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ハルツィナ樹海の大樹ウーア・アルト。
ユートは既に女神のウーア・アルトから大樹の真実を聞かされ、この遥か地下に存在しているであろう特殊な鉱石――ウーア・アルトの根と鉱石が融合した聖剣の素材――も獲ており、女神を宿す為の器と共に刀の形をした聖剣を造っていた。
銘は聖剣【大樹】と何の捻りも無いものだが、元々の聖剣に付けたアベルグリッサーよりはマシだと思うし、鍛たれてから何万年と経って劣化はしてないが骨董品で能力的に視るべきものも無い聖剣に比べたら威力も魔法も充分。
ユートはこの世界の勇者ではないがDQ世界で勇者をしてたし、別の世界でも勇者の称号を獲ていたのに加えてその世界に於ける魔王を斃して、【真の勇者】なんて称号も手に入れていたからかウーア・アルトもユートを勇者と目した。
聖剣【大樹】は余り使わないだろうと思うが、せめてエヒトルジュエにトドメを刺すのに使って本懐を遂げさせる心算だし、それを話したら凄まじく懐かれて勇者(笑)はどうでもよくなったというくらいに喜んだ。
現在のウーア・アルトは、約三〇cm程度の謂わばユニゾンデバイスなリインフォースⅡくらいの背丈となり、ユートとは実際に『ユナイト』した状態で大樹ウーア・アルトの前に立っている。
「おい、緒方!」
「何だ?」
「俺の扱いが少し雑過ぎないか? 俺は世界を救う勇者なんだぞ!」
「お前の活躍度に相応しい扱いの心算なんだが、文句を言える立場だと思ってるのかよ?」
ずっと眠らされていた天之河光輝――
事実、トータス組たるユエ、シア、ミレディ、ティオならば未だしも地球組な香織、雫、鈴までもが不快感を露わとしている辺りが勇者(笑)という立場を表していた。
女の子だからこそ不愉快極まりないレ○パー、香織は【閃姫】だから既にユート以外に抱かれる事が出来なかったから事無きを得たが、そうでなければ天之河光輝の欲望の侭に犯されていたのだから視線には憎しみすら篭る。
幼馴染みの気安さや情は既に無い。
「クソッ!」
ブー垂れながら腰に佩く聖剣(笑)を抜いた。
現在の天之河光輝の装備は、キラキラな聖鎧と聖なるサークレットと聖剣(笑)アベルグリッサーという、ユートに破壊された物では無くて雫により破壊された鎧を修復したポンコツと、女神の脱け殻でしかない力を殆んど喪った聖剣(笑)だ。
一応、【天翔閃】や【神威】は放てるが威力は半減していて草すら生えるポンコツな聖剣(笑)、勇者(笑)と正しく御揃いであったと云う。
抑々、ユートが欲しかったのは中身たる女神のウーア・アルトでしかなく、脱け殻な聖剣(笑)に用は無かったから模擬戦後に女神ウーア・アルトを【女神の器】に容れてから聖剣(笑)その物に関しては返却をしていた。
DQ的には攻撃力+90くらいだった聖剣は、今や攻撃力+65くらいに下がっている。
籠められた魔法も元々が極大閃熱呪文に届かない程度の威力だったが、今はベギラマよりマシなくらいにまで威力が落ちてしまっていた。
【神威】がそれだから【天翔閃】に至っては、最早ベギラマよりも何割か威力が低い。
総じて今現在の勇者(笑)は全盛期の半分くらいの戦力しか持っていなかった。
それでも尚、神代魔法さえ獲たらユートよりも強く成れると思い込んでる辺りが滑稽である。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
印を填め込むと入口が開いて漸く大迷宮内へと侵入を果たしたユート達、此処に来るまでに数日を要したのだが、やはり獣人族以外を惑わす霧は厄介だった。
まぁ、ユートには効かないけど。
霧が立ち込めている間はフェアベルゲン滞在を許可され、折角だからとアルテナもオルクス大迷宮から呼んで愉しく過ごした。
その際に何故か土人族のスミサと名乗る少女がユートに御酌したり、滞在中の世話を焼いたりと何かと気を遣ってくれたのだが、どうやらグゼの孫娘の一人らしくて長老たる彼から仲良くする様に言い遣っていたらしい。
ユートを嫌っていたグゼが何の冗談かとも思ったのだが、どうやら彼もユートと仲違いをしても得るものは無いと悟ってアルフレリックみたいに孫娘を差し出してきたのだとか。
スミサはアルテナと幼馴染みで割かし仲良し、別世界みたいにエルフとドワーフは仲が悪いとかも無くて、『アルテナが居るなら私が行く』と言って自分から進み出たらしい。
スミサはユートの識るドワーフに並々ならぬ好奇心を以て訊ねてきた。
流石に手は出さなかったが仲睦まじいというのが相応しく、ユートはドワーフといえば『コレ』という知識と技術を教えてやった。
ドワーフはずんぐむっくりで指先が不器用とかイメージもあるが、実際には可成りの器用さを持った種族であるが故に武器防具や装身具の製作には一家言を持つ。
この世界の土人族はそういった仕事はしていなかったらしいが、確かめてみたらスミサの器用さはそれなりに高かった。
それなりなのは恐らく今までにそれをやらなかったから、慣れていないのが原因だと思われたからアルテナと共に真オルクス大迷宮へと行かせ、鍛冶や彫金の修業をやらせてみる事に。
トータスでの鍛冶は錬成師が錬成をする事により賄われるが、単純な技術だけで鍛冶が出来るのならスミサを鍛冶師にしてみたい。
それは兎も角、ユート達がハルツィナ大迷宮に入ると入口が閉じて妙な感覚が突如として襲う。
「な、何だこれは!?」
「狼狽えるな! 単なる転移だ」
「た、単なる?」
魔法陣がびっしりと描かれた床、全員の視界が暗転して光が戻る皆の目に映るのは木々が生い茂る茶と緑の樹海。
ユートは冷静に辺りを見回した。
「成程……な、こう来たか」
冷静というか冷たい視線。
「ユ、ユートさぁん! これは樹海に戻されたんでしょうか?」
「違うな。そんなのを入口に仕掛けたら誰も入れないじゃないか。此処は既に大迷宮内だ」
「うぇっ!?」
ウサミミをピクンピクンさせるシア。
ユートにとってシアは癒やし、豊満でムチッとした肢体に可愛らしい顔で感情によりピクピクと動くシア自慢のウサミミ、しかも薄着だから肢体がより鮮明にアピールされて無自覚にエロい。
もう何度も閨を共にしているが全く厭きさせない仕種もそうだし、基本的に努力家でユートが悦びそうなプレイを予習しては実践してくれる。
まだ初めてを貰ってから間もない頃、教えてもいない口技やそれに伴い豊満なソレを寄せて扱くなんて、何処で覚えたのかを訊いてみたら驚くべき事に『こうしたらユートさんが嬉しいかも』という感覚だけで練習をしたのだとか。
そしてエロいウサギさんというだけでは無く、ウサミミを持つのは伊達では無いというべきなのだろうか、既に動き始めているのにユートは感心しつつ自分も動いた。
「アイゼンⅡ!」
それは八神ヴィータと現在は名乗る【
普段は単なる指輪の形をした装飾品ながらも、シアの意志に魔力が乗ると変形して武装化。
「どっしゃあ、オラァァ! ですぅ!」
「ごはぁぁあああっ!?」
アイゼンⅡの突撃型にて天之河光輝の後ろから、殴り易そうなド頭をしばき倒した。
「シ、シア!?」
「何をしておるのじゃ!?」
驚く雫とティオだったけど、透かさずユートによる剣戟により二人も吹き飛ばされ……
「キャァァッ!?」
「グフッ!」
悲鳴を上げて樹木へ背中からぶつかる。
「ゆう君!? 行き成り攻撃するって雫ちゃんとティオさんに何を?」
「はわわ~」
驚く香織と鈴。
「な、何? 私、優斗に疎まれる様な事をした覚えは無いんだけど……」
「わ、妾もじゃ」
起き上がる雫とティオが恨めし気な瞳を向けてユートに言い募る。
「オラァァ! 死ぬですぅ! お前なんか死ねば良いのですぅぅぅっっ! 動く公害が! 顔だけ男(笑)がぁぁぁぁっ! キモいんですよ! 笑うな変質者ぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
「ギャァァァァァァァァァアアアアッッ!?」
近くではシアが天之河光輝をアイゼンⅡでしこたま殴っていた。
「ひぃぃっ!? シアシアが襲い掛かるバイオレンスだよ~っ!」
余りのはっちゃけ振りに恐怖する鈴は自らを抱き締める形でガタガタ震える。
「……シア、まさかの勇者(笑)を暗殺事案?」
ユエは冷静に呟く。
「おい、偽者……今すぐに雫とティオの居場所を吐いてから早急に逝け」
ユートが聖剣マサムネを突き付けながら雫? とティオ? に言い放つと、フッと二人の表情がフラットになると無機質な雰囲気を醸し出す。
「え、偽者って……あの雫ちゃんとティオさんが? そんな!」
衝撃でクラクラする香織。
「じゃ、じぁあ……あっちでシアシアが光輝君を殴っているのも偽者だから?」
鬼の形相で殴り続けるシアは鈴も覚えがあり、
それはアニメ【ひぐらしのなく頃に】という作品で主人公の前田圭一が、【鬼隠し編】のラストでヒロイン枠の竜宮レナと園崎魅音をの身体や頭を『さとしのバット』で滅多打ちにしてる場面。
「ひゃあはははははっ! ですぅ!」
病的なまでにL5罹患者な表情が恐い。
「偽者なのも間違いないんだが、シアは天之河を相手にフラストレーションが溜まっていたから」
「どゆ事?」
「『シアさんは俺が守るから』とかいつも通りの妄言と共に肩へ触れたり、『緒方なんかと一緒に居るべきじゃない!』と頓珍漢な事を言ったり、キラキラスマイルをチャージしてみたりとシアの神経を逆撫でしていたからな」
「うわぁ……」
鈴も呆れる他に無い。
ドン引きな鈴――序でにヒャッハー中なシアをも放置し、マサムネで偽者な雫の首筋に傷を付けながら尚も訊ねる。
「お前らに求める事はたった一つ、疾く答えろ……本物の雫とティオは何処だ?」
それに一切答えようとしない雫モドキに対し、ユートはズブリと切っ先を押し込む。
血が流れ出ない辺りが人間ではないと見て取れるけど、見た目は普通に雫なのに何ら躊躇いも無く傷付けていた。
「答えないか……それとも答える機能を持たされていないのか?」
「機能って?」
「魚が水の中で生きられるのはエラから酸素を取り入れる機能を持つからだ。人間はそれを持たないから水の中に居られる時間が短い。コイツらも特定の質問に答える機能を持たないから答えないって訳だ。昔に似た状態が有ったからね」
「似たって?」
「【スレイヤーズ】世界でシルフィール・ネルス・ラーダの父親や街の人間、彼らは冥王フィブリゾにより仮初めの生命を与えられていた。受け答えもはっきりしていて意志も生前の侭だったんだが、中央区の建造物に関しては答えてくれなかった。彼らにそれに関する知識は有ったんだが、答える機能を持たないから答えられない……とね」
本人がそう言っていたから間違いない。
(結局、ガウリィはリナとくっ付いたから余りと言うのはあんまりだけど、それなりに好感度を稼いでいたから【閃姫】に成るのを了承してくれたんだよな~)
ユートが複数の女の子と関係をしているのは知っていたけど、見知らぬ誰かと恋に落ちるには既にガウリィへの想いが強過ぎたからか、ユートの提案に暫くは悩んでいたけど最後には頷く。
「んじゃ、どうすんの?」
「そうだよ、仮にも雫ちゃんの姿だし」
鈴と香織の科白に今も尚、狂喜乱舞をしている
シアへと視線を向けてみると二人は顔を逸らす。
「所詮は偽者、割り切れ」
そしてユートはあっさりと雫モドキとティオモドキの首を断つ。
「「ヒッ!」」
色々と吹っ切れてはいても、流石に友達の姿をしたモノを斬られるというのはやはり抵抗があったらしい。
「オラァァァァァアアッッ! ですぅっ!」
シアも勇者(笑)モドキにトドメを刺したらしく、上半身と下半身が泣き別れをして上半身側が吹き飛ばされた。
「ふん、血も出ないとか生命体ですら無いのか。或いはそういった生物なのか?」
どちらにせよ敵には違いない。
「それにしても、雫ちゃんとティオさん……序でに光輝君が心配だよ」
香織としては、やはり行方不明な仲間を心配せず――勇者(笑)は殆んど敵扱いだったが――には居られなかった。
「大丈夫だろ。あんな明らかに避けようが無かった入口で、致死の罠なんか仕掛けていたりする筈が無いからな。この大迷宮は飽く迄も【解放者】の造った試練なんだ。入口で初見殺しの罠なんて試練にならないからね」
「あ、そっか」
そんな意味不明な罠を仕掛けるのは掛かるのが敵と断定している場合、しかも本当の入口を別に作らないと自分達も入れない。
「つまり転移は複数人の場合だと別れさせる為だろう。ソロだと余り意味があるとは思えないんだけどな……」
若しもこれでソロだったら、転移させる意味が抑々にして無かった処……とはいえ恐らくだけど、パーティプレイ前提なのが大迷宮なのだろう。
規模からして一番簡単なライセン大迷宮でさえソロは厳しく、パーティで或いはレイドを組んでの攻略を推奨していると思われる。
SAOでは六人パーティを八組の一レイドとしていて、四八人フルレイドで攻略をする事が上層ともなれば当たり前になっていた。
とはいえ、正確には四八人を上限としていてもパーティがフルパーティとは限らないから八組ではなく九組とか、そういった変則的なレイドも珍しい話ではなかったが……
特に【黒の剣士】は原典では基本的にソロだったと聞くし、ユートのギルドにサブマスで登録をしていなかったら正しくソロだったみたいた。
ともあれ、四つもの証が無ければ入れもしない
大迷宮なだけにパーティ処かレイドを組んでいるのが普通、【解放者】達はそんな心算で大迷宮を構築していたのだろう。
(恐らくトラップもパーティ前提。しかも大樹の入口に有った注意書きからして、この大迷宮の謂わばコンセプトはズバリ『絆』だ)
入口の転移と探られた頭、そして入れ換わっていたパーティメンバー、入れ換わった仲間を見破れるのか? 見破れずとも疑心暗鬼に陥る事無く『絆』を維持が出来るのか?
(そんな処だろうね)
そういう意味では天之河光輝を選んだのは正しく妙手と云えた。
何故なら雫とティオは未だしも、天之河光輝との間には敵意は有れど『絆』など皆無だから。
(いっそ、大迷宮攻略失敗を謳ってどさくさ紛れに殺るか?)
黒い波動を揺蕩わせてるユートにシアが敏感に
反応をしていた。
(怖い事を考えていますね……)
まぁ、偽者とはいえ天之河光輝の姿をしていたナニかを、全力全壊手加減抜きで叩いていたシアにだけは言われたくあるまい。
然しながら天之河光輝如きに使う時間など短いに越した事はなく、奴の所為で二度手間を取ってまで大迷宮攻略をしたくなかった。
「にしても、ゆう君もシアシアも三人が入れ換わっていたのがよく判ったよね」
「……ん、私は気付けなかった」
鈴の科白に頷くユエ、雫が心配なのか言葉こそ発しなかったが香織も頷いている。
「僕の目は【
原典では寧ろユエを攻撃するハジメを嗜めていたシアだが、此方では天之河光輝の様子がおかしいとすぐに気付けた訳だ。
特にフラストレーションが溜まりに溜まっていたからか、気付いた瞬間にアイゼンⅡを振り被って振り下ろしていたのである。
暫く樹海内を散策しているとユートが目の前の虚空を指差していた。
「どうやら魔物らしい。僕の識らない奴みたいで判別は出来んがね」
「え、どのくらい?」
「
「うぇ、虫型の魔物かぁ」
鈴が嫌そうな表情に。
「来たぞ! 鈴は結界で奴らを分断しろ」
「りょ、了解! ベルファ、セットアップ!」
《Ok SUZU》
アームドデバイス【ベルファ】――鈴に与えられた魔法の媒体となる杖であり武装、原典を識らないユートではあるけど鈴の動きや適性から扇型のデバイスを造って渡していた。
受け答えはするが非人格型デバイス。
【魔法少女リリカルなのは】主体世界に居たならデバイスは造れないのか? と寝物語に鈴から問われたユートは欲しいという鈴に造った。
雫には刀型のアームドデバイスを造って渡しているのだが、サソードヤイバーでも割と事足りるらしくて今現在は腰に佩く程度。
香織の場合は人格を持つインテリジェントデバイスを考えたからまだ造っておらず、シアは既にアイゼンⅡというアームドデバイスを持たされていたし、ユエとミレディは本人の希望から指輪型の非人格型なデバイスを造る予定。
尚、ティオは要らないそうな。
「聖絶ぅっ!」
顕れた魔法陣は近代ベルカ式とこの世界のモノが同時展開、詠唱は機械が肩代わりをしてくれるから『魔力操作』の技能が無くとも普通に無詠唱でイケた。
魔法は便利な力かも知れないが、詠唱だったり集中だったりと僅かなり時間が掛かるのがどうしても不便な処、とある世界では魔法の発動をするのに発動媒体としてCADというのを使う。
機械を使って発動速度を早める為にだ。
これらの技術も使ってアームドデバイスとして完成したベルファ……
蜂っぽい魔物が正に夥しい数が翔んで来ていたのを、ユートの指示通りに聖絶を張って半分以上を彼方側へと分断してやり、此方側には三〇匹か其処らしか残されていない状態だ。
「よっし、大成功!」
ガッツポーズの鈴。
「よくやった鈴、良い子だ」
「ふあっ!?」
ポンポンと軽く頭を叩かれた鈴は頬を朱に染めながらニヘラ~と笑みを浮かべる。
谷口 鈴、やれば出来るし褒めれば伸びる子だと皆から認識されていた。
「殺れ! シア、ユエ、香織!」
「はい! ですぅ! グラビティ・ショックウェーブ!」
「……ん! 緋槍・白蓮華!」
「了解だよ! マハリト!」
シアのグラビティ・ショックウェーブで粉砕されてしまう蜂モドキ、ユエからは炎の槍というべきモノが百もの数となり放たれて蜂モドキを焼き尽くし、香織はユートから習った炎魔法を放ってやはり数多くを焼いた。
アイゼンⅡは物がハンマーという事もあったから勇者王――勇者(笑)に非ず――のゴルディオンハンマーの能力を付加している為、グラビティ・ショックウェーブで光にする事も出来たし放って粉砕なんて真似も可能。
ユエの魔法は緋槍の改良版、その大元となるのは白銀聖闘士・盃座の水鏡が使う氷槍白蓮華で、謂わば炎バージョンの白蓮華という事になる。
氷みたいに白くはないけど。
香織が使ったマハリトは【ウィザードリィ】の魔法で、【狂王の試練場】の約千年前の世界へと関わった際に修得をしたものだ。
ドラクエ系でも別に良かったのだが、折角だからと此方を香織に修得させた。
そういえば僧侶系だった娘が一時的に行方知れずとなり捜索したが、翌日には何事も無かったかの様に戻って……
(……いないな)
何故か戻ってからは積極的になってユートと仲を深めて、しかも躊躇っていた【閃姫】になるのを了承したのだから驚くしかない。
それまではユートがコナを掛けてみても困った表情となっていたのだが……
「鈴、聖絶を解除しろ」
「っ! 了解!」
ユートの両手に宿る魔力を見て頷き言われた通りに聖絶を解除した。
「この右手に
純粋なるエネルギー化された呪文が右手と左手
に収束され、その両手を目の前で拍手するかの如く合わせて呪文同士を融合させる。
ドラクエⅢ世界で勇者アレルの時代から百年もの刻を跨ぎ大賢者カダルが完成させた合体呪文、それは本人も使っていたけど主に異魔神が席巻をしていた時代、賢王ポロンが使って魔王軍を翻弄してきたものだった。
ユートはそれをすぐ間近で視ていた上、当人も大魔王ゾーマの部下たる魔王バラモスが地上支配に乗り出した頃、家を出て遊び人から賢者に転職をしていたから使えるだけの素地を持つ。
「閃吼爆裂イオラゴンッッ!」
イオナズンとベギラゴンのエネルギーが融合、スパークをしながら一つの新たなる呪文となって
完成され、蜂モドキに向かって放たれると極大の爆裂と閃熱の合わさる耀きが大迷宮に弾けた。
しかも爆光は兎も角として、魔力の完全制御が成されていたから爆発がバックファイアで此方に来る事も無い。
対閃光防御などしていなかった彼女らは一瞬の煌めきに目を閉じるけど、余りにも大きな爆裂音
を聴いて徐々に目を開いてみる。
「うわっ! 全滅じゃないですか!」
シアが驚きに叫ぶ。
自分達の攻撃では三〇匹を駆逐するだけでしかなかったのが、未だに百は下らない数を維持していた蜂モドキは少なくともこの近くに残ってはいないらしい。
「ふぃーっ」
軽く息を吐くユート。
ふと見遣ると……
「ですぅ」
「……ん」
「かなかな」
口に出している訳じゃないのだが敢えて言葉にしたらこんな感じか? キラキラした瞳で真っ直ぐにユートを見つめて来ている。
鈴は苦笑い。
ユートも意味を察していた。
「シア、ユエ、香織、良い子だ、よくやったな」
鈴の時と同じく頭をポンポンと軽く叩き褒めてやると、頬を朱に染めてパーッと表情を輝かせながら喜色満面の笑みを浮かべる。
尚、ユエはドヤ顔であったと云う。
鈴が褒められて羨ましかったらしい。
「取り敢えず先に進むか。雫とティオも恐らくはこの先に居るんだろうからな」
「そうでしょうね」
「……ん、間違いない」
「そだね~」
それは全員の一致した意見。
そして女の子達の一致した意見がある。
(勇者(笑)さんの名前が出なかったですね)
(……勇者(笑)、哀れ)
(光輝君、忘れられてるのかな?)
それは即ち、ユートが素で天之河光輝の名前を出さなかった事だった。
平均的な赤ん坊くらいの大きさ、まるで百足の如く動く無数の脚、それでいて口は蜘蛛であり、七つの複眼を持ち黄色と黒が毒々しい二重奏を醸し出し、尾っぽの針から纏う緑の粘液を撒き散らす生物として受け容れ難い冒涜感溢れた魔物は、こうして取り敢えず全滅させられた後に頭の隅へと追いやられてしまう。
「然し、昆虫系……か。リューティリス・ハルツィナは『蟲心師』だったらしいからこれからも出てくるんだな……蟲の魔物が」
「うわぁ……」
実に嫌そうな顔な香織。
「まぁ、さっきの赤錆色のスライムっぽいのみたいな魔物も居るから蟲ばかりじゃないだろ」
ユートはそう言いながら歩を進めた。
らわりを
それから約二時間が経った頃に新たな魔物が現れる、見た目は完全なる猿が棍棒などで簡単ながら武装をした連中。
仲間を捜していたユート一行に襲い掛かって来る猿モドキだが……
「邪魔だ、メラミ!」
「鬱陶しいですよ、突撃ファイアですぅ!」
「……邪魔、凍柩」
「ダルト!」
「殺っちゃえ、ベルファ!」
火球――普通の魔法使いならメラゾーマ級だが――を放つユート、突撃モードにて頭を砕くシア、ユエと香織は氷系魔法で凍らせてしまい数秒程度で呆気なく斃してしまうし、鈴はベルファを投げて薙ぎ払っていった。
「ふう、カオリンがまさかの司教に適性がアリとかさ……」
「そうだな、僕としては先ず僧侶で回復とかを覚えつつ司教に……と思ったから予想外だわ」
【ウィザードリィ】はⅠ~Ⅴまでのシリーズと、Ⅵ以降では全くの別物だと云える。
ユートが行ったのはリルガミンとホウライという二国が戦争をしていた時代、つまり一番の元祖たる【ウィザードリィ~狂王の試練場~】よりも更に千年前の世界だった訳だが、ユートは侍として参戦をしたから【ウィザードリィ】系列ならば魔法使いの呪文が扱えるけど、同時に普通ならば有り得ない君主の適性と忍者の適性により一人で魔法使い系と僧侶系の呪文を使え、更に宝箱を開く技能を持ち合わせるチーターだった。
というか、侍として参戦したのは解り易く刀を使っていたからというのがあり、君主は抑々にしてこの時代では特殊な血筋以外は成れないとされていたし、忍者の適性は【NARUTO】世界に行った影響からだろう。
故にか職業を調べても適性が判らなかった為、ユートは侍という事にしたのだ。
僧侶系呪文は使わなければ君主を疑われない、忍者もそれらしい動きをしなければ良い。
まぁ、侍大将のショウにはバレてしまったからとあるダンジョンでは如何無く力を発揮した。
というよりユートは【ウィザードリィ】世界の常識範囲外からの来訪者、しかも神様特典による『魔法に対する親和性』によりあらゆる埒外技術を修得し易い状態だから、実は超能力や霊能力や錬金術なども含めた全てに高い適性を持つ為に、こんな意味不明な状態になったらしい。
リルガミンとホウライの神はユートの職業を、まんま『異邦人』として定めた。
次元移動をしていたユートを引き込んだのが、【ウィザードリィ】世界の神とされるモノ達だから正体も識っていたし、唯一の『異邦人』として力を借りたのだと云うから当然か。
暫く歩くとどうやら猿モドキは作戦を変えてきたらしく盛っている真っ最中、数匹が一人の少女を輪わしているという胸糞悪くなる光景だけど、シアとユエと香織と鈴は違う意味で真っ青に青褪めてしまう。
長い黒髪がボサボサになって瞳のハイライトは消え、服も申し訳程度に着ているとは烏滸がましいレベルで引っ掛かり、身体のあちこちに汚ならしい液体をこびり付かせた同年代の人間の少女。
「た、すけ……ゆ……と……」
それは行方不明の雫の形をしていた。
猿モドキの汚ないモノが出入りをするのは雫の鞘の内、もう何度も吐き出したらしく溢れ返った液体が憐れを誘う。
はっきり云えばユートにアレが偽者なのは視て取れており、抑々にして【閃姫】である雫と性交に励めるのは主たるユートのみ。
無理に犯ろうとすれば天之河光輝みたいに下半身のモノがピチュンしてしまう。
ならば香織達が何を恐れているのか?
「消滅しろ、
ユートが聖剣マサムネに
「ちょっ、ゆう君! 本物の雫ちゃんやティオさんや光輝君が何処かも判らないのに!」
「居ないのは確認している」
「あ、はい……」
ドスの利いた声に押し黙るしかない。
ユートは沢山の娘を侍らす強欲と色欲の強さを持ちながら、自分のモノに手を出されるのを嫌う嫉妬も持ち合わせている。
偽者なのは理解しながら肖像権の侵害をしやがった猿モドキ共、最早生かす価値など微塵にすら感じないユートの行動は迅い。
「消えてなくなれ、鳳龍っっ! 核撃……ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっ!」
【ウィザードリィ】世界で侍大将ショウが使っていた鳳龍剣術、その中には禁じ手とされている大技が存在しているのだと云う。
大地を斬り裂く鳳龍地裂斬。
虚空を斬り裂く鳳龍虚空斬。
そして魔法との複合技……【DQダイの大冒険】で云う魔法剣だ。
ユートは呪文の中でも最高位となる究極呪文――
ヤってた猿モドキも雫に扮してた猿モドキも、そして樹海すらもこれにより炭すら残さず消滅をさせており、鈴が最高位の結界魔法で護りながらも余波が凄まじい事になっている程。
動揺を誘う心算だったのかも知れないけれど、完全に当てがハズレた猿モドキ共は消滅。
「雫はもう僕のモノだ。その姿でさえ利用する事を許しはしない!」
後ろの【閃姫】達はそんなユートに恐怖をしながらも、其処まで言われた雫に羨望を向けつつも自分がその立場ならきっと同じ事を言ってくれる筈だと、胸を高鳴らせ期待する表情を向けてしまうのであった。
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【ウィザードリィ】は言わずと知れた【ウルティマ】並に古いゲーム、ユートが介入していたのはル・ケブレス=鳳凰が作中に於ける【御老体】と協力して引き込んだ【狂王の試練場】から視て千年くらい前、ワードナーが奪ったアミュレットを持つリルガミンのエルフの王族とホウライの侍大将が闘う戦争状態の地でした。
勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる