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リリィのハグに応えるユート。
それはまるで恋愛劇の一幕を観ているかの様で【閃姫】達が頬を朱に染め、ルルアリア王妃まで『あらあら』とやはり頬を染めていた。
天之河光輝は舌打ちをしているが……
「エリヒド王が居ないみたいだが?」
「御父様は御隠れに……」
王が隠れるは崩御――死んだ事への隠語だから、つまりエリヒド王は死亡したのだろう。
「そうか」
「淡白ですわね」
「リリィには血の繋がった父親かも知れんがな、僕からしたら無能が有能な勇者パーティを巻き込んで奈落に落ちた……とか抜かしたクソ野郎の一味でしかない。リリィには悪いがね」
「いえ、私もあれはイラッとしましたから問題はありませんわ」
抑々にしてリリィはユートがオルクス大迷宮へ行く二週間くらい前から毎日、侍女たるヘリーナも共に濃厚な情を閨で交わしてた間柄なだけに、王女の立場も全て投げ捨てるくらいやりかねない程度には思慕の情が育っていたのだ。
エリヒド王はユートが香織、雫、愛子先生と共に奈落に落ちた報せを聞いて、あろう事かユートが巻き込んだ――などと吹聴をしたらしい。
特に作農師の愛子先生の死は可成り衝撃を以て受け止められ、
そのターゲットにされたのが死んだ――と思われていた――ユートで、数値がオール10でありふれた錬成師という事から貶め易かったとか。
リリィは抵抗もしたけど聞き入れられない為、当時は可成り御機嫌斜めだったのは言うまでも無い事だし、ヘルシャー帝国の皇帝ガハルド・D・ヘルシャー来訪時に生きていた事が明かされて、大いに顔が潰れた訳だからリリィとしては父王を相手に愉悦! とばかりにドヤッていた。
恋人の如く一幕から落ち着いたリリィは今回の恵里による王都襲撃事件に関しての話をする為、円卓型のテーブルと人数分の椅子をヘリーナ達に準備をさせる。
「御食事も用意致しますか?」
「否、簡単な食べ物なら有るからそっちを食べるんで問題無い」
ユートが用意したのはオニギリと御茶のみという本当に簡単な食事。
「緒方……」
「どうした、天之河?」
「何で俺だけ御茶漬けが出されてるんだ?」
「疲れたろ?」
「はぁ?」
どうやら天之河光輝はぶぶ漬けの意味を理解していないらしい、ユートはしれっと拒絶の意を示しながらも誤魔化していた。
「作戦としてはアンデッド騎士を破壊しながら、アナザー中村を見付けるとシンプルに往きたい」
「アナザー中村? やっぱりこの恵里が平行世界の住人だと思っているのね?」
ユートのアナザー発言に仮面ライダーサソードな雫が察した科白を返す。
「他に無いだろう。ハジメの恋人な中村は間違いなくブルックの街に居る。ならば王都を襲撃したのは中村の筈も無いが、リリィが見たのが中村ならドッペルゲンガーか何かになる。一番考えられるのが平行存在だろうさ」
「でもどうして……どうやって?」
「中村アナザーを寄越したのは、這い寄る混沌――ナイアルラトホテップの化身のニャル子だろう。天之河にホッパーゼクターやアナザーウォッチを渡したりと暗躍してくれていたが、今回は中村を別の平行世界から喚び込んだんだろうな」
「どうして恵里だったのかしら?」
「ユーキ、僕の義妹が情報源から訊いてくれた。どうやら本来の世界線で中村が王都襲撃事件を起こしていたらしい」
「っ! つまり原典と同じにする為に?」
「此方側の中村はもう王都襲撃なんてやらかさないだろうからな」
天之河光輝に見切りを付けたこの世界に於ける恵里は、天之河光輝を手に入れるべく魔人族とも手を結んだり神の使徒に唆されたりする事なんて決して無く、ならばやらかす中村恵里を別の世界から喚べば良いとかぶっ飛んだ思考である。
「さて、余りのんびりしても居られないからな。地球組とトータス組と僕の三組に分かれて奴らを迎撃、中村アナザーを見付けたら確保をするって事で構わないな?」
「了解よ」
「任せよ、主殿!」
地球組は雫が、トータス組はティオがそれぞれにリーダーとして引っ張る。
素晴らしきはそのチームワークというべきか、仮面ライダーに変身していた【閃姫】達はさっさと遣る事を遣りに出た。
「お、おい、緒方……俺は?」
「知らん。精々、中村アナザーに捕まって良い様にされなきゃ好きにしてろ!」
「なっ!?」
鼻白む天之河光輝だけど仕方がないであろう、抑々にしてキラキラ鎧も聖剣(笑)すら喪ってしまった彼は、只の服に王都に着いた際に落ちていたのを拾っただけの騎士の剣という貧相な装備。
はっきり言えば
例えるならネクロゴンドの洞窟辺りで布の服を着て銅の剣を振り回す遊び人の図か?
