僕とキリトとSAO   作:MUUK

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微妙に間隔が開いてしまってこめんなさい!

今回のお話、ライトの心理描写に4,000文字費やすとかいう愚行に出てしまいました。後から気づいてお祭りです。
野郎の揺れ動くキモチとかどうでも良いんだよ! という至極真っ当な精神状態をお持ちの方は、悪い事は言いませんので飛ばし飛ばしお読みください。


第七十二話「ヤキモチ」

澄んだ剣戟が夜明けに響く。その音でパッチリと目がさめる。

僕達がクエストを開始してから、3日が経過していた。その間、僕らはずっとカストルとポルクスの家に居候していた。

割り当てられた2階の部屋。その窓から顔を出す。そこからの眺めは、優子とカストルの2人が、剣を打ち合うものだった。

こう見ると、無邪気に遊ぶ姉弟のようだ。だが、2人の目、そして動きは真剣そのもの。初めのうちは優子にやられっぱなしだったカストルも、今や優子に真剣を抜かせるまでに成長していた。

 

「せぃやぁッッ!!」

 

堂に入ったカストルの気合。発動したのは片手直剣単発技『スラント』だ。

そう。カストルはスラントを…………え?

ちょっと待て。カストルはNPCだろう?

なぜソードスキルを発動できる? いやモンスターも発動するんだから、NPCでもできる…………のだろうか?

いまいち釈然としないものを腹に抱えながら、僕は戦いの趨勢を見守った。

スラントの斜め切りに対し、優子が発動したのはホリゾンタル。切り結んだ剣と剣は、激しく火花を散らしている。

だが拮抗は一瞬だった。膂力の違いは明白だ。優子の剣圧に耐え切れず、カストルは後方へ吹っ飛ばされた。いや、違うな。アレは自分から飛んだのだ。敵わぬと悟ったと同時に、優子の間合から外れたらしい。ここ数日の試合で、カストルもメキメキと戦闘勘を培っているらしい。

 

「よし! 今のは引き分けだよな、優子姉ちゃん?」

 

年相応の幼さを残す、不敵な笑みでカストルが言った。呆れを含んだ、しかしそれだけではない声音を優子は返す。

 

「なーにが引き分けよ。いまアタシが発動したのが、ホリゾンタルじゃなくてホリゾンタルスクエアだったら、アンタ今ごろバッサリよ?」

「で、でも、発動しなかったじゃんか! それは判断ミスなんだから……」

「バカ言いなさい。手加減に決まってるでしょ?」

「むぅ。なんだよ、ちょっとくらい褒めてくれても良いじゃんか」

 

ヘソを曲げるカストル。

そんな反応に、優子は耐え切れないとばかりに吹き出した。

 

「ふふ、冗談よ、冗談。どんどん強くなってるわよ、カストルは。アタシの10分の1くらいには強いんじゃない?」

「バカにしてるだろ?」

「当然」

「くっそ! もう一戦だ! 構えろ、優子姉ちゃん!」

「はいはい」

 

いたいけなカストルの挙動に、優子は微笑んだ。

その瞳を見た瞬間、何やら得体の知れぬ、黒い霧が僕の心に立ち込めた。咄嗟に優子から視線を外す。なぜ視線を逸らす必要があるのか。それすらも自分で分からない。

ただ、手持ち無沙汰なのが嫌だった。何かして気を紛らわしたかった。

取り敢えず、1階に降りて朝食を作ろう。さて、どんなメニューにしようか。その思考で、脳を塗りたくった。

 

 

「ただいまー」

「ただいま」

 

優子とカストルの2人が元気良く帰ってきた。ちょうどそこで、僕も食材モンスター『フラップフィッシュ』をムニエルにして焼き終えた。

 

「おかえり。お疲れ様、2人とも」

「おー、さすが主夫。今日のおかずも豪勢ね。えーっと、これはポタージュかしら?」

「うん。『トリックパンプキン』だよ。あ、そうそう。さっきサラダ用にドレッシングを調合したんだけど、なかなかの自信作に仕上がったんだ」

「そうなんだ。楽しみにしとくわ」

 

相槌を打ちながら、優子は鎧を解除していく。

いそいそと手動で鎧を脱ぐカストルは、優子を見てぼやいた。

 

「ほんとズルいよな、そのシュパパって消えるやつ。オレもやりたいんだけど」

「アンタにはまだ無理よ。修行が足りないのよ、修行が」

「修行でできるモンなのか!?」

「できないわよ? 当たり前でしょ?」

「むぅ。またバカにしやがって……」

 

ふくれるカストルを、優子はくしゃくしゃと撫でた。

その光景を見た途端、またあのモヤモヤとした暗闇が僕の心象を覆う。この数日、この感情は事あるごとに湧出する。

たが、産み落とされたばかりのソレに、僕はまだ名前付けることができなかった。

ただ1つ、わかることがあった。これは認めてはならないものだ。これを了とすれば、僕は自らを直視できぬようになる。そんな予感があった。

いや、確信か。そこまで分かっているのなら、きっと僕は、その感情を知っている。

だから蓋をする。見えないように、思い出さないように。

努めて平静を装って、僕は笑顔でその場をあとにした。

 

「じゃあ、僕はリズを起こしてくるから。カストルはポルクスに料理を運んでおいて」

「おう」

「え、ちょっと待ってライト。アタシが……」

「いや、いいよ。優子は座っといて」

 

咄嗟に言い返す。少し突き放すような物言いになったことに、ちょっと後悔した。

2階は寝静まっていた。

リズの寝室のドアノブに手をかける。

本来ならば、こんなことをする意味は無い。メニューウィンドウから起床アラームを設定すれば、どれだけ眠たかろうと叩き起こされるのだから。

だが、リズはどうもそれが苦手らしい。なんでも、自然に起きるか人に起こされるかしないと機嫌がすごぶる悪くなるらしいのだ。

普段なら、リズを起こしにいくのは優子の役目なのだが、僕はどうしても、あの場から離れたかった。他に何かをして、思考を散らしたかったのだ。

リズの部屋の鍵は、僕と優子に1つずつ渡されている。アイテムウィンドウからその鍵を選択して実体化させた。

そうして、ドアを開けたその先には、髪と同じ、ピンクのパジャマを着て熟睡するリズの姿があった。

よほど寝相が悪いのだろう。掛け布団はベットの下にずり落ちている。そのせいで、白いけれども健康的な肌が見て取れた。

パジャマの上は捲れ上がり、お腹が丸出しになっている。極力そちらへ目を向けないようにしつつ、僕はリズの肩を揺すった。

 

「起きて、リズ。朝ごはんできてるよ」

「んー、もうちょっと……。あと5分」

「もう9時だよ。ほらリズ!」

「じゃあ優子も一緒に寝よー」

「僕は優子じゃな……ってうわあぁぁあッッ!!?」

 

悲鳴の理由は明白だ。リズは僕の腕を掴み、ベットの中に引きずり込んだのである。

寝ぼけているにも関わらず、その腕力は有無を言わさぬ力強さだ。いや、僕が俊敏極振りなのも悪いんだけどね。

ともかく、リズと添い寝してしまっているのだ。ああ、なんだか最低の未来が見える。

ここに優子がいたらどんな反応するかな……。

そう思っていると、部屋に入ってきた優子と目が合った。

 

「何してんのよ、このバカーーーッッ!!」

 

胸ぐらを掴まれ、力一杯投げられる。その方向は、オープンされた窓ドンピシャだ。

 

「ぎゃああぁぁあぁッ!」

「ええぇぇええぇーーーッ!? ライト兄ちゃんが落ちてきた!?」

 

下で叫ぶカストル。腕を前に突き出して、僕をキャッチしようとする体勢をとった。

そしてカストルは、期待通り綺麗に僕を受けとめてくれた。体勢としてはお姫様だっこ。一回りも年下の少年に抱えられることに、どうも忸怩たるものを感じてしまう。

 

「ありがとう。カストル」

「おう。一体なにがあったんだ?」

「事故みたいなもんだよ。気にしないで」

「事故であんなに勢いよく飛び出してくるのか……?」

 

怪訝に眉を曇らせるカストル。

取り繕おうと、僕は口早に言った。

 

「さ、中に入ろ? 料理が冷めちゃうよ?」

「ん、それもそだな」

 

2人して扉をくぐると、そこには既に食事に手をつけている優子とリズの姿があった。どうにも微苦笑を禁じ得ない。

扉の前に突っ立っている僕を認めるや、優子は真顔のまま、

 

「ごめん!」

 

と放言した。

 

「絶対ごめんって思ってないだろ!」

「思ってないわよ!」

「やっぱりじゃないか!」

「だって、女の子の寝室に入る方が悪いじゃない。それに、不慮の事故だって分かっててもムカつくものはムカつくし……」

 

優子の語尾は、ごにょごにょと口ごもって聞こえなかった。

 

「え? なんて?」

「なんでもない!」

 

棘を孕んだ物言いだ。いや、それ絶対なんでもなくないだろ……。

 

「いやあ、ごめんね、ライト。あたし寝相悪くってさ〜」

「寝相悪いとか、そういうレベルじゃなかったよね!?」

「まあ現実だったら全裸になってるとこだし、まだマシかな?」

「もはや起きてるだろ、それ!」

 

ツッコミを入れながら席に着く。

両手を合わせ、カストルと一緒に2人合わせて、

 

「「いただきます!」」

 

僕がムニエルにナイフを通していると、優子がカストルに向かって口を開いた。

 

「ポルクスも一緒に食べればいいのに……。1人だけ部屋でゴハンって、ちょっと寂しくない?」

「しょーがないじゃんか。ポルクスが出てきたがらないんだよ。たぶん………見て欲しくないんだろ」

 

カストルは顔を顰めて言った。

その言葉が、僕の脳裏に光景を再起させる。

全身が悪竜の鱗に覆われた、痛々しい少年の惨状を。

そりゃ、見られたくないだろうな。

ポルクスは、最愛の兄であるカストルにすら、部屋に入ることを制限しているという話なのだ。とてもじゃないが僕たちになんて、そう易々と見せてはくれないだろう。

うーん。でも、そこまで拒むようなことだろうか。僕だったら、そんな状態でも外に出て行くと思うけど。いや、僕が単純なだけか。

優子はと言えば、憂いを含んだ微笑で、

 

「ごめん、カストル。あんましアンタたちの気持ち考えれてなかった」

 

カストルの頭を柔らかく撫でた。

 

「なんでそこで頭撫でんだよ!?」

「いいじゃないの、別に。アンタのプライドぐらいしか減るもんじゃあるまいし」

「減ってんじゃねえか!」

 

そうしていつも通りの取っ組み合いが始まった。瞬時に負けるカストル。

結局、組み伏せられたカストルは、優子の思うがままだ。だが、憮然とした表情ながらも、カストルは本気で抵抗しようとはしていない。それがどうにも眩しかったものだから、僕はそれから目を逸らし、一心に朝食をかきこんだ。

食事が終わり、カストルと優子が家を出て行った。

ぼんやりとコーヒー風の何かを啜る僕の前の席に、リズが腰を下ろす。

 

「大人気ないわね」

 

第一声がそれだった。全く意味を汲み取れず、咄嗟に聞き返してしまう。

 

「急にどういうこと?」

「妬いてんでしょ?」

「ほえ?」

「だーかーらー、優子と仲良くしてるカストルに妬いてるんでしょって言ってるの。まさか、自覚してなかったの?」

 

………………?

リズは何を言っているのだろう? 言葉の意味が良く分からない。

えーっと、僕がカストルに嫉妬してる? そんな子供みたいなこと……。

 

「そ、そそ、そそんなわけなないじゃないか!!?」

「大当たりじゃないのよ」

 

リズは肺の空気を全て吐いたようなため息をした。

なんで僕ってば、こんなに動揺してるんだ?

え? 本当に? だとすれば、僕の性格悪過ぎじゃないか?

彼女ですらない相手が、一回り小さな少年と遊んでるだけで嫉妬したって言うのか?

ああ、ダメだ。自覚したら、自分が情け無さすぎる……。

 

「リ、リズ? どうかこの事は、優子には内密に……」

「ん? 言うに決まってるでしょ? こんな面白そうな事、ほっとけるワケないじゃない」

 

悪魔の笑みを浮かべ、戸外へとスキップしていく刀鍛冶。

その背中を見ながら、僕は喉よ裂けろとばかりに叫んだ。

 

「ちょっと待って! お願いだから! ウェイト! ウェイトプリーズゥゥゥッッ!!」

 

 

「ふえ? 嫉妬? 誰が? 誰に?」

「ライトが、優子に」

 

リズの言葉を、アタシの脳は即座に受け付けようとはしなかった。

カストルは自主練中で、今は森にモンスターを狩りに行っている。

ていうか、『しっと』ってなんぞ? シット? 黙れって言われてるの?

いやいや、何をライトみたいな思考回路してるんだ、アタシ。

そもそもだ。まず嫉妬する理由が無い。

 

「何がどう転んだら、ライトがアタシに嫉妬するわけ?」

「それがね、すっごいしょうもないの。アイツ、カストルと優子が仲良くしてんのが気に喰わないみたい」

「へ? そんな理由?」

「うん。それだけ」

 

たったそれだけのことで、ライトはアタシにヤキモチ焼いたんだ。

相手は子どもなのに?

…………あ。ダメだ。すっごい嬉しい。

頭の芯がかっと熱くなって、ふにゃふにゃに溶けてしまう。

なんだろう、この気持ち。

もうこの場で飛び跳ねたい!

気を抜いたら走り出しそうなほど、アタシの精神は壊滅的に桃色だ。

 

「ちょっ! 優子! 顔に出すぎだって!」

「へ?」

 

自分の顔をペタペタ触ると、人生で一番とも言えるほど口角がつり上がっている。これが無意識なんだから恐ろしい。

もうダメ! ライトに大好きって伝えたい!

爆発した感情は、突発的にアタシの脚を駆り立てた。

 

「おーい! 優子! どこ行くの!」

「ごめんリズ! ちょっと鉱山行ってくる!」

 

上がりに上がったテンションを、アタシは作業ゲーでクールダウンさせることにした。




終わってみれば優子さんぶっ壊れ回。ちょっとでも好きって気持ちがあるなら、心ぴょんぴょんしちゃう優子さん可愛い。
ああ……バカテス原作読み返そ……。
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