ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 今回は第三回家族会です。





第73話:聖剣ウーア・アルトをゲットだぜ!

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 畑山愛子先生の進退に関わる。

 

 確かに召喚をされてから半年が過ぎてしまった今として、果たして学校に愛子先生の籍が残っているのか疑問が生じてしまった。

 

「まぁ、籍は残っているだろうね」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 バッと顔を上げる。

 

「ああ、籍を残しておけばスケープゴートにし易いだろう?」

 

「……え?」

 

「既に学校を辞めさせた相手じゃ万が一に生徒に某かあった場合、詰め腹を切らせる事が難しくなってくるからな。下手したら自分達が犠牲になりかねないから愛子先生が学校を免職されるとしたなら、生徒に某かあった責任問題が表面化してからになるんじゃないか?」

 

「そ、それは……」

 

 つまり詰め腹を切らせる為だけの生け贄の羊、愛子先生にとって絶望しかない話であろう。

 

「しかも懲戒免職の可能性も高いね」

 

「うう、そんな~」

 

 懲戒免職を喰らったらもう教師生命は間違いなく終わるし、他の職業に就く事も難しくなるのも不可能に近くなるだろう。

 

「愛子先生の肢体じゃあ春を売っても……存外と売れるのか? 主に真性のロリコン辺りに」

 

 年齢は二五歳だから間違いなく合法でありながら見た目は中学生、小学生を越えたらBBAだと云うロリコンというよりペドに近い奴でもなければ売れそうである。

 

「嬉しくありませんよ! っていうか、春なんて売りませんから!」

 

 春を売るとは早い話が文字通りの売春であり、当たり前だが余程の淫乱でもない限りは好んで売りたいとは思うまい。

 

「まぁ、本当に懲戒免職になっても確か愛子先生の実家は農家だったよね?」

 

「え、はい」

 

「愛子先生の天職は作農師だからきっと実家では重宝されるよ」

 

「それは……それも嬉しくありません」

 

 愛子先生との寝物語で聞いた話だと昔に起きた盗難事件、その犯人に仕立て上げられた愛子先生を外部者では唯一、先生だけが信じてくれて割と大きな声で愛子先生の無実を信じてくれた。

 

 最終的に愛子先生の無実が証明された訳だが、先生は居られなくなってしまう。

 

 愛子先生はそんな恩師みたいな教師に成りたくて将来を目指したのだとか。

 

 愛子先生はまだ何も成し遂げてはいないのに、懲戒免職になって教師生命を断たれてしまうのは余りにも困るが、だからといって生徒が殺処分を受けるというのも受け入れられない。

 

「だけど基本的に遅れは天之河が余計な事をするからだし、こうなれば寧ろ天之河光輝なんて生徒は居なかった事にした方が良くないか?」

 

「な、何て事を言うんですか!」

 

「天之河の所為で何人が死んだ?」

 

「……へ?」

 

「天之河が積極的に戦争参加を表明した所為で、いったい何人の生徒が死んでいる?」

 

「そ、それは……その……」

 

 口篭る愛子先生、そして流石に堪らなかったのか天之河光輝が口を開いた。

 

「待て! 然も俺の所為みたいに言うな! 殺したのは檜山だろう!」

 

「誰もお前が直接殺したなんて言っていないさ。だが戦争に参加する=人死にが出るというのは示した筈だし、お前は皆に向かって言ったよな? 確か『皆が家に帰れる様に、俺がこのトータスも皆も救ってみせるさ』……だったか。救う処か半数が死んでいる訳だがな。皆が家に帰る? どうやっても不可能だったんだよ。お前の大言壮語が皆を惑わせ死なせたのは事実なんだしな」

 

「ち、違う! 檜山が香織を撃ったから! 俺は守れる筈だったんだ!」

 

「筈も何も、事実として誰も守っていないだろ。僕はまぁ良いさ。小悪党四人組も自業自得だし、

ハジメに関しては初めからお前にとって守る対象外だったろうしな。だけどお前に賛同した十数人や香織に雫に愛子先生は守れなかった」

 

 そも、そういう悪意から守ってこそ。

 

 全部を守ると言いながら突発的な事象だったから守れませんでした……などと、天之河光輝は理想を只追うだけで理想を追い越せない夢想家に過ぎないのだと証明したのである。

 

「違う、違う、違う! 違うっ!」

 

「これが現実だ」

 

 ユートは冷たく言い放った。

 

 実際、ハジメは天之河光輝にとって守る対象ではないと考えている。

 

 何しろ虐められるハジメを助けない処か文句を言うくらいで、雫は『悪意は無い』と言っているけどユートに言わせればどう好意的に考えてみて()()()()()しても『悪意しかない』だ。

 

 天之河光輝本人にその自覚が全く無いだけに、余計と性質が悪いのだとさえ云えた。

 

 ユートからしたらどっちにせよ守れないのだしどうでも良いけど、ハジメの両親は天之河光輝を睨んでいたし頭を抱える天之河聖治達。

 

「ゴホン、それで残り三つの鍵たる神代魔法とやらは場所など判っているのかね?」

 

 其処がやはり気になったのか八重樫虎一が代表して訊いてくる。

 

「勿論、把握している。実際に莫迦が騒ぎを起こしたからアレだったが最終的にはこの近くに在る大迷宮に入る予定だったしね」

 

「待て、緒方」

 

「どうした、永山?」

 

「この近くに大迷宮が在るとか聞いた事が無い。それは本当の事なのか?」

 

「大迷宮を造った七人の【解放者】、とは云っても今は反逆者と呼ばれている。その内の一人から直接聞いた話だから間違いない」

 

「直接? 確かに大迷宮は七ヶ所在るとされてはいても、実際に存在が確認される乃至は未確認ながらそうだとされる場所は三ヶ所だけだったのに……って言うか、それなら全員で行った方が良かったんじゃないのか?」

 

「役にも立たない連中なんか連れて言って要らない犠牲を出しても……な」

 

「む、うう……」

 

 ライダーシステムが有れば能力がバカみたいに上がるから攻略も叶うが、ユートが再三に亘って言っている通りで身内以外に与える気は無い。

 

 女の子なら【閃姫】と成るのが一番早道だし、男の場合は親友クラスの仲であるのがそうだ。

 

 故に現状、天之河光輝を止める為に与えられている坂上龍太郎を除いたら、男はハジメと浩介のみが仮面ライダーに変身をする事が出来る。

 

「まぁ、いずれにせよ下手に聖教教会に噛み付いても良くて無一文での放逐、下手したら神敵認定で殺しに来ただろうから戦争参加は取り敢えずでもやる必要はあったが……まさか何の交渉も無しに言われるが侭に参戦を表明するとはな」

 

 参戦表明自体はするしか選択肢が無かったが、せめて色々な譲歩を引き出す話し合いくらいする必要はあった筈なのに、キラキラ勇者(笑)は行き成り参戦表明をしてしまった。

 

 当然ながら余りにも考え無しな天之河光輝に、両親以外の家族会の面子が白い目を向けている――妹の美月までも。

 

 天之河聖治は泣きたくなったし奥さんは泣いてしまっている。

 

「本当に天之河の頭が良いって設定は何処に溶けて消えたんだろうな?」 

 

 成績がトップで自慢の息子……の筈が応用の利かない頭でっかちでしかなかったのだから、自分達の教育も躾も父親――天之河完治に任せ切りにしていたのを今更ながら後悔したのであろう。

 

 家族会と妹の美月からは白眼視され、両親には泣かれた天之河光輝はどうして自分がこんな目に遭うのかと理不尽を感じていた。

 

(俺は……俺は……俺が勇者なんだぞ!?)

 

 最早、アイデンティティーだとでも言いたいのか『勇者』の天職にしがみ付き、それが下らないエゴを増幅させている結果になっているのだとは気付けない。

 

「さて、こっから先だが……神代魔法を残り三つ、こいつを手に入れるのが先決だろうね」

 

「残り三つとはどんな魔法かな?」

 

「そうね、気になるわ」

 

 流石はオタクなハジメの両親なだけに其処らは気になるらしい愁と菫。

 

「この近辺の大迷宮で『魂魄魔法』、ハルツィナ樹海で『昇華魔法』、氷雪洞窟で『変成魔法』。

まぁ、名前だけだといまいち解り難いかも知れないけど前に少し説明はしたよね?」

 

 変成魔法は確かに解り難いけど前回で多少なり教えてある。

 

「概ねはな」

 

「完全に理解した訳では無いわよ」

 

 然もありなん。

 

