ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

9 / 129
 残りは1話分か……





第8話:兎さんにさえ勝てなかった

.

 何故、こんな事に?

 

 ベッドの上でハジメは、どういう訳だか中村恵里と同衾していた。

 

 勿論、二人の衣服に乱れなどは無かったし、変な液塗れとかでも当然無い。

 

 ハジメの初めてが喪われた訳では無いのだ。

 

 寝間着代わりの白シャツなハジメ、ネグリジェ姿の中村恵里という組み合わせで同衾している理由だが、二日間も徹夜していたのを咎められ、一緒に寝て上げると言われて添い寝をして貰っているのだ。

 

 ――強制的に。

 

 実はやっている本人も、少し戸惑いを覚えていた。

 

 幾ら普段は大人しくて、人畜無害っぽいハジメとはいえど男、同年輩の女子とこんな形で接近したら流石に煩悩を刺激して、襲われてしまう可能性がある訳だけど、自分から添い寝をしたら襲われるのを期待していたみたいに思われる。

 

(期待? 違う、ボクは……ボクが好きなのは光輝君だから……そう、南雲君にこうしてるのは命の恩人だからで!)

 

 ふと聴こえてきたのは、明らかな寝息。

 

「スースー」

 

(寝てる? 女の子が添い寝してるのに寝たの?)

 

 ちょっとショックかも、それが中村恵里の心境だ。

 

(ひょっとして、ボクって実は魅力に欠けてる?)

 

 だから膨れっ面になりながら、イタズラしてやると右手をハジメの股間に。

 

 ビクビクと脈打つ硬くて長い棒……

 

(じ、じ、じ、直に触れちゃった!? しかも勃ってるんだけど? って、ボクと寝てるから……か)

 

 ハジメは何も思わなかった訳ではなく、すぐ傍で香る女の匂いや温もりや柔らかさにパトスが噴出しかねない状態ではあったけど、二日間の完徹と魔力回復薬こそ使っていたにしても、錬成を続けていた精神的な疲労が睡眠欲を優先させたに過ぎない。

 

 原典みたいな反則クラスのアイテムや力が無い為、どうしたって無理が生じるのも仕方がないだろう。

 

「ゴクリ」

 

 当たり前だけど中村恵里は男のモノに触れる機会は無く、視るのも当然ながら初めての事である。

 

 嘗て母親が連れて来た、あの男(クズ)に襲われた時も完全な未遂だし。

 

 だから眠るハジメが目を覚まさない様にイタズラ、触れて擦って色々としてみたら、何だか爆発してしまって驚愕する。

 

「や、ヤっちゃった」

 

 勿論、知識としてこれがどういう現象かは識っている中村恵里は、手に付着した爆発の跡を眺めながら、妖艶な笑みを浮かべた。

 

「ハジメ君、可愛い」

 

 一度、爆発したからだろうか? ハジメの顔が何処かスッキリしていて思わず呟いたけど、男の子としては割と致命的な科白だ。

 

 顔か? それとも……

 

 翌朝、何故か夢精にしては生々しい跡が残っていて激しく動揺するハジメ。

 

 横に眠る中村恵里を起こさない様に布団から抜け、こっそりとパンツを洗ったのは言うまでも無い。

 

 再び錬成に精を出すが、朝食の時間はすぐにきた。

 

「南雲君、朝御飯はどうするの? 何なら今朝もお口で食べさせて上げようか」

 

「だ、大丈夫だから」

 

 流石にそれはどうかと思ったハジメは、食堂へ大人しく行って食べる事に。

 

「エリリンが朝帰りって、南雲君! 鈴のエリリンとナニをしてたの!?」

 

「な、ナニもしてない!」

 

 ブンブンブンと首を横に振るハジメだが、明らかに出した跡からまさか? という思いもあった。

 

 ジト目な谷口 鈴の態度にタジタジなハジメだが、中村恵里がそこへ援護射撃をしてくる。

 

「鈴、大丈夫だからね? 南雲君は夜中に女の子と居ても紳士だよ」

 

「つまり、南雲君って相当なヘタレなんだね?」

 

 クリティカルヒット!

 

「がふっ!」

 

 援護射撃というよりは、何と少年の純情へトドメを刺したのであった。

 

 寧ろ、ハジメの知らない間に襲ったのは中村恵里の方だが、そこら辺は知られない様に内緒にしておく。

 

 朝御飯も食べたしハジメは部屋で内職に耽った。

 

「ねぇ、南雲君」

 

「ん? 何かな?」

 

「周りに有る籠手や肩当て脛当て、今の南雲君が手掛けている胸アーマーを見る限り、全身鎧を一式みたいなんだけど……これって、いったい何なの?」

 

「僕さ、前に優斗と約束したんだよ」

 

「約束?」

 

「仮面ライダーG3を造ったら御褒美をくれるって」

 

「仮面ライダーG3?」

 

「えっと、仮面ライダーは知っている?」

 

「一応は。詳しくはないんだけど」

 

「【仮面ライダーアギト】に登場する仮面ライダーの一人。『仮面ライダーになりたかった男』、氷川 誠が“装着”するんだ」

 

「装着? 変身ではなく、装着なの?」

 

「うん、劇場版で同系列の仮面ライダーG4とか無くはないけど、正式なTV版の仮面ライダーでは唯一、装着する仮面ライダー」

 

 人間の手で機械的に造られた仮面ライダーの先駆、お仲間な仮面ライダーG4を除けば、基本的に装着する仮面ライダーは居ない。

 

 仮面ライダーG1はTV処か劇場版にすら出ない、しかも形が何と無くクウガ……未確認生命体第4号に似ている程度でしかなく、完全な未知を使っていない仮面ライダーである。

 

 仮面ライダーバースも、一応は人間の手で開発された仮面ライダーであるが、それでも扱いにセルメダルを使用する制約付き。

 

 変身するタイプだし。

 

 故に今現在のハジメでは造れないし、兵器のレベルも些か高いと考えた。

 

 況してや、変身するのはまだまだハジメの錬成では荷が重いのである。

 

 ユートが造れるのだってユーキが普通に造れた為、その技術を教わっていたからに他ならない。

 

 つまりは純然たる科学の産物を、【創成】によって量産していた訳だ。

 

「だから僕にも作れる筈、優斗からそう言われた」

 

「そっか、学校では親しそうには見えなかった」

 

「僕が臆病でシャットアウトしてたんだ」

 

 万が一にユートが虐めの標的になって、ハジメとの関係を煩わしいと思われたらと考えると。

 

 まぁ、トータスでの強さを見れば杞憂でしかないのは一目瞭然だが……

 

「でも、鎧って重いんじゃないの?」

 

「僕のステータスの技能、錬成の中に面白いものを見付けたんだ」

 

「面白い?」

 

「うん、大迷宮から出て気付いたんだけどね」

 

 

南雲ハジメ

17歳 男 

レベル:18

天職:錬成師

筋力:20

体力:32

耐性:18

敏捷:45

魔力:80

魔耐:63

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+魔法付与] 雷撃 能力之窓 ??? 言語理解

 

 

 空色のステータスプレートを見せられ、中村恵里は目を見張って凝視した。

 

「魔法付与?」

 

「そう、魔法の効果を魔石や宝石に付与が出来る錬成の派生技能らしい」

 

「でも、それって南雲君が使えないと意味が無いんじゃないの?」

 

「硬くする魔法と軽くする魔法、僕のCADに入っているんだよ」

 

「硬くすると軽くする?」

 

 ユートが派生技能として出る様に、ハジメへ授業をしていたのが良かった。

 

 そして予めこの魔法を、ハジメに渡すこのCADへインストール済み。

 

 つまりは、重いG3の鎧を出来るだけ軽量化が可能という事だし、金属鎧を更に硬くする事も出来る。

 

 ベルトの部位にエネルギージェネレータを設置し、其処をエネルギー供給源として魔法の効果を持たせる予定だった。

 

 軽くなるから少なくとも歩いて攻撃をする事は可能だろうし、硬くなれば防御が上がってダメージも受け難くなる。

 

 元よりユートはこの手の物を造るのは得意な訳で、必要な魔法は基本的にこのCADにはインストールをしてあった。

 

 軽くする事と硬くする事は元より、身体サポートの強化魔法も可能。

 

 ハジメでも扱える魔法、故に魔法付加が出来る。

 

 あのCADは元々が雫……北山 雫という別世界の女の子に渡す為に造っていた物の試作品且つ失敗作、成功した完成品を渡した後は放ったらかしにしていた物で、なのは主体世界でのデバイスや魔法の技術を盛り込んだ試作機として後に構築をしていた。

 

 PSYON用だったのが魔力で扱えるのは、この時に行った改修の為である。

 

 また、わざわざコイツを引っ張り出したのは彼方側の【高機能性遺伝子障害(HGS)】の人間が、力を制御し易い様なデバイスの製作をする為の試作機を造る雛型にしていたからだ。

 

 廻りに廻って試作機でしかなかったこれを、ハジメが使う用に引っ張り出した辺り、彼の力に共感をしたという事だろう。

 

