手にしてライセン大迷宮を造った当時の生き字引、【解放者】のリーダーであったミレディからの情報と現代で知り得ていた情報から組み立てたもの。

 

 エヒト様マンセーなこの世界の人間が理解するとは思っていなかった。

 

「ま、生き残れたら精々エヒトルジュエの駒として踊り続けるが良い。生き残れたら……な」

 

「勝てる心算か緒方!」

 

「此方の科白だ勇者(笑)君、お前ら如きがこの僕に敵うと思っているのか? 愚かで無知蒙昧に過ぎるな勇者(笑)も皇帝も」

 

 とはいえユートをよく識らない連中がユートに勝てると皮算用しても仕方がない。

 

「まさか!」

 

 永山重吾が口を開く。

 

「浩介がいつの間にか仲良くなったのか知らんが園部と話していて、何故かすぐに城を離れる様な任務――愛子先生の御仕事護衛隊――に就いたのは緒方と戦いたくなかったから?」

 

「成程、遠藤と園部なら確かに避けるわな」

 

 何しろ、二人には事前に話していたから。

 

(居ないのは逃げたからか。園部は僕が遠藤とは友人だと知っているもんな)

 

 彼女の両親が経営するレストランには一緒に行った事もある。

 

 見れば園部優花だけでなく友達の二人も見当たらないし、揃って愛子先生の護衛に就いたと考えれば良さそうである。

 

「では始めよう。戦争とも呼べない虐殺を」

 

 手にしたのは長細く小さなモニターが付いている玩具みたいな機器。

 

「あれは……ディースキャナ!?」

 

 誰かが言ったがユートからしたら顔も知らない誰かとしか思えない。

 

 ユートが選ぶのは【火】の力。

 

 轟っ! 全身に螺旋を描く焔が絡み付いていきまるで、火がバーコードみたいな形に球状にも視える形で左手に集まる。

 

 火のデジコードをディースキャナのスキャナ機能にてスキャン……

 

「エンシェントスピリットエボリューション!」

 

 それは本来、全てのスピリットを使い最強最後の武神に進化する為の文言だが、ユートは【火】のヒューマンスピリットと【火】のビーストスピリット……その全ての力を使うのに用いた。

 

 アニメなら進化の歌が流れる場面。

 

 【火】のヒューマンスピリットを使った場合はアグニモンに、【火】のビーストスピリットを使った場合はヴリトラモンに進化する。

 

 そしてダブルスピリットエボリューションにて【火】のヒューマンスピリットとビーストスピリットを同時に、その()()()()を用いた場合ならばアルダモンへと進化をするだろう。

 

 ならば一部とは云わず全てなら?

 

「ウオオオオオオオオオオッッ!」

 

 腕が脚が体が頭が……全ての【火】属性のスピリットにより鎧われていく。

 

 それは巨大な四つ脚の竜を見る者にイメージさせる威容を放つ存在。

 

「エンシェントグレイモン!」

 

 元々、同じ属性のヒューマンとビーストのスピリットとは古代デジタルワールドで初めて究極体に進化した一〇体のエンシェントデジモン達が、後世の為にと自らの力を二分して隠し遺した物であったと云う。

 

 ならば同属性全てのスピリットを余す事無く使ったなら、エンシェントデジモンに究極進化する事も可能という事だろうか?

 

 まぁ、このスピリットはユートが手に入れていた神器の【魔獣創造】を禁手化させた【至高と究極の聖魔獣】で創造したエンシェントグレイモンから造った物だが……

 

 エンシェントグレイモンの威容に勇者(笑)達も皇帝ガハルドも目を見開き、皇太子などは失禁をしながら尻餅を突いていたくらい無様を晒す。

 

「嘘……だろ? エンシェントグレイモンだと? 本物ならマジにヤベェ!」

 

 言ったのはどうやら永山パーティの男らしいが最早、エンシェントグレイモンに進化をしているユートには関係は無い。

 

「死ね、偽神の玩具共……オメガバースト!」

 

 

 

【Digimon Analyzer】

エンシェントグレイモン

属性:ワクチン種

世代:究極体

種族:古代竜型

古代のデジタルワールドを救った十闘士の一体であり、初めての究極体でありながら並の究極体を凌駕する程の力を持つ【火】の闘士。エンシェントガルルモンと共に最後まで生き残りルーチェモンを封印したとされる。必殺技は大地の気を集め竜巻にして全ての敵を巻き込み吹き飛ばすであろう【ガイアトルネード】と、強烈なる閃光と共に周囲数キロに亘って超爆発を引き起こす【オメガバースト】だ!

 

 

 

 オメガバーストにより近場に居た勇者(笑)共や皇帝共は兎も角、万の帝国兵は全てが消し飛ばされて肉片すらも遺さなかった。

 

 爆発から覚めた勇者(笑)や皇帝は刻が停まった

かの如く、背後に存在した何かが消滅してしまった空間を見つめている。

 

 何も無い。

 

 オメガバーストにより抉れた大地以外は何もかも根刮ぎ消え去っていた。

 

「お、緒方ぁぁぁぁぁあああああっ!」

 

 怒り狂った勇者(笑)が聖剣を抜いて斬り掛かって来たが……

 

 バキン!

 

「っ!?」

 

 エンシェントグレイモンの装甲に負けて折れ、半身となる折れた刃が後ろ側にクルクルと回転をしながら飛んでカランと落ちた。

 

『無意味だな』

 

 ユートは一言だけ呟く。

 

「何故だ、何故殺したんだ!」

 

「戦争だからだ。お前達から仕掛けた戦争で殺されて何が不満だ? 自分達は殺しても良いが敵は許されないってか? 正に屑勇者(笑)に相応しい自己解釈だな」

 

「違う!」

 

「ああ、奴隷狩りの心算だったな。帝国と一緒に居たんだから殺すより捕まえて女を犯したかったのか……屑勇者(笑)君」

 

「ち、違う!」

 

「じゃあ、お前は何をしに来た?」

 

「亜人族の説得に……」

 

「武力を見せびらかして奴隷に成れと?」

 

「違う!」

 

「違わんよ。少なくともガハルド率いる帝国兵はその心算しか無かっただろうしな」

 

「ち……」

 

「最早、無意味だ。僕に敵対して無事にいられるとは思うなよ」

 

「なっ!?」

 

 エンシェントグレイモンの背後に人に近いが明らかに人ではない巨体。

 

「アルファモン」

 

「オメガモン」

 

「マグナモン」

 

「ロードナイトモン」

 

「ガンクゥモン」

 

「デュークモン」

 

「スレイプモン」

 

『エグザモン』

 

「デュナスモン」

 

「アルフォースブイドラモン」

 

「ドゥフトモン」

 

「クレニアムモン」

 

「ジエスモン」

 

『『『『『『我らロイヤルナイツ!』』』』』』

 

 唱和された彼らの所属名。

 

 中には明らかに人より寧ろ獣に近い姿だったり人間の大人くらいだったり、或いは莫迦みたいな巨大な竜みたいだったり様々。

 

 嘗て、【ハイスクールD×D】世界にて手にした【至高と究極の聖魔獣】で最初に創造した聖魔獣こそが一三体のロイヤルナイツ。

 

「ロイヤルナイツよ、主として命じる」

 

「何なりと」

 

 デュークモンが応える。

 

「ヘルシャー帝国を亡ぼせ」

 

「……御意」

 

 飛び上がるロイヤルナイツ。

 

 デュークモンとしては頷き難い命令だったのだろうがそれでも主の命に従う、それは命令さえ熟すならやり方を選べるからでもある。

 

「莫迦な……我が帝国を……」

 

 先程のユート――エンシェントグレイモンと似た威容、即ちハッタリの類いではない事に気が付いたガハルドが膝を付く。

 

 空を飛ばれては間に合わないし、縦しんば間に合っても何も出来やしない事は明白。

 

 その日、ヘルシャー帝国は滅亡した。

 

 

 

.

 

 




 色々と足りない文章ですが連載じゃないからこんなもんだと思います。

 エンシェントグレイモンに成るのは書いた噺の中では【ゲート】以来かも……


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

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