「この三つを手にしたら更に概念魔法の習得が叶うのも前に教えた通り」

 

 尤も既にユートは概念を魔導具に付与したり出来ているし、別世界で“原始魔法”を習得しているけど恐らく割と似た魔法だ。

 

 だからといって邪魔になる訳でもないだろう、何より他の神代魔法と同様に既に使える力の補助になる筈で、覚えて損をするでもないからこうして先ずは神代魔法を覚えて回っていた。

 

「さて……折角、顔を合わせたのだから改めて話したいな緒方優斗君」

 

「白崎さん……」

 

 白崎智一氏が話をしたかったらしい。

 

「香織の事ですか?」

 

「ぐぐっ! その顔でマイエンジェルを呼び捨てにされると……クるものがあるな」

 

 流石は親バカというか、ユートの本当の顔にて愛娘への呼び捨て行為で額に青筋を浮かべつつ、それでも智一氏も極力は笑顔を浮かべている心算であるらしい。

 

「くっ、君が還ってきたら一発殴りたい!」

 

「そりゃ、構いはしませんが……拳が壊れてしまっても知りませんよ?」

 

「ぬっ!?」

 

「僕とて生身の人間? だから殴ったら金属みたいだったなんて有りませんが、それでも鉄心を入れた硬質ゴムを殴る様なものですからね」

 

 素人が殴ったら指の骨を骨折するであろうし、玄人ならば文字通りに拳が破壊される。

 

「ま、取り敢えず香織の初めての男として一発は殴られる心算だったし、戦闘力を最低限にまで落とせば骨折とかは無いだろう」

 

「くっ! 初めての男だと!? 判っちゃいたが今すぐ、本当に今すぐ無性にぶん殴りたい!」

 

 当の香織は真っ赤な顔で俯きつつもチラホラとハジメを窺うが、特に感想も無かったのか恵里と手を繋いでいた上に恋人繋ぎだった。

 

 此方も判っちゃいたけど衝撃が奔る。

 

(本当に南雲君の恋人なんだ……)

 

 今更ハジメに対して好意なんかは見せられない身体であるにしても、それでも嫌いになったから離れた訳では無かった為か地味にショックを受けはしたけど、これで完全に諦められたのかも知れない……と瞑目をしながらそう考えた。

 

 どうせユートに散々抱かれたのだから。

 

「そう言えば雫も……」

 

「うっ、飛び火したかぁ」

 

 八重樫虎一が雫を見遣ると自慢のポニーテールで顔をガードする。

 

 当たり前だが情事の話を女の子が好んでしたがるものではない、況してや親族に聴かれるなんてそれはどんな精神的な暴行かという話だ。

 

 既に香織も雫も茹で蛸みたいに真っ赤っかで、香織は顔を伏せて雫はポニーテールガード中。

 

「セクハラは父親でも成立するぞ?」

 

「む、それは……」

 

「ふむ、仕方がない」

 

 ユートの指摘に白崎智一と八重樫虎一が黙り、漸く次の話に入れそうだと嘆息をした。

 

「それでだ、ウチの娘をキズモノにしてくれたからには責任を取って貰えるのかな?」

 

「話題が全く転換されてないわよ!?」

 

 八重樫虎一の話に雫がツッコむ。

 

「責任……ね。【閃姫】に成って貰ったからには取らない理由は無いですね」

 

「しれっと進めた!?」

 

 雫のツッコミは華麗にスルーされた。

 

「とはいえ、そうなると僕の本来の世界に嫁ぐ形になってしまいますが……」

 

「本来の世界とは?」

 

「僕は平行異世界の地球からやって来た異邦人、即ち本来の世界というのは貴方達が住む地球とは違う地球。場合によっては理すら異なる世界」

 

『『『『『なっ!?』』』』』

 

 そこら辺を識っていた永山達は兎も角として、親~ズは驚愕するしかない情報である。

 

 鈴がパーティに合流する直前の話し合いにて、自身を転生者だと明かしているから永山パーティは平行異世界についても心得ていた。

 

「平行……()世界?」

 

 白崎智一が聞き慣れないのか呟く。

 

「平行世界に関しては識っていますね?」

 

「所謂、if(若しも)の世界だな」

 

「その通り。分岐点から右に歩いた世界と左に歩いた世界は、選んだ世界も選ばれなかった世界も等しく存在しているという考え方」

 

 簡単に云えばそうなる。

 

「もっと解り易く言えば――オルクス大迷宮にて、小悪党四人組のリーダーがこの世界では香織を撃った訳だが、平行世界ではハジメが撃たれて奈落に落ちたなんてのも在るね」

 

「「「「え?」」」」

 

 今の話に反応したのはハジメと恵里と南雲 愁と南雲 菫の四人だった。

 

「ちょっと待って、それって本当にあった事だったりしない?」

 

「喩え話には終わらんな」

 

「それじゃ……」

 

「奈落に落ちたハジメは爪熊に左腕を切り落とされて喰われ、神結晶を獲て神水を飲んで命こそ拾ったけど『奈落の怪物』とでも呼ぶべき存在に成り果て、更には多頭蛇の攻撃で右目を喪ってしまって――遂には『魔王』にまで成った」

 

「僕……が……?」

 

「因みに、一人称は『俺』になった」

 

「うへぇ……」

 

「序でに厨二病が再発した様な容姿に」

 

「ぐふっ!」

 

 そして崩れ落ちるハジメ。

 

 然しそうなると恵里が気になるのは自分がどうだったのかである。

 

 ハジメが落ちたなら自分を助けたのは誰か? それこそ天之河光輝なのか?  

 

(無いね、少なくとも光輝君の『守る』は口先だけだもん)

 

 守る守ると言いながら結局は守ってなんてくれなかったのが天之河光輝、そんな大仰な約束など

しなくても助けてくれたのがハジメだ。

 

 だけどユートの喩えではハジメが落ちており、助けてくれる存在が居ない事になる。

 

「あのさ、ボクはどうなるのかな? ハジメ君が奈落に落ちたなら助けは?」

 

「中村……か。ユーキ、中村はどうなるんだっけ? 僕は識らないけど」

 

 ユートは飽く迄も必要な知識のみの又聞きだけに全てを識る訳ではない、それが故に判らない事が出たらこうして訊いてみるしかない。

 

「オンドゥルルラギッタンディスカァ!?」

 

「了解した」

 

『『『『『ええっ!?』』』』』

 

 意味を理解出来なかった面々が叫ぶ。

 

「という事らしいぞ」

 

「何が!?」

 

 恵里もよく解らなかった一人らしくて叫ぶしかなかったと云う。

 

 オンドゥル語という、【仮面ライダー剣】に於いて剣崎一真――椿 隆之氏の滑舌の悪さからくる

言葉の代表格にしてオンドゥル語の大元となった科白で、ローカスアンデッドと闘うブレイドを見つめるだけの仮面ライダーギャレンを見付けて、仮面ライダーブレイドの剣崎一真が『ダディヤナザーン

! ナズェミデルンディス! オンドゥルルラギッタンディスカァ!?』と叫んだのが発祥とされる。

 

 尚、『ナズェミデルンディス!』と『オンドゥルルラギッタンディスカァ!?』の間には戦闘の科白というか

 

 まぁ、機材の問題なども恐らくはあった空耳がネタ化したものなのだが……

 

 早い話が、仮面ライダーギャレン――橘 咲也が実際に裏切っていた訳ではないけどこの場合だと『中村は裏切ったよ』の意訳される。

 

 ちょっとした二人の御遊びだ。

 

「要するに違う世界線の中村は小学生の頃に心が傷付いて自殺でもしようかと考えていた折りに、天之河光輝が話を聞いてくれた上で『俺が守る』という必殺技を発動、惚れたけど天之河光輝には殺意の波動を放つ女子が多数居たし、香織や雫が居るのが当たり前な空気になっていたから告白でもしようなら虐めの対象待った無し、だからこそ裏から始末したいけが地球では侭ならないんで、このトータスで成し遂げてやろうと企んだ結果として魔人族の誘いにでも乗ったんだろうね」

 

「うっ!」

 

 魔人族云々は兎も角、的確な指摘に恵里は思わず息を呑んでしまっていた。

 

「確かにボクはあの侭だとそうしてた。ハジメ君と恋人になったからそんな気はもう無いけど」

 

 愕然となったのは天之河光輝。

 

 本来ならすぐ傍にヤれる相手が居たのに知らぬ間に掻っ浚われていた上、()()()()()()()()()()()でしかないハジメが相手とか拳をギリギリと握り締めた。

 

「そういう意味ではハジメがファインプレーといった処か。勇者(笑)なんぞに固執しても不幸にしかならないだろうしね」

 

 しかも完全に侮られている。

 

 香織の笑顔が、雫の信頼が、鈴の無邪気さ全てがユートへと向けられていて、更に様々なタイプの美女美少女がユートに侍る形で傍に居た。

 

 少し幼い感じの金髪美少女なユエとミレディ、青み掛かった白髪な兎人族のシア、艶やかな黒髪に妙なる顔立ちで胸も一番大きなティオ。

 

 それ処かどうもリリアーナ王女がユートを見る目が怪しく、まるで恋する乙女が御相手でも見るかの如く熱く潤んでいた。

 

 美しいお姫様の御相手は勇者である筈なのに、丸っきり見向きもされていない気がする。

 

 有り得ない、有り得てはならない。

 

 だけど其処は勇者(笑)天之河光輝の超絶技能、【御都合解釈】が発動して飽く迄もそれは無意識に在り、天之河光輝が直に考えた事では決して無い上に違う事を考えていた体となる。

 

 所謂、天之河光輝中では的な。

 

「緒方!」

 

「何だよ、煩いな天之河。今は話中なんだから少し静かにしてろ」

 

「何だ、そのぞんざいな態度は!」

 

「今更、お前に気遣う理由が無いしな」

 

「っっ! 俺と決闘しろ! 俺が勝ったなら皆を解放するんだ!」

 

「これだよ、解ったかな? 天之河聖治さんや。このお邪魔虫っ振りが天之河の真骨頂だ」

 

「本当に申し訳無い!」

 

 天之河聖治は普通に良い人らしく天之河光輝の莫迦を見て青褪め、一心不乱に土下座までしての謝罪をしてくれたのでユートも悪意を持ち様が無かったし、奥さんもペコペコと元ヤンとは思えないくらいに低姿勢だった。

 

 完全に育て方を間違ったというより父親に任せ切りにしていたツケ、ユートが話した様に弁護士な天之河完治は正義感を煽る心算は無かったのであろうが、まだ早いと考えて世界の闇に関しては全く教えていなかったらしい。

 

 教える前に亡くなったから天之河光輝は間違った正義に固執した形なのか、ユートが言った様な事をトータスでやらかしたのだ。

 

 地球では息子の悪評など聞かなかったのだが、それは火消しをどうやら雫や八重樫家がしていてくれた結果らしく、若しもそれが無かったのなら間違いなく問題提起されていた。

 

 そういう事なのだろうと理解する。

 

 天之河光輝は目を見開いて驚愕するしかない、両親が行き成りユートに謝り始めたのだから。

 

「緒方ぁぁっ! お前、ウチの両親に何をしたんだぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 故に激昂するのだが……

 

「黙れ、勇者(笑)風情が!」

 

 ギョッとなる様な視線に黙る他無い。

 

「決闘なら受けても構わないが、お前は何を差し出す? 前にも言ったが、他者にリスクを求めるなら自身もリスクを提示しろ」

 

「ぐっ!」

 

 とはいえ、天之河光輝に差し出せる物など既に無いと言っても良かった訳だが、技能はもう既に【言語理解】しか所持してないしレベルを差し出したならば完全に詰む。

 

「ふう、なら【ウーア・アルト】を貰おう」

 

「うーああると? 何だか判らないがそれで良いなら構わない」

 

 何だか天之河光輝が腰に佩く聖剣の輝きが弱くなった気もするが気のせいだろう。

 

「ルールの設定と契約書による絶対遵守の契約、これをしないと御都合解釈主義者は信用がならないからな」

 

 ユートが例の【魔法先生ネギま!】製魔導具の鵬法璽に替わる魔導具――【絶対遵守の契約書(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命ずる)】を出す。

 

 名前は【コードギアス】の主人公――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアがギアスを使う文言から、『ランペルージ』ではなく本来の名前にしたのはちょっとした拘り。

 

 実は世界間移動中に聖杯の願いを叶える機能が発露してしまい、【コードギアス】の世界に引き込まれたのだが何と原作は終わっていた。

 

 その場所に居た三人はユートも識る少女達で、願い事を聞いてやった事があったからか拘り的なネーミングとなったのだ。

 

 それは兎も角……

 

 書かれた内容を契約した者に絶対遵守をさせる正しく魂魄まで縛る魔導具、鵬法璽と同じタイプの魔導具ではあるがより細かく書き込んでしまえるから割と使い易くて、契約書という体裁上からこうして双方向で行えるのも大きい。

 

 内容は決闘による賞品の設定と決闘内容によるルールそのものの設定。

 

 天之河光輝は『ウーア・アルト』の譲渡でありユートは『【閃姫】の解放』となる。

 

 ルールは『この世界で獲たモノのみ使う』事、恐らく天之河光輝は卑怯な力(仮面ライダー)さえ無ければ錬成師など無能、今の自分でも決して敵では無いと考えたのであろう。

 

 そして王族貴族や家族会の一同が見守る中で、場所は訓練所としていつも使っていた広場。

 

 審判には歴史改変から元に戻り、リリアーナの近衛騎士に復帰をしたメルド・ロギンスを迎え、ユートと天之河光輝が約二〇mの距離で対峙をする形で始まった。

 

 王族貴族からの下馬評はユート一に対し天之河光輝が九といった感じ、一はリリアーナから得た評価である為にか九を得た筈の天之河光輝は憮然となったのが笑える。

 

「始め!」

 

 メルドの声に合わせ動こうとした天之河光輝が固まってしまう。

 

 ユートの手に何らかの機器が握られて回転させながら正位置に納め、右手に持った状態で天高く掲げながら叫んだからだ。

 

「重甲っ!」

 

 雁字絡めの罠を仕掛けるルール無視の奴らに、『愛の掟』で闘いそうな甲虫をモチーフとしている青き戦士――

 

「ブルービート! 重甲ビーファイター!」

 

 メタルヒーローの一角【重甲ビーファイター】の主人公の甲斐拓也が装着者なブルービートへと『重甲』し、重々しそうながらも機敏なアクションで構えを取ると天之河光輝に名乗った。

 

「待て待て待て!」

 

「何だよ?」

 

「卑怯な力は無しだと言ったろう!」

 

「仮面ライダーじゃないし、そもそも契約書に書かれた内容は『このトータスで獲たモノのみ使う』という事だ。インセクトアーマーや装着用のデバイスのビーコマンダーも、このトータスにて獲た【錬成】の練習過程で造った初期作品だぞ。其処のいったい何の問題が有るんだ? 言っておくが【絶対遵守の契約書】はサインをした人間を等しく縛るから、僕が契約違反をしたら間違いなく縛られて動きを止められるからな」

 

「くっ!」

 

「要するにお前が聖剣やキラキラな聖鎧を使うのと同じだ」

 

 確かに天之河光輝は今現在、聖剣アベルグリッサーと何とか国御抱え錬成師が修復をした聖鎧を装備しており、その気になったなら『天翔閃』や『神威』を放てるであろう。

 

「う……うるさいうるさいうるさい!」

 

「お前……くぎゅぅが言うなら可愛いげもあるが、男が言ってもひたすらウザいだけだぞ」

 

「黙れ! 卑怯な力は使うな!」

 

「やれやれだぜ」

 

 感情だけでモノを言うのは変わらないらしく、こればかりは死んでも治りそうに無い。

 

 『重甲』の解除をしたユートはトントンと足を地面に二度ばかり付くと、右腕を曲げ気味に掌を上側に向けて指をヒョイヒョイと内側に動かす。

 

 完全に舐めた感じの煽りであった。

 

「緒方ぁぁぁぁぁぁ……」

 

「錬成」

 

 走り出して一歩を踏み出す天之河光輝……

 

「……ぁぁぁっ!?」

 

 足下に大穴が口を開いて落ちた。

 

 カランカランと聖剣を地面に落としていたのをユートは拾う。

 

「はい、錬成っと」

 

 再び足を地面にトントンと付くと大穴が閉じ、天之河光輝は地面の中でプレスされる形に。

 

「こ、光ぉぉぉ輝ぃぃぃぃいいいっ!?」

 

 絶叫する坂上龍太郎。

 

 重々しく地面にプレスされては死んだかも知れないと思ったろうが、流石にこれを『やらかした

』と判断するには厳しいと考えている。

 

「坂上、地面は軟らか目にしたから今すぐ掘り返せば死なないと思うぞ?」

 

「ほ、本当か!?」

 

「ほれ、スコップ」

 

 ユートが地面の鉄分で総鉄製スコップを錬成して渡してやると、坂上龍太郎が『うおおおっ!』と脳筋爆発で掘り返し始めた。

 

「優斗、二つばかり訊きたい」

 

「何がだ? メルド近衛騎士殿」

 

「先ず、さっきのは何だ?」

 

「見ての通り、錬成で地面に穴を空けて天之河を其処に落とした」

 

「訊きたい事が増えた。錬成の魔法陣やら詠唱はどうしたんだ?」

 

「魔法陣は靴底に仕込んである。ハジメの手袋を見る限り可能だと判断したからな。詠唱に関してはこの世界の魔法の理では詠唱も無く魔法を使えるのは【魔力操作】を持つ魔物だけ、だが例外として魔法適性が高いとそれに併せて詠唱を短くする事が可能だったな?」

 

「その通りだ」

 

「僕の魔法適性は非常に高い。というか親和性が高いと云っても過言ではないと言うべきかな? しかも錬成に近い力を地球でもよく使っていたから僅か一日で錬成の派生技能が埋った程だ」

 

「なっ!? だから詠唱が要らないと?」

 

「その通り。派生技能に【複製錬成】や【高速錬成】というのが在り、一度でも造ったら以降から同一規格で錬成が可能だし、錬成の速度も凄まじく上がる。空を飛べない限り有効な穴空け錬成をやらない理由があるかな?」

 

「無い……な」

 

 錬成師が直に闘うなんて()()()()()()のだからこんな発想自体が無い。

 

 【複製錬成】は銃の弾丸を造るのに便利な為、ユートも実はそれなりに弾丸製作で使っていた。

 

 更には【高速錬成】と【自動錬成】を組み合わせると、僅か一日足らずでユートなら弾丸を一〇万発とか一気に錬成をしてしまえる。

 

 しかも一mmの狂いも無く完全な同一規格で……だから、銃のパーツ造りなんかに於いても故障などがまず無いと云って良い。

 

 勿論、メンテナンスを怠れば別だが……

 

「次に聖剣をどうする心算なんだ?」

 

「どうするも何も、賞品をどうしようとも此方の自由だと思うが?」

 

「は? 賞品はウーア・アルトとやらで聖剣では無いだろう!」

 

「メルドは何を言ってる? だから決闘の賞品は()()()()()()()()()だろうに」

 

「はぁ!?」

 

 メルドが驚愕に目を見開き口をあんぐりと顎が外れそうな程に開けた。

 

 驚いたのはエリヒド王もである。

 

「ア、アベルグリッサーでは?」

 

「それは此方で勝手に付けてた偽りの名前だね、本来の銘はウーア・アルトと呼ぶべきだ」

 

 より正確な銘はユートも識らなかったりするのだが、少なくとも神樹の女神ウーア・アルトが宿ってからの聖剣の銘はウーア・アルトだろう。

 

 まぁ、聖剣その物には既に用は無い。

 

 必要なのは宿った女神ウーア・アルト本神で、元々が彼女の為に構築した【女神の器】に容れて()()()()()に宿す予定。

 

 どういう金属なのか理解したからには聖剣と同じ金属は【創成】が出来るし、造り出す事になる新しい聖剣は今の聖剣より高性能になるだろう。

 

 当然ながら真の【女神の器】は女性体であり、日本人形の如く長い黒髪の美少女顔はアベルグリッサーな器と同じだが、ユートがイメージから識った女神ウーア・アルトと同じ肢体にしているのが【女神の器】である。

 

 未だにユートは変成魔法を獲ていないのだが、そもそもユートの【創成】は無機物有機物の別無く使用が可能であり、イメージ次第では人間すら構築が可能となっている。

 

 【ハガレン】の世界とはそもそも理が違うから人体錬成でおかしな事にならないし、肉体を持って行かれたりも当然ながら無い。

 

 問題が有るとしたら倫理。

 

 まぁ、【ハガレン】も倫理も有ってそんな感じになっているのだろうが……

 

「ま、待つのだ! 聖剣を持って行かせはせぬ。兵士達よ、奴から聖剣を取り戻せ!」

 

「全くやれやれだぜ……重甲!」

 

 再びインセクトアーマーを纏うユート。

 

「インプットマグナム!」

 

 このインプットマグナムという銃は番組の始めからビーファイターが使っており、三つの数字を入力する事で様々な機能を使える万能性を持ち、二代目レッドル登場からパルセイバーという短刀が出て、それとの合体により更なる威力増強すら可能となった代物。

 

 【1】【1】【0】【INPUT】ビームモードにして、ユートは兵士達に銃口を向けてトリガーを躊躇う事も無く引いた。

 

 放たれたビームが兵士を一撃で沈める。

 

「なっ、なっ!?」

 

 あっという間の話でエリヒド王は唖然。

 

 【8】【1】【8】【INPUT】――火炎放射を放つモードで焼かれる兵士、【2】【8】【9】【INPUT】の磁石ビームモードで鉄剣などならば取り上げる事も可能。

 

 遂には騎士まで出てきた。

 

「やれ、騎士達よ!」

 

 騎士団長に就任したクゼリー・レイルは苦渋の決断で王命に従い騎士を動かす。

 

「往きなさい!」

 

 前騎士団長にして今はリリアーナの近衛騎士の筆頭たるメルド・ロギンスから聞いてはいたが、まさか自分がユートの相手を敵対的な意味でする事になるとは思いもしない。

 

 ユートは冷静にパルセイバーを合着。

 

「セイバーマグナム!」

 

 【9】【6】【4】【INPUT】――破壊弾モードにしてトリガーを引く。

 

「マキシマム破壊弾モード!」

 

 パルセイバーを合着させたセイバーマグナム、それは各モードを強化してくれる。

 

 只でさえ高い威力にマキシマムモードで威力を高めた為に鎧は大きな穴を空けて破壊されたし、非殺傷設定だから痛みこそ本物のダメージと変わらないが死なないのを良い事に、凄まじい痛みを与えてやった。

 

 全員が呻き声を上げるか気絶をするか。

 

 クゼリー・レイル騎士団長は絶望に頭を抱えたくなるが、王命を果たさない訳にもいかない宮仕え故に副団長ホセを動かす。

 

「副団長!」

 

「仕方がないでしょ」

 

 メルド・ロギンスはリリアーナが個人で近衛に任命したから仮令、エリヒド王といえど命令権は無かったからホセが行くしかない。

 

「スティンガーウェポン!」

 

 背面に装備された個人武装、ブルービートのは両刃の剣の形をしている。

 

「スティンガーブレード!」

 

 回転させ威力を増して必殺技になる武器。

 

「ビートルブレイクッッ!」

 

「出落ちかよぉぉっ!?」

 

 対応など叶わずホセも沈んだ。

 

 ほんっとうに仕方無くクゼリー・レイルが剣を抜いて相対したが……

 

「うがぁぁぁっ!?」

 

 漸く掘り出された天之河光輝が苦しみに喘ぎ、ゴロゴロとのた打ち回っていた。

 

「勇者様に……な、何が?」

 

「契約書による縛り付けだな」

 

「……え?」

 

「本人が邪魔しなくても他が邪魔をしたら普通に

発動するし、さっきからエリヒド王の命令が出る度に死ぬレベルで苦しんでるんだろうな」

 

 それを聞いたエリヒド王が慌てて命令を撤回、天之河光輝も落ち着きを取り戻す。

 

 完全に気絶したけど。

 

 こうして家族会は波乱に満ちたものとなったが概ね成功、その後は鈴の両親に鈴を喰っちゃった事を説明したり、天之河美月が雫との百合目当てとはいえ【閃姫】に成りたいとの申し出などがあったけど悪くない話し合いであろう。

 

 そしてユートは神山のバーン大迷宮へ単身にて挑み、見事に【魂魄魔法】をゲットした序でながらラウス・バーンプログライズキーもゲット。

 

 残す処は神代魔法は二つでプログライズキーが三つ、【昇華魔法】と【変成魔法】と【リューティリス・ハルツィナプログライズキー】と【ヴァンドゥル・シュネープログライズキー】と【オスカー・オルクスプログライズキー】である。

 

 取り敢えずユートは落ち着いただろうミュウとレミアの故郷エリセンへ、二人を帰らせる為にも一旦はそちらへと戻るのであった。

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 まだだ、まだ死なせんよ! 役割は果たして貰いたいですからねぇ……


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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