ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 好感度を数値で書いている部分がありますが、ぶっちゃけ数値は気にする必要無しです。

 可愛い女の子が若干高めなだけで基本的に初顔合わせではフラットなので。





第61話:英雄

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 ユートにはアンカジ公国を救う為の手管が確かに存在しそれを使えばビィズが態々、ハイリヒの王都だか近隣の町だかに行く必要性は無い。

 

「何と言えば良いか、まさか馬が曳かない金属の馬車……否、馬が曳かないからには()車とは呼べぬから……ふむ?」

 

「馬の字を取って車だな」

 

「成程、その車とはまるで我が邸の如く住めるというものなのか?」

 

「勿論、普通は違う。僕は内部空間を大きく歪めて拡大し広さを確保したんだ。住み心地は其処らの宿屋を越えるのは確かだね」

 

 客室用の大部屋に未だ寝かされたビィズの呟きにユートが答える。

 

「まだ動くには宜しくない身体状況だ。ベッドは魔法の掛かった空飛ぶベッド。それで移動をして貰うけど問題は無いな?」

 

「あ、ああ。然し空飛ぶベッドとは、アーテァファクトなのかね? これは」

 

「まぁね……とはいえ、そんなに高く飛べる訳じゃないしスピードも出ない」

 

「寧ろスピードが出たら怖いのだが?」

 

「ま、それはそうだな」

 

 アンカジ公国の公都とでも呼べる町。

 

「フューレンすら越える乳白色の壁か。外の赤銅色とのコントラストが映えるな」

 

「気に入って貰えて何よりだ」

 

「成程、某かのアーテァファクトで造られている光の柱がドームを形成して余計な風や砂から町を守る仕組み……だな」

 

「その通り。お陰で我が国の町が砂に埋もれたりする心配は無い」

 

 ちょっとした自慢なのだろうが、空飛ぶベッドに寝た状態でらいまいち締まらない。

 

 光り輝く巨大な門からアンカジへと入都をするユート達、砂の侵入を防ぐ目的から門まで魔法によるバリア方式になっている。

 

 驚かせない為にキャンピングバスからは降りて門まで来たが、やはり公子が何故か空飛ぶベッドに寝かされているのには驚いていた。

 

 とはいえ、本人が気にしない様に言うからには門番が異を唱えるのは有り得ず通す。

 

 入ってみた公都はアンカジの状況が強く影響をしているらしくて雰囲気は暗く覇気も無い。

 

 まぁ、だからといって空飛ぶベッドに寝かされた次期領主に気がついた時には、直立不動となって兵士達も覇気を取り戻していた。

 

 アンカジの入場門が高台に有るのは、此処を訪れた者がアンカジの美しさを最初に一望出来る様にという、この地の人間の心遣いらしい。

 

 現状がアレではあるのだが場違いにもユートは美しい都だと思った。

 

 東側に太陽光を反射し煌めく広大なオアシスが在り、その周辺に多くの木々が生えていてい砂漠とは思えないくらい緑が豊か。

 

 オアシスの水が町中に幾つか支流となって流れ込み、此処は砂漠のど真ん中にも拘わらず小船が幾つも停泊をしていた。

 

 そして公都の至る所に緑の豊かな広場が設置されており、只でさえ広大となる土地を伸び伸びと利用をしているのが見て取れる。

 

「北側は農業地帯なんだな。確かアンカジ公国は果物の産出量が豊富だったっけか」

 

「ああ、多種多様な果物を育てているぞ」

 

「ふむ、お土産に買って行くのも良いかな」

 

「ならば今回の件を解決してくれたら贈らせてもらおう」

 

 随分と太っ腹というか、恐らく何らかの対価をと考えていた処に降って沸いた会話だったから、それにビィズが乗っかったのであろうが……

 

「なら、楽しみにしているよ」

 

「勿論だとも」

 

 ビィズからすれば特産品をお土産に贈る事により対価と出来るなら万々歳。

 

「西側の一際大きな白亜の宮殿、荘厳さと規模からしてビィズや領主が住む場所か?」

 

「その通り」

 

 ビィズは頷いた。

 

