ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 最近は可成りの遅筆っ振りです。





第78話:アシュリアーナ真皇国

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「アシュリアーナ真皇国フェアベルゲン領国? つまりは婿殿の国が後ろ楯となる……と?」

 

 ユートの言葉にアルフレリックが目を見開いて驚きを露わにし、ルア、グゼ、ジン、マオ、ゼルという五人の長老も戸惑いを隠せない。

 

「幸いにも僕は様々な世界を巡り、様々な種族と触れ合う機会に恵まれたからね。亜人族も君らみたいなの以外に可成りの存在と多々出逢ったさ。だから僕には亜人と呼ばれる者への蟠りも侮りも相手がそれを持たければ此方も持たないな」

 

「相手が持たなければ……とは何かね?」

 

 アルフレリックの質問だったが、ジンもゼルもグゼも心当たりがあったのか目を逸らす。

 

「例えば『高が人間風情が』と何処ぞの熊人族が

叫びながら殴ってきたら、此方もそれこそ殺す勢いで一切の遠慮無くぶん殴るだろうね」

 

「ああ、成程の」

 

 ジンを見て頷いた。

 

 事実としてユートは数十発分の殴られた攻撃をやり返し同じ回数を殴ってやったのである。

 

 但しジンの拳はユートには効かなかったけど、ジンは後で回復薬を湯水の如く使わないといけない重傷を負い、ユートがフェアベルゲンを出る際にベホマを掛けなければ今も臥せっていたろう。

 

 実際に本来ならもう闘いは出来ない身体になっていた筈だが、ユートのベホマにより快復をしているから闘う気があるのならば闘える。

 

「女王を置いてお前さんが娶るか、確かにそれならばお前さんにはフェアベルゲンに強い縁が結ばれるな。然し女王とは誰を?」

 

「いや、アルテナに決まっているだろ」

 

「ま、まぁ確かにな」

 

 追放状態のハウリアは女王など有り得ず、それでユートが知る亜人族の女の子はアルテナくらいしか居ないのだ。

 

「とはいえ、飽く迄もアルテナの女王就任ってのはフェアベルゲンを纏める為の方便。それにより森人族が亜人を支配するって話には繋がらない。先にも言ったが長老議会による合議制を無くす事は無いし、だからといってアシュリアーナ真皇国が君らを支配、隷属させるなんて莫迦な話にも決して繋がらない。一応は宗主国として徴税はするだろうが、亜人族の生活は基本的に変わらないと思ってくれて構わない」

 

「確かに奴隷の様に扱われては堪らぬな。保証は君がしてくれるのだな?」

 

「ああ。僕に亜人に対する蟠りが無いからには、トータスで永らく行われてきた酷い蔑視なんかはしないさ」

 

 【ハイスクールD×D】世界の妖怪なんて正しくトータスの亜人と似たり寄ったり、【閃姫】として名を連ねた九重や母親たる【半閃姫】の八坂は狐人族の長老ルアと似た狐耳と狐尻尾を持つし、九重がヤれる見た目にまで成長してから初めてを八坂に導かれつつユートに捧げ、二人して御奉仕をする親子丼を喰っちゃうくらいに燃え盛ったのは良い想い出だろう。

 

 翼人族にしても単純に翼を持つだけであれば、再誕世界の半妖たる桜咲刹那が白い翼を持っている烏族の女の子だったし、【グローランサー】の世界には有翼人が存在していて何の因果かやはり半有翼人のモニカ・アレンと仲好くなった。

 

 尤も、モニカと仲好くなるのはハルケギニアにユートが転生をさせた関係から義務に近いものがあったのも事実だが……

 

 他にも獣人やエルフなんてファンタジー世界ではよく有る種族なだけに、ユートが仲好くするのも別におかしな話でもない。

 

 フェアベルゲンでも熊人族の長老ジンが余計な茶々を入れなければ、ユート側からは仲違いをする心算など更々無かったのである。

 

 図らずもアルフレリックがアルテナを差し出したが故に、今回の事をユートが考えたのであるから彼の功績は大きいと云えた。

 

「それと掟関係の整理もしておきたい」

 

「掟か。ハウリアの為……否、シア・ハウリアの為にかね?」

 

「それが無いとは言わないが、実際にはちょっと違ってね。あの魔力持ちを魔物の力を持つ忌み子とする掟には物申したい。シアとは関わり無く、掟その物に僕は疑念を持っているんだ」

 

 ユートの言葉はやはり長老衆には意味が解らないのだろう、又も互いに顔を見合わせながら困惑の表情を浮かべていた。

 

「掟に疑念とは何だ?」

 

 掟を盾にユートに殴り掛かった経験を持っているジンが訊ねて来る。

 

 熊人族は腕力至上主義な処はあるのだろうが、ジン・バントンは長老なだけに多少は脳筋な部分が薄かったらしい。

 

「取り敢えず大迷宮攻略者に手出し無用だとか、気に入ったら大樹に案内をするだとかは良いさ。問題なのはやっぱ魔力持ちを処するってヤツだ」

 

「まぁ、シア・ハウリアの事を考えるならばそう言うだろうな」

 

 頷くジン・バントン。

 

「それで、その掟の何処に疑念が有るんだい? これからを考えて話は聴くさ」

 

 ルアも聴く体勢だ。

 

「君ら亜人族はこのハルツィナ樹海で霧に紛れていれば、ある程度は高い身体能力で人間族を斃せているだろう。だけど外に出たら熊人族でさえも人間族の奴隷として連れ去られる事も屡々ある。それは何故だ?」

 

「知れた事。奴らが魔法を使うからだ」

 

 亜人族は魔法を使えないが人間族は使えると、この一点が身体能力的に優位な筈の亜人族が奴隷に甘んじる理由、勿論だが死ぬ気で頑張れば何人かを道連れには出来る……だが無意味だ!

 

 結局は自己満足で死ぬだけなのだから。

 

 長老達ですらフェアベルゲンの外に出たいなどとは思わない。

 

 人間族は単純な身体能力に於いては熊人族は疎か虎人族や土人族にも敵わないが、魔法が使えるのと奸知に長ける部分があった。

 

 森人族のアルフレリックや孤人族のルアくらいなら未だしも、ジンやゼルやグゼは脳筋の類いだからどうしても相性は良くない。

 

 因みに兎人族は賢い訳でも況してや戦闘力が高い訳でもないが、気配探知や穏行に長けている――つまりは逃げ隠れが巧い種族である。

 

 ハウリア一族は仮面ライダー黒影トルーパーに変身が可能なのと、元々に持つ種族特性に加えて

ユートからの修業を【教導B】の恩恵を受けた上で一年間を過ごした事で、度胸も満点で果てしなく天井上がり、判らんちん共をとっちめるだけの戦闘力を身に付けていた。

 

 特にシアの場合は魔力操作という技能と共に、高い魔力を持ち合わせていて――魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率上昇Ⅲ][+集中強化]

と派生技能も単純な身体能力の上昇が見込める。

 

 [変換効率上昇]は数字がイコール魔力を強化に充てる派生技能であり、Ⅰで魔力1が魔力と魔耐性を除く能力値が+1となるからⅢのシアは能力値が+3となっていた。

 

 3とは少ないと思うかも知れない、然しながらシアの魔力は既にユートに処女を捧げてプラスされている上に、【閃姫】契約による上昇分も含めれば10000を優に越えているのだ。

 

 仮に魔力が15000ならば×3で筋力と体力と耐性と俊敏が+45000という事、変換効率上昇とは即ち掛け算なのだから。

 

 ユートに抱かれるというのは決してマイナスな事ではなく、友愛にせよ情愛にせよ愛を以て抱かれたなら処女喪失という代償で能力の上昇や技能の修得乃至は俊英化が成され、極々稀にではあるが【輝威(トゥインクル)】を獲る場合もあった。

 

 当たり前な話だが所謂、未亡人で夫を亡くした女性は基本的に処女ではないだろうからこの恩恵には与れない。

 

 だけど処女膜さえ有れば問題は無いらしいと、実は最近になってだけど判明している。

 

 プレシア・テスタロッサ相手に。

 

 何故ならプレシア・テスタロッサはアリシアを産んだ未亡人、夫とは生活の擦れ違いから別れたと聞いていたユートが婚姻前くらいに肉体年齢を戻したら肉体的には処女な筈で、その上でプレシアを抱いて処女膜を貫いたらどうなるか? という実験を本人に了承を得て試してみたら実際に能力値が上がっている事が確認が出来たし、何なら正式な【閃姫】契約すらも可能だったのである。

 

 聞けば婚姻は二三歳でアリシアを授かったのが二八歳の頃だったと云う、そして研究があったから結婚までは肉体関係を持たず処女喪失は初夜だったらしいので、二二歳くらいにまで肉体年齢を巻き戻してやった。

 

 約三十数年振りな二度目の破爪をたっぷり愉しんだ後、魔力が可成り上がっていたのには吃驚するしかなかったし、身体能力もそこら辺の男顔負けなレベルで上がっていたので実験は成功。

 

 約六〇年の人生経験のお陰か、本当の意味での初めては単に痛いだけだったらしい破爪も二度目は痛みを愉しむ余裕すらあったと云う。

 

 尚、若かりし日のプレシアは黒髪のフェイト・T・ハラオウン――つまり【StrikerS】のフェイトを彷彿とさせてくれた。

 

 やはり親子である。

 

 

 閑話休題

 

 

「そう、魔法というアドバンテージが有るからこそ人間族は優位に立てるんだ」

 

「何が言いたいのかね?」

 

「アルフレリック、誤魔化しはいい加減で止せ。それともまさか本当に気付かないのか?」

 

 ユートの痛烈な科白に然しものアルフレリックも目を逸らす。

 

「どうやらきちんと気付いてはいるみたいだし、其処は少しばかり安心をしたよ」

 

「むう、確かに御主の言う通りだろうな」

 

「アルフレリック?」

 

 ジンが訝しい表情となる。

 

「ジンよ、我々は魔法を使えるであろう魔力持ちの同胞を処してきた。だが若しも保護してきたら魔力持ちもある程度は増えていたろう。そうなれば魔力持ちの同胞が人間族を抑えて奴隷化される者も減ったのではないか?」

 

「なっ!?」

 

 掟を真っ向から否定する言葉を長老の一人たるアルフレリックから出て、ジンは言葉を失う勢いで驚愕を露わとしてしまう。

 

「アルフレリック、それは禁忌の者を……魔物の力を持つ悪魔の子を庇い立てるという事だぞ!」

 

 ゼルが叫ぶが……

 

「くっくっ!」

 

 ユートが笑う……否、嘲笑う。

 

「何が可笑しい!?」

 

「別にアンタを笑ったんじゃない。昔に僕が関わった世界で勇者をやらされた事があったけどな、魔王に憑かれた王に『悪魔の子』呼ばわりをされたな……とね」

 

「はぁ?」

 

「本来は世界を救う勇者が=『悪魔の子』だと、散々っぱら追い掛け回されたものだよ」

 

 それ自体は嬉しくない想い出ではあるのだが、あの世界で得た【閃姫(モノ)】も多い。

 

 だから苦笑いが浮かんだ。

 

 因みに【閃姫】は基本的に元の世界から出たらユートの創造した冥界のエリシオンに住まうが、それ以前は星帝ユニクロンの内部宇宙の始まりの星に居住、更に以前はハルケギニアが存在している星の龍状列島に住んでいた。

 

 勿論、【閃姫】以外に彼女らが傍に置きたいと願った人間なども住む。

 

 例えば【SAO】主体世界の【閃姫】の一人である桐ヶ谷直葉としては、兄である桐ヶ谷和人とその妻となった桐ヶ谷(旧姓:結城)明日奈くらいは死に別れたくないと言われ二人を招いている。

 

 尤も、折角だからとSAO関連の仲間は割かし皆が住んでいたりするけど。

 

 【閃姫】と同じく招喚に応える義務さえ果たせば自由に暮らせる環境で、SAO組はVRゲームをやりながら暮らしに必要な仕事をしていた。

 

 エギルも奥さんと喫茶店を経営しているくらいに馴染んでいる。

 

 それは兎も角、ユートとしてはフェアベルゲンの者に訊きたい事が有ったのだ。

 

「それで、僕としては訊きたいんだが」

 

「ふむ?」

 

「あの魔力持ちを処せって掟は()()()()作ったんだろうな?」

 

「な、何だと?」

 

 アルフレリックではなくジンが声を出したのも無理はない、掟を作ったのが誰かなどと根源的な事を訊ねられたのだから。

 

「いつで誰が……だよ。そんな意味不明な掟を作ったのは……?」

 

 意味不明……確かに魔力持ちを損なうというのがフェアベルゲンの国益にならないというのなら、これ程にも莫迦げていて意味が判らない掟というのも珍しくないだろうか?

 

「そうだよねぇ」

 

 頷くのはミレディだったが、ライセン大迷宮から仲間入りしたからフェアベルゲンの面々には誰なのかさっぱり。

 

「だ、誰かね?」

 

「問われて名乗るのも烏滸がましいが、我こそは

嘗て世界の邪悪なる神に反逆せしめた偉大なりし七人にしてリーダー! ミレディ・ライセンとはこのミレディちゃんの事さ!」

 

 右手の横チャキでぱっちり御目めをウィンクしながら、左足を軽く横上に膝曲げしつつブリブリな娘っ子を演出して高らかに名乗る。

 

『『『『『『『うざっ!』』』』』』』

 

 この時こそ外様とフェアベルゲンとか人間族と亜人族など、隔てる某かを越えて全員の心が一致していたのだと云う。

 

 ユートとの出逢いというか再会からその兆候も無かったが、正しく『うざレディー』の面目躍如といった処だった。

 

「ミレディ・ライセンだと? 莫迦な……人間族であった彼女が森人族であった我らが祖とも云うべきリューティリス・ハルツィナより長生きが出来る筈があるまい。況してや見た目は十代半ばくらいではないか!?」

 

 祖……とはいっても直接的な先祖という訳ではないのだが、ハルツィナを治めていた身分だったのは伝わっていたらしい。

 

 まぁ、王族宜しくハルツィナの名を冠しているのだから判りそうなものか。

 

 とはいえど、ライセン大峡谷を除けば大迷宮が

存在する土地は反逆者とされた【解放者】が迷宮を造り上げてから後、いつの間にか彼らの名前が付けられていた様ではあるが……

 

 それこそいつ誰が付けたのかは判らないけど、【解放者】の主要人物が拓いた場所だとは当時なら判っていただろうし、本当にいつの間にか定着をしていたのかも知れない。

 

 アルフレリックがミレディ・ライセンの名前を識っていたのは、【解放者】主要人物七人の名前がリューティリス・ハルツィナにより残されていたからであろう。

 

 実際にオスカー・オルクスの名前も彼は識っていたのだから。

 

「ミレディは正真正銘、ライセン大峡谷に設置をされたライセン大迷宮の主たるミレディ・ライセン本人だよ。恐らくは仲間達が造ったゴーレムに

魂を定着させて生き続けたんだ」

 

「仲間達とは【解放者】のかね?」

 

「ゴーレム本体はオスカー・オルクスの生成魔法で構築、メイル・メルジーナの再生魔法を付与して多少のダメージは再生させられる。ゴーレムには関係が無いがナイズ・グリューエンの空間魔法でゴーレムの巨体が動く空間を確保、アザンチウムで護られたゴーレムの核に魂を宿す器をヴァンドゥル・シュネーの変成魔法で造り、ラウス・バーンの魂魄魔法で魂魄を抜き取り宿したんだろ。そして全体的な強化にリューティリス・ハルツィナの昇華魔法を使った。更にゴーレムはミレディ本人だから重力魔法が使えたしね、正しくアレは【解放者】七人のコラボレーションだったよ」

 

 ミレディゴーレムが如何無く闘える場を整えたナイズ・グリューエンも含めて。

 

「ユー君……」

 

 仲間を褒められたのが嬉しかったのか、ミレディの顔が真っ赤に染まって瞳が潤んでいる。

 

「まさか、千年を越えて【解放者】が未だ生存をしていたとはな」

 

「運が良かったとも云えるな。魂が確りと確保されていたし意識もはっきりと持っていたからね、

肉体は魂魄に生前の記録が残っているからそれを基に再成し、新品になった肉体へミレディの魂を括り直してやった訳だ」

 

「御主、死者の蘇生が出来るのか!?」

 

「このトータスには死後の世界――冥界なり冥府なりソウルソサエティなりが存在しなかったから、死者の魂は一〇分もすれば消失する。強い魂魄なら来世に転生も出来る、怨念にでも塗れていればこの世に繋がれてしまう。だけど普通は消失するもんだからね」

 

「そうか……」

 

 とはいえ、今は冥界の主たる冥王ユートが居るからトータス出身の魂も消えたりしないでユートの冥界に導かれるけど。

 

 先代冥王ハーデスをアテナがニケで刺し貫き、消滅の間際でユートはハーデスの神氣を奪った。

 

 結果、【カンピオーネ!】主体世界へと行って神殺しの魔王――カンピオーネに転生をしたユートは神氣を権能に変換、この時点で一九九〇年に於ける冥王ハーデス、二百数十年前のLCに於ける冥王ハーデス、NDに於ける冥王ハーデスから獲た神氣で三つの権能を簒奪していた。

 

 文字通り冥王の箱庭たる冥界を自由に創造してしまえる【冥王の箱庭の掟(ヘル&ヘブン)】、しかも創造の際に必要な部分は違えず創造が可能な為に、【創成】を掟に組み込んだからかユートが組成を識るであろう鉱石や宝石などが無制限に産出される故、ユートが自身の冥闘士に仕立てた元黄金聖闘士の二人――牡羊座のムウと元教皇でもある牡羊座のシオンは大喜び。

 

 何しろ神鍛鋼やガマニオンや銀星砂が好きに使いたい放題のやりたい放題だから。

 

 二つ目はハーデス百八の冥闘士を生み出す力、百八個の冥衣を創造する【天輪する百八の魔星(ランブル・スペクターズ)】、聖衣モドキである元黄金聖闘士が着ける冥衣以外の冥衣の創造を可能とし、ユートの意志か冥衣の意志で冥闘士を選んでしまえる。

 

 事実としてそうやって選んだ冥闘士が何人か既に存在しており、例えば天猛星ワイバーンの奏は【戦姫絶唱シンフォギア】で死亡した天羽 奏へと冥衣を渡したのだし、天貴星グリフォンのセレナは同じ世界のセレナ・カデンツァヴナ・イヴへと冥衣を渡したし、天雄星ガルーダのアイリは再誕世界の第四次聖杯戦争で死んだアイリスフィール・フォン・アインツベルンに冥衣を渡した。

 

 【冥界返し(ヘブンズキャンセラー)】というのは名前の原典は【冥土返し】、名前は漢字が違う以外に変更は無い。

 

 生きてさえいれば基本的に誰でも死なせないというカエル顔の医者、ユートのはハーデスがやっていた一二時間の限定的な蘇生である。

 

 LCのハーデスは平行世界の存在だったからか悪くない権能だったが、NDのハーデスはユートがアテナと滅ぼしたハーデスとある意味で同一の神だからかショボい権能だった。

 

 それに【冥界返し】の派生権能で、大地に群がる人々の屍をゾンビの如く使役する【地獄絵図(ヘルズゲート)】、死者の冒涜とも云える権能で死んだ人間……に限らないが存在にAIみたいな知能を与えて自在に動かせる。

 

 千人の死体が有るのならば千体もの兵隊が造られるという訳だ。

 

 因みに、【ハイスクールD×D】世界の冥府の王ハーデスと【ゲート】世界の冥王ハーディからも神氣を得ており、幾つか派生権能を修得するに至っている。

 

 内の一つが冥王ハーデスの冥衣の創造と神衣への転神……本来、神衣とはギリシア神話体系に於けるオリンポス一二神が纏う鎧。

 

 実はハーデスはオリンポスの三大神でありながら天帝ゼウスと海皇ポセイドンと違い、オリンポス一二神ではないから神衣は無いと思われるが、それでも謂わば三幹部とも云えるだろう彼に神衣が無いとは考え難い。

 

 そんな想いが冥王の神衣を創り上げた。

 

「然し、死者蘇生などと……我々は魔力が無いから判らぬが、そんな魔法も有るのかね?」

 

「無くはないわね。とはいえ魂なんてのはものの数分もあれば消えちゃうから、蘇生したいのならその間に魂魄魔法と再生魔法を使わなきゃだね」

 

 再生魔法で肉体修復を行い、魂魄魔法で抜けた魂を保護して肉体に戻すというのが流れ。

 

 正確には魂魄魔法で魂の保護→肉体の修復→魂を戻すという流れだろう。

 

「けどさ、多分だけど可成り時間は掛かるよ~。少なくともユー君がミレディさんにやったみたいな短時間では無理だよね。魂魄魔法で魂の定着をする場合は数日間は掛かるんだから。

 

 ユートは僅かな時間でミレディの肉体を魂からの記録を元に創造、魂をその創造した肉体に謂わば定着させるのに一分足らず。

 

 一〇分も有れば完了していた。

 

 正しく例えればクロックアップしたカブト系のライダーを視る別世界のライダー。

 

「リューちゃんが昇華魔法を使っても有り得ない速さだったもんね」

 

「リューちゃん?」

 

「君達も知ってるリューティリス・ハルツィナ、ミレディちゃんは許可されてリューちゃんって呼んでるよ」

 

 ざっくばらんに呼べる仲だから。

 

「このハルツィナ樹海の祖と云うべき方ですな、とはいえ何分にも我々すらその実態は判らぬから教えて貰えぬかね? ミレディ・ライセン殿」

 

「え、知りたいの? 余りお薦めしないけどさ……知りたいなら教えるよ」

 

「是非に」

 

「……判った」

 

 悲壮な覚悟でミレディはリューティリス・ハルツィナについて語る。

 

「先ず、リューちゃんは【ハルツィナ共和国】の女王様。あの国は、“守護杖”っていう代々の王に受け継がれていたアーティファクトに選ばれた者が王に成るんだ」

 

「つまり、血縁で王の子が継ぐ訳じゃ無いのか。王子や王女が居るとかじゃなくて?」

 

「無いね。実際、リューちゃんは乙女な侭だし。“守護杖”はリューちゃんだからこそ自在に扱える代物だったよ。その分、幼い頃から次期女王として孤独感があったらしいよ」

 

「そりゃあ……つまり『ぼっち』か」

 

 ぼっちな女王様とか。

 

「天職持ちで『蟲心師』」

 

「ちゅうしんし? 中心? 否、若しかしてそのちゅうしんしのちゅうはこう書くのか?」

 

 『蟲』である。

 

「そだよ~」

 

 苦笑いがやけにリアリティーをそそる。

 

 天職を持たない人間も居る中で天職持ちなのは良いが、選りに選って蟲を操る天職とは『ぼっち』なのも已むを得ないのか?

 

 蟲を操るなら当然だが『G』もアリだろうし、あの黒光りをする台所の悪魔はシエスタからして殺意の波動に目覚めそう、あれを何万と操れてしまう女王様とは何なのやら。

 

「何より凄まじかったのが、実はリューちゃんってばドMだったんだ」

 

 ドMだったんだ……ドMだったんだ……ドMだったんだ……

 

 全員が固まった。

 

「ド、ドM?」

 

 まるで絞り出すが如く訊くアルフレリックに対して、ミレディは明後日の方角へと視線を逸らしながら然し確りと頷く。

 

「メル姉がさ、獣人族ってか海人族なのに私達と居るのが気に入らない奴と模擬戦をしたんだけど……ね、勿論だけど神代魔法の使い手に敵う筈も無くってドS全開なメル姉に『ワン』と吠えさせられたんだよ。狼人族だったのにね? それを見たリューちゃんがさ……メル姉を『御姉様』とか呼び出すし、オマケに顔を真っ赤にしながら『ハァハァ』しちゃうし……ねぇ」

 

「ゲフッ!」

 

 アルフレリックが血を吐いた。

 

 まさかの同族が、しかもハルツィナ共和国を治めた女王がドMだったとか。

 

「罵倒されて『ハァハァ』、鞭で打たれたら打たれたで『初めての経験』とか言いながら御股を濡らして『ハァハァ』しちゃうド変態だったなぁ」

 

「も、もう止めてくれんかね?」

 

 アルフレリックはギブアップして誰得な爺様の涙目となっている。

 

 万が一にも孫娘がそんな変態だったら軽く死ねると思うくらい頭を抱えたのだと云う。

 

 因みに本来の世界線ではドMの変態となって、シアに粘着をする百合娘に成り果てる筈ではあったけど、ユートとの出逢いのお蔭か性癖が顕在化しなかったらしい。

 

「それと序でに言うと、リューちゃんが女王様だった頃に『魔力持ちは処する』なんて阿保な掟は全く無かったよ」

 

「ほ、本当かね?」

 

「抑々リューちゃん自身が神代魔法の昇華魔法を

使う魔力持ちだし、国民にして戦士たる“獣人族”の中にも魔力持ちで固有魔法を扱える連中だって居たんだよ?」

 

『『『『『『なっ!?』』』』』』

 

 驚愕する長老衆。

 

「ミレディ、獣人族ってのは?」

 

「元々はハルツィナ共和国での彼らは獣人族って呼ばれてたし自称もしていた。公然とした呼び方は亜人族――人間の亜種なんて別称じゃなかった筈なんだよね」

 

「だけどアルフレリック達は自らも亜人族と名乗っているし、これはやっぱりか?」

 

「うん、ユー君の想像した通りだね」

 

 ユートは『掟』に疑念を持ったからミレディに相談を持ち掛けていた。

 

「どういう事かね?」

 

「いつの間にか獣人族の呼び方が悪意あるモノ、亜人族に本人達も変えられていたんだ」

 

「ば、莫迦な……」

 

 アルフレリックが愕然となる。

 

 それは他の種の長老衆も同じだったらしくて、グゼもゼルもルアもマオもジンも難しい顔に。

 

「恐らくは掟も悪意ある改変をされていたんだ、獣人族が固有魔法を身に付けると面倒臭いから。

獣人族の魔力は魔物由来であり、それを持つ事は忌避されるべきだ……とね」

 

「いったい、いつ誰が?」

 

「時期的には【解放者】が反逆者とされてから後だろうし、誰がなんてトータスで神様ごっこに興じるエヒトルジュエに決まっている。奴の使徒は洗脳に長けているみたいだからね」

 

 思い出されるのはメルジーネ海底遺跡にて見た過去映像、人間族の王が獣人族や魔人族を呼んだ終戦式典で明らかに豹変したと思われる態度の変わり様と、エヒトルジュエの使徒()()()()()()()()()()()銀髪修道女の姿。

 

 あれがノイント本人か或いは他のナンバーズの誰かなのかは判らないのだが、少なくともアレが何らかの悪影響を齎らしたのは間違いない。

 

 因みに同じ顔ながらノイントとリューンでは、二人を試したが下半身の味わいは別物だった。

 

 リューンが失敗作だからかそれともナンバーズでも個人差があるのかは又候、別のナンバーズを相手にヤってみないと判断は出来ないだろう。

 

「神は何処まで我らを苦しめる!?」

 

「何処までも」

 

「なにぃ!?」

 

「言ったろ? エヒトルジュエにとってみれば、君らは単なる失敗作に過ぎない。せめて苦しみに喘いで興じさせろって事なんだろうさ」

 

「ぐぅむ……」

 

 神から見放された種族というのは確かな情報だったという訳だ。

 

「理解したか? 所詮、亜人族はエヒトルジュエにとって単なる失敗作で他の種族のフラストレーション解消の為のスケープゴートだ」

 

 元々の祖先は龍人族や魔人族や吸血鬼族も同じ人間族ながら扱いの差よ。

 

 確かに龍人族も吸血鬼族も滅ぼされているが、それはエヒトルジュエの気に障ったからでしかなくて、そんなのが無くても亜人族は無条件で嫌われていた存在。

 

「成程、我らは我らで庇護者……後ろ楯が無くば、近い将来に滅びる定めか」

 

 それをはっきりと認識した。

 

 よもやエヒトルジュエが手を回して掟にまでも介入し、本来なら祝福するべき魔力持ちを処する様にしていたとは……

 

「我らはいったい何の為に魔力持ちの同胞を処してきたのか」

 

 その衝撃は余りにも痛かったと云う。

 

「訊きたい」

 

「何を?」

 

「若し、我らフェアベルゲンがアシュリアーナ真皇国に降り領国となるを受け容れた場合に生じるメリットとデメリットをだ」

 

「どっちを先に訊きたい?」

 

「ではデメリットから」

 

 やはり悪い方を先に済ませたい様だ。

 

「デメリットねぇ、どうしたって後ろ楯となる国の領国という立場から税金の支払いは必要となるって事だね」

 

「ふむ、税金……か」

 

 当たり前だがフェアベルゲンはハイリヒ王国、ヘルシャー帝国、ガーランド魔王国のいずれにも所属しないから税金を取られたりしなかった。

 

 納める義務も無い。

 

 だけどアシュリアーナ真皇国に所属する領国と成れば、其処に盟主国とも云える真皇国に税金を支払わねばならないのは至極当然の義務。

 

「とはいえ、税金というデメリットは生活水準の上昇などメリットと裏表だ。義務を果たせば権利が生じるのも当然だからね」

 

 義務を果たさず権利を主張する資格は無いが、逆を云えば義務を果たすなら同価値の権利を得て当然であり、ある程度の主張をする事も許されてくる訳である。

 

 まぁ、ユートが経験したシャドウミラーが居た“彼方側の世界”では腐った官僚が利権を貪るとか困った政治体制だったが……

 

「他は?」

 

「さぁ、何か有るかな? 少なくとも今の真皇国に不平不満は出ていないし」

 

 アシュリアーナ真皇国は本国たる皇都ジュリアネスが領国から税金を徴収している立場だけど、数百年間を治めてきたものの小さないざこざこそあるにせよ、大きな戦にまで発展をした事なんかは特に無かった。

 

 まぁ、ある程度の腹を満たして生活水準が高ければ不平不満で暴れる暴徒化は無いもの。

 

 昔の日ノ本で百姓一揆とかが起きたのだって、満たされない腹を抱えていたからに他ならない。

 

 要は生活の安定化こそが必須なのだ。

 

「小さな不満はそりゃいずれ出る。だけど今みたいな状況に不満を持ちながら泣き寝入りをする事は無くなる筈さ」

 

「確かに……な」

 

 長老衆による合議制だって誰しも歓迎をしている政治体制ではないし、転生モノあるあるなのが王政、帝政、共和政の彼是だ。

 

 何処ぞの厨二病黒魔人は『合衆国日本』を謳って世界を纏めようとしていた。

 

 大概、共産政はそっぽを向かれる。

 

「女王を置く理由は盟主国となる真皇国の真皇に対する花嫁的なものだと話したな? それならば新たに誰かを就かせるより既に差し出されているアルテナが丁度良いだろ?」

 

「確かに……」

 

「女王というか領王は真皇の代理人、だからこそ長老会議の最終決定権を持たせる。長老衆の合議を行い、女王が最終決定をして政治に反映をさせる形になるな。だけどこれは森人族がフェアベルゲンの支配者になるという意味じゃない」

 

「そうだろうな」

 

「序でに長老衆による合議制の下に他種族による話し合いの場も設けた方が良いかもね」

 

「うん? それは……」

 

 きょとんとなるアルフレリックだが……

 

「それって両院制議会?」

 

 雫が訊いてきた。

 

「まぁ、上院と下院は名前の通りの上下関係な訳じゃないから少し違うけどね」

 

 ユート自身はNAISEIをしたかった訳じゃなく、貴族だったり真皇に成ったりと政治に関わる立場になる事があるだけで、故に米国の上院下院とか日本の政治体制とか殊更に興味は無い。

 

 因みに日本の上院が参議院、下院が衆議院と呼ばれている。

 

「上院は元老院と呼ばれる国も多いから長老衆の事で構わないだろう。一般枠から各種族の代表を二名くらい出して下院を設立すれば良い」

 

 長老衆とは別に設立するし、下手な不公平さは要らないから各種族から二名くらいが妥当だと、ユートとしては考えたのである。

 

「まぁ、そこら辺は追々で良かろう」

 

 今の侭ではパンクしてしまう。

 

「すぐに結論は言えん。少しばかり長老衆で話し合うので暫し待って貰えるかね?」

 

「じゃあ、その間に僕らはハルツィナ大迷宮へと攻略に向かうが構わないな」

 

「うむ、そうしてくれると助かるな」

 

 こうしてユートは取り敢えず勇者(笑)を拾う為に入口、オプティマスプライムが置かれた場所にまで戻るのであった。

 

 

. 




 仮面ライダーディケイドがスピンオフで強化されたコンプリートフォーム21に、それに伴って仮面ライダージオウ本編にも出なかったからもう出ないだろうと出したネオコンプリートフォームでしたが、これを原典に併せてコンプリートフォーム21に変更致しました。

 尚、第56話:破壊者VS異時の王者です。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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