というわけで、今日、無事に終業式を迎えることができました!公立高校より一週間ほど遅い気がしますが、気にしないでおきましょう。
それと、一ヶ月くらい間をあけちゃってごめんなさい!ほんとはね、もうちょっと早く投稿する予定だったんですよ?でもね、親による携帯とパソコンの没収という、非道かつ残忍な目にあいまして、やっとこさ今日投稿出来た次第であります。
遅くなりましたが、お気に入り400件&通算UA6万ありがとうございます!これを励みに、ますます精進していく所存であります!
「はぁ!?ゲーム?」
ユウの提案がよほど意外だったようで、クラインは素っ頓狂な声を上げた。
かくいう僕も、何故ユウがゲームを話題に出したのか分からず、疑問符を浮かべてしまう。
「へぇ、ゲームか。そりゃ、えらく皮肉が効いてるな」
言いながら、キリトは楽しげな笑みを見せた。何が楽しいんだろう、コイツは。
「で、どうなんだ、クライン。ゲームで決着をつけるって事でいいのか?」
右手でグラスを弄びながら、ユウはクラインに詰め寄った。
すると、二つ返事でクラインは言った。
「おう。いいぜ。いきなりゲームって言われて、ちっと驚いたが、まあ議論に終止符を打つには良案だしな」
うんうん、と頷きながら、クラインは同意の意思を伝えた。
うん。ユウの思う壺だな。術中に嵌りまくっている。
なんて、偉そうな事を考えてはいるが、正直言うと僕自身、ユウの意図を掴み切れてはいない。
いや、それ以前に、実は僕、あまりこの同盟を組むか否かという議論に興味が無い。もっと言うと、ぶっちゃけどう転んでも構わない。
というわけで、僕としては、楽しく事の顛末を鑑賞するというスタンスでいる腹づもりだ。
クラインの返答に気を良くしたらしいユウは、しかし一切ポーカーフェースを崩さずに、この論争に王手をかけた。
「よし。なら、ルールの説明をしようか。やることは簡単だ。どっちが早く、『アックスビークの霊嘴』を取得出来るか、だ」
「アックスビークって言うと、二十層のシークレットボスか?」
ここにきて、やっとユウの思惑に得心いった。
アックスビークの霊嘴は、ごく稀にPOPするシークレットボスから取れる素材の中でも、ドロップ率1%以下という、超がつくほどのレア素材だ。
また、その嘴は、今ユウが作ろうとしている両手剣『ビヴレイション』の精製素材でもある。
つまりユウは、同盟締結に託けて、レア素材をクラインから搾取しようとしているのだ。
ゲスい。あまりにゲスい。魂とか、そういうレベルで腐ってるとしか思えないクズっぷりである。
こうなると、クラインに味方をしたくなるのが人情というものだ。
だが、当のクラインは、そんなユウの思惑に勘付く兆しを見せない。
「よっしゃ!ぜってぇ先に手に入れてやるぜ!」
クラインは拳を作り、掌をパンと打った。
気合十分な感じが、見ていていたたまれない。
どうしよう。ネタバレしてあげるべきなのだろうか。道徳的にも、僕の精神衛生的にも、その方がいい気がしてくる。
でもなあ、もしそうすると、議論が平行線に戻っちゃうし、ユウからもぐちぐち言われるだろうし……。
ああ、もう!迷っていてもしょうがない!ええい、ままよ!
「あのさ、クライン。きっと君は、ユウに騙されてると思うんだ」
「────なっ!?ライト、てめぇ!」
ユウの叫びを無視して、クラインに説明する。
「ユウは、新しい武器の作成にアックスビークの霊嘴が必要なんだけど、それを君から掠め取ろうとしてるんだよ」
クラインは、僕の言っていることを、イマイチ理解出来ていないようで、首を傾げている。
数秒後、やっと意味が分かったのか、小さくああ、と呟いた。
「なんだ、そういうことか。それならそうと言ってくれりゃいいのに」
へ?今、クラインは何て言ったんだ?
僕に解読の時間を与えず、立て続けにクラインは放言した。
「そうと決まりゃ、出来るだけ早くアックスビークの霊嘴ってのを取ってやらねぇとな」
「ちょ、ちょっと待ってクライン!僕の言ったことの意味、ちゃんと分かってる?」
「ああ、つまりユウは、武器の素材が欲しいって話だろ?」
バカにするな、とでも言いたげに、強い語調でクラインは言った。
「ええ、ああうん、そう……なんだけど……怒ってないの?」
「なんでおれが怒んだよ?まあ、めんどくせぇなとは思ったけどよ」
「めんどくさいって、どういうこと?」
「だってよぉ、素材が欲しいってんなら、そう言えばいいじゃねぇか。それで同盟が組めるんなら、おりゃ幾らでも取ってくるぜ?」
驚愕やら憐憫やらが、ごった返しにされたような、妙な空気が漂う。
そんな沈黙を破ったのは、以外なことに優子だった。
「……これは、酷いわね……」
たったそれだけ、ポツリと呟いた。
うん。ホントにその通りだと思う。何が酷いって、クラインを詐欺ろうとしたユウとか、それに対するクラインの純真さとか、色々酷い。
優子の言葉を受けて、ユウは苛立たしげに髪を掻いた。
「あーもう!じゃあこうしよう!二ギルド合同で、嘴取得ツアーの開催!文句あっか!?」
うん。善哉善哉。やっと自分の悪行を悔い改める気になったか。
これで、妥協点としては十分だろう。ユウは素材が欲しいし、クラインは、同盟を組めるなら、素材取りに助力してもいいと言っている。これにて、双方の利害は一致したのだ。
このまま和やかにお開き。という空気を、くつくつとした笑いでぶち壊したのは、根本改めボルト。
ボルトは、嫌らしい目付きで、憮然としたユウを舐めるように見回しながら言った。
「おいおいユウさんよ。こうなりゃ十八番の巧言も形無しだなあ?」
「うるせえ。黙れ、女装趣味のマッシュルームヘッド」
はい瞬殺。
ユウによる言葉の暴力で、ボルトは面白いように黙りこくる。
「ぷっ」
「あっ!テメェ、ライト!今、俺のこと見て笑いやがったな!?」
「違うよ。嘲ったのさ」
「余計悪いわ!」
最近、ボルトはツッコミといじられキャラが板に付いてきた。いい傾向だ。このまま、僕がいじられる機会をゼロにしてくれれば尚更良い。
「うっし。んじゃ、狩りは明日の朝一からって事で良いんだな?」
首を回しながらクラインは言う。
それを一瞥してから、ユウは俯きがちに嘆息した。
「ああ、それでオーケーだ」
そんな力無い返事で、サーヴァンツと風林火山の同盟結成集会はお開きとなった。
☆
どこまでも続く深淵の闇。
墨汁を垂らしたように深く、靄の掛かった暗さは、ともすれば、心にまで忍んで来そうな程の濃度を誇っている。
遠ざけるように、僕は右手に握った松明を振った。
それでも、五メートルと離れれば、光は暗闇に溶けてしまう。
張り付くような粘ついた暗色には、まるで僕が大衆に晒されているような錯覚さえ覚える。
左右に反り立つ壁は、湿っぽい岩でしかない。定刻通りにポタリポタリと音を立て、岩窟の屋根は涙を落とす。
これが、アインクラッド二十層、洞窟フィールドが呈する様相だ。
外では、太陽が真上にある頃だろうか。そろそろ昼飯を食べたらどうか、と胃袋が提案しているのがその証拠だ。
ちなみに、僕らは四つの班に分かれており、僕の班は、秀吉、アレックス、優子の三人だ。
…………まあ、何と言うか。両手じゃ飽き足らず、頭にまで花を載っけてしまった感じだ。
なぜ班分けをしたのかと言うと、単純に効率が良いからだ。
アックスビークは、シークレットボスの中でも、それほど戦闘能力が高くないモンスターだ。
しかし、シークレットボスの常として、POPが異様に低確率なのである。
だからこその班分け。手分けしてアックスビークを見つけ出し、それぞれの班で討伐するという方策が、素材集めという観点において、最も効率が良いのである。
早朝からダンジョンに潜り、全班合わせて二回、アックスビークとの戦闘をこなしている。だがしかし、未だアックスビークの霊嘴は、誰のアイテムストレージにもドロップしていなかった。
言っておくが、僕らの班はまだ、アックスビークと出会えてすらいなかったりする。
「そろそろお昼にしましょっか、ライトさんっ!」
そんな事を、アレックスは唐突に言い出した。
いや、今がちょうど昼時なのだから、唐突でもなんでもないか。
それなのに、アレックスの発言を突然だと思ってしまったのは、根を詰め過ぎている所為かもしれない。まだ、アックスビークを発見する事すら出来ていないという事態に焦燥しているのだ。
だがまあ、適度な息抜きは不可欠だろう。腹が減っては戦は出来ぬだ。
「うん。じゃあ、お昼にしよっか」
「はいっ!今日のお弁当は鳥の照り焼きですよっ!あっ!あそこの岩に座って食べましょうっ!」
そう言って、アレックスはするりと腕を絡ませる。
所謂、腕を組んだ状態になった訳だが、ここで一つ問題が発生した。とどのつまり、アレックスの鎖骨下部、腹筋上部に存在する膨らみが、僕の肘に接触しているという事柄である。
「ちょっ!アレックス!当たってる!当たってるよ!」
「え〜?何がですか〜?」
楽しげな笑みと、意地悪げな瞳で、アレックスは白を切る。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ。
今頃、現実世界の僕の身体は、心拍数の急上昇に伴い、自動ナースコールを発動しているだろう。
というか、何だ!この脂肪の塊は!柔らかい!めちゃくちゃ柔らかい!
僕の予測では、きっとアレックスはDだろう。知り合いで言えば、玉野さんと同レベルだ。
いや、何を冷静に分析してるんだ、僕は!
ああ、もうなんでも良いや。
お母さん。僕を産んでくれてありがとう……僕は、幸せだよ……。
「アレックス!アンタ、わざとやってるでしょ!」
飛びかけた僕の意識を、すんでの所で保ったのは、優子の凛々しい一喝だった。
「何がわざとだって言うんです?」
「アンタがライトにくっ付けてる駄肉の事よ!ライトだって困惑しちゃってるじゃない!」
「そんな事ないですよ。ねえ、ライトさん?」
一段と強く抱きつきながら、アレックスは僕の顔を覗いてきた。
いや、困っている筈が無い。この状況で困っていると言う奴がいたならば、そいつは十中八九変態だ。
だからこそ、この質問には正直に、否定の意を示さなければなるまい。
「ありがとうございます」
おっと、間違えた。お礼を言ってしまった。
プツン。
何かが切れた音がした。
絶対に触れてはならぬ逆鱗を、容赦なく踏みつけてしまったような、そんな音。
「そう。ライトは、胸を肘にくっ付けられて、お礼を言っちゃう程嬉しかったんだぁ……」
優子は、満面の笑みだ。
三千世界全てを救済せんとする、菩薩が如き微笑みだ。
ただし、目以外は。
「ちょっ!ちょっと待って、優子!話し合おう!話し合いで平和的に解決しよう!ほら!さすがの優子でも、カルマ回復クエストを受けるのはもううんざりでしょ!だから、ほら……」
「えいっ!」
今まで空いていた左腕に、微かな柔らかさが訪れた。
え?これ、どういう事?
優子が僕と腕を組んで……。
「ええええええっ!?ちょっ!優子!何してるのさ!」
「何?アレックスは良くて、アタシはダメなの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……」
「で、どうなのよ。アタシと腕を組んだ感想は?」
飄々としたアレックスとは違い、優子は、熟れた林檎の色に顔を染めて尋ねてきた。
態度は強気なのに、目尻に少し涙が溜まってみえるのは、錯覚なのだろうか。
優子の語調から、何か切実な物を感じる。だからなのか。この問いには、思った事を、真摯に答えねばならぬ気がした。
「うん。貧乳も貧乳で良い物だね」
「…………し」
「し?」
「死に曝せええぇぇッ!」
地面に対し六十度で突き上げられたアッパーは、僕の鳩尾を清々しい程に痛打していた。
「ゴブファッ!」
身体全体が中空へと投げ出される。それでも尚、優子の連撃は無慈悲に打ち出された。
右足のハイキックを見舞われ、僕は天井に叩きつけられた。
そして、フルコースのデザートに待っていたのは、流麗なまでのサマーソルトキック。
「ライトさぁぁんっ!」
「はあ…………お主らを見ていると、頭痛が痛くなってきたわい……」
秀吉のおかしな日本語が耳に届いた頃には、僕の意識は暗闇へと落ちていた。
☆
結局その日、僕らの班の予定は全て、優子のカルマ回復クエストへと切り替わった。優子にとって、八回目のカルマ回復クエストである。
幾らなんでも受け過ぎだと思う。
そして、肝心のアックスビークの霊嘴は、クライン達の班が手に入れたらしい。
これにより、風林火山は正式に、ザ・サーヴァンツと同盟を結ぶこととなった。
自分で書いてて思った事。
明久、爆発しろ!