ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

64 / 129
 漸くグリューエン大火山に突入案件。

 取り敢えずは書けたから投稿します。





第62話:吹雪が大活躍する大火山

.

 アンカジ公国のオアシスを浄化したユート達はグリューエン大火山に向けて出発。

 

 グリューエン大火山は当然ながらナイズ・グリューエンが生きていた時代、そんな名前で呼ばれていたりはしなかった。

 

 グリューエンとは村の名前でナイズの生まれた謂わば故郷、その村はナイズが異端とされたと聞かされた村人が彼の家族を殺害してしまった為、報復とも云える空間魔法の爆発にてナイズ以外が消滅した為に消えて無くなる。

 

 北方へ約百キロ進んだ先に直径にして五キロ、標高は三千メートルの巨岩がそれだ。

 

 通常の円錐状となる成層火山ではなくて極めて巨大で平べったい丘といえば解り易い。

 

 オルクス大迷宮みたいに大迷宮の一つとしては周知されているが、彼処みたいに冒険者が山の様に入り込む事は無かった。

 

 理由は内部の危険性がオルクス表層に比べると上であり、そもそも辿り着ける人間が殆んど居ないし魔石回収の旨味が少ない事が挙げられる。

 

 【グリューエン大火山】は巨大な積乱雲の如く砂嵐が渦巻いており、大火山を覆い尽くしてしまい姿を完全に隠す程だった。

 

 まるで流動する壁。

 

 【ラピュタ】は本当に在ったんだっ! 火山が空中に存在したら言いたくなる様相である。

 

 更には砂嵐の中に砂蚯蚓を含む魔物も可成りの数が潜んでいて、視界が悪い中で情け容赦も無く奇襲を仕掛けて来るらしい。

 

 流石は大迷宮の一つであるというべきなのか、並みの実力の者には決して門戸を開いてはいないのであろう。

 

 要は最低限でも大迷宮に到達しろとナイズ・グリューエンは言いたい訳だ。

 

「ナっちゃんは優しかったからね。オー君みたく入り込んだが最後……みたいにはしたくなかったんじゃないかな?」

 

「成程、判らないでもないな」

 

 辿り着けなければ挑もうとした人間が無駄に死ぬ事も無い上に、つまりは神代魔法を手に入れる

資格も無いという事だから。

 

「ミレディ、大火山の入口は頂上だったな?」

 

「うん、そだよ」

 

「キャンピングバス……オプティマスプライム、トランスフォーム!」

 

「へ?」

 

 内部は空間湾曲技術で創られた疑似異空間であるが故に、外部装甲が複雑に変形をしてもユート達には何ら影響は無い。

 

 オプティマスプライムが変形(トランスフォーム)を完了すると人型機動兵器としか思えない姿になり、背中に付いたテスラ・ドライブのユニットで大空を舞う。

 

 ユートが【スーパーロボット大戦α】な世界で入手をした星帝ユニクロンの骸、その中には二つの勢力のトランスフォーマーの遺骸が散乱していた為、トランスフォーマーと呼ばれる超ロボット生命体の研究が捗った。

 

 コイツはキャンピングバスの形をしてはいるものの、実はその原型とはオプティマスプライム――日本のG1で云う処のコンボイである。

 

 通常のコンボイは翔ばないけど、シリーズ中ではスーパー合体で翔べるコンボイも居た。

 

 キャンピングバスが基型の癖にコイツは普通に翔べるけど、それはテスラ・ドライブユニットを背中に装着しているが故。

 

 尚、オプティマスプライムに意志自体は存在しているけど、魔法デバイス程の意識ですら持たされてはいない。

 

 その内に新しくオプティマスプライムを組んでちゃんとした意識も与えたい、それこそユートが密かにトランスフォーマー計画として考えている事でもある。

 

 星帝ユニクロンの警備員的に。

 

 因みに現在は所謂、クストースと呼ばれていたガンエデンの下僕たるカナフ、ケレン、ザナヴや量産型のアフ、ズロア、スナピル、量産型ジンライ――トランスフォーマーに非ず――が守護者となって動いていた。

 

