ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 何とか書けました……





第70話:又も勇者(笑)がやらかした!

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 離脱経路がヤバそうだから迷宮脱出呪文を使って出てきた一行、然しながら外部に出てから直ぐにユートは辺りを見回して眉根を顰める。

 

「どうしたのよ?」

 

「空気がおかしいんだ」

 

「空気がって?」

 

「服のボタンを掛け違えたみたいな……」

 

「どういう意味?」

 

 雫にはいまいち解らないらしい。

 

「解り易く言えばそうだな、列車を進める線路の路線が切り替わった感じだろうか?」

 

「路線が切り替わるとか言われても……」

 

 やはりピンと来なかった。

 

「それって本来の世界線から外れたって事なんじゃないかな?」

 

「鈴? そ、そうなの?」

 

「鈴もゆう君が感じるナニかは感じられないよ、だけど若しかしたらそういう事かなって」

 

「鈴の言葉通りだ」

 

 ユートはそんな鈴の言葉を肯定して頷く。

 

「少なくとも僕らが歩んだ歴史とは異なる歴史が好き勝手に造られた上に成り立つ世界線だ」

 

「それだと皆はどうしたのかな?」

 

 やはり香織は仲間が心配な様だ。

 

「僕の造ったライダーシステム乃至は護符を持たせた者は時の特異点みたいに影響は受けないよ。当然ながらそれ以外は完全に呑まれてしまっているんだろうけど……な」

 

「それって……」

 

「君らは勿論、愛子先生と愉快な仲間達も大丈夫な筈だ。ハジメと中村もライダーの力を与えているから問題は無い。勇者(笑)組は浩介と坂上にはライダーシステムを与えたからな」

 

「それ、ぶっちゃけると永山パーティ-遠藤君くらいしか影響を受けてないんじゃないの?」

 

「そうとも云うな」

 

 浩介を除いた永山パーティは諸に悪影響を受けているだろうが、それ以外は何で世界が変化したのか首を傾げている事であろう。

 

「じゃあ、キャサリンさん達は?」

 

 シアが困った様に呟く。

 

 ライダーシステムも護符も無い町で知り合った人々も影響を受けたのだろうか? ……と。

 

「町や施設で云えば、オルクス最深層、フューレンの町、ウルの町、ブルッグの町、アンカジ公国は僕の力で加護が働いてるから住む人間も含めて大丈夫。序でにフェアベルゲンもな」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「だからシアは心配しなくても良いよ」

 

「はい! ですぅ」

 

 王宮とホルアドとエリセンは無理だろうけど、大半がユートの影響下にあった。

 

 故にホルアドに居た鈴鳴(スールード)は頭を抱えていたりするが、流石に自己責任の範疇だろうから知った事では無いユート。

 

 刻の軛から切り離された永遠存在、下位神剣を使う分体とはいえそこら辺に変わりはないから、当然ながらどっかの莫迦がやらかした改変なんかの悪影響は受けない。

 

「けどまたぞろやらかしたか」

 

「まさか!? これを光輝が?」

 

「他に誰がやるんだよ」

 

「そ、それは……」

 

 勇者(笑)たる天之河光輝はやらかし過ぎ最早、ユートからの信用など皆無でしかない。

 

 皆無に等しいのではなく皆無である。

 

「兎に角、エリセンでミュウとレミアを回収してから王宮に行くぞ」

 

「光輝君を殺しちゃうの?」

 

「香織、其処は坂上がどうするか次第だ」

 

「龍太郎君次第……」

 

 坂上龍太郎に仮面ライダークローズチャージへ変身するスクラッシュドライバーを渡してあり、彼がどう動くかによって天之河光輝の今後の処遇

が決まってくる。

 

 見事に止めたら見込み在りとするが……

 

 取り敢えずはエリセンに向けてバスの速度を上げていくユート、目的地はエリセンのミュウ宅となるのは考えるまでも無い。

 

「それで、結局は何が起きてるのよ?」

 

「歴史改変」

 

「それって、電王みたいに過去へ遡ったとかそういうやつ?」

 

「それも在るんだろうが、今回はジオウ系の力を使ったんだろうな」

 

