ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 多分、Gみたいな奴が運営に報告でもしているんだろうけど、手間だからって運営は調べもしないで感想を消して回ってんのかね?





第85話:王都襲撃事件

 

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 ユートは目の前に在る木像――リューティリスとの会話を愉しんでいる。

 

 嘗てはオリジナルが女王の座に就いていただけあって、天之河光輝では決して纏えない気品を感じられたのもあるし、本来の性癖が出てないのも評価が高い要因の一つだ。

 

 ミレディから聞いたリューティリス・ハルツィナの性癖――それはぶたれて『ハァハァ』としちゃう真性の超ドM。

 

 実際のリューティリスはそうなのであろうが、少なくともリューティリスの木像に痛覚が無いからか、ドMな本性が出ているとは云えない状態でとても清楚な女性であった。

 

 恐らくミレディ達が見た彼女の第一印象というも清楚で優しげな女王様、だけどまさかのドMでそんな第一印象が脆くも崩れ去ったのだろう。

 

 とはいえ、ドMが出ないリューティリスは話すには理想的な存在である様だ。

 

 本来の世界線ならこの時代のティオが相当するのだが、この世界線での彼女はドM変態化をしていないからリューティリスのみがドMだと云う。

 

「さて、御名残も惜しまれますがそろそろ時間も押して参りましたわね。【導越の羅針盤】は攻略の証でもありますから大事にして下さいませね」

 

「ああ、必要としていたからな。手放す気は更々に無いさ」

 

「ふふ、では最後に此方を」

 

「黒と翠のプログライズキー。黒はオスカー・オルクスで翠がリューティリス・ハルツィナか」

 

「はい。それをどうするかは貴方の自由な意志の許に、どうか御好きになさって下さいませ」

 

「そうするさ」

 

《ZEROーONE DRIVER!》

 

 ユートはゼロワンドライバーを装着して二つのプログライズキー、先ずは目の前の少女の謂わばオリジナルのキーを読み込ませる。

 

《AUTHORIZE!》

 

 電王で云うセタッチで認証。

 

《PROGRIZE! LYTIRIS HARZINA!》

 

 名前が叫ばれるだけで端から見ていても何かが起きた風には見えないが、プログライズキーへと仕込まれているリューティリス・ハルツィナの魂

の半分と、ミレディを除く他の五人の【解放者】の魂の半分を更に五分の一に分けたモノが間違いなく手に入った。

 

 次のプログライズキーを使えば……だ。

 

《AUTHORIZE!》

 

 黒いプログライズキーを認証。

 

《PROGRIZE! OSCAR ORCUS!》

 

 装填してやる事でオスカー・オルクスの魂をも手に入れて、これで【解放者】の魂はヴァンドゥル・シュネー以外が一〇分の九を手に入れた事になるだろう。

 

 残る一〇分の一はシュネー雪原は氷雪洞窟内に在るであろう、ヴァンドゥル・シュネープログライズキーを手にすれば埋まる訳だ。

 

「我がオリジナルを宜しく御願いしますわ」

 

 笑顔で木像だったリューティリスが枝に戻り、辺りは静寂を取り戻すのであった。

 

 因みに、リューティリスとした会話はこの日の事がオリジナルに伝わるらしい。

 

 ユートが踵を返すと笑顔で出迎えてくれている【閃姫】達と、矢張りというか憎々しげに睨み付けて来ている天之河光輝が対照的だ。

 

「で、天之河は神代魔法を獲たのか?」

 

「ぐっ!」

 

 思った通り獲ていないらしく、悔しげな表情となってしまう。

 

「お、緒方は手に入れたんだな……」

 

「当然の如く」

 

 何の気負いも無く……

 

「くっ!」

 

 然も当たり前と云わんばかりなユートの態度が

気に障った様だ。

 

「ゆう君、鈴も神代魔法を手に入れたんだけど……全部を集めないとダメなんだよね?」

 

「ああ。ミレディの言い分やリューティリスとの会話を合わせるとな。神代魔法を七つ全部手に入れて漸く鍵を手にするんだろうな」

 

「そっか……」

 

 チラチラとユートの方を見てくる辺りからして自分も帰れるか不安なのだろう。

 