使えないにも程がある。
ユートは取り敢えずは生身で動いていたけど、ちょっと確かめておきたい事があったからだ。
「中村アナザーは何処だろうな?」
ユートはマップで中村恵里がブルックの街に居るのは確認済み、本来のマップよりレベルが下がった劣化品なだけに本物より性能が低いのだが、それでも認識内の存在は見逃さない自信はあるのだから問題も無かった。
ユートの識る中村恵里がブルックに間違いなく居るのなら、王都で降霊術を弄んでいるリリィが曰く『恵里』はニャル子が連れて来た平行世界の中村恵里であろう。
「ニャル子のいつもの手管だ。自分が愉しいなら他はどうでも構わないとかな。それでも逢えて、自分の分身で蹂躙して悦びを覚えているんだから大概だよな……所詮は僕も内在的にはニャル子と同じで這い寄る混沌って事か」
自嘲してしまうユート。
ハルケギニアでの邪神戦役に於ける最終血戦でユーキが明かして、ニャル子が肯定をした最後の真実こそ
だからこそユートはディケイドの力を獲たのだから皮肉である。
【這いよれ!ニャル子さん】の最終巻で招集をされた数多の這い寄る混沌、中にはあのナイアや矢野健太郎が描く邪神シリーズのケイン・ムラサメなどユートも識る這い寄る混沌が居たりするのだけど、その中でも異彩を放っていたのがつまり仮面ライダーディケイドだった。
それが故にかユートが自分の中に息吐く神力を喚起した際、力の結晶はネオディケイドライバーという形に結実されたのである。
正確には仮面ライダーディケイドが用いていた全てのツール、以前にも使ったネオディケイドコンプリートフォーム21の力もそれだし、単車であるマシンディケイダーやライドブッカーも同じ。
ユートが自嘲したのは這い寄る混沌が仕掛けたモノを享受し悦びを得た事、試作型な白き戦艦と勇者王の巫女と赤き星の指導者のコピーが顕れた訳だが、全てを自分の良い様にしてしまったのだから普通はぶん殴られても仕方がない。
試作型白き戦艦と赤き星の指導者のコピーの方は兎も角、勇者王の巫女は云わば勇者王の恋人という立場だったのだから。
そして実はそれだけではない。
勇者王関係の人間達があちこちの世界線から、次元漂流という形で流されてきた……何人も。
しかもユートが全く識らない少女まで居たし、どうにもならないというのが感想だった。
勇者王の巫女――卯津木 命と赤き星の指導者のコピー――パルス・アベルはどうやら同じ世界線から来た様だけど、スワン・ホワイト、パピヨン・ノワール、彩 火乃紀、阿嘉松紗孔羅、ルネ・カーディフ・獅子王、初野 華、アルエット・ポミエ、初野あやめ、仲居亜紀子、磯貝 桜、彼女らは御丁寧な事に全員が別の世界線から喚ばれている。
ユートが座標の示唆をする【導越の羅針盤】を喜んだ理由、それは勇者王関連以外にも座標が判らなくて還してやれない者が割と居るから。
理論的にはユートも座標探査系の概念を籠めた魔導具は造れる筈だが、どうしてもそれを造り出す事がユートには何故か出来なかったのと、その理由も実は理解をしていた。
還してやりたい思いは有るが、還したくないという邪な思いも同時に有るからそれが邪魔をして発動が叶わなかったのだ。
リューティリスによる説明にも有った通りで、概念魔法は究極の思念により発動をする。
余りにもふわっとしてる説明ではあるものの、ユートはその意味を履き違えたりはしない。
事実として概念の強度が必須なのである。