 中々に性格は良いらしいビィズの評価を一段階上げたユート、その評価は勇者(笑)な天之河光輝を-一〇〇〇〇としたら一〇〇くらいだろう。

 

 尚、基本的な数値は一〇だと告げておくし、【閃姫】の数値は一〇〇〇〇と()()()MAXを越えていたりする。

 

 本来のMAXは-も+も一〇〇〇だ。

 

 まぁ、とはいってみても明確な数値化を実際にしている訳ではない。

 

 天之河光輝がドン底だから-一〇〇〇〇であると判るし、出会ったばかりの人間は賊でもない限りは一〇に固定されているだけ。

 

 尚、可愛い女の子なら二〇である。

 

 本当に因みにだが、【始まりの四人】とレッテルが貼られていた頃の香織と雫は精々がニか三でしかなかった。

 

 愛子先生はその時点で一五〇は往ったが……

 

 そしてその頃の天之河光輝は-一〇〇〇であるというと、ユートがどれだけ彼を毛嫌いしているかが理解出来るというもの。

 

 あの破滅した青い正義君みたいで胸糞悪い。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 軽く観てはいたが早くユートを連れて行きたいビィズは……

 

「出来たらユート殿達にも活気に満ちた我が国を御見せしたかったが、今は時間がない故に公都の案内は全てが解決した後にでも私が自らさせて頂きたい。一先ずは父上の所へ」

 

 促す様に言った。

 

 ビィズの言葉に頷いた一行は今回の疫災の正に原因たるオアシスを背にして進む。

 

 宮殿内の領主用執務室に入る一行。

 

「父上!」

 

「なっ!? ビ、ビィズ! お前いったいどうしっ……いや、ちょっと待て……そのベッドはいったい何だ!? どうして空を浮かぶベッドに寝ているんだ?」

 

 云ってみれば顔パスかビィズを伴い宮殿に入ったユート達はその侭、領主たるランズィ公の執務室へと通された。

 

 ランズィ公も衰弱が激しいと云われていたが、治癒魔法と回復薬を相当に用いて努力と根性にて執務に取り掛かっていた様である。

 

 そんなランズィ公だったけど先日に救援要請を出しに王都へ向かわせたビィズが帰ってきた事に驚き、更には息子が空を浮遊するベッドに寝かされている様相を見て、執務室に来るまで宮殿内で働くメイドや執事や警備兵などが見せたのと同じ様に目を剥いてしまっていた。

 

「実は私も感染していたらしく……」

 

「な、何だとぉぉっ!?」

 

 先日は元気だったと思い、それで支援要請の為のメッセンジャーを任せたのだというのにまさかの感染宣言。

 

 ランズィ公としては驚愕しかあるまい。

 

「公子は砂蚯蚓に襲われていてね」

 

「なっ! よ、よく無事で……」

 

「病が不幸中の幸いだった。奴らもこの病持ちは喰いたくなかったらしいね」

 

「な、成程」

 

 病持ちを喰えばその病が移る可能性が高いのを本能的に気付き、砂蚯蚓はビィズを喰らうのを躊躇っていたという訳だ。

 

「さて、ビィズ公子が帰ってきたのは病の所為も勿論あるんだが……実は僕には今回の病を何とか出来る当てが有ってね」

 

「なにぃ!? それは誠かね?」

 

「勿論、天地神明に懸けて偽りは無い。公爵閣下に偽りを企む心算は無いからね」

 

「む、むぅ……」

 

 それが本当なら領主としては朗報だろうが、果たして出会ったばかりの人間を信用が出来るかと云えば難しい。

 

「病をどうやって癒すのだね?」

 

「普段は静因石を砕いた粉を服用しているとか聞くけど」

 

「事実だな。我々が罹患した病は魔力の過剰な活性化にあるのだが、静因石には魔力の活性を鎮める効力があるからな」

 

 正しく病と薬の関係を知っている。

 

「静因石を欠片で構わないからくれないかな? 僕なら複製が出来る」

 

「複製?」

 

「そう、神代魔法の生成魔法の一環でね」

 

