第二話です。
コロコロ視点が移動しますがご容赦ください。
当の昔に廃墟となった家の中をかき分け、玄関だった場所へ走る。
だが目の前には視界を覆うほどの大きな瓦礫が立ちふさがっていた。おそらくは近くのアパートか何かの建物、その一部が崩落して落ちてきたのだろう。抜けれそうな隙間などはどこにもなかった。
通常ならば来た道を引き返すのが当然だ。人一人には瓦礫を持ち上げる程の膂力はないのだから。
だが今走る少女にはそんな余裕も時間もない。後ろに下がるという選択肢はないに等しいし、そもそも下がるということは捕まると同義であるからだ。
(ならば道は一つ。目の前の瓦礫を斬り抜けるしかない)
瞬時に自分が生きる活路を判断した少女は、腰に携えた刀を抜き、迷いなく瓦礫へと切りつける。
鉄を編んだような不思議な刀は目の前の障害物を難なく切り崩し、同時に少女は前方に転がることでその場所を抜けきることができた。
だが立ち止まっている暇はないと、すぐに立ち上がり、玄関だった場所の前から走り去る。
何秒かして、石くずの山となった所から出てきたのは三人。
三人ともそれぞれ剣や小銃などの武器を所持しているが、全員共通して赤黒いボロボロのマントで全身を覆うように羽織っている。
「ったく!! 逃げ足のはえーやつだな!! おい挟み撃ちにするぞ!! おまえらはそっち、俺はこっちからだ!!」
「了解」
「わかりやしたっ!」
リーダー格のようである男が声を荒げて他の二人へと指示をだす。部下である二人も即座に対応し別経路へと走っていく。
それを遠くからながらも僅かに聞こえた、逃げる少女はやってられないと言わんばかりにポツリと独り言をもらす。
「三人相手にするのは大変だな⋯⋯。さて、どうしようか⋯⋯」
とりあえずは道の多い都市群に向かうべきか、と判断して進路を決めていくのだった。
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ダスクは、廃墟となり、機能しなくなった都市群を改めて見渡す。
壊れた建物は数え切れなく、そのままの状態で残っている建物を探す方が難しい。また、運よく残っていた建物も触れてしまえば、たちまち崩れ落ちていきそうなほどに脆くなっていた。
近くにあった、恐らくは囲いの一部であっただろう木材の残骸を手に取る。少し握ると、残骸は乾いた音を立てて崩れていった。
枯れてしまった街路樹に触れてみると、触った部分からボロボロと木片が散った。少し強く押してみると、根元からあっけなく倒れてしまった。
これらは全て前時代の遺物であり、人間の負の遺産でもある。
世界中で巻き起こった第三次世界大戦。
人類は九割以上が死滅し、動植物はほとんどが絶滅し、海や大気は汚染され、近代文明は衰退する暇もなくあっけなく終わった。
人類が築き上げてきた文明の星は三年ほどで、砂の星へと様変わりした。
とはいえ、全てが砂となったわけではない。動きはしないが機械の一部は残り、倒れかけではあるが建物も一部は残っていたりする。そこを拠点として過ごす人達も数多くいる。
だが、今回訪れた都市群においては今までの経験からは外れているようで、何処を探しても何度探しても人らしき姿は見当たらなかった。
ダスクは不思議に思ったが、まあそういうこともあるだろうとあっさり片付け、ここに目的の彼女はいないと判断し、早々に身支度を済ませて立ち去ろうとした。
しかし⋯⋯⋯
―ドオオオオオオオオン!!!
「!」
突如聞こえた建造物の崩落音。それだけならば壊れかけの建物が自身の重さ耐えきれずに自然と崩れただけ、と安易に片付けただろう。実際、そのようなことは今まで通ってきた都市群で何回かあった。
しかし、激しく崩落する音の中で、わずかに聞こえる破裂音のようなものがあった。この音は奇しくも最近聞いた覚えがあったために、すぐに分かったのだ。
これは銃声であると。
「誰かいる⋯⋯?」
もしかしたら彼女かもしれない。そう思うとすぐさま体は動いた。
もしかしたら戦闘に巻き込まれているかもしれない。ならばなおのこと向かわずにはいれなかった。
戦闘では邪魔になるリュックサックをその場に投げ捨て、自身が持てうる限りの装備を重くならない程度に準備し、いまだ銃声が聞こえる方へ全速力で走る。
「彼女⋯⋯だといいな」
今まで旅をしてきた事が報われることを祈りながら、ダスクは音のする方へと向かっていった。