ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 原作からずれた展開……


第六章:超越者
第89話:ありふれた宣戦布告


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 倒れた天之河光輝を部屋に連れて行って寝かせた坂上龍太郎が戻って来て、その手に持っていた物を申し訳無さ気にユートへと手渡してくる。

 

「緒方これ、要るんだろ?」

 

「ああ、サンクス坂上」

 

 渡されたのは金色のパーツが付いたカブト虫と鈍色のブレスレット、つまりこれはコーカサスのカブティックゼクターとライダーブレス。

 

 ライダーブレスはユートが造った物でも作動に問題が無いから無くても構わない、だけど下手に持たせていて優先権がこのライダーブレスの方に有ったら問題しか無い。

 

 取り上げるに越した事もあるまいと、ユートは有り難く受け取っておく。

 

「正直、あの莫迦に持たせていても碌な事にならないのは証明済みだからな。それとも坂上が使ってみるか?」

 

「否、俺はこいつのが合ってるわ」

 

 坂上龍太郎はスクラッシュドライバーを出して苦笑いを浮かべる。

 

「それじゃ、話し合いをしようか。リリィ――否、ハイリヒ王国の第一王女リリアーナ・S・B・ハイリヒ殿下」

 

「! そうですわね」

 

 胸が痛いのかギュッとドレスの胸元を握り締めながら応えるリリィ。

 

 此処からは第一王女として公的に話し合いへと応じなければならない、何故ならエリヒド・S・B・ハイリヒ国王が崩御しているからだ。

 

 若し万が一にもエリヒドが婿養子的な存在で、本来の王統がルルアリア・S・B・ハイリヒ王妃に有るなら、彼女が中継ぎの女王として君臨をしてランデル・S・B・ハイリヒ王子が成人をし、王位に相応しくなるまで動くという事も正当化がされるのだが、建国王の血筋は飽く迄もエリヒドが継いでいるのでその血筋たるリリィが陣頭に立たねばならなかった。

 

 ランデルが成人か、或いはリリィもまだ幼いのなら既に王族であるルルアリアが立つ正当性も有ったろうけど、血筋――こればかりはどうしようもない事である。

 

 今までは王女であり、次期国王がランデル王子だからと甘えていられたのだが……

 

 まぁ、本来なら実質的な婚約者が居たりするので肉体関係を結んだとか、王女としては迂闊にして有り得ない事をやらかしているリリィだけど、それはユートから誘ってきたのに応じた形だから見逃して欲しかった。

 

 流石に其処をユートがつついてくる事は無いと思いたいリリィ。

 

 広い会議室に集まる面々。

 

 王族の三人は幼いランデル王子も含めて全員が集まり、リリィの傍らには直属の騎士メルド・ロギンスと引き続きマグナモンも直衛している。

 

 見た目からして魔物か亜人かといった感じではあるが、宰相や貴族やルルアリア王妃達も何も言わないのはリリィが侍る事を許していたからと、騒ぎの中で間違いなくリリィを護っていたからに他ならない。

 

「さて、改めて自己紹介をしておこう」

 

 まるでユートが話し合いの主役の如く足組みをしながら椅子に座る、その姿には何故か王者たる風格が滲み出し漂っていた。

 

 この場の貴族達は基本的に政治にまで口を出す宮廷雀、そして伯爵以上の上級貴族とされている連中なだけに地位の高さに胡座を掻く。

 

 ハルケギニア時代に於けるトリステイン王国に【プロジェクト・ニューウェーブ】前までなら、極々当たり前なレベルで存在していたアホ貴族と何ら変わらぬ連中なだけに、ユートのリリィに対する態度……というよりは()()()()()()()()()()に眉根を顰めていた。

 

 抑々がこういった手合いは『俺は偉い、御辞儀をしろ』とか素で言い放てるくらい――否、寧ろするのが当然だと胸を張っている。

 

「僕の普段から使う名前は緒方優斗、○○高等学園の二年生。だけど本当の本当に正式な場所での名乗りは――緒方・ユート・スプリングフィールド・ル・ビジュー・アシュリアーナ。アシュリアーナ真皇国の真皇だ」

 

 ユートが名乗るとたっぷりと一分くらい沈黙が続いたであろうか?

