.
メイル・メルジーネの仲間達――【解放者】との合流後、ミュウはこれからの指針について話し合わなくてはならない。
とはいえ、【解放者】は本来なら七人の筈だが今は未だ四人しか居ない。
つまり他の三人に関しての情報は漏らしてはならないと、賢いからかミュウでもその事実に行き当たり会話に気を遣う。
早い話が残り三人――ラウス・バーン、リューティリス・ハルツィナ、ヴァンドゥル・シュネーに関しては居ないものとして扱う必要があった。
「オスカー・オルクス……お兄さん?」
「あれ、僕の事を知っているのかい?」
「メイド好きなオスカーお兄さんなの」
「グフッ!? な、何故にそれを……」
喀血したかの如く息を吐くオスカー・オルクスは眼鏡を正位置に直しながら訊く。
「パパが言ってたの」
「そ、そうなのかい?」
引き攣るオスカー・オルクスにミレディ大爆笑だったが、ナイズ・グリューエンはミュウからの言葉に少しばかり疑念を覚えた。
「ミュウちゃんだったか?」
「はい、なの」
「君のパパ? は、どうやってオスカーの性癖を知ったんだい?」
「性癖とか言うな!」
「ミレディお姉ちゃんから聞いたの」
「へ?」
寝耳に水なミレディは驚愕。
「ミ・レ・ディ……?」
「ちょ、待って! オー君! 知らない、ミレディさんは知らないから!」
リーダーによる仲間の情報拡散は流石に見過ごせないのだと、オスカー・オルクスは眼鏡の位置をクンと直しながらズモモモッ! とミレディへと詰め寄った。
「それからきれいな美人さんだけどまちがいなくドSなメイルお姉ちゃん」
「……ミュウちゃんのパパさんに物言いたいのだけれども、まさかミレディちゃんったら私の情報も拡散していたのかしら?」
「ちょっ、メル姉……怖い、怖いから!」
暴力的な笑顔で詰め寄られて涙目。
「ナイズ・グリューエン……ナイズお兄さん」
「む、私の名前を知る……だと!?」
ナイズ・グリューエンは故郷の名をファミリーネームとする風習の土地だったが、とある理由からグリューエンの名前を捨てていたからナイズの名前からグリューエンを想起するのは難しい。
「きっと一番のじょうしきじんな人」
悪くはないが良い訳でもない微妙な評価であったと云う。
それと『じょうしきじん』の後に『人』は付けないものだが、未だに四歳児なミュウに言ってみてもそれは野暮であろうというもの。
四歳児――地球なら幼稚園の年少組でしかないであろう子供相手に、国語的なマウントを取りたい人でなしは流石に【解放者】の中に居ない。
「ミレディお姉ちゃん……」
「あれ、ミレディさんも?」
「何で此処に居るの?」
「ゲフッ!」
小さな女の子に存在から否定された気分となり吐血をした。
ミュウとしては『パパ』の傍に居る筈の彼女が居るから、ちょっとした疑問を覚えて訊ねたのに過ぎなかったのだが……
「ミ、ミレディさんの存在が全……否定……だと? うう……そんな莫迦な……」
涙ぐむミレディにミュウは首を傾げた。
(ん~、ミレディお姉ちゃんはミュウのことをしらないみたいなの……オスカーお兄さんたちのことをかんがえるとこのミレディお姉ちゃんは)
ユートからの薫陶を受けているミュウは原典より遥かに賢く知識も多いからか、『だいたい判った』と今現在の状況を理解しつつある。
ミュウの知識は既に小学生高学年くらいになっているらしいし、実は性知識もそれなりに得ているから赤ちゃんは『キャベツ畑から』とか『鸛が運んでくる』なんて誤魔化しは効かない。
流石に細かい知識は無いにしても、どうやったら子供がデキるのかくらいは解っていた。
「然し、此処は何処なのだろうな」
ナイズ・グリューエンが口を開く。
「ミュウちゃんは心当たりとかないかな?」
「ないの! オスカーお兄さん」
「そ、そうか……」
四歳児に何を期待しているのかと、オスカーは
自嘲をしながら笑う。
「けどじつはどうすれば良いのかはなんとなくだけどわかるの!」
「そうなのかい?」
オスカー・オルクスは血の繋がらぬ弟や妹が居るからか、ミュウという存在に対してもすぐ馴れた感じに話せている。
「クジラさんから聞いたの」
「クジラ? 若しかしてその光る影?」
「そうなの!」
とはいえオスカー・オルクスには聴こえない声では確かめ様が無い。
「それで、何と言われたんだい?」
「そうぞうするもの……ときのあかしをのこすもの……ことなるとき……おなじばしょにかさなるふたり……あるじとどういのものたちをわがもとへ」
光る影クジラからの言葉を伝えるとオスカー・オルクスも他の【解放者】も難しい表情。
「オスカー、これは……」
「そうぞうするもの……創造する者、つまりは僕を――錬成師を指すのだろう」
「そうだな」
「ときのあかしをのこすもの……刻の証を遺す者はアーティファクトを造れるだけの力を持つ錬成師という意味だろうね」
確かにアーティファクトとはこの世界に於ける定義で古代の遺物、ユートが【ありふれた職業で世界最強】世界たるこの地に来るまでの世界では
そして嘗ては自らの錬成師としての力を他者と比べ『異常』とすら評したアーティファクト・メイカーな自分、オスカー・オルクスは間違いなく光る影クジラが言う存在だと云えた。
「然し、ことなるとき……異なる刻とは時代が違うという事なのか? おなじばしょにかさなるふたりとは違う時代ながら同じ場所に現れた二人? つまり僕レベルの錬成師がもう一人居る?」
「パパなの!」
「え?」
ミュウの言葉に驚くオスカー・オルクスだが、それには構わずミュウは更に口を開く。
「ミュウのパパがれんせいしなの!」
「そういう事か!」
「どういう事? オー君」
「要するに偶々だろうけど、僕とミュウちゃんの
お父さんの二人が違う時代ながら同じ土地に足を踏み入れたからこそ、ミュウちゃんの頭を浮遊する影クジラとやらは僕らとミュウちゃん達をこの場に引き入れたんだろう。ミュウちゃんのお父さんと合流し、錬成師としての力を振るうべき場所で何かを造る乃至は修復をする事で還されるんじゃないかな?」
オスカー・オルクスが自らの考えを述べると、理解をしたのか三人が頷いた。
「そうなるとミュウちゃんの父親……その人物を捜さねばならないか?」
「ナっちゃんの言う通りだね」
「その必要は無いの!」
ミレディをミュウが遮った。
「どゆ事?」
「パパならやるべき事をきっとじぶんでりかいしてしまうの! だからミュウたちはもくてきちにいちもくさんなの!」
「なるへそ、だったらミュウちゃんを信じて向かおうかな? 本当に大丈夫なんだよね?」
「うん!」
確認されて自信満々に頷くミュウにミレディもニカッと笑顔を浮かべた。
「で、行き先は?」
「あのお城へ!」
指差した先には一際目立つ建造物。
「オッケー! オー君、ナっちゃん、メル姉! 小さなお姫様からの御願いだよ! 一丁張り切って神代魔法の使い手の力を見せ付けてやったろうじゃないのさ!」
悍ましい気配がミュウの純粋なる願いを踏み躙らんと、血肉の巨狼以外にもデカイ蛙みたいなのやタール状の死神っぽい魔物などが凄まじいまでにウザいレベルで無数に湧出、ミュウが指差した先の廃城までの道を呑み込む勢いだった。
「スピリットエヴォリューションなの!」
【水】のヒューマンスピリットによる進化に、既に見ていたメイル・メルジーネ以外が驚きに目を見開く。
「ラーナモン!」
今日だけで三回目の進化。
見た目には愛らしく思えるラーナモンだけど、【デジモンフロンティア】本編ではアイドルとは名ばかりの嫌な女を全開で、ユートとしてみればミュウが
「くぅ! 皆負けてらんないよ!」
とはいえ、ミュウは少し興奮気味。
ユートは聖闘士をやっていたし、紫龍が引退をしてから教皇の地位に座っていたから子供が修業や実戦をするのもアリな考えだが、だからといってミュウが闘うのを容認している訳でも無い。
然しながらユート自身も子供だからと動けない時期が確かに有り、ミュウの気持ちが解らないでもない二律背反なジレンマからディースキャナを渡して【水】のヒューマンスピリットとビーストスピリットを容れておいたのだ。
【水】だったのはミュウが海人族だから水適性が高いから、実際に荒れた下水道を流されながら溺れる事も無くユートとシアに保護された訳だから見立てに間違いは無い筈。
そして事実としてミュウは行き成りスピリットを使い熟し、自称『異常』な【解放者】達と肩を並べて闘っていた。
「ポセイドンフォォォォースッなの!」
ミュウは本来なら属性違いの技を水属性で行使をしたり、こんな大技を使ってみたりと適性という意味ではやはり大当たり。
近場に水が大量に在るからウォーグレイモンXのポセイドンフォースさえ使えた。
勿論、本物に比べれば御粗末極まりない程度の技でしかなくて、ユートの【
それでもやれたのだから適性の高さよ。
「オスカーお兄さん!」
「な、何だい? ミュウちゃん!」
「此処はミュウ達に任せて先に行け、なの!」
「……はぁ?」
開いた口が塞がらないオスカー・オルクスに対してミュウは……
「パパはきっとすぐにむかうの! だからこそ、オスカーお兄さんもいくべきなの!」
オスカーに先を促す。
「なっ! 然し君みたいな幼い娘を残して先へ進むなんて!?」
オスカー・オルクスは孤児院の出で、血の繋がらない孤児院を卒院した兄姉やまだ孤児院に居る弟妹が幾人も居り、しかも内の二人はとある事件に巻き込まれ現在もこんこんと眠り続けている。
ミュウの幼気な姿にオスカー・オルクスもそれを思い出したのだろう、ミュウを気遣う様な科白が自然と突いて出てきていた。
「かんちがいをしないでほしいの!」
「勘違い?」
「こんかいのみっしょんは、オスカーお兄さんを
おしろにつれて行って、れんせいしとしてはたらいてもらうことなの!」
「そ、それはそうだが……」
「つまり、オスカーお兄さんがおしろにつくのが早ければ早いほどミュウのあんぜんがかくほされるというものなの!」
「むっ!?」
饒舌に然し舌足らずな話し方で説教されてしまうオスカー・オルクス、ミュウとしてはさっさと目的地に行って欲しいのだ。
「ここでオスカーお兄さんがだらだらと魔物とたたかってもじたいはかいけつしないの。というかほんまつてんとうなの!」
「そうかも知れないが……」
「パパだけがおしろに行ってもダメなの。だからオスカーお兄さんは行くべきなの!」
「了解したよ」
ミュウの勢いに圧されて頷いた。
「それと、ミレディお姉ちゃんはごえいでオスカーお兄さんと行ってほしいの!」
「ふぇ? ミレディさんも!?」
「パパはれんせいしなんだけどたたかう人でもあるの!、一人でもどうとでもなるけどオスカーお兄さんはつよくても、本当はたたかいはしないたいぷなの」
それは間違いではない。
オスカー・オルクスは闘う事は出来るが戦士ではない、然し魔力が高いから自然と身体機能に上乗せ強化されて闘えるだけの力は確かに有る。
それでも本来は造る事に特化されていた。
戦闘だってミレディやナイズやメイルが魔法を主に闘うのに対して、オスカーは魔導具というか
アーティファクトを用いて闘っている。
色々な機能を備えてる黒傘や眼鏡がそうだし、何なら服も防御機能を備えていた。
勿論、アーティファクトに魔法を籠めるのなら籠めるべき魔法を使えないといけないだろうし、オスカー・オルクスが魔法を全く使えない訳ではない筈だが、知り合いに頼んだりも出来るし実戦では役に立たないレベルなのかも知れない。
この世界の魔法とは適性次第では莫迦みたいに複雑な魔法陣や長ったらしい詠唱が要るから。
況してや、今回のオスカー・オルクスは錬成をする為に廃城に行こうというのだから、当然ながら戦闘は別の人間に任せねばならない。
つまり護衛が必要となる。
それをミレディに任せるのはミュウが未来に於ける本人から聴いたから、ユートと――ゼロワンと出逢わなければ或いは自分はオスカー・オルクスに想いを寄せたかも知れない、それだけ長い時間を過ごしてきたのだ……と。
実際にオスカー・オルクスこそはミレディにとって最初の仲間、ヴェルカ王国の王都ヴェルニカ
に嘗て存在しオルクス工房にて働く棟梁が認めたオルクスの後継者。
「ミレディちゃん、貴女も行きなさいな」
「メル姉……了解だよ!」
兎にも角にも本来在るべき場所に戻る為には、ミュウの導きに従うしかないと考えた。
ならば……
「やってやるわ!」
「やってみせよう!」
最後まで貫き通すまで!
オスカー・オルクスとミレディはこの場からは即離れると、自身に出来得る最上位の速度を以て
廃城に向かって駆け抜けた。
「ミュウちゃん……か。変な道具で変身っていうか進化? をしていたけど」
「メイルと同じ海人族、そういえば何処となくだけどディーネに似ていたかもな」
「ああ、メル姉の妹の……」
メイル・メルジーネが仲間になる際には色々とごたごたしたが、その原因の一つに種違いの妹のディーネの事があった。
海人族という畑は同じだから二人は海人族としての容姿で似通っているけど、実質は吸血鬼族の父親と海人族の母親を持つメイルに人間族の父親と海人族の母親を持つディーネと、ハーフとしても種族が若干ながら異なっている。
元々ディーネの父親に攫われたというメイルの母親、とはいっても酷い扱いは決してしていなくて何とか関心を惹きたくてプレゼントをしてみたけど受け取って貰えず、遂には単なる小さな花を贈ってみたら『仕方のない人』と微笑みを浮かべながら受け容れたらしい。
つまりディーネの父親バハール・デヴォルトはメイルの母親のリージュを犯して孕ませたのではなくて、頼み込んで説得をして大量の贈り物は拒まれながらも小さな花を一輪で受け容れられて、漸く産んで貰ったのである。
彼なりに愛していたのであろう、メイルが受け止められるかは別にして。
抑々にして彼はメイルの存在を知らなかったらしいから、メイルを初めて目の当たりにして漸く
「ちょっと興味深い」
「オ、オー君……やっぱりロ……」
「違う! 僕が興味深いと言ったのはミュウちゃんを進化?させたアーティファクトにだよ! っていうか『やっぱり』って何だ!?」
「コリンちゃんとケティちゃんを」
「違うっつーたろうが!」
コリンとケティとはオスカー・オルクスと血の繋がらない孤児院の小さな妹達、そんな彼女らとは勿論だがそういった関係に成ったなんて覚えは全く以て皆無である。
「オー君!」
「チィッ、次から次へと矢継ぎ早に!」
蛙モドキな魔物が一〇〇は下らない数で次々に
「喰らえ!」
アーティファクト【小さな魔剣】――使い捨てにされる文字通りに投擲用の小剣、刃に魔法が籠められていて爆裂や灼熱や氷結などの効果を刺さった対象に与える。
人間に刺さればえげつない効果を発揮してしまうのは、嘗てオスカー・オルクスが弟妹を救う為に聖光教会に歯向かった際に確認済み。
アーティファクト【黒傘】――様々な魔法が幾つも籠められており、使い方次第では攻撃も防御も治療も自在に使い分ける事が可能な万能傘。
「六式【大嵐】!」
嵐を起こし……
「二式【衝璧】!」
大地の壁を築きつつそれを割って弾丸の如く撃ち放ったり出来る。
黒衣に身を包む鬼畜眼鏡オスカー・オルクス、その身に付けた衣装の全てはアーティファクトという、正しく『この身はアーティファクトで出来ている』と言わんばかり。
「やっるぅ! 流石はオー君!」
ミレディも【禍天】というDQで云うベタンに似た重力魔法で潰しながら叫んだ。
「ミレディッッ!」
「へ? あっ!」
更に湧出した腐った肉体を持ち、躯躰のあちこちからヒトらしき手足を生やしている腐食の霧を纏った竜がミレディに攻撃を仕掛けて来て、喰う心算なのか牙の生えた大口を開けていた。
顕れる魔物はどいつもこいつも醜悪そのものであり、基となる蛙や竜や狼やヒトの正しく悪意を以て捏ね回した醜悪なるパロディ。
視ているとガンガンSAN値が削られる。
「うわっ、魔法が間に合わ……」
《AX RIZE!》
「――え?」
「どりゃぁぁぁぁああっ!」
ミレディの危機に颯爽登場・銀河美少年……ではなく謎の全身鎧に仮面まで着けた誰か。
「だ、誰?」
その声に振り返るけど……
「ほんっとうに、誰ぇぇぇぇっ!?」
全く見覚えが無くて叫んでしまう。
「……?」
だけど何故だろうか? 何故か判る……彼? は今さっき微笑みを浮かべていたんだ……と。
「仮面ライダーゼロワン、それが僕の名だ!」
「ゼロ……ワン……?」
その名前がミレディ・ライセンの小さな胸の中……心の奥底に刻み込まれた瞬間である。
「お前らを止められるのは唯一人、僕だ!」
「キャッ!?」
ミレディを片手で抱き抱える様に自身へ寄せると可愛らしい悲鳴を上げた。
右手で持ち肩に担ぐ【オーソライズバスター】のアックスモード、それを先ずは簡単な操作をして銃の形へと変形をさせる。
《GUN RIZE!》
そしてライジングホッパープログライズキーのライズスターターを押す。
《JUMP!》
オーソライズバスターのスロットにプログライズキーをスロットイン!
《PROGRISE KEY CONFIRMED.READY FOR BUSTER!》
エネルギーがチャージされていき、ゼロワンはそれを両手で持って支えてトリガーを引く。
《BUSTER DUST!》
放たれた攻撃で蛙モドキが吹き飛ばされた。
「す、すごっ!」
驚愕のミレディ、オスカー・オルクスも驚愕をしているらしい。
「漸く見付けた!」
「ホントですぅ!」
「良かった、無事みたいだよ」
現れたのは仮面ライダーゼロワンとはまた別の青と緑と赤のメタリックカラー。
「ブルービート!」
「ジースタッグ!」
「レッドル!」
現れた三人が思い思いに名前を叫びながら香ばしいポーズを決める。
「「「重甲ビーファイター!」」」
何だか背後が爆発した。
「雫、シア、香織!」
声からしてブルービートが雫、ジースタッグがシア、レッドルが香織らしい。
確かに離れ離れになる前にレッドルを香織が、ビーファイタークワガーをティオが使っていた筈だし、ビーファイターテントウは鈴だった。
「ビーファイターカブトなユエさん、ビーファイタークワガーなティオさん、ビーファイターテントウな鈴はミュウちゃんっていうかラーナモンの所に置いてきたわ!」
ブルービートの雫が言う。
「助かる。だったら此方の護衛は頼んだぞ」
「了解よ!」
「了解ですぅ!」
「了解したよ!」
三人は頷いてジャンプ、ユート――ゼロワンの傍に着地をして右手を背後に回す。
「スティンガーブレード!」
「スティンガークロー!」
「スティンガープラズマー!」
それはビーファイターのスティンガーウェポンと呼ばれる近接武装。
「行って、ゼロワン!」
「目的はアーティファクトの修復ですぅ!」
「此処は私達に任せて欲しいよ!」
ゼロワンが頷くとミレディを抱えた侭で跳躍、オスカー・オルクスが居る場まで一気に跳ぶ。
「うひゃぁぁぁぁっ!?」
ジェットコースターも斯くやな速度で跳ばれて悲鳴を上げるミレディ、だけど本当に僅かな時間でオスカー・オルクスの許へと到着した。
「うわっ!」
ゼロワンにお姫様抱っこされたミレディを見たからか、それとも行き成りゼロワンが現れたからなのか? オスカー・オルクスも吃驚だ。
「き、君は?」
「仮面ライダーゼロワン、それが僕の名だ!」
再び名乗るとオスカー・オルクスの近くに在るアーティファクトを視る。
「成程、だいたい解った」
「な、何がだい?」
「僕とオスカー・オルクス、あんたが喚ばれたのはこいつを修復する為らしいな」
「っ! まさか、ミュウちゃんのパパさん?」
ミュウから聞いていたオスカー・オルクスは、直ぐにもゼロワンがミュウの言っていた『パパ』だと判断をする。
「ミュウとも会ったか。ならこの場に他の二人の【解放者】が居ないのはミュウの護衛に?」
「あ、ああ」
察したらしいゼロワンの科白に頷いた。
「ならば始めよう、過去と未来……並ぶ事は決して無かった稀代の錬成師の奇跡のコラボレーションを初めて行う」
「確かに奇跡かも知れないね」
「ま、どっかの錬金術師は『奇跡の殺戮者』だから気に入らないかもだけど……な」
聖闘士なら当たり前に『奇跡』を起こして敵を斃したりするし、某・奇跡の殺戮者的には面白く無いかも知れないと【SAO】主体世界で出逢った彼女を思い出す。
「少しだけ権能で視た過去からも察した」
「過去視って、まさか再生魔法?」
メイル・メルジーネがディーネの父親を過去視で視たらしく、直近に於けるディーネとのやり取りを知ってしまったと聞くが、それこそ彼女――メイル・メルジーネの再生魔法の力だった。
時間にすら干渉する神代魔法。
ユートは遂最近でメイル・メルジーネの使っていた再生魔法を獲ている。
そして神代魔法はユートの持つ能力の補助として使用をしており、ユートが使う過去視系権能は本来だと眠らないと使えないモノだったのだが、今は再生魔法の力を補助に眠らずともある程度は視れる様になっていた。
夢神オネイロスから簒奪した【
それは国という境界の内部で眠りに就いて視る夢という形で過去を覗く権能、可成り条件を絞らないと視たい過去を視るのに時間が掛かるとかの欠点も有るが、それでも必要な時に必要な情報を齎らしてくれる権能は役立ってくれる。
「さぁ、このオベリスクを修復しようか」
廃城の塔、その屋上は直径が約一〇mくらいの円状をしていてユートが視ているのは、中心地に屹立した一mくらいの高さの
「君も錬成師な訳だろうが、その実力の程はどうなんだい?」
「そうだな。数千年のキャリアだからそれ相応に使える」
「数千年?」
「僕は定命ではあるけどその範囲は大きくてね、それに加えて死んでも転生して違う人間として再び甦る。まぁ、姿も名前も変わらんけどな」
「? よく判らないね」
「判らなくて構わない。兎に角、僕はオスカー・オルクス……貴方より錬成師として巧くやれると、少なくとも自惚れでなくそう思っている」
「面白い冗談……と言いたいけど、君の自信の程が本当かどうかを見てみたいね。ミュウちゃんからの御墨付きも有る事だし」
ミュウは『パパ』に対して自信を持っていたと考えると、ユート自身の言葉から信じてみるのも一興かとオスカー・オルクスは思った。
それに若し自信が本物ならば視て技術を盗むのもアリであろう……と。
「雫とシアは前衛、香織は中衛でサポートをしてくれ。ミレディは後衛で魔法を放ちつつ全体的な指揮を頼む!」
「「「「了解!」」」」
返事をしてから当たり前に組み込まれていたのに気付くミレディ。
「あれぇ? ミレディさんも!?」
振り向くけど既にゼロワンなユートはオスカー・オルクスと共にオベリスクへと向き直って、錬成作業の工程に関して話し合いを始めていたから溜息を吐いて言われた通りに。
「んじゃ、殺っちゃうよぉぉ!」
得意の重力魔法を用いて数を叩く。
残念ながらキラキラとした青緑赤の三人組は、その実力が判らないから取り敢えずの措置。
「壊劫!」
迫り来る魔物共を圧殺する。
「スティンガープラズマー! 喰らって!」
四連装イオンエネルギー発生装置から放たれるは高電圧ビーム、香織が纏うレッドルはスティンガーウェポンは中距離での闘いが得意。
「往くですぅ! スティンガーブーメラン!」
シア――ジースタッグは先端に付くアーム部分を外して、それを投げ飛ばす事で中距離攻撃も可能だからと先ずは投げた。
高速回転しながら魔物を切り裂き、ジースタッグの手の中に戻ると再びスティンガークローとして装着、割と斬れ味が高い近接武装として揮うと魔物を斬って捨てていく。
使い勝手は悪いかも知れないが八重樫流を下敷きにスティンガーブレードを揮う雫、雫本人は知らされていない事実として道場剣法ではなく実戦剣術として、実は裏側でも八重樫家の名前は轟き吼えていたりする。
それだけに雫の剣法も殆んど剣術と変わらない事を、知らぬは正しく本人ばかり也と割かし殺す技術を持っていた。
「八重樫流【霞穿】!」
刀を使った時程の速度ではないが高速三段突きを放って魔物を屠る。
「黒渦!」
合間合間でミレディが魔法を放つ。
ドカン!
「えっ!?」
ミレディが気付かない位置に湧出した魔物が、短剣に刺されて爆発をしたらしい。
「オー君の【小さな魔剣・爆裂式】?」
そう思って方尖柱の方を見たら……
「違う、ゼロワン君だ!」
オスカー・オルクスは苦心をしながら錬成へと集中をしていて、明らかに余所見をしていられる状態で無いのが見て取れたのに対してゼロワンの手が何かを投げた体勢だった。
「ランブルデトネイター」
それはユートがこの世界へと来る前の世界――【魔法少女リリカルなのは】主体世界に於けるスカリエッティ・ナンバーズの五番目【チンク】が持つ
手に触れた金属爆発物に変換して自らの意志を以て爆発させるISであり、当然ながら生物へと使えば結果は可成りえげつなくなる。
ISも謂わば能力系に当たるからかユートの使う【模倣の極致】を使えば簒奪or転写が可能で、現在もチンクが生きている事を鑑みればどうやって獲たかは言わずもがな。
尚、タイミングはレジアスがユート側にも拘わらず転生者の所為で原典通りに潰滅をさせられた
ゼスト隊、この時に死ぬ予定だった連中を掻っ攫ったユートはその場のチンクを倒して気絶させ、隠れ家でたっぷりとヤらせて貰ったのである。
その際にチンクのランブルデトネイターを簒奪してやった。
因みにきちんと使用するのが可能になった為、後にインストール・カードを渡して再びチンクも使える様してやっている。
「君、器用な事をするんだな……」
オスカー・オルクスは驚愕を禁じ得ない。
「そんな事より遅れているぞ」
「む、判っているさ」
自信満々だったのも理解が出来てしまうくらい迅くて丁寧、綻びなどは決して赦さないとばかりに妥協すらしない。
「錬成とは詰まる処がパズルみたいなものだよ、正解に向けてパズルのピースを美しく嵌め込んでいく。必ず完成形の正答があるのだから最適解を以てそれを完成させてやれば良い」
「至言だね、想像をして創造する。それが僕達――錬成師というものだ」
口角を吊り上げて頷くオスカー・オルクスは、その最適解に向けてピースを嵌め込む。
「雷龍!」
「氾禍浪・大蛇!」
「震天!」
「グラビティクラッシュじゃ!」
「クロスウェイスライサー!」
「ジェラシーレイン!」
程無くユエのビーファイターカブトやメイル・メルジーネやナイズ・グリューエンに、ティオのビーファイタークワガーに鈴のビーファイターテントウ、更にミュウのラーナモンが駆け付けた。
どうやら魔物の湧出を此方に集中したらしく、向こうは全滅させた様である。
「フッ、これで終わりだな」
「そうだね」
ユートとオスカー・オルクスの作業も終盤となっており、謂わば互いにパズルのピースが残す処は二欠片まで来ている状態。
稀代の錬成師なだけにすぐ終わらせた。
「どうやら結界が働き始めたらしい」
「恐らく何らかの封印なんだろうね」
ゼロワンとオスカー・オルクスは互いに向き合うと……
「御疲れ」
「そっちこそ」
ハイタッチを交わす。
「結界が直ったからには僕らは直ぐ本来の世界に
還される筈」
「そうだろうね」
「記憶も恐らく曖昧になるだろうけどこれを渡しておくよ」
「これは?」
「プログライズキーと説明したメモだ。若しも覚えていたら造ってみると良い」
「よくは判らないが……判った」
受け取ったオスカー・オルクスは中身の空っぽなプログライズキーとメモをポケットに。
「よかったの! クジラさんがありがとうって言っているの!」
ミュウが進化を解除してニッコリと笑う。
「ゼロワン君! 君は、君達は……君達の生きる地で自由に生きられているかな!?」
真っ赤な顔のミレディが訊ねてきた。
「自由な意思の下に……ね」
「っ! うん! うん!」
それが聞きたかったミレディは涙を浮かべながら何度も頷いた。
「また、会おうね……未来でさぁぁぁぁっ!」
「ああ、また会おう。僕のミレディ」
最早、聴こえてはいないだろうが……
御互いの隔たりは強まり、砂嵐にでも放り込まれた様な感覚と共に【解放者】は過去へと戻り、ユート達は未来へと回帰する。
ふと気が付けば気絶したレミアとミュウを抱き締めているユート、周りには『重甲』や『超重甲』が解除された【閃姫】達の姿。
「戻って来たのか」
「ん? あなた……ミュウは!?」
「此処だよ」
「嗚呼、ミュウ!」
眠るミュウを抱き締めるレミア。
「どうやら結界の効果か覚えているみたいだね、レミアも」
「え、はい」
特殊な結界だったからかレミアは気絶こそしていたが、あの不可思議な場所での出来事も確りと記憶していたらしい。
「覚えているなら丁度良い。続き、しようか」
「は……はい……」
その意味を理解しているのかレミアは頬を朱に染めながら俯くが、顔は喜色に溢れている辺りからして嫌では無さそうで何より。
「むぅ、ミレディちゃんは除け者?」
「ミレディ……」
未来のミレディは不可思議空間に来ていたのだけれど、過去ミレディだった頃に会った記憶が無いから空気を読み仮面ライダーバルカンに変身して遠くから援護射撃に徹していた。
「約束したろ? 未来で会おうって」
「う、うん!」
今のミレディにはあの時の記憶が完全に戻っている為、その『約束』も確かな記憶として思い出していたのか頷くとキスをしてくる。
「ああっ! もう、ミレディちゃんったらズルいですよ!」
ミレディが離れた瞬間にレミアもキスをしてきたのだが、此方はディープに舌まで絡ませてきたから一瞬ではなく水音を響かせていた。
「ちょ、レミアちゃんだって!」
自分は軽く唇を重ねただけだったのにディープキスはズルい! とばかりに、ミレディも透かさずディープキスをしてくる。
「二人共、いい加減にしないと下半身が元気になってしまうんだが?」
「「望む処!」」
仲良くハモる二人にユートはやれやれと首を振りながらミュウをベッドへ連れて往く。
その後はたっぷりと気絶をするまでミレディとレミアの二人を愛してやるのであった。
尚、色々と【閃姫】達はスキルアップをしていたのを確認している。
.
元の小説が書籍版なだけにタブレットを使えないと参考に出来ない分、書くのが可成り遅れてしまいました。紙の本は持ってないので……
勇者(笑)な天之河の最後について
-
原作通り全てが終わって覚醒
-
ラストバトル前に覚醒
-
いっそ死亡する
-
取って付けた適当なヒロインと結ばれる
-
性犯罪者となる