 量産型ジンライもAIで動いているが茶々号や田中さん程度の物ですらない。

 

 星帝ユニクロンとは【トランスフォーマー】の世界に於けるラスボスっぽい存在、惑星レベルの巨体で星型から人型にトランスフォームする。

 

 【マイクロン伝説】ではマイクロンを生み出した者でもあるらしいが、設定上だと平行世界に在る全てのユニクロンは同一個体だとか。

 

 誕生の経緯すら別物でも。

 

 ユートは【第三次スーパーロボット大戦α】の後に、GGGの大河長官から依頼を受けて謂わばバンプレのオリジナル連中を率いて木星へ。

 

 その捜索で木星の異相が異なり重なる次元に、頭を喪ったユニクロンの死体? を発見。

 

 大河長官の目論見の通り自分で確保する。

 

 惑星レベルの巨体だから内部も可成り広々としていて、恐らくはオートボットとディセプティコンだろうトランスフォーマーの遺骸が朽ちて野晒しになっていた。

 

 後でちゃんと弔ったが、その前に遺骸を調べさせて貰ったのは言うまでもないだろう。

 

 データ内というか記憶野にオートボット総司令官オプティマスプライムと、ディセプティコンの破壊大帝メガトロンの記録も在った。

 

 尚、彼らの記憶はサイバトロンとデストロンと明記されていたから、オプティマスプライムというのも実はコンボイという名前である。

 

 G1なのかマイクロン伝説系なのかビーストウォーズⅡ~ネオなのか、或いはまた別の平行世界に在るモノなのかも判らないが有効に使った。

 

 特にユニクロンは惑星型機動拠点として上手く改良をしたし、内部も太陽系が幾つか入りそうなくらいに空間湾曲して生きた惑星――居住可能惑星を幾つも保有している。

 

 その惑星の中の一つは完全なる第一次産業用であり、現在では【機動戦士ガンダムSEED】に登場したユニウスセブンの人々を密かに助け出していて、この第一次産業惑星ユニウスセブンで働いて貰っていた。

 

 リーダーはアスラン・ザラの母親だ。

 

 因みに第一次産業惑星ではあんまりだと言って

レノア・ザラがユニウスセブンの名を付けた。

 

 また、レノア本人はレニィ・サーラと名乗って若返っている為に最早、別人にしか思えないくらいになっていて元夫が息子くらいしか判別不可能であると思われる。

 

 それは兎も角、ユートのキャンピングバスというのはコンボイのデータから人工的に構築をした人造トランスフォーマーで、オプティマスプライムの名前を与えているという訳だ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 グリューエン大火山の入口に辿り着いた一行は早速とばかりに準備をする。

 

「じゃあ、ミレディ。ミュウの事は頼むぞ」

 

「了解、了解! このミレディちゃんにまっかせなさ~い!」

 

 薄い胸を叩きながら請け負うミレディ。

 

 大迷宮の創始者の一人たるミレディはグリューエン大火山には入らないとして、今回はティオの代わりにミュウの面倒を見る役目だ。

 

 概念魔法はユートさえ獲れば良いのだろうけど一応、本当に一応ではあるが仲間にも挑戦させてみようと考えた。

 

 まぁ、インストール・カードで覚える事も出来ると云えば出来るが、楽に修得させるというのもどうかと思ったのである。

 

 ハジメの生成魔法は仮面ライダーG3を完成させた御褒美だから問題は無い。

 

「キャンピングバスは岩塊に偽装させておく」

 

「オッケーだよ」

 

 穴を穿ちキャンピングバスを内部に入れてしまうと外側を幻影魔法による偽装を施した。

 

「ミュウ、すぐに帰ってくるからミレディと大人しく待っていてくれ」

 

「うん、ミュウはまってるの。パパをしんじてまっているの!」

 

 涙ぐむミュウを抱き抱えたユートは頭を撫でながらあやす。

 

 ミュウにも理解は出来ていた。

 

 この先に行けるだけの力は自分には無い上に、下手に付いていけば大好きなパパの邪魔にしかならないのだ……と。

 

 だから待つ。

 