「ジオウってアナザージオウなら優斗が破壊したんじゃなかった?」

 

 アナザージオウウォッチは確かに破壊したが、ユーキからの情報ではアナザージオウⅡのアナザーウォッチも存在するらしく、それこそが本編にて加古川飛流が歴史改変に使ったウォッチの力。

 

「仮面ライダージオウはジオウⅡにパワーアップをしている。同じくアナザージオウもアナザージオウⅡに成っているんだそうな」

 

「ああ……」

 

 納得したのか頷く雫。

 

 ともあれエリセンに向かった一行だったけど、やはり騒然としている辺り間違いなく歴史改変に呑まれているらしい。

 

透明化呪文(レムオル)で姿を消してレミアの家に向かう方が良さそうだ」

 

 ドラクエⅢ本編では遅い修得の割に使い様が無かった呪文の代名詞だが、現実で姿を完全に消せるのは存外と使えるものである。

 

 実際、本編ではエジンベアに入るくらいにしか使えない癖に修得レベル35と魔王バラモスも斃せそうな時期に覚え、必要なエジンベアで使うのは【消え去り草】というアイテムだった。

 

 ユートはこれを潜入などに使っており、気配を周囲に溶け込ませた上で透明化すれば派手な音を立てない限りは見付からない。

 

 但し、人間が相手の時に限られるが……

 

 気配は誤魔化せても体臭までは誤魔化しが利かない――風の精霊に隠させる事は可能――から余り使えない為、魔物相手に透明化呪文なんて使った試しは無かった。

 

 因みにだが後に初代三ケンオウの一人となったカダルから聴いた話だけど、勇者アレルは試しにと透明化呪文で魔物を誤魔化せるかやってみて、やはり失敗をしたのだと云う。

 

 一応はカダルも止めたのだが……

 

 エリセンの港町入口でユートは透明化すると、足音も立てない静かな加速でミュウとレミアが待つ家に向かって行く。

 

 当然ながら家なは鍵が掛かっているが問題なと有りはしない、開扉呪文(アバカム)を使っても構わないのかも知れないがやはり秘密裏に動くなら扉を開けるのは拙いであろう。

 

 少なくとも入るのには。

 

(まぁ、テレポートすりゃ良いんだけどな)

 

 ユートのテレポートはヤードラット星人の使う瞬間移動、その為に移動をするには知り合いが居ないといけなかった。

 

 とはいえ、ルーラみたいな呪文もあるから特に不便はしていないのだが……

 

 シュン! 家の中に入るユート。

 

「ヒッ!」

 

 レムオルが切れたから姿が丸見えとなってしまった為、それを見咎めたレミアが声を上げそうになったのを素早く動いて背後を取り、口を左手で覆って右手でレミアの右手首を拘束した。

 

 恐怖からガタガタ震えている。

 

 ユートの顔を確認していないからレミアからしたら見知らぬ誰か――身体の線から男だと判断をした――が行き成り現れ、更には背後から口を押さえて動きを止められたのだから恐怖しかない。

 

「レミア、僕だ……ユートだ」

 

「んっ!?」

 

 ビクッと肩を震わせつつソッと後ろに目を向けると、確かに知った顔が困った表情をしながらも自分を拘束していた。

 

「今から放すから叫ばないでくれよ?」

 

 コクコクと頷くのを確認して放す。

 

「プハァ! アナタ、脅かさないで下さいませ。凄く恐かったんですよ?」

 

「済まないね、町の雰囲気がアレだから内密に入るしか無かったんだよ」

 

「そ、それです! 皆さんがアナタをまるで犯罪者みたいに捜してるんです。『破壊者』とか何とか言いながら……余りに恐くてミュウと引き籠っていたんですけど」

 

「そうだったか。重ね重ね済まないな。どうやら僕らと召喚された……違うな、召喚されて僕らを巻き込んだ勇者(笑)が莫迦をやらかしてくれたのが今の状況なんだ」

 

「勇者……ですか?」

 

「ああ、()()()()()()()()らしくてね」

 

 アナザージオウⅡの力で歴史改変を仕出かしてくれた訳である。

 

