ありふれた職業で世界最強【魔を滅する転生業】   作:月乃杜

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 半端な所で区切る羽目に……





第95話:ありふれた帝国城へ

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 大空を舞うオプティマスプライム。

 

 アタッチメントによりその内部ではなく外部、トレーラー部位の上部に屋上みたいな広場を設置しており、然しもの天之河光輝も其処に在る事を一応だけど許可されていた。

 

 フェアベルゲンでは碌に出られなかったけど、亜人族に量産型ライダーを与えた事は知っているからか、矢張りというべきかいちいち口を出してくるのが鬱陶しい。

 

「どうして亜人族に人間との戦争を促すマネをしたんだ! 答えろ、緒方!」

 

「坂上、こいつを叩き落として良いか?」

 

 無視する様に坂上龍太郎に問う。

 

「無視するな! 答えろ!」

 

「ギャーギャーギャーギャーと喧しい! お前は自分が何の為にトータスに喚ばれたのかすら忘れたのかよ!?」

 

「な、何だと!」

 

「戦争だ! 敵と闘い、敵を殺して、命も財産も全てを奪う盗賊にも似た国家事業の為に……だ! そしてそれを肯定して自ら参戦を申し出た天之河が戦争の忌避とか何の冗句だろうな?」

 

「なっ! 違う、俺は……」

 

《皆! 今ここでごねて、イシュタルさんに文句を言っても始まらない。彼にだってこればかりはどうしようもないんだぞ。俺は……俺は戦おうと思っている》

 

「っ!?」

 

 それは録音が成された天之河光輝の声であり、一般的に自分で聴く自身の声は別の声に聴こえる訳だが、流石に愚かではあっても莫迦ではないから自分が言った科白は覚えていたらしい。

 

「これを聴いても尚、自分には覚えが無いとでも宣う心算か? 証拠が在るからには天之河完治でさえお前の弁護は出来んよ。精々が状況判断を誤る状態での言葉だとしてどれだけ減刑するかだ」

 

「それは……」

 

「幾ら御都合解釈万歳原理主義者な天之河でも、まさか『こんな科白を言った覚えなんか無い』とかほざいたりはしないだろう? するなら今度はサーチャーの映像を出してやるぞ」

 

「っ! 隠し撮りとか犯罪だぞ!」

 

「法の執行者たる時空管理局が、本来は管理外な世界にサーチャーバラ撒いて映像を記録しているんだ。つまり法に抵触しないんだろうよ」

 

 注:します。

 

「時空管理局? 何だそれは? 意味が判らない事を言って煙に巻くのは止めろ!」

 

「無知とは罪か。ま、どうでも良いな」

 

「どうでも良いとは何だ! 緒方、俺とちゃんと会話をしろ!」

 

 普段からまともな対話能力に欠ける癖に笑わせてくれると嘲笑しつつ場を離れた。

 

 未だにギャーギャーと騒いでユエ達は迷惑そうに顔を顰めるが、香織と雫と鈴は余りにもいつも通りな行動に頭を抱えてしまう。

 

「リリィ」

 

「……ユートさん。昨夜は御楽しみでしたね」

 

 プクッと膨れっ面となるリリィは可愛らしく、原典ではハジメが随分と雑に扱っていたらしいと聞いており、原典のハジメはどうしてそんな煩雑な扱いをしたのか真面目に首を傾げたい。

 

「今、この場でイチャ付くか?」

 

「え? こんな誰もが見れる場所ではちょっと。光輝さんに見られたくありませんし……」

 

 あられもない姿はユートにだけ見せたいから、好きでも無い天之河光輝に見られたくないのだとリリィははっきり言った。

 

「僕もリリィの可愛らしい姿を選りにも選って、天之河なんぞに見せたくは無いな」

 

 赤面するリリィの唇に自らの唇を重ねる。

 

 その際には遮光して周りから見えない様にしてあったから、件の可愛らしいリリィの姿は天之河光輝は疎か誰にも見られていない。

 

 ヘリーナとニアが真っ赤になりながら視ているけど――メイドは壁です。

 

「はぁ……」

 

