第四話です。
事前に活動報告のところでも言いましたが、活動報告にてこれからの近未来アウトサイダー妄想小説のざっとした流れを説明する予定です。
流れはこの第五話が終わってからの流れとしています。
「ふう⋯⋯、少しの間は落ち着けるかな⋯⋯。ごめんね、巻き込んじゃって⋯⋯」
部屋に誰もいないのを確認しながら、彼女―――バスターブレイドは巻き込んでしまった女性に謝罪する。
咄嗟とはいえ、あのままでは危なかったとはいえ、こちら側の事情に巻き込んだのは自分だ。口振りでは軽く言っているが、内心では深く反省していた。
その謝罪に対して女性は首を振り、返答する。
「いえ⋯⋯むしろあの場所にいたままだったら、爆発に巻き込まれていましたから。助かりました」
「⋯⋯! ⋯⋯そ、そう。ありがと。そういってくれて嬉しいよ」
返ってきたのは巻き込んだことへの罵倒ではなく、助けたことへの感謝だった。予想外の返答に驚いたが、なんとか顔に出さずに返事をする。
「⋯⋯で、あなたはどうするの?」
「どうする、とは?」
「さっきの連中は私を追っている。つまり、あなたは連中に見つかっても大丈夫ってこと。というか私といたらあなたの状況が悪くなる。逃げるなら今のうちだよ」
つまるところ、追われているのは自分だけなのだ。
一緒に付いてきてしまった女性と自分は何ら関係のない、ただの他人同士で、完全な被害者。
一緒にいればいるほど追っ手からはこちら側の味方だと思われ、女性の立場が悪化するのは自明の理である。
だからこそ今ここで自分とは別れるべきだと、バスターブレイドはそう告げた。
だが、
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯そうでしょうか? あの追っ手たちはかなり遠慮がなかったように見えました。仮に私があの人達の目の前にでても躊躇いなく撃ち殺すでしょう」
「⋯⋯⋯⋯そう、だね。あいつら、人相手に手榴弾平気で使うやつらだし⋯⋯。はあ⋯⋯⋯⋯」
結局のところ、巻き込んでしまったところから間違っていたのだろう。バスターブレイドは深くため息をついた。
(どうすれば良い? 逃げるにしても周囲には隣接した建物なんてないから階段を降りるしかない。でもそれだと鉢合わせする可能性があまりにも大きい。戦うにしてもあの連携は厄介だ。どうすれば⋯⋯?)
「あの⋯⋯⋯⋯私も協力しましょうか?」
「――――えっ?」
バスターブレイドにとってその提案は正直嬉しいものだった。
三人の追っ手を相手するには一人では足りない。
だが二人ならばあるいは何とかなるかもしれない。
だが、それでは目の前の女性を危険に晒してしまう。自分自身の都合でだ。
「いい、の?」
「ええ。むしろここで協力しなければ共倒れでしょう。それに、あなたには聞きたいことがあるので⋯⋯」
自分をしっかりと見つめる女性。バスターブレイドは、その女性の目の奥に”何としても生き残る”という強い覚悟を感じた。
なら自分はそれに応えなくてはならない。巻き込んだ責任として。
「⋯⋯⋯そう。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯分かった。でも作戦はあるの?」
「あります。ですが、それにはあなたの協力も必要です。協力、してくれますか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯分かった、あなたの覚悟に、その作戦に賭けてみよう!私も良い案があるわけじゃないからね、へへ⋯⋯」
「ふふ⋯⋯」
頭をかきながら笑顔を見せるバスターブレイドを見て、女性もつられて微笑む。
「そういえば、まだ名前を聞いてなかったですね。私はダスク。あなたは?」
「私はブレイド。バスターブレイドっていう人もいるけど、長いからブレイドでいいよ」
「分かりました。ブレイド、一緒にこのピンチを乗り越えましょう」
「ええ!」
ダスクが差し出した手に、バスターブレイドは応じ、力強く握手をする。
お互いに目的を果たすため、二人は共同戦線を張るのだった。
「それでどうするの?」
「色々と必要なものがありますが、それは私が持っているものでどうにかなります。それよりも重要なのは⋯⋯⋯」
「重要なのは⋯⋯⋯?」
「時間と位置、です」
―――――――――――――――――――――――――
「クリア」
「⋯⋯いないっすね」
「ああ。だが着実に追い込んでいる。あとは上の階と屋上の二階だけだ。だからといって油断はするなよ⋯⋯」
「了解」
「分かりましたっす」
三人は互いが互いをカバーできるよう、常に背中を預けながら周囲を警戒する。
長い間三人で過ごし、帝国の軍に身を預けてもなお三人で行動していたからこそ成せるチームワークである。
「うん?あれは⋯⋯⋯⋯なんっすか?リーダー」
追っ手の一人が視界に捉えたのは、窓の外にある一本のロープ。
見た限りそれなりに太く頑丈そうなロープであり、人一人がぶら下がっても大丈夫なものだった。
「恐らくロープで降りるつもりなんだろうが⋯⋯⋯⋯考えているようでバカだな。降りるまでに見つかったら撃ち落されるだろうが⋯⋯」
「でもどうするっすか?撃って落とすのはいいっすけどバスターブレイドは落下死しますよ?」
「もし俺たちの知っているバスターブレイドなら、落ちたところで死なないだろうよ。肩か足を狙えば済む話だ。もう一人の女はそのまま撃ち殺せ。別に確保対象ではないからな」
「了解っす。じゃあ背後頼みますっすね」
「承知」
ロープは揺れ始める。追っ手の一人はそれに銃を構えて狙いを定める。
他の二人は彼を背にしながら周囲の警戒をする。ロープは囮で、不意をつくために階段から可能性があるからだ。
三人に緊張が走る。
やがてロープが大きく揺れ、人影のようなものが見えた、その瞬間、
―ドオオン!!!
「なっ?!」
「!!」
「はあっ!?」
突然崩れた天井に狙いを定めていた一人は、何とか反応し窓の方向に前転。難を逃れた。
しかし、彼は落ちた天井に気を取られ、忘れていた。ロープの存在、そしてもうすぐそこから降りてくる相手を。
―ガシャ―――ン!!
一部破損した窓ガラスから飛び込んできたのは、ゴーグルをつけた名称不明の人物。
その人物は何かを投げる素振りをしたと同時に、飛び込んだ勢いで目の前にいた追っ手の一人を蹴り飛ばし、さらに倒れた相手に、追加で持っていた棒状のもので側頭部を殴る。
追っ手の一人は声を上げる暇もなく、倒された。
一方の二人も落ちてきた天井に反応し、回避をする。
「あぶねえ!」
すぐさま体制を立て直し、瓦礫となった天井の方向を見る。
その方向から瓦礫を飛び越え、何かが飛んできた。
それが地面に着地した瞬間、辺りに目映い閃光が溢れる。
「くそ!」
「!!」
二人は咄嗟に目を覆う。バスターブレイドは近接武器を使う相手である為、必要ないとゴーグルをつけていなかったからである。
そして、それがそのまま命取りとなった。
眩い閃光が溢れる中、ワンテンポ遅れて上の階から落ちてきたバスターブレイドは、素早く二人を制圧する。
視界が潰された二人にはなすすべもなく、倒されていった。