前に行った世界でも【原始魔法】という概念を形に換える魔法が存在したが、やはり意志の力が最大限にモノを云う魔法であった。
ユートの『還したい』という思念は本物であったし、間違いなくそれは彼女らにも伝わっていたから女性陣の誰もが文句の一つも言わなかったのだけど、逆に居た堪れない気分が噴出してくるのは仕方がない話だろう。
だけれど、僅かにせよ『還したくない』という邪念が邪魔をしていて使えなかった。
とはいえ、幸い? な事に実はちゃんと恋人が居たのは卯都木 命――獅子王 凱の恋人たる彼女と初野 華だけであったと云う。
まぁ、予想は出来ていた。
何故なら殆んどがユートの識る彼女らと年齢が一致していなかったから。
だいたいが本来の年齢より数年分くらい下で、一番の年嵩な磯貝 桜も高校を卒業したばかりであるのだとか。
磯貝 桜に恋人は居なかったけど、明らかに宇宙開発公団のトップの大河幸太郎に想いを寄せていたりするが、抑々にして宇宙開発公団に入る前なら確かに想いを寄せる前の筈。
逆に本来ならTV本編で三歳なアルエットを除けば最年少な初野 華は、当時から天海 護へ想いを懐いていたからどうにもならないのであろう。
初登場は八歳の彼女をこれ以上に幼くしてしまう意味は無いし、単純な好意という意味であれば五歳の頃であるだけに無意味だ!
アルエットは本編に出ていないから論じるのも意味が無くFINAL関連の噺で五歳 、ユートは貴族として生きていたし何より莫迦貴族共が何を考えたのか、借金返済の生贄に出させた娘の最年少が八歳だったとはいえ
五歳なんて流石に論外である。
取り敢えず生命力――即ちHPが0の騎士が何人も屯ろしている中で、ユートは
この呪文は普通の魔物相手には効果も無いが、こんな頭を持たない死霊モドキなら充分過ぎる。
とはいえ、邪魔ではあるのだから少しの間引きはしておくのだが……
「騎士の半数が死霊騎士化しているな。しかも……はっ! ふっ!」
ユートは目の前の死霊騎士を斃す。
「意外と気付くもんだ」
いつもの様に気配を辺りに溶け込ませるというのをやって無かった所為か、元のレベルが高めな死霊騎士は気が付いて振り返ってきた。
因みに気配を感じないのが死霊騎士なのだが、恵里が言っていた『縛魂』という魔法は生きていた頃の人格を再現するらしく、見た目から死霊とは思えないくらいに活きが良い為に万が一の誤爆を考慮し、HPのAR表示を
(中村曰く、ハジメと恋仲にならなかったら確かに研究中の『縛魂』で括る心算だったらしいし、つまりは『縛魂』をモノにした未来の時間軸に於ける中村アナザーって訳か)
正直、恵里は香織や雫みたいなTHE美少女という訳ではないが、愛敬のある顔立ちで可愛らしさはあるから天之河光輝には勿体無いくらいだ。
だけど天之河光輝は興味を持っていない。
何故なら彼奴の中にあるのは香織と雫のどちらを選ぶべきかの葛藤、しかも二人から好意を持たれて当然という傲慢な解釈によるもの。
選ばれて当然、自分こそが選ぶべき人間であると天之河光輝は思っていたのだろう。
だから恵里からの好意など見て見ぬ振り処か、ソレに気付く素振りすら無かった。
「おっと、見付けた」
余り目立たない場所に陣取る中村アナザーを見付けたユート、取り敢えず見えない状態で近付いてロープで縛れば片付きそうだけど、中村アナザーがギョロッと此方を見て叫ぶ。
「其処に居るのは誰だい?」
矢張り周囲の気配に溶け込む事は疎か氣殺すらしてないと流石に気付かれたらしい。
「久し振りだね
「はぁ?