 赤い顔で溜息を吐くリリィはモゾモゾとドレスのスカート内部で内股になる。

 

(キスで少し濡れてしまいましたわ)

 

 肢体が先を期待して望んでいたのか、ユートのモノを受け容れ易くするべく本能が愛液を溢れさせた様だった。

 

「あの……」

 

「寝室行きが御要望かな?」

 

「ちがっ……いませんが、違います!」

 

 心情的には行きたいけど用件は別。

 

「えとですね、既にハイリヒ王国はユートさんのモノですし御門違いは判るのですが……」

 

「そうだな。統治者はアインハルトだけど」

 

「それでも尚、私が代表としてヘルシャー帝国へ赴くのは何故でしょうか?」

 

「ルルアリアは代表足り得ないし、ランデルだともう面影を残した別人だからな。前の王族としてリリィが行くのは仕方が無いだろう」

 

「それは……」

 

 ルルアリアは前ハイリヒ王国の王妃だったが、今やユートの性欲解消用の愛人でしかない状態な上に、ユートの念能力の強烈な快感で暫くは外に出せないくらいおバカになっている。

 

 暫く時を置けば元に戻りつつ自己嫌悪に陥るのだろうが、今はベッドで色々と垂れ流しながらもメイドに世話をされていた。

 

 ランデルはランデルで無理矢理に女体化された挙げ句に姉からレズられ、ユートのモノを捩じ込まれて童貞を喪う事無く処女を喪った衝撃が強かったらしく、現在は隔離邸で見張り番をさせられている忠誠厚い元騎士の肉便器と化している。

 

 とはいえ、快感を得られず孕まないランデルは既に目は死んで濁り切った状態であったからか、元騎士の汚ならしいモノを言われるが侭に扱いているのだとか。

 

 反応は無いけど孕む心配無くヤれるランデルは格好の性玩具(ダッ○ワイフ)だった。

 

 つまり動けるのはリリィのみ。

 

 リリィとしては家族――母親や元弟(いもうと)の惨状に思う処を持つ程にユートとの性的な心情的な繋がりは浅くなかったからか、こうして普通に話せる処かキスをされて悦んでいるのだから()()()()深い。

 

「ヘルシャー帝国はまだ政権交代を知らないし、度肝を抜くイベントにしつやる心算だ。リリィは僕に必要だから綺麗にしていれば良いよ」

 

「必要……はい」

 

 必要と言われたリリィは嬉しさから表情を綻ぼしてしまった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 魔力による念講座。

 

 ミナやラナやネア……実際に念に目覚めていたのはミナだけだが、この三人が念を得た事に矢張り全員が注視をしていたらしい。

 

 シアのみならず永山重吾パーティは勿論だが、ユエ達も興味が尽きないといった感じだった。

 

「だから、念はオーラという氣力に属するエネルギーを使っているから魔力とは衝突してしまう。君らが魔力に目覚めてしまう前ならまだ兎も角、今は魔力が邪魔をして扱い難くなっているんだ」

 

 使えない訳ではないのはユートを見れば判る、然しながら基本的にはどちらかしか扱えないなら慣れた魔力を使うべき、然もないと下手に氣力を揮えてしまうと寧ろ弱体化を余儀無くされる。

 

 それでは本末転倒でしかない。

 

 面倒だったし抑々、すぐに出来る訳でもないから『咸卦法』を使った咸卦の氣であれば念能力が凄まじいパフォーマンスで扱えるとは、絶対に言う心算なんか無かった。

 

 魔力覚醒者が氣力を同時に扱える術としては、単純なパワーアップとしても最高だけど。

 

 然し咸卦法が存在した【魔法先生ネギま!】な世界には念という概念や念能力なんて存在せず、【HUNTER×HUNTER】な世界には咸卦法が存在していないから本来ならば共存自体が有り得ない。

 

 正しくどちらも識る転生者だからこそ可能となったコラボレーション。

 

「なぁ、魔力と氣ならかん……ごふぁっ!?」

 

「野村君っっ!?」

 

 要らん事を宣いそうな野村建太郎に遠当てによる鳩尾(ダイレクト)アタック。

 

 吹っ飛ぶ野村建太郎に叫ぶ辻 綾子の図。

 

「ゲホッ、何なんだよ……って緒方?」

 

「野村、お前は何かこの場で言いたい事でも有ったのかな、かな?」

 

「……白崎っぽいぞ? いやだから、かん……」

 

 ギュルギュルギュルギュルギュル!