 イメージインターフェースも組み込まれている為、ボタン制御はサブとしての機能でしかない。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 所は変わって……

 

「はぁ……」

 

「優花っちぃ、いい加減で元気出しなよ……部屋の中が暗いからさ」

 

 宮崎奈々は優花が先程、というか帰ってきてからはずっと鬱ぎ込み、バレッタを視ながら溜息を吐く事を繰り返すのを諌めていた。

 

 ユートが奈落に落ちたのを見てしまい、大迷宮から帰って来てから泣き晴らしたかと思えば、この鬱状態がずっと続いていた。

 

「優斗……」

 

 ボソリと名前を呟く。

 

「っ! うう……」

 

 真っ赤になりながらも、涙を零すとか随分器用な事をしている優花、宮崎奈々も菅原妙子もペンダントの事と、特別に誂えたらしいバレッタの話からも優花の想いは理解しており、流石に茶化す気にはなれない。

 

 天之河光輝は絶賛、御都合解釈で精神的自慰行為に耽っている。

 

 つまり、『俺は悪くない』とか『悪いのは檜山で、檜山と仲違いした緒方が悪いんだ』とか、闇堕ちしたかと思うくらいにアレで、坂上龍太郎が世話を焼いている状態だった。

 

 三人のヒロインを救う為の修業は継続中。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 オルクス大迷宮。

 

 仮面ライダーエボルから変身解除をしたユートは、拠点とした封鎖領域にまで戻ってくる。

 

 あの三人が起きていたら流石に、エボルの姿は衝撃が強過ぎるだろうから。

 

 そして結界内に入って、その途端に剣を向けられてしまったのだが、その剣を弾いて押さえ付けたら何だか押し倒した感じになり、困ってしまうユート。

 

「で、何で剣を向けてきたのかな? 八重樫。一応は命の恩人の心算なんだが」

 

「わ、悪かったわよ。警戒するしかないでしょうが、こんな状態だと」

 

「まぁ、判らんでもない。敵意は無いと考えても良いのかな?」

 

「どうせ敵わないんなら、無駄に敵意を向けないわ。香織と先生も良い?」

 

「う、うん」

 

「先生は構いません」

 

 それで漸く八重樫 雫から退いたユートは、手を貸して雫を起き上がらせる。

 

「それで、此処は?」

 

「奈落の底」

 

「奈落?」

 

「オルクス大迷宮の最下層……と思われていた場所」

 

「思われていた? それ、どういう意味よ?」

 

「簡単に云えば、オルクス大迷宮は上の百階層をクリアしたら、真のオルクス大迷宮を往く仕様らしいな。上への階段は無いくせに、下への階段は見付かった」

 

「なっ!」

 

 八重樫 雫が驚愕して、白崎香織も愛子先生も驚きに目を見張った。

 

「つまり、百階層に降りたらノンストップで真オルクス大迷宮に挑み、恐らくは更に百階層を進む必要性があるんじゃないかな?」

 

「まだ、更に百階層?」

 

「しかも、ザッとこの階層を探索してみたが、少なくともベヒモス一匹にオタオタしている程度の連中に、戦える魔物じゃなかった。まぁ、流石にベヒモス程に強くはなかったがね」

 

「ベヒモス一匹にって」

 

「あんな突撃と赤熱頭くらいしか脳が無い闘牛擬き、殺ろうと思えばいつだって殺れた。だけど僕が無双して終わらせたとして、連中は弱い侭だからな。それとも僕一人に戦争を押し付けるか? 己が弱さを言い訳に使って」

 

「そ、そんな心算は……」

 

「だよな、戦争に真っ先に賛成した始まりの四人だ。なのにいざとなったら他人に丸投げ、有り得ない愚行だよな? それってさ」

 

 グサリと二人――八重樫 雫と白崎香織の胸を貫く言葉の刃。

 

 あれは確かに天之河光輝が真っ先に賛成をしたし、坂上龍太郎がすぐに追従をして、八重樫 雫が仕方がないからと賛成、白崎香織も親友がやるならと消極的ながら賛成した。

 

 愛子先生の反対を無視してまで賛成し、他の生徒の反対意見は出し様が無くなる流れだったのは間違いないだろう。

 

 唯一、ユートが反論らしきをしたが……

 

 真っ先に賛成したと言われても反論など出来ない。

 

「取り敢えず僕は大迷宮の攻略をする。実際に何階層あるかは知らないけどな、ゲームなんかだと最終階層に外へ出る仕掛けとかが、一応だが存在している場合もある訳だし」

 

 寧ろ、上に行く階段が無いという事は最終階層まで来い……という事。

 

 脱出路が用意されていないとは考え難かった。

 

