ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 随分と遅くなりました。扱うのが解放者達なんで色々と資料を漁ったり、基本的に原作は電子書籍にしての購入だから別口で使っていたら読めなくなる為に可成り遅れてしまったのですよねぇ。





第75話:邂逅する幼女と【解放者】達

.

「チッ、何て事だよ!?」

 

 レミアは傍に寝ているがミュウだけが居ない、パッと見回しても居なかった。

 

「皆は……可成り遠いな」

 

 ユートはレミアの顔を優しく撫でて周囲に居るであろう【閃姫】の気配を探り、序でにミュウの気配も捜してみたが小さいからか見付からない。

 

「レミアを連れて行くのは悪手か」

 

 単純に足が遅くなる。

 

「ミュウには変身ツールこそ渡していないけど、保険に()()を渡してあるから大丈夫な筈」

 

 実はミュウも無力では決してない、万が一を考えてミュウにも扱えそうなアイテムを渡してあるからだ。

 

 とはいえ四歳児なミュウに過剰な戦闘力などを期待はしておらず、飽く迄も合流までの時間稼ぎが出来れば『よっしゃ、ラッキー!』くらいに考えての事である。

 

「取り敢えずレミアを起こすか」

 

 まさか傍に誰も居ないとなればレミアが泣きながら徘徊しかねないから。

 

 ユートは沢山の女の子と縁を結び、その大半と肉体的にも精神的にも結ばれてきたけど愛情が薄れたとかはなく、寧ろ強欲に全てを手放さないくらいに求め続けるだけの愛着を持つ。

 

 レミアとはまだ肉体的には結ばれていないが、それでもユートとしては既に誰かに渡す選択肢など有りはしない。

 

 自分なら幸せに出来るとか自惚れる気は無い、然しながら今のレミアにとってはミュウの傍にて成長を見守るのが幸福の一つ、離れる事が何よりも不幸な事だと考えたならばミュウがユートの事を『パパ』と定義している現状、レミアからしたらユートと離れるのはミュウの不幸でしかないから離れられないであろう。

 

 離れる事が叶わない成人男性となればレミアがユートに擦り寄るのも無理からぬ事だと云えて、ならば本当の夫の様に接するしか無いと考えても仕方がない。

 

 本当の夫は亡くなっているから不倫にはならないし、愛した夫が死んでから五年が経ったのだからいい加減で喪に服するのも良い筈だから。

 

 それに夫以外を識らないレミアがミュウを切っ掛けとするとはいえ初めて、そんな亡き夫とは違う男に興味を懐いたのだから周りの奥様方は喜びを以てユートを迎え、周りの独身者――中には既婚者まで――は嘆きと哀しみと絶望を以て迎えた。

 

 ユートは男共はどうでも良いとして、奥様方からの支持はレミアを手にする上で有り難い。

 

 勿論ながらムリえちぃに及んだりはしないが、レミアが望めばいつでもウェルカムである。

 

 ユートはシステム的に処女が相手の方が良いのだが、別に本人は処女厨ではないから未亡人でもレミアくらいの美女に不満など無い。

 

 基本的にユートは不倫などしないのでレミアが

未亡人なのは正に天啓……レミアの亡き夫の事を考えると不謹慎極まりないけど。

 

 ユートは起き上がる。

 

「ん……ハッ! ミュウ? ミュウは何処?」

 

「起きたか、レミア」

 

「あなた!? ミュウは?」

 

「残念ながらこの場に居るのは僕らだけなんだ。ミュウは恐らく何らかの力の影響下に在ったから一人で何処かに居る筈」

 

「そ、そんな……捜さないと!」

 

「落ち着け!」

 

「落ち着いてなんて居られません!」

 

 ユートの叱責に全身で反論するレミア。

 

「狼狽えるな!」

 

 更なる叱責に肩を震わせる。

 

「さっき言った力は決して悪しき存在ではなかったから、少なくともすぐにミュウが危機に陥ったりはしない。それにミュウにも力は与えているからいざとなればそれを使うだろう」

 

「力? 仮面ライダーやビーファイターですか? でもあれはあなた自身が使わせなかったではないですか」

 

「仮面ライダーやビーファイターはある程度までなら身長を変えられるから、よっぽどの背丈差でもなければ扱うのに問題は無い。それこそ僅かに一四〇cmしかなくても……ね。だけどミュウだと一〇〇cmかそこらしかないから」