「神代魔法だと!」

 

「嘗ての担い手が次代に遺した継承の魔法陣を見付けてね、僕は生成魔法という神代魔法を行使する事が出来るのさ」

 

「な、何という……良かろう」

 

 ランズィ公は静因石を持って来させるとそれをユートに手渡した。

 

「これが静因石……【神秘の瞳(ミスティック・アイ)】でこれを視れば」

 

 嘗て、最初の転生時に日乃森なのは――【純白の天魔王】から与えられた転生特典(ギフト)は基本的に二つ、『魔法に対する親和性』と『魔力などの流れを視る眼』である。

 

 内、『魔法に対する親和性』は応用性が非常に高くて魔法だけでなく小宇宙の支流となるエネルギー全てが扱い易くなり、魔法を覚える早さも凄まじいまでに、異世界の魔法や魔術や錬金術などにも造詣が深くなったし、知識を基に新たに開発をする事も可能、魔法の道具を造る事にも長けるし精霊との親和性もあるから精霊王や精霊神などともアクセスしてしまえた。

 

 そして『魔力などの流れを視る眼』というのも()()何てファジーに過ぎる上、【ゼロの使い魔】系魔法たる【探知】を寝る時以外に使い続けていたら眼に宿り、【叡智の瞳(ウィズダム・アイ)】へと進化をしてしまう。

 

 魔眼は基本的に視て効果を発するモノだが、取り分けユートのこれは視る事に特化されていた。

 

 そして【カンピオーネ!】の世界にてアテナの母という神話を持つメティス、メドゥサと語源を同じくするメドゥサ、メティス、アテナは謂わば三位一体(トリニティ)を成す女神。

 

 そんなメティスが顕現したので討ち斃して性的にも食肉的にも喰らい、その神氣を奪い尽くした際に権能という形で【錬成】が【創成】に進化、【叡智の瞳】が【神秘の瞳】に進化をした。

 

 常時展開型権能であり、その気になれば世界すら見通してしまう機能を備えている。

 

 なればこそ、静因石を【神秘の瞳】により視て

効果や原子配列などを識る事も可能なのであり、そして理解さえすれば【創成】により創る事が出来てしまうのだ。

 

「情報の取得一〇〇%」

 

 この一〇倍%で云うと敗けフラグっぽい。

 

 最初は普通に勝てるけど最終的に無様を晒すというか、何と無くだが天之河っぽくって厭だったから絶対に言いたくは無い。

 

【創成】開始(クリエイト・スタート)

 

 初めての構築だから時間が掛かってはいるが、

それでも汎暗黒物質が再構築されて原子配列が成されていき、少しずつにでも形が形成されていくのが目に見えて判る。

 

「お、おおっ!?」

 

 ランズィ公が目を見開く程にガン見してしまうくらいは凄い光景。

 

 物質化が完了した時、その場には大きく純度の高い静因石がドシン! と置かれていた。

 

「まさか本当に……」

 

「何という純度に大きさだ!」

 

 ランズィ公も大臣らしきオッサンも驚愕に満ち溢れた表情をしている。

 

「さて、次だ」

 

「次とは?」

 

「普通に砕いて粉にして飲むだけ、それだとすぐに治る訳じゃない筈」

 

 ランズィ公の質問に返しながらもミレディの方へと顔を向けた。

 

「ん~、そだね。一発で治ったりはしないな」

 

 ミレディの言葉にハッとなる。

 

「た、確かに症状は緩和されるが完治には多少の時間が掛かるし、静因石も必要となるな」

 

 即治るならもっと簡単に治療をされている筈だから、やはり何度かに分けて飲む必要があるみたいだとミレディの答えは想定通り。

 

「ランズィ公、ちょっとこの部屋に色々と出すけど構わないかな?」

 

「む? ああ、構わない」

 

 ユートはその科白に頷くと大きな釜と長い棒を取り出し、更には釜を煮る為の火の代わりとなるであろう魔導コンロに幾つかの薬品。

 

 魔導コンロに火を入れて釜をセットアップすると薬品を流し込み、更にその薬品を火で煮ながら長い棒によりグールグルと掻き混ぜていく。

 

「アトリエ系の錬金術?」

 

 香織にはそれが何か理解したらしい。

 

「そう、僕はソフィーの家の屋根をぶち抜いて入り込んでしまってね。ベッドに寝ていた彼女を押し倒す形で出逢ったんだ」

 

「ソフィーのアトリエ……ね」

 

「やっぱりか」

 

「やっぱりって?」

 

 雫の言葉に納得するユート。

 

「実は僕が識っているのは【アーランドの錬金術士】まででね、アーランドにも行ったけど最初に行ったのがキルヘン・ベルだった」

 

 キルヘン・ベルはソフィーが暮らす街。

 

「ソフィーと一緒にプラフタから錬金術を習っていたんだ。因みに宿泊費代わりに護衛と採取の手伝いもしていた」

 

 ユートは不思議シリーズ→黄昏シリーズ→アーランド→ザールブルグ→グラムナートという順番で関わっている。

 

「アーランドまでしか識らないとはいえ、出逢ったソフィーとプラフタもゲームのアトリエが原典になる筈。そして僕は基本的に主人公の傍に出易いみたいでね、だからソフィーが主人公だろうなとは当たりを付けていたんだ」

 

「そういう事か」

 

 雫は納得した。

 

「やっぱりフィリスとリディー&スールも次回作や次々回作の主人公だったのか?」

 

「ああ、ソフィーやプラフタと出逢ったんなら逢っているわよねぇ」

 

 【フィリスのアトリエ~不思議な旅の錬金術士】と【リディー&スールのアトリエ~不思議な絵画の錬金術士】……【ソフィーのアトリエ~不思議な本の錬金術士】も含めて不思議シリーズ三部作となっている。

 

 ユートは中身の薬品がすっかりと馴染んだのを確認したら、大釜の中には静因石と回復薬であるスタミナポーションとマナポーション、それに加えて中和剤を放り込んだ。

 

 そしてグールグル、グールグル。

 

「錬金術は素材を理解し分解して効力を抽出してからそれらを合成し再構成させる技術。端目には単純にグールグルと掻き回しているだけに見えるんだけどな」

 

「確かにね」

 

「だけど実際には()()というのはエネルギーの増幅や円環を意味し、決して無意味に掻き回しているって訳じゃないんだ」

 

「回転……」

 

「螺旋のカドケウスと円環のウロボロスと言ったら理解して貰えるかな?」

 

 カドケウス、若しくはケリュケイオンとも云うそれは二匹の蛇が螺旋を描く様に翼持つ杖に絡まる様相を云い、ウロボロスは自らの尾を食む蛇として描かれている。

 

 共通しているのはどちらも蛇として描かれている事と、いずれも錬金術と関わりを持つという事であろうか。

 

 ユートは象徴としてカドケウスに増幅、ウロボロスには循環の意味を持たせていた。

 

 そういう概念をイメージしているからか定かではないが、ユートの錬金術は師匠たるプラフタをして『素晴らしい』と言い放つ程に高い技術で、一時期はソフィーに妬心を懐かれたくらい。

 

 まぁ、解り易くイメージを伝えたらソフィーも腕前が上がったから収まったけど。

 

「完成だ」

 

 暫くの時間をグールグールとやっていたら遂に薬が完成に至るものの……

 

『『『ちょっと待てぇぇっ!』』』

 

 然しながら今この場に於いて、皆の思いは一つになって釈然としない気持ちを吐き出す。

 

「どうした、皆して」

 

 ユートは()()()()()静因石の薬を一つ手に取りながら首を傾げた。

 

「何で()()()()()()が大釜から出るのよ!?」

 

 至極真っ当な意見を叫ぶ雫。

 

「そうは言われてもな。ゲームでも普通にこうして出てくるだろ? 僕もゲームでプレイしていた時は数を熟した時にどうやって容器を準備しているのかと思ったけど、まさか容器に入った状態で完成するとはね」

 

「んな、莫迦な……」

 

 そう、莫迦な……なのだよ。

 