 必ず帰ってくると信じて。

 

 ミュウがバスへと戻ったのを見届けた一行は、アーチ状になった岩石の下に内部へ続く階段を見付けて下るべく動く。

 

「さて、鈴は大迷宮攻略が初だったな」

 

「え? オルクス大迷宮なら潜ってるよ」

 

「表層のな」

 

「表層……真のオルクス大迷宮ってやつ?」

 

「そうだ。オルクス大迷宮は表層の第百階層まで下りると中ボスと戦闘になり、斃せたら真のオルクス大迷宮に下りる為の魔法陣が顕れるらしい。道理で登りの階段が見付からなかった訳だよ」

 

「登りの階段が無いって、つまり下りたらノンストップで行くしか無いって事?」

 

「まぁな。オルクス大迷宮のコンセプトは総合的な能力を見る事にある。何を使ってでも真のオルクス大迷宮の第百層まで下りて、ラスボスであるヒュドラを斃せって事なんだろうな、食料の事を考えると空間魔法は必須だ」

 

「神代魔法を駆使しなきゃ駄目なんだね。そんな大迷宮にゆう君は神代魔法を一つも持たない侭に攻略しちゃったんだ……」

 

「僕はそもそも色々と代わりになるモノをもっていたからな」

 

 空間魔法と生成魔法とまでは云わないまでも、錬成魔法を使って宝物庫っぽいアイテムは欲しい処であろう。

 

「コンセプト……かぁ。それもミレディさんからの情報だったよね」

 

「ああ。大迷宮は試練であり、神代魔法というのは鼻先の人参。そして神代魔法を獲る為に必須となるのが大迷宮のコンセプトをクリアする事だ。とはいえ、オルクス大迷宮は総合力の試しだったから単に百層まで下りてヒュドラ退治をすれば良かったみたいだし、ライセン大迷宮はミレディが直に合否の判断をしたから識らなくても特に問題は無かったな」

 

「割と綱渡りだったね……」

 

 万が一にもコンセプトをクリアしていなかったと判断されたら、神代魔法を獲られなかったという事だから鈴も驚いた。

 

「それで優斗、グリューエン大火山のコンセプトってずばり何?」

 

「忍耐」

 

「に、忍耐?」

 

「正確に言うと『暑さによる集中力の阻害とその状況下での奇襲への対応』かな」

 

「確かに、妾を以てしても暑いの」

 

 和服っぽい着物を着たティオも汗を掻いていて長い黒髪が濡れ、服も汗を吸っているのか濡れているのが判るくらいだ。

 

 匂い立つ女の薫りがユートの下半身を刺激してくれる辺り、割かしユートがティオを抱いていないのは飽く迄もミュウをあやす役があるからで、本当はすぐにでも抱きたいくらい女を感じさせてくれている。

 

 ユートの識らない原典のティオならプラマイ〇な感じだろうが……

 

「あっつい!」

 

 鈴が叫ぶ。

 

「行き成り壊れるな。大迷宮のコンセプト的にはアウトだったらどうするよ」

 

「うぐっ!」

 

「とはいえ、対処が出来るかも試練の内なら特に問題も無いのかね?」

 

 ひょっとしたら対処しても良いのか?

 

 下手に楽したら神代魔法が獲られない可能性もあり、ユートは何ら対処をしないで仲間の愚痴を聞きながら動いていたけど。

 

「そういえばゆう君って汗を掻いてないね」

 

 やはり神官っぽい服装な香織も汗だくとなり、雫やユエやシアも全身グッショリとなっているにも拘わらず、ユートの服はあからさまに乾いてあるし本人も汗一つ流していない。

 

「僕は四大精霊神の総契約者(フル・コントラクター)だって言ったろう。熱で僕がダメージを受けたりしない」

 

「な、何ですかそれ!?」

 

「……ズルい」

 

 シアが叫び、ユエも暑さからぐったりしながらも文句を言ってきた。

 

「まぁ、良いか。これで神代魔法を獲得出来なかったらやり直させるからな」

 

 ユートが指先を弾く。

 

 所謂、指パッチンというやつで『素晴らしき』人がグルンガスト参式を破壊するのにも使っていた仕草である。

 

「あれ? 暑さが……」

 

「うん、雫ちゃん。涼しくなった訳じゃないんだけど暑苦しさは無くなったよ」

 

「周囲の熱をある程度だが遮断した」

 

 飽く迄も暑いと言いたくなるレベルが低くなったに過ぎないが、それでも決して快適ではないにせよ環境は悪いものではなくなる。

 

 天然のブービートラップとして行き成り噴き出すマグマ、事前の兆候すら無く本当に突然だからユートが土と炎の精霊術で察知をしていなければ危険極まりない場所だろう。

 

 熱をある程度とはいえ遮断するだけではなく、こうした場合でも可成り使える。

 

 岩肌が露出した場所に薄い桃色の鉱石が覗いており、それが本来なら必要だったろう静因石だとはすぐに判った。

 

 だけど今はユートが【創成】で創った静因石を更にアトリエ系錬金術で薬に換え、公都民へ無償で与えているから既に採取の必要は無い。

 

 そもそも浅い階層では小さい静因石しか出ないから効率も悪かった。

 

 七階層まで下りてくる。

 

 公式な冒険者の下りた記録では此処までが最高となっていたから、更に下の階層に下りたならばユート達が新記録樹立となる筈。

 

「マグマ牛って処か」

 

 マグマを纏う牛が現れた。

 

 魔物の一種で間違いなく、マグマを身に纏う事から火系の魔法は効き目が薄いだろう。

 

「ヒャダルコ!」

 

 カチン! 氷結呪文で凍り付くマグマ牛。

 

「呆気ないな」

 

 とはいえ、ユートの放つヒャダルコは一般的な魔法使いのヒャダルコの何倍も強く、下手をしたらマヒャドのレベルの凍気を放っている。

 

『これはマヒャドではない、ヒャダルコだ』

 

 ヒャドじゃない辺り流石に大魔王バーン程ではなかったりするが、ユートの魔力の強さなら出来てしまう遊び心だった。

 

 ヒャダルコはヒャドと違いグループ殲滅呪文だから範囲が広いけど、マグマ牛を一匹相手するのに広範囲は要らないから収束している。

 

 マグマ蝙蝠やマグマ蛇やマグマカメレオンなどマグマや赤熱を纏う魔物ばかりが現れた。

 

 此処は火山だから仕方がないが……

 

「ヒャダイン!」

 

 赤熱化したウツボや炎の針を無数に飛ばしてくるハリネズミ、結構な数がわらわらと出てきたけどマヒャデドス級のヒャダインで殲滅した。

 

「……ん、【凍柩】!」

 

 全属性に適性を持つユエも大活躍をする。

 

 また、ティオもそれなりに活躍中だがシアや雫や香織は余り活躍の場が無い。

 

 香織も魔法を使えない訳ではないが魔法陣とか詠唱とか、兎にも角にも実戦的とは云えないのが何とも困りものだからだ。

 

 適性の問題だろう。

 

「序でにマヒャデドス!」

 

 オルクス大迷宮でやっていた訓練は戦闘に慣れるのが主目的であり、効率とか実戦的とかはまた別にやる予定だったらしい。

 

「優斗ってダンジョンでもサクサク進むわね」

 

「慣れだよ、慣れ」

 

「慣れ……ねぇ? やっぱりゲームやアニメなんかの世界で?」

 

「放浪期に色々と行く羽目になったからな」

 

 雫の問いに答えながら苦笑する。

 

「どんな世界? ヒャダルコとか使っていたし、ドラクエが鉄板なのは理解するわ」

 

「FFやスターオーシャンやテイルズ」

 

「それは、また……」

 

 FFだとカオスや皇帝や暗闇の雲などラスボスを退治して回った。

 

 とはいえ、Ⅶくらいまでだったけど。

 

 スターオーシャンはⅠ~Ⅲまでで、特にⅠは下手したらNTRも斯くやなレベルで主人公の幼馴染みとくっ付いた。

 

 跳ばされた際に記憶喪失になってしまったのと懐かれてしまった為に。

 

