ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 漸く最新話を書けました……





第84話:我が手に世界の座標を!

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「ゆう君……今のって?」

 

「僕はBL好きに何にも言わないけど、僕自身がBLに染まる気は絶対に無い!」

 

 巫座戯た事を抜かした天之河光輝に制裁を加えたユートは、香織からの質問には答えず魂からの叫びを上げてしまう。

 

「恐らく感情の反転だな、今の魔法は」

 

「感情の反転?」

 

「天之河が行き成り『愛している!』とか悍ましい事を言って来たが、抑々にして奴は寧ろ僕の事は憎んですらいた筈だからな。憎悪が愛情に反転をしたって処だろうよ」

 

 ユートは前世が男でも今生が女性なら問題も無いと考えるが、今現在が男なのをそんな目で視るのは不可能にも程がある。

 

 義妹のユーキからして前世が男だ。

 

 まぁ、ユーキの場合は精神にちょっとばかりの問題を抱えていたのだが……

 

「取り敢えず天之河は気絶させた。奴が起きる前にGを殲滅させるぞ!」

 

『『『了解!』』』

 

 念の為にと睡眠呪文(ラリホーマ)まで掛けておくのは悍ましいからだ。

 

 ユーキみたいに前世が男ならまだ良かったが、今現在が男であるからには興味の対象外。

 

 せめてユートのライダーなアストルフォとか、男のモノ付きでも九割九分が女性なら問題も無いのだが、天之河光輝は肉体的にも性格的も受け付けないから只々受け付けなかった。

 

「来るぞ!」

 

 歪つで醜悪なヒトのパロディでしかない人型をしたGが、通常である蟲型のGを引き連れて此方の攻撃をするべく動き出す。

 

 【閃姫】達は既に変身をしていた香織を除き、それぞれのツールで仮面ライダーに変身する。

 

 勿論、ユートも。

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE DECADE!》

 

 マゼンタカラーのバックルを持つネオディケイドライバーで変身をしたユートは、パンパンと手を叩き合わせてから腰に佩かれたライドブッカーをガンモードで抜き放つ。

 

《ATTACK RIDE BLAST!》

 

 分身する銃口から放たれるエネルギー弾がGを次から次へと駆逐していき、【閃姫】達も各々の仮面ライダーの力でGを討ち果たしていた。

 

 二百とか三百なんて目じゃないぜ! と云わんばかりに襲い来るG共と、それを指揮しているであろう人型のG。

 

 指揮官をしていても戦闘力が低い訳では決して無く、寧ろ個体としての力は普通に手下の蟲型のGよりも強いらしい。

 

 とはいえ、戦闘兵でしかない蟲型のGは殺るだけなら一撃必殺というやつだ。

 

 まぁ、アーマー越しにでも触りたくないからか剣士たる雫でさえも斬撃を飛ばす、中距離からの攻撃を主にしているのだけど。

 

 ユートもライドブッカーをガンモードにしている辺り御察し、出来れば触れたくないからソードモードではないのだ。

 

「……ん、死んで……五天龍!」

 

 ユエの超必殺が炸裂。

 

「態々、五天龍をやる程に嫌だったか。気持ちは解らないでも無いけどな」

 

 それは重力魔法を他の最上位魔法と融合させた五色の龍を象る魔法、雷と蒼炎と嵐と氷雪と石化の噴煙を纏う五体の龍が出現をしてユエを中心に大きく旋回、それぞれが特徴的な咆哮を轟かせて突進してきた数万匹のゴキブリを一瞬にして滅ぼしてしまうという、正しく魔法の名手として現代最高の魔法使い――【魔女王のユエ】。

 

「グラビティ・ショックウェェェェェェェェェェェェェェェェェェブッ! 乱射!」

 

 シアの場合はザビーの力を補助にアイゼンⅡを使う事が多く、今回の場合はグラビティ・ショックウェーブの乱射をして数を消し飛ばす。

 

 その姿は余りにも恐ろしい草食獣の亜人族とは思えぬ【破砕獣のシア】。

 

《TORNADO!》

 

「ブッ飛べぇぇぇぇっ!」

 

 香織は仮面ライダーリューンで竜巻の属性カードを発動、リューンアローを放つとエネルギーで出来た箭が竜巻と化して放たれた。

 

 視る者を魅了する美しさを持ちながら容赦無い攻撃性は【堕天妃の香織】の名が相応しい。

 

「はっ! せやぁぁぁっ!」

 

 仮面ライダーサソードとなり毒の剣閃を幾重にも飛ばす雫、仮面で表情は判らないがその実は既に涙目で余程苦手なのだろう。

 

「ライダースラッシュ!」

 

《RIDER SLASH!》

 

 尻尾を押し込み必殺技の威力で更なる広範囲に放つ雫は正に【剣閃媛の雫】か。

 

「来るでないわ!」

 

《ADVENT!》

 

『GURAAAAAAAA!』

 

 ティオはブラックドラグバイザーにアドベントカード――召喚のカードをベントする。

 

 けたたましい鳴き声を上げて空中から顕れたのは契約モンスターのドラグブラッカー、姿自体はドラグレッダーの色違いみたいなものでその異名は【暗黒龍】。

 

 ドラグブラッカーが蟲型のGへと黒いブレスを吐き出すと、その猛烈にして灼熱の業火によって目前に迫るGが焼き尽くされていく。

 

 龍騎系仮面ライダーはバリアジャケットに近いブランク体のアーマーを構築、契約モンスターの力を注ぎ込む事によって完成をする。

 

 武装の類いは契約をしているモンスターが持っており、アドベントカードをベントする事によって召喚が可能となっていた。

 

 勿論、先程ティオが使った召喚のカードを使えば契約モンスター自体を召喚が出来る。

 

 元々は原典で仮面ライダー龍騎の変身者である城戸真司のミラーシャドーが変身するライダー、だからユートは仮面ライダーリュウガのデッキを自身の影とも云える優雅に渡していた。

 

 ティオは竜化という固有魔法を一族で持っている竜人族の末裔、その姿とはドラグブラッカーが蛇みたいな体躯をした東洋龍型なのに対して彼女は西洋竜の姿をした黒竜。

 

 ティオをドラグブラッカーを契約モンスターとしている仮面ライダーリュウガにした理由だ。

 

 故に【黒竜姫】の異名が……

 

 因みに、この異名はハルツィナ樹海から大迷宮に入る前夜にハウリアの一族から頂戴したモノ、鈴みたいな新参には付いてないけど初めから居た香織と雫とユエとシア、そしてティオにはばっちり二つ名というか異名を名付けられていた。

 

 ユートもハウリアがいつの間にか厨二病を患っていたのに吃驚したものである。

 

 そして異名を伝えられた仲間達は四つん這いになって崩れ落ちたそうな。

 

 可哀想に……

 

 尚、ユートはアシュリアーナ真皇国を治めている【真皇】という異名を自らが名乗ったので付けられてはいないし、抑々にして大概が二つ名とか異名とかを名乗るから正直に言うと慣れている。

 

 仮面ライダータイガに変身をした鈴はちょっと困り気味、何故なら結界師の鈴が最も適性の高い魔法とは『聖絶』などの文字通り結界系魔法。

 

 Gを防ぐには良いが攻撃力には欠ける。

 

 火力の低さを補えるのが仮面ライダーだけど、タイガは近接攻撃が基本となっていた。

 

 龍騎やリュウガならストライクベントで中距離攻撃も出来るし、仮面ライダーゾルダは中遠距離攻撃の方が専門ときている。

 

 仮面ライダーナイトでもモンスターを召喚したら離れた位置から、攻撃力は無いに等しいのだけど叶うであろう。

 

 だから今現在の鈴がやっているのは聖絶による陣地の防衛で、仮面ライダータイガは見るからに重装甲だから防御力も高いのかも知れないけど、アックス型のデストバイザーやストライクベントのデストクローでGに近寄りたくは無い。

 

 人型にユートが攻撃をする。

 

《FINAL ATTACK RIDE……DE DE DE DECADE!》

 

 ライドブッカーのガンモードで必殺技をぶっ放すディメンジョンシュート、仮面ライダーディエンドの必殺技と同じ名前ではあるけど実際に当の門矢 士な仮面ライダーディケイドも何処かで使った事があるから問題も有るまい。

 

 確りと命中はしたけど蟲型のGが寄って集って防御をしたからか、大したダメージとはいかなかったらしく普通に人型のGは健在だ。

 

「チッ!」

 

 思わず舌打ちをする。

 

 更に寄って集って融合したら傷も修復されて、必殺技を受ける前にまで戻ってしまった。

 

「うわぁ、キリがありませんよ」

 

 シアがうんざりとした口調で言う。

 

「ふと思ったんだけど」

 

「何だ? 雫!」

 

「さっきのが愛憎を反転させる魔法という事は、効いていたら私は貴方を憎んでいたのよね?」

 