「早くシュネー雪原の氷雪洞窟で最後の神代魔法を獲て、帰ったら【ウィステリア】でパーティーと洒落込もうか」

 

「ちょ、それは優花の家に迷惑じゃない?」

 

 雫が慌てる。

 

「別に他の客とぶつかる時間帯にじゃないしな、お金を払うから金銭的な問題も無い。死者も居る中でパーティーは不謹慎か?」

 

「そ、それは……」

 

 半分以上はオルクス大迷宮でベヒモスに轢かれ潰されたか、赤熱化された頭に生きながら焼き殺されたかをしたのを考えると不謹慎でしかない。

 

「死者を悼むのか構わないが囚われても余り良くは無いんだがな」

 

 抑々にしてハジメに対して碌でも無い態度を取り続けていた連中、ユートは身内に砂糖菓子に蜜を掛けたくらいに甘いが、身内の敵にはその口に大量のドラゴンズ・ブレスを突っ込んでやっても罪悪感を懐かないくらいに辛口であるが故にか、死んだクラスメイトを悼む気持ちなんて懐き様が無い処か、寧ろ地獄門の番人をするカレン・オルテンシア――天英星バルロンのカレンに命じて全員を無間地獄へと叩き落としていた。

 

 ざまぁ……という不届きで不謹慎な精神で。

 

 因みに、ドラゴンズ・ブレスとはスコヴィル値が二四八万という英国にて開発された唐辛子で、食べると命に危機的な状況を強いるという毒薬にも等しい劇物である。

 

 手に入れても決して食べてはいけない……というより素手で触れてもヤバイ!

 

「鈴と雫と香織はどうだった?」

 

 主語は無いが何を訊きたいのかをすぐに理解した鈴達は口を開く。

 

「鈴は覚えたよ!」

 

「私もね」

 

「うん、私も覚えられた」

 

 地球組の【閃姫】はオッケー。

 

「ユエ、シア、ティオは?」

 

「……ん、大丈夫」

 

「私も同じくですぅ!」

 

「妾もじゃ」

 

 つまり、トータス組も大丈夫。

 

「覚えられなかったのは天之河だけって事になるみたいだな」

 

「ううっ!?」

 

 冷たいジト目にたじろぐ天之河光輝。

 

「あ、魔法陣が顕れました。きっとあれが恒例のショートカットですよ!」

 

 シアがウサミミをピョコピョコとさせながら指差して叫ぶ。

 

「よし、帰ろうか」

 

「ま、待て! 待ってくれ!」

 

「あ?」

 

 天之河光輝に呼び止められて不機嫌極まりない返事をするユートに、ちょっと話すのを躊躇ってしまうがそれでも意を決する。

 

「もう一度挑戦させて欲しいんだ!」

 

「僕らは行くから天之河は勝手にしたら良いだろう? 別にお前の行動を制肘したりしない」

 

「一人で攻略しろと言うのか!」

 

「僕らはクリアしたんだからもう用は無いしな。もう一度やりたいのはお前の勝手だが僕らを巻き込むなよ」

 

「くっ!」

 

 天之河としては今一度、大迷宮に挑んで今度こそはクリアをしたいと目論んだのだろうけれど、ユート達がそれに付き合う理由など一切合切無いのだと当然だが拒絶をされた。

 

 何日も掛かる大迷宮攻略、既にクリアをしたからには二周三周と周回する意味は無いのだから。

 

「し、雫!」

 

「嫌よ」

 

 敢えなく撃墜。

 

「か……」

 

「無理だよ」

 

 言わせても貰えない。

 

「鈴!」

 

「気持ち悪い」

 

 鈴は嫌悪感を丸出しで呟いた。

 

「序でに私達は頼らないで下さいね?」

 

 多分だが天之河光輝は言おうとしたのろうか、シアに事前に言われてから口篭ってしまう。

 

 はっきり言って好き勝手に呼び捨てされるのも不快でしかないのに、どうして天之河光輝というNot男は聞いて貰えると思ったのか?

