「仕事終わりの紅茶はうめぇ」
俺は奴隷の少女を保護(購入)した後普通に自宅に帰ってきた。やっぱ紅茶は最高。
「そろそろこの人はパンジャンドラムとか作り始めそう」
「サンダー、俺は紅茶は好きだがあんな物を作るようにはならないぞ。まだ俺は珍兵器作成者には落ちてない…はず」
そう言いながら俺は近くにある試作ゴリアテ(ラジコン戦車を魔改造したもの)から目を逸らす。
「ところで…あなたの名前はなんて言うの?」
サンダーが少女に話しかける。
「名前は…覚えてないです。物心がついた時にはもう私の名前を知ってる人はみんな居なくなっちゃったので」
「悪いことを聞いちゃいましたね…ごめんなさい」
「いえ、大丈夫ですよサンダーさん」
この子の親はやっぱり…最近では親が居ない子供なんて珍しくない。そういうような子供の多くは奴隷にされて様々なくそったれの元へと売られていく。
この少女は幸いなことに身体に大きなケガは無かった…にしても名前が無い…か。うーん、どうしたものか…
「ベティーなんてどうだ?君の名前」
「良い名前ですね。これからはその名前を使わせていただきます、ジークさん」
気に入ってくれて何よりだ。さて…この子に何をさせようかな…まさかただ飯させられるほど俺らの財政はよろしくない。でも未成年に仕事させるとか労働基準法違反では?あぁ、俺は罪を犯してしまうのかちくしょう(今更感)
「あのー…ジークさん?」
「…どうしたベティー?」
「確かジークさんとサンダーさんは傭兵をやってるんですよね?」
「そうだな」
「そうですね」
「じゃあ私も力になりたいです…一応拳銃くらいなら撃てるんですけど」
最近はやはり物騒だから未成年の人でも拳銃くらいはぶっ放せるのか
…うーん、戦力が増えるのは嬉しい。だがな…危険だよなぁ…うーん。
「…ジーク、彼女を訓練すれば戦力も増えますし、これは素直に私たちの部隊に入れてあげては…」
そうだなぁ…とりあえずしばらく訓練させてそこそこの成績が出たら俺らの仲間に入れる形でいくか。
「…なら訓練してみてそれなりの成績が出たら俺たちの仲間入りってのはどうだ?」
「ありがとうございます!実は私、今まで誰かの世話になってばっかりで…だから誰かのためになれるのは嬉しいです」
…はぁ、本当は未成年が傭兵業やるのはお断りなんだが…こんな時代だから仕方ないか。
「じゃあベティー、早速訓練するか」
「はい、よろしくお願いします!」
俺たちが外に出ようとするとドアがノックされた音が聞こえた。
さて、誰だか分からない以上最悪の場合を想定して動く。
「…サンダー、ベティーを頼んだぞ」
「わかりました」
サンダーが自分の半身であるThunderを構える。
俺はドアの近くに行くとP226のスライドを少し引いて薬室に次弾が装填されているのを確認して構える。
そしてドアをゆっくりと開くと
「ジーク、安心しろ。俺だ、敵じゃない」
そこには筋肉モリモリマッチョマンの男が立っていた。
「…なんだアーサーか。何の用だ?」
この男のコードネームはアーサー。この街の最高権力者だ。
「あぁ、実はこの街の代表としてお前に依頼をしに来た」
うーん、嫌な予感がする。
「実はグリフィンの人形たちがヘイブン(この街の通称)の周りを嗅ぎ回っている。そいつらの処理を頼みたい」
そう言うとアーサーは1枚の写真を取り出した。
「404小隊…あいつらか」
その写真にはジークのかつての部下でもある404小隊の人形4人が写っていた。
「分かった。この依頼を受けよう」
「ありがとう、ジーク。では、良い報告を待ってるよ」
アーサーは家から出て行った。
「ジーク、新しい仕事ですか?」
サンダーが話しかけてきた。
「あぁ、そうだ。今すぐに行かなきゃならない。お前はここでベティーと一緒に待っててくれ」
「あなた一人でやるの?」
「ああ、こいつは俺がやらなきゃならない仕事だ…」
「そう…気をつけてね」
俺はトラップや爆弾が入っているリュックを背負い、89式を手に持ち、P226をホルスターに収めた。
「なーに、心配するな。生きて帰ってくるさ」
そう言って俺は外に出た。
ジーク
元グリフィン指揮官。ある時、グリフィン内の権力争いに巻き込まれて追放され、傭兵となる。現在はヘイブンに拠点を構えている。戦闘に関しては全ての技能が平凡である。
ヘイブン
S-09地区にあるとある街の通称。グリフィンや鉄血の支配下に無い犯罪者の集まりである。(犯罪の)天国と言う意味である。