 

『『『『『『『『ハァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?』』』』』』』』

 

 一応だが聴かされていたリリィや【閃姫】達は兎も角、知らなかった他のクラスメイト達や宮廷貴族の雀共や騒ぎの後で来ていたイシュタル教皇や護衛の神殿騎士達が軒並み叫んだ。

 

「あの、しんおうというのは?」

 

 ルルアリア王妃が恐る恐る訊ねてくる。

 

「聞いた侭だが? 真なるってのと皇帝の皇と書いて真皇だ。古代ベルカの諸王が争った戦争時代にはまだ小さなアシュリアーナ公国だったけど、今や一〇〇にも及ぶ領国を持つ国。戦時中に真なる王として民衆が真王と呼んでいたからその侭、アシュリアーナ真王国と改号をしていたんだよ。そして面倒な戦争をバックレて無人世界っつっても解らないだろうが、それらを幾つか開拓してから領国と定めた頃にアシュリアーナ真皇国と改号をして僕も真皇と成った訳だ」

 

「バックレたとは?」

 

「逃げた」

 

「え?」

 

「終わらない戦争、そしてロスト・ロギアは疎か大量破壊兵器まで出して地上も空も汚し始めて、聖王を頭に据える聖王連合国も【聖王のゆりかご】を持ち出して、意味の無い殲滅戦争の様相を醸し出していたからな。だからといって僕は何処かの世界みたく別世界に助けを求めるとか恥知らずな真似はしたくなかったからな」

 

 その瞬間に気色ばむ貴族や神殿側。

 

「ほう、我らが恥知らずだと?」

 

 イシュタル教皇は怒りを抑えた顔ながら明らかに不機嫌な声音で訊いてきた。

 

「自分達の世界の戦争に他の世界の人間を巻き込む事は恥知らずだと思うがね」

 

「おい緒方、言い過ぎじゃないか?」

 

 永山パーティのリーダーたる永山重吾が少しばかり言い過ぎに思い嗜めてくる。

 

「言っておくが永山、この世界に於ける種族ってのは地球で云えば肌の色の違い程度だ。人間主義も云わば地球での白人主義みたいなものでしかないんだよ。つまりトータスは地球に見立てて言うと米国と日本で戦争が起き、日本が不利になったから助けてくれと勇者とかおだてて異世界の人間を喚び出したって話だぞ?」

 

『『『『なっ!?』』』』

 

 驚いたのは永山重吾だけでなく、パーティメンバーやイシュタル教皇もだ。

 

「これが異世界から顕れた魔族が世界征服に動いたから救いを求めて……ならまだ納得もしたけど、単に他国と長年の戦争で不利になったからと言って異世界人を喚ぶとか、莫迦じゃないのか?」

 

 確かにユートの言った通りなら戦争そのものが云わば自業自得、確かにいつか人間族は亡んだかも知れないが同じ世界の同じ大陸の人種差別的な戦争で勇者召喚は何かが違う。

 

 異世界からの侵略者が相手ならまだ勇者というのも納得は出来るが、単なる他国との戦争で何が勇者だと云うのであろうか?

 

 まぁ、魔人族の現在の魔王はアルヴヘイトだから侵略者エヒトルジュエの眷属だけど。

 

「何より、コイツらに僕らを還す意志なんざこれっぽっちも有りはしない」

 

「それはエヒトって神様が確約した訳じゃ無いって話か? だけど神様とこの人達の意志はまた別なんじゃないのか?」

 

「永山、人間族と魔人族が何年くらい戦争をしていると思う? 数百年――百年のスパンで続けているんだ。数の人間と質の魔人族って感じにだが、最近になって魔人族は魔物を操る術を得て数での不利を覆した。だから勇者召喚として五〇人にも満たない異世界人をエヒトが喚んだ。だけど僅か三〇人か其処らの人間、しかもメルド元騎士団長の五倍程度の能力が精々の勇者だ。さて、戦争へと参加して果たして何十年を闘えば魔人族を滅ぼして還して貰えるんだろうな?」

 

「な、何十……年……だと?」

 

 愕然となるのは永山重吾だけではなくて、彼のパーティに所属するメンバーも衝撃を受けた。

 

「僕が居たから彼方に連絡が出来て生きている、或いは死んでいる事の確認が向こうも取れている訳だが、日本の法律では七年間を行方不明になると戸籍上は死亡扱いになる。況んや、何十年間も行方不明になっていたらどうだろうな?」

 

「うっ!? うう……」

 

