インフィニット・デモン・ストラトス (I・D・S)   作:フラッシュファントム

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IS学園は本編前の時期です。


オーダー1:適性検査

  一夏が眠りについた頃、IS学園の地下にある極秘の研究施設でISと思われる黒い腕輪について解析されていた。それは全く進んでいないようだ。

 機体の情報にアクセスしようにも拒絶されてしまいデータの閲覧が一切できないのだ。

 

「反応しない。どういうことだ……」

 

「こんなことは初めてです!」

 

「うむ…どうしたものか……」

 

 解析を進めていた織斑千冬はそう呟いて悩んだ。そこに同席していた教員の山田麻耶とIS学園の学園長も同様だった。この後、いくらアクセスを試みようとするも全く反応が無かった。

 

 

 

 

  翌日、起床した一夏はアウターのスーツに着替えると千冬と教員と思わしき人物が2人が部屋に入ってきた。千冬は昨日、一夏から押収した黒い腕輪を持っている。

 

「おはようございます。昨日は眠れましたか?

 私はIS学園の教師をしている山田麻耶です。宜しくお願いします」

 

 緑色の短髪と眼鏡を掛けている童顔の女性が自己紹介をした。それに続いて千冬が口を開く。

 

「昨日、お前の腕輪を解析をしたが全く反応しなかった。もしかしたらお前なら反応すると思った。起動する可能性を考慮してここ来た」

 

 彼女は説明を終えると2人は一夏をある場所に連れて行く。案内された場所に着くとそこは広いアリーナだった。千冬は黒い腕輪を一夏の前に差し出す。

 

「この腕輪か」

 

 一夏は千冬が持っていた腕輪を受け取った。すると全く反応しなかった黒い腕輪から眩い強烈な光が発せられ、彼の全身を包み込んだ。

 

「今のは一体……!?」

 

 光が消えて周囲を確認した一夏は全身装甲(フルスキン)を身に纏っていることに気づいた。彼は中世の騎士を彷彿させるような鎧を纏っており黒を基調としている。また所々に黄色とオレンジの線、青の短い線が確認できた。

 それを見た千冬と麻耶は困惑したが千冬は直ぐに冷静さを取り戻した。麻耶は驚き戸惑ったままだった。

 

「やはりISだったか……。織斑、状況を伝えろ」

 

 彼女がそう問うと一夏はありのままで感じた事を述べる。

 

「この感覚は……。黒鷲(ブラックイーグル)に乗っているみたいだ」

 

 一夏はそう伝えて黒鷲から降りようとした瞬間、彼の乗っていた黒鷲が赤い光の粒子を放出しながら消えて黒い腕輪に変化した。

 

「腕輪になった。どうなっている……?」

 

 彼は一連の出来事に困惑していたが千冬はそれに構う事無く一夏をアリーナ内にある個室に連行した。

 その際に黒い腕輪(ブラックイーグル)は彼女が没収した。

 

「織斑、あれをアーセナルと言ったがどうみてもISだ! 正直に答えろ!!」

 

 一夏は千冬から厳しい口調で問い質された。彼はそれに臆することなく冷静に答える。

 

「分かりました。その代わり、この世界の事について教えていただけますか。恐れ入りますがここの事情を私は全然分からないもので……」

 

「……良いだろう。まずお前はそれを何処で入手した。どう見てもお前の物みたいだがどういう事だ」

 

 千冬は少し考えた後に口を開き、厳しめな口調で彼に昨日と同じ質問をする。

 

「これはある適性検査に合格して支給されたアーセナルです」

 

 一夏はそう答えた後、アーセナルとそれらに関わる事象について簡潔に説明した。

 

「つまりお前はこの世界に存在しない人間という事か……。そんな話、信じられん!」

 

「そう仰りたいのは理解できます。その前に私が提示した条件をお忘れですか? 今度は貴女から情報を頂きたいのですが宜しいですか」

 

 話を聞いた千冬は机を叩きながら怒鳴るが一夏は冷静な態度で応対する。それを見た彼女は平常心を取り戻し、この世界の事情について話をした。IS(インフィニット・ストラトス)の登場、それによる女尊男卑の風潮が広がった事等を語った。

 

「そうか……。私にとっては今聞いたこと全てが初耳だ。これは私が別世界から来た何よりの証拠だ。反論したい事があるのなら言っていただきたい」

 

 この世界の事情を知った一夏はどんな世界にもそれ相応の厄介事が存在していると思った。

 

「今の私はISに極めて近い(兵器)を所有している。それは本来、女性にしか動かせない物を男性である私が起動させた。この認識で間違いが無いか確認をお願いします」

 

 彼は自身の現状についてそう述べると千冬は彼の理解力の高さに内心では驚きながらも返答をする。

 

「それで間違いはない」

 

「今後についてですが私は何をすれば宜しいですか」

 

 一夏は警戒心を抱きながら質問をする。もし一夏を研究材料にしようものなら彼は機密保持の為に黒鷲と共に自爆するつもりだ。幸いなことに黒鷲は千冬が持っているので強奪する事はできる。

 

「世界初の男性IS操縦者……この事は上に報告せざるを得ない。恐らくデータ収集をすることになると予想されるからこの学園に入学をしろ」

 

「分かりました。そう仰るならその指示に従います。但し、私がこれから提示する2つ用件を受け入れる事が条件ですが宜しいですか」

 

 一夏は入学する条件として2つの条件を提示した。

 1つ目は敵の襲撃等の有事が発生した際は最前線に立って活動をできるようにする事。

 2つ目は黒鷲の情報は最低限の情報だけを此方側から開示する。その代わりに学園側での情報解析は一切しない事である。稼働データの収集に関しては構わないという事も加えた上だ。

 彼がこれらの条件を提示した理由はイモータル襲撃等における立ち回りを自分が現時点で最も理解している事、アーセナルの情報はこの世界で悪用される危険性は十分にある事を念頭に置いた上での事だ。

 

「分かった。その前に適性検査を受けてもらう。ついてこい」

 

 一夏は交渉内容があっさり受け入れられた事に内心驚きつつも適性検査を受ける為に再びアリーナにやってきた。彼はアリーナのカタパルトデッキに立っている。

 

「これから適性検査を開始する。ISを展開しろ」

 

「分かりました」

 

 千冬からの指示を受けた一夏は彼女に渡された腕輪を持った。すると腕輪から光が放たれ、彼の全身を包み込んだ。光が消えると先程と同じように一夏は全身装甲を纏っていた。

 

「全システムを確認、問題は無いです」

 

 彼は画面に表示されているシステムに異常がない事を確認してそう告げた。

 

「分かった。織斑、カタパルトデッキに移動して山田先生の指示に従って行動しろ」

 

「分かりました」

 

 千冬の指示を受けた一夏はカタパルトデッキに足を進めた。それを見た山田先生は驚くが彼は気に留めなかった。

 

「カタパルトの固定を確認。射出をお願いします」

 

 射出機に機体を固定させた一夏が報告した。それから直ぐに射出された彼はアリーナの中央上空まで黒鷲を動かして待機、武装を確認する。

 

(武装を確認。ライトパイロンに突撃銃(グリムリーパー)、レフトパイロンに(タイタンプレート)か…。あの時と同じだな)

 

 そう思った一夏はライトパイロンにある突撃銃を右手、レフトパイロンにある盾を左手に装備した。

 

『織斑君、今から出るターゲットを全て撃ってください』

 

「分かりました。イーグル、これより任務(オーダー)を開始する!」

 

 山田先生は管制室から一夏に指示を出した。彼はそれに従って最小限の動きで全ての標的を突撃銃で黙々と撃ち抜いた。彼の手慣れた動きを見た千冬と麻耶は驚きを隠せなかった。

 

「標的を全て撃った。次はどうすればいい?」

 

 撃ち終えた一夏は管制室の山田先生に次の指示を仰ぐと意外な返答が来た。

 

「えぇっと……検査は以上です。お疲れ様でした」

 

 今ので検査が終了との事だった。もう少し実戦的な事があると考えていた彼は拍子抜けしたがアリーナのカタパルトに戻った。

 一夏は戻って黒鷲を解除すると千冬と山田先生がやって来た。

 

「検査の結果だが合格だ。IS学園に入学してもらう」

 

「ありがとうございます」

 

 千冬から合格を告げられた一夏は御礼を言った。

 

「念の為に体に異常が無いかを確認の為に血液検査をする。その後は部屋に戻れ。

 入学まであと3週間はある。明日はパソコンと生活に必要な物、資料を持ってくるから読んでおけ。以上だ」

 

「分かりました」

 

 一夏は千冬の指示に従って血液検査を受けた後、自身がいた個室に戻った。

 

(これから忙しくなりそうだな……)

 

 部屋に戻ってシャワーを浴びた一夏はそう思いながらベッドの布団に入り、眠りについた。




ブラックイーグルの装備
 ヘッド、ボディ、両アーム、レッグ:オルサ
 プロセッサー:ノーマルチューン
武器
 ライトウェポン:グリムリーパー(突撃銃)
 レフトウェポン:タイタンプレート(盾)

アーセナルに関してはゲーム開始時点の装備にしました。
次回から本編に入ります。


織斑一夏を見た千冬、双方の反応が薄い理由は次回でわかります。
一夏の反応が無い理由も次回である程度は明かす予定です。

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