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ハイリヒ王国の王都は神山のすぐ近くに在り、それが故に神山から王城を繋ぐ魔法の道具が存在しているのだ。
そんな王城の割と良い部屋を我らが勇者(笑)は使っており、今はそもそも神の使徒(笑)の人数も減ったから一人一部屋となっている。
アベルグリッサーを横に置いた天之河光輝は、カテーテルの入った我が子を見つめていた。
ユートが一応はと置いていった医療キットを使って、メイドさんが嫌々ながら潰れた天之河光輝の分身を握りカテーテルを容れたのだ。
因みに、そのメイドさんは嘗て勇者(笑)であった天之河光輝と肉体関係にあった事を鑑みれば、正しく大した株の大暴落だと云えるであろう。
「おやおや、黄昏てますね?」
「お前は!」
一人切りだった部屋に居なかった筈の人物に対して御花畑な勇者(笑)も警戒した。
長い銀髪に翠の瞳を持つ少女、何故か頭頂部にアホ毛ビロンと伸びていてクスクス笑う。
「私、参上!」
何処かの赤鬼の如くキレッキレなポーズを決めながら言うが、天之河はそれを冷めた視線でボケッと見つめるだけだった。
「おや、ノリが悪いですね。だから敗けるんでしょうけどね」
「ノリがどうとか関係無いだろう」
「チッチッチ!」
片目を瞑り右人指し指だけ伸ばして横に振るという行為は、今の天之河にとってイラつかせるだけのウザさがある。
それがどれくらいウザいのかと問われたなら、普段のミレディのウザさが一ミレディだとしたら調子ぶっこいたミレディが一〇〇ミレディと換算して、今の彼女は六〇ミレディはウザいと判断をしても構わないレベルだ。
まぁ、天之河光輝はそもそもミレディ・ライセンを知らないが……
「良いですか? 戦いなんてのはいつだって何処だってノリが良い方が勝つんですよ!」
「何を莫迦な……」
「仮面ライダーの主人公達は正にそのノリの良さに支えられて来たんですよ。別名は主人公補整とも云いますけど……貴方には有りませんでしたよね主人公補整なんて」
「俺が勇者だ! だから俺が主人公だ!」
「御花畑ですね? 今時、勇者が主人公だなんて流行りませんよ。『なろう』を紐解けば勇者なんて主人公処か良くて主人公の引き立て役か妹ちゃんとしてのヒロイン枠、悪けりゃ引き立て役処か踏み台にしかなりませんって」
クスクスとSAN値がガリガリと削られそうではあるが、むしゃぶり付きたくなるくらい魅力的な邪悪の笑みを浮かべて言ってやる。
「引き立て役?」
「貴方は寧ろ踏み台ですね」
「嘘だっっ!」
「そういうのは竜宮礼奈さんでないと決まりませんよ? そもそもにして貴方は主人公なんかじゃありませんしね」
「はっ、なら緒方が主人公だとでも?」
「クスクス、莫迦を言っちゃいけませんねぇ? 彼は正真正銘イレギュラー。主人公? オリ主とかが精々に過ぎませんよ。謂わば、
「? 何を言っている?」
「まぁ、貴方に返しは期待してませんよ」
肝心な仮面ライダーの知識でさえ彼女が脳内に焼き付けなければならなかった程、天之河光輝はサブカルチャーに詳しくは無かったから。
「おっと、スールードが居るから長居は無用でしょうね。これを上げましょう」
「うっ?」
投げ渡されたのはアナザージオウウオッチみたいなウオッチだが違う物。
「これは?」
「アナザージオウⅡウオッチですよ」
「つまり、これで仮面ライダージオウⅡに!」
(私、
ニヤリと悪い笑みを浮かべる彼女はアナザージオウⅡのウオッチを、恍惚とした気持ち悪い顔で見つめる天之河光輝を見据え嗤っていたと云う。
これはユート一行がメルジーナ海底遺跡に入るほんの数分前の出来事である。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
フジツボに似た魔物が放つ高圧縮された水による攻撃、ウォーターカッターという物が存在しているがそれはダイヤモンドすら切断するという、つまりまともにアレを喰らったら軟らかい人体など簡単に貫くのだ。