 

「地味にGとの闘いはストレスが半端無かったからな、出来たらどっかの宿屋でゆっくりと癒されたいもんだ」

 

「……なら私達が癒して上げる」

 

「ですぅ!」

 

「じゃのぉ」

 

 トータス組がユートに擦り寄りながらニコニコと歩き始める。

 

「当然、私達もだよ! そうだよね、雫ちゃんに鈴ちゃん!」

 

「そ、そうね」

 

「うんうん!」

 

 香織を筆頭に地球組も後を追う。

 

「クソッ!」

 

 ガッと壁を叩いた天之河光輝は下唇を噛み締めながら歩を進めるのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ショートカットの魔法陣から出た瞬間に鳴動がポケットから……

 

 絶対に繋いだ手を放さない決意の唄が着信音として鳴り響いて、唯一心当たりのあったユートはスマホを取り出して画面を見つめる。

 

 名前は『リリィ』とあった。

 

「もしもし終日(ひねもす)?」

 

 何処ぞの兎さんみたいに出てみると……

 

〔ユートさん! 助けて下さい!〕

 

 ジョーク混じりに話せる内容では決して無いという雰囲気でリリィが叫んだ。

 

「どうした、藪から棒に? スマホは攻略中だったから繋がらなかったのかな? 一応は神様印の神改造品なんだけど……」

 

 何だか天之河光輝が吃驚した顔で『リリィとも……』とか呟いているが無視。

 

 ユートのスマホは実はとある世界の世界神なる神物が神改造し、異世界であっても電波が届くというある意味で非常識な物となっていた。

 

 神殺しなんてユート本人が非常識を看板にして胸から掛けている存在だが、非常に温厚な世界神は自らの過ちで一人の青年が神雷で死に逝くのを防いで貰った恩から、願いを二つだけ叶えようと太っ腹な事を言ってくれたのである。

 

 ユーキと相談したらこの世界の詳細が判って、下手したらユートが助けた青年が救う筈の人物――ヒロイン――の大半が死ぬか、人生を踏み外すだけの負の経験値を背負う事になると聞いた。

 

 其処でユートは一つ目の願いでユートが助けた青年が願う筈だったスマホの改造と、彼が生き返って行く筈だった世界へ向かう権利を貰う。

 

 形だけ視れば『主人公の成り代わりモノ』というジャンルだろうか?

 

 ユートは下手したら死んだか人生を踏み外す様な事になる筈だった少女――約一名は六百歳越えてるけど――らを救い上げて、最終的にはその彼女らを【閃姫】の列へと加える事となる。

 

 また、人造人間的な彼女らも造り主と共に確りと戴いてしまったし、何ならヒロインではなかった女性達も何人か『戴きます』をしてしまって、本来の主人公だった彼よりアグレッシブに喰ったのはユート()()()と云えば()()()話であったと云う。

 

 リリィは悲痛な声音で話し始めた。

 

〔実は今現在、我が国の王都が襲撃を受けているのです!〕

 

「襲撃だと!?」

 

〔はい、しかも敵対をしているのは魔人族は疎か亜人族やヘルシャー帝国でもありません〕

 

 当面の敵である魔人族ではない……ともなると、普通なら亜人族かヘルシャー帝国辺りが下手人となるが、亜人族は既にユートがフェアベルゲンの意志統一を成しているから今は動かない筈だし、ヘルシャー帝国からしても魔国ガーランドは敵性国家だからハイリヒ王国を襲撃するのはマイナスにしかならない筈。

 

 特にハイリヒ王国は神山――聖教教会の御膝元なだけに、王国襲撃は聖教教会への敵対だと云っても過言ではあるまい。

 

「襲撃をした下手人は判っているのか?」

 

〔……〕

 

「どうした、リリィ?」

 

〔恵里なのです〕

 

「はぁ? 誰だって?」

 

〔恵里です。我が国が勇者召喚にて招いた〕

 

「中村? んな莫迦な……」

 

 確かに恵里が仄かな闇を精神に持っていたのは気付いていたが、ハジメとの交際を経て闇は光に紛れる様に覆い隠されていった。

 

 無くなった訳ではないが、意味も無くハジメを困らせたりはしないとユートは思っていただけに意外性が有り過ぎる。

 

 だからこそ首を傾げてしまった。

 

〔事実として恵里が目撃されていますし、何より我が国の騎士が……〕

 

「騎士がどうした?」

 

〔我が国の騎士の半分以上が事前に殺害されて、今や恵里の降霊術で操られていた有り様です!〕

 

「っ!? 降霊術だと?」

 

 確かに降霊術は突き詰めれば魂を縛して操る事を可能とした魔術だろうが、この世界には死後の世界たる冥界などは存在しないから精々が一〇分か其処らで魂は形を喪い消滅する。

 

 神代魔法の魂魄魔法と再生魔法を駆使すれば、失われた生命をも甦らせる事は確かに叶うだろうけど、魂が消滅をする前に魂魄魔法で確保しないと甦生は出来ない訳だ。

 

 尤も、ユートがこの世界の地球に顕れた時点でユートの支配下となった冥界が接続されていて、死者は魂を保護されて冥界へと自動的に運ばれる手筈となっている。

 

 だからといって恵里が降霊術で冥界から死者の魂を引っ張り出せるかと問われると、それは流石に難しいというか可成りの無茶だと云えた。

 

 何故なら死者の魂はサボり魔とはいえカレン・オルテンシアが一律管理をしていて、彼女の管理を抜いて冥界の魂へと勝手なアクセスは不可能。

 

 サボり魔でツンツンでクーデレではあるけど、幼い頃に瘴霊体質をどうにかしてくれたユートには感謝と確かな愛情を懐き、決して仕事には妥協をしないからこそユートはバルロンの冥衣を与えて冥界の地獄門を任せたのだから。

 

 だから若し降霊術で魂を縛り付けて操るなら、冥界に送られる前に確保しないとなるまい。

 

 つまりは死んだその場での処置が必要不可欠となるという事。

 

「判った。取り敢えず確認したい事を終えたらすぐにも戻る」

 

〔はい。今はマグナモンとメルドのお陰で小康状態ですからまだ保ちますわ〕

 

「そうだな」

 

〔騎士達は数分前まで普通にしていましたのに、次の瞬間にはまるで幽鬼みたいな表情で襲い掛かって来ましたわ。マグナモンが護ってくれなければ私も死んでいたでしょう〕

 

「この世界の降霊術ってそんな高性能じゃなかった気がするが……」

 

 精々がゾンビみたいなもの。

 

「今はマグナモンとメルドだけか?」

 

〔ヘリーナとニアも居ます〕

 

 新しい近衛騎士団長がどうなったかのかは知らないが、少なくとも現在はリリィ達と共に居るという訳でも無いらしい。

 

 尚、ニアはヘリーナと合わせてリリィの専属になったのだが、仕事? の中には彼女の性欲解消の役割も持たされていた。

 

 毎夜ではないが百合百合な関係で互いを慰め合う訳で、ユートに抱かれた三人だけで秘密の関係を持っているのである。

 

 人間など一蹴が出来る筈のマグナモンが一人で無双しないのか?

 

 抑々の話がマグナモンに与えた使命はリリィの守護であり、彼女の傍を離れたら殺されましたとかでは意味が無いからには護衛対象から離れるなど言語道断な愚策でしかなかった。

 

 因みにリリィから離れなかったら彼女の家族が殺されました――はアリである。

 

〔ユートさん、御待ちして居ります〕

 

 伝話機を切ったらしく声が途切れた。

 

 リリィ渡した伝話機はユートが造った魔導具の一種であり、電気ではなく魔力を使うから電話機とは呼ばない代物となっている。

 

 また、神改造されたユートのスマホとは違うから同一世界間でしか繋がらない。

 

 因みにハルケギニア時代はガラケーと同じ形をしており、スマホ型になったのは再転生をしてから後に新しく造った時となる。

 

「緒方、今の話は?」

 

「お前は黙っていろ、鬱陶しい!」

 

「なっ!? 鬱陶しいって何だ! 王都の危機に黙っているなんて出来るか! 恵里が犯人だなんて信じたく無いけど……」

 

「喧しいわっ!」

 

「ぐっ!?」

 

 大気をもビリビリと震わせる程の怒声に然し物KY天之河光輝も動きを止めた。

 

 ユートがスマホを操作するとコール音が響き、何度目かのコールで相手が出る。

 

〔もしもし?〕

 

「ハジメ、其処に中村は居るか?」

 

〔へ? まぁ、居るけど……〕

 

 何だか眠たそうな声色、伝話が通じたという事は恐らく大迷宮ではなく宿屋辺りだろうか?

 

「ちょっと写メしてくれるか?」

 

〔へ? だ、駄目だよ!〕

 

「どうしてだ?」

 

 ハジメには状態異常を防ぐアクセサリを渡してあるから、彼が操られている可能性は極めて低いから下手すると共犯……

 

〔だ、だって……恵里は今、裸で……〕

 

「理解した。中村が寝ているなら叩き起こしてでも伝話を代われ」

 

〔え、判ったよ〕

 

 伝話の向こうで『恵里、起きて』なんて聴こえて来るから、宿屋で同じ部屋を取ってイチャイチャしていたのであろう。

 

〔もしもし?〕

 

 不機嫌そうな声音で出た恵里。

 

「中村、今は何処に居る?」

 

〔はぁ? そんなのハジメ君に訊けば良かったじゃないか……ブルッグの街のマサカの宿だよ〕

 

「ブルッグのマサカの宿……な」

 

 ユートはブルッグの方角を向いて瞑目をすると何かを確かめている。

 

「成程、確かにハジメと中村が居るな」

 

 脳内でマップを呼び出してエリア毎に別れているから居場所を訊き、それに併せてブルッグ周辺のマップを選んでマサカの宿を調べた。

 

 其処には確かに二人が居る。

 

 このマップはユートの【閃姫】が青、友人枠であるなら緑、一般人は黄色、敵対者は赤で色分けが成されていて、緑が三人居るのを確認した。

 

 マサカの宿で緑が三人ならハジメと恵里で二人となり、もう一人は【閃姫】契約にまで至らないが抱いたソーナ・マサカの事になる。

 

 初めてを喰い散らかしたからソーナが望むなら【閃姫】契約をする予定だが、今はまだであるからソーナを表すマーカーが緑なのだ。

 

「了解した。今、ハイリヒ王国の王都で中村が暴れているとリリィ――リリアーナ姫から連絡があったんでな」

 

〔はい? ボクが王都を? ちょ、それはいったいどういう事さ?〕

 

「訊きたいのは此方だな。中村、ハジメと付き合う前に王都を襲う計画があったりしたか?」

 

〔そんな計画は無いよ!〕

 

 無かったらしい。

 

「なら中村の降霊術で死者を操る事は可能か? しかも生前と変わらない会話が出来る程に」

 

〔……魂縛というオリジナルの魔法なら〕

 

「だいたい解った。中村、ハジメとブルッグを出ない様にしていろ」

 

〔どういう事?〕

 

「アリバイを証明出来る様にしておきたいから、冒険者ギルドのキャサリンを頼れ」

 

〔アリバイ……解った。ハジメ君とすぐにも向かう事にするよ〕

 

「僕らは王都の混乱を収めて来るから。その後にアリバイを証明しないといけない。少なくとも、リリィの認識では中村が王都を襲撃しているらしいからな」

 

〔っ! 了解したよ〕

 

 伝話を切った恵里はすぐにも行動に移すであろうから、ユートもスマホを仕舞うと【閃姫】達の方へと向き直す。

 

 当然、天之河光輝はスルー。

 

「聞いていたな?」

 

「聞いたけど、何だか恵里が二人居るみたいな話になってなかった?」

 

 雫がピンポイントで言う。

 

「事実、二人居るんだろうな。ブルッグの街の宿でハジメとイチャイチャしていた中村と、王都を襲撃している中村が……な」

 

「エリリンが…………二人?」

 

 青褪めているのは恵里の親友たる鈴。

 

 普通なら……

 

「そんな莫迦な」

 

 天之河光輝みたいに一笑に付す。

 

 だけど鈴は……香織と雫も、平行世界の存在を既に認識していた。

 

 斯く云うユートがこの世界の人間ではなくて、平行世界から来た別時空の存在なのである。

 

「信じる必要は無い、お前には関係が無い話だからな。オプティマスプライム!」

 

 ユートが呼ぶとエンジンを噴かせた。

 

 自意識は持たないがAIである程度の自立稼働くらいは出来るトランスフォーマー、死んでいる状態だった星帝ユニクロンをユートが見付けた際に内部に散らかるトランスフォーマー達のデータから再現された存在で、人造トランスフォーマーと呼ぶのに相応しいと云える。

 

 その姿は、【トランスフォーマーギャラクシーフォース】でサイバトロンの総司令官をしていたギャラクシーコンボイを基にしていた。

 

 とは云っても、ビークルモードはオプションを装着して様々なモードにトランスフォームをする独自性も持たされている。

 

 【勇者王ガオガイガー】で云う処のギャレオンやガオファーみたいに、ユートがフュージョンをして意識を持つタイプだから簡易AIのみ装備をさせていたが、ガオファーなら造っているのだからオプティマスプライムに自意識を持たせてみるのも良いかと考えてもいた。

 

「フライトモードで王都に向かう。雫をリーダーに地球組、ティオをリーダーにトータス組で分かれて王都を襲う者――死霊化した騎士を斃せ」

 

『『『了解!』』』

 

 オプティマスプライムに乗り込まんとしているユートに……

 

「おい、俺は?」

 

 天之河光輝が自己主張をしてきた。

 

「知らん。邪魔さえしなけりゃ好きにしろ」

 

 ユートは投げ遣りに答えるだけ、天之河光輝は定位置みたいにトレーラー部分に乗り込むしかなかったと云う。

 

 タラタラと文句を言って置いて行かれてしまう可能性があったからだ。

 

 そしてユートなら普通に置いていく。

 

 恐らく天之河光輝は『仲間だ』『クラスメイト』だと言い募るだろうが、ユートからしたなら仲間なんかでは決して有り得ない上にクラスメイトなど学校の都合で分けられたに過ぎない。

 

 はっきり言うとユートからしたら天之河光輝のそれは、【DQダイの大冒険】に於ける妖魔師団長ザボエラが魔影団長ミストバーンに叫んでいた『ワシらは仲間じゃろう!』と同じだった。

 

 果たして、ザボエラから『仲間』とか言われて喜びを覚える者がどれだけ居るだろうか?

 

 血の繋がっている実の子供にさえ『役に立たない道具はゴミ』と言い切るザボエラ、そいつが言う『仲間』にどれだけの者が心響かせる?

 

 ユートが思う天之河光輝の『仲間』、それこそザボエラの寒々しい『仲間』と同質であった。

 

 妖魔司教勇者(笑)アマノカワとか呼んでやるのも一興かも知れない。

 

 それにユートの認識では天之河光輝は詐欺師、散々っぱら『守る守る』と言いながら実は誰一人守っていない事実があり、これはユートがよく識らない原典でも本編終了後の覚醒天之河光輝なら未だしも、本編中はこの世界線と大して変わらない様相であったと云う。

 

 実際に雫も恵里も守れてないから雫は天之河光輝に諦らめを、恵里は内在的なヤンデレ化をして最終的には惨劇を齎らした。

 

 クラスメイトを守ると言っていたが、ハジメが奈落に落とされた時には真っ先に諦めていた……訳ではあるが、これに関しては天之河光輝の中に於いてハジメはクラスに居ただけで仲間だとも思っていないから助ける義理も義務も無いと考えていたのかも知れない。

 

 その割りには再会時にクラスメイトとか仲間とかほざいていたのだが……都合の良い時だけは仲間という解釈なのだろう。

 

 流石は公式勇者(笑)で御都合解釈の塊! 其処に痺れないし憧れない。

 

 オプティマスプライムのフライトモードというかジェットモードで王都へ、フェアベルゲンには偶々帰って来ていたアルテナに伝言を頼んでおいて出発をする。

 

 一時間も掛からずに王都に着くだろうから闘いの準備は確りしておく。

 

 具体的には全員が仮面ライダーに変身をする為のツールを身に付けていた。

 

