インフィニット・デモン・ストラトス (I・D・S) 作:フラッシュファントム
試合が行われた日の夜、千冬は寮長室で今日の試合内容について考えていた。
(一夏が使っていたアーセナル…。性能を一時的に変えられる能力があるのか。
しかしこれが
試合記録の映像を見ながら彼女はそう思案する。ISは単一仕様能力という
しかし彼が使っていた黒鷲はそれらしき機能が備わっていないのだ。資料を内容と実際にその機能を目にするのでは感覚が異なると彼女は解釈した。
更に資料を詳しく目を通していくとISなら必ず備わっているコア等が全く無いのだ。シールドバリアーや絶対防御、
シールドバリアーはシールドシフト、瞬時加速はウイングシフトと彼女は勝手に認識していたのだ。無論、ISと同等の反応が待機状態から最初の段階で発せられていたので詳細な事は見ていなかった。
千冬はここにきて漸く、一夏がISとは全く異なる物を扱っている事を実感したのだ。因みに山田先生は一夏がISに酷似した何かを使っていると認識、資料を詳細に見ていたので殆ど動揺は無かったそうだ。
彼女は行方不明だった実の弟がISらしき物を使っていることに囚われていた事とIS反応が発せられた事がここまで動揺を見せた要因だった。
「……もう少し様子を見るか」
千冬はそう呟きながら再生されていた映像を閉じた。
同時刻、自室にいるオルコットは一夏に敗北したことで自分の過ちを悔いていた。
彼女はクラス代表を決める話し合いの際に一夏だけでなく日本人、日本という国そのものを蔑む様な事を感情任せに言ってしまったのだ。あれだけの大口を叩いたにも関わらず試合は敗北という結果を突き付けられた。
(クラスの皆に謝らないといけませんわ。最悪、無視されることも覚悟しなければなりませんわね……)
オルコットは心の中でそう呟いた。彼女は幼少期に両親を亡くし、彼等が残した財産を汚い大人達から守る為に必死に努力を重ねて代表候補生になったのだ。その腕を磨くためにIS学園に来たのだが男という理由だけでそこにいる彼が目に付いた。そんな彼に試合前に度々つかかって自分が如何に凄いと豪語してきたのか……考えただけで彼女は醜い嫉妬を晒した事を後悔するが手遅れだった。本国にこの事が知られたらどうなるか分かったものでは無い。
恐怖に支配されていた彼女は殆ど眠れなかった。
月曜日、山田先生が入室してSHRが始まった。
「クラス代表は織斑一夏さんに決まりました。織斑君、宜しくお願いします」
山田先生は教壇の前に立ってそう告げると一夏は立って挨拶をする。
「この度、クラス代表を務める事になりました。皆様の期待に応えられるように精進していきます。
この場で急ではございますがクラス副代表を決めたいですが宜しいですか」
一夏が挨拶と共にそう言うと教室は騒がしくなるがそれに構う事無く彼は口を開く。
「クラス副代表をオルコットさんに務めて頂きたく思います。理由は私的な都合で学年会議等に出席できない可能性があります。その時に副代表に出席して頂きたいですが…オルコットさんは宜しいですか。無理等は申しません。副代表は私の勝手な任命なので断って頂いても大丈夫です」
彼はオルコットを見ながら提案をする。彼の狙いはデータ収集等の都合で会議に出席できないことを考慮して独断ではあるが副代表に任命したのだ。仮に断られたとしてもこちらの勝手な提案という形で流れるので大きな問題は無い。
クラスの副代表に任命(仮)された彼女はチャンスと言わんばかりに勢いよく起立して口を開いた。
「私、セシリア・オルコットはクラス副代表を御受けいたします。先週、織斑さん並びに日本に対して侮辱をしてしまった事にお詫びを申し上げます」
オルコットはそう言った後に深く一礼して謝罪をした。それを見た一夏は副代表を務めてくれてありがとうという意味を込めて拍手を送った。クラスメイト達も謝罪の受け入れと副代表任命を祝す意味を込めて彼に続いて拍手を送った。
クラス代表と副代表が決まった後、一夏達は外で授業を受ける事になった。専用機を持っている一夏とオルコットが前に出てクラスメイトの前で実践をするようだ。
「オルコットはブルーティアーズ、織斑は黒鷲を展開しろ」
前に出たオルコットと織斑は其々が持っている機体を千冬の指示通りに展開するが一夏の方が僅差だが速かった。彼女はそれに少し驚きながらもその場で上昇するように指示を出した。
一夏とオルコットは同時に上昇するがブルーティアーズの方が上昇速度が速かった。一夏は粒子兵装をウイングシフトに変更して上昇を再度行った。先程よりも速くはなったがそれでもブルーティアーズには及ばなかった。
「ではそこから地上から10cmの所まで急降下して停止だ」
指示を受けたオルコットは指示通りに地上から10cm地点で止まった。続いて一夏もオルコットと同様に急降下、10cmの所で停止させた。これには周囲も驚きを見せるが一夏はそれを構う事は無く次の指示を千冬に仰いだ。
「次は武装の展開だ」
彼女はそう指示するとオルコットは構えをすると共にレーザーライフルが展開された。その後、近接武器のナイフ『インターセプター』は名前を言わないと展開できなかった。
それに対して一夏はアーセナルの性質上、武器展開は出来なかったが格納している武器を瞬時に交換、粒子兵装の変更をいつも通りにやった。
「織斑に関しては仕様だから仕方ないが…。オルコット、お前は実戦でそんな展開をするのか? 間合いを詰められたら終わりだぞ」
「じ、実戦では間合いに入る前に撃ち落としますわ!」
「ふむ、相手を侮った事を加味しても間合いに入った相手を落とせなかったのは誰なのかな」
千冬はそう言ってオルコットを睨んだ。オルコットは千冬の正論に言葉を詰まらせてしまった。そうして授業は終わった。
その日の放課後にクラス代表と副代表就任のパーティーが開かれた。主役の一夏とオルコットは当然ながら出席している。
「みなさん、私のクラス代表就任の祝賀パーティーを開催していただきありがとうございます。クラス代表として優勝を目指します。それでは乾杯!」
一夏は爽やかな笑顔を見せながら挨拶をして乾杯の音頭を取った。クラス一同が祝ってくれているので彼は大いに楽しんでいた。そこにIS学園の新聞部の取材が入った。
「新聞部の薫子です! 織斑君、クラス代表就任の一言をお願いします!」
「クラス代表として恥じぬよう全力を尽くします!」
一夏は取材にそう答えた後、クラス代表と副代表で記念写真を撮ったがそこに皆が入ってきたが彼は特に気にしなかった。
パーティーが終わった日の夜、一夏は自室のPCで黒鷲の解析を進めていた。今回の稼働データに収穫があるか確認をしたが特に無かった。
授業等で軽く動かすだけではデータが解禁されない事が判明したのだ。
「やはりあの程度の稼働データだけでは駄目か…。模擬戦等で武器を扱わないと解禁されないのか」
画面を見ながら一夏はそう呟いた。現にオルコットとの代表決定戦ではデータが解放されたがこの日は何も変化が無かったのだ。
(明日は武器を使った訓練をしてみるか)
彼はそう考えながらベッドに入り、眠りについた。
次は中国からの転校生が出ます。