ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 余り進まなかったな……





第80話:ゴブる雫とブヒる勇者(笑)

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 焼け野原の方が可愛いげもある光景が目の前に悠然と広がっている。

 

 

 鳳龍核撃斬により焼けるよりも焼失してしまった樹海、少なくとも射線上に居たであろう魔物は全てが何も残さず消えてしまっていた。

 

「ゆう君を怒らせた末路か~」

 

 冷や汗を掻きながら鈴は呟く。

 

 侍大将ショウが一度だけ使った鳳龍核撃斬も、数キロは先の建物にまで衝撃波が及んだ程の一撃なれば、この結果は初めから火を見るより明らかなものであったのだろう。

 

 あの時も数千から成る軍勢――烏合の衆だったが――を纏めて消し炭すら残さなかった。

 

 当然ながら樹海は焼失したのだから周りがよく見渡せている。

 

 ユートは冷静沈着だった、頭の中は北極も斯くやに冷やかなくらいで何ならSEEDがパーン! していてもおかしくないレベルだった。

 

 然しながら心の中は煮え滾るマグマより熱く、太陽の中心部より燃え盛っていたのだ。

 

 何ならフリーザにクリリンを殺された孫悟空、或いは初めて超闘士化した闘士ウルトラマンの如くと云っても過言ではないくらいに。

 

「これで向こうからも此方の現状が判るだろう、雫とティオも合流して来るんじゃないかな?」

 

「かも知れませんが……」

 

 シアがジト目だったけど、やはり嘗ての義弟の様な萌え要素足り得ないのはユートがジト目属性に萌えないからか?

 

 とはいえ、ユートはシアが普通に可愛いと思っているから萌え要素は要らないのだが……

 

「そして普通に光輝君はスルーなんだね」

 

 ユートにとって天之河光輝はシアの萌え要素の一億倍は要らない存在、シアに萌え要素を追加するのと天之河光輝を仲間にする二者択一が有れば間違いなく前者を選ぶ。

 

 考える余地など全く無い。

 

「さて、どうせ向こうから接触して来るだろう。暫くは暇になるし……」

 

 周囲に魔物は居なかった。

 

「ちょっと愉しい事をしようか」

 

 ニコリと笑う。

 

「ユ、ユートさん……」

 

「ブレないよね」

 

「……ん、正にユート」

 

「や、優しくして欲しいよ」

 

 シアは溜息、香織はブレないユートに呆れて、頷くユエに紅くなる鈴、ユートは熱い激情を性欲に変換して彼女らへと叩き付けたのであった。

 

 小一時間ばかり五人で愉しい事をしていたら、何やら向こう側から騒がしい音が響き渡る。

 

「どうやら来たらしいな」

 

 一応は着替えているもののグッタリとしている【閃姫】達、ユートは何度か果てても未だに元気一杯なのが解せないシアや鈴や香織。

 

 再生の力故にかユエは復活している。

 

「ゆう君、光輝君の事でストレスが溜まっていたのかな?」

 

「性欲も溜まっていたよね」

 

 此処に来る前に確りとヌいて来た筈だったが、無限の性欲は伊達ではなかった様である。

 

 オマケに連れて来る必要も無かった勇者(笑)を連れて来る羽目になり、相当なストレスが溜まっていたらしいユートは知らず知らずの内に狂暴な性欲も溜めていた。

 

 僅か小一時間で四人を足腰立たなくするくらいに激しかったと言えば解るだろう。

 

『ゴブッ!』

 

 ゴブリンが現れた……コマンド?

 

「って、ゴブリンだよ!?」

 

「あわわ、聖絶!」

 

「……緋槍!」

 

 緑の肌なナイスガイ? ゴブリンが現れた事にパニックな香織と鈴とユエ。

 

「何を愉快なパニックを起こしてるんですか? あれって雫さんですよ」

 

「「「……え?」」」

 

 シアの指摘に驚く三人はユートを見てきたから頷いてやると……

 

「「「ハァァァァッ!?」」」

 

 ユエまで目を見開いて絶叫した。

 

「え、本当にアレが雫ちゃん?」

 

「シズシズ?」

 

「……驚き」

 

 今の雫は一〇〇cmにも満たない緑の体躯で、武器らしい武器も持たない無防備状態。

 

 武器や防具は兎も角、服は恐らくデフォルトで装備くらいしているのだろう。

 

『ゴブッ、ゴブゴブ!』

 

 何やら身振り手振りでジェスチャーをしてくる雫ゴブリン、だけど口から出るのは『ゴブゴブ』

だったから何が何やらである。

 

「ほんっとーに、雫ちゃんなのかな、かな?」

 

『ゴブ!』

 

 やはり解らない。

 

「この侭、シズシズは元に戻れないの?」

 

『ゴブブッ!?』

 

「ああ! シズシズゴブリンが涙目!?」

 

 当たり前だが醜いゴブリンの姿で一生を終えたくない雫は泣きたくなる。

 

「にしても、【四方(ゴブスレ)世界】のゴブリンより愛嬌があるもんだよな」

 

「うぇ!? あの女の子は性的に喰われて男の人は肉食的に食われる? ゆう君ってそんな世界にも行っていたの?」

 

 何故か矢鱈と詳しい鈴は真っ赤な顔をしながらも食い付きが良い。

 

「そうだが、どうした?」

 

「だ、だってぇ……何気無く雑誌を読んだら行き成り拳法だったけどシズシズっぽいポニテな娘が、ゴブリンみたいなきちゃない雄に犯されてる場面だったからさぁ……」

 

「ああ、ローナか」

 

「へ? 名前……有るの?」

 

「当たり前だろう」

 

 因みに【ゴブリンスレイヤー】は【まおゆう】と同じく、個人名は作中には出てこず基本的には

『女神官』や『妖精弓手』と職業や性別や種族で称されており、誰かが誰かを呼ぶ場合は二人称――『彼』や『彼女』や『貴方』などが使われるか若しくは、『ゴブリンスレイヤー』や『娘っこ』や『野伏殿』など通り名や個人での呼び方など、様々な通称が使われる。

 

「一応、言えば【閃姫】だから会えるぞ」

 

「まぢ?」

 

「勿論だとも」

 

「でも処女じゃないと成れないんじゃ?」

 

「おかしな事を言うな? 彼女は剣士君に想いこそ懐いていたが処女だったぞ」

 

「え? あれ? 若しかしてゴブリンにヤられたんじゃ無いんだ?」

 

「危なかったが助けたからな」

 

 ユートが識らない原典では普通に女神官の視ている目の前で犯されたが、ユートが介入をしている平行世界では汚ないモノを鞘の内に押し込まれる直前でゴブリンを殺したからセーフだった。

 

「んじゃ、女魔法使いちゃんは?」

 

「ヒエナ?」

 

 『眼鏡を掛けて杖を手に持つ女性の魔術師』であろう事は想像に難くない。 

 

「腹に毒の短剣を刺されていたけど解毒呪文(キアリー)が使えるから問題は無いし、傷も速やかに回復呪文(ベホマ)で治してやったからな」

 

「……青年剣士君は?」

 

 ジト目な鈴。

 

「ゴブリンにズタズタにされていたな」

 

「やっぱり女の子()()助けたんだね」

 

 『だけ』を強調する鈴に対して……

 

「別に意図してやった訳じゃないぞ。一党を組む

予定だった女神官(リィナ)に渡していた緊急信号発声装置が起動してから救出に行ったからな。その時には剣士君はズタズタ、ヒエナは切腹した毒状態で、ローナは犯される寸前、リィナは矢傷を受けていて失禁涙目だったってだけだからな」

 

 言い訳に聞こえそうな事を言った。

 

 特殊な腕輪を予め女神官に渡していたユート、それは合流呪文(リリルーラ)の目印に成る代物。

 

 尚、本来の助っ人であるゴブリンスレイヤーは

ユートの介入が原因で、行動に一日の遅れがあったから助けには来れていない。

 

 何はともあれ、あの世界に於けるゴブリンとは醜悪そのものであったからか、雫が変じているだろうゴブリンには愛嬌すら見て取れていた。

 

 魔物には違いないけど。

 

「流石に僕もゴブリンじゃ抱けないから元に戻って欲しい。まぁ、その内に戻るんじゃないか?」

 

「そうなのかな? 雫ちゃんがゴブリンの侭だったら私もちょっと困るかな……友情は無くならないにしてもさ」

 

 ゴブリンと笑顔で戯れるとか端から視たならば危ない女である。

 

「先にも言ったけど大迷宮は飽く迄もミレディ達――【解放者】が、神代魔法継承の為の試練として用意をしたモノだ。入口で致死性のトラップなんて有り得ないんだよ。元に戻せないってトラップも有り得ないならいずれは戻る筈さ」

 

「そうだと良いんだけど……」

 

『ゴブゥ……』

 

 神妙な表情で頷く香織とゴブリン雫。

 

「恐らくは階層を抜けて新たに転移するくらいのタイミングか、もう少し先になるのかは流石に判らないにしても……この大迷宮のコンセプトを鑑みれば『絆』を試しているんだろう」

 

「絆がコンセプト?」

 

「そうだよ。入口にも書いてあったじゃないか、『紡がれた絆の道標』と……な。『四つの証』と『再生の力』に関してはウーア・アルトに着いてから手に入れに行けば良いけど、『紡がれた絆の道標』ってのが獣人の案内ってのはちょっとばかり解せなかった」

 

「……ん、解せない?」

 

「絆なんてアイテムみたいに取りに戻れるもんじゃない、それならそれに関しては初めから樹海の入口で注意書きをするべきだろう? つまりは、大迷宮のコンセプトが『絆』を示せって暗に示していたんだろうね」

 

 ユエが鸚鵡返しに訊ねて来たから答えてやる、それは態々大迷宮の入口であった理由。

 

「絆ですかぁ」

 

「じゃあ、雫ちゃんがゴブリンになっちゃったのもそれに関係してる?」

 

「仲間だと見破れるか? 見破ったとして受け容れられるのか? そんな感じだろうね」

 

 予想に過ぎないが……

 

 ミレディは大迷宮の情報は余りくれないから、予想が正しいかどうか今は判らない。

 

『ゴブ、ゴブブ!』

 

「蒼覇とサソードヤイバーが無くなった?」

 

『ゴブゥ! ゴブゴブゴブ!』

 

「転移してゴブリン化したと気付いた時から無くしていた……ね。なら武具は別の場所に転移させられたんだろう、厄介なもんだな」

 

 どうやら雫は貰ったサソードヤイバーも刀である【蒼覇】も喪って落ち込み中らしい。

 

「何でゆう君、雫ちゃんのゴブゴブ語を理解してるんだろ?」

 

「鈴には判んないよ」

 

 ちょっと有り得ない光景に首を傾げる。

 

「心配は要らない。マイスターたる僕なら取り戻す事が出来るからね」

 

 ユートが【帰巣】の魔法を使うと喪われた筈の武器――蒼覇とサソードヤイバーが顕れた。

 

『ゴブブー!』

 

 蒼覇を腰に佩きながらサソードヤイバーを握るゴブリンの図だが、其処には嬉しそうにしている雫の姿が幻視されて微笑ましい。

 

「……雫が嬉しそう」

 

「そりゃ、武器とはいってもユートさんから戴いた贈り物ですからねぇ」

 

 ユエとシアの科白に頷くのは香織。

 

「ゴブリンの姿じゃ、身長制限的にサソードへの変身は無理だ。かといって蒼覇は雫の体格があってこその刀だからな……これを」

 

『ゴブ?』

 

「蒼覇と対を成す小太刀で【清純】だ。ゴブリンの身長なら小太刀が大太刀レベルだろうからね」

 

『ゴブブ!』

 

 背に合わぬ蒼覇とは違い、清純は確かに今なら大太刀みたいに扱える。

 

 尚、この二振りはユートが鍛った太刀と小太刀

でありそれ以外の何物でもない

 

「準備も整った事だし、ティオを捜すぞ」

 

「やっぱり普通にスルーしちゃうんだね」

 

『ゴブブゥ』

 

 結局、名前を呼ばれなかった天之河光輝に少しだけ哀れみを感じてしまう幼馴染みーズ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 更に向かった先に新たな展開。

 

「ゴブリンがゴブリンと闘っているな」

 

 能力値が通常のゴブリンと大差無いからか? 恐らく闘い方からティオらしいゴブリンが複数のゴブリンと闘い、傷だらけになってそれでも諦めないとばかりに攻撃していた。

 

「スカラ、ピオリム、バイキルト……合体呪文スピオキルト!」

 

 ティオ・ゴブリンが一瞬だけ光輝き、すぐにも優勢になって周りのゴブリンを屠っていく。

 

 三種の強化呪文の効果を更に倍化して掛けるという合体呪文、故に大きく身体機能が増幅されたティオ・ゴブリンは勝てたのだ。

 

『ゴブゥ!』

 

「どうやら大丈夫っぽいな、ティオ」

 

『ゴゴブ!』

 

 頷くティオ・ゴブリンに笑い掛けてるユート、同じゴブリン語を話す雫・ゴブリンは兎も角としてユートはどうやってコミュニケーションを? と頭を抱えてしまう一堂。

 

「ねぇ、ゆう君はどうやってシズシズやティオさんとどうやって話してるの?」

 

 まさか、何処かの世界線の魔王と正妻みたいな互いを視れば通じ合うなんて、おかしな話ではあるまいに……

 

「多分、カンピオーネの【千の言語】とこの世界に来た際に強制付与された【言語理解】が組み合わさって、ゴブリンの言語を翻訳してしまっているんじゃないか?」

 

「え、じゃあ……あっちのゴブリンの言葉も判ったりするの?」

 

「んにゃ、解らん」

 

「はぇ?」

 

 先程の言葉と矛盾するユートの否定には又候、理解不能だと首を傾げてしまう鈴。

 

「恐らくは、雫らが明確な人間だからゴブリン語も人間の言語として解してる。純粋なこの世界のゴブリンの言語は流石に解らないんだろうね」

 

「そうなんだ……」

 

「とはいえ、これじゃ不便か」

 

 ユートは手に銀鉱石を二つばかり取り出して、握り締めて魔力を流してやった。

 

「完成した。これを掛けてみろ」

 

 銀細工のペンダント。

 

 雫・ゴブリンとティオ・ゴブリンが言われた通りに首に掛ける。

 

「話してみると良い」

 

「……判る? 香織」

 

「あ、判る! 判るよ雫ちゃん!」

 

 思わずゴブリンな身体の雫に抱き付く香織に、雫はあわあわと慌てた表情に。

 

「ふむ、主殿……判るかぇ?」

 

「僕は初めから判るからな」

 

「であったのぉ……」

 

 所作がティオなゴブリンというか、ゴブリンがティオの所作を執っているというべきか。

 

 見た目がゴブリンなのに何処か優雅で流麗で、美しさすら感じさせてくれた。

 

 本来の姿は艶やかで胸も大きく肉感的な男好きをする肢体であり、ミュウの一件が無かったなら数百年物の処女をすぐにも散らしたいくらいに美しい女性である。

 

 今はゴブリンだがな!

 

「よし、全員集合したし……次に向かうか」

 

「え、ちょっ! 光輝は?」

 

「ん? ああ、居たなそういや」

 

 すっとぼけというか、目に入れるのも存在するのも御断りという感じであったと云う。

 

「ふむ、主殿は勇者というのに隔意を持っておる様じゃが……渡り歩いたという世界で某かがあったりするのかの?」

 

「……嘗て疑似転生とはいえ勇者アレルの双子の弟だった。それは構わない、アレル自身は勇者として最上の存在だったからな。実際に勇者になった時は『悪魔の子』とか言われて追われたり村は潰されたり碌な事が無かったが、これも別に良いさ。問題は召喚勇者。中には明らかなハーレム願望持ちで天之河みたいなキラキラフェイスでポーカーフェイスは出来ないバカ勇者も居たしな」

 

 ハーレム願望自体はユートもブーメランだから構わないのだが、少なくとも好きになれるタイプの人間ではなかっただろう。

 

 何しろ『無視されるのは有り得ない』だとか、可成り自意識過剰な人間だったから。

 

 これは全ての召喚勇者に共通はしない、まともな勇者も要るからだし、前述の勇者も話せない訳では決して無かったのだ。

 

 他にも天職が勇者ながら最弱だった女の子にすら勝てず排除された事例もある。

 

 『勇者』というモノには希望が持てない理由も確かにあったという事。

 

「最弱の女の子? という事はこの世界じゃないのよね……」

 

 雫が最弱で想像したのはハジメ。

 

「一度、異世界に跳ばされて活動していたんだ。あの世界の少女とエルフ、それに同じく日本人で跳ばされた青年……パーティを組んでいてね。けど僕は彼女と関係を持ってすぐ日本に逆に跳ばされてしまった。仕方がないから暫く日本人としての活動に移行して高校生として動いていたら又候、勇者召喚での集団拉致に巻き込まれたんだ」

 

「それはまた……」

 

「折角、悠那達と可成り仲好くなっていたのに。とはいえ昔に比べて肉感的に成長した彼女と再会出来たのは悪くなかったけどな」

 

 代わりにユートの識らない原典は完全無視に、流れが可成り違ってしまっているけど。

 

「あの時の勇者(笑)も天之河レベルだったな」

 

「うわぁ」

 

「御愁傷様だよね」

 

「あれと同レベルなんだね」

 

 雫も香織も鈴も同情を禁じ得ない。

 

 更に進むが幸いにユートの鳳龍核撃斬の影響なのか、魔物が未だに散発的にすら出て来ないから割かしイチャ付きながら歩いていた。

 

『ブヒーッ!』

 

 其処へ来て遂に魔物が現れる。

 

「うわ、最悪な!」

 

 それは【四方世界】のゴブリン並に女の子からの悪評が高き魔物、場合によれば亜人族にも数えられるヒトを模した豚面――オーク。

 

 豚面に肥えた成人男性といった肥満体を持ち、高い性欲で女性を襲う性欲魔人。

 

 尚、世界によっては豚面だけあってチャーシューになる美味さらしいのだが、このトータス世界のオークは煮ても焼いても食えなさそう。

 

「死ね、氏ねじゃなく死ね! 豚野郎!」

 

『ブヒ、ブヒヒーッ!?』

 

 御多分に漏れずこのオークも香織に凸してきたから、ユートは女神ウーア・アルトの神聖力が宿された新たな聖剣マサムネを振り上げた。

 

 棍棒で防御しようとしたがアザンチウムの刃を

相手にしては真っ二つ、それでも僅かに稼げた刻を無駄にはしないで何とかバックステップ。

 

「チィ、しぶとい!」

 

『ブヒーッ!』

 

 何だか両腕を挙げて左右に振っている仕草をしてくるが知ったこっちゃない。

 

「冥界に逝け豚が!」

 

『ブフーッ!』

 

 必死に避けて躱すオーク。

 

「あれ、八重樫流だわ」

 

「え? って事は光輝君!?」

 

 見た目がオークだから華麗さは無いにしても、見慣れていたからこそ雫は気付けた様だ。

 

「ゆう君、絶対にあれが光輝君だって気付いていて攻撃をしてるよね」

 

「間違いなくね」

 

「どさくさに紛れて殺る心算なのかな?」

 

「本当に殺りそうで怖いわ」

 

 香織と雫の会話だったが、今の絵面は美少女とゴブリンの密会であったと云う。

 

「あ、何か掠れたよ?」

 

「ヤバいわね……」

 

 雫はダッシュしながら小太刀の清純を抜刀して聖剣マサムネを防ぐ。

 

 因みに、マサムネの銘とは【SaGa3~時空の覇者~】での四聖剣――エクスカリバー、ソロモン、クサナギ、マサムネから来ている。

 

 【SaGa2~秘宝伝説~】でも秘宝の一つにして女神の欠片として登場、【魔界塔士SaGa】に於いては回数の制限が無い上に『かみ』には効き難い

エクスカリバーより使える武器として、ラストダンジョンで手に入る。

 

 ユートは何気に御気に入りらしい。

 

 

 閑話休題

 

 

 ガキンッ! マサムネと清純がぶつかり合い、甲高い金属音が辺りに鳴り響いた。

 

『ブヒ!?』

 

 まさかゴブリンに助けられるとは思わなかったのだろう、勇者(笑)オークが腰を抜かしながらも驚愕に目を見開いている。

 

「助けるんだ?」

 

「ごめん、だけど一応は幼馴染みだったんだから目の前で死なれると……さ」

 

「そうだな、そうかも知れないな」

 

 勇者(笑)オークをまるでGでも視るかの如く、然しながらゴブリン化しているとはいえ【閃姫】たる雫の願い、聞くのは吝かではなかったユートは聖剣マサムネを鞘へと納刀する。

 

 雫も、レ○プされ掛けた香織でさえも勇者(笑)を見捨てられないのは解っていた。

 

 勇者(笑)が何か更なる決定的な莫迦をやらかせば流石に見捨てるかもだし、どうせ初めから女という観点からは視ていないのだから問題は無い。

 

 雫も最初はときめいたらしいが……

 

 ユートは手頃な大きさの石ころを拾う。

 

「錬成魔法」

 

 基本的には【創成】を使うから余り使う機会の無い錬成魔法、それを使って石ころを某かの魔導具へと変化させてそれをオーク化した天之河光輝の口に放り込んだ。

 

『ブヒーッ!?』

 

「とっとと呑み込め」

 

『ブフゥッ!』

 

 そして無理繰り呑ませる。

 

「な、何をするんだ緒方!?」

 

 その瞬間に天之河光輝の声が出た。

 

「こ、これは?」

 

「雫とティオに渡した魔導具と同じ魔法を仕掛けた石を呑ませた。あれの効果でお前はオーク的なブヒブヒ語が天之河語に変換されているのさ」

 

 ゴブリン二匹がシルバーアクセサリのペンダントを身に付けているのに気付く。

 

「あ、あのゴブリンが……雫とティオさん?」

 

「とか驚いているが、お前はお前で豚野郎だろ。漸く中身に外見が追い付いたな」

 

「そ、そんな訳があるかぁっ!」

 

 醜い内面に外見が伴った……など、天之河光輝からしたら有り得ないのであろう。

 

(そういや、豚人族は居るんだよな。オークとは違うらしいけど……豚人族のルーツではありそうな話かな?)

 

 物語的なオーク程に貪欲ではないが、豚人族もそれなりに繁殖力が高いらしいから。

 

 因みに今の天之河光輝みたいな豚面ではなく、普通に豚耳と尻尾を持った人間だとか。

 

 それはそうだろう、熊人族や虎人族や狐人族なども特徴が肉体へと表れはしても顔が熊や虎や狐そのものだったりはしない。

 

 つまり、豚人族が天之河光輝みたいな豚野郎という訳では決して無かった。

 

「それより、俺には石ころを呑ませたのに雫達にはアクセサリとはどういう事だよ?」

 

「あ? 何で僕が天之河の為に銀細工なんかしなくちゃならんよ?」

 

「ぐっ!?」

 

「抑々、錬成師無能説を推していた様な奴らに何で造って貰えると思った?」

 

「無能と呼んでいたのは檜山や他の連中だろ? 別に俺は何も言ってない!」

 

 確かにこの天之河光輝は言ってないであろう、然しながらユートは識る者から聞いている。

 

 【ありふれた職業で世界最強】に於ける原典、天之河光輝がハジメを間違いなく『無能』だと言っていた事を。

 

「というより錬成師を前線に出そうとか考えていた時点でお前らが無能だ」

 

「な、何だと!?」

 

「後方支援特化の錬成師を前線に出す? 戦術のせの字も理解していないだろう」

 

「だが、全員が一致団結するのは当然!」

 

「一致団結? 初めからしていないじゃないか。小悪党四人組は学校でのノリでハジメを平然と虐めていたしな。況してや僕の邪魔をして十数人のクラスメイトを死なせた」

 

「それは……」

 

「しかも撃たれたのは香織だった」

 

「……」

 

 これで撃たれたのがハジメなりユートなりなら天之河光輝も檜山大介を庇う言動をしたのだが、何しろ攻撃を受けたのは端から視れば香織だった訳だから、それを擁護する事は流石に憚れたのか此処は閉口をするしかなかった。

 

「もう一度言う、お前が無能なんだよ!」

 

 ユートは地面から鉱石を得て更に錬成魔法によりDQで皆勤の【鋼鉄の剣】の構成をした。

 

「こうやって工房で武具を造っていた方が余程、前線に出るよりも役に立つってのにな」

 

 縦しんば前線に立つとしても、補給線で武具を修復したりする後衛に居るべきである。

 

 錬成師に直接戦闘をやらせている輩を無能と呼ばず何と呼ぶのか? という話。

 

 まぁ、ユートは闘えるのだが……

 

 戦士、武闘家、魔法使い、盗賊、僧侶、商人、遊び人、賢者、バトルマスター、旅芸人、パラディン、スーパースター、魔法戦士、レンジャー、

船乗り、海賊、魔物ハンター、天地雷鳴師、ゴッドハンド、羊飼い、吟遊詩人、笑わせ師、踊り子――そして勇者。

 

 ドラクエ3、6、9で登場した職業を網羅するくらいに闘い慣れているのだから。

 

 尚、ユートが行ったアトリエ世界で錬金術士も追加された模様。

 

 幾らか言い争いは続いたものの、まだ大迷宮に入ってからそんなに経たない序盤も序盤といった事実から、天之河光輝も押し黙るしか無くなって取り敢えずは先へと進む事に。

 

 再生魔法は試していない。

 

 この大迷宮は入る際に再生魔法を指摘してきている為、当然ながら再生魔法対策は成されていると考えるべきだからだ。

 

 そんな事実は無いが、何ならそれでも頭が悪い莫迦が再生魔法を使った場合に備えた罰則的な、その手のトラップが仕掛けられている可能性をも鑑みた結果である。

 

 鳳龍核撃斬の跡が無い樹海部分を進むと巨大な樹木っぽい魔物が現れた。

 

 顔は無いが人面樹と呼ばれるDQモンスターみたいな魔物、とはいえ本体が太さ一〇mの高さが三〇mとか普通に人面樹より大きいと思われる。

 

(昔にアバンが魔の森で遭遇した特殊な人面樹もこんな感じだったのかな?)

 

 アバンが勇者見習いみたいな感じで旅を始め、必殺技を修得するのに持つ技能の個々レベルを上げようと、『武術の神様』と称される人物からの教えを受けるべくロモス王国の魔の森へ入った。

 

 魔の森はネイル村の在る場所ではあるものの、本来なら普通にモンスターが徘徊するだけだった筈なのに、魔王ハドラーが幅を利かせ始めてからは特殊モンスターが現れ出したのである。

 

 巨大な人面樹もその一つ。

 

 大量のモンスター群に巨大な人面樹とレベルがまだ低いアバンとロカには荷が重いだろう戦闘、盗賊っぽい女性による手助けが無ければ危なかった場面だったろう。

 

 ユートがアバンと出逢ったのは、【凍れる時の秘宝】によりハドラーを封印する為の闘いの場、【ロト世界】から【天空世界】へ渡る最中だった時に、【ダイ大世界】の三柱の神が干渉して召喚されてしまい落ちた先が其処だった。

 

 なのでカール王国を出てからの旅路はアバンやロカやレイラから聞いただけだが、原典では見ていない【アバンの大冒険】は愉しめたもの。

 

(まぁ、それは兎も角として……能力がガタ落ちな雫とティオと天之河は戦力外だな)

 

 雫は武器を持っているけど十全に闘える身体ではないし、ティオも魔法や龍化が出来ない状態で変身も不可能ときては仕方がない。

 

 天之河は論外。

 

「この位置、魔物の強さから視てフロアマスターの可能性が高いな」

 

「つまり、斃さないと進めないのね?」

 

「ああ、雫。それと判っているだろうけど」

 

「私とティオさん、それに光輝は闘えないわね。後ろに下がっているわ」

 

 聞き分けが良くて何より。

 

「待て、緒方! 俺は闘える!」

 

「武器が無く、仮に有っても普段の動きすら出来ないお前が役に立つ訳無いだろう。無能はすっ込んでろ!」

 

「ぐっ!」

 

 ユートの指摘に歯噛みする天之河光輝。

 

「征くぞ! 鈴は三人の護りを頼む」

 

「了解だよ!」

 

 この大迷宮のコンセプトが『絆』であるからには天之河を見捨てるのは拙いと判断、鈴をガードとして残す事で取り敢えず見捨ててないアピールをしておく。

 

 ユートの嘗ての家たる緒方家は、戦国時代に興された剣術の【緒方逸真流】を伝えていた。

 

 この流派は特殊な鍛え方で様々な武器を扱う事を旨としており、然しながら一人が鍛え抜くには扱う武器は多過ぎる事から宗家に【刀舞術】を、分家にそれぞれ別の武器による技術を継承していく形を取っている。

 

 ユートは宗家だったから【刀舞術】を習っていたのだが、分家筋の狼摩家の長女たる狼摩白夜から【鉄扇術】を、同じく分家筋の八雲家の長女たる八雲白珈から【双刀術】を習っていた。

 

 右手に聖剣マサムネを、左手にアザンチウムで造った扇を持って、のある意味で二刀流状態となったユートは不規則な機動を描いて襲い来る枝を斬り捨て、刃物の如く葉が手裏剣みたいに飛び交うのを斬り払い、まるで防弾の様な木の実を真っ二つにしていき、地面から槍の如く切っ先を持つ根が突如として現れれば扇を展開して防ぐ。

 

 元々が熊や狼や野犬や山猫など野生動物と闘って磨かれた技術を、緒方家開祖は戦国時代に於ける戦争で人斬りの技術も磨いた。

 

 故に人間だけでなく魔物との闘いにも充分に使える技に昇華されている。

 

 丸太の様な枝を防ぐユート、天之河光輝ならば受け止めるのだろう攻撃だったけど、ユートは僅かに刃を併せると当たらない様に極小さな運動で逸らすだけ、攻撃の根元となる部分を斬り捨てて同じ攻撃が出来ない様にしていた。

 

 最小限の動きで最大限の効果を、言うは易しだが実際に行うのは難しいのが世の常であろう。

 

 古いベルカの騎士はそれが出来ていた。

 

 原典でシグナムが言っていた事――『敵に近付いて斬る』というのを、ヴァイス・グランセニックが『奥義』だと言っていたのはこの事である。

 

 古代ベルカの時代に跳ばされたユートは戦争で多対一を熟し、この技術を究極を越えた極限にまで磨き抜いてきたのだからこの程度は容易い。

 

「どっせい! ですぅ!」

 

 敵愾心(ヘイト)をユートに集め目を引いてから他の者が叩く、この巨大なトレントには有効な手段であるのが窺える。

 

「……緋槍百蓮華!」

 

「変身!」

 

《CHANGE!》

 

 ユエが数百を越える緋槍を撃ち放った瞬間に、香織が裏モードで変身をした。

 

 ハートスートのカテゴリーAは出来損ないとされたエヒトの使徒リューンを封印しているから、裏モードではリューンの姿そのものへと変化させてくれる。

 

 元より本来の機能かも知れないけど、通常ならカテゴリーAでは白を基調としたカリスの姿に、仮面ライダーとしてのリューンに変身してしまう

為に態々、裏モードと称する機能を付けて香織に渡してあった。

 

「カテゴリーKが有るんだしそっちでノイントに成れば良いものを……」

 

 姿形は変わらないけど完成品と不完全なモノ、当然ながら能力も機能もノイントが上。

 

「分っ解っ!」

 

 同じ攻撃でも消費や威力が全く違う。

 

 それでも香織の能力は高くなっていたからか、巨大トレントは分解によって消滅。

 

 巨大トレントが佇んでいた跡には魔石だけが遺されていたと云う。

 

 

.




 次回は夢の話からか……


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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