インフィニット・デモン・ストラトス (I・D・S) 作:フラッシュファントム
クラス代表決定戦当日、俺はアリーナの簡易ハンガーで黒鷲の最終確認をする。
「全システムと武装を確認、問題なし」
システムと武装の確認を終えて直ぐに黒鷲を纏った。普段と同じ感覚で安心感を覚えた俺は追加した武装に目をやる。
「銃火器は兎も角、近接武器は投げることには使えそうだから持っていっても損は無さそうだ」
パイロンに打鉄の日本刀型の近接ブレード『葵』を格納して試合に挑む。武装は突撃銃と盾、ブレードの4つだ。ISの武装がアーセナルでも使用できるか確認も兼ねている。
「イーグル、準備できました」
そう告げてアリーナのカタパルトデッキに黒鷲を固定させると直ぐに射出された。空に飛び出した俺は既に待機していたオルコットと対峙する。
「逃げずによく来ましたわね。その度胸は誉めて差し上げますわ!」
オルコットは挑発するがのるつもりはないので無視して相手の情報を再度確認する。その反応が気に入らなかったのか怒気を交えて捲し立てる。
「無視とは無礼ですわね! 私が一方的な勝利を得るのは当たり前のこと。ですから、惨めな姿をここで晒したくなければ、今ここで謝るというなら許してあげないこともなくってよ」
オルコットの挑発を無視して専用機の情報を脳内でまとめてデータの測定内容と実行を照らし合わせる。
ブルーティアーズ、6つのビットとレーザーライフルが主力武器だな。格闘武器の短剣もあるがほぼ飾りに近いと判断する。
「イーグル、これよりオーダーを開始する!」
試合開始を告げるブザーと共にオルコットはレーザーライフルのトリガーを引いた。銃口から青色の光線が発射されるが俺は体を反らして難なく回避する。
「今のはまぐれですわ! 次こそ当てますわ!!」
オルコットはそう叫びながらレーザーを連射するが全て回避する。弾その物は速いが狙いが分かっており容易に回避可能でフェイント等といったテクニックを使っていないので尚更簡単だ。
回避し続ける俺に苛々を募らせたオルコットは御得意のビットをスカートアーマーから4つ射出する。
「この私のブルーティアーズで
オルコットはそう宣言して4つのビットによる攻撃を開始する。4つのビットは死角に配置されると同時にレーザーで砲撃を開始する。
次々と発射されるレーザーの嵐を回避、左手に持った盾で防御するが背部からの攻撃に対応できずダメージを受けた。
ここでオルコットからの砲撃を警戒したが何故か彼女は狙撃をしてこない。棒立ちしたままビットの制御に集中しているようだ。
それを見た俺は彼女がビットの制御と狙撃が同時に出来ないと判断した。
「オーダーを続行する」
そう呟いた右手に持ったアサルトライフルをライトパイロンに格納している太刀に持ち変えてビットの砲撃が終わるまで耐え凌ぐ。左手の盾で防御と回避を続けていくがオルサの性能が低くて被弾が増え始める。
オルコットは俺が被弾している姿に笑みを浮かべているように見えたが構う事無くチャンスを待つ。4つビットの砲撃が終わった瞬間を見て行動を開始する。
「そこだ!」
一瞬のチャンスを見つけて太刀でビットに斬りかかる。俺が振り下ろした太刀はビットを真っ二つに切り裂くと共に爆発した。そこから近くのビットに突進して横一閃に太刀を振ってまた破壊する。更に近くのビットへ近づいて縦一閃に太刀を振り下ろして両断、その残骸が地面に落下した。
「くっ!?」
オルコットは残ったビットの1つを破壊される前に慌てて戻した。近接ブレードの形状が太刀に酷似しているならそれに分類される事が分かった。太刀の攻撃は出が早く、近くに別の敵がいたら続けて攻撃が可能な近接武器である。近くの雑魚を一掃したり素早く攻撃したい時に活用できる武器だ。
「今だ!」
俺はオルコットがビットを戻した瞬間に背中のブースターの出力を上げて突進、その勢いを利用して斬りかかろうとする。それをみたオルコットは口角を斜め上に動かして宣告する。
「お生憎様、ブルーティアーズは6つありましてよ!」
2つのミサイルがスカートアーマーから射出された。罠に掛かったとオルコットは認識しているようだが残りの2つがミサイルという事は既に知っていた。
迫りくるミサイルに対して左手に持っていた盾を投げつけるとミサイルが激突、同時に爆発と煙が生じた。
「仕留めましたわ! ……なっ!?」
オルコットが堂々と宣言した瞬間、左のスカートアーマーにブレードが刺さった。ミサイルが迫っていた時、俺は盾を投げて直ぐに右手のブレードも投げつけてそれが突き刺さったのだ。オルコットは酷く動揺しているようだが隙だらけだ。
右手に突撃銃、左手に太刀を持って黒鷲のブーストの出力を最大にして追撃を仕掛ける。右手の突撃銃で牽制しながら接近、太刀を縦一文字で振り下ろしてオルコットのシールドエネルギーを削り取る。
「もう許しませんわ! テイアーズ!!」
俺の攻撃で正気を取り戻したオルコットはそう叫びながら残った1つのティアーズと右スカートアーマーのミサイル射出、撃ち落とそうとする。
俺は咄嗟に
そこからアサルトシフトに切り替えて突撃銃を連射してミサイルビットを破壊、飛び回るビットを太刀で両断した。アーセナルはフェムトの配分を変える事で攻撃と防御、機動力が一時的に強化されるのだ。
アサルトシフトは攻撃、シールドシフトはバリアによる防御、ウイングシフトは機動力をそれぞれ強化させることが可能でそれらを駆使して戦っている。
オルコットに残された武器はレーザーライフルのみだ。彼女は後退しながらレーザーを放つが俺は軽々と回避する。
「この私が…。代表候補生の私が…!」
オルコットが恨めしそうに何かを呟いているがアサルトシフトから機動力を強化するウイングシフトに変えて彼女との間合いを詰める。
「速い!?」
急接近してきた俺にオルコットは驚き声をあげる。間合いを詰めた勢いを利用してすれ違う瞬間に横薙ぎに太刀を振った。彼女は咄嗟にライフルを盾代わりにして何とか防いだがライフルに深い斬り傷が刻み込まれた。
「そこですわ!」
オルコットはそう叫びながらライフルを構え、背中を晒している俺に狙撃をする。ウイングシフトからシールドシフトに変えてレーザーをバリアで防いだ。その瞬間、オルコットのライフルがスパークを起こして壊れた。どうやら先の一撃が効いたようだ。
アサルトシフトに切り替えて残っている突撃銃の弾を全て彼女に浴びせようとした。しかし半分がかわされた。オルコットは予備のレーザーライフルを出して撃とうとした。
「させるか!」
俺は彼女がライフルを展開する寸前、弾切れになった突撃銃を奴に向けて勢いよく投げつけた。投げた突撃銃はオルコットが展開したライフルに直撃、銃口が逸れてレーザーは当たらなかった。その間に俺はウイングシフトに変更して彼女に再び接近して太刀の横一閃を浴びせた。
この一撃が決定打となりオルコットのシールドエネルギーは尽きて試合終了のブザーがアリーナに響いた。
『勝者、織斑一夏!!』
アリーナから歓声が沸きあがるが気にせずにピットに戻って黒鷲を解除した。戻った俺は織斑先生と山田先生に声をかける。
「オーダーは達成しました。私がクラス代表になりますが宜しいですね」
「あ、あぁっ…それで良い」
「はい! 織斑君、お疲れ様です」
要件を満たしてクラス代表の就任の同意を確認した。2人はそれに同意して山田先生は労りの声をかけてくれた。
「山田先生、ありがとうございます。今回の稼働データについては私でまとめて提出します。月曜日の授業も宜しくお願いします。私はこれで失礼します」
俺は山田先生にそう告げてアリーナから去った。黒鷲に関しては事前に情報はこちらで開示できる物はした上でその情報範囲内の能力を活かして戦った。
支給されたばかりの機体の低い性能でここまで戦えたのは良しだ。しかし機体の性能頼みで戦っていた事を痛感する。
こちらも腕も上げないと厳しくなるなと思いつつ今日得られたデータを自室でまとめた。
「これは……」
稼働データを分析、纏めていた俺は機体からの知らせがある事に気づいた。それを確認すると新たな武装のデータが表示されていた。
ショルダーウェポンのミサイル『サンダーバード』、近接武器のブレード『バスタードゥーム』が追加された。更に他の情報を確認すると頭部のパーツにレギオンが追加されていた。
「どうやら戦っていく毎に俺が収集した機体の武装やパーツが解禁されるのか」
そんな仮説を考えて今後、積極的に模擬戦等をやっていこうと思った。早く機体のデータを解禁して本来の姿に戻したい。
アーセナルのカスタム要素につきましては戦っていく毎にパーツが解禁される方式にしました。
これはカスタムロボのパーツ・ジェネレータの設定を使用しています。
一夏のアーセナル
アーマー
頭部:レギオン、それ以外は初期装備
ウェポン
ライトウェポン:突撃銃(グリムリーパー)
レフトウェポン:盾(タイタンプレート)
両パイロン:太刀(日本刀型近接ブレード 葵)