如何に耐性があろうが関係無い、防ぎたいならせめてアザンチウムの肌になれという事。
フジツボ擬きは天井全体にびっしりと張り付いていて、穴の空いた部分から【破断】を放っていた様でそれは可成り生理的な嫌悪を抱く光景であったと云う。
フジツボ擬きも見た目に違わず水中生物である為にか火系には滅法弱いらしく……
「喰らうが良い!」
《STRIKE VENT!》
仮面ライダーリュウガへと変身をしたティオの攻撃により焼き尽くされた。
面倒なフジツボ擬きを殲滅した後は奥の通路へ進めるユート一行、先程の部屋よりも通路は低くなっており、揺らめく海水が膝くらいまでガッツリと満たされている。
「スパロボ的には海適性がSだから困りはしないんだが、だからといって歩き難さが完全に緩和をされたりはしないんだな」
海水を掻き分けつつ愚痴を言うユートだけど、【スパロボ】だの海適性がSだのというネタなんて地球組でないと理解が出来ない。
「ゆう君って海適性がSなんだ?」
「完全な平行異世界の地球で七個集めればどんな願いでも叶えてくれる球を使ってね、そのお陰で僕は魔法を使わなくても科学に頼らなくても深海や宇宙でも生きられる」
「それ、ドラゴンボールだよね!?」
鈴がとんでもない話にツッコミを入れた。
「ギネ復活の為の為に閻魔大王から悪党抹殺リストを受けて殺ってたが、クウラは宇宙空間でも生きられるフロスト族だったからな。安全確実に潰す為にも僕も宇宙空間で闘えないと困るからね。その為の保険でフロスト族が持つ適性に近い能力を貰ったって訳だよ」
「とんでもないよ、ゆう君……ってかギネ? それって悟空やラディッツのお母さんでバーダックの奥さんの?」
「ああ、惑星ベジータがフリーザに消滅させられた際に死んだみたいでね。あの世界は此方と違ってあの世が在るから生き返らせるには閻魔大王から許可を取る必要があったんだ。ドラゴンボールでの蘇生は無許可で出来るんだろうが、あれだとスーパードラゴンボールならば未だしも地球のやナメック星のドラゴンボールじゃ、生き返らせるのは困難だったからね」
ギネが二児の母と呼ぶには余りに可愛かったから生き返らせた訳だが、ユートが生き返らせる為にはあの世のギネと接触を持つ為にも閻魔大王と話す必要性があったのである。
肉体は普通に創れば良い。
寧ろそれによりギネは男に抱かれる快楽を知る身ながら処女となり、ある意味で初めての夜にはユートを色々と愉しませてくれた。
サイヤ人は食欲と戦闘欲求以外は淡白らしく、二児の母とはいえ余り抱かれて無かったみたいで結構新鮮な反応をしてくれたもの。
尚、GTの究極のドラゴンボールは存在していたとして使う事は考慮するにも値しない。
「うん? また出たな」
ユートが見た方向から魔物が出た。
手裏剣と見紛う様に高速回転しながら直線的、或いは曲線を描いて高速で飛んでくる。
「ザビースティンガー、連射ですぅ!」
左腕のライダーブレスに合着したザビーゼクターの尻尾から放たれる針、エネルギーを固着させた半物質化されたモノを射ち放って撃墜してやると水面に浮かんだのはヒトデ擬き。
「足元!」
「私が殺るよ!」
《TORNADO!》
水中を這う海蛇擬きな魔物が高速で泳いでくるのをユートが感知し、香織はカテゴリー6であるトルネードのカードをスキャンし吹き飛ばす。
因みに、香織のカードは基本的に仮面ライダーカリスのプライムベスタを大元にしてはいるが、それ以外にも何枚かは規定外でワイルドベスタと呼ばれるカードも所持していた。
勿論、アンデッドが封印されている訳ではなく飽く迄も封じられているのはトータス産の魔物、カテゴリーKはノイント封印で手に入れた香織は早くワイルドフォームなりキングフォームなりとパワーアップしたいと思っている。
「……弱いな」
ユートが呟くと鈴は兎も角として、他のメンバーは全員が頷いた。
「ゆう君、どういう意味?」
「大迷宮の魔物は単体で強力、複数で厄介、単体で強力且つ厄介ってのがセオリーだ。そこら辺はグリューエン大火山で鈴も実地に知れたろう? 処がこの場に出たフジツボ、ヒトデ、海蛇なんてグリューエン大火山の魔物に比べても弱いんだ。ゲームとは違うっていっても、ゲームだったなら次のダンジョンの方が魔物は強い筈だろ」
「それは……そうだよね……それでも余りお役に立てない鈴っていったい?」
自虐的な鈴。
大迷宮をまだ余り知らない鈴以外は首を傾げるのだけど、それに対する解はこの通路の先にある大きな空間で示されたのである。
「離れろ!」
その空間にユート達が入った途端に見た目だけなら強そうではない、半透明でゼリー状のナニかが通路へと続く入口を一瞬で塞いでいた。
「私が征くわ! ハァァァッ!」
《RIDER SLASH!》
雫――仮面ライダーサソードが先手必勝とばかりにサソードゼクターの尻尾を押し込みつつ毒の刃を以て駆け抜ける。
雫は壁を壊そうとサソードヤイバーを振るったのだが、ゼリー体たる表面が飛び散ったに過ぎず壁は壊せてはいなかった上に、飛沫がサソードのアーマーへと付着をした。
「嘘、アーマーが溶けてる!?」
仮面ライダーのアーマー故に簡単にドロドロにはならないが、それでも飛沫が付着している部位は明らかに溶け始めて慌てる雫。
「雫よ、暫し我慢せよ!」
仮面ライダーリュウガとして使った侭にしていたドラグブラッカーの頭を模した手甲――ドラグクローから黒い炎を放ち、サソードのアーマーを溶かしたゼリーの飛沫を焼いた。
ティオは絶妙に加減をしたからゼリー状の飛沫だけを焼き尽くしたものの、これの本来の用途を鑑みれば熱くて堪らないのかゴロゴロと転がっているのを香織が見兼ね……
《BLIZZARD!》
本来はクラブスートに属するワイルドベスタのカテゴリー6で消火する。
鎮火して落ち着いた雫に回復呪文のベホイミを掛けてやるユート。
「助かったけど酷い目に遭ったわ……」
一息を吐いた雫だったがユートは残念な表情――仮面で見えないが――をして叫ぶ。
「また来る!」
ゼリーの壁から離れたと思えば今度は頭上から無数の触手が襲いきて、更に云えば先端など槍の如く鋭く尖っているみたいだけど見た目は間違いなく出入り口を塞いだゼリー。
「いかんな、アレにも強力な溶解作用があるやも知れぬ」
「……ん、風壁」
ユエが障壁を張る。
「喰らうが良いわ!」
更にはティオがドラグクローから黒炎を繰り出し触手を焼き払ってやった。
「中々のコンビネーションだ、ユエにティオ」
ユエの魔法による鉄壁の防御、その防御に護られつつティオが攻撃をするコンビネーションは、中々に堂に入っていたものである。
「聖浄と癒しをここに【天恵】!」
ベホイミでは治し切れていなかった雫の受けたダメージを香織が癒す。
「雫ちゃん、どうかな?」
「有り難う、香織。後は戻ってからね」
そんな風に動く仲間を見てやはり暗い鈴。
「……む? ユート、このゼリーはどうやら魔法も溶かすみたい」
言われて見れば確かにユエの張った障壁がジワジワと溶かされていた。
「ふ~む、やはりか。先程から妙に技の威力が失われると思っておったのじゃ。どうやら彼奴めは炎に込められたエナジーすらも溶かしてしまっておるらしいの」
「魔力処か仮面ライダーの力まで? という事はアレは原初か!」
「原初とな?」
「混沌の海から殆んど未分化の侭、世界に産まれ堕ちた混沌の落とし子とも云える存在。魔物と変わらない様に見えて魔物じゃない」
「何と、まぁ」
ゼリーはエナジーそのものを溶かす強力にして厄介な能力、魔物ではないが大迷宮の魔物に相応しい存在だとも云えた。
そして遂にゼリーを操っているであろう存在が姿を現わす、天井の僅かな亀裂から染み出すが如く出てきたソレは空中で形を成していく。
半透明の人型ではあるが手足は鰭、全身に極小の赤いキラキラした斑点を持って頭部には触覚の様なモノが二本程生えており、宙を泳ぐ様に鰭の手足をと動かすその姿はクリオネだった。