「雫が僕を愛してるなら……な」

 

「う、うん。だけどよ? という事はあのGについてはどうなるのかしら?」

 

「……きっと愛らしく映るんじゃないか?」

 

 少し考えて答えたユートの科白に雫のみならず全員がゾッとした。

 

 恐らくだが愛憎の反転は完全に一対一の割合となるだろう、つまり一〇〇の好意は一〇〇の憎悪へと完全に反転が成される。

 

 天之河光輝は一〇〇〇〇の憎悪を反転させられてああなったのであろう。

 

 本当に悍ましいとユートは思った。

 

「……くっ、最大限の五天龍を使っても中々上手くはいかない!」

 

 仮面ライダーサガなユエが愚痴る。

 

 五天龍は五属性の最上級魔法に重力魔法を合わせた合体魔法の類い、その威力とくれば()()()()ユエが扱える中では正しく最大限なのだ。

 

〔おい、優斗!〕

 

「優雅兄?」

 

〔俺を出しな〕

 

「と、言うと?」

 

〔ああいう手合いには仮面ライダーより相応しいのが居るだろ〕

 

「……優雅兄が態々言うって事はウルトラマン? まぁ、確かにその方が良さそうだね」

 

 ユートは頷くとディケイドへの変身を解除して聖句を唱え始めた。

 

 緒方優雅を自分の内から分離して顕現をさせる為の権能、それは再誕世界で殺して神氣を喰らった侭に捨て置いた両面宿儺之神の力である。

 

 飛騨の大鬼神とされるその神は朝廷には服さぬまつろわぬモノ、それの多くは地方豪族であったのではないかとされていた。

 

 そして両面宿儺之神は名前の通りに二つの顔を持ち、四本の腕と四本の脚を持つ土蜘蛛みたいな妖物と見られる存在ではあるのだが、この姿からユートは同じ顔をしている一卵性の双子だったのではないか? と考えている。

 

 二面四臂のまるでインド神話の神々みたいな姿は双子の揶揄だろうと。

 

 それが故にユートのこの権能は双子の兄に仮初めの肉体を与えるものとなっていた。

 

「判ってるだろうけど魔力で発動してるからね、制限時間は一〇分くらいだと思って欲しい」

 

「応よ!」

 

 全員が集中して見つめる中で、ユートと優雅はそれぞれがスパークレンスとエボルトラスターを握り締めている。

 

「希望の光よ我が許に集え、ティガァァッ!」

 

「絆……ネクサスッ!」

 

 光が溢れ出してユートをウルトラマンティガ、優雅をウルトラマンネクサスに変えていく。

 

 ぐんぐんアップな巨大化はしないが攻撃力確保を目的に三m程度には成った。

 

『征くぞ、優斗!』

 

『了解!』

 

 ウルトラマンティガとウルトラマンネクサス、この二体のウルトラマンは変身者が多数だという共通点を持つ。

 

『デヤァァッ!』

 

『ハァァッ!』

 

 ウルトラマンティガの変身者はマドカダイゴであるが、例えば息子のマドカツバサだったり或いはツバサが過去に跳ばされて出会ったアムイだったり、若しくはウルトラマンエックスの世界でのティガだったりと状況から増える。

 

 ウルトラマンネクサスは不完全なザ・ネクストの時の元自衛隊員な真木舜一を皮切りに姫矢 准、千樹 憐、西条 凪、孤門一輝とデュナミストが変わってきた。

 

 共通点は複数の変身者。

 

 ウルトラマンゼロも複数の変身者が存在してはいるが、ゼロの意識が強過ぎるからコンセプト的にちょっと向いていなかった。

 

 それは兎も角としてティガとネクサスは各々がスカイタイプとジュネッスレッドにチェンジし、光線の刃を素早く生成しては投げ付けて蟲型のGを殲滅していく。

 

 スカイタイプは迅さを旨とする。

 

 次から次へと消え逝く蟲型のGに【閃姫】達は正しく万歳三唱であったと云う。

 

『ハッ! ハァァッ!』

 

「あ、ティガがマルチタイプに?」

 

 腕を額の辺りでクロスさせクリスタルランプが光輝くと、ウルトラマンティガの色が銀色と紫色だったのが赤が混じるマルチタイプに変化。

 

『優雅兄!』

 

『応さ!』

 

 ティガは腰に腕を据えて胸元から伸ばすと横に腕を広げてエネルギーチャージ。

 