 何処ぞのリッチーみたいに言いたくなるくらいにおかしな現象、こんな事が起きるのは当然ながら【創成】により創造力を以て創造するユートくらいである。

 

 ソフィー、フィリス、リディー&スール、アーシャ、エスカとロジー、シャリステラとシャルロッテ、ロロライナ、トトゥーリア、メルルリンス、エルメルリア、リリー、マルローネ、エルフィール、ユーディット、ヴィオラート、ネルケ、ライザリン……ユートに関わった主人公達が声を大にして叫ぶ筈だ。

 

 まぁ、約一名ばかり錬金術士ではない主人公も居たりするけど。

 

 アーランドの錬金術士までしか知識が無いという割に、不思議シリーズや黄昏シリーズにまでもドップリと関わっていた。

 

 因みにに全員が喰われている。

 

「兎に角、薬は完成したんだ。ランズィ公は民に薬を与える様にな」

 

「了解したが……対価は如何程かね?」

 

 随分と話が解る領主である。

 

「いずれは神やその使徒と敵対するかも知れないからね、その際に敵対しないでくれたら嬉しいとだけ言っておくよ」

 

「神と!?」

 

「此方から敵対はしないが、向こうが敵視をしたらどうにもならん」

 

「む、むぅ……」

 

 神への敵対――やはり悩ましいのかランズィ公は頭を抱えていたが、人間とは現金なものであるから現世利益を与えないエヒトと危機を救ってくれたユート、果たしてどちらに付くべきかは遂先頃に薬を飲んで元気になった妻と息子と娘を見てしまっては心を決めるしかあるまい。

 

 尚、神の使徒とは元クラスメイトを指している訳では決して無く、判で捺した様な同じ顔立ちに数字を名前にする無表情がデフォなワルキューレっぽい連中の事。

 

 ユートが斃して犯して封印したリューンは謂わばデキ損ない、能力が半分程度しか無く感情的に過ぎるという事らしい。

 

「にしても、瓶に詰められた状態で出てきたのは一万歩譲って良しとしても……」

 

「良しとする気無しじゃないか」

 

「良しとするにしても、数が凄まじいわね」

 

 雫が言う通り、僅か数時間でこの公国の民達の全員に回せる程に【魔力過剰活性化特効薬】なる新薬が完成した。

 

「魔力を螺旋に編む事で直線より多く組み込めるのと、それを円環させる事でロスをより少なくするという仕組みだ。それにより僕は従来の錬金術士よりもずっと短い時間でより多くのアイテムを造れるんだよ」

 

 驚きの新事実に文字通り驚愕する一堂。

 

 それはつまり、マルローネが一ヶ月間を殆んど休まずに錬金するであろう【賢者の石】をもっと短い期間で製作可能という事。

 

「け、賢者の石ならどのくらいの期間で?」

 

 だから雫は訊いてみた。

 

「数日だな」

 

「ウソ……でしょ?」

 

「嘘なもんか。実際に数日で造ったぞ」

 

 成程、それならもっと期間の短いアイテムならば数時間で数を造れる訳だ。

 

「ランズィ公」

 

「む、何かね?」

 

「オアシスの水は有るか?」

 

「有るには有るが飲めないぞ」

 

 水差しに入った水をコップに移して渡しながらランズィ公は言う。

 

 渡されたユートはコップを……

 

「ゴクン」

 

 煽って水を飲む。

 

『『『『あ゛ぁぁぁぁぁぁああっ!?』』』』

 

 選りにも選って水を飲んだユートに、全員が目の玉を飛び出す勢いで叫んだ。

 

「やっぱり毒の方だな」

 

「だ、大丈夫なの? ゆう君」

 

 香織が心配そうに訊いてきたし、他の皆もハラハラした表情で見つめてきている。

 

「大丈夫。僕には毒も呪いも効かないから」

 

「毒も……呪い……も?」

 

「そ、呪いも。僕は精霊神――風の聖痕で云う処の精霊王――と契約した総契約者(フル・コントラクター)だからね。水の精霊の力で常に毒素は打ち消されているんだよ。それに呪いにしても強壮たる【C】の神氣を喰らっても正気を保てるって時点で効いていない。それ処か無害なエネルギーに変換して取り込んでしまえるな」

 

 その余りな内容に驚く雫と香織ではあるけど、残念ながらトータス組には意味不明。

 

 ユートは【機神咆哮デモンベイン】の世界へと跳ばされ、関わって更には何故か【黒の王】とその魔導書たる【ナコト写本】の精霊たるエセルドレーダに気に入られ、交流すら持ったユートではあるものの最終決戦は元の世界に帰るチャンスとなる【一にして全、全にして一】たる【Y】招喚に居合わせなければならないから【夢幻神母】を媒介に招喚された【C】へと突入、その際に捕らえられて犯され神氣を送り込まれてしまう。

 

 然しユートは正気を失ってSAN値直葬されてしまう処か、神氣を逆に喰らい尽くす勢いで逆襲をしてやったくらいだ。

 

 本来なら容量をあっという間に越えて破裂してもおかしくないが、ユートは余裕綽々で呑み込んでしまっていたのである。

 

 まぁ、まだ普通の人間の域だったから魂を少しばかり穢されてしまい、副作用から【性欲の無制限な増大】と【精子と精液の無限リロード】と【分身の肥大化】と【僅かな好意に反応する催淫ホルモン】なんて、どう考えてもエロティカルにしかならない能力が足されていたりした。

 

 DTだった時は太股に先が擦れて射精していたのと比べて大進化である。

 

 今では某・超絶美形主人公やニトロ砲にも後れは取らないであろう。

 

 自前で【快楽増大】も出来るし。

 

「オアシスの水を取り込んだ結果、これは毒素による汚染だと判明したんだ」

 

「ああ、そういう事ね」

 

 雫も納得してくれた。

 

 ユートは何事か思考に耽りランズィ公の方へと視線を向ける。

 

「オアシスに病を発症させる毒素を出す魔物が居る筈だ。恐らく、ウルの町やオルクス大迷宮の時みたいな魔人族による陰謀」

 

「何でそう思うのよ?」

 

「どれも魔物による計画だからだ」

 

 ウルの町では清水利幸に魔物を貸与。

 

 ホルアドの町ではカトレアという魔人族の女が自ら魔物を率いていた。

 

 そしてこのアンカジ公国ではオアシスの汚染に魔物を使ったらしい。

 

「魔人族はミレディの嘗ての仲間、ヴァンドゥル・シュネーが遺した大迷宮である氷雪洞窟で神代魔法の変成魔法を入手、それは『有機物に干渉をする魔法』らしいからね。恐らくだがその魔物は特性を強化されているんだろう」

 

「うん、かも知れない。ヴァン君の魔法を使い熟しているなら充分に可能だろうね」

 

 ミレディが首肯し肯定する。

 

 案内は不要なくらい判り易い場所にオアシスは在るのだが、何しろ現在は民が思い余って飲まない様に兵士を置いていたから領主が居た方が話はスムーズに進む筈。

 

 思った通りにいって満足気なユート。

 

 特効薬の効果で元気一杯なランズィ公は足取りも軽くオアシスに案内してくれたし、巡回中だった兵士も領主様が居たとあってはユートを通さない訳にもいかないのだから。

 

 相も変わらずオアシスは光を反射して美しく輝いており、これが毒素を含んでいるとはとてもではないが見えない。

 

「だけど僕には視えている。【神秘の瞳】を舐めて貰っちゃ困るね」

 

 ユートの【神秘の瞳】なら魔力の流れも生命力の流れも視ようとすれば視えるし、その気になったら水底に蠢くナニかだって視えるのである。

 

 透視も可能だからだが、ユートはこれを余り使おうとはしない。

 

 理由はオン/オフは可能だけど一度オンにしてしまうと、オフにするまで透視は続いてしまって視たくも無いモノ(男のハダカ)が視えてしまうからだ。

 

「ランズィ公、調査をしたチームはオアシスをどの程度調べた?」

 

「確か資料ではオアシスとそこから流れる川と、井戸の水質調査と地下水脈の調査。地下水脈は特に異常は見付からなかったと聞く。とはいえ調べられたのはこのオアシスから数十メートルが限度だからな、底にまでは手が回っていないのだ」

 

「だろうね。だけどオアシスの底に魔物が居るみたいだ」

 

「まさか、本当に!? オアシスの警備と管理に【真意の裁断】というアーティファクトが使われているが、地上に設置した結界系でオアシス全体を汚染されるなど有り得ん事だ」

 

「【真意の裁断】ってのはアンカジを守る光のドームだな? 砂の進入を阻んでいる」

 

「そうだ。しかも空気や水分などの必要な物なら普通に通す作用がある便利な障壁なのだ。そして何を通すかは設定者側、つまり私達で決める事が出来る。あれには探知機能もあって何を探知するかの設定も出来るのだよ。その探知の設定は汎用性があって、闇系の魔法が組み込まれている為に精神作用すらも探知可能だ」

 

 要するに『オアシスに対して悪意のあるモノ』と設定すれば、【真意の裁断】が反応をして設定をしたランズィ公に伝わるのだと云う。

 

「だけど魔物は確かに存在する。恐らくアーティファクトを誤魔化す事が出来たんだろう」

 

「な、何と!?」

 

「先ず魔物を追い立てる」

 

 驚くランズィ公を敢えてスルーしてユートは魔力と闘氣を融合、陰陽合一法とも呼ばれる技術ではあるが【魔法先生ネギま!】を識るならきっと咸卦法と呼んでくれる。

 

 魔物の特性が判らない現状で魔力だけを流すのはリスクが高い、咸卦法は支流同士のエネルギーを一時的に一つ戻したモノで吸収や反射がされ難いのを期待していた。

 

 ドカンッ! けたたましい轟音を響かせながら爆発が起きてスライムっぽい魔物がオアシスから投げ出される。

 

「バ、バチュラム……か? だがデカイ!」

 

 驚きのランズィ公。

 

「本来のバチュラムは一mか其処らの筈!」

 

 成程、あれなら一〇mはありそうだ。

 

「ふむ、折角だから見せようか」

 

 一〇m程度では()()()けど問題無い、此方も大きさは自由自在に変えられるし。

 

「あれは!」

 

「エボルトラスター!?」

 

 ユートが手にした機器を見た香織と雫が驚愕に目を見開く。

 

「絆……ネクサス!」

 

 鞘から剣を抜くみたいにエボルトラスターを引き抜くと、孤門一輝の如く呟きつつ光を放つそれを天高く掲げた。

 

 銀色の巨人が顕現、ウルトラマンネクサス・アンファンスがバチュラムの前に出る。

 

「へ、変身した?」

 

 ビィズが驚愕していた。

 

 ネクサスとしては一番の弱いフォームであり、まともに戦って敵を斃した事が無い。

 

 とはいえ、バチュラムは特殊能力特化型らしいからこの姿でも充分だろう。

 

 というより所詮はスライムだからか動きが蠢く形だからか、若しくは水中から引き摺りだされたからか? 速度は余りにも緩慢で遅い。

 

『デュアッ!』

 

 抜刀を思わせるポーズから広げた両掌の間にはエネルギーがチャージ……

 

『ダァァァアアッ!』

 

 初代ウルトラマンのスペシウム光線を思わせる右腕を曲げて縦に、左腕を右腕の前で水平にして

十字を組んだ状態でチャージされた光エネルギーを放射する。

 

 ウルトラマンネクサス・アンファンスの必殺となるクロスレイ・シュトロームだ。

 

 呆気なく消滅するオアシスのバチュラム。

 

 クロスレイ・シュトロームのポーズを解除して残心を忘れず、もう魔物は居ないと【神秘の瞳】で判断したネクサス――ユートは天を見上げる。

 

『ジュワッ!』

 

 そして両腕を伸ばして翔んだ。

 

「様式美に拘ったわね」

 

「だけど其処がゆう君の可愛い所だよ」

 

「……」

 

 香織はすっかりユートに参ってしまっているのか頬を赤らめて言うのを見て、雫も変われば変わるが根本的には深みに嵌まった親友の明日を憂いつつも……

 