「成程、だいたい判った」
ユートが名前呼びしたのに眉根を寄せ、更には本来なら知り合いの筈なのに顔を知らない辺りからアナザーなのは確定。
元より油断などしていないが、『縛魂』とやらが生きた騎士と同じ動きや思考が可能なだけでしかないなら余裕である。
「殺りなさい!」
待機させていた一二人の死霊騎士を中村アナザーが嗾かけてきた。
「死ねぇぇっ!」
騎士にあるまじき言動ではあるが、メルドみたいなタイプも居るからには殺意マシマシな騎士も居るのであろう。
プログライズキーのライズスターターを押すと流れる電子音声。
《EVERY BODY JUMP!》
オーソライザーにセット&タッチ。
《AUTHORIZE!》
ライズスロットへプログライズキーを装填してやると、ライズアーキテクタと呼ばれる聖魔獣がユートの身を纏う。
「変身!」
《PROGRIZE!》
《LET’s RIZE! LE! LE! LET’s RIZE!》
ライズリアクターが展開されると前面に展開された特殊レンズ、ライズエクイッパーにより着者へと実装させる機能が働き銀色の飛蝗――クラスターセルが大量に顕れてライダモデルという一つの形に変化。
《SECRET MATERIAL! HIDEN METAL!》
再びクラスターセル化して一つの完成形である銀色を基調としたアンダースーツとアーマーへ、それは黄色い複眼を持つ仮面ライダーゼロワン……
《METAL CLUSTER HOPPER!》
その高き名をメタルクラスタホッパー。
《IT‘s HIGH QUALITY!》
原典では当初、アークの悪意により満たされて暴走をさせられる形態ではあったが、ユートの造ったこれにそんなモノは勿論ながら無い!
迫り来る死霊騎士達を鎧袖一触。
「な、何なんだよ……お前はぁぁっ!」
「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ! ……と言うか、仮面ライダーゼロワン――それが僕の名だ! の方が相応しいか」
今は仮面ライダーゼロワンだし。
「くっ! 簡単に騎士を殺すなんて?」
「人聞きの悪い。死霊騎士なんて単なる死体だ、元から生きてないなら殺人ではなく破壊だろ」
死体損壊に当たるだろうが死者をリスペクトし過ぎて、それで自らがダメージを負う羽目に陥るなど莫迦らしい話だ。
「仮面ライダーゼロワンに成っちゃいるけどな、僕は本質的にはいつだって【
「ディケイドは兎も角、シンオウ? 意味が解らないね全く!」
時代的に視れば【仮面ライダー鎧武】が放映中だったのと、現在は【仮面ライダードライブ】を放映している関係からディケイドは識っていてもシンオウというよりは【仮面ライダージオウ】についてどの道識る筈も無い。
「御約束といくか。お前を止められるのは唯一人……僕だ!」
「巫座戯るなぁぁぁぁっ!」
幾ら死霊騎士を放とうが怖くないのは当然といえる、何故ならハイリヒ王国の騎士で一番の強者はレベルも60を越えるメルド。
そんなメルドでさえステータス値は300越えがやっとでしかなく、変身なんてしなくても素手ですらユートならば勝てる程度の実力。
数は力で戦争は究極の一より多数の兵とも云うけれど、多勢に無勢に勝てるのが真の究極の一という他に無いくらいに無双をしていた。
蟻が恐竜に挑むが如く。
況してや既に死者でしかない死霊騎士に手加減は無用、遠慮も呵責も一切合切無くユートは敵対をする騎士の破壊をしていった。
「くそ、役立たずが!」
プログライズホッパーブレードをアタッシュカリバーと柄の石突き同士で合体、縦横無尽に揮って闘えるからか【緒方逸真流】を修めたユートには可成り扱い易いが故に、所詮は雑魚に過ぎない死霊騎士など相手にもなりはしない。
「来なよ!」
「なにぃ!?」
ニヤリと口角を吊り上げた中村アナザーが叫ぶと長い銀髪を風に揺らす、見た目にヴァルキリーっぽい女騎士が翼をはためかせて現れた。
「エヒトの使徒……か」
失敗作らしいリューンに、成功例のノイント、いずれも顔立ちや背丈は判を捺したかの如く変化も無いが、若いナンバーズはそれなりには個性が育っていて違いが判る。
故にノイントとはまた違うエヒトの使徒であると理解が出来るのが
後ろの三〇体は正しく量産型のザクなのだが、一番前の一人は明らかに個性を持つシャア専用のザクとかジョニー・ライデン専用のザクだ。
リューンに比べると小さな振り幅でしかない、だけど間違いなく個性を持っている。
まぁ、殺る事に違いはないが……
「い、幾ら強くてもコイツらには勝てないだろ。ハハハ……ザマァミロ!」
どうやら使徒の能力が高い事は識っていても、ユートの能力を理解していないらしい。
「フッ」
「な、何が可笑しいんだよ!」
「イレギュラー。奴らの主の盤上の駒にはしておけない者、それが僕だとノイントは言っていた」
「ノイント?」
「奴らの名前は数の子だ。ソイツも後ろの連中も基本的に数字の名前だろうよ」
何故かドイツ語っぽいんだけど。
「エーアストと申します」
「後ろの連中は?」
「特に名は持ちません」
「あ、そ……」
まぁ、確かにドイツ語で名前を表現するのだとしてン十万と居たらそれこそとんでもないくらいに長い名前となる。
人間にも長い名前は居るだろうけど、飽く迄もそれは幾つかのミドルネームとファーストネームとファミリーネームを組み合わせたものであり、ファーストネームだけで舌を噛みそうな長ったらしい名前というのはまず無いだろう。
ゲームになら無くもないし何なら会っていたりもするが珍しいのは間違いはない、田中
「僕はノイントを片付けたと言ったらどうだ? 其処のエーアストや名も無き量産型と同スペックである筈な……な」
「ま、まさか!?」
余りにも自信満々に言われては中村アナザーも無視が出来ずエーアストを見遣る。
「イレギュラーの言葉は真実です」
「なっ!?」
そして肯定をされてしまう。
「抑々にしてイレギュラーってのは南雲が呼ばれていた筈だろうに……」
中村アナザーからしたら見も知らない誰かが、何故か知っている人間の称号で呼ばれているという感覚だった。
「だからって数が揃えば!」
人間族の柔い騎士なんかとはモノからして違うのが真の神の使徒。
嘗て使徒と同じ肉体に変じたからこそ解る強さならば、ちょっと強いだけの人間なんて紙切れとも変わらないのだ……と。
「ボクが間違ってないって今度こそ判らせてやるんだ! 光輝君にも……鈴にも!」
中村アナザーが思い起こす記憶は神域での闘いで鈴に敗れ、天之河光輝への『縛魂』が解除されてしまって自爆をした時の事。
ほんの僅かな間の精神同士の遣り取りで鈴とは本音で語り合ったが、未練が無くなった訳ではないからあの銀髪アホ毛の女の話に乗った。
もう一度やり直す機会を得た中村アナザーは、天之河光輝だけでなく鈴も取り込む心算だ。
邪魔さえ無ければ……
(その筈だったのに!)
どうせ『縛魂』で括るのなら天之河光輝や鈴が別世界の存在でも構わない、あの女の話の通りならある地点まで遡れば同一の存在なのだから。
なのに『奈落の化け物』と違うイレギュラーな存在に翻弄されている。
「エヒトの使徒……筋力に体力に俊敏に耐久に魔力に魔耐といった項目がオール12000という。勇者(笑)がフルスペックで限界突破・覇潰を以てしても一体すら斃せん」
「ええ、故に如何な武装をしようが貴方に勝ち目は無いのです!」
エーアストの命令に従い背後の三〇体が一斉にユート――仮面ライダーゼロワンメタルクラスタホッパーへと襲い掛かる。
「無駄だ!」
クラスターセルが放たれて量産型を襲う。
『『『『ギャァァアアアッ!?』』』』
「なっ!?」
メタルクラスタホッパーの装甲を構成しているクラスターセル、それはゼロワンから自在に分離させて攻撃にも防御にも使える攻防一体の鎧。
一度放てば獰猛なる銀の飛蝗が敵を喰い散らかすが如く、そして如何なる攻撃をも弾き返す程の盾にさえなるのである。
しかも分解能力を持つ。
そして仮面ライダーゼロワンメタルクラスタホッパーは中間フォーム、その敵は後半の強力なる者達を想定しているが故にちょっとスペックが高いだけの存在など凌駕していた。
攻撃の名はクラスターテンペスト。
《ULTIMATE RIZE!》
アタッシュカリバーと合体したプログライズホッパーブレードを、ゼロワンドライバーに読み込ませると電子音声が高らかと鳴る。
「消え失せろ!」
《ULTIMATE STRASH!》
蒼い刃が禍々しい形の銀色の刃となるプログライズホッパーブレード、クラスターセルが纏わり着いているからでユートが思い切り振ると銀色の刃がエーアストに向かって飛翔……
「がっ、嗚呼嗚呼あっ!」
自身の二振りの剣でそれを防ぐ。
「はぁぁぁぁっ! おりゃぁぁっ!」
更に横薙ぎに一閃すると銀色の刃は弾け飛び、トドメの一撃が放たれてエーアストが爆発。
「嗚呼あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
流石に爆散こそしていないがズタボロな姿となって地に落ちる。
ビクンビクンと痙攣しているから生きている様ではあるが最早、戦闘は疎かまともに動く事すら叶わぬ程の大ダメージを負っていた。
「や、役立たずがぁぁぁぁぁぁっっ!」
矢張りというかあの『奈落の化け物』に敵わなかった程度だ、本物にせよパチもんにせよ本当に変身する仮面ライダーに敵わずとも仕方が無いのかも知れないが、せめてダメージの一つでも与えてから死ねば良いものを。
「こうなりゃ、数で圧せぇぇぇっ!」
恵里にも指揮権が委譲されているのか量産型のエヒトの使徒が数百体、それが彼女の命令に従って一斉に動き出す……
『レッキングバースト!』
前に、固まっていた処を強大なる熱線を受けて焼き尽くされてしまうのだった。
「ハァァァァッ!? 何よソレ?」
最早、意味が解らない。
その熱線の発生源には銀と赤に染まった巨人が空中へと浮かんでおり、熱線を放った際のポーズの侭にエヒトの使徒が居た場所を視ている。
「ウ、ウ、ウルトラマン!? 否、だけど目付きがキツいって云うか……ザラブ星人辺りが化けてるニセトラマン?」
「ニセトラマンが何で僕を助ける様な行動を取るんだよ?」
「む!」
「あれはウルトラマンジード、ウルトラマの父やウルトラマンキングが認めた歴としたウルトラマンの一人だよ」
「ジード? 聞いた事も無いね」
「ウルトラマンゼロと熾烈な闘いを繰り広げていたウルトラマンベリアルの遺伝子を使い、人工的に産み出された人造ウルトラマンで息子だとさ」
ユートは闘いの終わりを感じてゼロワンドライバーを外し、仮面ライダーゼロワン・メタルクラスタホッパーから変身を解除した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時間は少し遡る。
朝倉 陸――リクはペガッサ星人の子供のペガを影に容れて旅を続けていた。
「帰る術……見付からないね、リク」
「そうだな、ペガ」
ユートに会ってからそれなりの時間、トータスを旅していたけどこれといった情報も無い。
「こうなるとやっぱり大迷宮か」
「けど、僕らには場所も判んないよ? とはいえオルクス大迷宮はホルアドの街に有ったけどさ」
「情報が不足してるよペガ。下手に入って出られなくなったら本末転倒だしね」
「だねぇ……」
今は観光がてらハイリヒ王国の王都へ向かっている二人。
「ゼロが迎えに来てくれれば、それが一番良いんだけどね」
「そうだよね、リク。ホントにゼロはいったい、何処をほっつき歩いてるんだろう」
「ハハハ、さぁ?」
結論としては矢張り大迷宮が鍵。
ウルトラマンゼロが迎えに来てくれるのなら、リクの手間も省けて良いけどこの場合は大迷宮に入っていたら居ないと判断されかねない。
「あ、見てよリク!」
「あのワルキューレっぽい銀髪は!?」
ウルトラマンティガに変身をしていたユートが闘った存在、ワラワラと判で捺した様な同じ顔が百や二百では利かない数が空を埋め尽くす。
「どうする、リク?」
「そんなの決まっている、ジーッとしててもドーにもならねぇ!」
赤を主体にしたジードライザーを取り出すと、ウルトラマンが表示をされたウルトラカプセルのスイッチを押す。
「
次にウルトラマンベリアルのカプセル。
「I go!」
二つのカプセルを黒いナックルにセットしたら読み込み開始。
「Here we go!」
スキャンをする。
「決めるぜ、覚悟!」
右手のジードライザーを胸元に。
「はぁぁぁぁぁ、はっ!」
そしてトリガーを押し込む。
《FUSION RIZE!》
ジードライザー中央に填まるシリンダー内にて赤と青で輝きを放つ、その内部で光る形状は遺伝子の形を取るかの如くであったと云う。
「ジィィィィィッドッ!」
《ULTRAMAN!》
《ULTRAMAN BELIALl!》
《ULTRAMAN GEED……PRIMITIVE!》
ぐんぐんカットで巨大化していく赤と銀と黒に彩られたウルトラマンジード、その青く輝く鋭い瞳は遺伝元となっているウルトラマンベリアルを思わせるものであった。
ウルトラマンジード・プリミティブ――それは、謂わばウルトラマンジードの基本形態である。
『あれだけ固まっていたら!』
ジードが両腕を前でクロスして徐々に頭の上へと上げると、円を描く様に両腕を広げつつ身体を後ろへ弓形に反らす。
すると青い瞳が過剰な輝きを放った。
右足を引いて両腕を前方で左を横に右を縦にしてクロスさせる。
『レッキングバースト!』
放たれた光波熱線――レッキングバーストにより数百も居たエヒトの使徒が、何しろ数十mという巨体から撃ち出されるが故にMAP兵器も斯くやな広範囲攻撃となり、全て巻き込まれてエヒトの使徒の悉くが焼き尽くされていき時間にすれば僅かな……ほんの一瞬にして焼滅させられた。
『はっ!』
直後に何が起きているのかの確認をするべく、ウルトラマンジードは大空を舞う。
『あれは優斗なのか?』
空の上からウルトラアイによりユートの姿を認めたウルトラマンジードは……
『シェアッ!』
その場へと小型化をしながら翔んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ウルトラマンジードが翔んで来て合流を果たしたユート。
『久し振りだね、優斗』
「久しいね、ジード。というよりもリクって呼ぶべきかな?」
『あ、そうだよね』
小型化してもエネルギー消費を考えたら朝倉 陸の姿に戻る方が良いと、光が輪の様に巡りながらウルトラマンモードから人間の姿に戻る。
そんな一連の動きを見て面喰らう中村アナザーだったけど、死霊騎士は相手にならない程度でしかない上に虎の子のエヒトの使徒が殲滅されては敗北が必至で黙るしかない。
「さて、話の前に中村アナザー」
「な、何かな?」
「死霊騎士の呪縛を解け」
「わ、判ったよ」
だからこそ大人しく従う。
「エヒトの使徒はジードがレッキングバーストで斃したので全てか?」
「少なくとも、ボクが指揮権を持っていたのは。エーアストが斃た場合にはボクに指揮権が委譲をされていたからね」
エーアストは力を半減×六回で筋力12000も今や187.5と、そこら辺の騎士よりは高いものの鋼鉄製の鋼糸を断ち切る程の力は無い。
それに【白龍皇の翼】による半減は力の全てに及ぶ為、俊敏や体力や耐久や魔力や魔耐といった能力値も同じだけ落ち込んでいた。
序でに邪魔だから、そして後からエーアストをウマウマと『戴きます』をする為に、位相のずれた空間に隔離をしているから離脱も叶わない。
それ以前に未だ意識を失っているだろうから、何も出来ない状態であろうが……
「それじゃ、中村アナザーは意識を刈られるのとこの隷属の首輪を自ら嵌めて僕に服従を誓うのとどちらを選ぶ? 首輪発動の文言は自分の名前を言い相手の名前と共に隷属する旨を誓えば良い」
「……因みに意識を刈られるってどんな感じなのか訊いても構わないかい?」
「ちょっと積尸気冥界波で黄泉比良坂に霊体を飛ばすだけだが?」
「し、死んでる! それは死んでるから! 着けるよ首輪を!」
先程から常識を外れた事ばかりが起きていたからなのか積尸気冥界波についても信じたらしく、ユートから引ったくる様な形で隷属の首輪を奪うと自らの手でその細くて白い首に嵌めて……
「ボク――中村恵里は……えっと、そういえば君の名前は?」
「緒方優斗」
「緒方優斗に隷属を誓う」
首輪発動の文言を口にした。
その結果、首輪の効果が発動されて中村アナザーはユートに逆らう事を赦されなくなる。
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基本的にユートの視点ばかりなので、次回での序盤は仲間の視点を少し書く予定です。
巨大なウルトラマンの光波熱線で普通サイズの敵を焼き払うってどうなんだろう?
勇者(笑)な天之河の最後について
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原作通り全てが終わって覚醒
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ラストバトル前に覚醒
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いっそ死亡する
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取って付けた適当なヒロインと結ばれる
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性犯罪者となる