 相手は死んだ騎士に生前の意識を貼り付けただけの紛い物、脳内のエピソード記憶を元に生きている様に振る舞うだけの死体人形。

 

 ユート達なら変身するまでも無い相手だけど、中村恵里二号機をこの世界に喚んだ者が何を考えての行動か気になるし、場合によっては更に強力な敵が出てきてもおかしくは無い。

 

 それに速やかに制圧をしたいなら普段の力より強い力――仮面ライダーの力を使う方がより建設的だと云えるであろう。

 

 あっという間という程でも無いが、この世界の基準で云うなら正しくあっという間に王都に着いた訳だが……

 

「王都を守る結界が無くなっているな」

 

 古代に造られたであろう王都を丸々囲む結界を発生させる装置――アーティファクトが存在していた筈だが破壊されたらしい。

 

「まぁ、中村が平行世界の存在だったとしても、向こうと此方に違いが無ければ弱点なんかも判っていただろうからな」

 

 飛電ゼロワンドライバーを装着したユートが、形の可成り違うプログライズキーを手に呟く。

 

 とはいえ、ユートの場合だと確かめる意味でも変身せずに行かないとならないから飽く迄も持っているだけだ。

 

「さぁ、行こうか」

 

 頷く【閃姫】達。

 

 城の中庭に降り立つオプティマスプライムから出ると、ユートを除く全員が仮面ライダーに変身をするべく行動に移る。

 

《STAND BY!》

 

 雫の手の中に地上を走る紫色の機械式な蠍が飛び込んで来た。

 

「変身!」

 

 サソードゼクターをサソードヤイバーの柄部分にセットアップ。

 

《HENSHIN!》

 

 管が着いたマスクドフォームの鎧がサソードゼクターを中心に展開され、雫の姿が仮面ライダーサソード・マスクドフォームへ。

 

「変身!」

 

 リューンラウザーとも云うべきベルトのハートを象るバックル、中心のスリットがリーダーとなっていてハートスートのカテゴリーAをラウズ。

 

《CHANGE!》

 

 水のエフェクトと共にモーフィングによって、香織が仮面ライダーリューンに変わる。

 

 鈴は白地に虎の様なライダークレストが浮かぶカードデッキを持ち右腕を突き出す、すると虚空から顕れるVバックルと呼ばれるベルト。

 

「変身!」

 

 鈴がカードデッキをVバックルへと装填したら仮面ライダータイガに変身した。

 

 ユエの腰にベルトが出現して、サガークという人造モンスターが飛んできて手の中に収まる。

 

「……ん、変身!」

 

《HEN……SHIN……》

 

 キバットバットとは違いまるで電子音声みたいな声で応え、ユエの肉体を【運命の鎧】とされる鎧が纏われて仮面ライダーサガに。

 

 ジョウントを抜けて現れた金色の機械式な蜂――ザビーゼクター。

 

「変身ですぅ!」

 

《HENSHIN!》

 

 シアがライダーブレスにザビーゼクターを嵌め込むと、其処を起点にアーマーが展開されていき仮面ライダーザビー・マスクドフォームに成る。

 

 鈴のとは違う黒に龍の顔を模したライダークレストのカードデッキを突き出すと、ティオの着物に近い服装の上からVバックルが装着された。

 

「変身!」

 

 カードデッキをVバックルへと装填をしたら、ティオの姿が仮面ライダーリュウガに変わる。

 

 ミレディの場合は更に一手間違う。

 

《BULLET!》

 

 プログライズキーのライズスターターを押すと流れる電子音声、重力魔法の要領で無理矢理に開くとエイムズショットライザーにキーを装填……

 

《AUTHORIZE!》

 

 自動的に認証される。

 

《KAMEN RIDER  KAMEN RIDER KAMEN RIDER KAMEN RIDER……》

 

「変身!」

 

 電子音声が激しく自己主張を繰り返す中で徐ろに引き金を引いた。

 

《SHOT RIZE!》

 

 放たれたSRダンガーがUターンしてミレディに向かってくるのをパンチ!

 

 仮面ライダーバルカンの姿へと変わる。

 

《SHOOTING WOLF!》

 

 流石は令和の仮面ライダーというべきなのだろうか? 長い動作が必要だった。

 

《The elevation increases as the bullet is fired!》

 

 こうしてユート以外の変身が完了する。

 

「よし、先ずはリリィと合流をしようか」

 

 居場所は判っているからゾロゾロと行く事にはなるが、分散をしても仕方がないからと全員で向かう事になった。

 

 勿論、天之河光輝も。

 

「緒方、リリィは本当にこんな地下に居るのか? 間違っていたら事だぞ!」

 

「信じないならどっかに行け。お前が付いてくるのは勝手だが、此方の行動に干渉させる気なんて更々無いからな」

 

「ぐっ、判ったよ」

 

 どうせ自分が何を言おうがユートの行動を変える事は叶わないし、香織達が自分に付いて来ないのも流石に理解をしていたから口を閉じた。

 

 こんな非常時に天之河光輝はユートが失敗をすれば良いのに……と、非常識極まりない莫迦な事を暗い憎しみの炎を瞳に宿しながら考えてしまう。

 

 王族のみが知る秘密の隠れ道というのが在り、他にも明らかに部屋が有りそうな空間が壁により隠されていたり、ハイリヒ王国の王城にもそんな道や部屋が幾らか秘匿をされていた。

 

 ユートが進むのはそんな隠された通路の一角であり、本来なら知る筈が無いその通路を呆気なく見付けて進んでいる。

 

 スマホでリリィに王城の全体マップを送って、王族たる彼女自身から知らされた隠し通路の場所なだけに、ユートの進むルートの先には間違いなくリリィが居る筈だ。

 

「行き止まりじゃないか!」

 

 そのルートの最奥は確かに壁で阻まれてしまった行き止まりである。

 

「お前さ、頭が良いって設定は何処に溶けて消えたんだよ?」

 

「な、何だと!?」

 

「まるでガウリィみたいに脳味噌が綿菓子にでも変化したのかよ? ルートミスを誘発する為にも擬装くらいしてあるに決まってるだろ。況してや魔法の存在する世界なんだからな」

 

 ユートはそう言いながらもスマホでリリィへと連絡をすると、魔法による擬装が解除された上で壁が開いて扉が顕れた。

 

「こういう事さ」

 

「ぐっ!」

 

 悔しげに声を吐き出した天之河光輝、これでは単なる間抜けな道化師である。

 

 重たい音と共に開かれた扉の先にマグナモンが立っていた。

 

「なっ! 魔物だと!?」

 

 案の定というか、天之河光輝が聖剣(笑)を喪ったから途中で落ちていたのを拾った剣を構える。

 

「退け!」

 

「うわっ!?」

 

 邪魔だと謂わんばかりに天之河光輝を退かしたユートは、膝を付いて臣下の礼を取るマグナモンへと顔を向けた。

 

「御待ちして居りました我が主よ。リリアーナ姫が奥にて控えております」

 

「御苦労、マグナモン」

 

 マグナモンを労い先へと進む。

 

「メルド団長……じゃなかったな」

 

「姫様の近衛騎士だからな。それなりに久し振りとなるか?」

 

「前の時は会わなかったしね」

 

 メルドは快活で人当たりも良い信用も信頼も出来る数少ない騎士、だけどオルクス大迷宮で犯した失態の責任を取らされてクビになってしまったのをリリィが拾う形で近衛騎士にした。

 

 まぁ、代わりにリリィの近衛騎士だった女性が何故か騎士団長に抜擢されたけど。

 

「リリィ」

 

 案内された更に奥にリリィとそれによく似ている容姿の女性――ルルアリア王妃、そして眠っている少年はランデル王子。

 

「ユートさん……ユートさぁぁぁんっ!」

 

 優しい笑顔で優しく声を掛けられ、ユートの姿を見たリリィは涙ぐみながら胸へと飛び込んだ。

 

 何故かエリヒド王が居ないのを確認しながら、ユートはリリィを優しく抱き止めるのだった。

 

 

.




 内容から判る通り原作第六巻の噺になります。

 何しろウチでは恵里が改心してるから王都襲撃自体が本来起こりませんから、それをやる為にも大迷宮攻略を先に持っていきました。

勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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