 とはいえ、そろそろ鬱陶しいと感じるのも確かだからいずれは抹殺したくなるだろう。

 

「兎に角、今は此処を出よう。事態が収拾されればまた帰って来れるから」

 

「は、はい。すぐにミュウを連れてきます」

 

 レミアは頷くとミュウの部屋へ向かう。

 

「さて、余り意味の無い改変になった訳だけど……坂上はどうしているかね?」

 

 割かしどうでも良いとは思うものの、ライダーシステムを与えた一人として気にはなった。

 

 リリアーナに関してはマグナモンを防衛戦力として置いてあり、特に危険は無いと考えてはいるが彼の邪神が斜め上な行動に出た場合はその限りではない。

 

 ややあって、ミュウを抱っこしながら戻ってきたレミアと共にオプティマスプライム飛行モードへと瞬間移動して、ユートは機体をハイリヒ王国の王宮へと向けて出発をした。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 自室でヘリーナと共に籠るリリアーナ。

 

 元は雫の専属メイドだったが雫が居なくなり、手が空いた事でリリアーナに引き込まれてしまったニアは、現在だと間諜に近い感じに動いていてこの場には居なかった。

 

「いったい何が起きているのでしょうか?」

 

「判りませんわ。ですがマグナモンが指摘をした通り何かが起きています。主にユートさんが何故か『破壊者』などと呼ばれて手配されましたから光輝さんの仕業でしょうけどね」

 

「また勇者様ですか……」

 

 ヘリーナには既に勇者たる天之河光輝に対して一切合切の敬意が無い。

 

 畏敬の念など最早懐き様がなかった。

 

「今はニアが情報を持ってくるのを待ちます」

 

「それしかありませんね」

 

 ユートが王宮に戻った際、ニアも間諜としての紹介をリリアーナがしたその日に抱かれており、確りと加護が働いているから彼女もリリアーナやヘリーナと同じく、元々の記憶を持った状態にて活動をしているので助かる話だ。

 

「はぁ、颯爽登場とかして助けて貰えないものでしょうか?」

 

「幾らユートさんでも限度はありますわよ」

 

「ですか……」

 

 まぁ、ユートは戦闘力だけならトータス内では神の使徒すら叩ける強さを有している訳だけど、だからといって何だって出来るというのも違うからリリアーナの科白に間違いはない。

 

「にしても、ヘリーナも馴染みましたわね」

 

「それは……」

 

 ユートが齎らしたトータスの言語に翻訳された娯楽小説、ユートがハルケギニア時代に世界観に合わせて書き直した既存の小説やユート自身によるオリジナル、更にはエロマンガ先生と呼ばれるイラストレイターが存在する世界で手に入れていたラノベなどをリリアーナ、ヘリーナ、ニアは読んでいたりする。

 

 特にあの世界でユートが【閃姫】とした少女達の作品にハマったらしく、全作品を是非とも読みたいとユートにおねだりをしていた。

 

 因みに、『颯爽登場』は後に『銀河美少年』と続くロボットアニメである。

 

 ファンタジー世界の人間がラノベなどにハマり易いのは、ハルケギニア時代にユートがラノベを齎らしたが故によく知っていた。

 

 リリアーナもムラマサ先生が書いた作品を読んでいる内に、会って話してみたいと思うようにもなったのだと云う。

 

 一方の間諜をしているニアはどういう状況なのかの情報収集に努め、この事態がやはりと云うか天之河光輝により齎らされたものだと理解する。

 

 実際に天之河光輝がまるでハイリヒ王国の王の様な体で玉座に座っていた。

 

「何ていう事を……」

 

 エリヒド国王もルルアリア王妃もランデル王子も皆、天之河光輝の座る玉座の横で素座りを強制されていながら文句すら言わない。

 

「そういえばあの方はユート様と闘って無様に敗けた時、自分を勇者王とか名乗ってド突かれていたんでしたか? それで玉座を奪った訳ですか。しかも陛下や妃殿下も殿下も何故か文句も言わない辺り、某かがあったと考えるべきですね」

 

 ニアの持つ魔導具には間諜なら垂涎の的となる機能を有しており、こうして矢鱈滅多に近付いてもバレずに行動を可能としていた。

 

 彼女に自覚は無いが、ユートに抱かれたからには歴史改変の余波は受ける事も無かったから逆に受けた人間の事は解らない。

 

 当然だが間諜は出来ても戦闘力は低いニアでは天之河光輝から王族を救えないし、仮にルルアリア王妃が性的虐待を受けていたとしても見過ごすより他には無かったりする。

 

 幸いにもそれは無い。

 

「ああ、勇者様は玉無しでしたっけ?」

 

 香織をレ○プしようとしてユートの加護により棒も玉も砕け散った。

 

 ユートが偶に『僕の【閃姫】になると僕以外は抱けなくなる』とか言うが、まさかこういう文字通りの()()だとは誰も思うまい。

 

 幾ら歴史改変をしようがユートと香織が結ばれており、香織が歴史改変の余波から外れているからにはどうしても治らなかった天之河光輝の股座に生えていた()()()()()J()r().()は今尚も粉砕された侭であったと云う。

 

「さて、取り敢えず姫様の所に戻りますか」

 

 情報収集を終えたニアは玉座を離れた。

 

 ニアがリリアーナの部屋に戻るとマグナモンが侵入不可のシステムを起動する。

 

 ユートが造った拠点構築防衛用魔導具であり、リリアーナも知らない内に彼女の部屋に設置されていた訳だが、話をマグナモンから聞く限りではユートが初めてリリアーナとヘリーナを閨で貫いた翌日には、二人が気絶をしている間にパパッと設置してしまっていたらしい。

 

 場合によっては避難場所と出来るのが大きく、必要なら食糧や水なども備蓄しておける。

 

 しかも部屋の大きさはハイリヒ王国のお姫様なだけにそれなりだったが、魔導具を起動してからは空間が拡大されて本人の部屋の部分を除けば、本来の広さの百倍にも及ぶから正しく王宮内に於ける砦と成っていた。

 

「ニア、御苦労様でしたね」

 

「いえ、それが御役目ですから」

 

 リリアーナに労われて恐縮してしまうニアは、ヘリーナから果実水を渡されて飲み干す。

 

「やはり事態は思ったより可成り深刻な様です。陛下も妃殿下も殿下も勇者様にまるで傅く下僕の様な感じでしたし、メルド様も掌を返したかの様にユート様を悪だと叫ばれてました」

 

「やはりメルドも……」

 

 現在はリリアーナが個人的に雇う近衛騎士である筈が、一番に異変を察知してこの場に馳せ参じる人物でありながら丸で音沙汰無し。

 

「メルドは我が主から加護を受けてないからな。我が主に抱かれて【閃姫】か【準閃姫】などにでも成るか、ライダーシステムなり護法具なりを受け取ったなどがなくば仕方があるまいよ」

 

「ライダーシステム? 護法具?」

 

「有るだろう? 我が主達が仮面ライダーに成る為の魔導具だよ。護法具は確か……今は【閃姫】に成っている園部優花嬢とその仲間や畑山愛子嬢が渡されていた筈だ」

 

「そういえば優花は最初に着けて無かったバレッタを愛しそうに触っていましたわね」

 

 恐らくそれが護法具なのだろう。

 

 本当に因みにだが、そこら辺の石ころを簡易な護法具にして清水幸利や玉井淳史にくっ付けられており、飽く迄も一応の保険レベルで莫迦をやらかさない様にしてあった。

 

 優花や愛子先生を護る為に。

 

「それでマグナモンはどう動くと良いと考えていますか?」

 

「今は拠点防衛で構うまい」

 

「と、言いますと?」

 

「我が主が坂上龍太郎という者と交わした約束があるからな。奴がどう動くのかで我々の動き方も違ってくるだろう。それに万が一にも他で動きがあれば初動が遅れる場合も否めん」

 

「な、成程……」

 

 単にマグナモンが暴れれば良いという訳では決して無く、寧ろ社会的には無意味に恐怖を撒き散らしかねないが故に動き難い。

 

「そも、我々――ロイヤルナイツはネットセキュリティの守護を司る最高峰として我が主より産み出されたのだ。攻めより護りこそが本領となる」

 

 だからこそマグナモンは護衛なのだから。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ブルックの町のマサカの宿。

 

 ソーナ・マサカは懲りもせず美味しそうな客――ハジメと恵里の情事を覗くべく勤しんでいた。

 

 その情熱を別の場所に向ければ一角の人物にも成れそうだが、本人は至って大真面目でヤっているのだから些かアレかも知れない。

 

 まぁ、だからハジメ謹製アーティファクトにより防御をしている。

 

 朝っぱらから二人は盛っていた。

 

 昨夜も遅くまで頑張っていたハジメだったが、男の生理現象として朝の棒勃ちは若さ故に避けられなくて、何より隣に着衣一つ無い裸体の恵里が寝ていて素肌がハジメのJr.を刺激してくれているのだから堪らない――寧ろ溜まる!

 

「もう、無駄射ちなんてダメダ~メ」

 

 起きた恵里がそう言って御奉仕をしてくれるから再び情事に及ぶ、それにより結局は昼前までは部屋に篭り切りになってしまう。

 

 二人はユートからライダーの力を与えられていた上に、ブルックの町もユートの加護を受けていたから王宮やホルアドやエリセンに比べて平和を享受しており、ライセン大迷宮に挑めない以外はハジメは恵里と共にリア充を愉しんでいた。

 

 起きてから数発目の絶頂を互いに駆け上がったら流石に疲労感から休憩、それでもキスをしたり御触りしたりとお互いに労り合っている。

 

「どうにも昨夜から空気がおかしいよね」

 

「うん。ボクも偵察がてらにベノスネイカー達を

出しているんだけどね、ホルアドの町は緒方君を勇者(笑)の光輝君が指名手配をして賑わってるみたいなんだ」

 

「優斗を……天之河君が指名手配? 幾ら勇者でもそんな事が可能なのかな?」

 

「ボクにも判らない。少なくともブルックの町にそんな混乱は無いんだけどさ」

 

「……天之河君が某かやらかした?」

 

「多分ね。ボクらが王宮を出る切っ掛けからして光輝君のやらかしだったでしょ?」

 

「まぁね。白崎さんを襲った辺り、恵里まで襲われたら嫌だったから」

 

「もう、ハジメ君ったら」

 

 そう言って恵里はキスの雨を降らせる。

 

「となると、優斗はその対処をする事になるからライセン大迷宮はまだ御預け……かな?」

 

「そうなるね。なら暫くは愉しい性活だね」

 

「うん、優斗がくれた護法具で避妊も出来るから妊娠の心配も無いし」

 

「ボクは産んでも良いんだけどね」

 

「それは僕が恵里と子供に責任有る立場を取れる様になってからだよ」

 

「うん」

 

 【異物排除】の効果は凄まじいものがあって、本人の肉体にとって異物となるモノは何であっても排除が可能で、元々は毒物を警戒した護法具でありながらウィルスや寄生虫は疎か男の精子すら排除してしまえる為、ある意味では最強の避妊具として使えてしまう護法具と相成った。

 

 だからハジメは生射ちで恵里の胎内を焼いてしまえるし、恵里もハジメの欲望を直に感じる事が出来て幸せそうにしている。

 

 恵里としては妊娠しても構わないが、ハジメは自分が二人――恵里と子供を養える様になってからと堅実に考えていた。

 

 しかもそれは高卒でも可能。

 

 他のクラスメイトは将来なんて漠然としか考えてない、それは恐らくキラキラ勇者(笑)も似たり寄ったりでしか無いのだろうに、オタクと蔑まれるハジメこそは将来を堅実に決めている。

 

 それは正しく皮肉でしかあるまい。

 

 話し合いも終わり、結果的に二人は動かないと決めたので昼になるまでマサカの宿でイチャイチャとしているのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 愛ちゃん護衛隊は相変わらず穀倉地帯となっているウルの町を中心とし農業に精を出しており、清水幸利も余計なモノ――闇術師の闇魔法などを喪った状態で農作業をやらされている。

 

「本当なの、キバーラ?」

 

「ええ、主様から連絡があったわぁ」

 

 小さな白い蝙蝠擬き――キバーラからの報告を受けている園部優花、歴史改変が天之河光輝により行われた可能性があるのだと聞かされて頭を抱えたくなってしまう。

 

「どうしてそんな?」

 

「どうやらアナザージオウⅡの力を這い寄る混沌から受け取ったらしいわぁ」

 

「アナザージオウⅡ? 確かアナザージオウ自体は壊された筈だけど……」

 

「まぁねぇ、だけどアナザージオウⅡウォッチは別に存在しているものぉ」

 

「本当に厄介ね。だけどウルの町も私達も変わり無いのはどうして?」

 

「優花は主様の御寵愛を戴いているでしょぉ? 貴女の先生もだけどぉ……ウフフ」

 

 まだまだ初心な優花は紅くなる。

 

「序でに言えばぁ、貴女のお友達は護法具によって護られているしぃ? ウルの町も主様の加護を受けているわぁ」

 

「それで無事だったんだ」

 

「そぉうよぉ」

 

 優花は護法具――髪の毛を飾るバレッタに手を伸ばしてソッと触れ、頬を朱に染めて『優斗』などと呟きながら瞳を月夜の灯りへ向けた。

 

「それにぃ、主様はお米の産地たるこの町を甚く御気に入りだものぉ。優花だって異世界のカレーであるニルシッシルは確保したいわよねぇ?」

 

「それは確かにそうね」

 

 ユートが町に加護を仕掛けていた理由は幾つか存在するが、ウルの町の場合はやはり米の産地であるのが一番の理由であろう。

 

 ユート自身はアイテムストレージ内に米は有るのだけど、有限であるからにはやはり産地が在るなら確保しておかねばなるまい。

 

 実際にウル産の米を確りと確保済み。

 

 フューレンは一応の後ろ楯たるイルワ・チャングに何かあれば具合が悪く、折角の後ろ楯が無くならない様にしておくのが理由。

 

 ブルックはソーナ・マサカを抱いたのが理由という辺り、やはりユートは関係を持った相手には甘いくらいに優しくなれる。

 

 アンカジもフューレンと似た理由ではあるが、実はアンカジ公女のアイリー・フォウワード・ゼンゲンと割かし良い仲になったのも理由だった。

 

 エリセンに加護を敷いて無かった理由は至って簡単、そもそも加護自体が単なる保険に過ぎなかったから【メルジーネ海底遺跡】の大迷宮攻略後

で間に合うと思ったから。

 

 それで後手後手に回った訳だが致命ではないのだから、原因を排除してしまえばそれでこの異常な事態も終息をする。

 

 ユートに焦りは無かった。

 

 王宮のリリアーナは自室に篭ってマグナモンが護れば良いし、ヘリーナとニアもリリアーナが匿えばそれで充分に護られる。

 

「それで私達はどうしたら良いかしら?」

 

「この場に留まるべきねぇ」

 

「どうして?」

 

「今更、王宮に戻るのに何日が掛かるかしらぁ? それならぁ、比較的安全な此処に留まった方が良いわぁ」

 

「そうかもね……」

 

 そもそもがこのウルの町に今居るのはユートの瞬間移動呪文のお陰であり、馬車なんか時速にして二〇km有るか無いかでしかないから王宮の在る王都まで数日は確実に掛かる。

 

 町から出れば魔物も現れるであろうし、それは仮面ライダーキバーラになれば屠れるにしても、やはり意味も無く危険と隣り合わせな旅行に出たい人間は居ないし、乗馬は何とか出来るにしても馬車を操るスキルは無いのだ。

 

 乗馬が出来て馬車は操れない? それは当然であろう、日本でも単車の免許証で四輪車の運転を許可したりしない。

 

 普通四輪で原付きは簡単な講習を同時進行により受けて乗る事は可能だが……

 

 ならば優花だけが馬で飛ばすか?

 

 仮面ライダー的なバイクを持たない優花では、馬で走るのが精々でしかない。

 

 然しながら馬は生き物であるからにはどうしても休憩を挟まねばならず、どっちにしろ今からでは事態収拾に間に合う筈もなかった。

 

「ま、必要なら向こうから迎えに来るか」

 

「そうねぇ、主様の今回の目的は坂上龍太郎とやらの見極めだしぃ……少なくとも優花は要らない子ではあるわねぇ」

 

「言い方!」

 

 要らない子じゃないもん! スッゴく肢体を求めてくれてるんだから! などと場違いな感想を頭に浮かべながら優花は眠りに就く事にする。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 坂上龍太郎。

 

 努力と筋肉は自分を裏切らないとでも言いたいのか鍛え上げた肉体に拳士の天職、ボディビルダーの魅せる為では無く闘う為の筋肉を鍛えてきた経験に裏打ちされた説得力を持つ。

 

 最近の困り事は幼馴染みで親友の天之河光輝が暴発してやらかすという、余りにも自分ではどうしようもない事態であったと云う。

 

「畜生! 俺は結局何も出来てねー!」

 

 壁を殴り付けながら不甲斐ない自分を罵るだけ罵って気を鎮める。

 

 ユートと天之河光輝の決闘騒ぎを始めとして、アナザージオウなる怪人に変態して更なる決闘を仕出かした親友、ユートも『仏の顔も三度まで』だが自分は仏じゃないから三度も赦さんとばかりに最後通諜を突き付けた。

 

 何とか次を起こしたら自分が殴ってでも止めるから的な言い分で譲歩を引き出せたというのに、天之河光輝が一ヶ月も経たない内にまたやらかしてくれたのだから堪らない。

 

「やるしかないのか……」

 

 王宮内では何故か勇者様への万歳三唱であり、もう既に天之河光輝を見限っていた筈のメイド達や女性騎士達が又候、熱い視線を送っているというおかしな事態にも陥っていた。

 

 幸い? なのが香織はユートの庇護下であり、今現在のおかしな事態の余波は受けていないからだろうか、()()()()()J()r().()は今も御亡くなりになった侭だから性的な関係はもう結んでいない点。

 

 坂上龍太郎は天之河光輝の居場所が玉座の有る謁見の間だと知り、すぐにもスクラッシュドライバーを手にして駆け出した。

 

「光輝ぃぃっ!」

 

「やぁ、龍太郎か。どうしたんだ? 女が欲しいなら幾らでも見繕うぞ」

 

「巫座戯んな! またやらかしやがって! どうして大人しくしてらんねーんだよ!」

 

「ハッハッハ、何を言い出すかと思えば益体も無い事を。俺は勇者にして王、勇者王なんだから。こうして玉座に在るのが正しいのさ」

 

「まだそんな事を! ド畜生がぁぁぁっ!」

 

 水色のバックルを腰に据える。

 

《SCQRASH DRIVER!》

 

 ベルトが伸長してきて合着すると、何処かしら若本ヴォイスな重低音電子音声が響き渡った。

 

 坂上龍太郎はスクラッシュドライバーのパワープレススロットに、スクラッシュドラゴンゼリーという物を中央へと装填する。

 

《DRAGON JELLY!》

 

 次に前面の右側に付くアクティベイトレンチを押し下げてやった。

 

「変身っ!」

 

 ケミカライドビルダーがガタンガタンと生成されると、頭頂部スクラッシュファウンテンと胸上部スクラッシュノズルからヴァリアブルゼリーが噴出し坂上龍太郎の全身を包みむ。

 

《TSUBURERU! NAGARERU! AFUREDERU! DRAGON IN! CROSSーZ CHARGE! VURAAAAAA!!》

 

 現れたのは銀色のアンダースーツに銀色の鎧に両肩に龍の紋様、液化装備ヴァリアブルゼリーを硬化させた水色で半透明な顔と胸部装甲。

 

「龍太郎、その姿は……」

 

「仮面ライダークローズチャージだ! 今の俺は敗ける気がしねーっ!」

 

 決して死なせない為に、遂に幼馴染みを止めるべく【仮面ライダークローズチャージ】に変身をする坂上龍太郎であった。

 

 

.

 

 

 

 

 




 今回は場面が飛び飛びでクローズチャージによる戦闘まで往けなかった。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

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