 

 四〇cmは流石に大きな差だった。

 

「身長が足りなくても使える物を渡したからね、問題は無いから心配は要らないよ」

 

「でも……」

 

「それでも心配になるだろうからすぐに捜すさ。ミュウに力を渡したのも最低限で身を守る為でしかないからね」

 

 飽く迄も命の危機に瀕さない様にする為でしかなく、そもそも渡したは良いが出来れば余り使って欲しくは無かった。

 

 属性的にはピッタリだったけど原典的には敵でありイメージが良くないのが理由。

 

 特に()()の内の一つはミュウが使うのを想像すらしたくないが、ユート自身も忌々しいと感じる這い寄る混沌の神力を形にしたネオディケイドライバーを使っていたし、結局は力など使う者次第だと考えて渡していたのである。

 

 使わせない為にもユートは早目にミュウを捜し当てたいし、そうなるとレミアを連れて行くのはスピードダウンにしかならない。

 

「私も行きます!」

 

「駄目だ」

 

「何故ですか!?」

 

「出来たら早く捜したい。レミアが居ると自然と脚が遅くなる。魔物が居れば護る事も考えないといけない、そうなればミュウが危険に晒されるって可能性が高まる。本末転倒だろ?」

 

「それは……はい……」

 

「此処に結界を構築する。六次元からの攻撃さえ徹さない結界だから安心して待っていてくれ」

 

「ろく……じ……げん?」

 

 意味が解らなかったらしく小首を傾げる姿が、子持ちとは思えない可愛らしさだった。

 

 ユートが構築した結界はよく使ってるいつもの【封鎖領域】ではなく、【まつろわぬアーサー】から簒奪した【麗しの騎士王】による派生権能。

 

 元々が【カンピオーネ!】主体世界の彼処には行く予定が無かったけど、【ハイスクールD×D】世界でアーシアを殺されたと思い込み暴走をした結果、消滅の危機に瀕したユートは直属の上司である【朱翼の天陽神】の神号を持つ日乃森シオンがそちらの世界の真の神の一柱たるパンドラへと連絡して送り込み、自らの神氣を幾らか差し出して【簒奪の円環】を用いて神殺しに転生させた。

 

 パンドラ自身は未来から来たユートによって、転生が上手くいく事を識っていたから了承をしたのだと後に語る。

 

 幾らかの時をカンピオーネとして過ごした後に

権能の名前について、英国はグリニッジ賢人機関の前議長プリンセス・アリス――アリス・ルイーズ・オブ・ナヴァールの住まいへ突撃、中国にて六年前の過去に跳ばされて【まつろわぬアーサー】が降臨した現場に居合わせ、アーサーを討つ事で過去のアリスを助けてアーサーの神氣を獲たユートは、鎧と剣と鞘の竜骨を同時に入手をした為に持ち合わせていた【ハイスクールD×D】世界由来の神器――【聖剣創造】と結び付いたのもあってか、極めて強力で派生権能が幾つも発生をするイレギュラーまで起きた。

 

 【麗しの騎士王】の単純な能力は名前の通り、Fate由来のアルトリア・ペンドラゴンが使用した【約束された勝利の剣】を手にする権能だったのだが、【聖剣創造】の力と剣の竜骨により派生をしたのが【勝利すべき黄金の剣】と【最果てにて輝ける槍】、更に【ハイスクールD×D】由来となる七振りに分かたれたエクスカリバーまで扱える割かし意味不明な権能となっている。

 

 そして今回の結界について、それは鞘の竜骨と結び付いた結果として生まれた権能で【全て遠き理想郷】と成り、派生権能として結界を構築する特殊な権能として働いてくれるのだ。

 

 まぁ、最初に使ったのがサーシャ・デヤンスタール・ヴォバン侯爵との決闘だったが……

 

 六次元からの攻撃さえ徹さないとは【全て遠き理想郷】が持つ能力の一つだ。

 

 というか、ユートが識る範囲にしか権能も働かないのであろう。

 

 それを思えば通常のカンピオーネの能力とは、基本的に謂われを基に構築されていたから無知でも普通に使えたらしく、あの神話や魔術に全く以て無知蒙昧な草薙護堂でさえ最初の権能は割かし使えるモノとなっていた。

 

 因みにその権能は今やユートが獲ている。

 

 【最後の王】と闘うのに邪魔ばかりしてきたから思わず殺し、勿体無いから権能も簒奪してやったので【東方の軍神】を草薙護堂は喪失した。

 

 尚、殺害こそしたが静花の願いにより一応とはいえ蘇生だけはしてやったけど、権能は余り使えない雷避けの代物くらいしか残されていないし、名前だけの正史編纂委員会のトップにされる。

 

 原典的に残されていたエリカ・ブランデッリとの結婚も形だけでしかなく、彼女が産んだ子供は草薙護堂蘇生の対価にユートと優雅による輪姦で孕んだユートの娘だった。

 

 ユートは基本的には子を成し難い体質だけど、優雅がユートの前後で抱いたら一〇〇%妊娠する事になる為、それを利用して態とエリカ・ブランデッリを妊娠させたのだ。

 

 優雅の子を孕む確率は常に〇%である。

 

 一般の――反町達から見ればイタリアン美女との結婚に、更には可愛い娘まで産ませた嫉妬するしかない状態の草薙護堂だったが、エリカ・ブランデッリとは夜の性活をした事など一夜足りと無かったし、子供の父親でも何でも無いのに朝から晩まで汗だくで働いて育てなければならない。

 

 正しく不幸のドン底であったと云う。

 

 そしてその最期はエリカ・ブランデッリを奪われて、リリアナ・クラニチャールには愛想を尽かされてしまい、祖父の草薙一郎は老齢で彼よりも先に没していたし、草薙静花も居なくなっていたから独り寂しく布団の中で冷たくなっていたと、正史編纂委員会の職員が見付けたらしかった。

 

 血の繋がってない娘は正史編纂委員会の真なる

トップとして、半分だけ血の繋がる姉や妹と共に

働いていたので気付きもしなかったとか。

 

 尤も、草薙護堂の原典は主人公だからこそ赦された暴虐無人さだったから自業自得だろう。

 

 

 閑話休題

 

 

 ユートが駆け出そうとしたら……

 

「待って下さい!」

 

 声を掛けられた。

 

「どうし……んむ!?」

 

 振り返ると爪先立ちで背伸びしたレミアの唇が重ねられる。

 

「つ、続きを……ミュウと帰って来られたら……続きをして下さいね?」

 

 頬を紅く染めながら涙を浮かべて言うレミア、今すぐに抱きたくなる衝動にすら襲われそうになるユートだが、ニヤリと口角を吊り上げて謂わばサムズアップをして叫ぶ。

 

「必ずな!」

 

 走るユートの後ろ姿をレミアは見送りつつも、まだ柔らかく温かな感触が残る唇に指を這わせて跪くと、願いを込めて両手を胸元で合わせながら神様とはエヒトルジュエだから祈らないにせよ、ユートに祈りを捧げて待つのであった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 一方のミュウはピンチに陥っている

 

 魔物らしき存在に囲まれてしまったからだが、それがまた悍ましい姿をしていた。

 

 見た目には狼っぽいがゾンビも斯くやな姿で、毛皮を持たない血肉が露出したモノ。

 

 クジラが護ってくれていたらしいがそれをする毎に弱るらしく、影となってミュウの傍に張り付いたそれが余りに弱々しい。

 

 クジラ? が曰く――汝が同胞の許へ、強き海の子の許へ――と誘ってくれていたみたいだ。

 

「いまはパパとママにごうりゅうするの!」

 

 パパ――ユートさえ居れば何とかなると考えている無心の信頼は痛いが、ユート自身はそれに応えられるだけの能力は持っている。

 

 何処かの勇者(笑)と違って。

 

 おかしな巨狼から逃げながら何とかユートを捜したいミュウ、然しながら四歳児の女の子には少し荷が勝ち過ぎるミッションだ。

 

 ミュウは亜人族に属するが故に魔法を使えないから、単純にその脚で逃げるしか出来ないのが痛いという処。

 

「しかたがないの……」

 

 パパから事前に渡されていた機器を手にして、それを両手で挟む様に持つと瞑目する。

 

「ミュウだっていつまでもあしでまといじゃいられないの!」

 

 それは少し縦に長い水色を基調とした機器で、上側に小さなモニタが付いていて浮かんでいるのは【水】という漢字――正確には紋様。

 

 一四〇cmにも満たないミュウではユート作の仮面ライダーやビーファイターは使えない為に、万が一にでもユート達とはぐれた場合に身を守るアイテムを別途で渡している。

 

 使って欲しくは無くてもミュウの命には代えられない、だから遊び半分ではなく本当にヤバいと思ったら迷わず使えと厳命もしていたのだ。

 

 くるんと一度回転をしたら左手を胸元に持っていくと光の束が回転しながら手の周りに顕れる、ミュウは機器の先端部で光の束をなぞる様に滑らせながら叫ぶ。

 

「スピリットエヴォリューション!」

 

 ミュウに渡されたそれは【ディースキャナ】と呼ばれるデバイスで、【スピリット】と呼ばれるエンシェントデジモンが遺したモノをスキャンして人間を進化させるアイテム。

 

 当たり前だが機器も可成り昔にユーキが造った物であり、スピリットは【魔獣創造】という神器の亜種禁手――【至高と究極の聖魔獣】により創造した十闘士のデジモンをヒューマンとビーストの二つに分けたモノだ。

 

 実際にユートが使う場合は【火】のスピリットか【闇】のスピリット、麻帆良に顕れたゲートの向こう側でもアホな皇女親衛隊を相手に【火】のスピリットを使ってやった事もある。

 

「ラーナモン!」

 

 イタリア語で蛙を意味する水属性のヒューマンスピリットにてミュウが進化をしたラーナモン、

ユートが余り使って欲しく無い理由は原典に於いて敵だったのと、【水】のビーストスピリットのカルマーラモンがオバサン臭い烏賊だからだ。

 

 あの愛らしいミュウが、引っ繰り返した烏賊の口に当たる部分からオバサンの上半身が突き出ている姿に変わる……『ないわ』と叫びたくなるのも無理からぬ事。

 

 【デジモンフロンティア】でアイドルをしていたラーナモンは未だしもマシだが、オバサン臭しかしないカルマーラモンへと進化された日には……

レミアが見たら卒倒するに違いない。

 

 嘗て、違う世界の地球で光のエレメンツとして産み出された三井家のほのか、彼女に万能薬をした【光】のスピリットを渡した事があるのだが、彼女もヒューマンスピリットだけでなくビーストスピリットを使わざるを得ない事態に陥ったし、ともすれば融合進化や古代進化までしたのだ。

 

 【水】に中途パーツを使う融合進化は設定されてないが、デジモンとしての元の姿に戻るという古代進化は可能ではある。

 

 ミュウには必要なら躊躇うなと厳命をしたし、万が一にも追い込まれたらビーストスピリットを使うだろう。

 

 実際、ラーナモンと化したミュウはその決意を小さな胸に秘めていた。

 

「ジェラシーレイン!」

 

 酸性雨により溶かされる血肉の巨狼。

 

「早くパパとごうりゅうしないと。きっとパパがママをまもってくれてるから!」

 

『済まない』

 

 そんな思念波がミュウの頭に響いた。

 

「影さんなの?」

 

 クジラの小さな影、これがミュウを誘う張本人らしいのだがミュウはよく判らない。

 

『済まない……』

 

 弱々しく謝るばかりのクジラ影。

 

「ちゃんと話してほしいの!」

 

 だが余りにも弱々しくなっている所為なのか、或いは最早それを語る程の力すら持たないのか? それとも初めから会話機能が限定でもされているのかはミュウに計れないが、どちらにしてもまともな会話が成立していない。

 

「影さん、弱ってるの……」

 

 若しかしたらこうしてミュウ達を此処へ誘ったのが最後の力だった可能性もある。

 

『求める……創造する者。刻の証を遺す者よ』

 

 これは語り掛けというよりは寧ろ譫言の類いか独白なのだろう。

 

「そうぞうする?」

 

 ――想像を創造する力だ……とはユートの言葉、ミュウは影の言葉を理解し切れていなかったけど半ば確信をする。

 

「パパの事なの?」

 

 ユートは錬成師の天職を得る前から【創成】という上位互換の力を使い続け、故にその手の力に対しては高い適性を獲得もしていた。

 

 神器たる【聖剣創造】や【魔獣創造】などを、いとも容易く使い熟すその理由は最初の転生以来から【錬金】を【錬成】を、そして今や世界創造の一部にも等しい【創成】を使ってきたから。

 

 【創成】の真骨頂は完全な汎暗黒物質の操作にあり、その気になれば【神秘の瞳】で完全に見抜いた物質ならば大概は汎暗黒物質を用いて創り出す事すら出来てしまう。

 

 ユートが死者蘇生をハーデスの権能以上に使えるのも、ハーデスの権能で蘇らせた死者の遺伝子から何まで全てを視て記録し、死者の完全な肉体を【創成】で創り出せてしまうからだ。

 

 この事に気付いたから可能になった。

 

 【ハガレン】世界特有の【錬金術】ではないから『持っていかれる』事も無く、況してや不完全処かナニを造ったかも知れないナニかがデキ上がる事も無い、謂わば彼の兄弟が正しく追い求めた【完全なる人体錬成】の究極形。

 

 ユートが技師として、そして女として彼女を求めた対価に彼の腕と脚を元に戻したそれ、だからこそ究極の対価足り得るとして『誰かの一生』を自分のモノにしているのだ。

 

 まぁ、彼女は苦笑いをしながら頷いた辺りからユートへの気持ちは無くて、だけど新たなる世界への興味と彼が全てを取り戻せば“技師”としては必要無くなる事もあった。

 

 それにその時に男として気持ちを持たずとも、ヤり続けていればいずれは情が湧く事もある。

 

 彼女がユートの【閃姫】に成れた事からもそれは明らかだろう。

 

 それは兎も角……

 

『異なる刻、同じ場所に重なりし“二人”を。主と同位の者達を我が許へ』

 

「へ? ふ、二人……なの?」

 

 正直、まだ四歳児には難しいから飽く迄も感覚的に捉えていたミュウは、ユートだけではないと聴かされて若干パニックになる。

 

「う~ん、ミュウには解らないの。これはきっとパパあんけんなの!」

 

 人はそれを丸投げと云うが、何処かの脳筋とは違ってギリギリまで考えての丸投げである。

 

 何処かの脳筋は抑々(そもそも)が考える事を止めるから、同じにするのはミュウへの侮辱だろう。

 

「レインストリーム!」

 

 集中豪雨で敵を押し潰す必殺技で巨狼を潰し、影さんが導く侭に進んでいく。

 

「今は進むのみ! なの」

 

 血肉の巨狼が連れる巨狼よりは小さな眷属が、ラーナモンと成ったミュウに襲い掛かった。

 

「ウンディーネブレイク!」

 

 ミュウは脚と周囲に高密度で高速化された水を纏わせ、血肉の巨狼の眷属を後ろ回し蹴りを放ってぶっ飛ばしてやった。

 

 ラーナモンに【ウンディーネブレイク】なんてのは必殺技は疎か得意技にすら無い。

 

 だけど水を操作する能力は十闘士の水属性として持ち合わせる為、水を直に操作して必殺技でも得意技でもない純粋な技として放ったのだ。

 

 技のモデルはアグニモンの【サラマンダーブレイク】、此方は普通に必殺技で炎を纏った蹴りを放つというもの。

 

 要するに属性だけ変えた技である。

 

「ウェットウンディーネ!」

 

 濡れる水精霊とか、灼熱の火精霊なバーニングサラマンダーのラーナモン版だろうか?

 

 バーニングサラマンダーみたいに相手を燃やす訳ではないが、水は土と同じく重量があるからか血肉の巨狼の頭を潰した。

 

 精霊術師の世界では風が最弱などと云われる、それは軽いからというのが理由。

 

 尤も、単にぶつけ合ったら四属性では力負けをするというだけでしかなく、抑々にして適材適所を無視した力一辺倒主義者の傲慢でしかないが、単なる力押しなら多大なエネルギーを持つ火属性が一番とされ、水と土もその重量がある故に威力だけなら風に勝るのも確か。

 

 単なる火を拳大で放つバーニングサラマンダーが必殺技足り得るのもそれが理由、ラーナモンというかミュウが放った水は見た目こそ拳大というバーニングサラマンダー並の大きさではあるが、密度を高めて重量は見た目相応では決してなかったらしい。

 

 重量が重量だから速度は大した事もないけど、だがやはり重量故に当たりさえすれば威力は充分に高かった。

 

「次なの!」

 

 グッと身体を捻りながら……

 

「アクアストーム!」

 

 技を放ってやる。

 

 ヴリトラモンのフレイムストームみたいな技、別にラーナモンの必殺技に有る訳ではないのだから寧ろ水さえ操れれば使える為、カラマーラモンへとスライドエヴォリューションなどしなくても扱える訳で、まるで嵐の如く水の塊が渦巻きながら血肉の巨狼の眷属を数体程巻き込んでグチャグチャに水圧で圧し潰した。

 

「グ、グロい……なの」

 

 水は透明だしその有り様がまざまざとミュウの

目に映って吐き気を催す。

 

 元々、魔力が無いからこの世界の亜人は魔法を扱えないというだけであり、資質が無いという訳では決して無くて海人族として常に水に触れてきた為にミュウは水適性が非常に高かったのだ。

 

 何とか血肉の巨狼も斃したけどラーナモンへの初進化は四歳児の体力を削っ為、終わった途端に緊張感が切れたのか進化が勝手に解除される。

 

「ふぃー、なのぉ……」

 

 仮面ライダーウィザードみたいな溜息だけど、ユートがよくやるからか真似をしていた。

 

 まぁ、ユート自身も仮面ライダーウィザードのDVDを【カンピオーネ!】世界で観てやり始めた口だけど。

 

 正確にはネオディケイドライバー以外で初めての仮面ライダー、【魔獣創造】はその後で獲得をしたから当時は特殊な金属糸と金属で造ったのがウィザードライバー。

 

 とはいえ、実験で草薙護堂を使ってプロトタイプにカンピオーネドライバーや、エリカ・ブランデッリにビーストドライバーその侭なマギウスドライバーを造っていたけど。

 

 因みに、量産型としてメイジドライバーと同じなメイガスドライバーを造ってリリアナ・クラニチャールに売っている。

 

 安全になったからとへたり込むミュウだけど、其処へ足音と共に誰かが近付く。

 

「あら、大丈夫かしら? 同族のお嬢ちゃん」

 

「マ、ママ!?」

 

「へ? ママって……その切り返しは想定していなかったわね」

 

 謎の人物は海人族の女性だった。

 

 ママではないが美しい容姿に強き肢体であり、ミュウが目指すパパのバディ足り得る存在。

 

「はじめまして、同族のおねえさん。ミュウの名前はミュウなの」

 

「あら、御丁寧に。私はメイル。メイル・メルジーネよ。メルジーネ海賊団を率いてるわ」

 

「へ? メイル・メルジーネおねえさん?」

 

「ええ、宜しくねミュウちゃん」

 

 ミュウは識っている。

 

 メイル・メルジーネは故人であり、しかも亡くなったのは千年を越える過去の出来事だと。

 

「な、なんで生きてるの?」

 

「はい? へ? 私は生きてちゃ駄目?」

 

 カトラスと呼ばれる剣を腰に佩くメイル・メルジーネと名乗った同族女性、そんな彼女は何だかショックと謂わんばかりである。

 

「えっと、そうではないの! ただ……」

 

 慌てて(かぶり)を振るミュウだが……

 

「はっ! また来たの!」

 

 又も血肉の巨狼と眷属。

 

「ああ、こいつらまたかぁ」

 

 どうやらメイル・メルジーネも血肉の巨狼と闘っていたらしく、うんざりとした表情となりながらもカトラスを抜刀する。

 

「お嬢ちゃんは……ミュウちゃんは逃げなさいな。このメイル御姉さんが相手をするからさ」

 

「ミュウも闘うの!」

 

「は? 莫迦な事を言わないで!」

 

 ダメ出しするメイルを尻目に再び取り出したるはディースキャナ、左手にデジコードを纏わせてそれをなぞる様にスキャン。

 

「スピリットエヴォリューション!」

 

 ミュウは【水】のヒューマンスピリットを纏う事で再びデジモンに進化。

 

「ラーナモン!」

 

「ええっ!?」

 

 見るからに五歳にすらならない幼女なミュウ、それが見た目に一三歳か其処らの全く違う姿へと変化し、流石のメイル・メルジーネも吃驚仰天するしかない事象だったと云う。

 

「ジェラシーレイン!」

 

 透かさずラーナモンは酸の雨にて血肉の巨狼の眷属を溶かしてやった。

 

「うわ、えげつないわね。だけど嫌いじゃない、『氾塊浪』!」

 

 巨大な水の塊がやはり血肉の巨狼の眷属を洗い流すかの如くなメイル・メルジーネ。

 

「えっと、ミュウちゃん……ラーナモン?」

 

「ミュウで良いです、なの!」

 

「じゃあ、ミュウちゃん。さっき使ってたそれはアーティファクトなのかしら?」

 

「パパとくせいのまどうぐで、ディースキャナなっていうの! 入れてあるスピリットをロードしていちじてきにデジモンに進化するの!」

 

 よく判らないメイル・メルジーネだったけど、仲間に稀代の錬成師が居るから似た者と変換。

 

「む、また来たわね! 躾の成っていない駄犬にはお仕置きよ! さぁ、犬でありながら豚の様な悲鳴を上げなさいな! 『水刃鞭』!」

 

 本来は水流を鞭として振るう魔法らしいけど、カトラスの刃を砕いた物が混じっている水流は宛らチェーンソー、抉られた挙げ句に吹き飛ばされた巨狼に更なる連撃で削られていく。

 

 ミュウは目を見開く。

 

 母親のレミアに似たおっとりとふわふわしている雰囲気を漂わせていたが、いざ戦闘になったらメイル・メルジーネの方こそえげつない攻撃を繰り出し、えげつない罵倒をしているのだから、

 

「うん、ママじゃないの……」

 

 きっと見た目だけならパパの好みだとは思うのだが、単純な戦闘のバディならまだしも果たして女としてのバディに成れるのか?

 

 見習いたい様なそうで無い様な……

 

 ミュウはメイル・メルジーネを横目に冷や汗を流しながら戦闘を続けた。

 

「ウンディーネブレイクッ!」

 

 周囲に水を回転させて逆回し蹴り。

 

 血肉の巨狼は面白いくらいに吹き飛んで木端微塵にされていく。

 

「強いわね……あのアーティファクトの力だとしても中々にやるわ」

 

 メイル・メルジーネも同じく巨狼を叩き伏せながらラーナモンを観察していた。

 

「ウォーターダガー!」

 

 牽制として放たれる水の塊。

 

 アグニモンで云えばファイアダガーという技、【水】だから燃やさないけどその重量も然る事ながら、ダイヤモンドすら両断するウォータージェットの要領が使われていて、高い貫通力を持たせるべくドリル状に超高速回転させているから威力は充分に過ぎる。

 

 幸いな事に血肉の巨狼もその眷属も力だけなら大した事は無いが、不幸な事に数だけは一丁前と云うべきかワラワラと現れた。

 

 数の暴力にラーナモンなミュウはユートが嫌がりそうだが、スライドエヴォリューションをしてカルマーラモンになるべきかと考える。

 

 単純なパワーならビーストスピリットの方が上であり、扱える水量も大幅に増えるから可成りの全体攻撃も可能となるのだ。

 

 但し、可愛いげも無いオバサン臭やイカ臭さしかしないであろう姿だけど、ミュウもそれは理解しているからビーストスピリットでの進化をしたいと思ってはいなかった。

 

「レインストリーム!」

 

 傍の血肉の巨狼を集中豪雨。

 

「ウェットウンディーネ!」

 

 正しく【水】の十闘士と謂わんばかりな怒涛の

水属性攻撃を見て……

 

「ヒュー、やるわねミュウちゃん」

 

 メイル・メルジーネも破顏。

 

 暫く経って漸く半分を切った頃に黒髪で眼鏡を掛けた青年と赤毛の青年、そして長いサラサラとした金髪をポニーテールに結わい付けた少女が、メイル・メルジーネとミュウの元へ駆けてきた。

 

「オスカー君、ナイズ君、()()()()ちゃん!」

 

 ミュウの識らない二人の青年は兎も角として、少女は明らかにミレディ・ライセンである。

 

「ミレディお姉ちゃん?」

 

「おや、君はミレディちゃんの事をしっているんだね? 種族がよく判らないけど……」

 

 ミレディの言葉にミュウは進化解除。

 

「え、海人族? しかもディーナちゃんよりずっと幼いし!?」

 

「ミュウはミュウなの。ところでミレディお姉ちゃんは何をしてるの?」

 

「……へ?」

 

 挨拶をしてきたと同時にまるでダメな知り合いに何故か指摘するかの如く、ミレディ・ライセンはミュウから詰問を受けるのであった。

 

 

.




 因みに、ミレディがヌルヌルではなかったのは時間がずれていたのと、ミュウに敵が集中をしたからという理由があったりします。

 原作を識らない者ばかりだから文章にはしていませんでしたが……


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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