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「やれやれだぜ」
思わず何処かの空条さんみたいな科白を宣いつつ、落下する三人の身体を重力魔法で引き寄せる。
概念重力系引力魔法。
自らが指定したモノだけを引力で引き寄せる概念を持たせた魔法で、重力魔法をクウネル・サンダース(偽名)から習ったというか見せて貰ってから修業し、最終的に修得をした魔法。
概念付与は殊の外、難しいとはいえ一度でも修得が叶えば最早、使う事は難しいものではなくなる。
三人を抱えたユートは、衝撃を軽くする魔法を自らに掛けると、自由落下して奈落の底へと落ちていく。
落下する途中の崖の壁に穴が空いており、そこから鉄砲水の如く水が噴き出していた。
滝の如くなっているが、そんな滝が無数にある。
衝撃を緩和しているから大したダメージも無いが、何度も滝に吹き飛ばされて壁際に押しやられ、最終的に壁からせり出ていた横穴から流されてしまった。
そうして奈落の底に辿り着き、川を流され揺蕩うと川辺に乗り上げたらしい。
「ふう、まったく以てやれやれだぜ」
JOJO立ちしながら、そんな風に呟くと目を閉じて辺りを探る。
「オルクス大迷宮の奈落の底みたいだが、魔物の強さはベヒモス程じゃないな」
当然ながらベヒモスとは中ボスであり、下手をすれば小ボス程度の魔物。
だが、小ボスとはいってもボス級はボス級であり、一般的に湧く雑魚と比べれば相当に強い。
勇者がレベル70を越えて尚、一人では立ち向かえないのが小ボスだろう。
此処がオルクス大迷宮の最下層だとして、湧き出る魔物は当然ながら強いのであろうが、雑魚なぞ所詮は雑魚でしかない。
簡単にボス級に対抗する力は無いのだから。
「さて、先ずは結界だな」
パチンと指を弾いて結界を展開した。
この行為自体が詠唱であり舞でもある為、結界は普通に展開されている。
「封鎖領域、展開完了と。火を熾こして……これで後は此処の探検だね」
再び指を弾いて火を熾こしたユートは、三人を火の側に寝かせると結界の外へと出て行く。
《EVOL DRIVER!》
腰に装着したのはユーキ謹製のエボルドライバー、手にするのはエボルボトルと呼ばれるボトル。
《COBRA!》
《RIDER SYSTEM!》
スロットの右側にコブラのエボルボトル、左側にはライダーシステムのエボルボトルを装填した。
《EVOLUTION!》
右側に付いてるハンドルを前へと回す。
《ARE YOU READY?》
ニヤリと嗤いながら腕を胸元でクロスして組むと、叫びながら両腕を下側へと伸ばした。
「変身っ!」
ユートの言葉に合わせ、本人の前後からプラモデルのランナーみたいなものが挟み込み、再び顕れた時には赤い複眼を持つ凶悪な鎧が装着されてる。
《COBRA! COBRA! EVOL COBRA! HUAHAHAHAHAHA!》
「仮面ライダーエボル」
全体的に黒いインナー、仮面の部分はまるで口を開いた蛇であった。
鎧部分も金の縁取りで、赤や青が派手派手しく目に痛い、悪魔と呼んでも差し支えない姿をしている。
【仮面ライダービルド】に登場したダークライダーであり、ラスボスでもある仮面ライダーエボルは最終フォームがユートに相応しい特性と名前から、ユーキが渡してきたのだった。
ユートの特性とは太陰で真属性は闇、その意味する処はブラックホール。
だから押し付けたとか。
「さぁて、仮面ライダーにわざわざ変身する必要性も感じないが、折角ハジメが頑張ってG3システムを造ると云うんだし……な」
取り敢えず、上に登る為の階段を捜すユート。
移動を開始した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ハッ!」
仮面ライダーエボルと成ったユートが、不気味な姿の兎っぽい魔物を蹴ると、頭が吹っ飛んで死んだ。
「雑魚いな。仮面ライダーエボルのスペックが高いのもあるんだが……」
パンチ力が五八t。
キック力が六三t。
流石は中盤以降から出るダークライダーで、因みにこのフォーム時は全体からして二%らしい。
事実としてブラックホールフォームという、更なるスペックアップした姿から戦闘力を五〇倍にも引き上げる事が可能であるとか、何処の超サイヤ人かと問いたくなる出鱈目さ。
「魔物の肉って確か特殊な魔力を含むから、人間とかが食べると毒同然だとか、ハジメが言っていたよな」
つまり、兎っぽい癖して食料には成り得ない。
「ま、僕は大丈夫だろう」
恐らく、本質的に人間とはいえ可成り変質もしているが故に、ユートが魔物の肉を食べても平気だろう。
「サバイバルは基本だし」
次の獲物を求めて彷徨いていると、今度は白い熊みたいな魔物と遭遇した。
「熊……か。熊鍋には出来ないんだろうが、取り敢えず食料になって貰おうか。お前らも僕を食いたいんだろう? だったら御相子ってやつだよな」
『ガァァアアッ!』
襲い来る熊は長い爪を持つ腕を振り回して来た。
「ふっ! ん?」
紙一重で躱した筈だが、何故か爪による斬撃で衝撃を受けた。
「躱し切ったと思ったら、まさかの風攻撃か」
精霊を介さない攻撃故に契約者として、攻撃の無効化をするのは無理だった。
真空を生み出す攻撃なのだろうが何の事は無い。
「おりゃっ!」
パンチを喰らわせてやれば死ぬ程度の弱さ。
「獲物、獲物♪」
敵ではなく肉。
単なる“獲物”としてしか認識してない爪熊など、ユートからすれば狩り易い魔物である。
「お、今度は五匹か」
白い体躯に赤黒い線が走る尻尾を二本持った狼で、簡単に識別として名付けるなら二尾狼だろうか?
蹴りが得意そうなくらい脚が発達した兎を蹴り兎、そして先程の熊を爪熊とか呼ぶなら悪くない名前。
「お前らもわざわざ食われる為に出張ってきたのか、それならその命は貰い受けてやるよ」
一斉に襲い掛かってきた二尾狼を、それぞれパンチの一撃で屠ってやる。
「やっぱりエボルはオーバースペックだよな」
ユートが使う限りどれでもオーバースペック気味、早い話がどのライダーでも大差は無い。
こうして拠点へと帰るまでには再び蹴り兎を斃し、序でに降りる為の階段を見付ける事に成功した。
「参ったね。これはまさか上に登る階段は無いか?」
どうやら一度でも最下層に降りたら、戻れない仕組みになっているらしい。
「そうなると……どういう事なんだ? 確か聞いた話ではオルクス大迷宮ってのは百階層だって。此処って最下層じゃないのかな? 或いは……」
もう一つの可能性。
「オルクス大迷宮とは上ではなく、この最下層から下へ向かうのがそうだという事なのか? つまりこの下こそが真のオルクス大迷宮という訳だな。面倒だが、上に行けないなら攻略しないと戻れない仕組みか」
随分と凝った迷宮だが、自然と創られた迷宮なのか或いは、人により造られた迷宮なのか?
「然し、だとすると食料はどうするんだ?」
人は食わねば餓えるし、飲まねば渇くのである。
一週間や二週間ならば、餓えても死なない。
だけど渇くのだけは数日も放って措けば死ぬ。
「まぁ、川があるから最悪でも飲み水くらいは確保が出来るとして、食い物なんてどうやって調達しろと? 魔物は本来だと食料にはならないし……な」
まさか二百層から成る、この大迷宮に下手したなら数ヶ月×人数分、其処まで大量の食料を持って戦えと云うのだろうか?
有り体に云えば不可能だと言わざるを得ない。
その量で何トンに及ぶと云うのか、馬車を何台も連れて行く羽目になる。
こんな狭苦しい洞窟内、しかも場合によれば路無き路を行く時もあろう。
現地調達しようにも魔物は食えないし、野生動物は鼠一匹すら見た事が無い。
尚、答え合わせの一つとするならば、他の大迷宮に在る神代魔法の空間魔法を使えば、亜空間ポケットやアイテムボックスと呼ばれる相当な大容量の倉庫を創れるし、時間に干渉が可能な神代魔法の再生魔法を使って保存も出来る筈。
因みにユートには不要、亜空間ポケットを応用したアイテム・ストレージというのが既に有り、同様の事を普通にやれるからだ。
「まったく、僕は未だしもあの三人の食料は僕が持ってる食材を提供しないと。本当に面倒臭いな」
対価は勿論取るが……
「うん? 何だ……こんな濃密な魔力が壁の奥から? 魔物……じゃないな」
明らかに空洞とは思えない壁の向こう、魔物だとしたら所謂『いしのなかにいる』状態である。
普通に死んでいるだろうから、少なくとも生命体の可能性は極めて低い。
「試しに掘ってみるか」
ユートは壁に手を付け、【創成】の要領で壁に穴を空けていく。
正確に魔力の源まで。
奇しくも原典のハジメが錬成でやった様にだけど、それより素早く精密な技術で掘り進めていった。
「これか……」
大きさはバスケットボールくらい、青白く発光をしている鉱石である。
濃密な魔力だと思ったが正しく、千年を越えて地脈を奔る魔力が長い時を掛けて魔力溜まりを作り結晶化した物、【神結晶】と呼ばれる神代の天然遺失物。
それが更に数百年掛けて内包する魔力が飽和状態となり、それが液体となって溢れ出すのだが、それこそが如何なる怪我や病気も癒して、飲み続ければ寿命が尽きないとも云われている不死の霊薬――【神水】。
所謂、エリクサーと同じ効果と思えば正解だ。
ユートは【神結晶】という存在は識るが、当然ながら視るのは初めてだった。
だけど溢れ出る水を自身の【神秘の瞳】で視た鑑定の結果、エリクサーだとかエリキシル剤と呼ばれている霊薬と同じレベルの癒し効果が有ると視える。
流石に欠損部位に関してはどうにもならないが……
「ふむ、ラッキーだった。この液体を瓶詰めにすれば癒しの水を量産出来る」
取り敢えずはアイテム・ストレージに格納した。
「三人が起きていてもおかしくないし、そろそろ拠点に戻るべきかな?」
ユートは足取りも軽く、封鎖領域を展開した仮拠点へと戻る。
「最悪、これを飲ませておけば餓えはしても死なないだろうからな」
割かし滅茶苦茶な事を考えながら。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
地上に戻った生徒達は、一様に暗い表情をしながら王宮に帰り着く。
メルド団長はエリヒド王や宰相、その他の重鎮達の前で子細に報告をした。
二〇階層まで順調に攻略をしていた事、檜山大介がグランツ鉱石に仕掛けられた転移トラップを発動させてしまった事。
六五階層に跳ばされて、ベヒモスとトラウムソルジャーに挟まれ、混乱してしまった勇者一行が混戦状態となった事。
檜山大介とそのパーティが緒方優斗に、悪意を持って魔法を放った事。
その際に白崎香織が偶然に前へ出て、代わりに魔法が命中して崩落した部分から足を滑らせた事。
それを助けようとして、八重樫 雫が共に落ち掛けたのを、畑山愛子がやはり助けようとして、緒方優斗を巻き込んで落ちた事。
ベヒモスの突撃で犯人の檜山大介とそのパーティ、更に何人かの生徒と騎士が死亡してしまった事。
ベヒモスは橋から落下、命辛々でオルクス大迷宮を脱出した事。
現在の勇者達は情緒不安定であり、下手に大迷宮に行かせたらまた死者を出しかねない事。
全てを報告したのだ。
当然ながら有能な勇者のパーティ、更に作農視たる畑山愛子を迷宮に連れ出しておきながら護れなかったなど、メルド団長を罪に問う声は大きかった。
然しながら、リリアーナが間に入って何とか減刑、騎士団長の職を罷免される事になる。
所謂、懲戒免職ではないから一応は退職金も出るのだが、厳しい沙汰となったのは間違いない。
その後、リリアーナに呼ばれたメルド団長は彼女の執務室に通された。
「メルド、参りました」
「御苦労様です」
部屋にはリリアーナ以外には侍女ヘリーナのみで、メルドは自分に何の用事か判らなかった。
「私にどの様な用向きでありましょうか」
「メルド団長……いえ元でしたね。メルド・ロギンス殿と呼びましょう」
「はっ」
「用向きは簡単ですわ」
リリアーナはメルド団長……否、メルド元団長に対して用件を伝える。
「私の私的な護衛騎士に任じます」
「は、はぁ?」
流石に呆気に取られて、間抜けた返事になった。
「確かに貴方は失態を演じましたが、優秀な騎士である事に相違ありませんわ。ですので、騎士団長を罷免されたのなら私が直接雇うと言っているのです」
「し、然し!」
「メルド、既にお父様との話は付いています。貴方はこの話を受けなさい」
王族からの命令である、罷免されたとはいえ騎士であるメルド・ロギンスに、否やを言える筈も無く。
「謹んで御受け致します。我が姫君」
跪いて答えるのだった。
そんな一幕があった中、生徒達の表情は暗い。
特に天之河光輝が酷く、幼馴染みの白崎香織と八重樫 雫を失ったのだから、無理は無いにしても下手人たる檜山大介達は死んで、責める相手が居なくなったのが拍車を掛けた。
偽善者たる彼は檜山大介達の遺体に、唾掛ける事も出来ずに燻っている。
そんな天之河光輝が自身の心の平穏を守る為には、誰かを責めなければどうにもならない。
だから対象を決める。
「そうだ、檜山達が狙ったのは緒方だ。可哀想に……香織も雫も緒方に巻き込まれて死んだ。否、緒方は死んだかも知れないが二人は生きていて、俺が助けるのを待っている筈さ」
何をどうしたらそんな答えに行き着くのか、ユートが聞いたら頭の中を開いてみたくなる超御都合解釈。
「そうさ、今頃はあの暗い迷宮の中で香織も雫も先生も俺を待ってる。助けないといけないんだ! そう、俺が……俺は勇者だ!」
最早、ラノベにありがちな重度の厨二病患者並。
況してや、天職が勇者だとはいえ高らかに叫ぶなど痛い人間としか思えない。
ユートは普通にやるが、そもそもそういうのを彼はバカにする立場、ハジメを責めるそういった連中と同じの筈なのに、自ら声高に勇者を名乗っている。
天之河光輝の中では既にユートは死亡、何故か幼馴染み二人と愛子先生だけは生きており、勇者たる自分の助けを健気に待っているヒロインに据えていた。
止めるべきストッパー、八重樫 雫が居ないからには暴走は必至、坂上龍太郎は脳筋で自分から考えられない故に、天之河光輝へと追従するだけであろう。
「ふふ。待っていてくれ、香織、雫、先生。俺こそが勇者なんだから!」
静かに呟いた。
割と早くオルクス大迷宮に再度潜るのも、勇者復帰が大きな理由である。
そんな勇者は何故だか、いつも以上にやる気に溢れていたのだと云う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
王宮の一室で中村恵里は目を覚ました。
「此処は?」
「鈴達の部屋だよ」
「鈴?」
「うん、エリリン。良かったよ……丸二日も寝ていたんだもん!」
「そっか、南雲君に助けられて……私はすぐに意識を落としちゃったんだね」
「うんうん、あの後ね! 南雲君がエリリンをずっと背負ってたんだ!」
「そっか、命の恩人ね……お礼を言わないと」
あの時、落ちる中村恵里を唯一、気に掛けて助けてくれたのがハジメ。
『守る』と言ってくれた天之河光輝は、見向きすらしてはくれなかった。
(本当は理解してたんだ。光輝君にとってボクは単なる舞台装置、若しくは……ゲームのNPCでしかないって事は。一度助けてしまえば勇者にとってはハッピーエンドを迎えるNPC、ヒロインと添い遂げるのが勇者で、ボクはヒロインにはなれない)
誰にでも優しいから特別には誰もなれない、だから周りを少しずつ排除してしまえば自分しか居なくなると考えていたし、トータスに来てそれが実現出来そうだと内心では考えていた。
特に邪魔なのが幼馴染みである二人、今ならそんな二人が居なくなってしまってチャンスなのに、何故か心が踊らない。
(本当にボクしか居なくなったら、光輝君はボクだけを見てくれるのかな?)
何と無く有り得ないと、そんな気がしてならない。
「どうしたの?」
「うん、南雲君はどうしてるの? お礼を言いに行きたいんだけど」
「南雲君か。この二日間、部屋から出て来ないんだ」
「二日間? 食事とか」
「食堂にも来なくってさ」
「……え?」
トイレくらいは行っているだろうが、まさか食べていないのだろうか?
「ちょっと行ってくる」
「あ、うん……」
中村恵里はよく解らない焦燥感に駆られ、部屋を出てハジメの部屋へ向かう。
閉ざされた扉。
「あ、空いてる」
然し試しに開けようとしてみれば、何ら抵抗する事も無く扉は開く。
無用心な事に鍵を掛けて無かったらしい。
「南雲……くん……」
ソッと顔だけを室内へと入れて覗いて見れば……
「…………」
何やらぶつぶつと呟き、錬成の光を灯していた。
「何をして……」
抜き足差し足忍び足……
背後から見てみると其処には、銀で縁取られた青い籠手らしき物が床に転がっており、ハジメ自身は鎧にも見える何かをどうも錬成しているみたいだ。
「最強の自分……想像するのは最強の自分……」
鬼気迫るとはこの事か、少しずつ少しずつ錬成を使って形を整えていた。
「南雲君、南雲君!」
背中から肩を掴んで揺すりながら叫ぶと……
「だれ?」
窶れて目の下に隈が浮かんでおり正直、恐怖を感じる表情をしていた。
「な、南雲君? いったい何をしてるの?」
「錬成だよ。僕に出来るのはそれだけだから。約束したんだ、僕は仮面ライダーになる……」
「か、仮面ライダーって、特撮ヒーローの?」
「成れるさ……優斗だってイクサに成ったんだから。僕だってG3に成れなきゃ嘘だよ。成るんだ、最強の自分に……仮面ライダー、ヒーローに。造る、造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る造る! 僕は造るんだ!」
(何を……彼はいったい、何を言ってるんだ?)
駄目だ。
この侭ではハジメは駄目になってしまう。
今は無理にでも休ませ、食事を摂らせて寝かさないと死んでしまうかも。
意を決した中村恵里は、部屋を出ると食堂に。
食堂で簡単な食事を貰ってきて、それを持って再びハジメの部屋へと戻る。
「南雲君! んぐ」
肉入り野菜スープを口に含んだ中村恵里は……
「――え? むぐっ!」
無理矢理にハジメの顔を自分に向かせ、口の中の物を口移しで食べさせた。
「んぐ、ぐっ!」
舌を使って肉や野菜を、唾液の混じるスープと共に移動させていく。
その際にハジメの舌と絡み合い、グチュグチュという水音が淫猥に響いた。
「な、か……」
絡み合う唾液が舌と舌を繋ぎトロリと橋を架けて、何かを言わせず再びスープを口に含み、また口移しでそれをハジメに食べさせるのを繰り返す。
驚きに思考を放棄してしまったのか、ハジメはただ口移しで食べさせられているスープを腹に収めた。
救命措置のマウストゥマウスとはいえ、見た目には充分に可愛らしい中村恵里とのファーストキス。
ハジメの下半身は否が応にも脹れ上がった。
「あの、中村さん?」
漸く食事が終わり、互いに向き合って座り込んでしまう二人。
沈黙に耐え切れなかったハジメが口を開く。
「いったい、どうして?」
「南雲君、二日間も見なかったって鈴から聞いたよ」
「谷口さんから?」
「それで……ちょっと心配になったから」
「そうだったんだね、心配させてゴメンね」
「それは良いんだけど……どうしたの? 寝食を忘れて……? 何?」
何故かハジメの顔が青褪めている。
「ご、ゴメン……トイレ」
「え、まさか……」
どうやら寝食だけでなく出すモノも出さず、錬成に耽り続けていたらしい。
慌ててトイレに駆け込んだハジメを見て……
「もう、南雲君っておバカなんだから」
いつの間にか自然と笑いが込み上げてきた。
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各自、何をしているか? という閑話みたいな噺になりました。
勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる