ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 殆んど進みません。





第82話:優しい夢を越えて

 

.

「追い出されてしまった……」

 

 既にユートは夢から目覚めている。

 

 愉しんでいたのは良かったが、リューティリス・ハルツィナの意志っぽいナニかに話し掛けられて、何故かプンプンな感じだった彼女はユートを夢世界から追い出したのだ。

 

 まぁ、クオンに会ってから後も好き勝手にやっていたから辟易とされたのかも知れない。

 

「せめてフレアの喫茶店で珈琲くらいは飲みたかったんだけどな」

 

 光源が無い真っ暗闇の中だがユートは夜目が利くというか、ユートの魔眼は視る事に特化されている【神秘の瞳(ミスティック・アイ)】故に普通に闇でも見えており、辺りを見回してこの場がトレントを斃して入った巨樹の祠にも似た、然しながら二回りは広そうな部屋になっているのが判った。

 

「ドーム状になっている。それにあれは琥珀? というか、僕が入っていたのと同じだし何より数が人数分だからな」

 

 仲間と+αが入っているのだろう。

 

 調べてみれば雫もティオも元の姿に戻っていたから一安心、流石にゴブリンな姿ではちょっと抱けないから仕方がない。

 

 当然ながら天之河光輝も元の姿だったのだが、其処ら辺はどうでも良い話だった。

 

 まるで死んだ様な眠りに就いてはいるけど氣の感知が出来たし、間違いなく生きている様だから取り敢えずは放って置くべきだろう。

 

「試練に打ち克てば起きるんだろう」

 

 ユートがそうだったのだから。

 

 とはいえ、未だにユート以外は目覚めていないから少し退屈を持て余していた。

 

 雫やユエやティオやシアや香織や鈴のあられもない姿を視れば目の保養になるけど、残念ながら彼女らの姿はハルツィナ大迷宮に入った時と特に変わらない格好。

 

 まぁ、それはそれで(そそ)るのだが……

 

「折角の空き時間なんだし、魔物の肉の錬金でもするか? 何だかんだと便利なアイテムだから」

 

 魔物の肉は毒みたいな物で、人間が食べたりすれば肉体が連鎖崩壊して死に至る。

 

 そしてユートは使わないが、ハジメと恵里へと渡していて二人のステータス値と技能に変化が有ったりするが、技能は兎も角としてステータス値は生肉を喰らうより上昇率が半減していた。

 

 早速とばかりにユートは錬金釜をストレージから取り出し、今までに魔物を斃しては手に入れてきた生肉をボチャンボチャンと投入していくと、ぐーるぐるぐーるぐると錬金棒にて釜の中を掻き

回し始める。

 

 ユートは【ソフィーのアトリエ~不思議の本の錬金術士~】の世界に墜ちてしまい、ちょっとしたミスでソフィーの家の中のあろう事かソフィーの眠るベッドの上に。

 

 勿論、衝撃で目覚めたソフィーは真っ赤になりながら大混乱したのは言うまでもあるまい。

 

 空飛ぶ喋る本なプラフタは――『ソフィーがいつの間にか大人に』と誤解していた。

 

 その後は様々な誤解を解いておきプラフタから

錬金術を習うと、ソフィーと共に錬金術士として錬金術の真髄を極めんとしてきたのである。

 

 錬金術は素材の特性を理解して、複数のそれを分解し抽出、統合して再構築をする技術。

 

 【不思議シリーズ】から出た後は【黄昏シリーズ】の世界へ、そして【アーランドシリーズ】へ行き更には【ザールブルグ】と【グラムナート】の世界へと行って錬金術をやり続けた。

 

 その技術は確かなもの。

 

「三色魔物肉団子……出っ来上っがり!」

 

 完成したのは三色団子だったけど、魔物肉を使って造った錬金アイテム。

 

 どうしてこうなるのかなど考えてはいけない、実際に喩えばアーランドの錬金術士のロロライナ――ロロナも錬金術で様々なパイを錬金するけど、明らかにパイ作りの過程を経てないパイ生地だが普通に作れているのだから。

 

 ザールブルグの方でもエルフィール――エリーが

チーズケーキを錬金する。

 

 つまりはそういう事だ。

 

「うん?」

 

 琥珀の一つが仄かな光を放ち、それが少しずつ収まっていくとドロリと融解して棺に吸収されたのか消え、其処には未だに目を覚ましていない雫が横たわっている。

 

「眠り姫を起こすのは王子様か騎士の口付けとかがポピュラー、ぶっちゃけ僕は王子様じゃないんだけど真皇だから問題無いか? ベルカの騎士でも一応はある訳だしね」

 

 ユートはそう言いながら横たわる雫の上半身を持ち上げ、ソッと顔を近付けると彼女のプルンとした柔らかそうな唇に自らの唇を重ねた。

 

「御早う、()()

 

「っ!?」

 

 目をゆっくりと開けた雫はユートの科白を聴いて吃驚仰天、真っ赤になりながら大混乱に陥ってしまったらしいけど暴れようにも確り押さえ付けられていたし、再び唇を重ねられた上に舌までも捩じ込まれて自分の舌を絡み取られては身動ぎをするのも話すのも無理。

 

 諦めて成すが侭でされるが侭にキスの感触だけを感じていた。

 

 天之河光輝辺りにヤられていたらぶん殴っても止めさせるが、今や好意を持つ相手であるユートからのキスなら受け容れない理由は無いから。

 

「一番乗りおめでとう」

 

「あ、ありがと。さっきのし、雫姫って?」

 

「呼ばれていたろ? 夢ん中で」

 

「うっ!」

 

 又候、頬を真っ赤にする雫。

 

「な、何で!?」

 

「夢ってのは無意識領域で繋がっているもんだ。こちとらは精神や脳に対して一家言を持つから、近場に居ればハックするくらいは出来るのさ」

 

「あう~っ! 忘れて!」

 

 穴が有ったら入りたい気分なのか、ポニーテールガードで顔を隠しながら叫んだのだと云う。

 

 一頻り羞恥心を煽られた後に正気へと戻った雫は釜を見て小首を傾げた。

 

「何か造っていたのかしら?」

 

「魔物肉の団子をね」

 

「魔物肉のって……確か南雲君と恵里に食べさせたとか言ってたわね」

 

「ステータス値が上がって技能も増えるからな。前回から間も空いたしそろそろ素材の魔物肉が多くなってきたんでね」

 

「ふーん」

 

 元々が魔物を合成された獣人や吸血鬼や竜人のシアとユエとティオは兎も角、雫と香織と鈴であれば恐らく魔物肉の団子を食べたら容姿に変化があるだろうとユートは予測している。

 

 ハジメと恵里の容姿がより良い方に変わった事を鑑みれば、より美しく……若しくは可愛らしくと顔が変わるのは勿論、胸が増量されて腰も括れてお尻もより柔らかな肉付きとなるだろう。

 

「団子は造り終えたから次だな」

 

「今度は何を?」

 

「カチカッチン鋼って識ってるか?」

 

「カチカッチン鋼? ドラゴンボールのカッチン鋼と関係があるの?」

 

「……まぁね」

 

 未だにこの世界では【ドラゴンボール超】なんて放映されておらず、雫が識るのは界王神のシンが悟飯の手にしたZソードの切れ味を確かめるべく用意したのが、宇宙一硬いとされるカッチン鋼だった事からカッチン鋼は周知されているけど、【ドラゴンボール超】が初出のカチカッチン鋼は雫も識り様が無かった。

 

 カチカッチン鋼をユートは取り出す。

 

「それがカチカッチン鋼?」

 

「そう。この程度の大きさでも相当に重たいんだけど、これとグラビ石を錬金する事で多少なりとも軽くしてみようかと思ってね」

 

 嘗てマルローネが騎士の鎧を軽くしようとしたのと似た感じだろう。

 

 ユートは早速だとばかりにカチカッチン鋼と、グラビ石に中和剤を錬金釜にぶち込んだ。

 

 ぐーるぐるぐーるぐる。

 

 カッチン鋼やカチカッチン鋼その物はユートが創成して造れてしまうが、未だに視た事の無い物を造り出すのは可成り難しい。

 

 遥か昔に青鍛鋼(ブルーメタル)を造ろうとして失敗の山を積み上げたくらいには……だ。

 

 因みに、ドラクエ世界で実際の青鍛鋼を視たら可成り組成が違っていて凹んだ覚えがある。

 

 青鍛鋼は地下世界アレフガルドで三種の神器的な扱いで、伝説の武具として【光の鎧】に使われている魔法金属の一種であり可成り硬度が高く、ファンタジー御用達とも云える流白銀(ミスリル)を遥かに越えているらしい。

 

 伝説の武具に使われる程に希少金属の筈だが、【ロトの鎧レプリカ】は兎も角としてアリアハンでは何故か地下牢の鉄格子に使われていた。

 

「ねぇ、優斗……それをやりながら話とかは出来るのかしら?」

 

「出来るぞ」

 

「ちょっと退屈だから話さない?」

 

「構わないが……」

 

 ユートとしてもぐーるぐると魔力を込めながら掻き混ぜているだけだし、退屈といえば退屈をさていたから話すのは寧ろ大歓迎である。

 

「優斗は光輝をどう思っていたの?」

 

「行き成り萎える話だな」

 

「御免なさい。でも一応は幼馴染みだしね、知っておきたかったのよ」

 

「……劣化草加雅人」

 

「は? 草加雅人って確か仮面ライダーカイザだったわよね?」

 

「そうだ」

 

「何で草加雅人? しかも劣化って……」

 

「天之河って奴は謂わば『俺の事を好きにならない人間は邪魔なんだよ』って感じの奴だからね」

 

「え、え~っと……そうかな?」

 

 返答に困る雫は、果たして自分の幼馴染みの彼はそんな感じだったかと考え込むけど、ちょっと上手く纏まらなくて更に困ってしまった。

 

 雫としては否定しておきたいのだが……

 

「ま、誰かしらは大抵が何らかの劣化品になるんだろうから気にするな」

 

「いや、気にするなって……」

 

 それは余り嬉しくない。

 

「それより天之河の話なんて雫と二人きりでする話題としては面白くないが?」

 

「そ、そうね」

 

 何故に態々、他の男の話を【閃姫】となった娘としなければならないのかと言われてしまって、少し頬を赤らめながらも別の話題を振った。

 

 雫との会話はそれなりに愉しい時間ではあったのだが、カチカッチン鋼とグラビ石の一体化には残念ながら失敗する。

 

「素材が無駄になったか」

 

「へぇ、優斗でも失敗するのね」

 

「そりゃ、こういうのはトライ&エラーの繰り返しだからな」

 

 抑々にして理論の構築に失敗していたら上手くいく筈も無いのだから。

 

 雫が起きてからそこそこの時間が経過している訳だが、未だに起きて来ない香織達を心配をしつつも腹を満たしたり性欲を満たしたり眠ったり、三大欲求を満たしながら待っていたら漸くといった感じに全員が順次、覚醒をして琥珀の棺から出て来る事に成功をしていた。

 

 尚、丁度悪いタイミングにて雫がユートのJr.をペロペロしていた時にユエが覚醒してしまって、凄まじいまでの羞恥心で雫が真っ赤になってしまった上に、『何故か』と云うのは野暮でしかないのだろうけどJr.の奪い合いになったのだと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「さて、全員が起きたから行こうか」

 

 魔物も居ないから取り敢えず何発かずつヤっちゃった一堂は態々、風呂に入って着替えまでして身綺麗になってから再び出発――

 

「普通にスルーしないで! 光輝がまだ起きていないでしょうが!?」

 

 然し未だに起きない天之河光輝を置いていくのは雫により却下された。

 

「チッ、どうせ視たら不愉快な夢に浸っているんだろうから置いてけば良いだろうに」

 

「不愉快な……まぁ、光輝の事だから間違ってはいないんでしょうけどね」

 

 少なくともユートにとっては不愉快極まりない夢に違いない。

 

「恐らく御都合主義全開で僕を瞬殺、頼んでもないのに香織達を開放したとか喜んでるんだろう。何ならユエとシアとティオに、レミアやミュウやミレディもかな?」

 

「ブルブル、さぶいぼが出来ますぅ」

 

 天之河光輝に開放されて喜んでる自分を想像したのか、余りに寒い考えに震えながら悍ましそうな表情となるシア。

 

 他も……鈴まで似た表情だった。

 

「それに浸っているから目覚めない。やっぱり置いて行かないか?」

 

「そうしたい気持ちは解るけどね」

 

 正直に言えば雫も天之河光輝を見捨てたくなっているが、それでも幼馴染みとしての情が捨て切れていなかった。

 

「判った。後……そうだな、二時間くらい待っても起きないなら試練に失敗しようと叩き起こすって事にしようか」

 

「そうね」

 

 取り敢えず二時間は待つ事に。

 

「そ、そういえば!」

 

「間が保たないからって無理に会話をしなくても良いんだぞ?」

 

「聴いて!」

 

「判ったよ」

 

 別に話したくない訳ではない。

 

 尚、香織やユエ達は普通に聞き耳状態だったから会話には入って来なかった。

 

「エヒトって何で私達を召喚したのかしら?」

 

「雫、ボケたか?」

 

「何でよ!」

 

「エヒトが愉悦の為に起こした戦争、魔人族側が

神代魔法――変成魔法を氷雪洞窟で手に入れたから戦力バランスが崩れた。だから勇者(笑)召喚をして戦力調整をしたんじゃないか」

 

「判ってるわよ! そうじゃなくって、異世界の人間を召喚するよりこの世界の他の大陸から喚んだり出来なかったの? って事よ!」

 

 つまる話、雫が言いたいのは異世界召喚よりも同一世界からの召喚の方が手間は無かったのでは? という事らしい。

 

「それは事実だね。ウルトラマンだってテレポーテーションで同一世界間での移動はカラータイマーを鳴らすくらい大変だけど、マルチバース的な別宇宙には行く事すら出来なかった」

 

 ウルトラマンゼロが容易くやっている印象もあるにはあるが、それはウルトラマンノアの力を得ているから出来る様になったに過ぎない。

 

 ウルトラマンダイナは最終回のアレでやり方を体得したのだろう。

 

「地球の初期型みたいなパンゲア大陸とかじゃないんだから別の大陸もある筈。だけど恐らく其処に人間は存在していないだろうね」

 

「……は?」

 

 間の抜けた声を出す雫。

 

「ど、どういう事よ?」

 

「簡単だ。先ず、エヒトは別世界からの侵略者。トータスの本来の神は女神ウーア・アルトなのはもう知っているな?」

 

「え、ええ」

 

「女神ウーア・アルトは当時の勇者(真)と共に、侵略者のエヒトと激しく闘いを続けたけど敗北を喫して、自らの魂を勇者が使っていた聖剣に封じて終戦をした。その後の侵略に成功したエヒトは別次元に引き篭ったみたいだが、その前に自分の魂を宿す新たな肉体を造る為の実験をしていたらしいのも判っている」

 

「そうね」

 

 神域なる場所はエヒトルジュエの揺り篭みたいなものであり、真なる神ではない奴は肉体が無ければ魂を維持が出来ないから新しい肉体を造るのは急務だと云えた。

 

 ここら辺はユーキが白夜から聞いていた事を、情報交換した際に知らされたものだから原典によるもの、つまり原作者が意図的に変えない限りは誤りも無い情報である。

 

「その結果として生まれたのが今は亜人族と呼ばれているフェアベルゲン、それにレミアやミュウみたいな保護を受ける海人族だ。どうして他とは違うのか? 魔力を持たないという共通項が有るからだろうね。吸血族と龍人族と魔人族はエヒトルジュエの望みの通りに魔力を持っていたから、亜人族とは別格の扱いになっていたんだろう」

 

「そうね」

 

「だけど造り方は同じ。変成魔法により人間族へと魔物の因子を植え付けて変質させたんだろう。さて、処で話は変わるが……」

 

「――へ?」

 

 ユートが何処ぞの『あかいあくま』がぽんこつ魔術使いに対し、某かを教えるみたいな仕種をしながら行き成り話題を変えるなどと宣うから雫達は首を傾げてしまった。

 

「地球の人口がどのくらいか判るか?」

 

「確か七〇億を越えたらしいわね」

 

「そうだな。七〇億の絶唱だとか叫ぶくらいには知られている事だが、一昔前なら六〇億だったし更に前なら五〇億だった」

 

「そ、そうね……」

 

 尚、地球の総人口が凡そ五〇億人を越えたのは西暦一九八七年頃の事らしく、七〇億人を越えたのは西暦ニ〇一一年頃の事だとか。

 

「西暦一九五〇年頃は三〇億人にも達していなかったのが、僅かに半世紀か其処らで約四〇億人も地球人口は増えたって訳だが何故だろうな?」

 

「そりゃあ、平均寿命が伸びたのもそうだろうし戦争も世界大戦規模には起きてないわ。何よりも医療技術だって日進月歩で飛躍的に進歩をしているんだもの」

 

「その通りだね。実際、ハルケギニアでは治せなかったカトレアも地球の病院に連れて行ったら、割と普通に完治させる事が出来たしな」

 

「そ、そうなんだ」

 

 目をぱちくりさせる雫、香織と鈴も似た様な感じになっている。

 

「それで? 行き成り人口の話しとか意味がわからないわよ」

 

「うん」

 

「判んないよ」

 

 雫に呼応して香織と鈴も言う。

 

 因みに地球人口がどうのと言われてもピンとはこないユエとシア、意味は理解しているティオは取り敢えず黙って拝聴する事にしていた。

 

「つまり、地球人口は江戸時代とか戦国時代にまで遡ると一〇億人にも到達しないかも知れない。飢餓や戦争の所為で一般人も武士も死ぬのに寿命は酷く短かった。四十路でも老齢とされてた時代が有ったくらいだからね。だから四十路を越えて子を成したら子供は『恥掻きっ子』と呼ばれる」

 

「その話は知ってるけど、何で子供の方がそんな風に呼ばれるのかしら?」

 

「さてね? それは兎も角として、地球でさえも過去に遡ると人口が可成り少ない。ならトータスの数万年前ならどうかな?」

 

「それは……今でさえ技術の低さもあって命の軽い世界だから今の半分も居れば?」

 

「現在のトータスと呼ばれる世界、この大陸に於ける人間族の総人口は流石に知らないんだがな、取り敢えず竜人族が少々と吸血族が恐らく一人、亜人族と魔人族も人間族程には居ないんだろうけどそれなりには……かな? それでも昔は竜人族も吸血族も普通に繁殖が出来るだけの人数が居た。それだけの人間族が実験や造り上げるのに使われた筈だ。つまり相対的に人間族の人口は減っている訳だよな?」

 

「……あ!」

 

「気付いたな?」

 

「そういう事な訳ね」

 

 雫は溜息を吐きながら座り込む。

 

 ではその改造ベースの人間族は何処から調達をしたのか?

 

「種族毎に大陸から攫ったのかどうかは知らん、だけど間違いなくこの大陸以外から調達をしたと思われる。人間族に関しては始めからこの大陸に住んでいた原住民だろうがね」

 

「何て事を……」

 

 青褪めるのは雫や香織も鈴もそうではあるが、当事者となってる吸血族のユエ、亜人族のシア、竜人族のティオも同じく青褪めていた。

 

「……私達のルーツ」

 

「そんな、ですぅ」

 

「ぬぅ……」

 

 変成魔法と呼ばれる神代魔法は有機物の全てに干渉が可能とされる。

 

「腐っても神を名乗るだけあって生命の創造者でも気取るかよ……エヒトルジュエ!」

 

 所詮は偽神に過ぎないとはいえどやはり超越をした存在であるのに違いなく、変成魔法などという専用魔法を使っているとはいっても大量に生体改造をしてしまえるのだから面倒臭い。

 

(まぁ、変成魔法なぞ僕の【創成】の下位互換に過ぎないんだけど……な)

 

 ユートの【創成】は有機物・無機物に関係無く干渉が可能だし、何なら人間の肉体を丸ごと創る事だって出来てしまうし、伝説の鉱物をポンッと創り出す事も出来る力だから。

 

 その知識さえ有れば想像を創造の力に変換し、あらゆるモノを【創成】が可能。

 

 鉄も鋼も金も銀も銅も何なら青鍛鋼や流白銀や神鍛鋼や神金剛も、通常金属から魔法金属に神秘金属までも【創成】が出来る上に、合金とて知識に照らし合わせて構成が出来た。

 

 汎暗黒物質を変換し量子に粒子に原子に分子に物質へと換えていく。

 

「とはいえ、もう一つあるんだがな」

 

「もう一つ?」

 

「何処ぞのイカれた……まぁ、研究者や科学者ってのは大なり小なりイカれてるんだけどな」

 

 とんでもない暴論を宣う。

 

「世界支配をするには人間の数が多過ぎるから、ならば適切な数にまで減らせば良いってな」

 

「……ウェル博士?」

 

「直に聴いた訳じゃないから細部は知らないが、マリアが傍に居たから聴いていたそうだ」

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ?」

 

「ああ、現在は僕の冥闘士な天貴星グリフォンの

セレナの姉に当たるな」

 

「冥闘士って……どうなってんのよ貴方は」

 

「僕がカンピオーネなのは教えたろ。聖闘士として冥王ハーデスを斃した後に喰らった奴の神氣、カンピオーネに転生してから扱える様になったら

ハーデスの権能も使える様になった。その際に、僕は三巨頭と冥界門の守護者を真っ先に揃えた。天猛星ワイバーンの奏。天雄星ガルーダのアイリ、天貴星グリフォンのセレナ、更に天英星バルロンのカレンだな」

 

 真っ先にとはいってもセレナ・カデンツァヴナ・イヴと天羽 奏は大分後になってからであり、それより前に翠鈴という少女の影人とも云うべきラピスが天刃星パラドキサのラピスに成ったし、他にも【11Eyes】という原典から宝石翁が送ってきた者達や仔馬星座のケレリスという青銅聖闘士が冥闘士に成っていた。

 

「何でも英雄に憧れる自分だから見付けられたとか必勝法だとか、よく意味が解らない事をほざいていたらしいけどね。要するに宗教的にも政治的にも人間があちこちに分散していたら面倒だし、この大陸以外の者は改造するか或いは……」

 

「殲滅した?」

 

「イグザクトリー」

 

 瞑目しながら静かに言うユートに対して全員が暗い表情で俯いた。

 

「ま、今回は都合も良いさ」

 

「どういう事?」

 

「歴史的観点から見てあの土地は我々の物だとか莫迦を言う奴が出ない限りは、野生動物や天然の魔物以外に人っ子一人居ない広大な空地。それならば侵略には当たらないだろうから接収しても構わないだろう? どうせ数万年間も放置していた土地なんだからさ。しかも連中の技術や知識では無事に大陸間移動をする事も出来ない。飛行技術も無ければ大航海する技術も無く、縦しんばそれでも航海に出ても途中で難破するか沈没するか、或いは壊血病で倒れるか、然も無くば糧食や水の不足で仲違いをして共倒れるか。いずれにしてもトータスの人間に碌な結果は訪れないね」

 

 地球でもトータスレベルの頃の航海は命懸け、そういえば何かのライトノベルでも戦国時代では壊血病が横行していたり、脚病(かくびょう)すら難病としていて治せなかったり……寧ろ発病している事からしてというやつだったり、つまりはトータスに他大陸へ航る技術を構築するそれだけでも下手をしたら百年の計となる。

 

 仮に百年後に上手く航れる技術を手にしたとしても、ユートならば一年も有れば要所要所を港町にして要塞化まで可能だろうし、その気になれば量産型クストースにより護りをガチガチに固め、大空を舞う戦艦や母艦で威嚇も殲滅も思いの侭に出来てしまうであろう。

 

 魔法を使おうがどうしようが、トータスの者にはどうしようもないだけの絶対的な力を以て。

 

 神と称される存在とは即ち、超越生命体、高位精神知性体、異星人、超科学の持ち主などだ。

 

 エヒトルジュエは超越生命体に属する訳だが、現在は肉体を喪失した単なる亡霊に過ぎない。

 

 ユートは恐らく誰も居ない大陸を橋頭堡として彼方側から人間を喚び込み、このトータスという世界にフェアベルゲン以上の領国を造り上げて、この大陸以外を全て接収してしまう心算だ。

 

 勿論それは一種の侵略行為に違いはないのであろうが、数万年間も放置していた土地に今更ながら所有権を宣える訳も無いし、基本的に開拓した土地は開拓者のモノとなるべきであろう。

 

 物申した処でどうにもならないが……

 

「さてと雫、そろそろいい加減な時間じゃないのかな? 余り遅くなっても仕方がない訳だしね、僕としては充分に待った心算だけど……」

 

「そうね」

 

 会話で間を保たして天之河光輝が試練を終えるのを待ったが、やはり無理だったのかと失望するのも今更な気がした。

 

 上手く試練をクリアして自信を取り戻したら、ひょっとしたら昔みたいに戻って……も今と大して変わらない気もする。

 

 もう頭が痛くなった雫。

 

 ユートが聖剣マサムネを抜刀して琥珀を斬り、中からは天之河光輝が放り出された。

 

「あ、れ? 香織、雫? ユエ、シア、ティオ、ミュウ、レミア、ミレディ、鈴、恵里は? 俺の女達は何処に……?」

 

 想像はしていたが凄まじく図々しい。

 

(っていうか、コイツは今現在のミュウにまで手を出す気だったのかよ?)

 

 四歳児さえ性の対象に視ていた事に吃驚したのと同時に、レミアとミュウだけはコイツに決して近付けてはいけないと覚る。

 

 抑々レミアは戦力外だし、ミュウも進化無しで闘うのは可成り無理があるのだから。

 

「何を寝惚けた事をほざいてる? さっさと先に進むぞ!」

 

「痛っ! ……え? なっ!?」

 

 ユートに頭を蹴り飛ばされてから漸く我に返る天之河光輝。

 

「ま、待て!」

 

 そして躊躇わず歩き出したユート達に慌てて立ち上がると駆け出した。

 

 正直、遣るべき事も遣らないでヤる夢を視て帰って来れなかった幼馴染みに苛立ちが募る雫。

 

 ユートが雫達を抱いたのは遣るべき事を遣り終えていたから構わないが、これは流石に有り得ないだろうと更なる失望を感じてしまう。

 

 それは香織も鈴も同様らしい。

 

 どうやら全員が琥珀から出ると顕れる仕掛けらしい魔法陣が顕現、強い光が爆ぜて全員の視界を奪うと次のステージへと送った。

 

「樹海の中みたいだけど、どうやら最初みたいな

何処に向かうのかも見当が付かないタイプじゃなくて、真・オルクス大迷宮の密林エリアみたいなものっぽい場所の様だな」

 

「みたいね」

 

「そうだね」

 

「……ん」

 

 真のオルクス大迷宮を知る雫と香織とユエは、ユートの考えに同意をしてきた。

 

「殆んど同じ高さの木に最奥らしき場所に巨樹、彼処に転移魔法陣が有るんだろうな」

 

 取り敢えずは進むだけなら簡単そうではある、だけど間違いなく何かしら仕掛けが有る筈。

 

「ふむ、偽者は居ないか」

 

 二番煎じは無しらしい。

 

 未だに暗い天之河光輝を見遣るとユートはあからさまな溜息を吐く。

 

「おい、天之河」

 

「な、何だ?」

 

「遣る気が無いなら帰れよ!」

 

「や、遣る気なら有る!」

 

「だったらとっとと歩けよな! 大方、さっきの試練を失敗したのをごちゃごちゃ考えているんだろうが、何をどうしたって失敗は失敗なんだから見切りを付けろ!」

 

「わ、判っている!」

 

 ユートからの忠告に苛立ちながら叫んで答えた天之河光輝は、そんな心を誤魔化すかの様にグングンと歩みを強めていた。

 

 足音以外には虫の声の1つも聴こえない静寂に満ちた密林、風すら吹かないから草を踏み抜く音が耳障りなくらいに聴こえている。

 

「何とも嫌な静寂よのう」

 

「確かに、オルクス大迷宮の九〇層で待ち伏せをされた時みたいだよ」

 

「ああ、実際に魔物の気配すら無いからな」

 

 ティオの呟きにカテレアからの待ち伏せを喰らったトラウマか、鈴と天之河光輝は極度のストレスからか緊張感を増していた。

 

「うん? チィッ!」

 

 ユートが何かに気付いたのか天井部を見上げ、すぐに険しい表情となり舌打ちをする。

 

火精障壁(ファイヤーウォール)ッッ!」

 

 火の精霊を瞬時に集めて障壁を図上に展開をすると、何故かポツポツと雨が降り始めて障壁へと触れる度に蒸発をしていく。

 

「な、何なの!?」

 

 余りに突然で雫が驚愕した。

 

「こんな場所に雨が降る筈も無い。降るとしたら何らかのトラップで次の試練だ!」

 

 ユートの科白を聴いた面子は直ぐに異常事態だと気付いたらしく、火精障壁により蒸発をしていく突然の雨を睨むのであったと云う。

 

 

.




 他大陸の話は単なる想像です。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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