インフィニット・デモン・ストラトス (I・D・S)   作:フラッシュファントム

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今回はクラス代表戦です。


オーダー6:転校生とクラス代表戦

  祝賀パーティーから数日後、教室では中国から転校生が来る噂が広まっていた。

 

「今日、2組に転校生が来るんだって!」

 

「中国っていう事は代表候補生かな?」

 

「大丈夫よ! 専用機持ちは1組と4組だけだから一組で優勝は決まりね!」

 

 俺はこの時期に来る転校生に対して警戒心を抱く。男性IS操縦者のデータ狙いという可能性がある。特に中国からというのも気にかかるところだ。そこに誰かが教室の入口から姿を現した。

 

「その情報古いよ!」

 

 背の低い少女がそう宣言した。恐らく彼女が噂の転校生だと推測を立てた。

 

「2組の代表も専用機持ちになったから簡単に優勝はさせないわ! 久しぶりね、一夏!」

 

「恐れ入りますが私の事を知っておられますか。申し訳ありませんが貴女が認識している一夏ではございません。私は貴女と初対面です」

 

 推測は当たっており、俺の名を口にした。残念ながらあの少女に関する記憶等は一切無いので俺はそう返した。それに反応した少女は口を開けて呆然としていると後ろにいた織斑先生が出席簿を振り下ろして彼女を退かせた後、SHRが行われた。

 授業後の昼休み、学園の食堂に赴くと2組の専用機持ちの少女が何故かラーメンが入っている丼をトレーを持ち立っていた。

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

「先程も申し上げましたが貴女の事は一切記憶にございません。

 それと待ち合わせをした約束は一切しておりません。約束されるのでしたら事前に報告をお願いします」

 

 俺は少女から発せられた言葉に対してそう返した。それを聞いた少女は唖然としていたが俺はそれを無視して券売機で今日食べる料理の券を購入、空いている席に座って注文した料理を食べる。今日は豚の生姜焼き定食だ。定食は栄養バランスが良いから俺は好んでいる。すると隣に先程の少女が座ってきた。

 

「本当にあたしの事を覚えていないの!? 鳳鈴音よ!!」

 

「何度も申し上げますが私の知り合いに貴女の名前はおりません。私は確かに貴女が認識している織斑一夏と全く同じ名前ですが違います」

 

 俺は彼女の質問にそう返してから定食を軽く平らげた。鈴音はそれを聞いてまた唖然としているが俺は気にせずトレーを片付けて食堂を後にした。午後からの授業は全て座学だったので全て問題なくこなした。

 放課後、俺はアリーナに赴いて黒鷲の鍛錬を行う。こいつは稼働データが多いほど、データ解禁が早くなると結論を出してそれを実証させるためにやっている。今日は射撃と解禁されたブレードのテストだな。

 俺は映し出された標的に突撃銃の弾丸を難なく撃ちこみ、近接武器で次々と真っ二つに切り裂いていく。更に解禁されたミサイルの性能を確かめる為に一辺に映った標的に狙いを定め、ミサイルを発射した。

 ミサイルは俺がロックオンした通りに全弾命中した。ミサイルの性能を確認して問題は無いと判断した俺は武器を持ち替えて射撃、ブレードを振り回した。

 自分が考えた練習計画を終えた俺は着替えて自室に戻り、今日の稼働データを黒鷲にPCを接続して表示されたモニターで確認した。

 すると胴体パーツのデータが1つ解禁された。見るとそれはレギオンだったので直ぐにオルサと入れ替えた。これで解禁されたデータが1つだけならまだまだ時間が掛かりそうだと痛感した。戦闘が無いとデータ解禁が困難だなと思いながら俺はシャワーを浴びて着替え、眠りについた。

 

 

 

  一夏が訓練をしていた頃、鈴音は職員室に千冬に一夏の件を問い詰めていた。自分の事を全く覚えていない上に口調が不気味な程に丁寧になっていた事である。それを聞いた千冬は鈴音の質問に答える。

 

「一夏がああなったのは私のせいだ。私がモンドグロッソ決勝戦に出ようとした時、一夏は誘拐された。私は決勝戦を放棄してあいつを助けに行った。けど一夏はどこにもいなくて周辺を捜したが見つからなかった。それからここであいつを見つけたが私の事を一切覚えていなかった。DNA鑑定をしたら私の弟だと分かったが一夏は何一つ記憶ないと断言した」

 

 千冬は鈴音にそう語った。即ち、一夏は自分たちの事を忘れたとすら認識していないのだ。それを聞いた鈴音は驚いていたが同時にあの反応を示した理由に内心、納得していた。その後、鈴音は職員室から去った。

 

 

 

 

 

  クラス代表戦当日、俺は装備を整えて鈴が待っているアリーナのフィールドに飛び出した。

 

(成程、主力武器は連結分離できる青龍刀の双天牙月と背中に浮いている衝撃砲の龍咆…。近接戦闘はここぞという時にするのが最善だな)

 

 俺は鈴音が使うIS『甲龍(シェンロン)』のデータを確認、そう判断した。今の俺はデータ解禁が不十分で鈴に対抗できる武器が殆どないのだ。今回使う武装は突撃銃と盾と肩のミサイル、パイロンに格納している近接ブレードと太刀である。自分の使える武器を確認した俺は深呼吸をして鈴と対峙した。

 

(今の自分が出せる全力を出し切るだけだ!!)

 

「一夏、手加減は無しだからね!」

 

「了解した。イーグル、これよりオーダーを開始する!」

 

 試合の開始を告げるブザーが響くと同時に鈴が俺に接近して双天牙月を勢いよく振り下ろしてきた。俺は後方にブーストを掛けて後退、同時に突撃銃で反撃を行う。鈴は左へ滑るように回避すると同時に彼女から視線を感じ取った。俺は咄嗟に左手に持った盾を前に構えると突然、衝撃が走った。

 

「これは…衝撃砲!?」

 

 見えない弾丸の衝撃に俺は戸惑っていると鈴は味を占めたのか連射を始めた。左手に衝撃が走っておりこのままでは盾が壊れてしまう。そう判断した俺は左に滑るように移動しながら鈴に狙いを定めてミサイルを8つ発射する。

 

「一夏、甘いわ!」

 

 鈴はそう叫んで龍咆で4つミサイルを破壊、残りは双天牙月を回転させて防いだ。ミサイルの爆風で煙が起きると共に砲撃が止まった。俺はその隙に左手の盾を近接武器に持ち替えた。更にウイングシフトで鈴に接近、そこからアサルトシフトに切り替えて彼女に近接戦闘を敢えて仕掛けた。

 俺は加速した勢いを利用して左手に持ったブレードで鈴音に斬りかかった。

 

「えっ!? 速い!」

 

 鈴は双天牙月で咄嗟に防いだがそのまま鍔競り合いに持ち込んだ。俺は左手に持ったブレードに力を込めて鈴を突き飛ばし、競り勝った。

 近接戦闘では武器を繰り出すタイミングによっては鍔競り合いが発生する。これに競り勝つことで相手にダメージを与えた上で後方に弾き飛ばせるから俺はそれを狙い敢えて近接戦闘を仕掛けた。

 そこから右手に持った突撃銃を連射、弾丸の雨を鈴音に浴びせた。鈴音のシールドエネルギーを確実に削り取っている事を実感する。

 

「調子に乗るんじゃないわよ!」

 

 鈴音はそう言いながら龍咆で俺に反撃をする。しかし俺は鈴音の視線から外れるように移動して回避する。

 彼女は龍咆を使う際に視線を攻撃対象に向ける癖がある事を俺は見抜いた。これなら相手の攻撃が見えなくても回避できるので滑るように移動して突撃銃で応戦、鈴音に攻撃を当ててシールドエネルギーを削る。

 

「そろそろケリをつける!」

 

 俺はそう宣言して跳躍、落下とブーストした勢いを利用して鈴音に近接戦闘を仕掛けようと勝負をかけた。

 その瞬間、俺と鈴の間にアリーナのシールドを貫通したレーザーが地面に撃ち抜かれた。その後、黒い何かが地面に衝突して大きな土煙を巻き上げた。

 

「何だ…」

 

「何なのよ一体、あたし達が戦っているのにどういうつもり!?」

 

 土煙が晴れると共に落下物が黒い人型ロボットであることが判明した。そいつは右腕が切断されており、体の関節部分から火花が飛び散っている事が分かる。そのロボットは何故か俺達を無視してアリーナの中央に移動をする。まるで何から逃げるみたいだ。

 そこにボロ布を纏い両手に2本の小ぶりの刀とパイロンに大振りの刀が2本、合計4本の刀を持った半壊している様に見えるロボットが突然姿を現した。そいつは姿が消えると同時にアリーナ中央に移動していた黒いロボットの前に出現する。

 黒いロボットは反撃を試みた。しかしその前に半壊しているロボは右手に持った刀の横一閃の斬撃で黒いロボットの左腕を斬り落とした。

 奴は 次に左手の刀で黒いロボットの顔面に突き刺し、そのまま勢いよく振り下ろした。更にそいつは黒いロボットの腰部を両手に持った刀をX字の描くように振り下ろした。

 黒いロボットはバラバラに解体されると共にその残骸が地面に崩れ落ちた。

 

「こいつは……まさか!?」

 

 俺はあの太刀筋を見て震えた。奴はオーヴァルリンクで語り継がれている幻の存在、亡霊(ソロモン)だ!




次回は乱入者との戦いです。

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