「仮に一年間、連絡不通の侭に行方不明だったとして親兄弟は寝る間も仕事すら惜しんで捜していたんじゃないか? 目の下を隈を浮かべて仕事も何度か休んで、最終的に七年間も音信不通だったら諦めて遺体の無い葬式をして、心の整理を付けて社会復帰をしなければならないんだ」

 

「それは……」

 

「そして仮に五〇年後にエヒトが地球に還してくれたとして、君らは六七歳で祖父母は今は生きていてもきっと亡くなっている。親が四十代ならば九十代の老人だろうよ」

 

「うっ!?」

 

「言い過ぎ? 本当に?」

 

「……」

 

 遂にはぐうの音も出なくなってしまった。

 

「人によっては早くに亡くなってしまっていてもおかしくない。八十代処か七十代でも死ぬ人間は居るんだからな」

 

 誰もが黙りこくる。

 

「況してや我が子を意味不明で理不尽な神隠しで喪った、そのストレスから早死にしたとしたならどうなんだろうな?」

 

「す、済まない……俺が浅慮だった」

 

「まぁ、天之河なら御都合解釈で『一年以内には勝てるから大丈夫、皆は()()無事に地球へ還して見せるさ!』……とか、キランと歯を光らせながら言い放つのが目に浮かぶな。そしてそれをお前らが無意味に信じて戦争に突入か?」

 

 それは実に悍ましい未来である。

 

「む、無意味に……」

 

「実際問題、お前らが戦争に賛成したのは莫迦――天之河に唆されたからだしな。実に滑稽な見世物ではあったよ? こちとら左腕を叩き斬ってまで危険度の高さをアピールしたのに、勝って当たり前で途中退場なんて考えもしなかったろうが? まぁ、実際には半数を越える死者が出たがな」

 

 イシュタル教皇ら教会勢が余り良い顔をしてはいないが、それは手駒たる勇者(笑)の勢力が闘いたいと思わないと困るからだ。

 

 だけど下手に茶々を入れては自分の首を絞めてしまうのも理解している。

 

 ちょっと前にイシュタル教皇は凄まじいまでのまるで魂を絞られるみたいな激痛に苦しんだが、その後の報告からウルの街で愛子先生の護衛に出していた神殿騎士の一人がユートを異端と弾劾をしたらしく、それがイシュタル教皇の契約に引っ掛かってしまったのだと気付いたから。

 

 全く恐るべき事だ。

 

「滑稽な……か。きっと私達もそう思われていたんでしょうね」

 

「うう、そうだよね」

 

「はうう……」

 

 雫と香織と鈴も他人事ではない。

 

「さて、クラスメイトに関してこれ以上は何も言わない。死にたければ勝手に死ねば良いからな、天之河と一緒に魔人族との戦争に行ってくれ」

 

 暗に自分は戦争に関わらないと言っているのに等しい科白、だけどユートが言う『真皇』という発言を信じるなら下手な事は言えない。

 

 天之河光輝なら言うのだろうが……

 

「アナザーな中村に関してだが、此方で預かるから教会は勿論だが王国にも渡さない」

 

「なっ! 彼女はハイリヒ王国に甚大な被害を齎らせたんですよ!?」

 

「だからどうした? クゼリー団長」

 

「どうしたって……」

 

 絶句するクゼリー・レイル騎士団長。

 

 彼女はメルド・ロギンスが騎士団長を降ろされた後、本来ならホセ・ランカイド副団長が繰り上がるのを拒否して副団長で在り続けるのを選び、更なる持ち上がりで騎士団長に就任している。

 

 至って普通の感性の持ち主だった。

 

 騎士とはいえ、筋肉質とかではない極々普通な美人さんだから困らせるのは本意ではないけど、恵里アナザーに関しては王国に預けるとか況してや教会に渡すなどする気は無い。

 

 それに本来の()()を明かしたからにはユートとしても手加減など有り得なかった。

 

「貴方は、いったいどれだけの騎士が死んだと思っているのですか!」

 

「指示を出して死霊化したのは中村アナザーだろうが、殺しの実行犯は小悪党のリーダーだったと聞いている。奴はくれてやるから煮るなり焼くなり好きにしろ」

 

 それなりに美少女な恵里アナザーは欲しいとも思うが、檜山大介に関しては単なる軽戦士でしかない上に努力もしない男など御呼びでは無い。

 

 ハジメの様なタイプなら友達にもなりたいが、小悪党グループは必要が全く無かった。

 

「ですが!」

 

「くどい! 抑々、中村アナザーに対して騎士が何を出来た? 斃したのも捕まえたのも僕だが、クゼリー・レイル団長は何をしていた?」

 

「そ、それは……」

 

 クゼリー・レイル騎士団長は団長になってからの日も浅くて、騎士としてもメルド・ロギンスやホセ・ランカイド副団長より若くて新米でこそないにせよ、実力は有れど精神的にはまだまだな処があったのは事実。

 

 元仲間の死霊騎士を斬れずにいた。

 

 これが単なる魔物や魔人族であれば獅子奮迅の活躍を魅せたかも知れない、だけど仲間を殺るには覚悟が足りなかったという訳である。

 

「それでも、どうしても中村アナザーを寄越せというなら本命から済ましてしまおうか」

 

 ユートの科白に王族も貴族も教会勢も意味が解らないのか首を傾げていた。

 

 そんな彼らに彼女らに不敵な笑みを浮かべながら睥睨をするユート、それを真正面から見つめるリリィは完全に堕ちた女の貌で頬を朱に染める。

 

 はっきり云えばユートから何かを要求されたら簡単に呑むであろう。

 

「僕が真皇だとは伝えたな?」

 

「それがどうしました?」

 

「仮にリリアーナ姫が行き成りヘルシャー帝国に召喚されて、奴隷も同然の扱いを受けた場合にはハイリヒ王国としてはどうする?」

 

「勿論、そうなれば戦争になります」

 

「そりゃ、そうだろうな。国の威信に懸けてでも戦争をするか……或いは(こうべ)を垂れて尻尾を振るか」

 

「何が言いたいのです?」

 

 ルルアリア王妃は現在のハイリヒ王国の代表としてユートの話を聞くが、先の問答から何と無くではあるが気付いてしまう。

 

 他の貴族や教会勢は気付かない。

 

「ならばこの真皇を勇者召喚などと称して拉致ったトータスの人間族、取り分けハイリヒ王国に対してアシュリアーナ真皇国が宣戦の布告をしても問題は無かろうなぁ!?」

 

 ニヤァと嗤うユートに背筋から流れる冷や汗、ルルアリア王妃は今更ながらそれを自覚した。

 

 ユートが右腕を軽く曲げた状態で拳を自分自身の目前に掲げ、右手の人差し指を伸ばした瞬間る空間に広がるのはモニタ。

 

 地球組は知っているから驚きも無かったけど、トータスの貴族やイシュタル教皇らは驚愕に目を見開くしかない。

 

〔アシュリアーナ真皇国が第一王妃リルベルト・ル・ビジュー・アシュリアーナです〕

 

 其処には若く美しい女性が映っていた。

 

「だ、第一王妃ですか?」

 

〔別に珍しくはないでしょう? 貴国がどうかは知りませんが我が国には三人の王妃が居ます〕

 

「側室ではないのですか?」

 

〔確かに側室も居ますね。ですけど我ら王妃達はその意味が多少ですが違います〕

 

「違う?」

 

〔抑々、王妃も側室も真皇の性欲を抑えるというのは共通しています。ですが基本的に通常の国に於ける後継者を成す事は求められてはいません。真皇ユートが子を成し難い体質なのもそうですが何より、不老であり殺されない限りは死滅しない真皇とその妃という関係から後継者が居なくとも問題はありません〕

 

「ふ、不老!?」

 

 最近では三四歳ともなれば御肌の曲がり角を気にする年頃なルルアリア王妃、不老とは女としては謂わば天啓にも近いパワーワードとなる。

 

 貴族達も年齢からしたらルルアリア王妃よりも上の者ばかり、小皺処か深く刻まれた年輪が気になる四十路や五十路ばかりの法衣貴族達。

 

 特に七十代であろうイシュタル教皇は鋭く目を光らせていたが、いずれにせよ男には恩恵に与れないから無意味だ!