「あ、私達はどうすれば良いの?」

 

 八重樫 雫の質問に……

 

「え、知らんよ」

 

 にべもなく答えた。

 

「し、知らんって……」

 

「僕は下に降りるとは言ったが、君らの処遇まで僕が知る訳も無いだろうに」

 

 余りにも冷たい物言い、八重樫 雫だけでなく白崎香織も愛子先生も、どう言って良いのかを判断が出来ずにいた。

 

「ど、どういう事ですか? 緒方君だけでってぇ」

 

 愛子先生が涙目になって真意を訊ねてくる。

 

「端的に言えば足手纏い、一人でなら此処からの階層でもどうとでもなるけど、流石に足手纏いを三人も連れて行くのは……ね」

 

「あ、足手纏いって何? これでも私は剣士の天職で八重樫流を学ぶ者なのよ! 香織だって治癒師だから怪我を治すエキスパート。戦闘職じゃない先生はまだ仕方がないにしても、私達は足手纏いにならないわ」

 

 暗に愛子先生は足手纏いになると言っているけど、本人もそれは理解しているから文句も言えない。

 

「残念ながら、八重樫達の戦闘力じゃ話にはならないんだよ。この奈落の魔物の強さ的にはな」

 

「――は?」

 

「ベヒモスには及ばない、だけど八重樫ではまともに戦う事すら出来んよ。恐らくは蹴り兎の一匹すら」

 

「くっ、私が兎の一匹も斃せないって言いたいの?」

 

「そう言った心算だが」

 

「良いわ、見てなさい!」

 

 八重樫 雫は怒り心頭で結界の外へ出た。

 

 蹴り兎は一番の雑魚で、二尾狼や爪熊といった複数で繰るのや、一撃が強力な魔物も出るから危険なのだが無防備に、アーティファクトの剣を持って。

 

 アーティファクトとか云われても、あれは単に今では喪われた技術で造られた魔力剣というだけであり、古代遺失物(ロストロギア)と呼ぶにも足りぬガラクタとしか思えない。

 

 況してや、刀に近いからと選んだ剣だろうがやはり刀には成り得ない物。

 

 つまりは八重樫 雫の力を生かし切れないのだ。

 

 ユートも得意は刀だが、【緒方逸真流】はそもそも武器を選ばない。

 

 無ければ無いで充分戦えるという訳だ。

 

「ったく、しょうがない」

 

 結界外に出ると案の定、蹴り兎に苦戦していた。

 

 蹴り兎の素早さに翻弄をされており、まともに剣を当てる事すら叶わない。

 

「くっ、強い!?」

 

 八重樫 雫の刃は決して蹴り兎に当たらないのに、折りを見て蹴ってくるのを完全に避けられず、少しずつダメージが蓄積する。

 

「高が兎一匹に何てザマよ……緒方が言った通りか」

 

 何とか油断無く動いて、致命的なダメージは避けているのだが、僅かな時間でボロボロになっていた。

 

 八重樫 雫が期を狙って居合いの一撃を放つ。

 

「なっ! 躱され……」

 

 必勝のタイミングだったのが、見事なまでに外されてしまって隙だらけに。

 

「ガッ!?」

 

 逆にクリティカルヒットと云うべき蹴りの一撃を、その胸に喰らい吹き飛ばされて壁に激突。

 

「ぐふっ!」

 

 壁が砕ける程の勢いで叩き付けられ、口から血を吐き出しながら前のめりに倒れてしまった。

 

「うう……」

 

 ちょっと気色悪いけど、見た目から兎の筈の魔物が八重樫 雫には、とんでもない怪物に見えている。

 

 漫画やアニメではそれによるダメージが大して表現されない、或いは防御力が凄いアピールかという感じで流されるが、岩が砕ける勢いで人間の身体がぶつかったら、人間の柔い肉体は破壊されてしまう。

 

 八重樫 雫の背中は背骨から何から砕け、服がボロボロで皮膚もグズグズに、肋骨も数本は砕けて残りは罅になっている。

 

 脚の骨も砕けて曲がってはいけない方向に曲がり、腕もぶつけた拍子に砕けているらしいし、内臓の方にもダメージがあった。

 

 正しく満身創痍を地で逝く状態だろう。

 

「兎……が、いちばん……よわそ、だった、あれで……」

 

 蹴り兎のステータスが、いったいどの程度かは判らないが、間違いなく今現在の八重樫 雫の倍以上は強いと思われる。

 

 雑食なのか蹴り

 

 兎が八重樫 雫へとヒタヒタ、ニヤリと嘲笑いながら近付いてきた。

 

《ATTACK RIDE CLOCK UP》

 

「お前は何を喰おうとしている? クソ兎が!」

 

 斬っ!