 一方のネクサスは左腕を下に伸ばして更に右腕を伸ばし、腰の辺りで斜めにクロスさせると徐々に腕を上げていき、最終的に斜め上に腕を広げるエネルギーチャージを行う。

 

『デヤァァッ!』

 

『シュワッ!』

 

 そして二人は左腕を下に右腕を上にL字に組んで必殺光線を放った。

 

『ゼペリオン光線!』

 

『オーバーレイ……シュトローム!』

 

 放たれた光線が蟲型のGを焼き滅ぼしていくがそれでも斃し切れない。

 

『ならば!』

 

『超闘士ウルトラマンに倣う!』

 

 二人はエネルギーを拳に収束。

 

『ゼペリオン……』

 

『オーバーレイ・シュトローム……』

 

 掌を突き出して収束させたエネルギーを瞬時に解放する。

 

『『W超光波ぁぁぁぁぁっ!』』

 

 リアル頭身となれば星の一個や二個は破壊するとも云われる業に昇華された。

 

「な、何あれ?」

 

 鈴の目が点になっている辺り彼女には識らない技だったらしい。

 

「私、識ってるよ。確か『ウルトラマン超闘士激伝』って少し古い漫画で超闘士ウルトラマンが使っていたのがスペシウム超光波。ゼペリオン光線だからゼペリオン超光波なんだよ。だって超闘士ウルトラマンタロウが使ったらストリウム超光波だったしね」

 

 オタクな知識をハジメと話を合わせたいが故に身に付けた香織に死角は無かった。

 

「あっという間に殲滅されたですぅ!」

 

 シアがウサミミをピコピコ動かして万歳しながら跳び上がる。

 

『思い……出した!』

 

『いや、何処のエンシェントドラゴンだよ?』

 

 W超光波で蟲型のGを殲滅した時に刺激を促された記憶があった。

 

『この蟲型のGとヒト型のGの姿はアレだよな、破滅魔虫ドビシ……だったかな?』

 

『そういう事だ』

 

 破滅魔虫ドビシ――【ウルトラマンガイア】に於ける最終三部作にて登場した根源的破滅招来体の寄越した虫みたいな怪獣。

 

 まぁ、根源的破滅招来体の本体みたいなのは出て来なかったし、その名前も結局は地球側で付けたというだけでしかないが……

 

 破滅魔虫ドビシはその姿自体は単なる虫っぽい怪獣だけど、寄り集まると巨大な怪獣の姿となってウルトラマンガイアとウルトラマンアグルへと襲い掛かって来た。

 

 つまりあの蟲型のGと似た感じな敵だった為、優雅は其処からウルトラマンの力を使う提案をして来たのであろう。

 

 使ったのはガイアとアグルではなくてティガとネクサスだけど、その力の使い方さえ誤らなければ別に問題も無かった。

 

『ま、破滅魔虫ドビシはそれこそ地球を覆い尽くす勢いできっと何千億の数が出たんだろうがよ。下手すりゃ何千兆もの数が……なぁ』

 

『数十万匹なんて、それに比べればまだまだ少ない方なのかね』

 

 実はどの程度のドビシが出たのかユートは識らなかったりする。

 

 そして動き出すヒト型のG。

 

『お前はもう終わりだぜ!』

 

 それは先のオーバーレイ・シュトロームとは異なる前動作、何処か抜刀を思わせるエネルギーチャージの後に腕を十字に組んだ。

 

『クロスレイ・シュトローム!』

 

 それはアンファンスでの必殺技ではあるけど、アンファンスの技はジュネッスでも使える。

 

 そしてウルトラマンの技は元から凄まじい為、クロスレイ・シュトロームでもまともに受けてしまえば、ヒト型のGが如何に防御力を高めていたにしても分子分解は免れなかったらしい。

 

 原典の【ウルトラマンネクサス】では必殺技足り得ず、牽制くらいにしか使えない事も屡々あった技ではあるけど。

 

『本来なら数十にも及ぶヒト型が現れる予定だったんだろうが、此方の強さが想定外で出す余裕も無かったみたいだな。んじゃ、戻るぜ』

 

 目的は達せられたからか優雅のネクサスは光の粒子を放ちながら消えていき、ユートもティガの変身を解除して雫やユエ達の方を振り向いた。

 

「進もうか」

 

「そうね、光輝を回収してからだけど」

 

「チッ」

 

「舌打ちする程!?」

 

 あの悍まし過ぎる彼奴の科白と表情は暗殺でもしてやりたくなる。

 

 正直、置いて行っても罪にはならないんじゃないかと割かし本気で思ってしまった程に。

 

「……ユート」

 

「どうした、ユエ?」

 

「……貴方のお陰で新しい魔法の目処が付いたから有り難う」

 

「うん、そうか? どういたしまして」

 

 ユエには悩み事があった。

 

 乱戦になった場合は自分の魔法は扱いが難しくなってきてしまい、下手にブッ放せば仲間を殺してしまいかねないからだ。

 

 どうにかしたかったのだけど現在の持ち魔法や知識では如何ともし難い。

 

 其処に来てユートの魔法? 焼きたいモノだけを焼く、破壊したいモノだけを選んで破壊をするあの力である。

 

「……ユート、私を神山のバーン大迷宮に連れて行って欲しい」

 

「魂魄魔法が要るのか?」

 

「……想定した魔法――『神罰之焔』ら重力魔法と炎属性最上級魔法の『蒼天』を一〇発分圧縮して焼き滅ぼすんだけど、魂魄魔法で焼くべき相手を選べるんじゃないかと思った」

 

「成程、確かに魂魄魔法たる『選定』を混ぜたらそれが出来るだろうね」

 

 ユートのサイフラッシュとかは魂魄魔法なんて使ってはいないが、ユエの考えの通りの魔法ならば確かに存在している。

 

 原典ではこのハルツィナ樹海の時点で恵里による裏切り、愛子先生による神山の爆破事故などが起きて想定とは違う形で神山のバーン大迷宮に有る『魂魄魔法』を手に入れており、本来であるならばこの時点で既にユエは『神罰之焔』を完成している筈……だった。

 

 ユートが入り込んだ弊害であろう。

 

「魂魄魔法が必要なら僕が与えられる」

 

 ユートが一枚のカードを取り出した。

 

「……それは、インストールカード?」

 

「そう。これは()()使()()()あらゆる技能や魔法をカードに封入し、他人がインストールをする事で扱う事が出来る様にする魔導具だ。広義で云えば【解放者】が大迷宮に設置をした神代魔法修得の魔法陣と似た様なモノだろう」

 

「……良いの?」

 

「【閃姫】なら構うまい」

 

 無関係な人間……況んや、天之河光輝みたいなのには絶対に使わせないであろうが身内の中で最上位と云える【閃姫】、彼女らに使わせない理由なんてこの世の何処にも有りはしない。

 

「……ん、ユート大好き。愛してる」

 

 閨で紡がれる淫靡な『愛してる』も股間が滾るから嬉しいが、こうして普通に感謝の気持ちと共に言われるのも悪くはない。

 

「ちょ! ユエさんと何で行き成りラブシーンをしちやってる訳?」

 

「何、ちょっとな」

 

 取り敢えずインストールカードに関しては後から渡すという事で落ち着く。

 

(まぁ、以前にハジメにも生成魔法を渡していたからな)

 

 生成魔法は自分自身とハジメにとって誂えたかの様な魔法だった。

 

 想像力を創造力に換えるタイプの力なんてのは割と鉄板だし、ユートの【創成】は汎暗黒物質を自在に組み換えて粒子から原子へ、原子から分子へと創り出す可成り高い力。

 

 放浪期に疑似転生で出逢ったレンの創造魔法も大概ではあったが……

 

 何しろ『おにぎりが食べたい』と望めばポンと出てくる不可思議現象、ユート自身もこれを見て今まで【錬成】で無機物しか扱えないと思い込んでいたが、実は有機物をも扱えるのではないかと思い至った契機にもなった。

 

 レンとのアレやコレやは良い想い出だ。

 

「お?」

 

 どうやら始まったらしく天井付近に有る大樹の一部が輝きを放ち、気持ち悪い音を響かせながら大きな枝が生えてきた。

 

 枝はユート達の居る広場にまで伸びてくると、まるで波が打つかの如く変化をして階段に。

 

「緒方……」

 

「何だ? 役立たず」

 

「ぐっ! だが試練は成功した」

 

「は? 莫迦かお前は」

 

「な、なにぃ!?」

 

 御気楽極楽な言葉には虫酸が走る。

 

「試練の悉くを失敗、最後の試練も莫迦みたいに引っ掛かって気絶していたお前が試練に成功したとか、本気でそんな事を思っているんなら御都合解釈が過ぎるというもんだ」

 

「失敗? 俺が……? テストでは九五点を下回った事が無い俺が失敗……した?」

 

 失敗が余程ショックだったのか学校のテストと同列に考えている様だ。

 

「この大迷宮のコンセプトは絆、なら絆の何たるかを理解してないお前がクリア出来るものかよ」

 

「ふ、巫座戯るな! 俺が絆を理解してない? そんな訳が無いだろうが!」

 

「なら周りを見てみるんだな」

 

「何だと!?」

 

 そして周囲を見回せば、ユエやシアやティオのトータス組は疎か雫や香織や鈴までも微妙な顔で天之河光輝を視ていた。

 

「し、雫? 香織……鈴まで……」

 

 これが天之河光輝の軌跡の成れの果て……結末というやつであったと云う。

 

「せっ……」

 

「お前が御得意の御都合解釈の完全体――『洗脳』と来るか? 本当に成長しないんだな天之河は」

 

「ぐっ!?」

 

 悔しそうな、そして憎々しいという表情がありありと浮かぶ天之河を見て逆に安堵する。

 

(今更、天之河に好かれたく無いしな)

 

 ユートは世間でいつの間にか云われているみたいな『好きの反対は嫌いではなく無関心』とか、()()()()を考えたりは一度足りとて無かったから今回の天之河の動きは理解もしていた。

 

 

 天之河の『愛してる』ムーブを視れば解るであろうが、結局は『愛情』の対義語は『憎悪』だという事なのだろう。

 

 若しも世間一般に今現在で云われている通りであるなら、ユートを憎んでいる天之河は無関心にならなければ可笑しいのだから。

 

 表裏一体のコインに例えれば表を『愛情』に、裏を『憎悪』に置き換えた場合の『無関心』とは中央――どちらでもなく、そしてそのどちらにも成れるという位置に存在している。

 

 表面を削れば中央はいずれ表に、裏面を削ればいずれは裏に成るのだから。

 

(本当に悍ましい感覚だったな)

 

 前世が男だったユーキやレンといった転生者、一部に男の象徴を持った大喬や鮎川優奈、更には後天的にそうなった元男の娘のアストルフォ。

 

 彼女? らを受け容れるのは簡単だったのに、天之河光輝が相手では出来そうにも無い。

 

 因みにアストルフォとは【カンピオーネ!】の世界で『神殺し』に転生し、【Fate/ZERO】時代に獲た聖杯の力が権能化したモノで七騎の英霊を召喚が可能となり、ちょっと試しにと召喚をして引き当てた最初のサーヴァントで、本来は男の娘と呼べる容姿で紛う事無く性別は本人の認識も込みで『男』だった筈なのに、象徴はポークビッツと化して肉体的には九〇%が女体化されていた。

 

 小さいながらも脹らみを持つ胸、筋肉が見えなくなり何処か全体的に丸みを帯びた肢体、小さくなって玉袋も喪われた男の象徴、ユートは大喬や鮎川優奈の裸をよく見知る身として完全な両性具有と成ったのだと理解をする。

 

 当人は最初こそ狼狽えたが、理性が蒸発している故にか割とすぐにに楽観的な捉え方をした。

 

 更に因みにだが、七騎が限界だった英霊の枠は平行世界での第五次聖杯戦争で聖杯を獲た事で、現在は最大で一四騎を喚べる様になっているのと第四次聖杯戦争から生き残ったセイバーも含めて保持可能数は一五騎だったりする。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「あれが到達点という訳か」

 

 憔悴し切った天之河光輝なんぞは放って置いてユートはゴールに目を遣る。

 

 

 枝の通路を登り切ると洞が出来ており、躊躇もしないで進むと光が溢れて転移陣が起動した。

 

 眩いばかりの光が収まって目を開いてみれば、広がっていたのは庭園と呼ぶに相応しい。

 

 まるで空中庭園で空が相当近く感じられるし、空気が可成り澄んでいてチョロチョロと流れている幾つもの水路、あちこちから伸びている比較的小さな樹々に小さな白亜の建物がある。

 

 その一番奥には円形の水路で囲まれた小島と、中央に一際大きな樹が聳え立ち、その樹の枝が絡みついている石版が存在していた。

 

 物怖じをしないティオが歩いて庭園の淵に行き眼下を覗き込む。

 

「ふむ、主殿……どうやら此処は大樹の天辺付近みたいじゃぞ?」

 

 そんな言葉に他の【閃姫】や天之河光輝までも庭園の端から下を見てみると、その眼下には広大な雲海と間違える程に濃霧の海が広がっていた。

 

「成程、大樹がでかいでかいとは思ったんだけど其処までとは……な。ひょっとしたら隠蔽の魔法でも掛けているのかも知れないな」

 

「……ん。闇系統にそういう魔法が在る」

 

「或いは精神に働き掛ける魂魄魔法、空間をずらして見えない様に細工した空間魔法の可能性も」

 

 ユエが闇系統の魔法にそういう認識阻害魔法が有ったのを思い出し、ユートは魂魄魔法によって魂魄に干渉し意識をさせないようにするか、若しくは空間魔法によるのかなどと考えた。

 

「やっぱり、此処がゴールで正しいみたいだね。水路が魔法陣を形成している」

 

 水路で囲まれる円状の小島に可愛いアーチを渡って降り立った途端、石版が光を放って水路には若草色の魔力が流れ込み蛍の如く燐光がゆらゆらと立ち昇る。

 

 その後は最早慣れた記憶を精査される感覚と、その直後に知識を無理矢理に刻み込まれる感覚。

 

 

「昇華魔法……」

 

 ユートが呟くと(おもむ)ろに目の前の石版へと絡み付いた樹がうねり始める。

 

「オスカーの時みたいなもんか?」

 

 燐光に照らされた樹が気色悪い動きをしながら形を変えていき、その幹のド真ん中に人の顔を作りググッとせり出てくると、肩から上だけの女性と判る容姿が出来上がった。

 

 まるで美しい木像の様な女性の声が響く。

 

『取り敢えずおめでとうと言わせて貰いますわ。よくぞ数々の大迷宮とこの私、リューティリス・ハルツィナの用意した試練を乗り越えましたわ。そんな貴方達に最大限の敬意を表し、酷く辛いだろう試練を仕掛けた事を深く御詫び致します』

 

「樹を媒体にした記録、オスカー・オルクスの様な映像の代わりか」

 

 予めミレディからの情報でハルツィナ共和国の女王だと聞かされていたが、正しく気品と威厳があるのだと感じる女性は樹の幹にて出来ているからかはっきりと判らないけど、長いストレートの髪を中分けにした可成りの美女に見えていた。

 

『ですがこれもまた必要な事だと他の大迷宮を乗り越えて来た貴方達ならば神々と我々との関係、過去の悲劇、そして今起きている何か……全て把握している筈ですわね? それ故に揺るがぬ絆と、揺らぎ得る心……というものを知って欲しかったのです。きっと此処にまで辿り着いた貴方達なら、心の強さというもの、その逆に弱さというものも理解したと思いますわ。それがこの先の未来で、貴方達の力になる事を切に願います』

 

「女王っぽい、ドMとは思えんくらいに」

 

 空気を読まないユートの科白を聴いてしまった全員がズッコケた。

 

 それでも話しは続く。

 

『貴方達がどんな目的の為に私の持つ神代魔法―― 【昇華魔法】を得ようとしたのかは判りません。どの様に使おうともそれは獲た貴方達の自由でしょう。ですがどうか力に溺れることだけは無く、そうなりそうな時は絆の標に縋りなさい』

 

 ユートは真面目に聴いていた。

 

 多分だが暫くの話をされた後に名を訊かれる、それこそユートにはいつもの通りに……だ。

 

『私の与えた神代の魔法【昇華】は、全てのモノの“力”を最低でも一段は進化させますわ。貴方達に与えた知識の通りに。けれどこの魔法の真価とはもっと別の処に在ります』

 

 実際にはミレディから聴いているからこの事は周知されている。

 

『昇華魔法というのは、文字通りに全ての“力”を昇華させます。それは神代魔法も例外ではなく、生成魔法、重力魔法、魂魄魔法、変成魔法、空間魔法、再生魔法……これらは理の根幹に作用をする強大なる力ですがその全てが一段の進化をして、更に組み合わさる事で神代魔法を超える魔法に至りますわ。即ちそれは神の御業とも言うべき魔法――『概念魔法』に』

 

 そしてミレディから聴いて知っている、彼女こそユートがずっと欲していた“力”を預かる守人の役割を果たしていた事を。

 

『概念魔法――その侭の意味です。あらゆる概念をこの世に顕現・作用させる魔法。ですがこの魔法は全ての神代魔法を手に入れたとしても容易くには修得することが出来ません。何故なら概念魔法とは理論では決して無く、極限の意志によって生み出されるモノだからですわ』

 

 概念魔法を魔法陣による知識転写で伝えられない理由、『極限の意志』とか余りにもふわっとした曖昧模糊な説明でしかなかった事からも解る通りで体系化も出来ないから。

 

『私達、解放者のメンバーを以てしても七人掛りで何十年と掛けて、漸く三つの概念魔法を生み出す事しか出来なかったのですわ。尤も、私達にはそれで充分ではあったのだけれど。その内の一つを貴方達に託しましょう』

 

 リューティリス・ハルツィナが言った瞬間に、石版の中央がスライドされてその奥から懐中時計の様な物が出てくる。

 

 ユートが口角を吊り上げつつ何処か喜びの表情を浮かべ手に取った。

 

 魔導具――否、この世界の尺度で言い表すのならアーティファクトだろうが……表には半透明の蓋の中に同じ長さの針が一本中央に固定されており、その裏側にはリューティリス・ハルツィナの紋様が描かれている。

 

 その事からこれは攻略の証も兼ねているのかも知れないが、掌中のアーティファクトをユートはじっと視ていると木像なリューティリスが説明を再開してきた。

 

『その名を【導越の羅針盤】――私達がこれに込めた概念は『望んだ場所を指し示す』ですわ』

 

 いつになく昂るユートの心。

 

「『望んだ場所を指し示す』……か。ふふふ、あははははは……」

 

「ゆ、優斗?」

 

 其処に映る表情は正に狂喜、雫だけではなくて全員がドン引きしたくなる程に打ち奮えている。

 

『きっと何処にでも何にでも、望めばその場所へと導いてくれるでしょう。それが捜し人の所在であれ、隠された物の在処あっても或いは――仮令、別の世界であっても』

 

 リューティリスの語る『別の世界』、それは即ち神――エヒトルジュエのいる『神域』の事ではあろうが、この羅針盤は飽く迄も今居る世界から外れた世界をも指し示す為のアーティファクト。

 

 【解放者】達の目的は神の居る場所を探し出す為に、オスカー・オルクスが概念魔法を生成魔法で付与した素材を用いてこの『導越の羅針盤』を作成したのだろうが、場所を示して導いてくれるというファジーな概念であるからには()()()()()()()()()()()の標となるであろう。

 

 ミレディからこのアーティファクトの話を閨で聴いたユートは、余りの喜びと興奮を鎮める為に彼女を散々に抱いて暫く動けなくなるくらいには抱き潰してしまった程で、翌朝に遅いミレディを心配した香織が見た時にはまるでレ○プでもされたかの如く、色んな染みでドロドロになってしまったミレディが仰向けになり、ハイライトの無い瞳で呆然自失な状態となっている姿であった。

 

 この時ばかりは相手がユートだと知ってはいても悲鳴を上げたものである。

 

『貴方達が全ての神代魔法を手に入れて、其処に確かな意志が在るのならきっと何処にでも行けるでしょう。自由な意志の許、佳き未来を選択出来ますよう、貴方達の進むべき道に幸多からん事を心の底より祈っておりますわ」

 

 伝えるべきは最低限伝えたという事であろう、リューティリスはじっと前を向いて……

 

『時に、貴方の名前を教えて下さいませんか?』

 

 ユートからすればいつものヤツが来た。

 

 故に天之河光輝にだけは聴こえない様に風を操り遮断をしてある。

 

「ゼロワン」

 

『フフ、漸く逢えましたわねゼロワン様』

 

 突如としてまるでハイライトが無く人形の様だったリューティリスの瞳にハイライトが宿って、生き生きとした表情を浮かべたかと思うと木像が全身を形作り始めた。

 

「君は……」

 

『貴方の名前を聴いた時点で単なるメッセンジャーから私、リューティリス・ハルツィナとしての疑似意識を宿した方に切り替わりましたの』

 

「つまり双方向の遣り取りが可能……と?」

 

『ええ。私の本体は最早、肉体を喪ってしまいましたからどうにもなりませんが、オー君さんには無理を言いシステムを構築して頂いたのですわ。とはいえ、ウーア・アルトを触媒にする関係から実はバンちゃんさんにも変成魔法で御手伝いを頂きまして、私はリューティリス・ハルツィナが若し生きていたらこう動き、こう話したであろうという何でしたか? えみゅれーとをする疑似人格と呼ばれる存在なのですわ』

 

 語尾に『はーと』が付くくらいにはとっても良い笑顔で語ったものだったと云う。

 

 

.




 ハルツィナ樹海が終わらなかった……だと?

 本当なら次のエピソードの導入部を最後に入れる予定だったのですが……所謂、引きという。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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