とはいえ全長一〇mのクリオネなど魔物というのも憚れる。
巨大なクリオネ擬きは特に予備動作をするでも無く全身から触手を飛出させ、同時に頭部からはゼリーの飛沫をシャワーの様に飛び散らせた。
「焦熱結界!」
ユートが右腕を外から内側へ薙ぐと火炎と呼ぶにも荒々しい焦熱の結界が顕れ、巨大クリオネ擬きの原初の放った飛沫を防ぐ。
「炎の結界、攻防一体の……な」
水幕結界と違って焦熱結界は炎だから触れれば燃える、それを応用すれば文字通り攻防一体となって扱えた。
(まぁ、アレでは残念ながら水幕結界と焦熱結界しか出てこなかったんだが……」
当然ながら元ネタがある。
【輝竜戦記ナーガス】という作品、これに出てくる魔神は四源で種族が分かれていてそれぞれが
とはいえ、主人公が水魔神と炎魔神のハーフな母親で人間の父親を持つ魔神と人間のハーフという事から、雑魚や小ボスくらいしか地魔神や風魔神は出てきておらず、結界も地と風のモノは出てくる事も無かったのである。
ハルケギニア時代に魔法でナーガスの攻撃である炎竜焼牙や水竜斬刃を使ったが、今ならもっと完全な形で完全なモノとして行使可能であるし、結界系も取り敢えず独自に創ったりもした。
「! チッ、
魔力で作る焦熱結界が蝕まれている。
「嵐流結界!」
焦熱結界の後ろに風の属性の嵐流結界を展開、
【輝竜戦記ナーガス】本編には存在していなかった風の
風の結界だったのは理由があった。
「炎・竜・焼・牙……」
炎の魔神力の集束による攻撃。
「サラマンドラバーン!」
風は炎を煽り強化する。
嘗て、【風の聖痕】で炎の神凪一族が風の風牙衆を討伐後に取り込んだ理由でもあった。
「ナーガスは炎と水の魔神だったし、風魔神の中に味方が居なかったから使えなかった手だ!」
嵐流結界を通る際に炎の威力を弥増して極炎の竜と成り、巨大クリオネに向かって焔の牙を剥き出しに襲い掛かった。
因みにだが、仮に主人公の霧山竜輝に風魔神の仲間が居ても敵が炎魔神であるからには水の魔神力を中心に使わねばならず、余り意味が無かったからというのも多分にあったりする。
尚、剪定事象となった【輝竜戦記ナーガス】の世界に干渉した結果として、あの世界のヒロイン枠やその他を拾い上げて【閃姫】としている為にユートの冥界、エリシオンの一角に彼女らが暮らしていたりするのだが……
それは兎も角として炎竜焼牙が巨大クリオネを焼くものの、強い再生力により余りダメージにはなっていないらしい。
「原初なだけに食い意地と生き汚さはサイヤ人とカンピオーネを足して掛けてるよな」
魔神力は小宇宙と同じ力を源流とする親戚にも近い間柄、魔力や氣力や念力や霊力の一元の力を喰えたり溶かしたり出来ても、四元合一の力までも可能だとは思っていなかったユートだったが、どうやらちょっと認識を改めた方が良さそうだと巨大クリオネを視て考え直す。
よくよく見れば、巨大クリオネの腹の中に先程まで斃してきたヒトデ擬きや海蛇が存在していて溶かされており、よくファンタジーモノの漫画で見られるスライムに溶かされる動物を彷彿とさせてくれた。
勿論、人間もそうやって消化されるのだ。
「ふ~む、どうやら弱いと思っておった魔物とは本当に只の魔物でしかなく、こやつの食料だったみたいじゃな主殿よ。こうも無限に再生されては流石に敵わん、魔石は何処に在るのじゃ?」
「あれ、そういえば……こいつって体躯が透明の癖に魔石が何処にも見当たりませんね?」
ティオの言葉にシアが改めて巨大クリオネをを見るが、確かに普通なら見え見えな筈の魔石らしき物が何処にも見えない。
「どうなってんのよ?」
「確かにティオさんの言う様に魔石を狙いたいのに魔石が見当たらない?」
雫と香織も事実に気付いて愕然となる。
「……ユート?」
訝し気にユートを見上げるユエ。
「言ったろ、奴は魔物に見えて魔物とは異なる。原初という未分化の混沌、その僅かな飛沫がこうやって形を取ったモノなんだよ。魔石なんて持ち合わせてはいない」
「っ!? そんな!」
ユエに答える形で巨大クリオネについて語られてしまい、まだまだ馴れない鈴が泣き出しそうな表情となって叫んだ。
「優斗君、 魔石が存在しないって云うならそれを狙うのは無理なのかな?」
「無理だな。強いて言うのなら、あのゼリー状の体躯……その全てが魔石とも云えるだろうけどね、ああも再生をされてはな。それと気配が全体的で気付けなかったが、壁も床も天井も奴の気配が有るから或いは既に腹の中みたいだ」
「じょ、冗談でしょ?」
香織からの質問に対してユートが事実を話すと雫が絶望の声を上げ、それと時を同じくして再び巨大クリオネが触手とゼリーの豪雨だけでなく、海水を伝って魚雷の如く体躯の一部を飛ばしてきてくるなんて攻撃を仕掛けてくる。
悪夢の王の一欠片よ
「……ユートが詠唱?」
珍しく詠唱をするユートにユエが驚く。
凍れる闇き虚ろの刃よ
我が力我が身と成りて
共に滅びの道を歩まん
神々の魂すらも討ち砕き
「
橙色のスパークを放つ闇色の刃は神すら斬り裂く虚無の剣、それは混沌の一部を刃の如く振るうという金色の
「こちとら、矜持すらも捨て置き使ったんだ! 今すぐに叩っ斬ってやる!」
ユートは仮面ライダーに成ったら仮面ライダーの力を、ウルトラマンに成ったらウルトラマンの力を……という縛りをしていた。
成るべくなら……程度のものだが。
所謂、舐めプと云われればその通りだろうけど原典のヒーローを思えばそれくらいはとも。
だけど所詮は矜持、仲間の命と自分の意地を秤に掛ける心算なんて無いのだ。
「おりゃぁぁぁっ!」
ユートは魔力量が大きいとはいえこの神滅斬の
維持はやはり短い、その為に可成りの短期決戦をユートは強いられてしまうものの、原初が相手でも決して引けは取らない魔法。
その気になれば物質は疎か精神体や虚空さえも斬れる必滅の刃である。
擬態能力か何かで壁に変じていたらしいそれもユートが斬り裂き剥がれ逝く、まるで古くなった壁紙が剥がれるが如くであったと云う。
「壁それ自体が原初じゃなかったか」
「若しそうなら怖いですよ!」
泣き言を言うシア。
「質量が相当でかいらしいな。際限なく湧いてくるぞ、一閃型の神滅斬じゃあ焼け石に水か」
如何なる存在をも斬り裂く神滅斬とはいえども
欠点は有り、一閃型だからその場を攻撃するしか出来ないのと際限の無い再生で斬撃を防ぐ事なども不可能ではない事が挙がる。
本体への攻撃も愈々以て激しさを増したからか巨大クリオネも壁全体から凄まじい勢いで湧き出してきて、更には水位が徐々にだが上がってきて膝辺りまでだったのが腰の方まで増水していた。
本来なら背が極めて低いユエは既に胸元を越えて水に浸かっているが、仮面ライダーサガに変身しているから問題無く腰までだ。
「ちょっと面倒臭くなった」
「ちょ、優斗? 不穏で剣呑な事を言わないで? 何をする心算よ!?」
慌てる雫にユートはディケイドの変身を解除、更には何かリングを手首に装着している。
「
という呟きと共に……
「コール、サイバッスッタァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァアアーッッ!」
「「「ハァ!?」」」
それは小型ながら白亜のボディを持つ鋭角的なデザインのロボットを思わせる姿、【スーパーロボット大戦】のシリーズでも登場回数の多い機体であり、魔術的な要素も併せ持つというその名も高き魔装機神サイバスター。
「「「何でやねん!」」」
思わずツッコミを入れる地球組女子三人だったけど、ユートは【スーパーロボット大戦】に無印から始まりαシリーズやOGなどには参戦もしていたし、【VXT】にも参戦をしていたのだからサイバスターを纏う鎧を造っていてもおかしな話ではないのである。
機械式ではない魔導甲冑の一種ではあるけど、作中でサイバスターが使える武装は全て装備しているが故に、甲冑からカロリックミサイルが発射される不思議な光景も見られた。
「で、サイバスターに成ってどうするの?」
「一切合切の全てを焼き尽くす」
