近未来アウトサイダー妄想小説   作:黒村白夜

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第三話です。


第三話

 

 

 都市群に入ってまず思ったのが、「失敗した」という反省だった。

 

 都市群は確かに複雑な脇道が多数存在し、様々な路を適度に切り替えながら走り抜ければ敵も見失う可能性も高まるだろう。

 だがそれは以前の、崩壊する前の都市群ならば、という条件が前提だ。今とでは状況が違う。

 

 現在いるこの都市群は何日か前にとある帝国の侵略を受け、既に廃墟となった都市群である。所々に既に崩壊した建物や真新しい破壊の跡があるのがその証拠だ。そのため、この都市群は特に崩壊が酷い。

 そのような場所において、建物の脆い部分にグレネードランチャーや手榴弾の爆発を当てたり、相手の邪魔をするために柱を切りつけて障害物にするなどしてしまえばどうなるか。答えは簡単だ。容易く倒壊するに決まっている。

倒壊する建物の振動や激突を皮切りに、周りの建物も崩壊を始めていく。おかげで少女は埃まみれになりながら、降ってくる瓦礫を避けたり、切ったりなどして、死のスレスレをなぞるような道を抜けねばならなかった。

 

「あぶな!!今真横にかすめた?!」

 

また、今の都市群において人は存在しない。戦争前であれば、人がごった返して様々な喧騒があちこちから降ってくるであろう都市も、今では本当に誰もいない、無音の廃都市だ。

本来の都会の姿であるならば、大勢の人や喧騒に紛れて逃げることも可能であっただろう。しかし、それは現在では通用しない。それどころか声を上げただけで、微弱な電磁波をレーダーが感知するように居場所がばれてしまう。

 

「――っち、こっちか!!めんどくせーやつだ!!さっさと俺らに捕まれ!!」

「誰が捕まるものかっ!!というか三対一とか卑怯だと思うのだけど?!」

「それだけ頭が見込んでいるってことだ!!それに今の世界で卑怯なんていってられっか!!」

 

 追手に居場所がばれてしまい、すぐさまその場から走り去る。

 すると先ほどいた場所付近に手榴弾が投げ込まれ、爆発する。居座っていたら間違いなく爆破に巻き込まれ、良くて重傷、悪くて死亡していただろう。捕まえると相手は言っていたが、その実殺す気マンマンである。頭の指示はどこへいったのか、と少女は疑問に思ったが、今そんなことを考えている余裕はなかった。

 

「捕縛対象、発見」

「いやしたよ、リーダー!!」

「っ!!まだ追ってくるの?!」

 

爆音を聞きつけて追手の二人が左右から迫ってきた。

後方からはリーダー格の男、左右からはその部下が向かってくる。

故に少女は目の前の瓦礫の山を駆け上がるしかなかった。

踏み外せば捕まるのみ。かといってゆっくり足場を見ながら登れば、それはそれで捕まってしまう。先ほどの様子からしたら手榴弾を投げ込まれる可能性だってある。うかうかしていると死ぬかもしれない。

 速く、しかし正確に瓦礫の山を駆け上がっていく。途中、道を塞ぐ大きな瓦礫を切って下から迫ってくる追手の三人への邪魔をする。これで少しでも時間を稼ぎ、あわよくば当たって戦闘不能にするのが狙いだ。

 

「くそっ!!あの女こっちを殺す気か!?」

「いやリーダーも大概っすよ⋯⋯、手榴弾バンバン投げて⋯⋯」

「とにかく生きて頭の前まで連れて行けばいいんだよ!!さっきと同じように回り込むぞ!!」

「了解」

「わかりやしたよ⋯⋯⋯。はあ、今回の任務が終わったら一杯やりたいっすよ⋯⋯⋯」

「ぐだぐだ言う暇あったらいくぞ!!」

 

 そう言って三人はまた二人と一人ずつに分かれて行動する。

 再び散開する三人組の声を、瓦礫の山の裏側からしっかりと聞いていた少女は、ため息をもらす。

 

「はあ⋯⋯脱落者なしか⋯⋯。まいったなあ⋯⋯⋯⋯!あいつらしつこすぎる⋯⋯!」

 

 叫ぶと追っ手達に聞こえてしまうので、彼らが向かった方向とは反対の道へと移動しながらも静かに不満をもらす少女。

 

 状況はかなり悪かった。 

 三対一という数的に不利な状況。

 こちらは近接武器しかないのに対し、相手は遠距離武器を使用する。

 常に味方同士の位置を把握しながら追い込んでくる、連携の取れた追っ手達。

 

 唯一活路があるとすれば、一人で行動するリーダー格の男を仕留めることだが、その彼は手榴弾などの爆発系の武器を多用することで、近接戦に持ち込ませないようにするため、かなり厄介である。

 

「どうすればいい⋯⋯?基地のところまで逃げる⋯⋯?ああ、でもあいつらを巻き込めないし、そもそもここからは視界が開けた場所を通る必要があるから、向かう途中で背後からやられる可能性が高い⋯⋯」

 

 いくら考えても最良と呼べるような考えは浮かばなかった。状況は詰みに近いものだった。

 

 だが、それでも少女には諦めるという選択肢はない。

 基地で待つ仲間の為にも、そしてそこで今も自分を心配して帰りを待っている彼女の為にも、ここで死ぬわけにはいかなかった。

 

「何とかするしかない⋯⋯⋯か。いっそのこと覚悟を決めていこうかな!!」

 

 弱気になっていた気持ちに喝を入れ、踏み出す足に力を込め、追手達がいるであろう方向へ向かおうとした瞬間だった。

 

 

 

 

 

「―――あの⋯⋯⋯―――いいですか?」

「!!!」

 

 

 背後から声がした。それに口で反応する前にまず体が動いた。

 前方に傾いた身体を横へと転がし、素早く近くの建物の蔭へと隠れる。そして一連の動作とともに刀を抜き、いつでも戦闘ができる状態へと切り替えた。

 

「――誰⋯⋯⋯⋯?」

 

 声をかけた時点で例の三人組の追っ手でないことは明白だ。ならば誰だと考える。

 

 盗人でないことは確かだろう。後ろから不意を突いて襲えばそれだけ成功率は高まる。そもそも声をかけることが今の世界においてまずおかしい。

 ならば、と考える少女だが、その思考よりも先に声をかけてきた、恐らくは女性と思われる人物が発言した。

 

「あの⋯⋯、私に敵対する意思はありません。少し聞きたいことがあってですね⋯⋯」

「聞きたいこと⋯⋯?今ちょっと立て込んでいるから無理なんだけど⋯⋯」

「立て込んでいる?それは―――」

 

 

「見つけたぞ!!くらいやがれ!!」

 

「やばっ!!ほら逃げるよ!!」

「え、ちょ――」

 

 少女は物陰から飛び出し、声をかけてきた女性の手を引きながら走る。相手は戸惑いながらもついてきたが、それではやや遅いのでもう少しスピードを上げる。そして数秒後、

 

 

 

――ドオオオン!!!

 

 

「ちっ!!また逃げられたか!!まあいい。じっくり追い詰めて捕えてやるよ!!」

 

 

 引っ張られた女性は爆破された後ろを振り返り、意外にも冷静な声で納得する。

 

「⋯⋯なるほど、先ほどから聞こえる爆発音は彼の仕業でしたか⋯⋯。あれが理由ですか?」

「そういうこと!!それにあいつだけじゃなくて他にも——」

 

「こっちにいますぜ!!リーダー!!」

「発見」

「「!!」」

 

 前方に銃を構えた二人組。

 このままでは蜂の巣にされてしまうと少女達は瞬時に理解し、慌てて近くにあった建物の内部へと飛び込む。

 その瞬間、少女達がいた地点に数多の銃弾が撃ち込まれ、砂ぼこりが立つ。間違いなくその場で立ち竦んでいれば、一瞬でも判断が遅れていれば、体中穴だらけになっていただろう。

 

「このままだと追撃を受ける!!上へと上がるよ!!」

「賛成です。行きましょう!」

 

 追われ続ける少女とそれに巻き込まれた女性。二人はお互いが誰かも知らないまま、行動を共にするのだった。

 

 

―――――――――――――――――

 

「逃げられやしたね」

「不覚」

「いやそうでもないぞ」

「リーダー!!それは一体⋯⋯?」

 

 二人に合流したリーダー格の男が、悪いことを思いついたかのような笑みを浮かべ、少女たちが逃げた建物を指さす。

 

「ほら見てみろよ、あいつが逃げ込んだこの建物。出入口はここ一つしかない。外へ飛び降りようにも周りには近い建物がほとんどない。要するにあいつはまさしく袋に飛び込んだ鼠ってとこだな。後はこっちが噛みつかれないようにゆっくり追い詰めればいい」

「なるほど、そうっすね。あ、そういやあの女以外にも人がいやしたけど、そいつはどうすればいいっすか?」

「どうもこうも、俺たちの目標はあの女―バスターブレイドの確保だ。他は気にするな。見つけ次第撃ち殺しても構わんだろ」

「了解」

「わかりやした」

「じゃあいくぞ!」

 

 そうして三人組は建物へと入っていく。頭から下された命令を忠実に遂行するために、彼らは慎重に歩みを進めていくのだった。

 

 

 

 

 

「あ、リーダー。建物内で爆発系の武器は禁止っすよ。俺たちまで巻き込まれたら本末転倒っすから」

「それくらいわかってる!!ほらいくぞ!!」

 

 

 

 

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