 

 ピンクの拳がグルグルと回転しているのが見えた野村建太郎は押し黙る。

 

「そ、その右手はいったい……」

 

「【破壊神の右拳(ブロークンマグナム)】、僕の念能力の一つだよ」

 

「ブ、ブロークンマグナム? 拳だけが回転してるって事はジェネシックガオガイガーの!?」

 

 同じガオガイガーのブロークンマグナムでも、初期とジェネシックでは威力が段違い。

 

 ガオガイガーはファントムリングで周囲を抉って貫通力に換えたが、ジェネシックはそんな物が無くてもソール11遊星主すら貫通させる。

 

 見た目の違いは腕を飛ばすロケットパンチ方式なのが初期ガオガイガー、ゲッターロボ號みたいなナックルボンバー方式がジェネシックだ。

 

 ユートの【破壊神の右拳】はジェネシックガオガイガーにファイナルフュージョンしなくても扱える様にと、放出系と操作系と強化系による複合型な念能力として構築をしてある。

 

 廻っているのはオーラで形作られた拳であり、当たり前だけどユートの拳が回転しているという訳では決して無い。

 

「貫通力は高いんだ」

 

「そ、そっか……」

 

「で、何か言いたいのかな、かな?」

 

「何も有りません、Sir!」

 

「宜しい、気絶していると良い」

 

「グフッ!」

 

 ユートは【破壊神の右拳】を解除して手刀により野村建太郎の意識を落とす。

 

「辻!」

 

「は、はい!?」

 

 一連の行動を視ていた辻 綾子はガタガタブルブルと震えていた。

 

「野村は御疲れの様子だから寝室まで連れて行ってやると良い」

 

「は、はい!」

 

「そんでその侭、野村を喰っちゃえ」

 

「喰いません!」

 

 羞恥心から真っ赤になった辻 綾子が声のあらん限りを尽くして叫んだのだと云う。

 

「なぁ、おい! 在るんじゃないのか? さっき野村が言い掛けた魔力とき……」

 

「【破壊神の右拳(ブロークンマグナム)】ッッ!」

 

「ブギャラッ!?」

 

 それは正にドパンッ! という擬音であろう、天之河光輝の腹が回転するピンクの拳に貫かれて口から血を吐きながら吹き飛んだ。

 

「ギャアアアッ! 光輝がぁぁぁぁっ!」

 

 余りにも余りな光景に坂上龍太郎がムンクの如く表情で叫ぶ。

 

「辻!」

 

「ヒィィッ! な、何?」

 

「序でに天之河の治療もしとけ」

 

「は、はいぃぃっ!」

 

 躊躇いも無く天之河光輝の腹を貫いた非情さにもう涙目である。

 

「永山」

 

「な、何だ?」

 

「『雉も鳴かずば撃たれまい』って言葉は知っているよな?」

 

「建太郎が心配だから降りてくる」

 

 永山重吾は賢明だった。

 

 念能力は誰でも扱えるが故に使う者は厳選するべきと、心源流では教えている訳だけどユートもそれには賛同をしている。

 

 況してや敵対心を持つ莫迦に教える訳も無い。

 

「えっと……ドパンはされないわよね?」

 

「しないしない」

 

 先程の天之河光輝の惨劇を見てから少し腰が引けてしまった雫。

 

「要するに咸卦法を使えると可成り良くなるっぽいなら、違うエネルギーとはいえ魔力でも似た事が出来たりするわよね?」

 

「ああ、魔力と氣力を合成昇華した咸卦の氣でなら高い精度の念を使えるだろうな。当然なんだけど魔力と氣力が衝突をするからには高度な技術を必要とする。シアに行き成りやれと言っても出来やしないだろう?」

 

 シアに問うと……

 

「確かに無理ですぅ」

 

 頷きながら潔く認めた。

 

「そしてこれは別の事実を示唆している」

 

「魔力でも念は使えるのね?」

 

 確信を込めた雫の言葉に頷くユート。

 

「誰もやろうとはしないから事例が無かったってだけで、その気になれば氣力だろうが魔力だろうが霊力だろうが念力だろうが『念』と呼ばれている技術は扱える」

 

 事実として何処ぞの正義の味方の成れの果ては魔力にて具現化系の力を使う。

 

 視たモノ――刀剣という属性に限られてくるけど情報の全てを読み取り、己れの内在的念空間(インナースペース)へと模倣して記録していく念能力――【無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)】として成立をさせていたではないか。

 

 魔術使い故に術師らしい詠唱をしてはいたが、それも()()なのだと考えればユートにも理解が及ぶ。

 

 ユートの念能力――【勇者王誕生(ガオガイガー)】や【勇者王新生(ガオファイガー)】や【破壊神の降臨(ジェネシックドライブ)】が必ずや合体バンクを行わなければならない様に。

 

「どちらにせよ、シアは強化系だろうから魔力でやろうと氣力でやろうと結果は変わらんだろう。その身の内に自らのエネルギーを弾けさせて大幅な強化を施す念能力とさえ云えるものだよ」

 

「私がしているのが既に念能力ですか……」

 

「現に幻影旅団のウボゥーギンの【超破壊拳(ビッグバンインパクト)】なんて正しく強化系の極致みたいな右ストレートパンチだからな」

 

「右ストレートパンチですぅ?」

 

「威力はクレーターを穿つレベルだから喰らえば只じゃ済まない、その癖に大した制約は無いみたいだし溜めも碌に必要としていないからな」

 

「それは……凄いんですねぇ」

 

「強化系の強味、それが必殺技とか特殊技なんかを態々創らなくても構わない処だからね。近付いて殴ればそれが即ち必殺技。ベルカの旧い騎士も近付いて斬れが普通だったしな」

 

 そういう意味では、ゴンが変化系で斬撃だったり放出系で砲撃を創ったのはどうか? 役には立っていたからきっと問題は無いのだろう。

 

「リリカルなのは……よね、ベルカの騎士って」

 

「そうだな、シグナム辺りがよく言っているから忘れたくても忘れられなくてね」

 

「シグナム……さん……ね」

 

 矢張り未だ自分の世界観やら何やらはトラウマだったらしく、雫だけではなく香織や鈴までもが微妙な表情を隠せずに居た。

 

「そういえばシグナム……さんって美女で胸が大きくてポニーテールよね」

 

「ジト目は好物じゃないんだがな」

 

 嘗て違う世界で地球からの転生者だった義弟は眼鏡とジト目と強気と赤面とツンデレが好きで、それを初めての彼女に全てを見付けてカミングアウトされたのは良い想い出ではあるのだけれど、ユート自身は別にジト目をされて興奮をしたりはしないのだ。

 

 ユートにも性癖は有るから彼を責めるのも違うと思って聞いてやったりもしたし、初めての彼女が出来た――とはいえ出逢って間もない関係だが――時に自分の()()()()()を教えていたから割かし盛り上がったのも確か。

 

 尚、ユートが自分で知り得る限りで持つ性癖は『ポニーテール』と『エルフ』と『ケモミミ』と『お姉さん』と『未亡人』、種族的な意味合いで地球に普通は存在しないけどポニーテール好きだから義妹のユーキを始めとして実妹だった白亜や前々世で婚約者だったらしい狼摩白夜、その他の緒方家分家筋で緒方優斗世代の長女達がポニーテールにしていたし、なのはやはやてやフェイトやすずかやアリサといった娘らも軒並みだったし、次世代なStrikeSの娘らとかVivid世代からも普通にポニーテールが普及をしている。

 

 まぁ、基本的に『お姉さん』はあの世界でだと誰も不可能な性癖だし、まさか性癖を満たす為に死に掛けた老人と結婚して『未亡人』になる訳にもいかないし、種族はどうやっても埋まる筈がないから髪型で好まれるならするべきだろうというのが彼女らの言い分だった。

 

 因みにこの時に紹介した彼女は狐耳を持ってる立派な『ケモミミ』と姉属性な『お姉さん』で、未婚だから『未亡人』に成り得ないし『エルフ』は獣人という種族的に不可能、二人切りの時には甘えモードで長い金髪をポニーテールに結わい付けていた辺り、どうやらユートがあの頃は未だに自らが知らなかった『ポニーテール』好きを理解していたらしい。

 

「おっぱいとかは好きじゃないの?」

 

「別に一誠じゃあるまいし拘りは無いな」

 

「いっせい?」

 

「兵藤一誠」

 

 大きくても小さくてもおっぱいはおっぱいと、『おっぱいに貴賤無し』と叫んだ少年である。

 

「ああ、【ハイスクールD×D】の主人公ね」

 

 ある意味で拘りが無いというよりユートと変わらないのだろう、ユートは大きければ大きいで、小さければ小さいで愉しめるから拘らない。

 

「ま、男のザッフィは論外だとしてヴィータは謂わばちっぱいだが、シグナムとシャマルは普通に巨乳クラス()()()からな」

 

()()()からな……って、まるで視た事があるみたいな言い方よね」

 

「あるからな」

 

「ああ……そ、そう……なんだ……」

 

 明け透けに言われて雫は呆然、香織と鈴は苦笑いを浮かべるしかない。

 

「やっぱ、私達みたいにヤったの?」

 

 ピクリと全員の耳がダンボの如く。

 

「プログラム体だから元より子供は作れない躰、永き悠久の刻を在り続けて今現在の主はやてが死を迎えれば終わる……筈だった」

 

「筈だった?」

 

「僕が【闇の書】の呪いから救ったからかな? はやては普通に僕に懐いちゃったからな」

 

「それが? 要するに八神はやてさんが優斗に抱かれましたって話よね? 私達と同じく【閃姫】ってのに成る契約をした」

 

「そうだが……忘れたか? 【閃姫】契約をしたら幾つか特典が付くのを」

 

「ステータス値アップや巨大なエネルギータンクの使用とかよね? 運が良ければ【輝威】っていう特殊な能力も得られる場合があると聞いたわ」

 

 正確に云うならばユートに抱かれて一段階目のアップデートを果たし、【閃姫】契約を果たす事で二段階目のアップデートが成されるという。

 

 【閃姫】化されるアップデートに伴いユートの中の専用――ユートにすら使えない――エネルギータンクで通称【渾沌核】から溢れるそれを扱い、自らが使うエネルギーに合わせて取り出せる様になるという訳だ。

 

 その量足るや巨大な恒星が数個分にも及ぶ上、使ったエネルギーは一晩もすればまた溜まる。

 

 それだけのエネルギーを扱えるだけの肉体へとアップデートをするのは即ち必須事項だった。

 

 種族から掛け離れる訳では無いから医療機関で見せてもおかしな部位は見付からないだけだし、アップデートに伴って寿命がユートに紐付けされるからつまり不老、死なない訳では決して無いけどユートの意志で復活も可能となる。

 

 また、特殊な【輝威(トゥインクル)】という能力が発現される場合も極稀にだけどあった。

 

 但し【閃姫】への正式なアップデートをするにはユートに処女膜を貫かれる儀式が必須であり、つまりは処女でないと完全な【閃姫】にする事はユートがどう思おうが不可能。

 

 まぁ、これに関しては裏技を発見しているから今後は相手との話し合いも必要となるだろうが、半端に【閃姫】とする【半閃姫】になる者は基本的に居なくなるであろう。

 

「【閃姫】の不老化と寿命の半永久化によって、はやては人間としての終わりを迎えるのはちょっと無理になってね。つまりプログラム体としては終われないヴォルケンズも在り続けてしまう」

 

「ああ、そうなるわよね……」

 

 雫は何を言いたいか理解したらしい。

 

「あれ? でもさ、ゆう君」

 

「どうした、香織?」

 

「確かヴォルケンリッターって壊れ掛けているとか話が無かった? 【StrikeS】の噺では主からのリカバリーが効かなくなりつつあるって言っていたよね? それでヴィータちゃんが『人間みたいに終われる』みたいに言ってなかった?」

 

「言っていたな。だけどそれは主はやてにもどうする事も出来ない根幹システムの欠落か何かで、それが補われたらリカバリー自体は効かなくなってもプログラムが根本的に壊れたりしない類いのものだったらどうだ?」

 

「……?」

 

 よく解らないらしく香織は小首を傾げた。

 

「プログラム体を構成する某か、恐らくコア辺りにバグが生じた為にはやてからのリカバリーを受け難くなっていた。元よりプログラムの書き換えを歴代の主共が長年に亘りやりまくってバグっていた【闇の書】だったのを、正しい姿を知らない侭で無理矢理に正常化させた【夜天の魔導書】、何処かに欠落が生じていても全くおかしくない。況してや更にその奥には【紫天の書】なんていうロストロギアを内包、それを覆う為に後付けされた『ナハト・ヴァール』を適当にぶっ壊した訳だからな」

 

 しかもユートの居た世界線では這い寄る混沌なニャル子が、再誕世界から掠め盗ったアプスなる地下水脈の闇を擬神化した神を同じ闇属性だからと融合してくれたから……さぁ大変。

 

 まぁ、適当に壊したとかヴォルケンリッターがキレて発狂してもおかしくないけど。

 

「兎に角、はやてが不老長生を得てしまったからにはヴォルケンリッターも終わりを迎えない訳だから、つまりは責任を取れと言い寄られたんだよあの三人――シグナムとヴィータとシャマルに」

 

「ザフィーラは?」

 

「我関せずと仔犬モードで寝てたな」

 

 とはいえ、ガチムキなザッフィに迫られたなら【破壊神の右拳】を喰らわせた自信があったし、何ならクルダ流交殺法『影門』最源流死殺技【神音(カノン)】にて原子分解レベルに消し飛ばすとか。

 

 ユートは他人が自分と無関係にBLをする分には寛容だが、自分自身がBLをヤる気には半分くらいはならないのだから。

 

 半分? というのは可愛い男の娘を女の子へと換えて喰うくらいはやらかしたし、付いていても九〇%が女の子な両性具有なら何人か喰ってしまっていた為にであるし、ユーキやカルトみたいに前世が男なTS転生な場合もあった。

 

 少なくともガチムキとはヤらない。

 

「抱くのは愉しかったから良いけどね」

 

 三人共が違ったバリエーション、クーデレを装ってデレデレになるナイスバディなポニーテールお姉さん、ほんわか雰囲気の下はシグナム程ではないが充分な肢体な女医さん的なポジション、ミニマムでツンデレ発言な矢張りデレデレ少女と更には主なはやても加わるのだから、美味しいとしか最早言い様が無かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ヘルシャー帝国の帝城……その大門が目前にまで見える位置にまで歩いてきた一行を帝国の門番をしている兵士が見付ける。

 

「停まれいっ! 此処は偉大なるガハラド・D・ヘルシャー陛下が居わす帝城なるぞ! 何者であるかを速やかに名乗れ!」

 

 当然ながら槍が斜め十字に組まれて阻まれてしまうし、矢張り当然だとしか思えない科白でその正体を問われてしまった。

 

 リリィがサッと一歩を踏み出すと兵士の二人は雰囲気や美貌に見惚れてしまう。

 

 綺羅綺羅しつつ厳かな雰囲気すらあるドレスを着熟す少女、明らかに単なる兵士に過ぎないだろう二人をぶっちぎる身分だろう事は判る。

 

「ハイリヒ王国のリリアーナ・S・B・ハイリヒと申します。事前に先触れは出してあった筈なのですが……」

 

「リリアーナ姫!?」

 

 それは高々、門番風情が話せる相手では決して無かったのだと云う。

 

.




 漸く帝国のハウリアの変が……


勇者(笑)な天之河の最後について

  • 原作通り全てが終わって覚醒
  • ラストバトル前に覚醒
  • いっそ死亡する
  • 取って付けた適当なヒロインと結ばれる
  • 性犯罪者となる

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