「そうね」

 

 自分自身が嵌まっているのに苦笑した。

 

「あれがウルトラマンですかぁ」

 

「……ん、綺麗だった」

 

「いやぁ、仮面ライダーも良いけどウルトラマンも中々に良かったよ」

 

「主殿……素晴らしい」

 

「パパ、かっこいい!」

 

 トータス組にも概ね好評だが、やはり好意を持つ相手というフィルターは有るのだろう。

 

「……処でユートは翔んで行ったけど何処に?」

 

 ユエは疑問を口にしつつコテンと首を横に。

 

「此処に居るぞ」

 

「あら、早かったわね」

 

「正体バレしてなきゃ、『おーい、おーい!』とか叫びながら手を振って駆けて来るのもアリなんだろうけどな」

 

「初めから正体バレしてそれは白けるわね」

 

 昭和の佳き時代のウルトラマンでは正体バレをしてないし、戦闘機が墜ちた際に変身する事などもあるから『○○はどうした?』とか話題に挙がると……『おーい、おーい!』と叫びながら手を振って駆けて来る御約束もある。

 

「ユートパパ~」

 

 抱き付いて来るミュウを受け止めて抱き上げると頭を撫でてやった。

 

 スリスリと胸に頬擦りをする姿は可愛らしくて微笑ましい光景だが、ミュウも女である点は変わらないからかちょっと複雑だし、ミュウを大人化させたお姉さんが母親と考えると余り仲良くさせるのは、未亡人らしいミュウの母親まで寄り添いそうだと雫も香織も……否、全員が一致した想いなのは間違いない。

 

「さて、それじゃあオアシスの浄化もするか」

 

「オアシスの浄化……そんな事まで君には可能だと云うのか?」

 

「ランズィ公、僕は出来ない事を出来ると法螺を吹く心算は無いよ」

 

「う、うむ。では頼めるかね?」

 

「勿論だ」

 

 ミュウを降ろしたユートは先ず汚染されているオアシスに手を浸す。

 

「やはりこの世界の精霊にはアクセスがし難いんだよな。水の精霊神……その存在に於いて代行者たる我が呼び声に呼び掛けに応えよ、トータスの水の精霊達よ」

 

 言ってみれば世界とは国であり精霊神とは即ち国王や皇帝を意味し、精霊王は上級貴族の中でも大公や公爵の位置に存在して、精霊主は貴族という形になり、意思は在るが意志を持たない小精霊を平民という括りにすれば解り易い。

 

 ユートは日本で云えば関白とかその辺りか若しくは征夷大将軍、謂わば精霊神の地上代行者と呼んでも差し支えは無かった。

 

 どちらかと云えば北欧はアスガルドに於いてのオーディンとヒルダみたいな関係か?

 

 兎に角、小精霊は精霊神の地上代行者と云えるユートに対して力を貸す義務が生じる。

 

 精霊主とは殆んど同格の扱いだったりするが、実際にはユートの方が格上だ。

 

 とはいえ、当然ながら精霊主からすれば新参なユートだから彼らにある程度は配慮をする。

 

 元より精霊術師は小精霊に力を借りたなら必ず礼を以て接するものだし、幾らユートが格上でもそこら辺の行動は変わらない。

 

「アクセス完了、オアシスの水を浄化!」

 

 ユートは水の精霊主ラクスを通じて精霊神との契約を行ってから、毒素を自動的に浄化してしまう体質となっていた。

 

 浄化は水の精霊の領分であるが故に。

 

 だから、ユートが恣意的に浄化の力を使ったならオアシスを汚染する毒素も分解と浄化が成されて無害化、普通の水へと戻してしまう事が可能であったのだと云う。

 

 オアシスが光を放ったかと思えばユートが立ち上がり、ランズィ公とビィズの方を向いて浄化が終わった事を伝えると、二人は涙を流しながらもユートの手を取り礼を言うのであった。

 

 

.

 

 

 

 




 タイトルはウルトラマンネクサスのOPから、クロスレイ・シュトロームで消滅する雑魚が相手でしたけど。

勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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