 

 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 斬っ! 

 

「教えてやるよ。これが、モノを殺すっていう事だ」

 

 ユートの内なる力には、這い寄る混沌が在る。

 

 嘗て、【魔法少女リリカルなのは】主体世界での、約二〇年前の時代に於ける天乃杜神社で世話になった際の事だ、ピンチに陥った退魔巫女たる天神かんなと天神うづき、助っ人として居候中の木島 卓の三人を助けるべく、這い寄る混沌の力を喚起させるのに祭神たるイチ様、水杜神社から来たナツ様の神氣を流し込んで貰ったら、どういう訳かマゼンタカラーで一八個のライダーズクレストが刻まれたディケイドライバーが顕れた。

 

 まぁ、使い易い力だから有り難く使ったけど。

 

 爾来、ユートは仮面ライダーディケイドに変身する事が可能となり、放浪期に世界を放浪しては出るのを繰り返すと、ユートが識る仮面ライダーフォーゼまでのライダーカードを手に入れる事が出来た。

 

 後に【カンピオーネ!】世界で仮面ライダーウィザードを知り、自らウィザードライバーを造った後で、ライダーカードにウィザードが在ったのに気付いて、更にゴーストやエグゼイドやビルドやジオウ、果てはゼロワンなども知識として得たらカードが手に入り、今のユートは基本的にそれらにカメンライドが可能。

 

 だからユートは仮面ライダーディケイドに変身し、その侭でクロックアップをしたら、ライドブッカーのソードモードで蹴り兎の体を一七分割してやった。

 

「流石に細かくし過ぎた。まぁ、魔石くらいは持って帰るかね」

 

 変身を解除して八重樫 雫をお姫様抱っこにして、拠点となる封鎖領域へと戻るユート。

 

 ズタボロな八重樫 雫をみた白崎香織は、泣きながら回復させるべく呪文詠唱をしようとする。

 

「莫迦、待て!」

 

「な、何で止めるの?」

 

「こんな皮膚や骨から内臓までグチャグチャな状態、変に回復魔法を使っておかしな形で回復したらどうする心算だ?」

 

 ハッとなる白崎香織。

 

「そうですよ! 骨が曲がった状態でくっ付いたりしたら一大事です!」

 

 その可能性に思い至った愛子先生が叫ぶ。

 

「ど、どうしたら……」

 

 今までは怪我をしたとかいっても、普通に回復魔法を使えば治る程度のものでしかなく、こんな一秒先で死んでもおかしくない重傷なんて看た事もない。

 

「チッ、今回は仕方ない。こいつを使う」

 

 青白いバスケットボールくらいの大きさがある鉱石……それは【神結晶】だ。

 

「飲ませるのと同時に身体全体に掛ける」

 

 ユートは八重樫 雫の着た物の“全部”を剥ぎ取ってしまうと、先ず自身の口に【神水】を含んで口移しに飲ませる。

 

 そして更に身体全体……余す事無く掛けてやった。

 

 因みに、近くでずっと見ていた白崎香織と愛子先生はユートの所業に吃驚し、口出しをする事すら出来ないでいる。

 

 不可思議な現象が起き、八重樫 雫の肉体はみるみる元の健康な状態に戻っていくのだった。

 

 難があるとすれば裸体を晒して、見えてはならない部位までバッチリみえてしまっている事か。

 

「ちょ、雫ちゃんがマッパだよ〜!」

 

「これ以上、八重樫さんを見てはいけません!」

 

 慌てている白崎香織に、低いからピョンピョンと跳ねながら、ユートの目を閉じさせようとする真っ当な教師……愛子先生。

 

「これでも着させろ」

 

 ユートが白崎香織に渡したのは、聖闘士が聖域での修業時代に着る丈夫なだけの簡素な服、スカート付きだから女性聖闘士の見習い用の服だろう。

 

 取り敢えずショーツも無い侭、そんなスカートの付いた服を着させた。

 

 その間、ユートは拠点から暫く外へと出ていく。

 

「思った通りだったな……部位欠損はどうにもならないにせよ、あそこまで壊れていても癒やせる水か」

 

 【神水】の有用性を鑑みたなら、必要な分を小さな容器に容れておくべきだ。

 

 ユートは【創成】によりプラスチックの試験管っぽい容器、コルク栓っぽい物を幾つかセットで創ると、その中に【神水】を容れる作業に没頭した。

 

 数分後、着替えが終わったと愛子先生が呼びに来るまで延々と。

 

 

.

勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。