 Ⅱではクロードが惑星エクスペルに跳ばされずに別の世界に行き、何故か神懸かったというか明らかに女神らしき美女を連れて戻ってきた。

 

 女神の名前はアストレアだと云う。

 

 Ⅲは原典と余り変わらず。

 

 テイルズは噺の繋がりが基本的に無い――デステニィは後年に出てるが――から一つ一つを無難にと云いたいが、ファンタジアで得た【閃姫】の中にミント・アドネードとアーチェ・クラインと聞いたら何故そうなった? とか思われるだろう。

 

 真相はクレスとチェスターが過去へ跳び村が滅ぼされる前に村を救い、小骨が刺さっていた過去の闇を祓ったのに付いて行って、村はクレス達に任せて黒騎士がミント母娘を誘拐しようとしていたのを止めたのが切っ掛け。

 

 つまり元の世界のミントではなく、クレスとの出逢いが無かったミントだからである。

 

 アーチェも同じくだ。

 

 因みに、アーチェの非処女説は当人を抱いた際に完全に思い込みな勘違いだと判明した。

 

 ユートのアレは【C】の呪いで大砲になってはいるが、処女でない限り痛みは感じない筈なのに初夜では普通に痛がっていたのだ。

 

 調べたら膜も健在、記憶を洗ってみたら彼氏らしきが居たのは事実だが性的な関係は無かった。

 

 添い寝くらいしかしてないのをアーチェが勘違いをしていたらしい。

 

 お間抜けな話だ。

 

 テイルズもヴェスペリアまでは行ったのだが、それより先の世界には行かなかった。

 

 それでも様々なダンジョンを潜っている上に、何なら迷宮都市というのにも行っている。

 

 確かセリビーラとか云ったか?

 

「私達も慣れなきゃ駄目よね」

 

「そうだね、雫ちゃん」

 

 ふんす! とばかりにガッツポーズな香織。

 

 ユートがマヒャデドスまで使った所為で魔物が潰滅、次の階層まではのんびりと話をしながらでも良いくらいで水を飲んだり携帯食を食べたりしながら歩いている。

 

「あ、序でに訊きたかったんだ」

 

「どうした、香織?」

 

「ゆう君って光輝君が前から嫌いだったよね」

 

「……まぁね」

 

「どうしてかなって」

 

「……青い正義とか名乗る莫迦連中が居てね」

 

「青い正義? ブルージャスティス?」

 

「ああ、そんな名前だよ」

 

 二度と会わないだろうが一度でも要らない。

 

「そのリーダーが天之河みたいな性格の優男で、持ち前の正義(笑)感から色々とやらかしてくれたんだよ。ある理由から奴隷の娘を連れていたら、開放しろとか言ってくるわ、断れば決闘だーとか騒いでくるわ。本人は望んでもないのにな」

 

「「うわ」」

 

 香織も雫も声を揃えてしまう。

 

 鈴も苦笑いだ。

 

「正直、奴の転生かと思ったくらいだ」

 

「ひょっとしたらさ、私達はその正義(笑)君が連れてた仲間みたいに思われてた?」

 

「雫、正解だ」

 

「ぎ……」

 

「ぎ?」

 

「ぎゃぁぁぁぁああああああっ!」

 

 美少女だと認めながら余り接触が無かった事の理由を知り絶叫してしまう。

 

「奴には仲間が二人居てね、男は脳筋戦闘バカで女はリーダー至上主義。とはいえ、最後は二人が死んでリーダー格は色々と奪われた上で追放だ。女の方は牢獄に入っていたのに輪姦された挙げ句に首を自分で突いて死んでいたとさ。牢番は見過ごしたと言い、犯人は全員が自首している」

 

 輪姦という科白に女性陣全員が眉根を顰めたのだが、犯人が自首をしているし牢番が揃って見過ごした事実から別の意味で顰めた。

 

 意味を理解したからである。

 

 その女は憎まれていた。

 

 嫌われていた。

 

 仕返しがしたいと思われていた。

 

 牢番は態と見過ごして、犯人達は女である事を後悔するレベルで目茶苦茶にしてやった。

 

 死んでいたのが世を儚んでの自決か、そう見せ掛けた他殺かは定かではない。

 

 いずれにせよ世の為とか言ってリーダーよいしょなだけの女は死んだのである。

 

 因みにリーダーのその後は……ユートの知った事でもないだろう。

 

「確かに私らに龍太郎だわ」

 

「何だかスッゴく嫌だよぉ」

 

 最早、天之河光輝は完全に見限られていた。

 

「其処まで嫌う光輝に、どうして聖剣……えっと、アベルグリッサー? を修復したのよ」

 

「流石に可哀想だったからな」

 

「は? 光輝が?」

 

「いや、そりゃ……天之河の頭は可哀想だけど」

 

「それ、意味が全く違うわよね」

 

 頭が可哀想な天之河は置いておき……

 

「アベルグリッサー……否、ウーア・アルトが」

 

「ウーア・アルト?」

 

 何故にアベルグリッサーの話でウーア・アルト何て名前が出たのか、雫にはさっぱり解らなかったみたいだがシアが気付く。

 

「ウーア・アルトって、フェアベルゲンの大樹であるウーア・アルト?」

 

「正しくそれだ」

 

 我が意を得たりと頷くユート。

 

「大樹ウーア・アルト。その名前は万の年月をも越えて存在した女神の名前だ」

 

「……へ?」

 

 シアにも訳が解らない。

 

「聖剣ウーア・アルトの意思に触れて判った事なんだが、そもそも聖剣とは大樹の底の底たる根底にて、根と地下鉱石が融合した特殊な魔導金属が存在するらしくそれを鍛えた物らしい。僕は聖剣を視て組成を理解したから、新たに汎暗黒物質から創造が出来たんで接ぐ為の金属として使った。

どうやら女神ウーア・アルトはエヒトルジュエと戦って敗北、已むを得ず未来の勇者に託す為にか自らの魂を聖剣に封じた様だね」

 

「未来の勇者……ねぇ」

 

「未来の勇者……かぁ」

 

「未来の勇者……?」

 

 アレをよく識る雫と香織と鈴が自分が見限った残念勇者(笑)を思い出す。

 

「ん? という事は本来は女神様……つまり女性なのよね? なのに身体を男性にしたの?」

 

「だから、天之河を喜ばせる心算は無いと言っただろうに」

 

 本神の了承――永い年月が経って磨耗したからかユートが再生しても喋れなかったので首肯させた――を得て肉体の再生をしたのである。

 

「じゃあ、あの男の娘の姿は?」

 

「一五歳くらいの少年の肉体に元々の顔をくっ付けた感じだね」

 

 黒髪の凄まじい美少女な顔はウーア・アルト……彼女自身の顔を完全に再現してやった。

 

 胸は胸板で下半身に小さいながらも男の象徴がぶら下がっていながら、顔だけは大元を完全再現とか天之河への嫌がらせ此処に極まれり。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「それにしても、マグマの魔物はそれなりな強いみたいだな。これなら八階層から下に行って戻れなかった冒険者ってのも頷けるな。しかも魔石の純度はオルクス表層の第四〇階層と変わらん程度でしかない。貴重な静因石も上と変わらないとあっちゃ、確かに此処を拠点にする旨味みたいなのは丸っきり無いな」

 

 素直にオルクス大迷宮の表層第四〇階層で狩りをした方が建設的なくらいだ。

 

「まぁ、僕は魔物の素材的に旨味はあるがな」

 

 成分の抽出で炎系の特性を他に移すのも良いだろうし、或いは皮などをひっぺがして炎耐性付きの革鎧を造っても良い。

 

 要は使い途を考えれば良いのだから。

 

 順繰りに下りていくユート一行、原典ハジメと違い静因石を必要としないからそれを取ってしまいミスる事も無く、円満に五〇層――グリューエン大火山の麓辺りまで下りてきていた。

 

「どうやら此処が目的地らしいな」

 

 階段を下りた先には自然に手を加えてないからか歪つな形をしていて広さが把握出来てないが、三km以上はありそうな広大さ。

 

 地面はマグマで満たされて所々の岩石が僅かな足場となっており、周囲にしても壁がせり出している所もあるし削れている所もある。

 

 空中は上層部と同じく無数のマグマの川が交差していて、殆んどが下方に在るマグマの海へと消えていっていた。

 

 煮え滾る灼熱の海、恒星のフレアの如く噴き上がる火柱、ユートの冥界に存在する血の池地獄の様な様相が其処を地獄みたいだと思える程。

 

 中央の島に辿り着く。

 

「……この地がナイズ・グリューエンの住処?」

 

 ユエが下り立った島を見回して呟いた。

 

「階層の深さ的にもそう考えるべきだろうけど、そうなると……だ」

 

「この場には最後のガーディアンがいる筈よな……主様よ」

 

「ティオの言う通りだな。真のオルクス大迷宮の最下層にはヒュドラ、ライセン大迷宮の最奥にはミレディ・ゴーレムだった。全員、変身だ!」

 

『『『了解!』』』

 

 ユートの指令に頷く少女達。

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE DECADE!》

 

 ユートは仮面ライダーディケイド。

 

「変身!」

 

《HENSHIN!》

 

 雫は仮面ライダーサソード。

 

「変身!」

 

《CHANGE!》

 

 香織は仮面ライダーリューン。

 

「ん、変身!」

 

《HEN……SHIN……》

 

 ユエは仮面ライダーサガ。

 

「変身!」

 

 鈴は仮面ライダータイガ。

 

「変身ですぅ!」

 

《HENSHIN!》

 

 シアは仮面ライダーザビー。

 

「変身!」

 

 ティオは仮面ライダーリュウガ。

 

 何が起きて何が現れるか判らない状況下ゆえにこそ、切札とも云える仮面ライダーへと変身するユート一行の前にマグマの攻撃が。

 

「宙を流れるマグマからか!」

 

 ユートは手で殴り付けて叫ぶ。

 

「妾が!」

 

《STRIKE VENT!》

 

 放たれたマグマ塊をティオがドラグブラッカーの頭を模した手甲から、激しく黒いブレスにも似た炎を放った事により相殺をしてしまう。

 

「ティオ、同じカードは三枚しかないんだから余り乱発はするな!」

 

「了解なのじゃよ」

 

 普通は一枚なのだが、ユートの造ったカードデッキには遊戯王などみたいに三枚ずつカードが揃えられており、一回の変身で三回まで同じ武器や技を使う事が出来る。

 

 カード自体は一度使えば消えるから次に変身をするまでは使えないのだが……

 

「はっ! 全員、防御か回避!」

 

 ユートの指示に全員が従う。

 

 防御が高いか魔法障壁が使えるなら防御に徹したし、素早く動けたり異界に逃れる能力が有る者は回避をしていた。

 

 頭上を流れるマグマ流や地上のマグマの海からマシンガンも斯くやの炎塊が放たれる。

 

「チッ!」

 

 ユートはライドブッカーをガンモードに。

 

《ATTACK RIDE BLAST!》

 

 連射連射連射で撃ち落としていく。

 

「はぁぁぁっ!」

 

 仮面ライダーサソードな雫は斬っていた。

 

「うりゃぁあ、ですぅ!」

 

 シアはシアでアイゼンⅡで叩く叩く。

 

「す、素直に回避した鈴って……」

 

 明らかに格が違うと落ち込みたくなる鈴。

 

「鈴ちゃんは最近になって合流したんだから仕方がないよ」

 

「そう言うカオリンは弓で落としてるよね」

 

 香織もカリスアローみたいなリューンアローを使い、回避をしながら落とせる炎塊はきちんと撃ち落としている。

 

「……【絶禍】!」

 

 仮面ライダーサガなユエ、魔法の名前を呟くと渦巻く球体が出現して辺りを飛び交うマグマの塊を次々と引き寄せ呑み込み、闇黒の星が全てを超重力で圧縮していく。

 

「ユエユエまで!?」

 

