僕とキリトとSAO   作:MUUK

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クドムツ第二話です!

いやあ、二人の掛け合いを書くのが楽しすぎます!

では、ゆったりとした第二十八話、お楽しみ下さい!


第二十八話「思い出の結晶ーⅡ」

しかし、本当に信じられない。こんなに感情表現が豊かで、自然な会話をそつなくこなすこの子が、NPCだなんて。

レムちゃんに話し掛け、おばあちゃんちまで届けるという約束、という名のフラグを立てたことで、クエスト開始のポップアップウィンドウが現れた。だから、この子がNPCなのは間違いないのだろう。でもなあ……信じられないよなあ……。

 

「ん?どうしたんですか、お姉ちゃん?わたしの顔に何か付いてますか?」

「いやいや、何でもないよ!気にしないで!」

 

しっかし可愛らしいなあ。NPCなんだから、当たり前か。瞳は、空色って言えるぐらい澄んでてくりくりだし、髪は優子ぐらいの長さだけど、伸ばさないのが勿体無いぐらいさらさらの金髪だし。顔立ちは冗談みたいに整ってるし。肌は純白に透き通っていて、まるで……。そう、まるで死人みたいだ。

いやいやいやいや、ボクは何を言ってるんだ。白の例えなんて他にいくらでもあるはずなのに。なんでよりにもよって、死人なんて……。

そのとき、ムッツリーニ君が、至極真面目な視線でレムちゃんを舐めるように見て言った。

 

「……ふむ、アリだな」

 

テンションの違いに愕然とした。

 

「な、なに言ってるのさ、ムッツリーニ君!ダメだよ、こんな小さい子に手を出しちゃ!」

「……大丈夫。撮影するだけだ」

「それがダメだって言ってるんだよ!」

 

レムちゃんが、悪意を知らない小動物のように首を傾げる。きっと、今自分が置かれている危険な立場が解っていないのだろう。それを見ていると、何故か守らなくちゃならない気がしてくるから不思議だ。

 

「……ともかく、一旦ギルドホームに帰ろう」

「だから、いきなり正論ぶち込まないでよ!っていうか、さっきまでの己の発言を省みてよ!」

「……五月蝿いぞ、リーベ」

「お兄ちゃんの言う通りです。さっきから、何を一人でトチ狂ってるんですか?」

「何?何なの?ボクが悪いの?」

 

そうか。そういえば、民主主義って多数決で悪が決められるんだったっけ。デスゲームの中で、現実世界の慣習がまかり通ることに、若干の憤りを感じつつ、ボク達は帰路についた。

 

「ねえ、お姉ちゃん。その髪飾りって、何のお花なんですか?」

「え、これ?うーん、何のお花とか、気にせず買っちゃったからなあ、なんだろう。知ってる、ムッツリお兄ちゃん?」

 

ちょっとした反撃の意味も込めて、冗談めかして彼の名前を呼んでみる。

 

「……俺が知ってるとでも?」

「ですよねー」

 

まあ、予想は出来たよ。エロの知識以外を、ムッツリーニ君が保持してるとも思えないし。

 

「名前は解らないんですか……。でも、可愛いお花ですね!」

「うん、ボクもそう思って買ったんだ」

 

そこでボクは、レムちゃんの物欲しそうな目線に気がついた。

なるほど、そういう腹か。ついさっき買ったところなんだけどなあ。まあいっか。

若葉色の髪から、真紅の華を取り外し、少女に差し出す。

 

「はい、あげる」

「い、いいんですか?」

「うん、全然いいよ。それに、ボクよりレムちゃんの方が似合いそうだしね」

「それはそうでしょうね」

 

うわ、ムカつく。でも、事実そうなんだから仕方ない。

レムちゃんは、花飾りを両手で掲げ、目を輝かしている。そして、目を細めながら、真っ白な頬で頬ずりしたり、紅に染まる細い花弁を一通り弄んだ後、満足げに黄金色の髪に飾りを添えた。

 

「ありがとうございますっ!」

 

太陽の数倍は眩しいのではないかと思える笑みでレムちゃんは言った。なんだ、年相応の反応も出来るじゃないか。いやあ、本当に可愛らしい。お人形さんみたいという表現が、こんなに似合う女の子が、現実世界にいるだろうか?いや、いない。

半ば以上無意識に、ボクはレムの頭を撫でていた。レムちゃんは、気持ち良さそうに目を細めると、撫で終わったと同時に、ボクの右手を、小さく華奢な左手で掴み、反対の手でムッツリーニ君の手を握って、意気揚々と歩を進めながら言った。

 

「さっ!お姉ちゃんとお兄ちゃんのギルドホームってとこに帰りましょ!ところで、ギルドホームってなんなんです?」

「うーん、簡単に言うと、仲間で集まるためのおうちかな」

「仲間……」

 

何か感じるところがあるのか、感情の見えない声で、レムちゃんがそう呟いた。

そして、パッと明るい表情になったかと思うと、勢いよく無邪気な声で言った。

 

「わたしも、仲間になりたいです!」

「うん、すぐになれるよ。ボク達の仲間は、みんな優しいしね」

「やったあー!」

 

天真爛漫を体現したかのように言うと、レムちゃんは、ぴょんぴょんとジャンプし始めた。それを、ボクとムッツリーニ君が、手を引っ張って補助してあげる。

ふと、この状況をはたから見ると、どう見えるんだろう、と考えて、不覚にも、顔を真っ赤にしてしまった。

 

 

「わたしはレムです!よろしくお願いします!」

 

ザ・サーヴァンツの皆が見守る中、緊張なんて言葉そのものを知らないかのように、レムちゃんが元気に自己紹介した。

ちなみに皆には、もう既にレムちゃんがNPCだということは、ボクからメールで説明済みだ。

 

「うん、よろしくレムちゃん。僕はライトだよ」

「俺はユウだ、よろしくな」

「わたしはアスナっていうの。よろしくね、レムちゃん」

「アタシは優子よ」

「……私はティア」

 

セリフ量によってそれぞれの子供好き度合いが滲み出ているような気がするが、あまり触れないでおこう。

あれ?そういえば、キリト君とアレックスは自己紹介しないのかな?そんなボクの視線に気付いたのか、二人が名乗り始めた。

 

「私はアレックスです」

「……俺は、キリトだ」

 

何故か二人は少し寂しそうな、何処かに痛みの色が見えるような声音だった。

そんな二人の様子を了せず、ライト君がレムちゃんに質問した。

 

「レムちゃんは、何でフィールドのど真ん中にいたのかな?」

 

ああ、そういえばそれを聞くのを忘れてた。まあ、クエストの設定といえばそれまでなんだけど、でも、聞かれることも織り込み済みで、何か理由は用意されているだろう。

 

「それはですね、おばあちゃんのお使いなんです」

「へえ、そりゃどんなお使いなんだ?」

 

案外子供好きっぽいユウ君が、興味ありげに聞いた。

 

「はい。実はですね、おばあちゃんが病気なんです。それで、病気を治すには、幾つかの薬草が必要なんですけど、それを集めようと思ったら、いつの間にか道に迷っていた、というわけです」

 

彷徨いてた理由自体は自業自得だった。しかし、おばあちゃんも、こんなにちっちゃい子をフィールドに出すなんて、結構酷いことするなあ。

そう思っているも、アスナが剣呑な雰囲気でレムちゃんを問い質した。

 

「それは、本当におばあちゃんが頼んだことなの?」

 

するとレムちゃんは、数秒間の逡巡の後、困ったように言った。

 

「……いや、おばあちゃんには止められました……」

 

まさかの、ここも自業自得だった。なかなかに猪突猛進な子だなあ。おばあちゃん思いが暴走しすぎだな。

するとユウ君が、レムちゃんの頭を撫でながら、苦笑交じりに言った。

 

「あんまり、おばあちゃんを心配させるんじゃねえぞ?」

「以後気をつけるかもしれません!」

「そこは断言しろよ!」

 

皆の朗らかな笑い声が、ギルドホームに谺した。

 

それから数時間後、談笑に疲れたのか、いつの間にかレムちゃんは、机に突っ伏して熟睡してしまった。

ボクが、そのか細い身体を抱えて、臨時用の客間のベッドに移したあと、キリト君が、少し陰鬱な表情で聞いてきた。

 

「……お前ら、あのクエストを狙って受けたのか?」

「ん、いや、沼地で偶然出会ったから、偶然受けちゃっただけだけど?」

「ははっ、めちゃくちゃ運良いな。あのクエストはな、限定クエストって言って、おそらくこのアインクラッドで一組しか受けられないんだ」

 

なるほど、確かにそれは限定だ。今更ながら、自分のリアルラックに感謝しつつ、ボクはその先をキリト君に聞いてみる。

 

「ってことはきっと、クリア報酬も凄いものなんだろうね。どんな奴なの?」

 

するとキリト君は、痛々しく顔を俯かせた。その反応にボクは首を捻っていると、代わりにアレックスがボクの質問に答えてくれた。

 

「それがね、解らず仕舞いなんですよ……。リーベさん、このクエストのクリア条件を思い出して下さい」

 

クリア条件は、結構緩かったはずだ。十一層にあるおばあちゃんのおうちに、レムを送り届けるだけ。それなのに、何故ベータのときはクリアされなかったんだろう?

そこで、ボクのベータに関する、少ない知識の中の一つと、今の質問が合致した。

 

「あっ!そうか!ベータのときは、十層の攻略中に終わったから……」

「はい、正解です。タイムアップでクリアできなかった。そう、だったら良かったんですけどね……」

 

どういうことなんだろう?キリト君とアレックスが、これほどまでに回りくどく言う理由も、これほどまでに痛みを伴った表情を作る理由も、何一つ思いつかなかった。

 

「実はな、ベータのとき、このクエストを取ったのは俺達だったんだ」

「正確には、もう一人いましたけどね」

 

まあ、これは大体予想出来ていた。これほど詳しい情報を持っているのだ。この二人も、何らかの形でこのクエストに関わっていたであろうことは、想像に難くない。

 

「うん、それでどうなったの?」

 

さっきからずっとお茶を濁しているのだ。きっと、ベータのときは、別のルートを辿ったのだろう。

その質問に、数十秒の間、答えがなかった。二人は共に俯き、唇を切り結んでいる。

不意に、何かを決意したようにアレックスが顔を上げ、物悲しげに言った。

 

「私達はあの子を……レムを守り切れなかったんです……」

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