インフィニット・デモン・ストラトス (I・D・S)   作:フラッシュファントム

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学年対抗戦です。


オーダー10:学年対抗戦

  模擬戦を終えた後、俺は自室に戻って稼働データの分析を開始した。今日は2回戦ったおかげでデータ解禁された量がとても多かった。

 

「なるほど、これなら機体の組み合わせが沢山作れそうだな」

 

 今回得られたデータを基に機体の構築を行う。俺は基本的に全距離対応できる組み合わせが好みだ。

 それらの中には近距離戦闘や長距離戦闘、対大型イモータル戦向けといった攻撃対象に適した機体だけでなく操縦者の得意分野を活かした戦闘スタイルを可能とする組み合わせ等、無数にあるのだ。

 稼働データの蓄積が一定量に達した事で黒鷲は機体データの保存ができるようなった。この機能は機体データの組み合わせを記録、必要に応じて即座に組み替えられるのだ。最大でも10個まで保存できるが今の所は3つが限界のようだ。

 現状は俺があの世界で愛用していた機体が再現できるのでパーツはその構成をして武器は全距離で対応できる物を4つ選んだ。

 残りの2つだが火力重視の装備、近接格闘重視の装備を登録した。

 

「これでよし。後は学年対抗戦に備えるだけだな」

 

 作業を終えた俺は学年対抗戦のルールを改めて確認する。今回は2人1組のトーナメント方式で戦うようだ。しかし俺は今までの戦闘記録と実力差を考慮した結果、特例で単独出場する事が通達されている。不利な状況で戦う程、データの解禁が捗るので都合が良くて助かる。

 俺はそう考えながら学年対抗戦の当日までデータ解析と組み合わせの試行錯誤を行った。

 

 

 

 

  学年対抗戦当日、俺は黒鷲の状態を確認する。

「全システムを確認、問題なし!」

 黒鷲の確認を終えて対戦相手を見ると打鉄を使う篠ノ之、専用機持ちのボーデヴィッヒだった。

 ボーデヴィッヒが篠ノ之と連携したら厄介だがそれをする可能性は低そうだ。奴はここの生徒と比べて思考や意識が段違いで単独で戦おうとすると思ったからな。

 

「一度は勝ったが対策は確実にしてくるはずだ。それなら……これで戦おう」

 

 俺はデータをロードして展開、ピットからアリーナのフィールドに飛び出した。地面に着地した後、正面からボーデヴィッヒと篠ノ之がこちらに来た。

 ボーデヴィッヒは敵意を剥き出しにしておりこちらを睨みつけている。一方、篠ノ之はそれにドン引きしているようだ。

 俺はそれに構う事無く戦闘態勢に入る。相手の方がこちらよりも人数で勝っている時は簡単に倒せる敵から落とした方が良さそうだ。

 

「織斑一夏、模擬戦の雪辱はここで果たす!!」

 

「イーグル、オーダーを開始する!」

 

 ボーデヴィッヒが宣言した後、俺はそう返すと試合開始のブザーが鳴り響いた。俺が最初に狙うのは篠ノ之でブーストと同時に後退しながらRWとLWに装備している突撃銃(グリムリーパー)を発射する。

 

「くっ!?」

 

 篠ノ之は迫りくる弾に回避を試みるも間に合わず、全弾命中した。更に俺は跳躍してSWのミサイル『ランペイジハンマー』を2つ射出した。

 奴は咄嗟に後退したが2つの弾は弾速こそ遅いが誘導性は高く、後退した程度では逃れられない。

 

「私を忘れてもらっては困るな!!」

 

 ボーデヴィッヒは篠ノ之に攻撃している俺が隙だらけと判断して攻撃を仕掛けようと接近する。

 

「忘れてないよ」

 

 俺はそう告げると同時にミサイルを2つ奴に向けて追加で発射した。彼女は咄嗟に左腕のプラズマ手刀で1つ目を溶断したが2発目は手刀で斬る前にミサイルが起爆、派手に爆発した。その直後に篠ノ之に向けて発射したミサイルも派手に爆発する。

 

「まだまだ……なにっ!?」

 

 篠ノ之は爆炎に包まれながらも態勢を立て直すがシールドエネルギーが急速に減っている事に気付いた。俺が使用しているミサイルは爆発した後、相手を炎上状態にする。これは本来、アーセナルのスタミナと耐久力を減らすものだ。

 しかし異常な高温の状態は生物や精密機械にとっては最悪の環境だ。ISはその状況から操縦者の命と自身の機能を守る為に絶対防御を発動する。

 これによりシールドエネルギーが急速に減少する理由だと俺は推測したが当たりだった。

 俺は奴がエネルギーが減少し続ける事に動揺している隙をついてLWの突撃銃をLPに格納したバズーカに持ち替え、篠ノ之に狙いを定めて砲弾を1発だけ放った。

 奴はそれに気付いて慌てて逃げようとするも手遅れで砲弾が直撃すると同時に衝撃で彼女はアリーナの後ろに吹き飛ばされた。これにより奴のエネルギーは尽きて戦闘不能になった。

 

「まぁ、こんなものか。さぁ……かかってこい!!」

 

 篠ノ之を軽く倒した俺は爆風から抜けたボーデヴィッヒに宣言した。奴は俺の挑発に乗ってワイヤーブレードを3つ発射する。

 俺は迫るワイヤーブレードに対してブーストで後退しながらRWの突撃銃を連射して牽制する。彼女は銃撃を避けることなく俺に接近して右腕を突き出そうとする。

 

「同じ手は通じないぞ!」

 

 俺は粒子兵装をウイングシフトに切り替えて後方へ更にブーストして奴から距離を取った。ボーデヴィッヒが使うあの停止状態は自身の近くにいる敵にしか使えないと推測したが当たりだ。俺は奴にバズーカの砲弾を2つ発射した。 

 

「甘いな!」

 

 奴はそう言って右腕のプラズマ手刀で1つ目の砲弾をプラズマで串刺し、2つ目を横薙ぎに振り溶断して防いだ。

 砲弾を撃った俺は直ぐにアサルトシフトに変更、突撃銃を奴に向けて連射した。彼女は銃弾の雨を被弾しながらも接近して右腕のプラズマ手刀を振り下ろす。

 俺はボーデヴィッヒの手刀に対抗してLWのバズーカをRPに格納したレーザーブレード『バルダーエッジⅡ』に持ち替えて鍔競り合いに持ち込んだ。

 

「せいやっ!!」

 

 俺は鍔競り合いに勝って奴を突き飛ばすと同時に一太刀浴びせた。更に俺はミサイル3発とRWの突撃銃による連射で追い打ちをする。

 ボーデヴィッヒは態勢を立て直しつつ迫りくる銃弾とミサイルをワイヤーブレードで迎撃するが防ぎきれずミサイル2発と銃撃を喰らった。

 奴はミサイルの爆風により機体が炎上状態になってエネルギーが急速に減っているはずだ。このまま突撃銃を連射、止めにバズーカの撃ちこめば勝利できると思った。

 俺はボーデヴィッヒに突撃銃の銃身を向けて銃弾を浴びせようとした。

 

 

 

 

 

  (私がまた負ける……!? ありえん! 私は教官に鍛えられた兵士だ! こんな男に負けるはずがない!!)

 

 ラウラは機体の激しい損傷により身動きが取れず炎上状態で急速に減っていくエネルギーを見て焦燥する。

 彼女の脳裏に敗北の二文字が過った。

 こちらが最初こそ数で勝っていた。それにも関わらず相手はそれを苦にすることなく圧倒する。

 それだけでなく奴と対抗戦前にした模擬戦で一度は敗北しており彼女は焦燥を更に募らせていく。

 ラウラは遺伝子強化体……即ち戦うために生み出された生体兵器であり、彼女は常に軍で優秀な成績を納め続けた。

 しかし彼女は強化の一環で行ったIS適合移植手術に失敗、ラウラの成績は底辺に落ちた。

 そんな彼女を救ったのは教官をした織斑千冬だった。千冬の圧倒的にして完璧な強さに憧れる共に心酔していたラウラはIS学園にいる事に大きな不満を持っていた。

 

【汝、比類なき最強の力を求めるか……?】

 

(最強の力だと……?)

 

 そこに悪魔が囁きが彼女の耳に届いた。ラウラはその言葉の意味に疑問を抱くが悪魔は語りかける。

 

【汝が求める力を……手にする資格あり……。このまま敗北するか最強の力を手にするか…選べ…】

 

(最強の力……。私はその力を手にする!!)

 

【汝の願い、確かに受け取った。

 VT(ヴァルキリー・トレース)システム……起動】

 

「うっ……ああぁぁぁ!?」

 

 ラウラは悪魔が囁く最強の力を手にすることを望んだ。

 その瞬間、機体が水色の稲光に包み込まれると同時に爆炎が土煙によって消された。この事態に一夏は驚いて攻撃を中断した。

 

「これは……何が起きている!?」

 

 そして光が消えると共に不気味な黒い人型の何が太刀を右手に持って立っていた。

 

「オーダー更新か……」

 

 一夏は変化したラウラを見てそう呟いた。




次は暮桜との戦いです。

黒鷲のデータ
 パーツ:全てレディアントクリーム
 プロセッサー:メモリアップⅡ

武装
 RW、LW:突撃銃
 AUX:予備弾倉
 RP:レーザーブレード
 LP:バズーカ

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