 仮面ライダーサガの時はまだしも、本来の姿は小さな少女で見た目は鈴とも大した違いがないというのに、魔法を扱う姿はまるでクイーンでも見ている気分になるくらい様になっていた。

 

 まぁ、原典の仮面ライダーサガはキングだったりする訳だが……

 

『ゴァァァァアアアッ!』

 

「マグマの巨大蛇!」

 

 行き成り現れた巨大なマグマ蛇だったのだが、ユートはカードをネオディケイドライバーへ落ち着いて装填。

 

《FINAL FORM RIDE……SA SA SA SAGA!》

 

「……え?」

 

 自分の変身している仮面ライダーの名前に動きをピタリと止めるユエ。

 

「ちょっと擽ったいぞ」

 

 うにょ~んと追加パーツの装着をされたサガが変型をし始める。

 

「……うみゃぁぁぁぁぁあああっ!?」

 

 曲げてはならない方向に腕や脚が曲がるし、首は一八〇度回転して収納され、巨大なサガーク――サガサガークに()()

 

 所謂、原典に出てきたマザーサガークっぽい姿でユエは浮遊していた。

 

《FINAL ATTACK RIDE……SA SA SA SAGA!》

 

 ユートが乗って浮遊するサガークが子サガークを次々と放ち、それは何匹も現れる巨大なマグマの蛇へと特攻して潰していく。

 

「普通のマグマ魔物じゃないな」

 

 グリューエン大火山に現れたマグマの魔物達はマグマを纏う存在であり、斃せば魔石や素材を獲られる連中であったのに対してコイツらは死んだら弾けて消えた。

 

「本体を持たない?」

 

 つまり、バチュラムみたいにマグマの形を蛇に形成する魔石が有るのだろう。

 

「次から次へと来るな……」

 

 何十匹が存在するのか? 子サガークが潰しても潰してもマグマ蛇は現れる。

 

「或いはあの時の遺跡のゴーレムみたく直していたりするのかね?」

 

 一万のゴーレムが壊れたら修復されて戦列に戻る悪夢の行進を思い出す。

 

「已むを得ないな」

 

 ネオディケイドライバーからカードを出して、ユートが変身解除したと同時に仮面ライダーサガ

たるユエも元に戻った。

 

 変身を解除したユートは別のベルトを装着。

 

《ZEROーONE DRIVER》

 

 手にしたプログライズキーのライズスターターを押してやる。

 

《BLIZZARD!》

 

 フリージングベアープログライズキーをオーソライザーへ。

 

《AUTHORIZE》

 

 展開してキーモードでスロットインをすると、ライダモデルがズン! と顕れた。

 

「変身っ!」

 

《PROGRIZE!》

 

 ライズリベレーターが開放されてライダモデルがゼロワンに重る。

 

《ATTENTION FREEZE! FREEZING BEAR!》

 

 ライジングホッパーの黄色いアーマーが移動、シアン色のアーマーが主軸となって鎧った。

 

《FIERCE BREATH AS COLD AS ARCTIC WINDS》

 

 仮面ライダーゼロワン・フリージングベアへと変身をしたのである。

 

 両掌より放たれる冷気。

 

「面倒臭いからマグマ事、全て凍らせてやる! お前らを止められるのは唯一人……僕だ!」

 

 ユートは別のプログライズキーを出してそれをオーソライザーへ。

 

《BIT RIZE》

 

《BYTE RIZE》

 

《KIRO RIZE》

 

《MEGA RIZE》

 

《GIGA RIZE》

 

《TERA RIZE!》

 

 六回に亘る読み込みを行った瞬間にプログライズキーの頭を叩いてベルトに押し込んだ。

 

《FREEZING TERA IMPACT!》

 

「うおおおおおおおおっっ!」

 

 部屋を、マグマ流やマグマ塊やマグマの海を、仲間以外の全てを凍結させていく。

 

「はぁぁぁああああっ! フリージング・テラ・インパクトッッ!」

 

 ドガァァァァァァァアアアンッ!

 

 凍り付いたマグマの海を破壊する。

 

「これでどうだ!?」

 

 マグマ蛇は……最早現れなかった。

 

 

.




 次はフリードの登場ですが……


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。