 

〔私達、真皇ユートの王妃や側室は【閃姫】と称されます。そんな私達は不老で不滅に近いユートと歩むべく寿命が彼と共有化をされるのですよ。そしてユートに寿命は有りません〕

 

 ユートに老いの概念は無く、死にはしても魂が再び転生する形で復活をするから直に魂を滅されない限りは不滅、【閃姫】や萌衣奴はそれに合わせる形で不老に成っている。

 

 処女をユートに捧げてない【半閃姫】もそれは変わらない。

 

〔さて、四方山話しはこれくらいにしましょう。我らアシュリアーナ真皇国は真皇を拉致して戦争に送り込んだとして、貴国――ハイリヒ王国及びに聖教教会とヘルシャー帝国の人間族へ宣戦布告を致します。真皇ユートからもその旨は通達をされていますね?〕

 

 宣戦布告の理由としては真っ当であろう。

 

「ホッホッ。私は聖教教会の教皇を務めておりますイシュタル・ランゴバルトと申します」

 

〔そうですか。それで?〕

 

「宣戦布告とは言っても別の世界にいらっしゃるであれう王妃殿下が、果たしてこのトータスへとどうやって渡ると云うのですかな?」

 

〔ああ、成程。随分と余裕そうにしているのだと思ったらそんな事ですか。真皇ユートを起点にして既に此方ではそちらの世界の座標は掴んでいますから、後はアシュリアーナ機甲師団を向かわせるだけの簡単な御仕事ですよ〕

 

 イシュタル教皇が目を見開く。

 

「アシュリアーナ機甲師団ですかな?」

 

〔ええ、言っても理解が及ばないかも知れませんが時空管理局の次元航行艦に優るとも劣らない、そんな()()航行戦艦を師団クラスで保持していますからね〕

 

 次元の海を航る艦を時空管理局は保持するが、アシュリアーナ機甲師団が使うのは時空航行戦艦という、時空の壁を越えて次元の海を航る戦艦というカテゴリーとなる。

 

 つまり初めから平行世界を往く事を前提にして建造され、闘う事を前提に設計が成されている艦だから戦争も当然ながら視野に入っていた。

 

 時空管理局の艦は戦闘力が皆無とは云わないのだが、普段は外してさえいるアルカンシェルという主砲以外に大した武装は付いてない。

 

 ユートの機甲師団の戦艦は量産型にクリスマス級万能戦闘母艦――エア・クリスマスではない――を用い、旗艦には衛星型超弩級戦闘母艦といって惑星型超々弩級母艦・星帝ユニクロンのダウンジングサイズされた物を使っている。

 

 尚、弩級戦艦とは英国にて単一口径巨砲による武装と蒸気タービンによる高速で、大きな衝撃を齎らした【ドレッドノート】の事を指しており、弩級の『弩』はドレッドノートの『ド』の当て字でしかなく、現在では『大きい』という意味合いに使われる事が多い。

 

 因みに衛星型超弩級戦艦母艦はユニクロンではなく、サイバトロンの総司令官コンボイの姿へとトランスフォームをする。

 

 また、惑星モードで全長が四万kmのユニクロンに比べて衛星モードの此れは僅か? 四千kmでしかないからユニクロンよりは高速で宇宙やら次元の海を進むだろう。

 

 転移機能も装備しているし。

 

〔だから安心して待っていなさい。我らが真皇を拉致した報いは必ず受けて頂きますから〕

 

 リルベルトは空恐ろしい事を言う。

 

 召喚をしたのは『エヒト様』かも知れないし、ユートも自分の身分を明かしてはいなかったとはいえ、享受をしてやらかした事に違いは無いから『言い掛かり』とは言えたものではない。

 

「くっ、すぐに彼らを拘束しなさい!」

 

 異端云々以前に神敵と判断、イシュタル教皇はユートとその仲間を拘束する様に命じた。

 

「成程、先に僕らを拘束しようという訳だな? 宜しい……ならば戦争だ!」

 

 拘束するならするだけの力が要る。

 

「中村アナザー、使え」

 

 ユートが投げ渡したそれをキャッチ。

 

「使えるのかい、()()は?」

 

()は要らない」

 

「成程ね、ならば!」

 

 恵里アナザーはバッとそれを手にした腕を前へと突き出し……

 

「変身っ!」

 

 腰に装着されたVバックルーオルタナティブーのソケットへ装填しながら叫んだ。

 

 変身した姿は漆黒を基調としたアンダースーツにアーマー、幾らか金のラインがアクセントとして入ったオルタナティブ・ゼロ。

 

 コウロギ型ミラーモンスターのサイコローグと契約した仮面ライダーとは似て非なる存在(オルタナティブ)

 

「クスクス、オルタナティブ・ゼロとは皮肉が利いてるじゃないか」

 

《STRIKE VENT!》

 

 右腕に装着された鈍色のスラッシュバイザーに【ストライクベント】のカードをベントインし、中空からパッと顕れたスラッシュダガーを手にすると嗜いながら刃の部位を肩に乗せる。

 

 見た目は普通にオルタナティブ・ゼロだけど、身体のラインが何処か女性を思わせる姿だ。

 

 そして雫がサソード、香織がリューンに、鈴がタイガに、ユエがサガに、シアがザビーに、ティオがリュウガに、ミレディがバルカンに変身。

 

「ぼ、僕はどうしたら?」

 

「リクも人間サイズで変身しろ。殺せないならば殺す必要は無いから自分を護るんだ」

 

 ウルトラマンの手前だから殺戮はしない。

 

「わ、判った! ジーッとしてても、ドーにもならねーっ!」

 

 リクは腰のホルダからウルトラカプセルを取り出してスイッチを上げる。

 

 その絵柄はウルトラマンゼロ。

 

You go(融合)!」

 

 ウルトラマンゼロの叫びが聴こえた、そして次にウルトラの父のカプセル。

 

「I go!」

 

 スイッチを上げるとウルトラの父の叫び。

 

 カプセルを順次、黒いナックルにセットをしたらジードライザーで読み込みを開始する。

 

「Here we go!」

 

 スキャンされていくカプセル。

 

「守るぜ、希望!」

 

 右手に持つジードライザーを胸元に。

 

「はぁぁぁぁぁ、はっ!」

 

 トリガーを押し込む事で起動させた。

 

《FUSION RIZE!》

 

 勇者王ボイスが響き渡る。

 

 ジードライザー中央に填まるシリンダー内では赤と青の輝きがスパイラルしている、その内部で光る形状はまるで遺伝子の形状を表しているかの如くであった。

 

「ジーーィィィィィィィッドッッ!」

 

《ULTRAMAN ZERO!》

 

《ULTRA NO CHICHI!》

 

《ULTRAMAN GEED……MAGNIFICENT!》

 

 ウルトラマンジード・マグニフィセント……今回は人間サイズで変身だ。

 

 はっきり云うと教会の神殿騎士やハイリヒ王国の近衛騎士達、彼らが出来たのは仮面ライダーやウルトラマンに蹂躙される事だけ。

 

 だから決断する者も居る。

 

「ユートさん!」

 

「どうした、リリィ?」

 

「私は……ハイリヒ王国の第一王女リリアーナ・S・B・ハイリヒは個人的に投降致しますわ」

 

「了解、投降を認めよう」

 

 国として敗北を認めるのではなく個人としての投降、然しながらルルアリア王妃もランデル王子もイシュタル教皇もクゼリー・レイル騎士団長も驚愕して目を見開いてしまう。

 

「リリアーナ、どういう心算ですか?」

 

「あ、姉上!?」

 

「リリアーナ姫、異端にガハッ!? ぐ、神敵に屈するのですかな!?」

 

「姫様!」

 

 だけどリリィは涼しい顔だ。

 

「正直、勝てる見込みも無い戦をしても意味が有りませんし……この身を捧げた殿方と争うだなんて嫌ですもの」

 

 ポッと頬を染めて爆弾発言をする。

 

『『『『『ハァァァッ!?』』』』』

 

 まさか娘が、姉が、支配国の姫が、自国の姫が男と姦通してますとか驚くしかないだろう。

 

「リリアーナ! 貴女はヘルシャー帝国のバイアス・D・ヘルシャー皇太子殿下と実質的な婚約をしているのよ!?」

 

「正直に申しますと御母様、バイアス殿下に身を捧げるなんて悍ましいとしか思えませんわ」

 

 とんでもない暴言であり暴挙で、本来であれば王族の務めを果たさない事にユートは難色を示すであろうが、既にリリィはユートのモノであるからには文句などあろう筈が無い。

 

「ですので私は投降致します」

 

「という訳でリリィは戴いて行く!」

 

 両拳を打ち合わせると翠玉の如く輝きが迸り、ウルトラマンジードが大きく左右に広げるて虹色に輝く光子エネルギーがチャージされる。

 

 両目が発光して腕を逆L字型に構えると強力な光波熱線を照射した。

 

『ビッグバスタウェイ!』

 

 放たれた光波光線で壁に大穴が空いて、其処からユート達は離脱をしていく。

 

「く、逃げられたか!」

 

 悔しげなクゼリー・レイル騎士団長。

 

 しかもどさくさに紛れて永山パーティが居なくなり、リリィのメイドたるヘリーナとニアは疎かメルド・ロギンス元騎士団長まで居ない。

 

 誰も確保が叶わず力の差を見せ付けられただけの初戦、イシュタル教皇も含む誰もが苦々しい思いをさせられただけの(いくさ)だったと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「良かったのか、坂上?」

 

「ああ、構わねぇよ。光輝の奴は俺が説得をしてみるしな」

 

「救えるとは思えんがね」

 

「最後まで足掻いても駄目なら兎も角としてよ、それまでは諦めたくはねーんだ」

 

「判ったよ、好きにしろ」

 

 気絶中の天之河光輝は相変わらずトレーラー内に押し込み、取り敢えずの仲間になる事を決めた坂上龍太郎という図となる。

 

 当たり前の様に要らない子でしかないからと、檜山大介の事は城の方に置いてきた。

 

「これから愛子先生が居る筈のウルの町に行ってお前らを保護して貰う」

 

「わ、判った」

 

 永山パーティとどさくさに連れてきた清水幸利は愛子先生に預ける心算だ。

 

「これで完全にともいかないがハイリヒ王国からクラスの連中を離せたな」

 

 いちいちハイリヒ王国の王都に戻るのもそろそろ面倒臭いし、生き残りの全員を愛子先生に預けてしまった方が一ヶ所に集中されていて良い。

 

「それで、ユートさん」

 

「どうした? リリィ」

 

「これからの方針としてはどうなさるのか考えていらっしゃいますか?」

 

「既に戦端は開かれた。ハイリヒ王国とは戦争をする事になるな」

 

「そうですか」

 

 矢張り投降はしたものの、故郷との戦争というのは嬉しくないらしい。

 

「どうせ戦争は避けられんよ」

 

「それは貴方を……アシュリアーナ真皇国といいましたか? その真皇を攫ったからですね」

 

「そうだ。幾ら真皇が実は最強戦力で、その気になればハイリヒ王国は疎かヘルシャー帝国やフェアベルゲンやガーランド魔国が合力しても亡ぼせる力を持とうと、国の威信ってやつを考えるなら国として戦争をしなければならない。仮令、連中が僕の身分を知らなかったにしても……だ」

 

「……はい」

 

「最良はそうなる前に僕が自発的に帰る事だが、何しろバカ之河が事ある毎に邪魔をしてくれたからな。すっかり遅くなってしまったよ」

 

「つまり、半分は光輝さんの所為ですか」

 

「そうなるな」

 

 自発的に帰れば彼女――リルベルト・ル・ビジュー・アシュリアーナも態々、平行世界間で戦争をしたりはしなかっただろうけど。

 

 尚、アシュリアーナの姓は此方側で普通に付いていた公国時代からのものである。

 

 別に古代ベルカで王族が国の名前を背負う事は余り無かったのだが……

 

 実際にクラウスがシュトゥラの姓を名乗ったりはしていないし。

 

「まさか連中も()()処か生き残り全員が居なくなるとは思わなかったろうな」

 

「世界さえ滅ぼせる無能……ですか」

 

「奴らが僕やハジメを無能認定していたんだし、それで文句を言われる筋合いじゃないな」

 

「南雲さん……でしたね。彼は何処に?」

 

「ライセン大迷宮はクリアしたみたいだからな。ブルックの町に中村と宿に泊まっている」

 

「本物の恵里ですか?」

 

 其処に恵里アナザーが膨れっ面で言う。

 

「ボクが偽者みたいな言い方はしないで欲しい。平行世界とはいえボクも中村恵里だよ」

 

「あ、済みません」

 

 流石に悪いと思ったのか謝る。

 

「そういえば中村アナザーという呼び方もちょっとアレだよな」

 

「此方のボクを中村って呼んでいるんならボクは恵里で良くない?」

 

「それが妥当か」

 

 或いは恵里が近くに居る間は偽名を使うか? といった処か。

 

 取り敢えず此方の世界の恵里はその侭で良いとして、表記上だと恵里アナザーは基本的に恵里"で往くのが決まった瞬間でもある。

 

「で、ボクの扱いはどうなるのさ?」

 

「萌衣奴」

 

「メイド?」

 

「言ったろ? 萌える衣を纏う奴隷」

 

「つまり役割は性奴隷みたいな?」

 

「基本的にやるのは僕の世話係。御早うから御休みまでな」

 

「料理とか苦手なんだけどな」

 

「嫌でも覚えて貰う。ヘリーナやニアに教えて貰うんだね」

 

「はぁ、判ったよ」

 

 流石に性行為だけが仕事ではない。

 

「それと、中村には仮面ライダー王蛇のデッキを渡しているから恵里にはオルタナティブのデッキを渡した訳だが、ある程度は使い熟せる様になって貰うからな」

 

「了解したよ」

 

 疑似ライダーと云えるオルタナティブ・ゼロの訓練も恵里"に追加された。

 

「あの、ユートさん」

 

「何だ?」

 

「戦争に勝つのは既定事項としまして、終わった後で御母様とランデルはどうなりますか!」

 

「普通なら旧体制のトップの血は絶やすべきだ。まぁ、とはいえリリィが生きているから血は残ってしまうけどな」

 

「絶やす……」

 

 青褪めるリリィ。

 

「どうにかなりませんか?」

 

「ルルアリア王妃にはそうだな、まだ三四歳と若いんだから情婦にでもなって貰えば良いだろう」

 

「じょ、情婦……」

 

 青褪めていたのが一転して紅くなった。

 

「母親だけあってリリィとはよく似ているしな。そうだな……先ずはリリィとの母娘丼をたっぷりと味わって、それからエリヒドに抱かれる前にまで年齢を遡らせて、リリィと同じくらいにしてから処女を戴かせて貰おうか」

 

「……え? そんな事まで出来るのですか?」

 

「可能だ。実際に五九歳だったプレシア・テスタロッサを結婚前までに若返らせたし、四葉真夜も三〇年くらい前の変な実験やら何やらで子を成せない身体にされる前にまで戻したしな」

 

 四葉真夜は一二歳くらいになったけど。

 

 どちらも処女にまで戻されてから改めて彼女らはその処女をユートに散らされた訳である。

 

 勿論、肉体が戻ったからといって精神的に視れば初めてな訳では無いのだが……

 

「ルルアリアは王家の血筋じゃないからそれでも良いけど、さてランデルはどうしたもんかね? 敵性国家の王太子というか餓鬼とはいえ王と言っても過言じゃないからな。例えば斬首くらいしないといけなくないか?」

 

「ざ、ざん……」

 

 気を失いたくなるワード。

 

「はぁ、去勢した上での蟄居で許そう」

 

「去勢? 蟄居?」

 

 どうやら謹慎は兎も角として、去勢や蟄居という概念はこのトータスには無かった模様。

 

「去勢は要するに男のモノを切り落とすんだよ。これで奴の遺伝子が拡散する事は無くなるから。それから蟄居ってのは一室に閉じ込める刑罰だ」

 

「そ、そうですか……」

 

 譲歩をされたのだからこれ以上は我侭であると理解してリリィは口を閉じた。

 

 去勢されれば男としては死んだも同然であり、蟄居させれば漢女化はしないであろう。

 

 何故だかリクを含む男共がJr.を庇っていたし、Jr.を切られては将来的に困るからかなのか辻 綾子が野村健太郎の前に然り気無く出て、彼のJr.を護ろうとかしてきていたりする。

 

「僕はどうしようか?」

 

「リク、ゼロはまだ来なさそうか?」

 

「うん、ちっとも音沙汰が無い」

 

「だったら特に戦争に参加する必要は無いから、ブルック辺りで冒険者を続けるのはどうだ?」

 

「良いの? 僕のジードの力を貸さなくて」

 

「要らん要らん。抑々、リルが衛星型超弩級戦闘母艦を持ってきた時点で無人機の戦力が数十万なり有るからな」

 

 手をパタパタ振りながら笑う。

 

 四千キロというユニクロンの一〇分の一程度の全長、当然ながら艦や機体が戦力として収用がされている上に戦闘力も居住性も抜群な艦。

 

 無人機はクストースやジンライなどを戦力化、他にもカリオンやアステリオンなどを量産化したのを配備、ゲシュペンストMkーⅡなども戦力として置いているから何も問題は無かったと云う。

 

 

.




 一方的理不尽に対して一方的理不尽を突き付けた形になります。


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる
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