「……まさかとは思うけど?」
雫はタラリと汗を流す。
「サァァァイ、フラァァァァッシュ!」
「やっぱりぃぃぃぃぃぃぃっ!」
ユート――サイバスターの全身から光が立ち上ったかと思うと、目映い輝きが部屋全体を覆い尽くすが如く拡がっていった。
MAP兵器【サイフラッシュ】、魔装機神は全てが装備しているMAP兵器の中でもゲーム中に完全改造しない限り唯一、敵味方識別機能を持った装備である。
尚、ヴァルシオーネもサイフラッシュを基にして開発された【サイコブラスター】を持っている訳だけど、魔装機神ではないから当然の事ながらカウントをしてはいない。
光が収まると気配が消えていた。
数分くらい目を閉じていた彼女らであったが、視力が回復してきたのか顔を上げ始める。
「……ん、終わった?」
ユエが訊いてきた。
「欠片が残っていれば再生されるだろうけどね、それでも攻略中にって事は無い筈さ。それに奴には強力な再生否定をぶっ掛けたから再生すれば寧ろ削られる」
「再生否定? 念能力……とかじゃないわよね? カンピオーネの権能か何かかしら?」
「雫、違う。これは魔法だよ」
「へ?」
「恐らくこの世界では神代魔法の先に在るとされる【概念魔法】と同質のモノ、あの世界に於いては原始魔法と呼ばれていたモノだよ」
とはいえ、流石にユートも岩から生きた山羊を創ったりは出来ないのだが、代わりに時間なんかは大幅に短縮されているし概念の付与といった事が普通に出来る。
「あれにとって再生否定は毒物に近い、HPを削られながら回復していくから再生は遅々として進まないだろうな」
正しく巨大クリオネには毒であった。
サイバスター化を解除して再びディケイドへと変身、ユート一行はメルジーネ海底遺跡のその先に向かうべく歩を進める。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一方のその頃……
「美味しい!」
「またこれが食べられるなんて」
「これだけが幸福だよ」
「マジ、それな!」
ウルの町で美味しいスパイス料理に舌鼓を打つ優花達、再びこの地にやって来たのは穀倉地帯のウルの町の活性化は必須だったからだが、優花達からしたらやはり美味しい御飯にありつけたのが何より嬉しかった。
不幸な事はある。
玉井敦史は友人を二人も喪ったし、パーティの中で清水利幸が裏切りを働いたのだから。
だがそれを乗り越えて今を生きていた。
「うばぁぁぁぁぁっ!」
我らが愛ちゃんを除いて。
愛子先生はド派手に【豊穣の女神】と祭り上げられてしまい、町には豊穣の女神像なる物がいつの間にか設置されており、町に入る前から叫びを上げてしまったものだった。
余りにも恥ずかし過ぎて白目を剥いたもので、今も御飯を美味しく食べながら項垂れている。
とはいえ、玉井敦史には懸念もあった。
ユートなら死者蘇生が出来るらしいが、対価を支払わねばクラスメイトといえど力は使わないとはっきり言われ、やはりそれに対して完全に納得がいかないからであろう。
理屈は解らないでもない。
仮に自分がそんな力の持ち主だったとしたら、それを他者に知られて見知らぬ誰かが止めどなく『蘇生しろ』と詰め寄せたと考えれば、確かに嫌にもなってしまうというもの。
それでは『他人蘇生まっすぃーん』と変わらないではないか……と。
そう、理解はしているが玉井敦史の心は納得し切れてはいなかった。
正直に云えば頼みたいという気持ちは当然ながら持っているが、ユートは情に訴えても恐らくは決して頷かないとそこは判る。
情に訴えるという意味ならユートの【閃姫】になったという優花に頼んで貰ったらどうなのか、それを実際に彼女へと訊いてみた事もあったのだがキッパリ、けんもほろろに断られた。
『それ、私に何のメリットがあるのよ?』
『園部まで緒方みたいな事を言うなよ』
『あのね、アンタのその御願いの為に私は優斗に言わなきゃならないのよ。――貴方の寵愛を捨ててでも玉井の願いを聞いて下さい――ってね』
『な、何でそうなる!?』
『当たり前でしょ。他の男の為に命を甦らせてくれなんてさ、優斗のお、女として有り得ないの。だからアンタがそんな莫迦を私にやらせるなら、アンタは玉井は一生涯を抱く事も出来ない私を養う為に生きなければならないわ』
『なっ!?』
『仮にそうなっても今更、私は優斗以外にだ、抱かれたくないもの……玉井はあいつらの為に借金を背負ってでも独り身を貫きつつ、私を養っていく覚悟がある訳?』
『……』
日本では基本的に人の命の重さを学ぶが、ちょっと昔は命の価値などトータスのレベルで軽かった事もある。
それこそ吹けば飛ぶ程に軽い。
半世紀以上はまえの世界大戦でどれだけ生命が失われたか、それを思えばトータスみたいなやはり吹けば飛ぶレベルに命の価値が軽い世界で戦争の為に動いたクラスメイト達の命が軽んじられたとして、果たして何の文句を言う資格があるのだろうか? という話。
『忘れないで。私も同罪だけど、天之河に賛同をして戦争に参加した時点で私達は命をチップにしていたんだって事を。死んだなら自業自得って、きっと優斗なら言うでしょうね』
『だ、だったら! 緒方は自分が俺と同じ目に遭ったらどうすんだよ?』
『その時は相手が優斗の身内なら生き返らせるんでしょうね。それが優斗に許された優斗自身が得た能力なんだから』
『っ!』
死者蘇生の能力はユートがこれまでに生きて、そして闘い続けてきた結果として得た能力であるからには、ユート自身の我侭でユート自身の責任を以てそれを行使するまで。
つまりはそういう事だ。
玉井敦史は優花に頼むという事が不可能であると理解し、同時にどうあっても二人を生き返らせる事が自分には不可能だと刻まれた。
不可能、不可能、不可能、不可能!
自分達は神様から召喚されてチートな能力を手にして、我が世の春だと浮かれていた……浮かれてしまっていた。
戦争の意味に気付きもせず天之河光輝の言葉に従い、帰る為なら仕方がないと真実に蓋を被せて突き進んだ結果がこれだとは。
否、意味ならユートが身を斬って教えてくれていた筈ではないか?
赤い血を流して戦争に参加する意味を。
「ハハ、何だよ……結局は自業自得ってか?」
涙を流しながら座り込むしかなかった数日間、玉井敦史は今現在を暮らしている。
取り敢えずは皆でバカをやって飯を食う。
その内にそれこそユートが帰る為の手段を手に戻って来るのだろうし、せめて愛子先生を護りながらそれを待っていようと考えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ユート一行は順に下へと降りて行き今は密林を彷徨う形で歩いている。
とはいえ、退屈凌ぎは必要という事で夕飯を食べたら全員が裸になって御乱交を愉しんだ。
雫が、ユエが、香織が、ティオが、シアが、鈴が……この場には居ないミレディ以外が一時に抱かれており、勿論だがユートの身は一つだから余りは女の子同士で慰め合ってユートのヤる気を盛り上げていた。
BLはユート的に他人が勝手なヤってるのは構わないが、自分自身がヤりたくないし視たくないと考えているけど、GLに関しては観て参加して愉しみたいとすら思っている。
尚、BLは何処ぞの転生公爵令嬢が大好物だったのをユートはぼんやり思い出す。
しかも転生平民や転生侯爵夫人まで腐な人だったし、三人が集まるとBL的に文殊の智恵を付けてしまって手が付けられない。
まぁ、ユート自身は他の国でまだちょっと幼い婚約者と暮らしていたけど。
そんな事をしながら密林を抜けてみれば今度は船の墓場みたいな場所に出るのであった。
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メルジーネ海底遺跡はクライマックスかな?
仮面ライダーゼロワンは終了、来週から仮面ライダーセイバーですねぇ……
勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる